中村幸嗣(元自衛隊医官、血液内科医)

 「医療過疎」である僻地(へきち)への医師の強制的な派遣が取り沙汰されています。2018年度からスタートする「新専門医制度」とも連動しています。12月8日に厚生労働省の医師需給に関する検討会の分科会に提出された第2次中間取りまとめ案には、「医師偏在に関する客観的で有効なデータに基づき、他の医療政策と整合的かつ主体的に医師偏在対策を講じることができる仕組み」とあります。では、このテーマを自分なりに解釈していきます。取りまとめ案からは、医師偏在対策として四つのポイントが挙げられています。

(1)都道府県自治体における医師確保対策の実施体制の強化
 具体性はよく見えないのですが、地域が「医師確保計画」を策定し、地域大学と連携することで今機能していない「地域医療対策協議会」の実効性を高める、つまり医師を実際に確保する組織にすることが挙げられています。

(2)医師養成課程を通じて自治体が介入し地域における医師確保
 策定した「医師確保計画」に基づき、都道府県が臨床研修病院の指定や、卒業後の地元勤務を条件に奨学金を設ける医学部の「地域枠」を含めた定員などに介入する権利を持たせるとのことです。ただ、こんな能力を持つ地方職員がいるでしょうか。「医師余り」といわれる東京ですら医療過疎地が存在し、地方自治体ごとにも格差が目立つ現状で、どれだけのことができるのでしょうか。

 また、地方の医師を確保するためには都会地域における臨床研修医などの定員を抑制する必要が出てきます。これは地域だけでは不可能です。それこそ建前上は強制ではなくプロフェッショナル・オートノミー(職業的自律)により、18年度から運用される新専門医制度においても、事前に明記されていなかった「地域、専門科の制限」がすでに実施されているようです。都会への一極集中がかなりひどいといわれているとはいえ、公務員でもないのに、若手医師には職業選択と居住という、二つの自由がすでに制限されているのです。

厚生労働省が入っている中央合同庁舎第5号館
 そして今後、行政による介入の範囲を明確化し、都道府県別・診療科別の必要医師数の算定を計画に基づき実施するということですが、やはり具体性が全く見えません。ちなみに必要医師数に内科はひとくくりで考慮されており、血液内科や神経内科といった専門は全く分けられていません。私が望んでいる医療改革は題材にもあがらないのです。地域に必要な医療には総合臨床医、かかりつけ医がいればいいということなのでしょうか。でも、この分野の修練も本当に難しい上に、社会のコンセンサスが取れていないのです。

(3)地域における外来医療機能の不足・偏在などのデータ収集
 外来患者のデータを集積し、地域別の外来医療機能の偏在・不足などに関するデータを集めて可視化するとしています。つまりはっきり言うと、在院患者と違い、今は外来患者のデータがほとんどないわけです。それに伴い現在の必要医師数のデータの根拠が弱いことがわかります。

(4)僻地勤務を促す厚労省による医師に対する認定・インセンティブ
 「僻地で勤務しても医師が疲弊しない持続可能な勤務環境の整備」と書かれているのですが、財源含めて具体性はありません。またインセンティブとして挙げられているのは、僻地に勤務する医師に対する認定制度の創設と、認定医師に対して一部の地域医療支援病院のような医療機関の管理者、つまり院長の資格を与えるというというものですが、今の若手医師にはなんの魅力もないと思われます。診療所の開設権(いわゆる開業制限)でないことも中途半端です。