「今回の噴火は“序章”にすぎないといえるでしょう。東日本の火山はこれから大規模な活動期に入っていくと考えられます」──高橋学・立命館大学環太平洋文明研究センター教授は1月23日に起きた草津白根山の噴火を受け、そう語った。

 同山付近にある草津国際スキー場で訓練をしていた陸上自衛隊の隊員1人が噴石の直撃を受け死亡、観光客も含め11人が重軽傷を負った(1月25日時点)。噴火に先立ち、監視にあたっていた気象庁で異変は感知されなかった。気象庁担当記者がいう。

「噴火口は従来から警戒監視を高めていた湯釜ではなく、2km南にある鏡池付近で“3000年間は噴火していない”とされてきたエリア。近年では火山性地震が増加した2014年に警戒レベルを1から2に引き上げたものの、昨年6月には1に戻されていた。火山活動が高まったことを示す観測データもなかった」

 地元の草津温泉には安全確認の問い合わせとキャンセルの連絡が相次ぎ、動揺が広がっている。一方、草津温泉観光協会は「規制対象は火口から半径2kmで温泉街は5km以上離れています。噴石なども確認していません」と安全を強調する。だが、火山活動の活発化が近隣の温泉地への客足を鈍らせるのは間違いない。

 2015年6月に小規模な噴火があったとして噴火警戒レベルが3に引き上げられた箱根山。その際に箱根温泉では年間の宿泊客数が約460万人から約360万人へと100万人も減った(2015年)。

(画像:istock)
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 草津温泉は箱根に比べ旅館の経営規模も小さく、打撃はより深刻になる。すでに草津の旅館関係者は「いくら安全だと訴えても、客足は遠のく。リストラもやむをえなくなるだろう」と肩を落としている。

 ただ、これを“風評被害”と断じるのは早計だろう。2014年に起きた御嶽山の噴火では、秋の紅葉シーズンに足を運んだ登山客58人が犠牲となった。2週間前から火山性地震が増加するという“予兆”があったが、警戒レベルが事前に引き上げられることはなかった。

 予知に限界があるのは致し方ないが、観光客が集まる場所・季節だからこそ、「リスクを過小評価してはならない」という教訓が残された。

 だからこそ高橋氏は「警戒レベルが1でもゼロでも、兆候と考えられる動きがあれば広くアナウンスされるべき」との姿勢を取る。

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