一方、日馬富士の暴行問題について12月20日に危機管理委員会の高野利雄委員長が公表した報告書は、いつ誰が何を言って何が起こったのかを、極めて具体的かつ明確に説明しているが、白鵬が「情報操作」したとみられる部分がいくつかある。このうち2カ所だけ指摘しよう。
臨時理事会終了後に記者会見する日本相撲協会の八角理事長(中央)。左は鏡山危機管理部長、右は危機管理委員会の高野俊夫委員長=2017年12月、東京・両国国技館(斎藤浩一撮影)
臨時理事会終了後に記者会見する日本相撲協会の八角理事長(中央)。左は鏡山危機管理部長、右は危機管理委員会の高野俊夫委員長=2017年12月、東京・両国国技館(斎藤浩一撮影)
 一つは、10月25日の食事会(1次会)に、照ノ富士や貴ノ岩が出席することを白鵬は知らなかったというが、あり得ない話だ。食事会は巡業が行われていた島根県の高校で学んだ照ノ富士と貴ノ岩のために、地元関係者が一席設けたものである。主催者として横綱にも同席してもらいたいと考えるのは不自然ではない。特に照ノ富士の伊勢ケ浜部屋での兄弟子である日馬富士が同席するのは自然である。しかし、報告で日馬富士は「食事会の当日頃、白鵬において、…日馬富士を誘い…」とあるように、白鵬に誘われて同席することにしたのである。

 もう一つは、2次会で日馬富士が貴ノ岩に暴力をふるった際、白鵬が止めに入ったタイミングが曖昧にされている。日馬富士がボトルを振り上げたが、手が滑って取り落とし、その後リモコンで殴りだした。これを「一連の動作」と表現することで、肝心の白鵬が止めに入ったタイミングがわからなくなっている。白鵬は「物は持たないようにしましょう」と声をかけたそうだが、それはいつ言ったのだろうか。その後日馬富士はリモコンで殴りだしたが、白鵬がようやく止めに入ったのはいつなのかはっきりしない。

 これらの点について、危機管理委は白鵬から聞き取り「白鵬がそう言った」ということを報告しているだけなのである。高野委員長は後日、貴乃花親方から聞き取りをした際に元検事らしく厳しく「取り調べ」をしたようだが、白鵬にはこれらの発言を問い詰め、裏を取ることはしなかったのだろうか。

 しかも、貴乃花親方から聴取した危機管理委の報告は、相撲協会側の見方で固まってしまっている。これでは、相撲協会から相撲記者クラブを通じてリークされる情報に基づき、貴乃花親方の責任を問う印象操作に加担している大手メディアと同じだ。報道からではまだ私が知りえないことがあるが、その限りにおいても危機管理委の「偏向」は明らかである。その偏向姿勢についても二つ指摘したい。

 一つは、貴乃花親方の報告義務に関してだ。高野委員長の報告では「(親方は)10月26日に事件発生を知り、その後、県警に被害届を提出するに至る同月29日までの間、結局、何らの事情も把握できないまま事態を放置し、このことが本件をここまで長期化させ、深刻化させた大きな原因の一つとなった」という。これは裏を返せば、親方が事件を速やかに協会に報告していたならば、短期に解決できたと示唆していることになる。つまり、日馬富士の傷害事件は深刻化しなかったはずだと言っているに等しい。実際は、貴乃花親方の言動によってメディアによる騒ぎが大きくなり、協会は問題をうやむやのうちに収めることができなくなってしまった。