民主党代表選の結果が出た。岡田新代表の誕生は、本来であれば、野党第一党の党首として次に総理となるかもしれないリーダーを決めるという緊張感に包まれていなければならない。民主党の現有議席数の現実を考えると、実際には、そのようなことを言っても始まらないのだが、それでも、野党再編をにらんで日本の政治の未来に少なからぬ影響を持つであろうことは間違いない。改めて、民主党代表選の意義を振り返りたい。

 民主党の存在意義は、まず第一に、日本の有権者の2~3割を占める、リベラルな価値観を信奉する有権者の受け皿としてのそれであろう。いわゆるリベラル系の政党には、共産党も社民党もあるのだが、特に組合票の受け皿として、民主党がこの層の支持を集める中心的存在であり続ける可能性は高い。だが、小選挙区という制度の特性や、一票の格差の問題を考え合わせると、リベラル票/組合票の支持に基づく獲得可能議席はせいぜい衆議院で100議席前後である。その意味で、民主党の衆議院での73議席は、野党の分裂によって自民党を利している部分があり、実力以下の議席であると考えていい。

民主党代表選は決選投票にもつれ込んだ=1月18日午後、東京・紀尾井町のホテル(酒巻俊介撮影)
 しかし、それは民主党がリベラル票と組合票を代表する存在である限り、民主主義の数の現実においてはそれ以上の存在とはならないということでもある。実際に、2009年の政権交代選挙において300議席を獲得した民主党も、それまでは、せいぜい130議席前後しか獲得できていなかった。自由党を吸収して保守層に支持を広げてはじめて180前後の議席を獲得できるようになったのである。

 だからこそ、民主党代表選に意味があったわけだ。細野元環境相が掲げた路線は、マイルドな保守層にも支持を広げて本格的な政権交代を実現する路線であったのだと思う。選挙期間中は、民主党内の世論に配慮して、細野氏自身もまずは民主党の再生をということを強調していた。党首選の最中に飛び出して泥仕合となってしまった維新との統合話について、言った言わないのごたごたの真相は不明だが、野党再編についてもより前向きであったと考えていいだろう。

 仮に、この路線が勝利していたならば、リベラルから保守までを包含した旗印を掲げる必要が出てくるので、政策的には、民主党が従来から有している難しさを抱え込むことになったはずだ。今後も、野党再編の火はくすぶり続けるであろうが、その一番の難しさは統一的な意思決定の下に行動できる集団を作れるかであろう。

 岡田代表の選出で、野党再編の可能性は遠のいたと考えていいのだが、仮に民主と維新が統合するような場合を考えるとすれば、ポイントは自民党との違いを出すためにどのような政策に焦点を当てるかだ。民主党は地方分権に近い地方分散というようなことも言っているわけだから、部分的には、維新と協力できる可能性はある。統治機構の改革は、大阪における展開を見ても、確かに自民党と大きな違いが出せる可能性がある領域である。

 国家観や外交・安全保障についてはどうしても相容れないだろうから、経済政策の部分で、何とか折り合いをつけ、自民党との違いを出すしかない。この点、細野氏は、自民党の経済政策をトリクルダウン経済だとした上で、ボトムアップ経済を主張していた。残念ながら、細野氏が掲げる政策は、すべて分配に関わる点であり、マクロ経済の視点も、グローバル競争の現実を踏まえていなかった。今後、マイルドな保守層を取り込みたいのであれば、日本経済の競争力について語らねばならないし、マクロ経済について語らねばならない。そもそも、政権交代を現実の視野に入れる政党が分配政策以外の経済政策を持たない状況は異常であるという認識から始めねばなるまい。

 対して、民主党の議員やサポーターが選択した岡田路線とは、簡単に言えば、民主党をリベラル票と組合票の受け皿として本来の実力を発揮できるところまで再生しようということである。政策的には多少すっきりするであろうが、仮に、自民党に敵失があったとしてもせいぜい150議席程度を目指すという路線である。

 であるからには、連立政権を想定しない限りはかつての社会党のような批判勢力、牽制勢力としての意味しか持ち得ないわけだ。岡田路線で、再び単独の政権交代を目指すことには殆どリアリティーがないが、この現実を受け入れて、連立戦略をとり、政権の一角を占める存在として存在感を発揮するという道は、実はなかなか面白い。

 維新と連立する場合、維新が掲げる踏み込んだ地方分権や規制改革を飲み込んだ上で、社会保障などの分野でリベラル色の強い政策を実現することになるだろう。維新と連立を組む緊張感によって、官の無駄を省くという政策にも成果が期待できるかもしれない。

 反対に、自民党と大連立することで、社会保障や税制の改革から党派性を取り除き、この国に不可欠な、しかし、政治的にはなんとも難しい改革を前に進めることも可能かもしれない。寄り合い所帯の不決断が民主党の悪しき伝統なので、実現可能性は低いかもしれないが、日本政治において再び意味のある存在となるチャンスはある。

 思えば、日本的経営の躍進を支えた企業別組合は、正社員の保護に過剰にこだわって弱体化したけれど、資本主義経済の競争的側面に盲目ではなかった。だからこそ、日本企業はグローバルな競争力と、従業員の一定の福祉や平等をバランスしてこられたわけである。民主党が、リベラル票、組合票の価値観にこだわりつつも、それでも、社会の中で前向きな存在となるためには、現実的な経済政策を掲げることは必須である。新代表には、まず、その点に取り組んで頂きたい。