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    オバマが外交攻勢を開始 中南米で影響力を競う米中

    や投資をして、経済面を中心に中南米との関係強化を目指してきました。今年1月8‐9日には、中国・ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体フォーラム(CELAC・反米のベネズエラが主導し、中南米33か国が加盟する地域機構)の閣僚級会合が北京で開催されました。習近平は、その会議で、インフラ整備や資源開発などに2019年までに350億ドルの借款を約束し、2020年から10年間に2500億ドルを投資する意向もあると述べました。貿易についても、上記記事にあるように、今の2570億ドルを2019年までに倍増したいと述べました。中国は、従来の路線を引き続きとっています。 しかし、石油価格が半減したなかで、ベネズエラは経済が大きな困難に直面し、対外債務についてデフォルトを起こしそうになっています。中国のベネズエラに対する債権の額については、約500億ドルと言われていますが、これがデフォルトになると大変です。ベネズエラのマドュロ大統領の1月訪中で、どういう話が行われたか、詳細は不明ですが、中国は緊急融資にすんなり応じなかったようです。 他方、米国は、キューバとの国交正常化に踏み切りました。オバマのレガシー作りなどと言われていますが、外交は相手がいる話で、キューバ側にも国交正常化に踏み出す事情が必要です。キューバは、ベネズエラからの石油の支援で経済が維持されていましたが、これが思うように行われなくなったことが対米関係の調整にキューバを向かわせた一因ではないかと思われます。 石油価格の下落は、中南米における地政学的状況に大きなインパクトを与えてきています。 石油価格の下落で、ベネズエラは厳しい状況にあり、中国にとってはエネルギー利権を安価に入手する機会になり得ます。中国の対ベネズエラ政策は今後、その方向で展開されるでしょう。すなわち、利権の獲得と支援をセットにしたものになってくる可能性があります。 日本企業も原油価格が低い今、中南米に限らず、より一般的に、エネルギー利権、LNG価格の長期契約での有利な取引を探求できればよいと考えます。関連記事■ 「世界の警察官」を放棄 不安抱え続ける同盟国■ アメリカを巻き込んだコミンテルンの東アジア戦略■ 移民「毎年20万人」受け入れ構想の怪しさ

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    米・キューバ、国交正常化は何をもたらすか

    「キューバ危機」から半世紀をへて動き出した米国とキューバの国交正常化交渉。しかし、政策転換により変革を促したい米国に対し、キューバは社会主義体制の維持を貫こうとする。両国対立の歴史に終止符は打たれるのか。そして国際社会への影響は。

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    女性政治犯にも暴力、「政権に従え」強要…キューバ刑務所の現実

    めた。関連記事■ 国連人権決議は金正恩氏への「核爆弾」である■  「イスラム国」は空爆国が育てた■ アメリカを巻き込んだコミンテルンの東アジア戦略

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    米・キューバの国交正常化交渉が宿す三つの象徴性

    るというのが現状であり、民主・共和双方が支持を取り込もうと躍起になっているのだ。 かつて、キューバ系アメリカ人の多くは、キューバからの亡命者が多く、カストロ政権が支配するキューバへの強硬策を支持していたが、潮目は変わったようである。米国の経済制裁は、カストロ政権を倒すことに効果はなく、むしろ、一般的なキューバ国民を苦しめているだけであった。冷戦が崩壊して、キューバと米国以外の国々との経済的交流も活発化してきており、キューバ系アメリカ人の間には、この流れに乗り遅れるなという発想も生じている。このような世論の変化が今般の政策変更を後押ししたことは間違いない。 三つ目の象徴性は、今回の政策変更が典型的なレガシー・ビルディングであることである。オバマ政権は、二期目の中間選挙を終えた今、選挙のプレッシャーにさらされていない。このような時期には、政権の偉業=レガシーとなるような政策に取り組む例が多いのである。それまでの政治的現実から解放され、異なる論理や優先順位で政策判断を行う道が開けるからだ。上下両院を共和党に支配され、オバマ政権が内政において大きな成果を上げられる可能性は少ないので、大統領の権限が強い外交分野に注目が集まることになる。 この種のレガシー・ビルディングには良い部分もあるのだが、米国の同盟国である日本にとっては要注意でもある。それまでの政策の常識とは異なる判断が行われる可能性があるからだ。例えば、対中国や対北朝鮮で、米国の政策がガラッと変わってしまうこともあり得る。オバマ政権は、米国の外交政策における東アジア重視を掲げる割に、実際には掛け声倒れの感があるので、それほど可能性が高いとは思わないが、大統領が北朝鮮との国交正常化に舵を切る可能性も否定はできない。実際、キューバやイランに対してはこれまでとずいぶん違う方向に向かっている。 変化の可能性がもっとも高いのは、対中国政策であろう。米国の冷戦後の対中国政策は腰が定まっておらず、その時々で大きく揺れ動いてきた。安全保障分野では、中国を脅威とみなす一方で、米国企業は中国市場でのシェア獲得にしのぎを削っており、米政府もそれを後押ししてきた。オバマ政権が残りの任期中に、この分野で大きな政策変更を行う可能性は否定できない。 米国の対キューバ政策の変更が日本に与える影響は大きくないが、米国が政策を急旋回する可能性は日本にとって他人事ではないのである。関連記事■ アメリカを巻き込んだコミンテルンの東アジア戦略■ 中華人民共和国は最後の「盗賊王朝」だ■ ナショナリズムという「病」

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    ヒト・モノ・情報はキューバを変えるのか

    しすぎれば、批判の火の手はさらに燃えさかる。関連記事■ 不動産バブル崩壊でも人民元が増長する秘密■ アメリカを巻き込んだコミンテルンの東アジア戦略■ 移民政策の本当の怖さ

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    断絶中も裏でつながっていた米国とキューバ

    省し、情報調査局情報課で研修生をしていたときだ。先輩の課長補佐が、キューバ勤務から戻ったばかりで、「アメリカとキューバの関係は、外から見ているほど、悪くはないよ」と言って、スイス大使館の話を聞かせてくれた。外交の実態とはこういうことかと筆者は興奮した。 89年11月にベルリンの壁が崩れ東西冷戦が終焉(しゅうえん)し、91年12月に崩壊した。キューバはソ連と軍事的につながっていたから米国の脅威だった。裏返して言うならば、外国の核の傘に入っていないキューバは、社会主義を掲げていても、米国にとって脅威ではない。しかし、米国の歴代大統領がキューバとの正常化に踏み込めなかったのは、フロリダに集中して居住するキューバからの移民が、社会主義政権に対する強硬策を主張する強力なロビー活動を展開していたからだ。オバマ大統領は、キューバ移民を敵に回しても、キューバとの関係正常化を選択した。その動機は、歴史に名前を残すことだと思う。 今回の米・キューバ関係正常化には、バチカン(カトリック教会)が大きな影響力を行使したようだ。<米政府高官によると今回、両国政府はローマ法王とカナダ政府の仲介で2013年6月から秘密裏に接触を続けてきたという>(12月18日、産経ニュース) 米国とバチカンのインテリジェンス協力は、キューバだけでなく、中国、中東でも積極的に行われている。世界宗教が外交に与える影響が可視化された事例としても本件は興味深い。

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    シェール革命は失敗なのか

    石油に依存するわが国にとって、原油安は福音だ。だが、そう楽観もしていられない。シェール革命のウソが金融システム崩壊の引き金になるかもしれないからだ。シェール革命が引き起こす危機の本質とは。そして、2015年の世界経済の波乱要因とは。

