杉浦由美子(ノンフィクションライター)

 2015年の中学受験は「サンデーショック」である。

 女子校御三家といえば、桜蔭、女子学院、雙葉。平年は3校とも受験日が2月1日の1回のみで併願ができない。しかし、2月1日が日曜日にあたると、プロテスタント校の女子学院は礼拝を優先するために入試を2日に変更する。結果、桜蔭と女子学院が併願可能となるのだ。これを中学受験業界では「サンデーショック」と呼ぶ。

 もちろん、今までもこのサンデーショックはあり、前回は2009年だ。それから6年の間でずいぶんと中学受験の傾向も変わった。それでも今回のサンデーショックに関連するデータをみると、やはり、中学受験において桜蔭と女子学院がツートップだということが分かってくる。

「名より実」が現在のトレンド


 中学受験事情もずいぶんと変わってきている。

 かつては、ブランドイメージや偏差値で、受験校を選ぶことが多かった。しかし、情報化社会の昨今は、保護者は積極的に校風やカリキュラム、そして、費用面などを調べてから受験校を選ぶようになってきている。また、3.11以降は自宅から近い学校を選びたがる保護者も増えた。

 女子校でいうと、1980年代に人気だった「お嬢様校」はどんどん偏差値を落とし、一方で、勉強面で面倒見のよい学校が台頭してきている。人気校のほとんどが「塾に行かずに大学受験対策ができるカリキュラム」をセールスポイントにしている。小テストをまめにやり、落第点の生徒には合格するまで追試をする。合格するまで部活に出してもらえないという学校も多い。

 ブランド力よりもコストパフォーマンスや利便性を優先する―。つまり、名より実を選択するのが、現在の中学受験のトレンドなのだ。

 実際、豊島岡、吉祥女子、鴎友などの新御三家と言われる女子進学校に娘を通わせる保護者たちは「御三家は放任主義でなにもしてくれない。それだと私立に行かせる意味がない。だからあえて御三家は意識しなかった」というようことも多くなってきた。

 その流れの中で跳躍してきたのが、池袋の豊島岡だ。学費が安く、面倒見がいい。近年では「とうとう豊島岡は女子学院を抜いた」という声もよく耳にした。

 豊島岡と御三家は試験日が重ならないので、難易度の上下関係が明確には分からなかったが、今回、2日で女子学院と豊島岡が並んだ。中学受験塾大手の日能研の予想R4(2014年12月11日発行)をみると、2月2日の偏差値は女子学院が68、豊島岡が67となり、女子学院がワンポイント上にくる。1日に桜蔭を受ける層が併願先として女子学院を選んでいることが垣間見える。

桜蔭と女子学院の併願に疑問


 しかし、桜蔭と女子学院を併願することは、外野の人間からすると疑問を感じるのだ。

 まず、入試問題の傾向が全く違う。

 桜蔭は中学入試の段階で、大学受験レベルを求める。中学受験の算数は方程式を使ってはならない。大学入試レベルの数学を、方程式なしで解けというハードルの高さだ。東大出身の大学教授が「今、東大を受験したら合格できるけれど、桜蔭には受からないと思う」と話していた。また、桜蔭の国語は日本の中学入試の中で最も難しいとされる。受験塾の講師たちも「桜蔭に行くのは特殊な女の子たち。論理的な男の脳をもっている」という。

 一方、女子学院の入試問題は基礎的で平易な問題が中心である。ただ、とにかく出題量が多い。簡単な問題を大量に解かせ、テクニックと要領の良さを求める入試なのだ。

 つまり、桜蔭の対策をするためには、難問を解く力が必要になるし、女子学院を受けるなら大量の問題をスピーディーに解くトレーニングが不可欠だ。この真逆の入試出題傾向の2校を併願するとなれば、直前期の対策はかなり大変になってくる。効率が悪い併願のように見えるのだ。