重村智計(早稲田大名誉教授)

 国連安全保障理事会は12月22日、北朝鮮の石油製品輸入を年50万バレル(約7万トン)に削減する制裁を可決した。制裁案をまとめた米国は、朝鮮人民軍の崩壊を意図している。それを知りながら中露両国は同意した。2018年の朝鮮半島は、軍事衝突からクーデターなどの危機が高まる。その回避には日朝首脳会談の実現しかない。

 北朝鮮の石油製品輸入量は16年が約70万トンだった。大半は戦闘機用のジェット燃料(灯油)や戦車用の軽油だ。それが7万トンに削減されれば、軍は演習や作戦を展開できない。戦争しない自衛隊でさえ、年150万トンの石油を消費することを考えれば、あまりにも少ない。
2017年12月22日、北朝鮮に対する制裁決議を採択した国連安保理の会合で、制裁に賛成の挙手をする米国のヘイリー国連大使(手前右、AP=共同)
2017年12月22日、北朝鮮に対する制裁決議を採択した国連安保理の会合で、制裁に賛成の挙手をする米国のヘイリー国連大使(手前右、AP=共同)
 輸入原油は約50万トンだが、中国の大慶油田から出る質の悪い原油なので、軍事用の軽質油は最大25万トンしか生産できない。輸入製品と合わせた30万トンの軍用石油では、朝鮮人民軍は維持できない。戦車は動かず、戦闘機も飛べず、やがて軍は戦闘能力を失う。軍の崩壊は体制崩壊につながる。

 北朝鮮は、なおミサイル発射と核実験をする計画だが、制裁で石油供給が底をつけば朝鮮人民軍は崩壊へ向かう。安保理決議は、北朝鮮がミサイル発射や核実験をすれば、原油を含む「petroleum(石油)」をさらに削減するとの制裁を明記したからだ。

 では、次に何が起きるのか。可能性が四つある。「北朝鮮の譲歩」「クーデター」「北朝鮮の暴発」「米軍の核施設限定攻撃」である。

 金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が、国連安保理制裁の圧力に屈し、核やミサイルの実験を止めて譲歩する可能性はまずない。石油の供給が激減すれば、「このままでわが国は大丈夫か」との思いが軍内部に広がる。中国は北朝鮮軍部のクーデターや米軍の核施設攻撃などに備え、難民受け入れ施設を建設している、と報じられた。