エボラ出血熱の流行が続く西アフリカ地域に国境なき医師団から派遣され、シエラレオネのエボラ専門治療施設で患者のケアや地元スタッフの指導などにあたった看護師の吉田照美さんが5日午後、東京・早稲田の国境なき医師団日本事務所で記者会見を行いました。患者はいまなお増加しており、流行に対応するには人材の支援が必要と吉田さんは語っています。

ウイルス性の感染症であるエボラの流行は1976年にザイール(現・コンゴ民主共和国)とスーダン南部(現・南スーダン)で初めて確認され、アフリカの各地でその後、断続的に報告されています。今回は2月に西アフリカのギニアで発生した流行が国境を越えてシエラレオネ、リベリアにも広がり、これまでで最も大きな流行となっています。
 
 世界保健機関(WHO)が4日に発表した8月1日時点の集計では、今回の流行による患者報告数(疑似症例を含む)は、ギニア、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリアの4カ国で1603人、死者数は887人に達しています。エボラの特長は致死率が25~90%と極めて高いことです。病原ウイルスは5種類見つかっており、ウイルスの種類や医療的な対応の違いもあって、それぞれの流行でかなり開きはあるようです。
 
 吉田さんは6月18日から7月20日にかけてシエラレオネ東部のカイラフンに設けられた国境なき医師団のエボラ専門治療施設で看護業務や地元看護師チームの指導などにあたりました。専門治療施設には要注意区域が設けられ、患者はその区域内で治療を受けます。
 
 エボラウイルスの感染経路は、感染した人や動物の尿、汗、血液などの体液です。したがって家庭や医療機関でケアや医療を提供したり、亡くなった患者の遺体を清めたりする際に直接、患者の血液などと接触すると感染が成立します.逆に言うと、そうした接触がなければ感染はしません。
 
 医療やケアの提供のため要注意区域に入る際には必ず、防護服、マスク、ゴーグル、ブーツ、手袋、エプロンを着用し、感染防御の対応を整えた上で消毒液(次亜塩素酸ナトリウムの希釈液)で消毒を行います。また、要注意区域内は一方通行で逆戻りはできず、外に出るときは防護のための装備はひとつひとつ消毒しながら脱いでいき、一部、消毒して再利用するものを除けば、消毒後に焼却処分にします。高い致死率の病原体の感染を防ぐために要注意区域内には常に最高度の防護策がとられているのですね。
 
 流行は5月下旬から6月上旬にかけて縮小に向かうかに見えたのですが、その後、再び拡大しています。西アフリカ地域で初のエボラの流行だったので地域住民に予防や治療の知識がなかったこと、エボラにかかったと思っても周囲の目を気にして隠してしまうこと、亡くなった人を清めて弔う習慣があるので、遺体に直接、触れる機会があることなどが感染拡大の要因となったようです。マラリアの流行地域でもあり、初期症状がマラリアと似ていることから判断が遅れてしまうケースもあるそうです。
 
 患者をできるだけ早く医療やケアにつなげられるようにするのと同時に新規の感染を防ぐという目的からも、治療施設の外で、エボラについての知識を伝え、誤解を解くための活動も重要です。国境なき医師団の施設に行くと、エボラウイルスを注射されるぞといった誤った情報が流れ、スタッフが襲われるような事態もあったそうで、誤解を解くために村の有力者と信頼関係を築いていくような努力も必要になります。大変な活動です。
 
感染防護の装備をきちんと整えると、サウナの中で働いているような汗だくの状態になるので、1人の医療従事者が要注意区域に入って行動できるのは1回に1時間が限度ということです。患者を抱きかかえたり、注射針をあつかったりという作業をそれ以上、長く続けていくことは体力的にも精神的にも困難だということでした。事故のもとにもなります。
 
 したがって、流行が今後も続くと予想される現状では対応可能なだけの人材の確保が最も重要です。代わりの人がいれば、と思う場面も日常的に出てくるのでしょう。現地のスタッフの育成はもちろん必要かつ重要ですが、そのためにも海外から経験と知識、技術を身につけ、指導も行える人材の支援が大切になります。
 
そうか、でも、それでは医療分野の方以外はどうしたらいいのか。これは資金の支援ということになるのでしょうね。国境なき医師団日本ではエボラ緊急援助の寄付も広く呼びかけています。