春日良一(スポーツコンサルタント)

 オリンピックは何をもって成功裏に終わったといえるのか。今、2020年東京五輪大会組織委員会の面々に「東京五輪の『成功』とは何ですか?」と問えば、異口同音に「大会が無事に終了すること」と答えるだろう。

 無事に大会が終了するという意味で、平昌五輪が成功する確率はかなり高まった。それは年頭、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が「新年の辞」で参加を宣言したからである。それまでは、大会2カ月前の競技別エントリーが期限になっても、北朝鮮オリンピック委員会は正式手続きを行っておらず、「五輪不参加」というのが大方の見方であった。韓国専門家の中には「100%参加は有り得ない」と断言する人もいたほどだ。
2018年の「新年の辞」を発表する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(朝鮮中央通信撮影・共同)
2018年の「新年の辞」を発表する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(朝鮮中央通信撮影・共同)
 しかし、締め切りを過ぎても、国際オリンピック委員会(IOC)は諦めなかった。本来なら、この時点でエントリーがなければ参加できない。しかし、トーマス・バッハ会長は「最終エントリーである大会1カ月前の個人エントリーまでに手続きをすればOKだ」と表明したのである。

 五輪参加で最も重要とされるのはエントリーの有無だ。公平性を保つための伝統的なルールであり、ミスをすれば国内オリンピック委員会(NOC)の委員のクビが飛んでしまった例もある。だからこそ、バッハ会長の表明は異例中の異例、いやこれはもう「特例」と言っていい。五輪の伝統を崩してでも、北朝鮮の参加を最後まで待とうとしたのである。この時点で、筆者はIOCが平昌五輪組織委員会、南北両国のNOCに水面下で働きかけているのではないかと思っていた。

 なぜなら、北朝鮮には1996年からIOC委員として活動する張雄(チャン・ウン)氏がいるからだ。IOC委員はオリンピック理念を実現するために貢献する使命がある。今年一杯で退任する張委員が「最後の奉仕」として南北友好の五輪実現に努力しないはずがない。五輪運動に携わり、彼自身を見てきた筆者にはそう見て取れた。

 ただ、政治が絡む問題は非常に繊細な対応が必要なのは言うまでもない。昨年6月、張委員は「スポーツの上に政治がある」とメディアに語り、統一コリアチームの実現が簡単ではないことを示唆していた。一方で「(北朝鮮と韓国の)2カ国が決めることではなく、IOC委員が話し合う問題」と断言もしていたのである。