山本一郎(個人投資家・作家)


 仮想通貨取引で大変な騒ぎを現在進行形で引き起こしているコインチェック社(以下、CC社)の一件については、CC社から「盗難」されたとされる暗号通貨NEM(XEM)に対する補償が払われるのか、ということだけでなく、他の暗号通貨取引で預かっていた顧客資産もどこまで日本円で出金できるのかという結構な問題にまで立ち入ってしまっています。

 仮想通貨やブロックチェーン(分散型台帳技術)がITと融合した新たな金融サービス「フィンテック」の大事な一角である以上、巷では「暗号通貨NEMの取引でCC社がやらかしても、ブロックチェーン技術は引き続き有望だ」という議論が出るのも分からないでもありません。

 何しろ、CC社の問題というのはあくまでCC社のセキュリティの問題であって、ブロックチェーンが破られたかどうかという話ですらないからです。

 一方で、金融庁が2月2日から検査局職員が常駐する形で資産の状況確認が進む中、警視庁サイバー課も関係者からの事情聴取を続けている状況です。漏れ伝わる状況を聞く限りでは、今回のNEM(XEM)は、何者かのハッカーによる犯行、ということになっていますが、犯行の状況や経緯がはっきりせず、とりわけ侵入を許す前後のログに不審な点がなかなか判然としないなどの問題もあって、捜査は難航しているようです。
流出を受けて記者会見するコインチェック社の和田晃一良社長(左)=2018年1月、東京都中央区(佐藤徳昭撮影)
流出を受けて記者会見するコインチェック社の和田晃一良社長(左)=2018年1月、東京都中央区(佐藤徳昭撮影)
 簡単に言えば、読者が仮に犯罪者であったとして、家屋に浸入し、運よく簡単に開けられる金庫を見つけたとします。その金庫を難なく開けてみると、ドルや人民元、ユーロ、日本円にルーブルとより取り見取りの紙幣がうなっていたので、その中から日本円「だけ」袋に入れて持ち去った、というのがこの事件です。犯罪者の心境として、この行動は合理的でしょうか。本稿では、判断は読者に委ねます。

 「下手人」が誰であれ、技術的に日本の将来を担うと見られたフィンテックは、仮想通貨の盛り上がりとともに比較的緩い規制の中で「世界でリーダーシップが取れるよう育成していきたい」というビジネスになっていました。

 ただし、すでに海外でもCC社のようなハッキングされる事例は後を絶たず、2月3日には韓国の暗号通貨取引所がハッキングされ、おそらく北朝鮮に日本円にして20億円前後が盗み出されてしまったのではないかと報じられました。さらには、アメリカでは大手取引所のビットフィネック(Bitfinex)とその関連でテザー(Tether)という暗号通貨の取引において、裏書となる資産が乏しいのではないかという疑惑が持ち上がり、アメリカ先物委員会が関係者を召喚するという事態にまで発展しました。

 詳細は産経新聞の記事を御覧いただくとしても、このところのビットコイン(BTC)以下、暗号通貨各種の取引レートは非常に不自然で、このテザーに人民元による決済とみられる資金が流入すると、それ以外の暗号通貨にも「分配」されるようなアルゴリズムでもあるのか、均一に値上がりするということが繰り返されています。