長谷川豊(フリーアナウンサー)
フジテレビ出身のフリーアナウンサー。取材した現場数は1700以上。伝えたニュースは2500を超える。同番組が2012年まで続けた連続視聴率1位の中心人物の一人。趣味と公言する競馬ではG1レースの実況も担当。ニューヨーク赴任当時につづったブログは大人気となり、退社後に始めたその続編のブログは1か月間で400万人の来訪、2700万PVを記録した。退社後はアナウンサーだけではなく、講演・執筆など、多方面で活躍中。現在、TOKYO MX(デジタル9チャンネル)の「バラいろダンディ」(月~金夜9:00~)でメインキャスターを務める他、「キリウリ$アイドル」などのバラエティーの司会も務める。


 公的な裁判になった以上、明日から始まる審議に関しては最低レベルのネットニュースにはなるでしょう。そして、それは拡散されるでしょう。蓋なんてそんなに簡単には出来ないはずです。何より、労使関係にまつわる裁判としても、ジャーナリスティックな観点からも、今回の裁判は少なからず「興味をそそられる」裁判であることは間違いないからです。

 前回のブログに対して、大きな反響がありました。何件かの取材も受けました。

 公判は明日から始まります。日テレさんはこのまま裁判に突き進むようです。残念な対応と言わざるを得ません。その判断は「みんなが不幸になる」最悪の選択肢だからです。

1、まず、この女子学生さんですが、当然、心無い人たちからのバッシングを受けるでしょう。まだ現役の学生さんがそんなバッシングを受けるのはとても辛いものだと思います。彼女の心境を思うと心が痛みます。

2、そして、今回のケースでは彼女と同様に苦しんでいる人がいることを忘れてはいけません。恐らく、彼女に対し、銀座で働くご友人を紹介したお母様、多分、相当に苦しいお立場だと想像します。僕にも子供が3人おりますが、自分が紹介した、何気なく言った一言によって、この女子大学生さんは「人生を崩され」た形になりました。お母様の責任では全くないにもかかわらず、きっとお母様は心を痛めていることでしょう。同じ親として、気持ちが分かります。自分の行動によって、子供が苦しむ、というのは親として一番つらいものです。ひょっとしたら、何度も泣いておられるかもしれない。どうか心を強く持って頂きたいと、そう願います。

3、しかし、今回、最もダメージを受けるのは恐らく、日テレさん本体です。
僕はフジテレビ出身です。テレビという業界がどれほど「ふわっとしたイメージ」で大きく左右されるかを痛いほど良く知っています。フジテレビが巻き込まれたライブドアの買収騒動、そして、2011年の韓流騒動…。
それまでと同じようにしているだけなのに、フジテレビの視聴率はボディーブローを受けているようにジワジワ下がっていきました。

 なんか、冷たい感じ~
 学生さん、イジメてるみたい~
 ホステスさん、見下してるらしいよ~

 そんなことあろうがなかろうが、イメージというものが持つ力は絶大です。少なくとも今回は「公的な司法の場」に判断が委ねられました。日テレさんの上層部は懇意にしているメディアなどに「後追い取材はしないように」とお願いをすることでしょう。そして、いわゆる「古いメディア」=スポーツ紙や芸能マスコミはそこまでの後追いをしない可能性はあります。

 しかし、もうそんな時代じゃない。

 みんなが興味があれば、ネット上の記事があっという間に拡散されてしまいます。FacebookとTwitterがある以上、一部のメディアや芸能界に力のある人間が、好き放題に情報を操作できるような時代じゃあ、もうないんです。

 しかし、今回の一件に対するご意見の中で、日テレさんが今回の女子大学生さんに対して一方的に内定取り消しを突きつけた理由のうちの一つである…
「女性アナウンサーには極めて高度な清廉さが求められる」
という言葉に対するネット上の反応の一部に…

 「女子アナなんてキャバクラ嬢みたいなもんだろ!」
 「視聴者は女子アナに対して清廉さなんて求めていませんが?」
 「はぁ?今さら何言ってんの?朝から超ミニスカートはいた女子アナを売り物にしてる局がよく言うわ!」

 というものがあるのですが、これに対しては…僕は日テレさんの言ってる事が正しいと断言します。

 アナウンサーにはもともと、極めて高度な「清廉性」だけではなく、「信頼性」であり、「専門性」が求められます。テレビに出るという事はそういう事です。これは今、テレビに出ているキャピキャピした女性アナが間違っているだけで、本来、日テレさんの言っていることが正しいのです。

 僕自身、ありもしない事をでっち上げられ、名誉を傷つけられた時、迷うことなく、会社を辞めました。覚えている方もいない方も、僕は「会社のお金を取った」という完全なでっち上げをされたのです。

 僕は事実でない以上、何故事実でないのか?そこにいったい何があったのか?お金を取ろうどころか、最初からお金を返そうとしていた事実を示す、僕個人のプライベートなメールまで全てを公開し、説明責任を果たそうとしました。
それにより、僕はフジテレビ社員という立場を失い、生涯年収を失い、家族も不安にさせたました。でも、これはアナウンサーとしては当然の選択なのです。

 テレビ局は絶大な力を持ちます。

 その先頭に立って、悪に対峙するアナウンサーという立場は、逆に自身のすべてを見られても恥ずかしくない生き方をしなければいけないのです。アナウンサーたちはテレビでは伝わらないでしょうが、みんなびっくりするくらい誠実に真面目に生活を送っているのです。

