郷原信郎(弁護士)

 藤井浩人前美濃加茂市長は、現職市長であった2014年6月、市議時代に業者から合計30万円の賄賂を受け取った収賄の容疑で逮捕され、起訴された。藤井氏は「現金授受の事実は一切ない」と一貫して訴え続けてきた。金銭の授受を裏付ける明確な物証はなく、藤井氏に現金を渡したという業者の証言が唯一の証拠だった。

 一審の名古屋地裁は、贈賄供述者を含めた多くの証人の証言を直接聞き、被告人である藤井氏の言葉を聞き、その供述態度も踏まえて供述の信用性を判断した結果、贈賄供述者の証言が信用できないとして、藤井氏に無罪判決を言い渡した。

 控訴審の名古屋高裁は、職権で贈賄供述者の証人尋問を再度行ったが、元弁護人による露骨な尋問妨害行為がなされたにもかかわらず、それを不問に付して証人尋問を「なかったこと」にし、新たな証拠がないにもかかわらず、一審裁判所が供述態度から信用できないとして採用しなかった証人の証言を採用し、毎回出廷していた藤井氏には一言も発言の機会すら与えないまま「信用できない」として、逆転有罪判決を言い渡した。

 その不当極まりない控訴審判決を、最高裁がそのまま是認し、藤井氏の有罪が確定することなどあり得ないと信じていた。

 ところが、12月11日、最高裁の上告棄却決定が出された。それは、この事件の捜査段階から上告趣意書提出までの経過を詳細に述べ、明らかな冤罪(えんざい)であることを訴えた『青年市長は“司法の闇”と闘った 美濃加茂市長事件における驚愕の展開』(KADOKAWA)が発売された8日金曜日から週末を挟んだ翌月曜日のことだった。
最高裁決定への異議申し立て後、記者会見する前岐阜県美濃加茂市長の藤井浩人被告(左)。右は主任弁護人の郷原信郎弁護士=2017年12月18日、東京・霞が関の司法記者クラブ
最高裁決定への異議申し立て後、記者会見する前岐阜県美濃加茂市長の藤井浩人被告(左)。右は主任弁護人の郷原信郎弁護士=2017年12月18日、東京・霞が関の司法記者クラブ
 上告棄却決定の理由は、

 弁護人郷原信郎ほかの上告趣意のうち、判例違反をいう点は、事案を異にする判例を引用するものであって、本件に適切でなく、その余は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらない。

というものだった。そのわずか3行半の決定文すら、弁護人の上告趣意の内容に対応していない。上告趣意の内容を把握し検討した上で出された決定とは到底思えないものだった。

 刑事訴訟法では、上告理由は、405条で(1)「憲法違反」、(2)「判例違反」に限定されている。そして、411条で(3)「上告理由がない場合でも、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる」とされている(職権破棄)。