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    世界市場の乱高下の仕掛け人は誰なのか

    EC(石油輸出国機構)の価格支配力はすでにない。必ずしも需給を反映しないし、政府にも統制力はない。 アメリカのエクソン・モービルをはじめ、原油の市場シェアを寡占している石油メジャー(大手6社のうち3社が米企業)は、自ら巨額のマネーを運用しながら、原油の投機筋と一体となって市場を動かしている。石油メジャーと投機マネーが資金を引き揚げない限り、こんな原油安は起きないのだ。 では、彼らの狙いはどこにあるのか。 米国でシェール開発を手がけている100近いベンチャーの大半は中小の事業者だが、原油価格が50ドルを割り込んで採算が合わなくなっている。今年1月に米テキサス州のシェール企業、WBHエナジーが60億円の負債を抱えて破綻したが、今後、破綻が相次ぐと見て間違いない。それらの会社や生産設備を二束三文で買い叩くのが石油メジャーだ。 一方、原油投機のヘッジファンドなどはスーパータンカー(超大型石油タンカー)を仕立て、原油を安値で買い漁って満載し、価格が再び上昇するのを待ち受けている。 つまり、石油メジャーやヘッジファンドのように、一見原油安で損しそうなプレーヤーほど、長期的に見れば利益を得る仕組みになっている。原油価格が上昇に転じるとしたら、地政学的なリスクが高まったときである。 彼らは原油価格の下落でロシアが窮地に陥ることも織り込み済みだ。ルーブル安によるインフレで国民生活は苦しくなり、プーチンに対する支持率は低下しつつある。支持率回復のため、新たな戦争を始める可能性は十分ある。 火種はそれだけではない。サウジが減産しないのは、シェール潰しではなく、産油国内の主導権争いが理由だ。 サウジの「20ドルまで下がっても減産しない」という宣言は、他の産油国に対する恫喝だ。現実にそこまで下がると、余裕のあるサウジと違い、他の産油国は経済的に困窮する。暴発の危険があるのはイランで、サウジとの間で紛争が起きても不思議ではない。 紛争により原油価格が上昇すれば、石油メジャーが傘下に収めたシェール企業は再び利益を出し、投機筋もぼろ儲けできる。別に意外な話ではない。似たようなシナリオは過去に何度も繰り返されてきたのである。関連記事■ 日本はLNGバカ高購入 日本の電力事情知るカタールがふっかけた■ 経済の千里眼氏 原油価格が2割落ち込めば日本株暴落もある■ 円高で光熱費は安くなる? 電気やガスは3か月後になる■ シェールガス開発で天然ガスは半値、原油も大幅引き下げへ■ 金融コンサルタント「原油価格高騰は日本経済に大チャンス」

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    シェール革命はサブプライム危機の二の舞か

    関連記事■ シェール革命で、日本は戦後最大のエネルギー危機をむかえる!■ 資源インフレは再来する■ アメリカがアベノミクスに味方する理由〔1〕

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    地を這うオバマ人気と上昇する米経済

    これからの世界を占う上で、レイムダック化したオバマ大統領と米国経済強気論のあいだには何があるのか。米国で進行中の極端な格差は、日本にとっても他人事ではないようだ。安倍総理、どうかご用心召されよ。

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    「根拠なき熱狂」の再来か、「根拠なき安心感」へのしっぺ返しか

    2015年、中央銀行にとって試練の年近藤駿介(評論家、コラムニスト) 2015年の金融市場は、長期金利の低下、原油価格の下落、ドル高、株価横這いという形でのスタートとなりました。 2015年の金融市場の最大の関心事は米国の利上げ時期にあることは間違いありません。しかし、FRBによる利上げ時期が最大関心事になり、市場がそれを織り込みに行く中で長期金利は低下傾向を強めるという捻れ現象が起きていることは興味深いことです。終値が1万7千円以下まで下がった日経平均を示す株価ボード=1月6日午後、大阪市中央区(沢野貴信撮影) 個人的には2015年は日米欧の中央銀行にとって試練の年になるような気がしています。 まず、米国。市場のコンセンサスは2015年夏場からの利上げというものですが、個人的にはFRBの利上げはもっと先になるような気がしています。 それは、成長率こそ年率5%と11年ぶりの伸びを示しているものの、インフレ率は前年比+1.3%と、半年前の+2.1%をピークに明らかに低下傾向を示し、2%というインフレターゲットから遠ざかって来ているからです。 FRBが利上げに動くためには、少なくともディスインフレ懸念が払拭されることが必要です。インフレ懸念が全くなく、ディスインフレやデフレ懸念が残る中で利上げに踏み切るということは、実質金利(=名目金利-インフレ率)の上昇を通して、米国経済に悪影響を及ぼすからです。 インフレターゲットに届かない中でFRBが0金利政策から脱出するとしたら、市場金利の上昇に追随する形で政策金利を引き上げる以外にありません。市場金利に追随する形であれば、政策金利の上昇が実質金利の上昇を招かないからです。 FRBは1994年にインフレ懸念が顕在化する前に、当時のグリーンスパンFRB議長が「先制攻撃(Preemptive Strike)」と称してインフレに先行する形で利上げに踏み切った実績を持っています。しかし、潜在的なインフレリスクが高まってきていた1994年当時と、5%成長を達成してもディスインフレ懸念が払拭されない現在とは大きく状況は異なっており、イエレン議長はとても「Preemptive Strike」を決行できる状況にはありません。 そうした中で、原油価格の下落などもあり、頼みの市場金利も低下傾向を示して来ています。米国の2年国債の利回りは、10年債利回りが年末にかけて1ヶ月で0.1%近く低下する中、FRBの夏場利上げを織り込む形で年末には0.73%と、1か月前から0.2%上昇して来ていました。しかし、年明けには世界的な金利低下の影響もあり、0.67%へと低下して来ており、FRBが市場金利を追認する形での利上げに踏み切り難い状況になっています。 つまり、FRBは、経済指標の面からも、市場金利の面でも、利上げに踏み切り難い状況に陥りつつあるということです。金融市場が利上げを見込んでいる夏場に向けてFRBが利上げに踏み切れない状況が鮮明になって行くとしたら、市場はどのような反応を示すのでしょうか。 グリーンスパンFRB元議長が市場の予想を裏切る形で1994年から利上げに踏みきったことで債券市場は混乱しましたが、それを尻目に株価はグリーンスパン元議長の有名な「根拠なき熱狂」発言を引出すまで上昇し続けました。 今回もFRBが利上げに踏み切れないという想定外の状況に陥った場合、株式市場は「根拠なき熱狂」を続けるのでしょうか。 FRBの利上げの陰に隠れた格好になっていますが、個人的にはECBの量的緩和にも注目しています。 FRBは打ち止め、日銀は拡大、ECBはこれからと、現在日米欧の金融緩和のステージは明確に異なっており、市場はこうしたステージの違いを前提に動いています。金融緩和のステージの違いを金融市場は織り込んでいますが、もう一つの日米欧の金融政策の相違点は織り込んでいないように思えます。それは、準備預金に関するものです。 FRBも日銀も、法的準備預金には付利をしていませんが、それを上回る超過準備預金にはそれぞれ0.25%、0.1%の付利をしています。これに対して、ECBは、法定準備預金には一定の金利を付利していますが、超過準備預金には付利をするどころかマイナス金利を採用しています。 超過準備預金に付利をしている日米両国による量的緩和は、結果的に供給されたマネーのほとんどが中央銀行にもどり、準備預金総額が法定準備預金の18~20倍に達するという異常な状態を作り上げました。一方では、こうした異常な準備預金残高は、中央銀行の付利によって、供給された資金が中央銀行に戻るという実質的不胎化効果も生み、これがインフレ抑制効果を発揮していたとも言えるものです。 しかし、ECBは超過準備預金に付利しないばかりか、マイナス金利を適用しますから、日米のように中央銀行が供給した資金が中央銀行に還流し、実質的不胎化効果を発揮することは日米ほど期待できません。つまり、ECBが供給する資金は、中央銀行に戻ることなく世界の金融市場を彷徨い続ける可能性があるということです。 このECBによって供給された、ECBに還流し難いマネーはどこに流れるのでしょうか。ECBによる大規模な量的緩和は、FRBや日銀が行って来た「中央銀行に還流する可能性の高い量的緩和」とは異なっていることを市場はまだ認識していないように思います。 FRBが市場の想定通りに夏場に利上げを実施できるのか、ECBが「中央銀行に還流する可能性の低い資金」、換言すれば「バブルを生みかねない資金」をコントロールできるのか。2015年の金融市場は、これまで中央銀行も投資家も経験したことのない状況に足を踏み入れることになります。 このように金融政策が非常に難しくなるなか、日本は金融の専門家ではなく、行政官である日銀総裁に金融政策を委ね、まさに「神のご加護を」といった状況です。 日本のマスコミや専門家達は年末から盛んに「根拠なき安心感」を振り撒いています。確かに、ECBによって「バブルを生みかねない資金」が供給される可能性もありますから、「根拠なき熱狂」の再来があるかもしれません。しかし、結果はともかく、2015年の金融市場は彼らの主張ほどは簡単ではないということは肝に銘じておいた方がよさそうです。(ブログ「近藤駿介 In My Opinion」より)■ 総理、ただちに成長政策の総動員を (田村秀男氏)

