岸本周平(衆議院議員)
 1956年和歌山県生まれ。80年東京大学法学部卒。大蔵省入省。主税局、主計局等を経て、96年よりプリンストン大学東洋学部客員講師。帰国後、経産省文化情報関連産業課長、財務省理財局国庫課長等を経て2004年退官。トヨタ自動車渉外部長就任。09年衆院選で和歌山1区から出馬、初当選。現在3期目。野田内閣では内閣府政務官、経産政務官を務めた。著書に『中年英語組』(集英社新書)共著に『日本の東アジア構想』(慶大出版会)など。

党再生最後のチャンス


 民主党の代表選挙が行われ、接戦の末、岡田克也候補が選ばれました。与党時代に国民の期待を裏切り、完全に愛想を尽かされた民主党にとっては、岡田代表の下で、党再生の最後のチャンスにかけることになります。

細野豪志元幹事長(左)と長妻昭元厚生労働相(右)に握手を求める岡田克也代表=1月18日午後、東京・紀尾井町(酒巻俊介撮影)
 おそらく、安倍政権は来年夏に衆参同日選挙をしかけてくるでしょうから、その間、党の理念を再確認し、党組織の足腰を鍛え直していくには時間の余裕がありません。岡田代表には、選挙を闘った細野豪志、長妻昭両氏を執行部に加えていただき、女性や若手の登用も含めて、早急に民主党を立て直す体制の構築をお願いしたい。党改革の基本は、昨年の「改革創生会議」の報告書に集大成されています。実行あるのみです。

 党の理念は、2013年に改訂された綱領にあるように、「一人一人がかけがえのない個人として尊重され、多様性を認めつつ互いに支え合い、すべての人に居場所と出番がある、強くてしなやかな共に生きる社会をつくる。」そして、「正義と公正を貫き、生涯を通じて十分な学びの機会を確保」し、「男女共同参画を実現し、不公正な格差の是正」をし、「個人の自立を尊重しつつ、同時に弱い立場に置かれた人々とともに歩む。」ことです。

 このような理念はヨーロッパでは社会民主主義、アメリカではリベラルの立場と理解されますが、日本では言葉の定義が判然としないので、一言ではうまく表現できません。今回の代表選挙でも、リベラルだ、保守だとの言葉も出ましたが、定義がうやむやで、党員・サポーターの心をつかむことができませんでした。

 集団的自衛権の解釈変更の問題に関しても、代表選を通じて議論は深まりませんでした。今の国連憲章の下で、集団的自衛権とは、個別的自衛権を行使して戦っている国を助けるための実力行使の権利です。日本国憲法は個別的自衛権を禁じていないので、自衛隊は憲法9条第二項の「戦力」に当たりませんが、集団的自衛権が行使できるとなると他の国の軍隊との差がなくなります。そうなると憲法9条第二項の平和主義の独自性は意味がなくなります。ですから、自民党の歴代内閣は集団的自衛権を認めるためには憲法改正が必要だとしてきました。安倍政権が言うように「我が国を取り巻く安全保障が根本的に変化したから」、最高法規である憲法の解釈を変えるということは、立憲主義の否定そのものです。また、「限定的な」集団的自衛権という考え方は成り立つ余地はなく、正々堂々と憲法9条を改正すべきです。

 安全保障に関して、タカ派だ、ハト派だというレッテル貼りも不毛です。以上のような冷静な議論を具体的に積み重ねて行きながら、民主党の理念を世に問うべきです。

 しかし、選挙戦を念頭におけば、一言で党の理念を表す必要もあります。その意味で、英国の政治家エドマンド・バークが言う人間の不完全性を前提においた謙虚で寛容な保守主義と、価値観の多様性を認めるリベラルの共通性に着目した「リベラル保守主義」という言葉(中島岳志・北大准教授)に、私は共感を覚えます。結党時の綱領『私たちの基本理念』には「民主中道」という言葉が使われていました。党内議論を尽くして、理念を体現する標語をつくる必要性を痛感します。

 また、経済政策では、経済構造が大きく変化しているにもかかわらず、政治家も官僚もこれまでの成功体験に基づく既存の政策から脱却できないでいます。アベノミクスがその最たるものです。労働力人口が減り、家計の貯蓄率も昨年末にマイナスに転じ、国富の増加が止まり純投資もマイナスの経済に対しては、まったく発想の転換が必要なのではないでしょうか。

 民主党政権の時代も、旧来の発想の経済政策を行っていました。もはや、ターゲテイングポリシーや政府の過剰な介入により経済を無理やり成長させることはできなくなっています。必要なことは、労働者一人当たりの生産性を高めることです。教育や職業訓練に資源を集中することで、格差の是正をも図りながら、時間をかけて国民一人当たりのGDPを増やしていくことを目指すべきです。

 一方で、財政危機は今、目の前に有る危機です。増税だけでは、財政再建はできません。毎年1兆円を超えて増加する社会保障予算をスリムにするため、国民に痛みをお願いする社会保障改革を早急に提案、実現する必要があります。そこは、今の自公政権との大きな違いが出せる分野です。

 政治改革によって小選挙区制度が導入できたのは、二大政党制による緊張感のある政治を国民が求めたからです。上記のような民主党の理念と政策を早急にとりまとめ、野党再編の受け皿をつくることが岡田新執行部のミッションだと考えます。政党同士の合併かどうかは別にして、来夏の衆参同日選挙を戦うには、野党第1党は衆議院で三桁の議席を確保した上で、全小選挙区に候補者を立てる必要があります。

 2009年、2012年の総選挙共に、野党第1党が100を超える現有勢力で戦い、小選挙区の特性によって過半数の議席を獲得し政権交代を実現しています。民主党が自公政権との差別化に成功し、国民の信頼を回復した上、野党再編の要になることこそ歴史的な使命であると確信します。


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