後者については、雇用を重視していたイエレン氏が金融引き締めとなるようなシグナルを発する政策を採用することはなかった。ただし、金融政策の「正常化」、すなわち金融政策の手段として名目金利のコントロールを明示的に回復することを狙った。イエレン氏は最近、テレビ番組に出演した際に、議長に再任されなかったことを率直に残念がっていた。今度のパウエル議長は当面はイエレン氏の手法を継承すると思われるが、イエレン氏ほどの実績を残せるのかどうか不透明感がある。この意味でトランプ政権側にも政策の不透明感、そしてFRBにも不透明感が消えない。これらが市場の懸念を生み出し、暴落に至ったのかもしれない。いずれにせよもうしばらく事態を見ないとなんともいえない。
手を振るトランプ米大統領=2018年2月2日(AP=共同)
手を振るトランプ米大統領=2018年2月2日(AP=共同)
 もし仮に、1年経過したトランプ政権の成果への失望、そしてパウエル新議長が金融政策の正常化よりも金融引き締めに移行するのではないか、という懸念が相まって今回の株価暴落に至ったとしたらどうだろうか。日本株の暴落は今回だけの問題ではなくなるかもしれない。

 ところで、日本経済は昨年の世界経済の堅調を背景にして、日本銀行の金融緩和政策の継続とともに実体経済を含めて堅調に推移した。ただし、インフレ目標の達成は今年も厳しい状況だろうし、その半面で完全雇用に到達してその後の安定的な賃金上昇などの所得拡大が本格化するまではまだ道半ばだろう。極度に悲観するのは禁物だが、楽観もできない。今回のような海外からのショックが長引けば経済が再び失速する可能性はある。だが、日銀の金融緩和の姿勢が変わらなければ、中長期的にはこれまた極度の悲観は禁物だろう。

 現在、国会で与野党の論戦が展開されている。興味深い論点もあるが、少なくともマクロ経済政策については、与野党の論戦は不毛な状況が続いている。ひとつには民主党政権の後継政党たち(立憲民主党、希望の党、民進党など)といった「民進党なるもの」の経済政策が、単なるアベノミクスの全否定に傾斜しており、それが事実上のマクロ経済政策の無策に直結しているからだ。

 立憲民主党の経済政策は、個別の再分配政策のメニューが並ぶだけである。消費税をいますぐに上げることはできないといいつつ、同党をはじめ「民進党なるもの」が国会で消費税凍結を最大の論争点にしている動きはない。むしろ相変わらずの森友学園・加計学園問題を主眼にした国会戦略を立てているようである。同問題についてはすでに多くを書いてきたのでいまここで再論はしないが、端的にいって不毛な時間潰しである。立憲民主党は実質賃金の引き上げを主張するが、それを実現する具体的な政策が不明である。