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    「世界の警察官」を放棄 不安抱え続ける同盟国

    田久保忠衛(杏林大学名誉教授) 昭和8年、千葉県生まれ。外交評論家、杏林大学名誉教授。早稲田大学法学部卒。時事通信社でワシントン支局長などを歴任。59年に杏林大学教授、平成8年から現職。専門は国際政治。著書に『戦略家ニクソン』(中公新書)など。第12回正論大賞受賞。 安倍晋三首相の顰(ひそ)みに倣って地球儀を俯瞰(ふかん)すれば、日本の頼みの綱であるオバマ米大統領が「世界の警察官」役を放棄すると宣言したことではっきりした米国の「内向き」傾向に、同盟国や友好国が今年も不安を抱いた状態が続いていくということになろうか。 目に見えないタガが外れ、ロシアや中国周辺、中東での秩序は乱れている。シリアとイラクにかけては国家でない「イスラム国」が、ちょうど日本と同じ面積を何となく実効支配している異常は、鬱陶(うっとう)しいことこのうえない。疑問視された大統領の指導性 20世紀初頭にカリブ海に進出してきた外国の影響力を排除するために、セオドア・ルーズベルトは「でっかい棍棒(こんぼう)片手に猫なで声」外交を展開したが、オバマ政権は棍棒を使う意思がないとみられているところに、国際情勢混乱の一因が潜んでいるように思われる。 とりわけ、国際テロリスト勢力に対して、手の内を明かすような発言をホワイトハウスの最高司令官が口にしてはやりにくい、との気持ちが米国防総省の制服組にはかなり前から存在していたようだ。 どの部隊を何年何月までに撤収させるとか、地上戦闘部隊は投入しないとの発言を繰り返せば、性悪な敵に重要なヒントを与えてしまう。 さて、昨年12月に、アシュトン・カーター氏がチャック・ヘーゲル国防長官に代わり、次期国防長官に指名された。オバマ政権ではロバート・ゲーツ、レオン・パネッタの2国防長官が辞任しているから、4人目の国防長官となる。これは異例だし、ゲーツ、パネッタ両氏はそれぞれ回想録を書き、ホワイトハウスのあまりに細かい管理(micro-management)と大統領の指導性不足に注文をつけている。機能不全のホワイトハウス 事実上、更迭されたヘーゲル氏の人事をめぐるごたごたで明らかになったのは、デニス・マクドノー大統領首席補佐官、スーザン・ライス同補佐官(国家安全保障)ら大統領側近が壁を作り、国防総省だけでなく国務省との風通しがまことに悪くなっているという事実だ。ヘーゲル長官はシリア、ウクライナ、イスラム国問題などでホワイトハウスの戦略が不明であるうえ、決定に時間がかかるのに我慢ができなかったのだろう。 米国の内向きという曖昧な表現の実体を解明するのは難しいが、謎の葉を一枚一枚はがした末にたどりつく芯はホワイトハウスの機能不全だ。新国防長官に就任するカーター氏は物理学者で兵器の性能にも詳しいし、パネッタ国防長官の下で副長官として年間6千億ドルの国防総省関係予算を扱った経験を持つ。 英誌エコノミスト12月6日号は、カーター氏が2006年に北朝鮮に対して先制爆撃をすべしと論じたタカ派であることをオバマ大統領は知っているかね、とちゃかしたような記事を載せていたが、オバマ政権に残された2年間にはヘーゲル時代と別の政策が打ち出されるのか、あるいは外交・防衛に明るいといえない側近の壁は揺るがないのか。2年は続く米国の内向き傾向 戦後の冷戦は、突如として始まったベルリンの壁の崩壊を機にあっという間に終焉(しゅうえん)してしまった。ソ連帝国は74年間で歴史の幕を閉じた。代わって登場したのが1プラス6の国際秩序だ。軍事力、経済力、技術力、情報力などずば抜けた国力を持つ米国を、フランスのユベール・ベドリーヌ元外相は「ハイパー・パワー」と称した。その下で日本、中国、ロシア、英国、フランス、ドイツの6プレーヤーがそれぞれの役を演じてきた。しかし、1プラス6の時代も長くは続かなかった。中国、インド、ブラジルなどの諸国が著しく国力を増強させ、なかんずく中国はあっという間に米国に次ぐ世界第2の経済力、軍事力をつけてしまったのである。 米国は国力を維持し続けているし、移民などによる人口増で、主要国が抱える少子化問題に悩む必要はない。さらにシェール革命でエネルギーは自立から輸出国に転換する勢いがあるが、他の諸国の国力増大があるから、あくまでも相対的な国力低下にすぎない。 だが、オバマ大統領はイラクから撤退し、16年にはアフガニスタンからも撤兵する。海外で棍棒を使いたくないとの大統領の気持ちは強く、国防長官にカーター氏が指名されたにもかかわらず、内向きの傾向は少なくともあと2年間は続くと見なければならない。 米国にべったり寄りかかって棍棒を軽視してきた日本が何をすべきかはおのずと明らかだろう。ソフトパワー重視もいいが、アニメと日本食のPRを熱心に試みても尖閣諸島や小笠原諸島に不法に入ってきた中国船には何の効果もない。米国との絆を強めつつ日本は何をすべきか。安倍晋三首相はご自身が運命の人であることを自覚しておられると信じている。■ 中国大船団 自衛隊・機動隊で制圧せよ (一色正春氏)

