礒﨑敦仁 (慶應義塾大学准教授) 
澤田克己 (毎日新聞記者、前ソウル支局長) 

 公募で決まる2017年の「今年の漢字」は「北」だった。理由の筆頭に挙がったのは、たび重なるミサイル発射や核実験といった北朝鮮の動向だ。北海道上空を飛び越える軌道でミサイルが発射され、Jアラート(全国瞬時警報システム)のサイレンが鳴り響いたのも今年だった。年末に発表された内閣府による「外交に関する世論調査」では、北朝鮮への関心事項のトップが「ミサイル問題」(83.0%)となり、「日本人拉致問題」(78.3%)を上回った。拉致問題よりミサイル問題への関心度の方が高くなったのは、日本と北朝鮮の関係が調査項目に入った2000年以降で初めてである。1月に就任したトランプ米大統領は金正恩国務委員長を「ちびロケットマン」と呼んで挑発し、金正恩委員長はトランプ大統領を「老いぼれ」とあざけった。

森清範貫主によって揮毫された2017年の今年の漢字「北」=2017年12月12日午後、京都市東山区の清水寺(寺口純平撮影)
森清範貫主によって揮毫された2017年の今年の漢字「北」
=2017年12月12日午後、京都市東山区の清水寺
(寺口純平撮影)
 今までなら一笑に付されていたであろう「米国による先制攻撃」も、トランプ氏ならばあるかもしれないと繰り返し心配された。12月になってからも「金正日国防委員長の命日である17日に開戦」だとか、「クリスマス休暇で在韓米軍の家族が帰った時があぶない」などという説がとなえられたほどだ。

 国連安全保障理事会が採択した制裁決議の本数を見ても、北朝鮮をめぐる危機が昨年から急速に深刻化していることを読み取れる。北朝鮮が初めて核実験を行った2006年からの10年間に4本だった制裁決議が、昨年は2本、今年は4本となった。この2年間で、それ以前の10年間の1.5倍というペースである。

 北朝鮮をめぐる危機が深まった2017年という年が暮れる前に、この1年を振り返っておきたい。

 1月20日に就任したトランプ米大統領は、事前の予想を覆して北朝鮮の核・ミサイル問題を重視する姿勢を見せた。北朝鮮の核問題に対応してきた過去25年間の歴代政権が取ってきた政策をすべて失敗だったと決め付け、軍事行動を意味する「すべての選択肢」を強調する強い姿勢だった。実際の政権としては、強い圧力をかけることで北朝鮮を交渉の場に引き出すことを主軸とし、そのために軍事力を見せつけるというのが基本方針だ。しかし、大統領自身がしばしば軍事力行使をにおわせる不規則発言(ツイート)を繰り返した。北朝鮮が核実験やミサイル発射を繰り返したことに加え、トランプ氏のこうした姿勢が危機感を増幅させた面は否定しがたい。