巽好幸(神戸大海洋底探査センター長)

 ここ数年、友人たちから「最近火山の噴火が多いよね、大丈夫?」と問われることが多くなった。確かに、2014年の御嶽山噴火では戦後最悪の犠牲者を出し、西之島では溶岩が立派な新島を創った。他にも、阿蘇山、霧島山新燃岳、桜島、口永良部島、浅間山、それにごく小規模ではあったが箱根山でも噴火が確認された。そして2018年になった途端に草津白根山で噴煙が上がり、火山灰とガスが高速で流下する「火砕流」が発生し、6・5センチ以上の火山弾やそれより小さな火山礫(れき、気象庁は両者を区別せず「噴石」と呼ぶが、サイズという重要な情報が欠落している)が落下し、犠牲者が出た。そして今回も御嶽山と同様に「不意打ち」の噴火であった。

 世界一の火山大国、日本の火山監視体制はどうなっているのか。また、日本列島は火山活動期に突入したのか。草津白根山の動向に注目しながら、これらのことを考えてみよう。
本白根山の噴火でスキー場の山頂に取り残された人たちの救助に当たる自衛隊のヘリコプター=2018年1月23日、群馬県草津町
本白根山の噴火でスキー場の山頂に取り残された人たちの救助に当たる自衛隊のヘリコプター=2018年1月23日、群馬県草津町
 噴火や地震の予知とは、これらの現象に先立って起こる「前兆現象」を検知し、噴火や地震の発生場所、発生時期、規模などを明らかにすることだ。現時点で、地震については科学的に確かな前兆現象は認められないために、地震予知は不可能である。したがって、過去の地震活動の履歴に基づいて今後の地震発生の切迫度を示す「確率論的地震発生予測」が行われている。

 一方で火山活動については、火山性地震、山体膨張、火山ガス異常などの噴火前兆現象が認められる場合が多く、予知あるいは予測ができる可能性がある。日本の火山監視を担う気象庁は、国内に111座ある活火山の中で特に活動が活発な50を常時観測火山に指定して24時間体制でこれらを監視している。

 気象庁の業務を定める「気象業務法」は2007年の改正で、火山現象の予報や警報を出すこととなった。気象庁としては、観測態勢や解析が噴火予知可能な段階に入ったと認識したためであろう。しかし、現実はそれほど甘くはなかった。2014年の御嶽山、そして今回の草津白根山では「活火山であることに留意」である噴火警戒レベル1の状態で、警報が発せられることなく噴火が起こり、かけがえのない人命が失われた。このような現状では、噴火警戒レベルに対する信頼性は著しく低下し、逆にそのことで被害が拡大することが懸念される。

 わが国における火山噴火予知の歴史の中で成功例として知られるのが、2000年の北海道有珠山西山噴火のケースである。同年3月27日から始まった火山性地震や地殻変動などの前兆現象を検知し、29日に北海道大学が「一両日中に噴火が始まる可能性が高い」と発表した。これを受けて自治体は避難勧告・避難指示を出し、1万人以上の住民が避難した。そして噴火は3月31日に始まり、噴煙は高さ3500メートルにも達したのである。このような速やかな対応が功を奏して1人の犠牲者も出すことはなかった。