竹井隆人(政治学者)

 私は幾度か公言したことがあるが、これまで国会、地方議会を問わず代議員選挙の投票に出向いたことがない。そういう私を「政治学者と名乗っていながらとんでもないやつだ」と非難する方もいよう。しかし、このたびの衆院選では、選挙前後に所属政党や主張を平然と変える候補者が続出する様を見て、投票行為をばからしく思い、私の態度に内心では首肯される方も多いのではないだろうか。

 私は争点がゴチャ混ぜとなっているにもかかわらず、表面上は祭典のように盛り上がる選挙戦に、いかほどの意味も見い出せないでいるが、今回の衆院選はいつにも増して無意味さやバカ騒ぎ度が際立ったように思う。

 しかし、それでもなお、今回のドタバタ劇の選挙戦で投票などどうでもよいと思ったことに、後ろめたさを覚えるまじめな方もいよう。そこで、そういう方を安心させる?ためにも投票などは「政治」に関係なく、それどころか、それがむしろ真の「政治」というものをゆがめていることを論じてみよう。

 選挙戦になると投票を促す「あなたの1票で政治が変わる」という呼び掛けがエスカレートするが、「変わる」のは候補者自身の当落ぐらいのもので、まず「政治が変わる」ことなどないだろう。

 そもそも、その票の積み上げによる「政治」は民意を本当に反映しているのだろうか。例えば、今回の選挙では、政権与党が総議席の7割近くを獲得し、議席数としては「圧勝」した。また、第1党となった自民党の得票率は約48%で、連立与党を組む公明党と合わせると総得票数が過半に達するので、与党は十分に民意を得たように思えるかもしれない。

 だが、今回の投票率は前回に引き続き低調で約53%であったことを加味すると「与党圧勝=過半数支持」という表面的な結果はだいぶ様変わりするはずだ。各政党の得票数を、全得票数でなく、投票していない有権者も含めた全有権者数で割った数値を「絶対得票率」というが、その「絶対得票率」をみると、自民党は小選挙区で有権者全体の2割台(0・53×0・48≒25%)の支持しか得られていない計算になる。比例代表だと自民党の得票率は約33%、「絶対得票率」は2割弱(0・53×0・33≒16%)にまで落ち込むのだ。
2005年9月、当選者の名前の上にバラをつける小泉純一郎首相(当時)。郵政選挙で自民党は大勝した
2005年9月、当選者の名前の上にバラをつける小泉純一郎首相(当時)。郵政選挙で自民党は大勝した
 以上の実態を私は「2割デモクラシー」と名付けているが、この現象は何も今回の選挙のみに当てはまるのではない。自民党が記録的大勝を挙げた2005年の「郵政解散選挙」だろうが、民主党が政権を奪取し「革命」などと持ち上げられた2009年の「政権交代選挙」だろうが、第1党の「絶対得票率」は2割台にとどまっている。