田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 著名な経済評論家の三橋貴明氏が逮捕されたニュースは、経済など時事問題に関心の強い層を中心に大きな驚きを与えた。筆者が最初に目にした朝日新聞の報道によると、10代の妻を口論の末に「自宅で転倒させて腕にかみついたり、顔を平手で殴ったりして約1週間のけがを負わせた」とある。いわゆる家庭内暴力(ドメスティック・バイオレンス)に該当する事象での逮捕だろう。他の報道では、去年2回にわたり、妻への暴力をやめるように警察から警告を受けていたという。

 これらの報道の信憑(しんぴょう)性を含めて、今後この事件がどうなるのか推移を見ていかなくてはいけない。釈放された三橋氏本人のブログでは、彼の視点による「事実」の説明とおわびの言葉が書かれている。ブログには「最後に、妻がかなりきつい言葉を私にぶつけ、一瞬、カッとなった私は、妻の左ほほを平手打ちしてしまいました」とあるので、暴力があったことは少なくとも明白だろう。

 三橋氏の釈放を受けた報道には「裁判所が身柄の拘束を認めなかったため、三橋さんは8日午後、釈放された。三橋さんは警視庁の調べ容疑を否認していたということで、今後は、在宅のまま捜査が続けられる」(日本テレビ系 NNN)とある。報道が正しければ、捜査は継続中のため予断を許さない。
経済評論家の三橋貴明氏=2014年4月(宮崎裕士撮影)
経済評論家の三橋貴明氏=2014年4月(宮崎裕士撮影)
 三橋氏とは今まで何度か討論番組で同席し、またラジオでは日にちが違うが同じ番組のコメンテーターを務めるなど、面識がある。三橋氏の人柄について個人的な感想は特に今はない。彼が主張する経済論には、今までも厳しい批判の姿勢を持っていた。ただ、そのことと今回の事件は特に関連するものではない。

 ネットではさまざまな「陰謀論」めいた話が交錯しているが、なんの根拠もない、身びいきあるいはその反対の悪意に満ちたものがあるだけで読む価値はない。以下は今回の事件を契機にして、日本の家庭内暴力について、経済学者としての視点を中心に簡単な考察を試みることにした。