 ごく一部のフジテレビのバカ者の暴走によって、僕の家族は傷つけられましたが、それ以上に僕が怒ったのは、
「アナウンサーが横領したんだ」
という、アナウンサー全体に対するあまりにもバカにしたその感覚に激怒したのです。

 全てのアナウンサーの名誉のために言っておきますが、アナウンサーは皆さんが思っているよりもずっとずっと地味に、そして真面目に生活をしています。演出の関係で、おバカっぽくしゃべらされますし、ぶりっ子を演じさせられる女の子などもいるでしょうが、懸命に演出してくれるスタッフに恩返ししたいから頑張っているだけで、大多数のアナウンサーは、裏ではかなり地味で、パッとしない生活をしているものなのです。僕にかけられた疑惑は、そんな懸命に…局に対して恩返しするために働いている、アナウンサー全体を馬鹿にするような疑惑だったので、その全てを説明させて頂いただけです。

・お金の流用など、絶対にしていない事
・懲罰委員会には、呼ばれもしなかった事
・僕を処分する懲罰委員会の開催は、フジテレビ労働組合にすら隠蔽され、一部の人間のみで極秘裏に行われたこと
・その懲罰委員会で、僕の提出した書類や主張はすべてもみ消されたこと
・週刊誌や2ちゃんねる上に、現役フジテレビの社員が「長谷川は横領犯」という話を流し、書き込んでいたこと

 など、全て事実を書かせていただきました。

 ネット上を見てください。ここまで来て、いまだに僕を懸命に「横領犯だ」とイメージ操作しようとしている人間がいるでしょう?皆さんも見たことあるはずです。「こいつ、横領したのに何言ってんだか?」とわざわざ書き込んでいるハナクソのような連中がいますね?そのクズどもの大体の素性は、すでに分かっています。くだらないのでほったらかしにしていますが、度を越した場合、即時に法的措置に出る準備も出来ています。僕はそこまでの覚悟で戦っています。

 記者会見などでは、取材に来てもらえなかったら説明できずに終わりです。
なので、世界中の人が、見たい時に、見たい場所から自由にアクセスできるように、僕はブログという公開の場を使って説明させていただきました。今まで、取材も100件以上受けていますが、その一つたりとも、お断りしてきていません。取材依頼があった場合、どんな媒体に対しても受けてまいりました。これからもその姿勢は継続していくつもりです。

 話がすっかりそれましたが、アナウンサーとは、それくらいの思いと共にテレビに向かっている職業です。なので、「極めて高度な清廉性が求められる」と日テレさんが言ったことに関しては全く間違いではありません。それが正しいのです。だって、「ニュースを読む」職業なのですから。

 しかし、問題はその後であって、お母様のご友人の頼みを断れず、この女子大学生は数日だけ、銀座のクラブで働くわけですが、その彼女に対して「経歴の『傷ついた』あなたが…」
と人事部の人間が発言し、また、内定取り消しの通知の中でも、「銀座で働くこと」を「清廉さに欠ける」と受け止めざるを得ない内容を突きつけている、という点は、間違いなく「合法」で働いているすべての銀座だけでなく、ホステスとして働く女性に対する蔑視的視点であり、これは社会通念上、許されないものです。

 大事にならなければいいと心配していますが、これは最悪、銀座で働く多くの女性たちからの大規模なクレームに発展する可能性すらある発言と言わざるを得ません。

 いやいや、そうは言っても、そういうクレームを言ってくる人がいる

 それ分かります。そんなクレームも確かに来そうです。銀座で働く女性に対して、差別的視点を持っている人がいることは事実です。でも、そういう人は貧しい考え方の人なだけであって、日テレさんは公共の電波を司るキーステーションなのです。そこに迎合してしまうと、その「差別的視点」を「日本テレビとして受け入れた」と受け止められてしまうのです。これはまずいです。

 今回の件を受けて、現役の日テレ社員に連絡を取りました。彼は「クレームは本当に多く、辟易としている上層部の気持ちはよく理解できる」としながらも次のように語ってくれました。

 「女子大学生に対して、内定の『辞退』をお願いした、までは理解できる。例えば報道局で働き始めた後になって、なんらかの写真が出てきてしまっては、その対応に全社員が追われる。リスクマネジメントの観点からはそこまでは間違っていないと思う。だが、『強制的に内定を取り消した』所まで行くと、これは行き過ぎ。週刊現代の記事通りの内容である場合、とても勝てるとは思えない裁判であり、どうしてそこまでエキセントリックになったか理解しかねる。自分の周りでも、『この女、本当はAVに出ていたんだろ』という意見がほとんど。そう思わないと、このままでは負けるとみんな分かってる。上層部への批判と責任問題は免れないのではないか?」

 日本テレビさんにとってはきっと、将棋の駒を動かすように、「たった一人の内定を紙一枚で取り消した」だけの行為なのだろうと思うんですが、彼女にとっては人生の全てが狂ってしまったほどの大変なこと。どうかその重みを分かってあげて欲しいと思います。

 このまま、なんとか上手く手を取り合えば、来年の入社の時に爆笑問題の太田さんにでもいじってもらえれば、笑いにつなげられるし、何より話題にもなる。そうすれば、みんなが幸せになるはずです。

 来年の4月、どうかこのお嬢さんが笑って汐留にいてくれることを心から願ってやみません。(長谷川豊公式ブログ『本気論 本音論』(http://blog.livedoor.jp/hasegawa_yutaka/より転載 2014年11月13日)