下條正男(拓殖大国際学部教授)

 韓国の文在寅大統領は、訪韓したトランプ大統領の晩餐会で独島エビを供し、元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)氏を招いて、日本側の顰蹙(ひんしゅく)を買った。菅義偉官房長官が「外国が他国の要人をどう接遇するかについてコメントは控えるが、どうかとは思う」と不快感を示すと、外務大臣の河野太郎氏も、「北朝鮮危機の中、特に日米韓の連携が大事な時期に極めて遺憾だ」と発言したからだ。

 これに対し、韓国外交部の林聖男第一次官は、「このようなメニューが話題になることは誰も予想していなかった」と釈明したが、日本側の反発は心外だったようである。この日韓の齟齬(そご)は、今日の日韓関係を象徴している。

 韓国は歴史的に「東方禮義の邦」を自負してきたが、日韓の係争の地である竹島近くで獲れたエビを晩餐会の料理に出し、前政権との間で「最終的かつ不可逆的解決」を確認した慰安婦問題を蒸し返したのは、日本に対しては傍若無人の振る舞いも許されると錯覚しているからである。

 今回の所作も、前政権を倒した際の民衆の民意におもねたのだろうが、それは慰安婦問題や竹島問題の歴史的事実についての理解が足りないからである。

 慰安婦問題は、当初、日本軍を相手にしていたのは自尊心が許さないからだ。何とか無理やり売春をさせられたことにし、そのためには日本政府の関与があったことにしてほしい、ということから始まった。

 それが「河野談話」を経て、戦前の酌婦は慰安婦から性奴隷になってしまった。慰安婦を日本の軍国主義による被害者とし、国際社会に吹聴したのは、文在寅大統領の盟友であった盧武鉉大統領である。
バスに乗せられた慰安婦問題の少女像の手に触れる朴元淳ソウル市長=ソウル(同市提供・共同)
バスに乗せられた慰安婦問題の少女像の手に触れる朴元淳ソウル市長=ソウル(同市提供・共同)
 竹島問題もこれと似た状況にある。韓国の外交部によると、独島は「歴史的にも国際法上も、地理的にも韓国の固有領土」だそうだが、その歴史認識に基づいて日本に強く「謝罪」を求めたのは盧武鉉大統領である。

 11月12日付の「朝鮮日報」(電子版)のコラム記事では、「日本は韓国はいつまで謝罪しなければならないのか」というが、彼らの心の中には『謝罪』などない」。(中略)「日本は韓国をそのような相手だとは思っていない。これが韓日関係の本質だ」と報じた。この現状認識は盧武鉉大統領と同じである。

 だが今日、「謝罪」をしなければならない立場にあるのは韓国側である。韓国が不法占拠をしている竹島は、歴史的に韓国領であった事実がないからだ。それを韓国側では1954年以来、不法占拠を続け、日本側がその竹島の領有権を主張すると、過去を「反省」していないと反発してきたのである。これが事実に近い「日韓関係の本質」である。

 それも韓国政府が竹島を侵奪したのは、「サンフランシスコ講和条約」の発効で敗戦国日本が国際社会に復帰する3カ月前の1952年1月18日。日本が最も弱体していた時を狙って、略取したのである。