柿谷勲夫(軍事評論家)
中谷元(元防衛相・衆議院議員)
火箱芳文(元陸上幕僚長)

中谷 北朝鮮は、金正恩体制を維持するために先軍政治を続け、核・ミサイル開発に精力を注いできており、米国にまで到達するICBM(大陸間弾道ミサイル)の新型ミサイル「火星12」を発射させ、グアムまで標的にできるという新たな脅威の段階になったと認識しています。北朝鮮は非常に激しい口調でわが国や米国を挑発していますが、国際的非難決議に反して一方的にミサイル発射を続けていること自体が異常なことであり、我が国として、何としてでも、北朝鮮によるミサイル発射が行われないよう全力で取り組んでいるところです。政府としては、万が一にも日本に着弾したりするような事態に備え、国民の生命財産をしっかり守れるような態勢を取っています。米国はすべての選択肢をテーブルの上に載せて北朝鮮と対峙しています。ここで、実際に北朝鮮がミサイル発射をやめるところまで持っていかないと、北朝鮮の脅威は除去されたことにはなりません。

柿谷 結局、西側の国々がまともに対処しなかったために、北朝鮮が図に乗って出てきたということですね。この二十数年間、北朝鮮は口先でうまいことを言って、重油などを受け取るだけ受け取ったのです。今回、北朝鮮と話し合うのも結構ですが、いいかげんな話し合いでは問題は先送りされ、核・ミサイル開発が進むばかりです。ここは戦争も覚悟の上で北朝鮮を抑えておく必要があります。日本と米国の友好関係は当面、続くとは思いますが、わが国には抑止力がないわけですから、北朝鮮の核は絶対に放棄させねばなりません。最終的には、米軍が武力を行使する必要があるでしょう。

火箱 現在の北朝鮮による挑発行為は、もはや自殺行為というべき段階ですね。もし攻撃されたら周辺国に反撃するぞ、とのメッセージを発して、何とか米国に自国の体制維持を認めてもらおうとしている、といえます。日本としてはもう少し北朝鮮の脅威に敏感になるべきで、米国と連携して挑発をやめさせなければなりません。ただ、米国としても、相当な覚悟がなければ北朝鮮を攻撃できないでしょう。また攻撃した場合には、ミサイルが飛んでくるなど日本にも相当な被害が出る恐れがある。そうした武力衝突なく済むようにする必要があろうと思います。

 ミサイルの飛来に備えて日本は自衛隊のPAC3やイージス艦が待ち構えていますが、北朝鮮が大量にミサイルを撃ってきた場合にすべてを撃ち落とすことは困難ですし、米国も同様に対処には限界があると思います。米軍が「矛」なら自衛隊は「盾」の役割ですが、われわれは米国としっかり協議して、米国の「矛」の役割を果たす兵器をもって北朝鮮のミサイル発射を断念させる方向に持っていかねばと思います。

柿谷 北朝鮮への攻撃をも覚悟の上で、核・ミサイルの放棄を迫る必要があります。向こうが引かない限り、こちらが手を緩めてはいけません。単なる口約束では、北朝鮮は絶対に核兵器を放棄しません。これまでずっと、北朝鮮は米国などによる核放棄の要求をかわしてきたのですから。

火箱 日本は非核3原則なるものを標榜していますが、トランプ米大統領は安倍首相との会談で「米国は核と通常戦力の双方で日本の防衛にコミットする」と明言したわけです。日本としては、せめて「持ち込ませず」は外し「非核2原則」という形にして、米国の核戦力による関与を確かなものにしておく必要があるでしょう。これは北朝鮮の核兵器が完成する前、今のうちにやっておかねばなりません。
2017年9月、会談中に握手する安倍首相とトランプ米大統領=ニューヨーク(共同)
2017年9月、会談中に握手する安倍首相とトランプ米大統領=ニューヨーク(共同)
中谷 2年前に、日米の防衛協力のための指針(ガイドライン)を改定しました。その後、平和安全法制を成立させて、日米協力をしっかり機能させるという意味で、平時から同盟調整メカニズムでミサイル防衛についても日米間で協議をし、訓練を重ねています。また2プラス2ということで外務、防衛省のトップ同士が日米間で協議もしています。やはり日米が協力し、「矛」と「盾」の双方をもって北朝鮮にミサイルを撃たせない、断念させるということをしっかりやっていく必要があろうと考えています。

火箱 日本には現在、核兵器に対する懲罰的な抑止力は皆無なんですね。イージス艦等のように、弾道ミサイルを撃ってもムダだ、と北朝鮮に思わせるだけの拒否的抑止力は、一応ありますが、このレベルを高め、さらには策源地(ミサイル発射基地)を叩けるように、敵基地攻撃能力を整備していく必要があるでしょう。

中谷 米国もレッドライン(最後の一線)をハッキリとは言っていませんが、米国の安全保障については米国が判断するわけで、その中で武力行使についても否定はしていません。日本としても、あらゆる事態に対応できるようにしっかりと日本独自の対応も考えておかねばなりません。