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    米国経済強気論の真相を読む

    客員研究員、経済同友会調査役などを経て現職。ホームページ「溜池通信」を運営中。著書に『1985年』『アメリカの論理』(いずれも新潮新書)など。「景気が悪い」とは口にしにくい 先日来、いろいろな人に聞かれるのだが、「米国経済は好調だというのに、なぜオバマ大統領は人気がないのか」「なぜ、中間選挙であそこまで負けなければならなかったのか」――これが意外と答えにくい質問なのである。 表面的にいえば、米国経済は好調である。実質国内総生産(GDP)は2014年4―6月期が年率4.6%増、7―9月期が3.9%増となっている。国際通貨基金(IMF)は、10月7日の「世界経済見通し」で、米国経済の成長率を2014年に2.2%、15年は3.1%と予測している。 ちなみに世界各国のほとんどが下方修正されるなかで、米国のみが上方修正であった。 あるいは雇用情勢はどうか。一時期は10%を超えていた失業率は、足元では6%以下にまで低下している。市場の注目を集める非農業部門雇用者増減数は、2014年は毎月のように20万人を超えている。金融危機下にあった2008年と09年には、合計で870万人もの雇用が失われたが、その後の四年間では1000万人もの雇用が創出されている。 財政赤字も、すでにGDP比3%以下にまで改善している。税収が増加する一方で、予算の強制支出削減措置が効いた形である。 さらに株価は、といえばもちろん史上最高水準にある。これらの指標を見て「景気が悪い」とは、少なくともエコノミストとしては口にしにくいところである。悲観的な「民の声」 しかるに2014年11月4日の中間選挙は、与党・民主党に対して厳しい結果となった。景気指標が改善しているのにオバマ大統領の人気は地を這うがごときで、民主党の候補者たちはいかに「自分はオバマと違う」か、を懸命に説明しなければならなかった。もっとも、そういう努力はえてして裏目に出るもので、共和党は8年ぶりに上院における多数派の地位を獲得し、下院では第2次世界大戦後では最多の議席数を確保した模様である(一部に未確定議席があるため)。 いくら景気指標が好転していても、有権者の受け止め方はきわめて悲観的なものであった。以下はすべて、CNN(ケーブルニュースネットワーク)の出口調査で示された「民の声」である。*国が向かっている方向は……正しい:31%、間違っている:65%*経済状況を……心配している:78%、心配していない:21%*国の景気は……良い:29%、それほどではない、悪い:70%*あなたの家計は……良い:28%、悪い:25%、同じ:45%*ワシントンの政府を信用するか……まあまあ:20%、あんまり:79% 簡単にいってしまうと、景気回復の恩恵に浴しているのは、どうやら富裕層に限られている。いくら景気指標が良くなったとしても、4年前や6年前に比べてそのことを国民の大多数が実感していない。さらに将来の見通しが明るいか、と尋ねれば大方の答えはノーだったのである。 英『エコノミスト』誌によれば、オバマ政権下の6年間でGDPは8%増えているが、中央値の家計所得は逆に4%も減少しているという。ここは「中央値(メジアン)」で見るという点がキモである。平均値の家計所得は、ごく一部の富裕層によって全体が嵩上げされてしまうが、こういうときは「100人中50番目の家計」に着目しなければならない。 これはにわかには信じがたいデータである。6年前といえば、リーマン・ショックで米国経済が大混乱に陥っていた時期だ。失業率も10%に達していた。それよりも、いまのほうが中央値の家計所得が少ない。いったい何が起きているのだろうか。 おそらく20世紀までの米国経済は、GDPの伸びとともに普通の家計所得も伸びるというごく自然な姿が保たれていた。ところが21世紀になると、両者の乖離が始まってしまう。 ブッシュ時代には低金利政策から派生した「住宅バブル」があり、普通の家計が持ち家の評価額上昇分をキャッシュに換えて消費に回す、といった贅沢が許された。それくらい銀行が気前よくカネを貸してくれたのである。ところが、2008年のリーマン・ショック以降は、そんなことは夢のまた夢となり、いまでは持ち家比率も低下している。 また米連銀(連邦準備制度理事会=FRB)は、金融危機からの脱出のために三次にわたる「量的緩和政策」に打って出た。すなわち、中央銀行が膨大な量の国債や住宅担保債券などの資産を買い入れ、市場にマネーを供給し続けたのである。おかげで米国の株価は史上最高値まで駆け上がり、住宅市況も最悪期を脱した。資産家にとってはまことに結構な政策というべきであった。 結果として以前にも増して貧富の差は拡大し、「1%の富裕層とそれ以外の99%」に社会は分断されてしまった。こんな「閉塞感」が、中間選挙での地滑り的な結果につながったと見るべきであろう。 オバマ大統領にとっては気の毒な事態といえるかもしれない。米国経済が抱えている問題は、グローバル化の進展や技術の進化、産業構造の転換などの大きなうねりの結果として生じている。大統領を責めてどうなるものでもない。そして勝利した共和党は、それほど貧しい人たちに優しい政党であるとは言い難い。 選挙予測の定番、「クック・ポリティカルレポート(Cook Political Report)」のエイミー・ウォルター記者は、開票速報の夜に今回の中間選挙に対して次のような総括(Election Night Takeaways)を下している。*すべての政治はナショナルである。“All PoliticsIs National.”*選挙はいつも大統領への信任投票である。“Elections Are Alwaysa Referendumon the President.”*オバマ連合(女性、若者、マイノリティ、都市住民など)は議会選挙では通用しない。“The Obama Coalitiondoes Not Work at the Congressional Level.”*やっぱり経済だよ、馬鹿野郎。“It’s the Economy, Stupid.”* メッセージで負けていたら票にはつながらない。“You Can’t Winon Turn-out If You Are Losingon Message.” いちいちごもっとも。 それにしても米国で進行中のこの事態は、日本にとっても他人事ではない。アベノミクスはたしかに一部の富裕層や大企業を潤したけれども、中間層以下はいい目を見ていないのではないか。現在、解散・総選挙が戦われているが、ここでも似たような異議申し立てが成立するかもしれない。 安倍さん、どうかご用心召されよ。「綻び」だすアメリカ社会 経済成長は続いているものの、一人ひとりが貧しくなっている米国社会の現状を、余すところなく描いているのがジョージ・パッカー著『綻びゆくアメリカ―歴史の転換点に生きる人々の物語』(NHK出版)である。1960年生まれのジャーナリストである著者は、ごく普通の同世代人たちが過ごしてきた人生模様を浮き彫りにした。 登場するのは、南部のタバコ農家から起業した男性、金融界から転身したワシントンのインサイダー、自動車工場で働く黒人のシングルマザー、そしてシリコンバレーで成功を収めた億万長者……。彼らの人生を縦糸とし、時に誰もが知っている有名人のエピソードが横糸として絡む。テレビ界の人気司会者であるオプラ・ウィンフリー、量販店チェーン「ウォルマート」の創業者のサム・ウォルトン、そして政治家のニュート・ギングリッチやブッシュ政権の国務長官を務めたコリン・パウエルや、クリントン政権で国家経済会議委員長に就任した経済アナリストのロバート・ルービンといった人たちである。 本書が描いているのは既視感のある風景である。製造業は国際競争に敗れて海外に移転していくが、労働組合は無力で働く者たちを守ってはくれない。サービス業では全国規模のチェーンが拡大して、地場の商店を押し流していく。故郷の街は荒れ果ててしまっていまでは見る影もない。他方では金融やITなどが急成長を遂げているが、その成果を享受できるのはごく一部の限られた人たちである。そして政治は、どんどん普通の人の利益から懸け離れていく。 いわば同時代を生きるアメリカ人たちの群像史である。今日の米国は、保守とリベラル、あるいは一%と九九%に分断されているといわれるが、その「綻び(Unwinding)」とはまさしくこの本に描かれているように展開してきたのであった。 読了後は嫌でもこう感じざるをえない。「これほどの規模ではないかもしれないが、似たようなことはわれわれの周囲でも確実に起きているのではないか」。 ところが残念なことに、「なぜこうなってしまうのか」をいまの経済学はうまく説明できないでいる。 ローレンス・サマーズ元財務長官は、問題は成長率が十分に伸びない点にあるとして、「長期停滞論」を唱えている。以前の経済に比べて、需要が決定的に足りていないのだ。したがって、いまこそ政府が大胆な投資を行なう必要があると説く。が、いささか旧式のケインズ経済学の焼き直しのようにも聞こえる。 フランス人経済学者のトマ・ピケティは、話題作『21世紀の資本』(みすず書房)のなかで格差を是正しなければならないと説く。ごく一部の人たちに使い切れないほどの富が集中してしまうと、社会全体の消費性向が下がってしまうからだ。かといって、同書が提言している「グローバルな累進課税」が実行可能であるとはとても考えられない。 世界経済を浮揚させた日本発のサプライズ ということで、話は元に戻ってしまう。そもそも原因が特定できていないのに、治療法を提示できるはずもない。エコノミストの仕事とは、バックミラーに映る過去のデータを参照しながら、説得力のある形で未来を思い描くことである。しかるにいまは、「不透明性」が眼前を塞いでしまっている。 いっそ割り切って資本家の側に立ってしまえば、いまの米国はチャンスに満ちていると達観することもできる。 ニューヨークの人気エコノミストランキング(『インスティテューショナル・インベスター』誌)において35年連続1位という途方もない記録を打ち立てているISIグループの創立者エド・ハイマン氏は、2013年から米国経済の先行きに非常に強気になっている。 古くからの「日本ファン」でもあるハイマン氏は、毎年秋になると東京を訪れ、岡三証券の法人セミナーで米国経済の見通しを語ってくれる。リーマン・ショックの2008年以来、筆者はそのパネルディスカッションのお相手を務めさせてもらっている。 2013年のハイマン氏は「アメリカン・ルネッサンス(American Renaissance)」という言葉で、米国経済の中長期的な潜在力の高さを語ってくれた。それは人口の増加であり、シェール革命であり、ハイテク産業の強さであり、金融政策の成功であり、あるいは膨大なインフラ投資需要があることなどであった。 みずからを「コントラリアン(逆張り屋)」と称するハイマン氏だが、正直なところ「ここまでいっていいのかな」と隣で聞いていて不安になるほどであった。 その予測は見事に的中した。もしも2013年秋の時点で米国株式市場に全力で投資した人がいれば、株高に円安も手伝って大きなリターンを上げることができたはずである。 2014年は11月6日にハイマン氏と議論をする機会があったが、今回も米国経済強気論はいささかも揺らいでいなかった。そこで筆者はこんなふうに尋ねてみた。「米国経済は来年も良さそうだ。しかし世界にはいくつもの不安要素がある。欧州経済(Euro)、新興国経済(Emerging)、原油価格の急落(Energy)、そしてエボラ熱(Ebola)の問題もある。今後を見る上で、あなたが最も警戒している要素は何か?」 ハイマン氏の答えは、「量的緩和(QE)の巻き戻しが不確実だということ(End of QE)」であった。ゼロ金利政策は5年も続き、米連銀のバランスシートは0.8兆ドルからじつに4.5兆ドルにまで拡大した。そして量的緩和第3弾(QE3)は、10月29日の連邦公開市場委員会(FOMC)で正式に終了したのである。 この不安はその直後、10月31日のハロウィンの日に発動された黒田バズーカこと日銀の追加緩和策によって中和された。世界同時株安は一気に同時株高に転じた。文字どおり日本発のサプライズが、世界経済を浮揚させる形となった。訳のわからない金融政策 しかしQEという政策は、いまだにわかっていないことが多すぎる。たしかに米国経済は、三次にわたるQEによって改善を見た。しかしそれは、「毎月一定額の資産を中央銀行が買い入れた(フロー)」からなのか、それとも「中央銀行が巨額の資産を保有していた(ストック)」からなのか、それさえじつはわかっていないのだ。 重ねてQEはなぜ効いたのか、と尋ねた筆者に対し、ハイマン氏は「それがわかるにはさらに5年間は必要だ」と答えてくれた。いささか意表を突かれた気がした。米国の金融政策は、それくらい訳のわからない実験を行なってきたのか。そして米連銀は、とうとう「出口政策の入口」にたどり着いたとはいえ、この先も手探りの金融政策を続けなければならないのだろうか。 2015年は、しかるべきタイミングで利上げが行なわれるだろう。衆目の一致するところ、6月のFOMCが有力であるという。とはいえ、それはいままでがそうであったように、会合のたびに0.25%ずつ利上げが行なわれるといった単純な図式を意味しない。さまざまな景気指標を細かく見ながら、慎重な形で実施されていくのであろう。 その一方で、4.5兆ドルに膨れ上がったバランスシートは、少しずつ減らしていかなければならない。そうでないとこの次に米国経済が不況に陥ったときに、政策を発動する余地がなくなってしまう。米連銀のイエレン議長は2015年、この難題に挑戦することになる。繰り返される選挙パターン 2015年の米国は、完全にレイムダック化したオバマ大統領と、上下両院を制圧した共和党の対立の下に幕を開けることになる。互いに協調路線を歩むのではないかとの見通しもあったが、それは期待外れに終わりそうである。 オバマ大統領はアジア太平洋経済協力会議(APEC)や金融世界経済に関する首脳会合(G20q)などの外遊から戻ると、中間選挙の大敗をまるで意に介していないかのように、行政権限で不法移民問題に取り組むと宣言した。当然のことながら、共和党側は反発している。仮に与野党の協調機運が進むのであれば、一部でささやかれていたように「通商問題での妥協成立から、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉の前進へ」といったシナリオも現実味を帯びてくる。ただしオバマ大統領は、相変わらず「自分は間違っていない」と確信しているようで、中間選挙の敗北を機に柔軟路線に転じる様子は見られない。これまでどおり、共和党議会との衝突の図式が続くと考えておくほうが無難であろう。 これまでどおりワシントン政治の機能不全が続くのであれば、2016年の大統領選挙を先取りする動きが加速していくだろう。当面の注目点は、ヒラリー・クリントン前国務長官がいつ出馬宣言をするか。他方、共和党内は候補者が乱立気味で、決定までに時間を要するという2012年選挙のパターンを繰り返しそうである。 正直なところ、誰が2016年選挙を制するにせよ、中間選挙で示された有権者の不満が、簡単に解決できるとは筆者にはとても思えないのである。■ 財務省を「成敗」した安倍総理 屋山太郎(政治評論家)■ アベノミクスは失敗か? 経済政策の論点はこれでわかる! 松尾匡(立命館大学経済学部教授) ■ オバマの嘘・「尖閣を守る」を信じてはいけない 日高義樹(ハドソン研究所首席研究員) 

