山田隆司(公益社団法人地域医療振興協会地域医療研究所長)

 医師の地域偏在の問題が深刻である。特に地域を支える中小規模の病院では医師確保は存続にも関わる重大な問題となっている。

 医師の研修制度が変更されるなか、多くの医学部卒業生は優秀な指導医、効率の良い研修、ライフワークバランスの良い環境を求めて都市部、大病院、特定の診療科へ集中する傾向が否めない。

 また、来年から開始されることになった新専門医制度でも、地域偏在を解消する対策を講じたにもかかわらず、都道府県格差あるいは診療科間の格差が広がっており、地域偏在の流れを食い止めるどころかさらに加速させるような勢いである。

 さて、そこで出てきた地域偏在の解消策としての「僻(へき)地への強制医師派遣制度」である。強制派遣というといかにも物々しい印象で、医療界からは、「医師の自由を損なう」、あるいは「プロフェッショナルオートノミー(職業的自律)に委ねるべき」などという反論が聞こえてきそうだ。

 しかし、今や反論しているだけではすまされない状況で、国全体の地域医療をどうやって守るのか、医療者全体のあり方が問われている。

 そもそも医療は国民全体のニーズに応えるべきであって、個々の医師の自由を振りかざして反論している場合ではなく、まさしくプロフェッショナルオートノミーのもと責任ある回答が医療界全体に求められている。
(iStock)
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 医師という職業自体が社会的責務を負っているからこそ、プロフェッショナルオートノミーが尊重されるのであって、この対応によっては日本社会における医師という職業の価値観に影響を及ぼすと言っても過言ではなかろう。

 これまで僻地など、医師不足地域の問題は、実際にそういった地域の病院や診療所の開設者・管理者の問題であり、主に自治医科大学や、地域枠の卒業生が担うべきことだとしか認識されてこなかった側面がある。

 多くの医師には当事者意識がなかったと言っても過言ではない。奨学金という金銭的な契約で拘束された対象者だけで解決すべきという極めて短絡的な手法に頼っていたのである。今回も単なるインセンティブを与えることで、一部の医師のみが関係する問題として帰結してしまわないよう十分留意する必要がある。

 今回「医師少数区域」での一定期間以上の勤務経験を有する医師を厚労省が認定し、認定医師であることを広告可能としたり、地域医療支援病院など、一定の病院の管理者になる際に評価したりすることが提案されている。

 筆者は自治医大卒業生であり、義務として僻地医療に従事してきた医師であるが、その立場からは僻地医療の経験が評価されることについては喜ばしい提案だと受け止めている。