家庭の事情から1人で食事をする子供が増えている。母子家庭が多く、昼食を取らず菓子で済ましていたり、夕食がコンビニなどの弁当だったりするという。長期の休みが終わるとやせて学校に戻ってくる児童がいて、「給食がなく家庭に食事を任せると粗食になりがち」と周囲から心配される声も。そんな状況を少しでも改善しようと、ボランティアらによる「食堂」が注目されている。安価に手作り料理を振る舞うが、そうした活動の中から見える現代の母子家庭像とは…。

1食300円の手作り料理


「要町あさやけ子ども食堂」の様子。ちゃぶ台を囲み、大勢で食事をする=1月7日、東京都豊島区
 東京都豊島区の「要町あさやけ子ども食堂」。子供たちが食事をする部屋は2つあり、ちゃぶ台3つの和室と、大テーブルのある洋室だ。定年後に自宅を開放しているのは、山田和夫さん(66)。

 現在、第1、第3水曜の午後5時半から午後7時まで、一食300円で手作りの夕食を提供している。30人分の食事を大勢のボランティアが手伝い、児童や幼稚園・保育園児を連れた親子や、誘われた児童らがやってくる。野菜中心でバランスの取れたメニューを心がけているという。

 山田さんは「どんな理由でここに来ているか、私たちからはあえて聞かない。誰かとご飯を食べたくなったとき、ふらりと気軽に入れる食堂がいい」と話す。

 みな、おいしそうに食べながら会話もはずむ。

離婚で収入激減、娘の高校進学が夢…


 1人のシングルマザーに話を聞くことができた。

 「昼も夜も働けば、なんとかなると思っていた。だけど40歳も過ぎると夜の仕事は体力的にもきつい。自分でも甘かったと思うが、今はどうしたらいいのか分からない」。豊島区内に住むパート社員、大石美代子さん(43)=仮名=だ。

 大石さんは、中学3年と小学5年の姉弟を育てている。自宅を訪れてみると、冷蔵庫にテレビなど一般家庭と同様に物があふれ、一見、生活に困っているようには見えない。

 しかし、経済状態はかなり切迫しているようだ。4、5年前に子供たちの父親である内縁の夫(46)が他の女性と交際を始めたのをきっかけに家を出た。その上、自分も13年間、正社員として働いた会社を経営不振と人間関係の悪化から退職し、収入が激減した。

 「夫は、家を出てから半年ぐらいは、毎月10万円ぐらい養育費を送ってきた。でも、一度『今月は収入が少ないから待って』とメールが来て『分かりました』と返したら、それっきりになった」と大石さん。探さないのかと問うと、「気持ちがあれば子供のために、数千円でも送金するはず。そんな気持ちがないなら、彼はそこまでの人間。そんな人間と付き合った私がばかだった」と言い切った。今は、どこにいるかも知らず、あえて探す気持ちもないという。

食堂で30人分の夕食を用意するボランティアたち
 月々の収入は、大石さんが品川区内の運送会社で週5日計40時間、働いて得るパート収入。手取りにして月に16~17万円だ。それなのに3DKのアパートの家賃は約12万円。内縁の夫がいて、自分が正社員として働き、世帯月収が60万円だったときに借りたアパートだ。貯金はなく今は、カードローンや親族からの借金でしのぐが、光熱費を滞納し電気やガスを止められたこともある。パートの勤務は夜勤もあるため、子供だけで食事をすることも週2回ほどある。

 「引っ越しをするにも、お金がかかる。家賃が高すぎるのは分かっているけど、動くに動けない状態。生活保護も簡単には受けられない」と大石さん。

 今、大石さんの目標は、中3の娘を無事、希望の高校に入学させること。しかし、受験の費用も悩みの種。近所に両親が住むが、両親も障害年金が生活の糧になっているため頼ることはできない。

 事実、「子供の貧困」は広がっている。厚生労働省が昨年7月、発表したところによると、最低限度の生活を保てないとされる統計上の境界「貧困線」(親1人、子1人の場合は173万円)以下で暮らす18歳未満の子供の割合「子どもの貧困率」が、16・3%(平成24年)で過去最悪を更新したという。

 個人情報とプライバシー保護の意識が高まり、外からは、貧困は見えにくい。友人同士でも、お金の話はタブーになりがちだ。生活が苦しく、手をかけられずに育った子供たちは、栄養ある食事を十分取らないため体力や根気が育ちにくく、勉強にも身が入らないケースが少なくないと想像される。

「地域の子供は地域で育てる」


 「要町あさやけ子ども食堂」を運営しているのが、NPO法人「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」(豊島区)だ。経済的困難や親の不在のために、十分な食事を取れない子供たちを支援している。

 活動のきっかけは、理事長の栗林知絵子さん(48)が平成23年の夏、「成績が悪く高校に行けないかもしれない」と悩む知り合いの男子中学生に、勉強を教え始めたことだ。母親が遅くまで働いているため、彼の夕食はいつも500円以内のコンビニ弁当。見かねた栗林さんは、栗林さんの自宅で夕食を食べることを提案。手作りの夕食を一緒に食べるようになった。

 男子中学生は、勉強を教えてくれる大学生からも支援や、地域住民からの受験費用のカンパなどを受け、なんとか高校に合格。このつながりから、24年にはNPO法人化した。

 WAKUWAKUネットのコンセプトは、「地域の子どもを地域で見守り地域で育てる」。栗林さんは「子供の貧困の背景には親の貧困がある。誰もがいつ、貧困に陥るかわからない。子供たちが成長して20年、30年たったときに、自分のことを気にかけてくれた大人がいたと思ってくれたら、それでいい」と話す。ご近所さんは、どこまで子供たちの力になれるのだろう。答えはないが、それでも「ご近所の力」に期待したい。(村島有紀)