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    「リーマン・ショックの亡霊」ドイツ銀危機におびえる日本の株式市場

    近藤駿介(評論家、コラムニスト) 奇しくも8年前の2008年に世界を震撼させたリーマン・ショックが発生した9月15日、米国司法省がドイツ銀行に対して、過去の住宅ローン担保証券(MBS)の販売を巡って140億ドル(約1兆4000億円)という巨額の和解金支払いを要求していることが明らかになった。 過去のMBS販売を巡っては17の金融機関が訴えられており、すでにJPモルガンや(130億ドル)、米シティ(70億ドル)、バンク・オブ・アメリカ(166.5億ドル)など複数の米国大手金融機関が多額の和解金を支払ってきている。 したがって、ドイツ銀行に和解金支払い要求があることは周知のことでもあり、ドイツ銀行の順番が回ってきたということに過ぎないともいえる。 それでも市場に大きな影響を及ぼしたのは、司法省の要求した和解金が140億ドルと、ドイツ銀行が和解金のために引当てた60億ドルを大きく上回る規模で、2016年2月にも債券利払い懸念に見舞われた現在のドイツ銀行にはとても支払える額ではなかったからだ。 ドイツ銀行の支払い能力に対する疑念が高まったことでドイツ銀行の破綻懸念も高まり、株価は大きく下落することになった。しかし、株価の下落幅を事の重大さを測る基準にするのは危険なことだ。今回ドイツ銀行の株価が大きく下落した背景には、ドイツ銀行が発行していたCoCo債(Contingent Convertible Bonds:偶発転換社債)の存在があったからだ。 CoCo債は、発行体である金融機関の自己資本比率が予め定められた水準を下回るなど経営に問題が起きた際に、発行体の意思で元本の一部または全部を削減したり強制的に株式に転換したりすることができる条件の付いた特殊な債券である。 ドイツ銀行は46億ユーロ(約5240億円)のCoCo債を発行しており、仮にドイツ銀行が経営危機に陥った場合、このCoCo債は強制的に株式に転換される可能性がある。経営危機に直面した発行体の株価は通常大きく下落するので、CoCo債が株式に転換される事態になれば、安い株価で大量の株式が発行され株式の希薄化を招くことになる。こうした希薄化を嫌がる投資家は株式の売却に走り、株価下落を加速させることになる。 米司法省がドイツ銀行に多額の和解金を要求したことが明らかになった9月中旬からのドイツ銀行株急落の背景には、ドイツ銀行に対する経営不安に加え、CoCo債を発行していたことによるテクニカル的要因が加わっていたことを忘れてはいけない。リーマン・ショックの再来はあるのか ドイツ銀行の株価が昨年末の半分の水準にまで下落したことで、一部からはリーマン・ショックの再来を懸念する声が強まってきている。 確かに、ドイツ銀行はドイツGDPの約55%に相当する総資産2兆671億ドルを誇る世界8位の銀行(「2016年版世界のベストバンク50」)である。2008年に破綻したリーマン・ブラザーズの総資産が6910億ドルであったから、その4倍近い総資産を持つドイツ銀行が万が一経営破綻に追い込まれるようなことがあれば、リーマン・ショックを上回る金融危機を招くことは想像に難くない。 しかし、今回のドイツ銀行の経営危機がリーマン・ショックのような金融ショックに繋がる可能性は決して高くない。それは、今回の危機があくまで個別銀行の危機であり、金融システム危機によるものではなく、現時点で封じ込めが可能だからだ。 リーマン・ショックはサブプライムローンなど証券化商品に組み込まれた資産価格の下落の影響で、銀行が、提供していたシニアローン(融資)が棄損するという「バランスシート危機」に直面したことで短期間連鎖的に世界的に広がっていった金融危機であった。