また、「ニュースウォッチ9」では「上司が帰らないと、部下は帰れないから」と言って、チーフプロデューサーたちは業務が終わればなるべく引き上げるようにしていましたし、「揚げ足をとるような無駄な反省会はなくそう」と時間を決めて、短時間で集中して前向きな提案が出るような会議に再編していったりと意識改革を進めていました。局内ではうつの問題など、メンタルヘルスを維持するための研修が定期的に施されていましたし、カウンセリングが受けられる医務室の利用も誰からも揶揄(やゆ)されることなく通うことができる空気もありました。実際に心を病んでしまう同僚や先輩も周囲にいました。どうしたら支えられるのか、ということを職場内で話し合うことも何度か経験しています。

画像は本文と関係ありません(画像:istock)
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 でも、問題がなかった訳ではありません。NHKの各地域局は限られた人員で独立して動いているのである意味閉鎖的な側面も併せ持っています。たまたま赴任した上司が能力に問題があり、適切な管理が行えずパワハラやセクハラなどが起きてしまうケースもありました。人事異動の季節は誰がここの管理職として赴任するのか、というのは現場の職員にとって最大の関心事の一つといっても過言ではありません。

 いい人が来るのか、それともおかしな人が来るのか、結果によっては暗澹(あんたん)たる気持ちになることも在職12年の間でなかった訳ではありません。過度なストレスが原因なのか、それとも指導のつもりで声を荒らげてしまい、それがまた自分を追い込んでいくケースだってあります。私自身、後輩に対してきつい言葉を投げかけてしまったこともありますし、逆に信じられないようなきつい𠮟責(しっせき)を受けたこともあります。

 知らず知らずのうちに、過重労働が当たり前という風土を醸成させていったのは他ならぬ私のような職員の立ち居振る舞いかもしれません。使命を持って取り組んでいたはずなのに、いつしかそれが人を死に追いやるような職場環境をつくってしまっていた、そう思うと言葉を失います。

 それだけに、未和さんが若くして命を失ってしまった原因が一体何だったのか、その原因を徹底的に調査し、そして職員に周知し、局内全体でエラーを正していく必要があるのは間違いありません。常に番組単位で動いてきた私と違って、1人で責任を負う色が強い記者職の現場が特に心配です。未和さんのお父さまが会見で託したメッセージを真摯に受け止めなくては公共放送に未来はありません。どこまでNHK側がやり切るのか、しっかり見守る必要があります。