その夜。安倍はある財務官僚を密かに呼び出し、腹案を見せた。
 「どう思う?」。一瞬の静寂が空気を支配する。が、男は、ポーカーフェイスと呼ぶには愛想のない、官僚にありがちな典型的な“秀才顔”で答える。
 「総理大臣の権力を示す、ですか」
 
 安倍もポーカーフェイスで返す。
 「そうだ」
 
 自分が何のために呼ばれたかを理解した財務官僚は無表情を崩さず答える。
 「結構です。省内は私がまとめましょう」

 物腰柔らかで慇懃(いんぎん)だが、言葉の端々に威圧感があり、真の力関係を忘れさせまいとする財務官僚特有の口調だ。だが、小泉内閣以来約15年。安倍がここまでの決断を見せるとは。

 「○○さん。私は、日本を誰にも媚びないで、自分の力で生きていける強い国にしたいんですよ」

 「総理。私も同じ思いです。立場上、私も増税の旗振り役をしていますが、本音ではおかしいと思っている。増税ありきで経済も、国家すらも後回しにする今の財務省は戦前戦中の陸軍と同じです。今、日本は世界史的転換点にいるにもかかわらず」

 「アメリカのトランプ大統領は、直にGDP2%、毎年防衛費5兆円増額を求めてくる。しかし、それくらいなんだ。中国、ロシアはそれ以上に軍拡している。あまつさえ北朝鮮さえ核武装している。自分の国は自分で守る。そんな当たり前のことをやるにも、財源がいる。そのためには経済成長だ。景気回復前に増税しては、成長はない」

 「おっしゃる通り」

 「この日銀人事、そして景気回復は一里塚だ」

 「ご協力いたしましょう」

 この財務官僚は、机に顔を伏しながら考えていた。安倍腹案が世に出れば、日銀はひっくり返るだろう。この案が通れば、財務官僚の何人かは責任を取らされる。血の雨が降るだろう。

閣議に臨む安倍晋三首相(中央)=2017年11月21日、首相官邸(斎藤良雄撮影)
閣議に臨む安倍晋三首相(中央)
=2017年11月21日、首相官邸(斎藤良雄撮影)
 しかし、日本が大国に戻る。大日本帝国復活。その大義の前に、その程度の犠牲など物の数ではない。別に、物理的に死ぬわけでもない。逆に安倍首相の政治力が弱ければ、政権即死につながりかねない。それならそれでそれも運命か。

 憲法改正も政治日程に入ってくる。
 果たして、生き残るのはどちらか…。

 小説風初夢は以上。新春だ。どうせ夢を見るなら、これくらいでいかがか。今年の重要な政治日程は、3月の日銀人事、9月の自民党総裁選、11月のアメリカ中間選挙だ。今後も安倍政権が続くのか、景気はどうなるのか。憲法改正など、その先の話だ。しかし、日銀人事に勝てば、戦後レジーム脱却は見えてくる。
 
 安倍内閣が続くことがよいのか。ただ続くだけならば意味がない。何かをなして初めて政権の意味がある。

 大日本帝国復活。強兵の前に、富国がある。
 果たして、未来への意思やいかに。