田口一博(新潟県立大国際地域学部准教授)

 このところ、議員の年金制度がさまざまな形で議論されている。しかし、「議員」も「年金」も多様であるから、議員年金の一般論というのは成り立ちそうもないのに、かくあるべし、という主張もなされているようである。本稿では議員と年金との原点を確認した上で、どのように議論していくべきかを提示したい。

 議員とはいかなる「職」なのか。議論の入り口なのに、一番混乱しているのはここであろう。国会議員も議員なら、地方議員も議員である。これまでの経過をみると、地方議会側は、議員活動は国会も地方も同じなのだから、処遇は国会に近づけるべきであると主張している。他方、国会側は国会議員と地方議員を峻別(しゅんべつ)しようとしており、その溝は埋まらない。

 最大の区別は、議員活動に対する対価が日本国憲法49条で規定される「歳費」(国会議員)であるか、地方自治法203条で定められた「議員報酬」(地方議員)なのかである。国会議員の歳費という言葉は大日本帝国憲法にはないが、同時に施行された議院法19条に見える。歳費とは単に「年俸」を意味するのみならず、通年の活動すべてが支給対象であると解されている。
和歌山県岩出市の旧和歌山県会議事堂
和歌山県岩出市の旧和歌山県会議事堂
 他方、議員報酬という言葉は実務的には昭和21年の戦後改革によって、地方議員の名誉職制度(有産者である公民が無償で公務に従事する制度)が廃止されて以降に用いられていたが、地方自治法に取り入れられたのは平成20年の改正になってからであり、それまでは行政委員会の委員などと一緒に単に「報酬」とされていたものである。この改正は、全国都道府県議会議長会から、地方議員の報酬を歳費または地方歳費と改めることによって、地方議員も国会議員同様、その活動は常に議員としてであり、活動のすべてが歳費として対価の支給対象とされるべきとの要望に基づくものであった。