検索ワード:ウクライナ問題/5件ヒットしました

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    クリミアと尖閣は表裏一体 日米同盟の緊密化が世界秩序を維持する

    たしかに、ロシアは米欧が一体になって強力な経済制裁に出てくることを恐れている。しかし、ロシアにとってウクライナ問題は国家として死活に関わる重大事だ。プーチン氏が経済制裁に全面屈服することは決してあり得ないだろう。また、そもそもドイツなどロシアとの経済関係を重視する欧州側が強力な対ロシア制裁に応じるかは疑問だ。ウクライナ情勢はよくて長期化し膠着する見通しが最もあり得るシナリオであろう。プーチン大統領は次なる戦略をいかに描いているのか─。 (提供・代表撮影/AP/アフロ)  ただ、ここで重要なことは、こうしたウクライナ危機やシリア、北朝鮮の核問題などで見せるオバマ政権の劇的なまでの弱腰姿勢に対して、「米国自体の力が大きく弱体化したから」「米国は世界の警察であることを放棄した」と勘違いしてはいけない。現状で繰り広げられている問題は、あくまで「オバマ問題」であって、「米国問題」ではないということである。 そもそも、イラクやアフガンでの「戦争をやめよ」と叫んで登場したオバマ氏は、2008年、12年の大統領選挙においても「外交は何よりも話し合いで」と米国民に訴えて当選した。 これはある意味、米国という特異な民主主義国としての宿命でもある。前任のブッシュ政権においてイラク戦争が泥沼化し、イラクとアフガン双方で大きな犠牲を払った。その後を受けた政権として、大きく振り子を振った時代の雰囲気で、少し極端なハト派であるオバマ氏が米国民の信任を得て大統領に選ばれた、というに過ぎないのである。 ただ10年代に入り、冷静さを取り戻した米国では、米国民の6~7割を占めると言われるリアリストに対して、大統領再選のためには「自分はリアリストである」と主張しないと、彼らからそっぽを向かれてしまう。そのためあたかも現実的な抑止策を考えているかのようにアピールする必要があった。 これが端的に表れているのが11年のいわゆる「アジア・ピボット」路線である。再選を目指す大統領選挙にアジア重点戦略を打ち出して臨んだのだ。そして無事再選されると、再び掌を返すように元の極端なハト派に戻ってしまったというわけだ。 またオバマ氏のこうした姿には、「核なき世界」を訴えてノーベル平和賞を受賞した実績が歴史に残る出来事として永遠に賞賛されることを願うエゴが表れている。つまり、ここ数年の米国の行動はこのオバマ氏個人の外交方針によるものであり、米国の外交方針そのものが変わったわけではないのだ。 依然米国自体は世界の覇権国としての実力を持ち続けている。中長期的に見てもその地位が変わらないことは、本誌14年5月号の拙稿「25年後の米中と日本がとるべき長期戦略」で筆者が述べたとおりである。こうした大局的な趨勢を日本も見誤ってはならない。尖閣と裏腹のウクライナ問題 昨今、日本において、安倍政権とプーチン政権が北方領土問題を見すえながら外交関係を緊密化させてきた流れの中で、米国による制裁強化にそれほど協調することなく、「日本は日本の立場でロシアに接していけばよい」という声も聞こえてくる。 しかしここで絶対に忘れてはならないことがある。中国の存在だ。中国は、尖閣の奪取というにとどまらず、東アジアでの自らの覇権を確立するために、常に日米同盟を無力化し有名無実化したいと狙っている。そのために日米の間に亀裂が入ることをなにより望んでいるのだ。 今回のロシアによるクリミア併合問題に対して、もし日本が米欧の対ロ制裁と軌を一にせず、「独自の行動」を取れば、一気に中国にその隙を突かれてしまうだろう。ここは、日本としては「追随」と言われようとなんと言われようが、ロシア制裁という米欧の動きに協調して行動するしかないのである。 日本はまずそうした協調行動をとり、その上で、「必要なら米欧とロシアの仲介はできます、対話で解決しましょう」と常に国際秩序の仲介者的役割を果たせるよう備えておけば良いのだ。いずれにせよ、日本は中国という存在を片時も忘れてはならないのである。 4月の日米首脳会談において、オバマ氏は米国大統領として尖閣諸島に日米安保条約が適用されることを初めて明言したが、他方で安倍首相との共同記者会見においては中国に対する際立った融和姿勢をくり返し表明した。また、オバマ氏は今回のアジア歴訪では、一方でフィリピンとの間に米比軍事協定を締結し、南シナ海での海域支配に奔走する中国を牽制したが、他方韓国では「従軍慰安婦」問題で明確に韓国の主張を支持し日本に謝罪を要求した。 日本の一部では、昨年来の安倍首相の靖国神社参拝をめぐる日米間のある種の行き違いも重ね合わせて、「日米間にすきま風が吹いている」とか、あるいは「米国はむしろ中国・韓国に傾き始めた」との見方も出ている。しかし、ここにも「米国問題」と「オバマ問題」との混同があると言わなければならない。 尖閣への日米安保の適用や安倍政権の集団的自衛権行使への取り組みに支持を明言したオバマ氏の「踏み込み」は、22年ぶりにフィリピンへの米軍駐留(フィリピン憲法の建て前上、“巡回”との語を用いるが)を決断したことと合わせ、オバマ氏の個人的な立場を超えた、何としても「中国を抑止する」という、国家としての米国の明確な意思を世界に見せつけるものであった。 また、韓国で歴史問題に関してあえて日本の謝罪を求める発言をしたのも、オバマ氏個人の歴史観の表明というよりも、近年「経済」と「歴史」の両面から韓国が急速に中国に取り込まれているが、その結果、北東アジアの勢力均衡が崩れるのを何とか防ごうとする、米国大統領としての当然の行動と見た方が良い。たしかに中国への際立った融和姿勢をとるオバマ氏は「弱い米国大統領」の典型ではあるが、同時にオバマ政権の米国は水面下ではこれ以上の中国の海洋進出は明確に抑止する方向へと動いていることを忘れてはならないのである。 いずれにせよ、我々はあと2年半、このオバマ大統領の下で、こうしたどっちつかずの微妙さをはらむ日米関係に“耐えて”いかねばならないのである。ただ、その「重圧」は今後、徐々にあるいは急速に、軽減されていくことと思う。そこでは次の2つのファクターに注目したい。 1つは現下のウクライナ危機をめぐって激化する米欧とロシアの対立構造の中で、中国がいかなる立場をとるかということ。 もう1つは崩れ始めた中国経済の成長軌道の行方をめぐって、今はまだ楽観論に立つ米国経済界の態度が今後どう変わるか。そしてそれによってオバマ政権の対中政策がどんな影響を受けるか、ということである。 前者については、今後さらに激化していくだろう米欧とロシアの対立関係の中で、たとえ当面「漁夫の利」を求めても結局、中国は中長期的にはロシアの側に傾いていかざるを得ず、米欧との関係は遅かれ早かれ悪化せざるを得ない。 後者についても、中国経済の不調や停滞は必ず米国の対中政策の再検討につながるはずだ。安倍政権の外交路線は、上述の諸点をしっかり押さえていけば、十分に明るい展望が期待できるのである。   