このように業界全体が「バランスシート危機」に陥った場合、その危機を食い止めるのは極めて難しい。 これに対して、ドイツ銀行の破綻懸念の原因は140億ドルという巨額な和解金を支払うだけの備えと収益力がないという、ドイツ銀行自身の問題だ。したがって、ドイツ銀行が抱える問題さえ封じ込めてしまえば、リーマン・ショックのような世界的金融危機は防ぐことが出来る。 ドイツ銀行の経営不安が高まる中、一部の大手ヘッジファンドがドイツ銀行から資金を引き揚げた(プライムブローカー契約の解除)というニュースがドイツ銀行の信用不安を一層掻き立てることになった。 こうした動きはヘッジファンド業界におけるドイツ銀行のステイタスの凋落を示すものではあるし、資金確保が急務のドイツ銀行にとって痛手であることは確かである。 しかし、金融システムに打撃を与える出来事ではない。ドイツ銀行とのプライムブローカー契約を解除したヘッジファンドは、JPモルガンやゴールドマン・サックス等と新たな契約を結ぶことで業務を続けることは可能だからだ。ドイツ銀行に代わるブローカーは存在するのだ。 これがリーマン・ショックのような金融危機の場合は、ドイツ銀行とのプライムブローカー契約を破棄しても、すぐに新たに契約先を決められるとは限らない。危機がドイツ銀行1行の問題でなく、銀行全体の問題であるから、どこと契約しても同じリスクを負うことになるからだ。 新しいプライムブローカーが決まらなければ、ヘッジファンドの運用の滞りを招き、それが金融全体の滞りを招くことになる。ドイツ銀行に代わる受け皿がある状況か否か、この点がリーマン・ショックのような金融危機と今回のドイツ銀行の経営危機の根本的な違いである。「ドイツ銀行ショック」に日本株は巻き込まれるのか 実際に、9月末には米司法省とドイツ銀行の間で、和解金を140億ドルから54億ドルに減額する交渉が合意間近であることが報じられ、金融市場の混乱も一旦収まる気配を見せている。 新たに示された54億ドルという和解案は、ドイツ銀行がこの問題のために積み立てた60億ドルの引当金の範囲内である。もし、この額で折り合うことが出来れば、ドイツ銀行は新たな資金を調達せずにこれまで通り存続することが出来ることになる。 リーマン・ショックのような金融危機の恐ろしいところは、いつ、どのような形で問題が収束するのか想像がつかないことである。これに対して今回のドイツ銀行の経営危機では問題解決の糸口は初めから見えている。和解金が140億ドルなら問題だが、54億ドルなら問題にならないことが明らかな中で金融危機が起こることはない。しかも、その和解金の額を決定するのは米司法省なのだから。 つまり、リーマン・ショックが「金融危機」であったのに対して、今回のドイツ銀行の経営危機は「政治危機」の色合いが強いということだ。 政治的配慮で解決できる問題を、世界の金融システムを壊すリスクを冒してまでドイツ銀行に140億ドルを出させようとするほど、米国の政策当局は愚かではないはずだ。仮に今回の和解金問題でドイツ銀行が破綻に追い込まれるようなことがあれば、それは政治的失敗でしかない。 日本の株式市場がドイツ銀行の経営危機による金融ショックに巻き込まれることを懸念する声もあるが、そうした不安は杞憂である。ドイツ銀行の経営不安が解決するわけではないが、この問題は政治的な配慮で収束に向かうと考えておいてよさそうだ。 リーマン・ショック前に行ったMBSの不正販売がリーマン・ショックを招き、リーマン・ショックが発生したその日に明らかになった多額の和解金請求によって経営危機が叫ばれ、リーマン・ショック後に欧州を中心に広がった「金融機関破綻の際に株主だけでなく債権者にも損失負担をさせる」という理念に基づいて発行していたCoCo債が株価を大幅に押し下げる要因になったというのは何とも皮肉である。 こうした現実から言えることは、今でも世界は「リーマン・ショックという十字架」を背負い続けているということである。

