古谷経衡(文筆家)

 いわゆる「日報問題」でミソをつけ、防衛大臣を辞任した稲田朋美は先の衆院議員選挙で無難に5選を果たした(福井1区)。今回の稲田の得票率で見ると約57%。前回2014年衆院選挙のそれが65%、2012年衆院選挙では53%の得票でいずれも当選していることを考えると、稲田に対する世論の厳しい評価とは裏腹に、地元選挙区では圧倒的な強さを維持しているのが数字でも裏付けられる。

 「南京裁判」で原告側弁護人を引き受け、ゼロ年代に一躍保守論壇の寵児(ちょうじ)として論壇誌『正論』にデビュー。当時、小泉政権下で安倍晋三(幹事長)に見染められ、「初の女性総理」を嘱望された稲田の権勢は、こういった選挙の得票数とは反比例して現在、ほとんど地に落ちているといってよい。

 転換点は第二次安部政権下での「クールジャパン推進会議」議長への抜擢。「ゴスロリの起源は十二単」との珍説を開陳して失笑を買った。次に民進党(当時)の辻元清美との国会論戦。辻元の追及に言葉を詰まらせて涙ぐむ様子が全国に中継されると、それまで稲田を支持していた保守層は一斉に稲田から離反した。

 保守層にとって辻元は「格下」の仇敵。その辻元にコテンパンにやられたという醜態は、稲田熱ともいえる稲田人気が潮が引いていくように後退していった最大の要因である。それ以外にも、防衛省としてジブチ視察の際、およそ防衛大臣にふさわしくないようなハイキング・ルックで空港を出発したこと。あるいは今年6月にシンガポールで開かれたアジア安全保障会議で、仏・豪防衛大臣と自らを「グッドルッキング」(美しい容姿)と発言して国際的失笑を買ったことなど、稲田に対する保守層の期待が徐々に剥離していった要因には大小さまざまなものがある。

 さて、原発銀座・福井県での稲田の5選は、自民党王国福井という背景からして当然であって、格別の驚きはない。それとは別に肝心の保守層からの支持を失ってしまった稲田が、今後、ふたたび入閣するような「復活」を遂げることはできるのだろうか。
衆院選で当選確実となり、鯛を掲げる稲田朋美氏=2017年10月、福井市
衆院選で当選確実となり、鯛を掲げる稲田朋美氏=2017年10月、福井市
 結論から言えば、可能性としては十分ある。維新や希望の党の保守系女性議員とは違い、前述のごとく稲田には福井一区という強力な地盤がある。これはなによりも重大な財産である。雨が降っても槍が降っても、稲田の6選、7選は将来的に動かないであろう。