木崎伸也(スポーツライター)

 ここ3大会、サッカーワールドカップ(W杯)を開幕から決勝まで取材して気づいたことがある。それはW杯のグループステージのレベルは意外に高くない、ということだ。

 決して選手のレベルが低いという意味ではない。チームをオーガナイズする各国の協会のレベルに差があるのだ。

 W杯というのは、異国の地で、長期間(準備期間を入れたら少なくとも1カ月間)、大人数(選手23人+スタッフ十数人)が動く、チーム運営の戦いでもある。

 合宿地の環境・食事・勝利給・移動・メディア対応など、いたるところでマネジメントの腕が試される。W杯の戦い方のノウハウを持つ強豪国以外にとっては未知の部分が多く、予想外のトラブルが起こりやすい。

 たとえば2014年ブラジルW杯の時、ガーナ代表チームでは、選手と協会幹部がつかみ合いのけんかをしたり、監督に暴言を吐いたりして、大会中に2人の選手が追放になった。大会前からボーナスの未払いでもめており、火種がくすぶっていた。

 いくらいい選手がいても、運営がずさんだと力を発揮できない。特にヨーロッパのトップクラブでプレーする選手は、環境が悪いと不満をつのらせやすい。W杯で100%の力を出せる国はまれなのだ。

 そういう意味で、今回、日本にはチャンスがある。

 実は2014年ブラジルW杯で、日本は運営面で致命的なミスをした。それはキャンプ地選び。試合会場が暑い場所にもかかわらず、気温が低いイトゥを大会中のベースキャンプ地としてしまったのだ。

 抽選前にすでにイトゥを選んでいたのだが、それは言い訳にならない。なぜならドイツも当初はイトゥを選んでいたが、抽選で試合会場が暑い場所になったことを受け、急遽(きゅうきょ)気温が高い他の都市(カンポバイア)に変更したからだ。

 日本の選手たちはイトゥと試合会場の気温差に苦しみ、体のキレを欠き、4年間積み上げてきた組織プレーを発揮できなかった。
サッカーブラジルW杯2014、1次リーグ、日本代表対コロンビア代表。岡崎慎司(中央手前)が倒され怒る日本のアルベルト・ザッケローニ監督(同奥)。左奥はGK権田修一、右奥は酒井高徳=現地時間2014年6月24日、クイアバ(撮影・吉澤良太)
サッカーブラジルW杯2014、1次リーグ、日本代表対コロンビア代表。岡崎慎司(中央手前)が倒され怒る日本のアルベルト・ザッケローニ監督(同奥)=現地時間2014年6月24日、クイアバ(撮影・吉澤良太)
 代償は大きかったが、その失敗が日本サッカー協会の財産になっている。2018年ロシアW杯の抽選会後、日本はカザンをキャンプ地に選んだと発表した。モスクワから800キロに位置し、日本が試合を行う3都市への距離感もいい。

 率直に言えば、チームの完成度という点で、ハリルジャパンはザックジャパンに大きく劣る。