松竹伸幸(ジャーナリスト、編集者)

 私はもう寝ている時間帯だったが、お笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」の村本大輔氏が1月1日、テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』に出演して発言したことが議論になっている。憲法9条の解釈、非武装中立の考え方その他、議論は多岐にわたっている。

 その発端になったのは、中国が攻めてきた場合、尖閣諸島について、「僕は、取られてもいいです。僕は明け渡します」と主張したことだとされる。村本氏はさらに、「人を殺して国を守ることってどうですか?」として、そういう状況に置かれた際、「じゃあ、(自分が)殺されます」と述べたという。

お笑いコンビ、ウーマンラッシュアワーの村本大輔
 村本氏は典型的な「非武装中立」論者なのであろう。その中でも、非武装中立をあくまで将来の理想として掲げているだけでなく、現実の目の前の世界でも攻められたときには「座して死を待つ」という徹底した立場だということだ。私はそういう立場をとるものではないが、理想に殉じようとする村本氏は立派だと思う。ぜひ、その志を実際にも貫いてほしいと期待する。

 確かに、村本氏は沖縄の基地問題などをネタにする数少ない芸人の一人であり、現地での人気も高い。ただ問題は、村本氏の考え方が沖縄の人々を代弁しているように思われていることである。もちろん、沖縄の人々に同じ考えの人がいること自体は否定しない。沖縄戦とりわけ日本軍が関与した集団自決なども体験したことによって、少なくない沖縄の人々の中に軍隊そのものを忌避する感情が生まれ、それが非武装中立という考え方につながっている面はある。

 けれども、沖縄県民の選挙で選ばれた翁長雄志知事が自衛隊も日米安保条約も認めていること一つとっても明白なように、非武装中立の世論は沖縄でも少数である。翁長知事は、米軍普天間基地の名護市辺野古への移設には強く反対しているが、日本の安全保障について真剣に考えているのである。いま、「沖縄は基地の重圧ばかり訴えて日本の安全には無責任だ」という本土の世論が、安倍内閣による辺野古移設強行を支える役割を果たしている。その中で、村本氏の言明を持ってきて「沖縄の世論はやはり非武装中立」のような世論が本土で加速するなら、普天間基地を閉鎖するという沖縄の人々の闘いに水を差すことになりかねない。

 その意味で、村本氏には自重を促したいと思う。自分の個人的な見解にすぎないものが沖縄の代弁だととられる誤解を生むような言動は慎んでほしい。

 ここまでは前置きである。本稿で論じたいのは、村本氏の尖閣諸島の領有権に関する誤った認識のことだ。