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    年金運用5兆円損失のウソ、ホント

    私たちの年金は本当に大丈夫なのか? こんな不安にかられた人も多いだろう。公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2期連続の赤字となり、5兆円もの損失を出したというのである。当のGPIF側は「年金支給に支障はない」と抗弁するが、どこまで信用していいのやら…。

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    掛け金引き上げの公的年金 現実は金融的に実質破たん

     近藤駿介(評論家、コラムニスト) 「公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が1日発表した2015年10~12月期の運用成績は、4兆7302億円の黒字だった。期間収益率は3.56%で15年7~9月期(マイナス5.59%)から改善。国内外の株式相場が反発したことが寄与し、2四半期ぶりにプラスとなった」(2日付日本経済新聞 「公的年金 運用益4.7兆円」) GPIFが運用する公的年金の2015年10~12月期の運用状況が明らかになった。2015年7~9月期に7.9兆円の損失を出したが、10~12月期にその約6割を取り戻した格好。しかし、喜んでばかりはいられない。2016年初からの世界的株価の下落傾向を受け、「現時点で運用収益がマイナス基調」(1日付日経電子版)となっているからだ。 実際に、発表された2015年末時点での運用資産額(139兆8249億円)を基に、ポートフォリオが維持されている等の仮定をおいて試算すると、2016年2月末時点での運用資産額は131.5兆円前後と、2015年末から約8.3兆円減少している可能性が高い。 運用収益が約7.9兆円の赤字だった2015年7~9月期の運用資産額の減少幅は約6兆円であった。このことと比較しても、年明け以降約8.3兆円運用資産額が減っているとしたら、赤字は2015年7~9月期の7.9兆円を遥かに上回る規模になる可能性が高い。 また、2015年3月末時点の運用資産額は約137.5兆円であるから、2015年度を通しても運用資産は6兆円程減少していると推察される。さらに、2015年6月末の141.1兆円と比較すると10兆円少なく、2014年9月末の130.9兆円とほぼ同規模まで資産が減って来ているということである。 こうした公的年金の運用状況は大いに問題ではあるが、その問題は赤字だ、黒字だという運用状況だけではない。「GPIFの三石博之審議役は1日の記者会見で『短期で見れば収益のブレは大きくなるが、年金財政上、必要な額を下回るリスクは小さい』と強調した」(同日本経済新聞) GPIFは公的年金の運用状況について「年金財政上、必要な額を下回るリスクは小さい」としている。そして同じような認識は安倍総理も国会答弁で示している。一般的に、確定給付型企業年金などは5年ごとの財政検証によって、将来年金受給者に支払う必要のある金額を推計し、実際に持っている年金資産が十分かどうかの判定を行っている。実質的には破綻企業の延命策と同じ そして保有する年金資産が将来の給付額に対して不足する場合は、年金債務として会計上処理して行くことになる。多くの大企業はこうした年金債務に伴う会計的負担に耐えられずに確定給付型年金から確定拠出型など、企業の負担が少ない年金制度に移行して来ている。 ところが、公的年金の運用に関して「年金財政上、必要な額」は示されていない。おそらくそれは、公的年金は、現役世代からの保険料収入がそのまま年金給付に回るという「賦課方式」を採用しているために、将来の負債は存在しないという考え方に基づいたものである。 つまり、「年金財政上、必要な額」というのが不明であるが故に、今回発表された139兆8249億円という金額が、将来の年金給付に必要な額と比較して十分なものであるのかチェックしようがないという状況になっている。 もし、将来年金給付に必要な金額が600兆円とか700兆円だとしたら、140兆円弱という運用資産額では心もとないことは論を俟たない。当然、「4兆7302億円の黒字」など焼け石に水であるし、仮に運用資産額を8.4兆円減らしていたとしたら大問題ということになる。 年明け以降金融市場が不安定な展開を見せたことで、国会でも何回かGPIFの資産運用問題が取り上げられている。しかし、将来年金給付に必要な金額が明らかにされていないなかでは、「赤字だ、黒字だ」といいあっても意味がないし、現在の基本ポートフォリオの是非を論じることも出来ない。言い換えれば、将来年金給付に必要な金額がない中で作られた基本ポートフォリオは、何の意味もないものだともいえる。東京外国為替市場では円が上昇し、一時1ドル=103円台となった=6月16日 総理もGPIFも「年金財政上、必要な額を下回るリスクは小さい」としているが、実際に公的年金に関しては、「掛け金引上げ」「給付額減額」「給付年齢引上げ」という措置がとられている。こうした措置は、金融的に言えば、実質破綻企業の延命策である「資金の早期回収」「支払額の減額」「支払期限の先延ばし」と同じである。 このように考えると、「公的年金は金融的には実質的に破綻している」可能性が高いといえる。もし、総理やGPIFのいう通り「年金財政上、必要な額を下回るリスクは小さい」のであれば、「掛け金引き上げ」「給付額減額」」「給付年齢引上げ」というような措置をとる必要はないはずである。 換言すれば、こうした措置をとっているということは、総理やGPIFのいうことが正しくはないことの証明でもある。円安・株高の流れが止まり、金融市場が不安定になって来たことで、GPIFの運用に対する注目も高まって来ている。しかし、GPIFが抱える問題は、「黒字だ」「赤字だ」というものだけではなく、もっと本質的なところになる。株価や為替の動きに一喜一憂するのではなく、これを契機にGPIFが抱える本質的な問題に焦点があてられていくことを期待して止まない。(「近藤駿介 In My Opinion」より 2016年3月2日分を転載)

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    いつまで続く? 中国人の爆買いバブル

    中国経済が後退しても、日本を訪れる中国人観光客は増え続けている。「爆買いツアー」とも呼ばれる彼らの購買意欲に日本経済の底支えを期待する一方、主要な観光地では訪日中国人によるトラブルも後を絶たない。日本を買い尽くす「爆買いバブル」。異常な消費行動からみる中国人の訪日マナーを考えたい。

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    総力大特集! 安保法制で日本は変わる

    戦後日本の歩みを大きく転換する安全保障関連法が参院で可決、成立した。自衛隊の海外派兵と対米支援を可能とする新たな法制で日本は本当により安全な国へと生まれ変わるのか。iRONNA編集部が総力大特集でお届けする安保法制特集を通じて、わが国の安全保障について改めて考えていただきたい。

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    自主的に窮乏生活を選択したギリシャ国民のプライド

