私は『憲法の涙』(毎日新聞出版、2016年)、『ザ・議論!リベラル対保守究極対決』(小林よしのりとの共著、毎日新聞出版、2016年)、『憲法の裏側 明日の日本は……』(香山リカとの共著、ぷねうま舎、2017年)など、一般市民に向けた一連の著書や、テレビ討論で、このような護憲派の愚民観を、これまで繰り返し批判してきた。
『リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください 井上達夫の法哲学入門』の著者で東大大学院法学政治学研究科教授の井上達夫氏=2015年8月4日(磨井慎吾撮影)
東京大学大学院法学政治学研究科教授の井上達夫氏
 最近の一例を挙げよう。昨年6月13日のBSフジ「プライムニュース」で私と議論した、代表的な護憲派憲法学者の1人である石川健治(東大教授)は、私に対し、「でも、9条をなくしたら、日本は軍国主義に戻ります。そうしたら、表現の自由、政治的言論の自由も弾圧される。井上さんは好き勝手な言論ができてるけど、それは憲法9条があるおかげですよ」という趣旨のことを述べたが、これに対し、私は最近著で次のようにコメントしている。


9条が何かしら重しになって、魑魅魍魎を、悪魔、デーモンを抑えつけている、と。そのデーモンとは何者か。もし、デーモンが出てくるとしたら、日本は民主国家なのだから、それは軍国主義に狂い暴走する国民自身でしょう。しかし、いまの日本国民が9条変えたら狂うはずだなどという愚民観を偉そうに説く石川は何様のつもりなのか。国民に憲法価値を発展させる能力などないから、「賢明なる憲法学者」のご託宣に従えという彼は、プラトン的哲人王でも気取っているのか。彼は国民を責任ある政冶主体としては認めていない。(前掲『憲法の裏側』164頁)


 護憲派学者が愚民観をもつという私の主張を「元旦朝生」で村本が理解できたかどうかは分からない。しかし、この番組の中で、結果的に彼が、護憲派学者が喜びそうな愚民観を吐露したことは事実である。これに関し、2点、触れておこう。

 第1に、村本が「自衛隊がなんで違憲なんですか」と質問したのに対し、私が「君は憲法9条2項を読んだことがあるのか」と聞くと、「ありません」と答えたので、私が「自分の無知を恥じなさい」と言った。これに対し、村本は、自分は普通の庶民の声を代弁しているのだとし、自分への批判をかわそうとした。これは実に卑劣な論点回避であるだけでなく、彼が庶民を愚民視していることを暴露するものである。