2016年の日本競馬界を大いに盛り上げたクリストフ・ルメール騎手。フランスから日本に拠点を移して2年目ながら年間最多勝争いでトップに立つ花形ジョッキーに、日本の競馬や暮らしについて話を聞いた。

——日本に拠点を移して以来初の母国でのレースということで、フランスのメディアから注目されたのでは?

 次から次へと取材が入り、まるでマラソン(笑)。競馬専門のメディアだけじゃなく、一般のメディアも話題にしてくれて、日本の競馬について理解を広めるいい機会になったと思うよ。

——日本の競馬は世界でどの程度認知されているのですか?

 日本の馬の実力はすでに世界で証明済み。遠征のたびに大きな注目を浴び、誰もが敬意を払う。牧場にも定評があるし、馬主がサラブレッドの競りに巨額を投資することも知られている。海外の大きなレースに日本の馬が出場すれば、日本から多くのメディアがやってくるから、現地にとっていい刺激になる。今回もマカヒキはフランスのメディアから大いに注目された。
クリストフ・ルメール騎手=2017年11月、美浦トレーニングセンター
クリストフ・ルメール騎手=2017年11月、美浦トレーニングセンター
——1981年の第1回ジャパンカップで、外国馬に上位を独占されたとき、日本の競馬界は世界とのレベルの違いを思い知ったと言われています。

 何事も下からの積み重ねだからね。日本は欧米に比べると競馬の歴史がそこまで古い国じゃない。ジャパンカップの創設はまさに、国際的なレースを日本で開くと同時に、日本の競馬を海外に広めることが目的だった。確かに当時、日本の馬のレベルは、欧米の馬に及ばなかったけれど、そこからの成長は見事と言うしかない。競走馬、牧場、種牡馬、繁殖牝馬、いずれも世界のトップレベルにある。競馬の国際化が進んで、外国のレースに出る日本の馬が増え、日本の馬主や調教師が自信を深めていった。競走馬の世界ランキングで日本の馬が1位と2位を独占した年もある。もう足りないものはないんじゃないかな。

——日本の馬が凱旋門賞を制するのも遠くないと考えますか?

 うん。すでに2着は4回ある。最後の一段を上がるだけだ。その日はもう間もなく来るだろう。

——それを自分がやる、というのは大きな目標になりますね?

 凱旋門賞を勝つのはあらゆるジョッキーの夢だし、日本の競馬関係者やファンが熱狂する中、日本の馬で勝てたなら、これほどの名誉はないだろうね。確かにそれは大きな目標にはなる。でも馬は生き物だし、レース当日まで何が起こるかわからない。僕にとって大事なのは、一つのレースだけに照準を合わせるのではなく、毎日をいつも通り平常心で過ごして、こつこつと練習を重ねていくこと。そしてレースが近づくにしたがって、徐々に集中力を高めていくことなんだ。

(※1)3歳馬に限定した中央競馬の伝統的なGIレース。皐月賞、桜花賞、優駿牝馬(オークス)、東京優駿(日本ダービー)、菊花賞の5つ。

(※2)毎年5月末~6月頭に実施される3歳馬対象のGIレース。正式名称は「東京優駿」。皐月賞、菊花賞とともに「三冠レース」のひとつ。