米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席は開会式に出席しない。韓国の置かれた状況を物語る。安倍晋三首相が辛うじて文大統領のメンツを救った。安倍首相の参加には批判もあるが、日本がはっきりものを言うためには正しい外交選択だ。韓国の文化は、はっきりものを言い合うのに慣れている。それなのに日本の政治家は遠慮しすぎた。

 けんかの必要はないが、日本の立場は明確に伝えるべきだ。信頼関係を築くには、隣の大国としての品位が大切だ。慰安婦問題で攻撃される朴裕河(パク・ユハ)教授や李栄勲(イ・ヨンフン)教授らに、安倍首相との面会の機会を与えてほしい。

 北朝鮮は「大韓民国」を認めない。「存在しない」とのフィクションを維持しているからだ。日本では理解できないだろうが、「正統性」のためだ。正当性は儒教文化最大の政治的基準である。北朝鮮は、金日成主席が日本帝国主義と戦争し「勝利した」事実を「国家の正当性」にする。韓国には、日本帝国主義軍と戦争した指導者はいないから「正当性はない」として、「大韓民国は存在せず、南は米帝国主義の傀儡(かいらい)政権」とのフィクションにしがみついている。

 平昌五輪を「平壌五輪」と批判する人たちがいる。ソウルでは「北朝鮮参加のために巨額の資金を送った」との声がささやかれる。金大中元大統領は南北首脳会談のために、「5億ドル(約500億円)」の現金を送っていた。北朝鮮との交渉には「数億ドルの現金が必要」というのが常識だ。車両で現金が運ばれたとの観測も出ている。北朝鮮スキー場での南北合同練習にも、使用料が支払われたのか。
韓国北東部、麟蹄のホテルで開かれた韓国側主催の夕食会に参加した北朝鮮応援団の女性ら=2018年2月7日(韓国統一省提供・共同)
韓国北東部、麟蹄のホテルで開かれた韓国側主催の夕食会に参加した北朝鮮応援団の女性ら=2018年2月7日(韓国統一省提供・共同)
 文大統領の支持率は70%から50%台に落ちてしまった。なぜ北朝鮮の五輪参加を求めたのか。文大統領の学生時代は、北朝鮮に国家の正当性があると主張する『解放前後史の認識』という著作シリーズが、学生の間で大人気だった。文大統領と任鐘晢(イム・ジョンソク)大統領秘書室長らは、この著作に影響を受けた世代だ。

 文政権の狙いは、五輪後の南北首脳会談と北朝鮮への制裁緩和だ。その次は憲法改正を行う。韓国大統領の任期は1期5年だ。それを2期8年が可能になるように変更し、文大統領も再選出馬できれば、およそ10年間政権を握れる。その間に韓国の保守派を根絶やしにする戦略だ。

 だが、文政権には、北朝鮮が「南朝鮮革命と軍事統一」の戦略を捨てていないとの現実認識はない。米中央情報局(CIA)のポンペオ長官は1月23日に「北の核開発の目的は朝鮮半島再統一だ」と韓国に警告した。これまでは、米国の攻撃を抑止するためとの判断が一般的だった。「再統一戦略の一環」という認識を打ち出したことで、北朝鮮の統一戦略に関する文書や証拠を手に入れた事実をうかがわせた。米国は、韓国への軍事侵攻と同時に米国への核ミサイル発射の危険があると受け止めている。

 宴の後には、北の核とミサイルの実験が待っている。韓国世論は分裂し、文在寅大統領の支持率は下落するだろう。北朝鮮への制裁はさらに強化され、北では軍と党の摩擦が強まる恐れがある。朝鮮半島をめぐる緊張は高まる一方だ。