     61%対39%。ギリシャで5日行われたEUが求めている財政緊縮策の受入れの是非を問う国民投票の結果は、「拮抗」という事前世論調査とかけ離れた「大差」での否決となった。 国民投票でEUが要求する財政緊縮策が「大差」で否決されたことで、今後の焦点は再びEUがギリシャ支援を続けるのかどうかに戻る格好になった。 「IMF融資は返済されていない。これはすぐにデフォルトとはならず、返済の遅滞になる」 6月30日に期限を迎えた国際通貨基金(IMF)への15億5000万ユーロ(約2100億円)の支払いが履行されず、ギリシャはIMFから受けた融資で事実上のデフォルト(債務不履行)状態に陥る史上初の先進国となった際に、欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのオーストリア中銀総裁はこのように述べ、「デフォルトではなく返済の遅滞に当たる」との認識を示した。 ギリシャの国民投票でEUが要求する財政緊縮策が否決されたことで、EUがギリシャへの支援を打ち切り、ギリシャがユーロ離脱に追い込まれることで、世界経済に大きな打撃が及ぶという見方も出て来ている。しかし、問題はそれほど単純なものではない。 ギリシャが抱える債務は約40兆円といわれており、負債総額においてはリーマン・ショックを引き起したリーマン・ブラザーズの約60兆円に匹敵する規模である。しかし、負債総額の大きさと世界の金融市場への影響の大きさは比例するものではない。リーマン・ショックと比較すると、金融市場に及ぼす影響はかなり限定的なものに留まる可能性が高い。それは、ギリシャの抱える債務約40兆円のうち、既に大半の約33兆円がIMFやECBといった公的機関の保有になっているからだ。 リーマン・ショックでは民間で起きた負の連鎖が金融システムを揺るがすことになったのに対して、今回は公的機関が既に大半の債務を引き受けていることで負の連鎖は起き難く、金融システムを揺るがす事態に至る可能性が低いということだ。負債はその規模だけでなく、誰に保有されているかによって影響は大きく異なってくるということを忘れてはならない。 国民投票でEUが要求する財政緊縮策が否決されたことで、ギリシャが財政緊縮策をとらなくなるという見方もある。しかし、今回の国民投票の結果に関らず、ギリシャが財政緊縮策を実施せざるを得ないことに変わりはない。 国民投票で緊縮財政を受け入れることになれば、EUの要求に沿ってまずはギリシャ国民が年金カットや支給年齢引き上げなどの痛みを負うことになったはずであるが、否決されたことで一旦これは棚上げされた。 しかし、ギリシャはデフォルトに追い込まれるか否かに関らず、EUやIMF、ECBからの資金援助が絶たれれば、今のような年金制度を始めとした社会制度を維持することは出来ないため、結局ギリシャ国民は緊縮財政を受け入れた場合と同じ負担を負うことになる。 ギリシャ国民にとっての違いは、ギリシャが抱える対外債務が減額される中で窮乏生活をするか、それとも借金を負ったままEUの監視下で窮乏生活を強いられるかである。結果が同じだとしたら、対外債務が減らせ、自主的に窮乏生活を選択した方が賢明ということになる。これは経済合理性だけではなく、国民のプライドの問題だ。 ギリシャのデフォルトが、これまで何回も起きている国家のデフォルトと決定的に違うことは、「先進国初」ということではなく、「統一通貨ユーロを採用している国初」であるところである。債権国側が懸念していることは、金融的に負の連鎖が限定的であったとしても、統一通貨を通した影響が未知数なところである。極論すれば、ギリシャ経済の行く末ではなく、ユーロの行く末だということだ。 金融市場の波乱を防ぐために必要なことは、市場にユーロ崩壊懸念を抱かせないことである。そのためには、安易にギリシャをユーロ離脱させるわけにはいかない。明確な追放ルールがない中でギリシャをユーロ離脱に追い込めば、金融市場に「第二のギリシャ」を探す口実を与えることになってしまうからだ。 ドイツを筆頭にEU首脳やオバマ大統領がギリシャのユーロ離脱を阻止する姿勢を示しているのも、ユーロ崩壊懸念の高まりが金融システムに大きな打撃になることを理解しているからに他ならない。 そうかといってEUやECBがデフォルトした国に支援を続けることは難しいし、支援しなければ資金が足りないギリシャはユーロに代わる代替通貨を発行せざるを得なくなる。これはユーロ圏の金融政策をECBが担うという統一通貨ユーロ制度を根幹から揺るがしかねないものであると同時に、ギリシャにユーロ離脱を迫るものでもある。 忘れてならないことは、経済格差が厳然と存在する国によって形成される統一通貨ユーロは、「どのように分割してもドイツが属するグループの通貨が強くなる」という宿命を抱えていることである。これはドイツの立場からいえば「常に国力よりも弱い通貨を持てる」というメリットがあるということである。 日米を筆頭に多くの国が金融緩和による通貨安政策によって景気を回復させようとしているのに対して、ドイツはユーロ内に財政的な脆弱な国を抱え込むことで通貨安を享受できる体制を持っているという現実を忘れてはならない。ギリシャをユーロから離脱させてしまえば、通貨ユーロは以前より強くなってしまい、ドイツなどユーロ内の勝組国は通貨安のメリットを享受出来なくなってしまう。 市場ではECBが保有するギリシャ国債4,900億円が償還を迎える7月20日がギリシャデフォルトの「Xデイ」だとする見方も多い。しかし、金融システムを守る立場にいる中央銀行(ECB)が、金融システムの崩壊を招きかねないデフォルトの引き金を引くだろうか。 リーマン・ショックもそうだが、世界の中央銀行は金融危機に対しては超法規的措置ともいえるような対応をしてまで、金融システムを守って来た歴史を持っている。ECBはこうした中央銀行の歴史に終止符を打つのだろうか。終止符を打つとしたら、それは「中央銀行は金融システムの番人である」という金融市場が抱いている常識に「解釈変更」を迫るものとなる。 このように考えると、債務の一部削減と、緊縮財政の一部受入れで合意し、EUとECBがギリシャ支援を続ける道筋を残すことで、統一通貨ユーロを維持ししていくというのが「大人の落としどころ」ではないか。 「デフォルトではなく遅滞」 IMFとECBが示した玉虫色の判断が、今後のギリシャ問題解決への道筋の全てを物語っているように思えてならない。今後の交渉は債務削減幅になりそうだ。関連記事■ ギリシャが“借金”踏み倒したらどうなるのか■ 国際金融市場から実質隔離されたギリシャ 金融的な影響は限定的だ■ 「EUは金融支援で駆け引きするギリシャを許すな」と大前氏

