鈴木知幸(国士舘大客員教授)

 平昌冬季五輪の開会式に、安倍晋三首相は出席すべきであり、国会日程を理由に欠席することにも反対である。

 世界の国家元首に対して、オリンピック開会式への招待状を出すことは、いつから始まったのか不明だが、少なくとも「オリンピック憲章」と昨年公開された「開催都市契約」には、その必要性も否定的見解も記載されていない。

 国際オリンピック委員会(IOC)も、各国の政府代表が、開会式へ出席することや、政治的理由をつけて拒否することについて、評価も批判もしていないのである。開催国の元首が世界の国家元首に招待状を出すのは、主役である開催国が高評価を得るために長年の慣例として行われてきただけである。

 また、オリンピック大会のたびに厚遇が保障されているオリンピックファミリーにも、IOCは国家元首を入れていない。それどころか、オリンピック大会の「開催期間中、政府またはその他の機関の代表、その他の政治家が、大会組織委員会(OCOG)の責任下にある競技会場において演説することは、いかなる種類のものであれ認められない」とオリンピック憲章で禁止されており、政治家の発言さえも封鎖しているのである。にもかかわらず、国家元首のオリンピック開会式出席は、開催国に対する重要な評価の一つになり、その参加人数や拒否理由などが、大会ごとに話題となるなど注目され続けているのである。

 翻(ひるがえ)ってみれば、2008年の北京五輪では、チベット弾圧などの人権問題を批判する欧米諸国が開会式出席のボイコットをちらつかせた。しかし、中国も改善をアピールし、すべての国連加盟国に招待状を送るなど猛烈に巻き返し、結果的に100人以上の各国要人の出席を確保した。これは当時の過去最高人数であり、日本も聖火リレーの混乱を批判しながらも当時の福田康夫首相が出席している。

 2014年のソチ冬季五輪は、ロシアが「同性愛宣伝禁止法」を制定したことに反発した欧米諸国の首脳が多数欠席し、結局出席した国は四十数カ国にとどまった。なお、この時の日本政府は、安倍首相が「北方領土交渉」を進めるためとして出席しており、一部の国から批判を受けている。リオデジャネイロ五輪に至っては、開催国ブラジルのルセフ大統領が弾劾手続きで職務停止中となり政情不安になったことで、世界から批判が殺到し、40人ほどしか参加しないという結果に終わった。
2014年のソチ冬季五輪の開会式に出席した安倍晋三首相(中央)=ロシア・ソチのフィシュト五輪スタジアム (代表撮影)
2014年のソチ冬季五輪の開会式に出席した安倍晋三首相(中央)=ロシア・ソチのフィシュト五輪スタジアム (代表撮影)
 このように、各国が開催国への批判を理由に五輪開会式の出席可否を決定することは、国家間の政治的対立をあおることになり、その応酬が続いている。

 そして、今回の安倍首相の参加可否が注目されている中で、自民党の二階俊博幹事長が「国会と五輪出席は、両方とも大変重要な政治課題」という旨の発言を公然としており、そのことをマスコミも違和感を覚えていないことが、この問題の根深さを物語っている。