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    2015年の米国経済 順調に拡大続け世界経済を牽引する見通し

     好調が続く米国経済。2015年半ばにもFRB(米連邦準備制度理事会)による利上げが予想され、先進国各国が金融緩和を続けるなかで、いち早く金融引締めに転じようとしている。はたして2015年の米国経済はどうなるのか、元ドイツ証券副会長の武者陵司氏(武者リサーチ代表)が解説する。* * * 大前提として、2015年の世界経済は先進国が牽引して好調に推移すると見ている。10月に発表されたIMF(国際通貨基金)の世界経済見通しによると、2014年の世界経済の成長率は3.3%(米国2.2%、ユーロ圏0.8%、日本0.9%、新興国4.4%)、2015年は、世界経済3.8%(米国3.1%、ユーロ圏1.3%、日本0.8%、新興国5.0%)となっている。好調な米国経済が順調に拡大を続け、世界経済を牽引する構図だ。 米国経済が2015年も力強い成長を続けると予想される理由は、大きく3点ある。 1つめは、米国にはペントアップ・ディマンド=積み残した需要が残っていることである。今回の景気回復局面では、企業の設備投資や民間の住宅投資は、まだまだ需要不足が残っていて、積み上げる余地がある。 2つめは、企業から家計への所得配分が本格化すること。米国の労働分配率は、景気拡大期がすでに4年間続いているにもかかわらず、生産性の上昇などにより、過去最低水準にとどまっている。それが、失業率の低下など雇用環境の好転で、ようやく給与・賃金が増えていくのではないか。そうなれば、消費という強力なエンジンが加わり、経済成長が加速する。 3つめは、クレジットサイクル(信用循環)が、これから拡大局面に入ることだ。クレジットサイクルは、長期的な経済変動を規定する条件だが、2011年に底入れした後は弱含みとなっている。企業債務の対GDP(国内総生産)比率も上昇せず、家計債務の可処分所得に対する比率は低下中だ。まだ回復のごく初期の段階で、信用不安やバブルの恐れはない。 以上のことから、利上げが実施されても、米国景気が腰折れするようなことは、まずないと言っていいだろう。■ 今後10年間、経済大国中国が握る「米国を黙らせるカード」■ 月100万利益女性投資家とFXカリスマ主婦 経済底打ち指摘■ 【書評】異色エコノミストと若き哲学者が経済を徹底討論■ 中国不動産バブル崩壊の影響はドバイ・ショックの1000倍説■ 武者陵司氏「来年内にNYダウ1万3000ドルで世界的株高に」