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    国際金融市場から実質隔離されたギリシャ 金融的な影響は限定的だ

    近藤駿介(経済評論家、コラムニスト) 6月29日の日経平均株価は、週末にギリシャへの金融支援を巡る協議が決裂し、同国の債務不履行(デフォルト)への懸念が強まったことに、中国上海市場の大幅下落が重なり、596円安と今年最大の下げを記録した。下げ幅は2014年2月4日(610円)以来ほぼ1年5か月ぶりの大きさとなった。デフォルトを避けたいのはどちらか 今回株価の下落幅が大きくなった一つの原因は、多くの投資家がギリシャ問題に対して2つの誤解を抱いていたことにあるように考えている。 まず一つ目は、ギリシャ側とEU側のどちらがデフォルトを避けたいと思っていたかという点である。 今回の金融支援交渉に関する日本メディアの論調は、「デフォルトを避けたいギリシャがEUからの支援を取り付けるために瀬戸際外交を行っている」というものであった。しかし、「ギリシャがデフォルトを回避したい」という見方は、先入観に基づいた一方的な思い込みであり、実際には「デフォルトを前提に再建策を求めるギリシャと、デフォルトを回避したいEU」という構図であった可能性が高い。 緊縮財政反対を表明して政権についたチプラス首相にとって最も重要なことは、緊縮財政を拒否することで、緊縮財政を条件とした金融支援を受け入れるという選択肢はほとんどなかったと言える。 緊縮財政を採らずに経済を再生させるとしたら、それは債務カットを伴うものにならざるを得ない。債務カットするということは、債務国であるギリシャも、債権国であるEU側も、実質ギリシャの破綻を認めなければならない。だとすると、一連の協議は、実質的に破綻していることを認めることで債務カットを取り付けたいギリシャと、債務カットを受け入れ難いためにギリシャの破綻を認めたくないEUとの瀬戸際の交渉だったということになる。 もし、投資家が「デフォルトを回避したいのはギリシャ側である」という先入観に取りつかれるのではなく、「デフォルトを回避したいのはEU側である」という認識を少しでも持っていれば、ギリシャのデフォルト懸念がこれほど金融市場に大きな衝撃を与えなかったはずだ。デフォルトとユーロ離脱は別問題 2つ目の誤解は、ギリシャのユーロ離脱に関するものである。 支援が打ち切られギリシャがデフォルトに向かえば、ギリシャはユーロ離脱に追い込まれるという見方が多い。しかし、ギリシャのデフォルトとユーロ離脱は別問題として捉えるべきである。 ギリシャがユーロ離脱に追い込まれ、独自の通貨ドラクマを復活させたとすると、ドラクマは対ユーロに対して大幅に安くなるはずである。ということは、EU側がギリシャに対して持つ債権をユーロ建にしようとドラクマ建にしようとEU側から見ればギリシャ向け債権は紙屑同様になり、ギリシャ側から見たら返済不可能な債務になるということである。 このように考えると、ギリシャがデフォルトに追い込まれようと回避しようと、ギリシャのユーロ離脱はギリシャ、EU双方にとって価値のない選択だといえる。 今回EU側が避けなければならないのは、ギリシャ危機が周辺国に広がりを見せることである。幸か不幸か、ユーロ参加には条件が設定されているが、ユーロ離脱に関する明確なルールはない。明確な離脱ルールがない中でEU側がギリシャをユーロ離脱に追い込むということは、マーケットに第2のギリシャを探すようそそのかすようなものである。こうした無用なリスクをEU側が抱え込むとは考えにくい。 メルケル独首相はオバマ米大統領と28日に電話で協議。ギリシャのユーロ残留が重要だという認識で一致した。