山本みずき

 今年の8月15日、私は韓国に滞在していた。日本でこの日は終戦の日だが、韓国では大日本帝国からの独立を祝う「光復節」という祝日である。日本と韓国では、歴史的に「8月15日」の持つ意味合いが大きく異なる。

 2011年に、ソウルの日本大使館前に慰安婦像が設置されて日韓の歴史認識問題が改めて浮き彫りになり、今年になってからはそれに輪をかけるようにソウル市内に徴用工像が設置された。日本の報道を見ている限りでは、韓国のナショナリズムは年々高まりを見せており、これが光復節ともなれば、街は反日ムードで盛り上がり、韓国国旗を掲げたデモ隊がソウル市内を行進しているはずだ。そんなイメージだけが勝手に膨らんでゆく。韓国人はこの日をどのように過ごすのだろうか。疑問を胸に抱きながら、恐る恐るソウルの中心街へと繰り出した。

 確かに市内はデモで盛り上がっていた。だが、少し様子がおかしい。ソウル市庁舎前の広場には200以上の団体が集い、雨が降り注ぐ中、群衆は雨合羽に身を包み、プラカードを掲げて何かを訴えていた。「No war, No THAAD」。意外なことにデモの目的は、反日運動ではなく、反政府運動だったのである。
高高度防衛ミサイル(THAAD)配備に反対し、デモ行進する人たち=2017年7月、ソウル
高高度防衛ミサイル(THAAD)配備に反対し、デモ行進する人たち=2017年7月、ソウル
 彼らは文在寅大統領に向けて、米韓合同軍事演習の中止を訴え、北朝鮮との緊張状態をいたずらに悪化させないよう、米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備の即時撤回を激しい怒号とともに要求していたのである。

 デモの参加者に聞くと「大統領は嘘つきだ」と感情的に現政権への失望を語った。それもそのはず、彼らは皆、もともと進歩派である文在寅の支持者だったのである。デモ参加者は、自らの期待とは異なる政策を断行する文在寅政権に対して、デモを通じて激しい批判をぶつけていたのである。

 韓国には、大まかに「保守派」と「進歩派」という2つの政治的潮流が存在する。ほかの民主主義諸国と比べても、この両者の亀裂は深く、対立は構造的であって、まるで二つの異なる民族がいがみ合う構図とも似ている。

 対外政策について目を向ければ、保守派は北朝鮮の脅威に対して、米韓同盟を中心とする軍事的圧力に基づいた抑止力の強化を志向するが、進歩派は北朝鮮との民族的紐帯を重視して、融和的な対話路線を唱える。文在寅政権は、後者の進歩派を支持基盤としており、政権発足時は急進左派系の学生運動経験者が要職に就く様子も注目された。