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    議員の役割 日米でこれだけ違うのか

    今回の総選挙は、11月初めの米中間選挙から1ヶ月あまり後に行われる。双方とも世論を二分するような争点があまりないといった類似点がある一方、当選した議員が実際の立法活動で果たす役割には両国で相当の違いがある。日本でも、個々の議員が真の意味で立法に携われる環境が必要なのではないだろうか。

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    米中間選挙は「勝者なき選挙」  レーム・ダック化するオバマ政権

     辰巳由紀 (スティムソン・センター主任研究員)  11月4日、アメリカでは中間選挙が行われた。選挙前の予想どおり、共和党が上院で52議席を確保して過半数を獲得、下院でも議席を伸ばし、243議席を確保した。本稿執筆時点で、まだ結果が確定していない選挙区も若干、残っているが、オバマ政権の最後の2年間は上下両院とも共和党が多数党を占めることが決定した有権者は共和党を積極的に選択したわけではない 米国のメディアはもちろん、日本のメディアでも、今回の中間選挙の結果については「民主党大敗」を前面に出した報道が主流を占める。しかし、実は見落とされがちなのは、中間選挙は大統領にとっては負け戦になることが多いということだ。 カリフォルニア州立大学サンタ・バーバラ校が集積したデータを見ると、1934年以降、中間選挙の際に上下両院で議席を増やしたのは第1期ルーズベルト政権(1934年)と第1期ブッシュ政権(2002年)のみだ。1996年の大統領選挙で圧倒的勝利で再選を果たしたクリントン大統領でさえ、第2期の1998年に迎えた中間選挙では下院で5議席を増やしたのみにとどまっている。つまり、2期目に入った政権が中間選挙で負けるのは米国政治サイクルの中の必然であり、オバマ大統領率いる民主党は、今回の選挙では「負けるべくして負けた」ともいえるのだ。 特に、今年の中間選挙の行方を左右した大きな要因は、民主党が提示した個々の政策に対する反感というよりも、有権者の間に広まっている、既存の政治システムに対するいら立ちや怒り、将来についての漠然とした不安だった。 このような悲観的なムードの根底には、2008年に「変革」を訴えて当選したオバマ大統領が政権を発足させてからの6年間、有権者が期待していたような劇的な変化が感じられていないことへの失望といら立ちがある。国内では景気回復の実感は薄い。オバマ大統領が公約に掲げた財政再建も、移民制度改革も進んでいない。目に見える数少ない実績だったはずの「国民皆保険制度」も導入の手続きでつまずき、制度の効果を実感できるまでには至っていない。大学は出たものの就職もままならず、多額の学生ローンを抱えて、両親との同居を余儀なくされる若者も増えている。 国外を見れば、2008年に公約に掲げたイラクとアフガニスタンからの戦闘部隊撤退は実現したが、ISISに代表されるイスラム教過激派テロ集団はその残忍性を増し、彼らの活動が活発化するにつれ、再び中東に米軍を投入することになってしまった。アフリカでのエボラ出血熱の流行に対する米政府の対応にもむらがあり、国民の不安感は増長した。そんな現状を横目に、ワシントンではオバマ政権と議会共和党は対立を繰り返し、2013年10月には連邦政府が一時閉鎖される事態まで起きた。このような状況に有権者がやり場のない怒りやいら立ちを抱える中で行われたのが、今回の中間選挙だったのだ。 つまり、共和党の大勝利は、有権者が共和党を積極的に選択した結果ではないのだ。投票後のCNNの出口調査では、民主党に前向きなイメージを持っていると答えた有権者は44%、共和党に対して前向きなイメージを持っていると答えた有権者は40%と、僅差ではあるが、共和党に対する見方がより厳しい結果が出ていることが、それを物語っている。 確かに、現在の共和党は、選挙までは「反オバマ」の一点で辛うじてまとまりを見せていたが、その内実は昔ながらのエスタブリッシュメント、リバタリアン、新孤立主義派、茶会運動支持者、社会問題保守派などの寄せ集めだ。共和党が議会で多数党となった後も、これらのグループが、これまでのように内輪もめに明け暮れ、オバマ大統領からの提案に「ノー」としか言えない状態に逆戻りすれば、2016年の選挙で有権者から厳しい判断を下されるのは必至だ。 つまり、今回の選挙は、数字だけみれば共和党の大勝に見えるが、実際は「勝者なき選挙」だったのではないだろうか。国内問題を巡る政権運営への影響大 とは言え、今回の中間選挙での民主党の大敗によりオバマ大統領のレーム・ダック(死に体)化は確定したと言わざるを得ない。であるとすれば、この現実は今後2年間のオバマ大統領の政権運営にどのような影響を与えるのであろうか。 一番、影響が出るのは国内問題を巡る政権運営だろう。確かに、最低賃金引き上げ、移民制度改革、通商問題、法人税減税など、共和党との間で議論をし、立法化を進める余地が残っている案件もある。しかし、より大きな政策問題、例えば、財政再建の手法や、共和党が「オバマケア」と名付けて、その廃止を主張する国民皆保険制度などについては、両者が歩み寄る余地がどれだけあるのか、疑問が残る。 特に、前者については、2015年9月末には現在の連邦政府予算に関する合意が失効する。実は、米連邦政府は予算年度上は既に今年の10月1日から2015年度に入っているのだが、2015年度予算が成立していないため、現在は、今年12月10日を期限とした予算継続決議を元に、2014年度予算と同程度の支出を行っている状態なのだ。しかも、2013年には、財政再建を目指した連邦政府予算の枠組みに関してオバマ大統領とべイナー下院議長が原則合意に達したものの、ベイナー下院議長が茶会運動の支持を基盤にする共和党下院議員の同意を取り付けることができずに合意が反故になり、同年10月の連邦政府閉鎖に至ってしまった経緯もある。2015年度予算の成立もおぼつかない中で、2016年以降の財政再建について合意が成立するのかについては、早くも悲観的な見方が出ているのが実情だ。 外交・安全保障問題についてはどうか。外交や安全保障政策は、基本的には大統領の専権事項であり、共和党が議会の両院で多数党となったことで、個々の政策に直接的影響を与えるケースは少ないだろう。短期的にはイランとの核交渉に対する議会の視線が一段と厳しくなることが予想される以外は、具体的な案件はない。 しかし、連邦議会は、上下両院の外交問題委員会や軍事委員会で、議会が関心を持つ問題については積極的に公聴会を開催し、政府内外の関係者を参考人として招致して証言させ、質疑応答を通じて活発な議論を行う。政府からの情報提供が不十分である、あるいは定期的な情報提供が必要と判断される場合には、省庁に報告書の提出を義務付ける法律を成立させたり、予算法案に当該条項を挿入したりする場合もある。例えば、国務省がテロ国家に関する年次報告書を毎年議会に提出し、国防省が『四年毎の国防見直し(QDR)や人民解放軍の軍事力を評価する報告書を毎年それぞれ議会に提出するのは、これらの報告書の提出が法律によって義務付けられているからだ。 特に、共和党が上院でも多数党になったことで、各委員会の委員長ポストが全て共和党に異動することになる。例えば、外交委員会ではボブ・コーカー上院議員が委員長職に、同委員会のアジア太平洋小委員会では、2016年大統領選出馬も囁かれるマルコ・ルビオ上院議員が、軍事委員会では、ジョン・マケイン上院議員がそれぞれ、委員長に就任することが確実視されている。特に、マケイン上院議員やルビオ上院議員は、イラン問題をはじめとする中東情勢や中国、北朝鮮問題について強硬な姿勢を持っていることで知られており、彼らが委員長職に就任する来年1月以降、活発に公聴会を開催し、これらの問題について政府高官の証言を求めていくことで、これらの問題についての対応に関する説明を厳しく求めていくことが予想される。オバマが残り2年間に向けて何を学ぶか上院軍事委員長に就任する見込みのマケイン議員 日本にとっては、共和党が多数党になる議会が北朝鮮や中国に対して、断固とした姿勢を明確に示してくれることは、日本がこれらの国との間に抱えている懸案を考えると歓迎すべきことだろう。しかし、日本にとってプラスになることばかりではない。実は、日米関係、特に日米同盟のマネージメントに直接的な影響が出る可能性もある。マケイン議員が上院軍事委員長に就任することで、沖縄の普天間飛行場移設問題にも再び議会の関心が向く可能性があるからだ。 マケイン議員は、かねてよりグアムにおける海兵隊基地建設に対して「税金の無駄遣い」として批判的で、2013年国防省歳出法案をめぐる議論の中でグアムでの施設建設のための予算をつけないように強硬に主張した。日本で11月の沖縄知事選以降、普天間飛行場移設に向けた動きが停滞するようなことがあれば、上院軍事委員長としての立場から、これまで取ってきたグアムの代替施設建設に反対する姿勢をより明確に打ち出す可能性は強いだろう。 このように内政から外交・安全保障問題まで多岐にわたる問題への対応をめぐって、オバマ政権が今後2年、どのような政権運営を見せるのか。鍵となるのはオバマ大統領が今回の敗北を経て、残り2年間に向けて何を学ぶかだろう。 2006年中間選挙で、今回のオバマ大統領に負けず劣らずの大敗を喫したブッシュ大統領は、選挙後、ラムズフェルド国防長官を更迭し、ホワイトハウスのスタッフの刷新を図り、イラク情勢やリーマン・ショックへの対応に苦しみながらも、当時議会で過半数を持っていた民主党のペロシ下院議長やリード民主党上院院内総務と、建設的な話し合いができる関係を作った。オバマ大統領が同じように人事刷新を断行し、議会との調整にこれまで以上に自分が積極的に前に出るような思い切った方向転換ができれば、残り2年の任期で「レーム・ダック」の評価を吹き飛ばすような実績を上げることも可能だが、その鍵を握るのは、よくも悪くも、オバマ大統領ただ一人である。辰巳由紀(たつみ・ゆき) スティムソン・センター主任研究員、キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。東京生まれ。国際基督教大学卒業後、ジョンズ・ホプキンス高等国際問題研究大学院で修士号取得。在米日本大使館専門調査員、戦略国際問題研究所(CSIS)研究員などを経て2008年より現職。2012年よりキヤノングローバル戦略研究所主任研究員を兼任。専門は日本の防衛政策、日本の国内政治、日米安全保障関係、米国の対アジア安全保障政策。