またルー米財務長官はチプラス首相との電話協議で、危機への持続可能な解決策を見いだすことがギリシャの利益に最もかなうと話した。ギリシャ:銀行休業と資本規制-国内金融システム崩壊回避へ (Bloomberg、2015.06.29) 日本のメディアではあまり取り上げられていないが、今回のギリシャ問題に対して、メルケル独首相とオバマ米大統領が「ギリシャのユーロ残留が重要だという認識で一致した」ことは重要なニュースだと思っている。「リスク不感症」の日本市場打撃を受けるのは国際金融市場ではない 1980年代から中南米危機を時間をかけて処理して来た経験を持つ米国と、最大の債権国であるドイツが「ギリシャのユーロ残留」が重要であるという点で認識の一致を見たということは、EU側も米国側もギリシャをユーロ離脱に追い込むことが、国際金融市場に大きな打撃を与える可能性が高いことを認識していることを示唆したものであり、投資家にとって心強いものである。 ギリシャの四大銀行と呼ばれる最大手ナショナル銀行、ユーロバンク、アルファ銀行、ピレウス銀行の命綱がECBによる資金供給だ。各行の資料によると、5月時点で四大銀が利用したECB融資の金額は1千億ユーロを超え、国内預金残高に近い水準まで依存度を高めた。今回のECBの決定は大きな打撃となる。預金流出、半年で2割 ギリシャの銀行(日本経済新聞 電子版、2015.06.29) ECBがギリシャに対する資金供給の上限枠を引上げないという決定がギリシャの銀行に大きな打撃になるという報道もみられる。確かに、ギリシャの銀行にとって、今回のECBの決定が資金繰り上大きな打撃であることは事実である。 しかし、ギリシャの銀行にとって大きな打撃になるということと、国際金融市場にとって大きな打撃になることは別次元の問題である。ギリシャの銀行が、資金調達を国際金融市場からではなくECBに頼っているということは、言い換えればギリシャの銀行が破綻に追い込まれたとしても打撃を受けるのはECBであって、国際金融市場ではないということでもある。「リスク不感症」の日本市場 今回のギリシャ危機が、震源地でない日本株の大幅下落を招いたのは、多くの投資家がギリシャ問題に関して誤解を抱いていたことに加え、日本の株式市場が日銀のETF購入やGPIFの日本株組入れ比率の引上げなどによって「リスク不感症」になっていたからである。ギリシャのデフォルト懸念を受けて安値を示す株価ボード=6月29日午前、東京都中央区(長尾みなみ撮影) 金融的には、国際金融市場から実質隔離されているギリシャ危機の影響は、EU側がギリシャをユーロ離脱に追い込むというような誤った対応を採らない限り、限定的なものに留まる可能性が高いと思われる。 さらに、この2週間で20%以上の大幅な株価下落を記録している中国上海市場の影響も、中国市場が国際金融市場から隔離されていることを考えると、金融的な影響は限定的である。 ギリシャと中国という、国際金融市場から実質隔離されている国で起きた危機によって、日本株は今年最大の下落幅を記録した。しかし、国際金融市場から実質隔離された国で起きた危機は、金融的な影響という意味では限定的なものである可能性は高い。懸念しなければならないことは、ギリシャ危機に伴う欧州経済の変調や、株価急落による中国経済への影響である。これらは今後ボディーブローのように日本経済、日本市場に効いてくる可能性はある。 それによる影響を最小限に食い止めることが出来るか否かは、それまでに日本が「先入観による思い込み」と「リスク不感症」から脱しているかに掛かっている。関連記事■ シェール革命はサブプライム危機の二の舞か■ 混乱の時代に国家の意義見直せ■ 「高負担」受容し財政危機避けよ

