大川村は人口約400人の過疎山村というが、それは住民票を勘定すればそうなるというだけで、大川村に関係している人口はもっと多いはずである。大川村の出身者は、若い人ほど大川村を離れて暮らしているが、その多くは高知県内、四国内にとどまっていて、頻繁に出入りしているだけでなく、どこかで帰還するチャンスをうかがっている。いわゆる限界集落はどこでもそうなっている。

 筆者は思う。こうした村の外にいる者たち(通う村民、関わる村民、関係人口)も村民の一部と考えるべきではないか。中でも将来大川村に帰ってくる予定の人などは、今からでも大川村の村民として迎え、その意見を聞くことができるなら、帰還を実現しやすくなるのではないか。逆にそうした外の声を反映せずに、今ここに住んでいる人たちだけの声で政策を進めるから、帰還しにくい、若い人が暮らしにくい村にどんどんとなってきたのではないか。

 構想日本の呼びかけに応じて集まった自治体により、「ふるさと住民票」の試みが始まっている。ふるさと住民票とは、今ここには住んでいないが、何らかの形で自治体に参加したいという人にある種の準住民のような資格を付与し、その自治体の力になってもらおうというものである。2017年12月の時点で、鳥取県日野町、徳島県佐那河内村、徳島県勝浦町、香川県三木町、香川県三豊市がその発行をはじめている。
徳島県佐那河内村の「ふるさと住民票」を岩城福治村長(左から2人目)から交付される、名誉村民の書家山根玉峰さん(同3人目)ら=2017年7日午後、佐那河内村役場(共同)
徳島県佐那河内村の「ふるさと住民票」を岩城福治村長(左から2人目)から交付される、名誉村民の書家山根玉峰さん(同3人目)ら=2017年3月7日午後、佐那河内村役場(共同)
 ふるさと住民票の発行が何をもたらすのか。ともかくも現段階では実施しながら考えようという試行錯誤のものだが、例えばこの発想からすれば、村の民主主義も、その村に住民票をおいている人だけのものではなくなっていくはずだ。村の出身者、村に働きに来る人、あるいは将来この村に住みたいと思っている人だって、その村の政策形成に参加する権利がある。議員だってそうした人の中から出すことも許されてよいのではないか。あるいはかえって、こういった半第三者的なチェック回路がある方が、適切な行政運営・政策形成が実現するのではないか。

 おそらく今、私たちはそれぐらいのスケールで議会のあり方、自治体のあり方についてしっかりと踏み込んだ見直しを進める必要がある。そしてそうした見直しが、過疎山村のみならず、大都市を含めたこの国の民主主義、政治過程の再活性化につながるものと信じる(選挙と民主主義に関しては、拙稿も参照されたい)。

 高知県の山村も含め、そろそろ過疎地の人口減少も下げ止まりになってきたようである。大川村でもすでにその兆しが見えているという。この転換期に見合う新たな自治体、新たな議会、新たな民主主義のあり方を、将来を見まごうことなくしっかりと模索し、選択したいものである。