そして三つ目はビットコインの実需についてだ。ビットコインは単なる電子データでサービスそのものは存在しない。唯一その価値を証明するのは、投機的な売買を除けば、通貨としての利便性のみである。しかし、現在ビットコインは取引量が増えすぎてトランザクション(取引)が遅延している。

 例えば、ビットコインで買い物をした場合、買い手から売り手に実際に資金が移動するのに1日程度のタイムラグが必要である。もっと早く入金してもらうためには手数料を支払わねばならない。ネット上の体験談などによると、ビックカメラで1000円の買い物をし、ビットコインで支払いをすると手数料が約430円かかったそうだ。交通系ICカード「SUICA」で買った方が良かったのではないだろうか。

 また、ビックカメラは受け取ったビットコインを換金して商品の仕入れや従業員の給料の支払いをするが、これだけビットコインの相場が激しく変動すると大きなリスクを抱えることになる。仕入れも給料の支払いもすべてビットコインになればいいのだが、おそらくそんな日は永久に来ないだろう。

 最もニーズがあると思われていた匿名の送金だが、こちらもかなり微妙だ。ビットコインなどブロックチェーンを使った通貨はすべての取引情報が書き込まれたウォレットをプレイヤー全員が共有している。

 つまり、プレイヤーは誰でも他のプレイヤーの送金記録を見ることができる。巨額の資金移動があれば、その資金がどのアカウントからどのアカウントに移動したかはすぐにバレてしまう。もちろん、そのアカウントの所有者の個人情報は見ることができないが、資金の流れ自体はガラス張りだ。

仮想通貨取引大手「コインチェック」が入るビル=東京都渋谷区(春名中撮影)
仮想通貨取引大手「コインチェック」が入るビル=東京都渋谷区(春名中撮影)
 実際に、NEM流出事件においてもこの構造を利用して盗まれたコインはトラック(追跡)され、犯人のアカウントは特定されてしまった。匿名送金の実需という点でもやはり厳しいのではないだろうか。

 このように見てくると、仮想通貨の雄、ビットコインですら現時点ではまだ未来の技術である。況(いわん)や他の通貨においてをや。少なくとも、現時点では円やドルなどの法定通貨を仮想通貨が凌駕(りょうが)するのは無理そうだし、将来的にもそう簡単にはそんなことは起こりそうにない。非中央集権的電子通貨というのは、シリコンバレー式の大風呂敷としてなら大変興味深い話であるし、投資話としても非常によくできていた。

 しかし、現実にはまだ克服しなければならない課題が山積みだ。もちろん、シードインベストメントとしてこういう技術に投資しておくのは大事なことだろう。しかし、ビットコインの価格は短期間で60倍になってしまった。シードからいきなり上場してしまったようなものだ。さすがにこれはやりすぎだった。

 しかも、この相場自体が作られたものである可能性が出てきた。昨年12月、ビットフィネックスとテザーが米商品先物取引委員会から召喚命令受けていた。ビットフィネックスは香港の取引所、テザーとは米ドルと1:1の固定レートを保証する仮想通貨のことだ。

 テザーは価格変動のない仮想通貨だが、事実上ドルの代わりに使えるので利便性が高い。どうも中国の資本取引規制の抜け道としてこの通貨が売れていたらしい。ビットフィネックスはテザーとほぼ同じメンバーが経営している仮想通貨の取引所である。