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    「シェア確保」か「イスラム国」弱体化か

    近藤駿介(評論家、コラムニスト)原油価格60ドル割れ 11日のNY市場では原油が値下がりし、2009年7月14日以来5年5か月ぶりに終値で60ドルを下回りました。世界経済が低迷する中で、サウジアラビアが減産を否定したことで供給過剰懸念を招いていることが売りを誘ったと言われています。そして、サウジが減産に応じないのは、シェールオイルからシェアを守るためであるとか、ロシア叩きであるといった憶測が流れています。サウジアラビアの首都リヤド市街 確かにシェール革命による影響もありますが、シェールオイルのシェア自体は現在4~5%程度に過ぎません。また、シェールオイルの生産コストは1バレル65ドル程度といわれていますから、シェールオイルからシェアを守ることが目的であるのだとしたら、原油価格が60ドルを割れて来たことでその目的は達成しつつあることになります。したがって、原油価格が50ドル台で安定するのであればサウジもそろそろ減産に舵を切っても不思議ではない状況だといえます。 しかし、サウジのターゲットがシェールオイルに対するシェアの維持ではなく、「イスラム国」に打撃を与えるためだとしたら、まだまだ減産に舵を切るとは言い切れません。 「イスラム国」の勢力が衰えないのは占領した地域の油田からの収入という財政的基盤があるからだと言われています。 テロとの戦いにおいての常套手段は、「資金源を断つ」ことです。もし、サウジが「イスラム国」の弱体化を狙っているとしたら、中東産油国の原油生産コストは30ドル台だといわれているなかで、原油価格が60ドルを割ったからといって直ちに生産調整に転じる可能性は低いと考えなければいけません。 サウジが減産しないという決断には、当然米国の意向も反映されているはずです。 今年8月に米国はシリア領内の「イスラム国」に対する空爆に踏み切りました。しかし、その効果は限定的だと言われています。そして、この空爆で注目を集めたのはサウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーン、カタールといった、イスラム教スンニ派の国が参加したことです。 シリア領内の「イスラム国」に対する空爆の成果が上がらない中、米国では今月、「イスラム国」に対する地上軍投入を主張していたヘーゲル国防長官が事実上更迭されました。 「最高司令官として米軍に新たな地上戦を戦わせることはしない」と述べて来たオバマ大統領にとって、米国が地上軍を派遣し本格的な戦闘に巻き込まれることを避けつつ、「イスラム国」を弱体化させるには「資金源を断つ以外にない」と考えるのは、ある意味当然の選択です。副産物としてロシア経済の弱体化も図ることが出来るという点では一石二鳥でもあります。 中間選挙で歴史的敗北を喫したオバマ民主党にとって、「イスラム国」弱体化という安全保障上の成果を上げつつ、国内景気を浮揚させる石油価格の下落は、次期大統領選挙に向けてのいい材料となり得るものです。 QE3終了により金融政策による景気浮揚効果にこれ以上の期待がかけられなくなった今、石油価格の下落は景気浮揚のために有効な手段です。原油価格の下落はインフレ率の低下要因になりますが、雇用環境が改善しているなかではそれを上回る景気刺激効果も期待できます。FRBが来夏にも利上げに動くと目されているなかで、原油価格下落によるインフレ率の低下は市場金利の上昇を抑えますから、金利上昇に伴う景気抑制効果を緩和することも期待出来ます。 次期大統領選挙までの期間、安全保障と景気の両面で有権者に成果をアピールするためには、原油価格を低く抑えるというのはオバマ大統領にとって悪い話しではありません。このように考えると、米国大統領選挙が終わる2016年までのこの先2年間は、原油価格がサウジの生産調整によって反転する可能性は高くないのかもしれません。 以上は、「元ファンドマネージャー近藤駿介の実践資産運用サロン」に投稿した記事を加筆修正したものです。マーケットに関るコメント及びご質問は「元ファンドマネージャー近藤駿介の実践資産運用サロン」の中でしておりますので、エコノミストなどとは異なった運用者の立場からの市場や経済の見方にご興味のある方は是非ご参加下さい。 原油価格の下落によって米国は政治的にも経済的にも恩恵を受ける可能性があります。これに対して「2%の物価安定目標」という歪んだ政策目標が設定されている日本では、闇雲な金融緩和によって原油安メリットを享受できないかもしれません。 「異次元の金融緩和」という全く意味のない財政コストのかかる政策を推し進め、その結果生じた円安の悪影響を財政支出で埋め合わせるというのが、財政再建を求められている政府が行う政策として正しいものなのでしょうか。財政コストを掛けて円安誘導を行い、それによって空いた穴を財政コストを掛けて埋めるような政策を繰り返している限り、財政再建など望むべくもありません。 安倍総理と黒田総裁の金融・経済の音痴ぶりにも呆れますが、こうした矛盾した経済政策を「アベノミクス選挙」の論点として取り上げない野党の無能さにも失望する限りです。(ブログ「近藤駿介 In My Opinion」より)関連記事■ 「アル=カーイダ3.0」世代と変わるグローバル・ジハード■ 「イスラム国」は空爆国が育てた■ 「イスラム国」の力の源泉とは…

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    「根拠なき熱狂」の再来か、「根拠なき安心感」へのしっぺ返しか

