4.問われるグローバル企業の社会的責任

上半身はだかで織物工程の問題を直しているあいだも、労働者は汗をかいている。(SACOM提供)
 経済のグローバル化のなかで、欧米や日本企業が人件費の安い海外に製造拠点を移し、アジアが生産工場となる動きが進んでいる。こうしたなか、海外の労働現場で児童労働、過酷な搾取的労働が発覚する事例も後を絶たない。特にファストファッションの低価格競争が激化した縫製産業では、2013年のバングラデシュの「ラナプラザビル崩落事件」が象徴する通り、海外下請け工場での過酷な労働が問題となっている。
 下請け企業を使ってビジネスをしている企業は、下請けを通じて利益を得ているのであり、下請け工場の人権問題に負の影響が起きた場合、何ら責任を負わないとはいえない。「CSRと人権」が叫ばれているが、自社、そして下請け労働者の人権・特に労働法規の遵守は企業の人権に関わる義務の最も重いものである。

 今回のユニクロの調査結果は、日本企業の海外進出に伴う生産拠点で人権侵害が起きることに警鐘を鳴らす結果となった。これはファーストリテイリングの企業活動の結果発生した人権侵害事例であり、「下請けの問題」として無視することは許されない。

 国連の人権理事会が2011年に採択した「ビジネスと人権に関する指導原則」 によれば、企業には、サプライチェーンにさかのぼって人権侵害に関し相当の注意義務を負うという「デュー・ディリジェンス義務」が課され、さらに、「企業は、負の影響を引き起こしたこと、または負の影響を助長したことが明らかになる場合、正当なプロセスを通じてその是正の途を備えるか、それに協力」することが求められている。

 ファーストリテイリングには、国連の指導原則に従って適正な解決を期待したい。

5.ファーストリテイリングの今後の対応に注目


 1月15日、ファーストリテイリングは、SACOM調査報告書で指摘された問題のいくつかが事実であることを認め、改善を進めるとの方針を公表した。

 さらにNGO側の申し入れを受けて、1月19日、ファーストリテイリングとSACOM、HRNの協議が、来日中のSACOM代表者の参加のもと、東京で実施された。

 そこでNGO側は、1) 事実関係の確定、2) 原因の分析(現地工場のモニタリング体制の不備)、3)原因分析を踏まえた改善策や体制の改革、4) そしてその実施というすべてのプロセスにおける透明性の確保を求めるとともに、再発防止のための実効的なモニタリング・システムの確立実施を求めた。

 NGO側は、今回の事態を受けて、ファーストリテイリング社が2工場に行う調査結果を公表するよう求めた。また、ファーストリテイリング社が、中国におけるすべての生産拠点に対する調査も実施するとしている点は評価できるが、その結果についても公表してほしい、そして中国における生産拠点すべてを公開してほしいと要請した。また、第三者機関による査察は、監査法人等への委託ではなく、NGOによるモニタリングを認めるよう求めている。

 さらにこうした劣悪な労働環境の根本原因が、ファーストリテイリング側の発注価格の低さや厳格な納期要求等に基づく構造的な問題なのか否かを分析し、そうであれば取引のあり方そのものを見直し、安全で人間らしい労働環境を保障しうるだけの適正価格でのオーダーをすることも求めた。

 日本を拠点とするグローバル企業の生産拠点での人権侵害が問われた本件について、ファーストリテイリングが、他の企業に範を示す改善を実現できるか否か、その行方をウォッチし、ダイアログを重ねていきたい。