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    「明確な争点なし」が共通点 日米ともに信任投票?

     今回の総選挙が、政党間での政権交代はもちろん、与党内での首班交代につながると思う方はまずいないだろう。その意味でこの選挙は、政治・選挙システムは大きく異なるものの、大統領の地位には影響を及ぼさない米国の中間選挙と似た性格を帯びたものになりそうだ。  折から、米国では11月4日に中間選挙の投票が行われたばかりだが、「近年まれに見る争点がない選挙」(ワシントン・ポスト紙)との声が高く、盛り上がりに大きく欠けた。。下院に続いて上院でも共和党が多数を獲得したことで、「政権と議会の緊張関係が一段と高まる」などとも報じられているが、議席数をみれば、米国政治の潮流を変えるようなインパクトは少ない。特に内政面では、オバマ大統領の残り任期2年間は、重要問題では政権と議会がお互いに譲らず、手詰まり状態が続く可能性が高くなっている。 時期的に近接して行われることになった日米両国での選挙を取り巻く類似点、相違点はどのようなものだろうか。■ 「経済」に最も高い関心も、両党とも具体的な政策不在 ギャラップ社が中間選挙の投票約1ヶ月前の9月末に実施した世論調査では、有権者が「極めて重要」「とても重要」と考えた政策課題の上位は、1・経済(88%)2・雇用(86%)3・連邦政府が正常に機能すること(81%)4・イラク、シリアでの「イスラム国」の動き(78%)5・男女間での賃金平等(75%)6・財政赤字(73%)の順だった。 このうち「連邦政府の機能」は、昨年10月には議会の上下両院対立によって歳出法案が成立せず、約半月にわたって連邦政府が業務を停止したことなど、米国独特の事情を背景にしているもので、「イスラム国」は米国が歴史的にも、21世紀に入ってからのイラク介入などによっても中東情勢に強い関心を抱いていることによる。 その他の4項目は日本でもほぼそのまま、今回の総選挙で意識されている課題となっている。いずれも、広い意味での経済問題に属しており、少なくとも先進国間では「政治は経済によって動く」ことを証明している。  ギャラップの調査では、各課題について「(民主・共和)どちらの党がより良い結果を出せると思うか」を質問。6課題のうち、民主党を評価する意見が多かったのは「男女間での賃金平等」のみで、「雇用」はほぼ同率だったが、他の4項目では過半数が共和党を高く評価した。実際の選挙結果を見ても、オバマ政権に対する失望感と合わせ、有権者のこのような受け止め方が議席の増減に直結したといえる。■中間選挙は72年ぶりの低投票率 とはいえ、今回の中間選挙は、「記憶にある限り、一番退屈で新味がない選挙戦だった」(コラムニストのデビッド・ブルックス氏)。全国平均投票率は36.4%と、第二次大戦中の1942年以来実に72年ぶりという低さを記録し、選挙民の関心の低さを如実に示す結果になった。 この最大の原因が、国民を二分するような明確な争点が最後まで現れなかったことだ。 前回2010年の中間選挙では、医療保険制度改革(オバマケア)の是非や、不法移民規制などが重大な争点となった結果、共和党が圧勝し下院で4年ぶりに多数派に。08年選挙で大統領ポストをはじめ上下両院でも多数を占めた民主党の勢いが完全に止まり、米国政治が大きな転機を迎えることになった。 これに対して、最も関心が高い経済問題についても目新しい公約は両党からあまり聞かれることないままで終始。米国の景気自体は、日本や欧州に比べると上向き傾向を示しているだけに、リーマンショック当時などと比べれば切実さは少なかったこともあり、結局は政党レベルで広がりを見せた政策・公約は見当たらなかった。 投票の結果、共和党が上院で多数派となり、下院でも議席差を拡大したが、大統領の拒否権を覆せる3分の2に遠く及ばないのはもちろん、上院で重要法案の討論を終わらせて投票を強制させるのに必要な60票もはるか彼方。これから2016年大統領選までは、ブッシュ前政権の最後の2年間と同じように、両党とも主要な政策課題は動かしにくい状況が続くとの見方が圧倒的だ。米国での投票風景■日本も「信任投票」か 一方、日本の現状を見ると、同様に明確な争点を欠いている感は強い。景気の先行きに以前よりも不安感が強まっている中で不思議な現象ではあるが、解散の最大の理由である消費増税を、当初の予定通り「来年実施すべき」という政党が存在していないのだから当然ともいえる。 さらに、現在の日本は近年で最も野党の勢力が弱い時期に入っており、選挙民の関心をひきつけるような政党がなかなか見当たらない。となれば今回の総選挙が安倍政権、ないしはアベノミクスに対する信任投票の色を帯びることは避けがたく、米中間選挙以上に、現政権に対する評価が示される場となりそうだ。 オバマ大統領の場合、任期6年目の現在での支持率が概ね40%台で、昨年夏ごろからは常に不支持が支持を上回る状態になっており、同時期に支持率が3割台にまで落ちたブッシュ前大統領には勝っているとはいえ、歴代大統領の中でも「レイムダック化」は激しい(クリントン元大統領は、6年目で60%以上の支持を得ていた)。 これに対し、各種世論調査での安倍内閣への支持率は解散前で概ね40%台後半と、オバマ大統領のそれと大きくは変わらないが、不支持率が支持率を上回る状況は出ていない。となれば、やはり今回は米中間選挙以上に、自民の議席がどのように変動するかが、唯一の焦点にならざるを得ないのかもしれない。 (iRONNA編集部)