    2015年、中央銀行にとって試練の年近藤駿介(評論家、コラムニスト) 2015年の金融市場は、長期金利の低下、原油価格の下落、ドル高、株価横這いという形でのスタートとなりました。 2015年の金融市場の最大の関心事は米国の利上げ時期にあることは間違いありません。しかし、FRBによる利上げ時期が最大関心事になり、市場がそれを織り込みに行く中で長期金利は低下傾向を強めるという捻れ現象が起きていることは興味深いことです。終値が1万7千円以下まで下がった日経平均を示す株価ボード=1月6日午後、大阪市中央区(沢野貴信撮影) 個人的には2015年は日米欧の中央銀行にとって試練の年になるような気がしています。 まず、米国。市場のコンセンサスは2015年夏場からの利上げというものですが、個人的にはFRBの利上げはもっと先になるような気がしています。 それは、成長率こそ年率5%と11年ぶりの伸びを示しているものの、インフレ率は前年比+1.3%と、半年前の+2.1%をピークに明らかに低下傾向を示し、2%というインフレターゲットから遠ざかって来ているからです。 FRBが利上げに動くためには、少なくともディスインフレ懸念が払拭されることが必要です。インフレ懸念が全くなく、ディスインフレやデフレ懸念が残る中で利上げに踏み切るということは、実質金利(=名目金利-インフレ率)の上昇を通して、米国経済に悪影響を及ぼすからです。 インフレターゲットに届かない中でFRBが0金利政策から脱出するとしたら、市場金利の上昇に追随する形で政策金利を引き上げる以外にありません。市場金利に追随する形であれば、政策金利の上昇が実質金利の上昇を招かないからです。 FRBは1994年にインフレ懸念が顕在化する前に、当時のグリーンスパンFRB議長が「先制攻撃(Preemptive Strike)」と称してインフレに先行する形で利上げに踏み切った実績を持っています。しかし、潜在的なインフレリスクが高まってきていた1994年当時と、5%成長を達成してもディスインフレ懸念が払拭されない現在とは大きく状況は異なっており、イエレン議長はとても「Preemptive Strike」を決行できる状況にはありません。 そうした中で、原油価格の下落などもあり、頼みの市場金利も低下傾向を示して来ています。米国の2年国債の利回りは、10年債利回りが年末にかけて1ヶ月で0.1%近く低下する中、FRBの夏場利上げを織り込む形で年末には0.73%と、1か月前から0.2%上昇して来ていました。しかし、年明けには世界的な金利低下の影響もあり、0.67%へと低下して来ており、FRBが市場金利を追認する形での利上げに踏み切り難い状況になっています。 つまり、FRBは、経済指標の面からも、市場金利の面でも、利上げに踏み切り難い状況に陥りつつあるということです。金融市場が利上げを見込んでいる夏場に向けてFRBが利上げに踏み切れない状況が鮮明になって行くとしたら、市場はどのような反応を示すのでしょうか。 グリーンスパンFRB元議長が市場の予想を裏切る形で1994年から利上げに踏みきったことで債券市場は混乱しましたが、それを尻目に株価はグリーンスパン元議長の有名な「根拠なき熱狂」発言を引出すまで上昇し続けました。 今回もFRBが利上げに踏み切れないという想定外の状況に陥った場合、株式市場は「根拠なき熱狂」を続けるのでしょうか。 FRBの利上げの陰に隠れた格好になっていますが、個人的にはECBの量的緩和にも注目しています。 FRBは打ち止め、日銀は拡大、ECBはこれからと、現在日米欧の金融緩和のステージは明確に異なっており、市場はこうしたステージの違いを前提に動いています。金融緩和のステージの違いを金融市場は織り込んでいますが、もう一つの日米欧の金融政策の相違点は織り込んでいないように思えます。それは、準備預金に関するものです。 FRBも日銀も、法的準備預金には付利をしていませんが、それを上回る超過準備預金にはそれぞれ0.25%、0.1%の付利をしています。これに対して、ECBは、法定準備預金には一定の金利を付利していますが、超過準備預金には付利をするどころかマイナス金利を採用しています。 超過準備預金に付利をしている日米両国による量的緩和は、結果的に供給されたマネーのほとんどが中央銀行にもどり、準備預金総額が法定準備預金の18~20倍に達するという異常な状態を作り上げました。一方では、こうした異常な準備預金残高は、中央銀行の付利によって、供給された資金が中央銀行に戻るという実質的不胎化効果も生み、これがインフレ抑制効果を発揮していたとも言えるものです。 しかし、ECBは超過準備預金に付利しないばかりか、マイナス金利を適用しますから、日米のように中央銀行が供給した資金が中央銀行に還流し、実質的不胎化効果を発揮することは日米ほど期待できません。つまり、ECBが供給する資金は、中央銀行に戻ることなく世界の金融市場を彷徨い続ける可能性があるということです。 このECBによって供給された、ECBに還流し難いマネーはどこに流れるのでしょうか。ECBによる大規模な量的緩和は、FRBや日銀が行って来た「中央銀行に還流する可能性の高い量的緩和」とは異なっていることを市場はまだ認識していないように思います。 FRBが市場の想定通りに夏場に利上げを実施できるのか、ECBが「中央銀行に還流する可能性の低い資金」、換言すれば「バブルを生みかねない資金」をコントロールできるのか。2015年の金融市場は、これまで中央銀行も投資家も経験したことのない状況に足を踏み入れることになります。 このように金融政策が非常に難しくなるなか、日本は金融の専門家ではなく、行政官である日銀総裁に金融政策を委ね、まさに「神のご加護を」といった状況です。 日本のマスコミや専門家達は年末から盛んに「根拠なき安心感」を振り撒いています。確かに、ECBによって「バブルを生みかねない資金」が供給される可能性もありますから、「根拠なき熱狂」の再来があるかもしれません。しかし、結果はともかく、2015年の金融市場は彼らの主張ほどは簡単ではないということは肝に銘じておいた方がよさそうです。(ブログ「近藤駿介 In My Opinion」より)■ 総理、ただちに成長政策の総動員を (田村秀男氏)