西岡昌紀(内科医〔神経内科〕)
 1956年、東京生まれ。神経内科医。主な著書に『アウシュヴィッツ「ガス室」の真実/本当の悲劇は何だったのか?』(日新報道・1997年)、『ムラヴィンスキー・楽屋の素顔』(リベルタ出版・2003年)、『放射線を医学する』(リベルタ出版)がある。

理研最終報告の疑問


 昨年12月26日、理研は一連のSTAP細胞問題について、ひとつの「結論」を出した。要約すれば、数カ月間の検証実験の結果、小保方晴子さんらが『Nature』誌に発表した論文で報告したような現象全体を再現することはできなかった。

 そして、STAP細胞として小保方晴子さんや若山照彦教授らが報告した細胞はES細胞であった可能性が極めて高く、それも故意にES細胞を混入してSTAP細胞なる細胞を捏造した疑いが濃厚である、というのが、その要旨である。

 この発表を受けて、新聞、テレビは「STAP細胞はES細胞を使って捏造された物である」という見方をほぼ確実な結論であるかのように報じた。一方、小保方晴子さんは、筆者がこの原稿を書いている2015年1月15日の段階では、沈黙を続けている。

 小保方さんが理研を退職し、理研の処分に対して異議を唱えていないことから、「小保方さんは捏造を認めた」と受け止める人々も多い。だが、待ってほしい。これが「結論」なのだろうか?

 私は昨年4月、月刊『WiLL』6月号に寄稿した記事で二つのことを指摘した。

 (1)STAP細胞が存在するかどうかは分からない。
 (2)小保方晴子さんがSTAP細胞の存在を捏造した証拠は示されていない。

 この(1)(2)は、挙証責任の所在が違うのに挙証責任が混同され、(2)についてまで小保方さんに挙証責任が求められていることの誤りを指摘した。そして、小保方晴子さんを犯罪者のように扱うマスコミの報道は魔女狩りのようだ、と批判した。

 それから時間が経ち、12月26日の発表となった。

 では、現在はどうか? この間に、笹井芳樹氏の自死という悲劇と、監視カメラ下での検証実験の終了という大きな二つの出来事があった。そしてさらに、マスコミやインターネット上で様々な議論が重ねられた。当然、当時と状況は違う。

 しかし、この二つの異なる問題、
 (1)STAP細胞は存在するか?
 (2)小保方晴子さんは、存在しないSTAP細胞を不正な方法によって捏造したのか
 に対する私の判断は、いまも同じである。即ち、どちらについても挙証責任は果たされていない、と私は考える。その理由は以下の本文で述べるが、私が述べるのはあくまでも「疑問」だけである。

 私は、STAP細胞が存在するかしないかというような高度に専門的な科学上の問題については、昨年の本誌6月号の記事と同様、いまも判断を下すことはできない。これは科学の問題であり、研究者たちが実験を繰り返すことによってしか検証し得ない問題だからである。

 これから述べるのは、「小保方晴子さんがES細胞を使ってSTAP細胞なる物を捏造した」とする見方に対する私の疑問である。