本来ならこんな13条代用論には護憲派から激しい批判が出てきて当然だが、新手の論法として黙認ないし是認されている。9条を変えないという結論さえ保持できれば、従来の護憲派が欺瞞的にせよ維持しようとしてきた「封印」ですら破っても、お構いなしなのである。護憲派が実は憲法破壊勢力だということの、これほど歴然とした証拠はない。

 問題は護憲派だけではない。北朝鮮の核ミサイル問題がこれほど緊迫しているのに、安倍首相は、9条2項を残したまま3項で自衛隊を認知するという実に中途半端な安倍改憲案を提示した。2項が生きるということは、3項で承認された自衛隊は2項が禁止する戦力ではなく、2項が禁止する交戦権の行使もできないという現在の欺瞞と矛盾がそのまま残されるということである。日本も軍事衝突にいつ巻き込まれるかもしれない状況下で、こんなのんきな改憲案を首相が示唆する安倍政権は、護憲派と同様、平和ボケに陥っている。その根底には、「大丈夫、一朝事があれば、アメリカが日本を守ってくれる」という米国に対する幼児的願望思考がある。

自民党新年仕事始めで挨拶する安倍晋三首相=2018年1月5日午前、東京・永田町の自民党本部(斎藤良雄撮影)
自民党新年仕事始めで挨拶する安倍晋三首相
=2018年1月5日、東京(斎藤良雄撮影)
 護憲派は、いかに死文化されようと9条があれば日本は守られると信じ、安倍政権とその支持者たちは、トランプのような危険で不安定な大統領を抱えていても米国に追従していれば日本は守られると信じている。

 私は日本国民に言いたい。左右の政治家・知識人・運動家・ジャーナリスト・タレントたちのこんな嘘に従うのはもうやめよう。9条も米国も、日本と世界の平和を守れない。こんな幻想の保護膜から抜け出て、憲法と安全保障の問題を国民一人一人が自分たちの頭で考え、自分たちの手で立憲民主主義を発展させない限り、日本は自己を守ることも、世界秩序構築において主体的役割を果たすこともできない。国民を愚民視するエリートを信じてはいけない。しかしまた、己の無知に開き直らず、自己を批判し啓発する他者との議論から学び続けよう。そして憲法と現実の矛盾をいかに解決するか、その判断の権限だけでなく責任も国民自身にあることを自覚しよう。(文中敬称略)