受田浩之(高知大教授)

 高知県土佐郡大川村は人口約400人、離島を除くと国内最小の自治体だ。この村が今、世間の耳目を集めている。議員のなり手が不足して、議会を維持できない可能性が出てきたためだ。各自治体で当たり前に備わっている機能が人口の減少と共に失われる。まだ議会を維持できない事態に至ったわけではないが、「その時」に備え、有権者が予算などの議案を直接審議する「村総会」の設置を検討していると報道された。

 意欲的な議員が切れ目なく議会を担い続けてくれればよいのだが、現時点ではその勢いに赤信号が灯(とも)り始めたのだ。対岸の火事のように世間はこの問題を報じているが、2040年には896もの自治体が消滅可能性の危機を迎える。その時期までに、多くの自治体で大川村と同様の問題が顕在化することになる。われわれは人口減少問題を「当事者」の視点でしっかりと見つめ、その対応に一日も早く取り組まなければならない。この事例から学ぶことは多い。

 そもそも、地方の人口はなぜ減少するのか。当然のことながら、過疎が進む地方では、若い世代が特に大学進学や就職を契機に都会へ移るケースが多い。その結果、若い世代の人口が減少して、必然的に少子化に拍車が掛かる。この様子は、まるで桶(おけ)に張った水が零(こぼ)れ落ちている様子を想像させる。水が地域住民、桶が地方の自治体である。

 桶を取り巻く板はそこで生活をする上で求められるさまざまな要素と考える。この板のうち、一つでも背の低い板があれば、容赦なく水は外に流出する。この桶の下には、たくさんの桶から流れてきたすべての水を一滴も漏らさず受け止める大きな器が存在する。そう、それは都会と言うプールである。

 人口減少に歯止めを掛けるために、この桶である地方自治体は、水が漏れ出ている板を高く補強しなければならない。例えば、「大学」の板が問題ならば、若者が希望する進学先(大学)を設立する。「仕事」の板から漏れ出すのであれば、若者が求める仕事を創る。効果はあるだろう。漏れが止まるのだから。しかしこれにも限界がある。日本全体の人口が減っているため、どんなに高い板で囲まれた大きな桶を準備しても、溜(た)める水がもはや枯渇しているのだ。大変熾烈(しれつ)ではあるが、次はこの競争に打ち勝つ戦略を考えなければならない。水を呼び込む戦略、そう移住者の獲得である。