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    議員の役目は立法ではないのか  

     米国政治に関する日本国内での報道、情報は外国に関するものとしては圧倒的に多いものの、大半のケースでは政治システムの基本的な部分に関する説明が省略されてしまい、行政府=政府が強力な日本と同じようなシステムで動いているのでは-との錯覚さえ生みかねない。米国の三権分立は徹底しており、特に内政では日本人が平均的に抱いているであろうイメージより議会(さらには連邦最高裁判所)の力ははるかに強いし、大統領=行政府が主導する外交・軍事でも歳出面を中心にした議会の発言権は小さくない。 このことや、議員は個々の意思で立法活動に動くことが多いことなどを知らないと、例えばなぜ米国では議員らに働きかけて依頼人の利益増進を図る「ロビイスト」という職業が相当数、公然と存在するのか、理解できないことになりかねない。 ■議員個人が埋没する日本の国会 米議会の主な特色を挙げると、・     党議拘束がない・     第二院(上院)の権限が極めて強い・     すべての法律は議員立法-と日本や欧州諸国などと異なる部分が多い。どんな政治システムでもそうであるように、長所・短所はそれぞれあるものの、米国の議員が世界で最も自主性が強く、慨して政策立案能力にも長けていることはこれらの基盤から生まれている。 いったん当選すれば政府提出法案に対して、党議に従って賛成または反対することが(表面から見える)主な仕事となってしまう日本。当選回数を重ね、与党なら行政府の一部である大臣になることが「出世」と認識されるこの政治システムが、選挙前後以外は大半の議員の存在は薄らいでしまい、不祥事などでも起こさない限り、注目されない環境を作ってしまっていないだろうか。 「押し付け憲法」下でも、米国式ではなく英国に近いものとされた議会制度だが、議員個人がより、能力を発揮して本来の仕事であるはずの立法活動を行う国会は実現できないのか。米国の状況を伝える。 ■一人の議員がキャスティングボートを握ることも  米議会では上院、下院とも党議拘束は基本的に存在しない。下院議長、各委員長など院内人事案件で所属党の方針に反する票を投じれば除名などの処分を受けることになるが、それ以外の法案審議では、院内の党指導部や大統領に従う必要はなく、各議員の信条や、選出選挙区の事情に従って態度を決することが一般的だ。  この結果、議会内の共和・民主両党指導部にとっては、いかに自党所属の議員票をまとめるか、対立党所属議員で見込みがある層を切り崩せるかが極めて重要な任務になっている。これらの工作は上層部同士ではなく、個人を対象に行われることが普通で、よくも悪くも議会政治をダイナミックなものとする。  上院を例にとれば、来年初頭まで有効な現会期では民主党が(同党に近い無所属議員を含め)10議席差で優位、今回の中間選挙を受けた次会期では現時点で(決選投票が行われる1州を除き)共和党が6議席差で優位になるが、実際の議会審議で投票結果がこの党派構成どおりになることはかなり少ない。 オバマ現政権の最大の実績とされる「オバマケア」法案をめぐる上院審議では最終段階で、共和党穏健派のスノウ議員(当時)か、民主党保守派のネルソン議員(同)のいずれかの賛成を得ることが成立に必須になった。結局、後者の賛同を得ることで成立したが、その際にはネルソン議員が要求した、法案の一部修正が受け入れられたように、たった一人の議員がキャスティングボートを握ることもままあるのだ。 ■一票の格差60倍以上、強大な権限持つ上院共和党上院院内総務のマコーネル議員。日本での知名度は高くないが、共和党最高実力者の一人。  日本の参議院や英国の上院(貴族院)に代表されるように、二院制を採用する大半の国では、第二院は権限が小さくなるよう定められている。しかし、米国の場合はこれらとまったく異なり、上院の権限が極めて強い。  上院と下院は立法機関としてまったく同等の権限を持っており、すべての法案は両院で可決されない限り、大統領の署名を求めることができない。それに加え、憲法では上院の専権事項として・     宣戦布告・     外国との条約批准・     連邦裁判所判事人事の承認・     閣僚、大使など主要な政府人事の承認などが定めている一方、下院が優越しているのは予算案の先議権程度だ。  さらに上院の定数は1州2人で100人と、435議席がある下院に比べ、議員1人の重みが違うことも、上院の存在感を強めている。2008年の大統領選が民主党オバマ、共和党マケイン両上院議員の争いとなったように、上院で名声を得ることは、州知事に次いで大統領への有力な道になっている。 このように上院や上院議員の権限が強いのは、米国が”United States”の名の通り、各州の連合体としての性格を強く有しているからに尽きる。2010年の国勢調査で最も人口が多かったカリフォルニア州は約3700万人(東京都、神奈川県、埼玉県の全部と、千葉県の約半分を合わせたのに近い数字)、最も少ないワイオミング州は約56万人(東京都八王子市の人口とほぼ同じ)と60倍以上の格差があるが、両州の上院議員数も議員の権限もまったく変わらないし、異議を唱える声が真剣にあがったこともない。この点は、米国の個性といって間違いない。 ■ 少数党所属でも新人でもチャンスあり 米国では、大統領をはじめとした行政府には、法案を議会へ提出する権限は一切ない。国家の根幹をなす予算法案・歳出法案も例外でなく、ホワイトハウスは毎年初めに行政府としての要求をまとめた「予算教書」を議会へ送るが、これは形式としては拘束力を持たない「要請」または「勧告」で、実際の法案はホワイトハウスに近い議員によって提出される。 また、予算(歳出)の割り当てをめぐる攻防も、政府案が決定されるまでが事実上の勝負であり、国会の予算委員会、本会議はいわば各党のパフォーマンスの場になっている日本とは違う。半年を軽く超える議会での審議が本番だ。原案どおりに通過することは絶対無く、両院で数多くの修正が付される(この過程で、各議員の力関係などによる地元への利益誘導が露骨に行われていくが、少なくとも結果は明白に公表される)。  予算以外でも無論、行政府=ホワイトハウスの意向が影響する法案は少なくないが、議員が個別に行う立法はそれをはるかにしのぐ。この土壌では、少数党の議員といえども、立法過程で蚊帳の外に置かれることはなく、特定問題に関しては考えが近い対立党議員らと組んで多数派工作を行い、最終的に法律として成立することも珍しくない。各議員が擁する政策スタッフや、議会予算局(CBO:Congressional Budget Office)などの機関は決して飾り物ではないのだ。  とはいえ、院内総務や委員長などの主要ポストを得るには、実力もさることながら当選を重ねて所属党内の序列を上がっていく必要があることは、米国も日本と変わらない。だが、たとえ2年ごとに選挙が繰り返される下院でも、現職がほとんどの場合圧倒的有利という国柄もあり、「1年生議員」でも本人の能力やスタッフしだいで、政治目標を実現させやすい環境にあるのは間違いない。(iRONNA編集部)