藤井靖(明星大心理学部准教授、臨床心理士)

 インターネット、紙媒体問わず、芸能人や有名人のスキャンダル、ゴシップ記事が世の中をにぎわさない日はない。その背景には需要、つまりそれらのニュースを求める世間が存在している。日本人は、特にスキャンダルが好きな民族だといわれている。テレビ番組を見ても、いまだにワイドショーでは芸能ゴシップが話題の中心であり、これは他の先進諸国では見られない光景だ。

記者会見を終え、引き揚げる音楽プロデューサーの小室哲哉
=2018年1月19日、東京都港区
 ではなぜ、日本人はスキャンダルが好きなのか。しばしば「芸能人へのねたみ」や「羨望(せんぼう)」がその背景にあると指摘されることがある。あるいは、誰しもが持つ「秘密を知りたい」といういわゆる「のぞき趣味」の心理も無関係ではない。全てに共通しているのは、日本人がいかに他人を意識して生きているか、ということだ。

 他人を意識せざるを得ないのは、自分の人生への満足度が低いことと関連している。人は誰しも、自分の理想とする自分になれたり、自分が立てた目標を達成することを志向している。現実の自分と理想の自分が一致することを心理学では「自己実現」というが、それは人生において究極の目標であり、ゴールでもある。しかし、多くの人がそれを成し遂げられているかというと、そうではない。さらに言えば、現実と理想が乖離(かいり)すればするほど、人は苦しむ。

 そんな中で、スキャンダルというある種の人の不幸にフォーカスする心理は、自分を慰める行為にほかならない。「あれだけ成功している人でもこんな失敗をするんだ」とか「あんな立派な人でも倫理観は低いんだ」と他者を低く見積もり、そして攻撃することで、相対的に自分の位置付けを高めて安心しているのである。

 つまり、理想通りとはいえない現状の自分や、思い通りにいかない日常を肯定する一つの材料にしているのだ。逆にいえば、スキャンダルに見向きもしない人は、「自分の人生への満足度が高い人」である。