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    ウクライナ停戦 米欧は対露圧力緩めるな

      ウクライナからの分離独立などを求める親露派は、ロシアの武器、兵力支援を得て政府軍の鎮圧作戦に抵抗し、約5カ月で民間人を含め2500人余が死亡した。 これ以上犠牲者を出さないためにも、双方は停戦を順守し、その間に最終的な政治解決を目指さなければならない。 北大西洋条約機構(NATO)首脳会議はウクライナ情勢をにらんで緊急展開部隊創設を決め、対露経済制裁に支持を表明した。 部隊は数千人規模で、同様にロシア系を抱えるバルト三国や、ポーランドなどにロシアが万一、軍事介入してくるような事態に2日以内で展開が可能だ。プーチン露政権への軍事圧力として働く。 首脳会議に結集した米欧諸国は軍事、制裁の2つの圧力を強め、親露派を武装解除し、ウクライナ東南部に侵攻したロシア軍を撤退へ追い込んでもらいたい。 制裁の実施主体である欧州連合(EU)、そして米国は対露追加制裁の準備を整えている。停戦合意により一時見合わせても、発動の構えは継続すべきだ。 今回の合意は、親露派がロシア提供の高性能兵器を大量に保持したままで、露軍もウクライナ進駐を続ける中での停戦である。 ウクライナのポロシェンコ大統領は「流血を止めるため、できることを全てしなければならない」と述べた。ロシアからの強力な親露派支援で形勢不利に立たされたウクライナ側としては、プーチン氏主導の停戦提案をのまざるを得なかったといえる。 ロシアと親露派に有利な現状の固定化を許してはならない。 そのため、合意にうたわれた欧州安保協力機構(OSCE)の停戦監視の下で、親露派の武装解除と露軍の撤退に加え、ロシアから親露派への武器、資金流入の停止を実現してほしい。 同時に、やはり合意された東部2州での地方分権の推進などをウクライナ政府と親露派、ロシア、OSCEなどが協議しなくてはならない。停戦はそうした政治決着への一歩にすぎない。 NATOは冷戦期、旧ソ連の脅威に対抗し西側の集団防衛に当たった。継承国ロシアのウクライナ侵略で、原点回帰を迫られた米欧同盟はその真価が問われる。(9月7日 「主張」) ---------------------------------------<関連ブログ>・ロシア軍、ついにウクライナに本格的侵略を開始 ──日本人はなぜ、ウクライナの次は北海道と戦慄しないのか (中川八洋・筑波大名誉教授 9月1日) http://nakagawayatsuhiro.hatenablog.com/entry/2014/09/01/121725 保守の論客とされる中川八洋・筑波大名誉教授は、『ロシア隣接国が、もしロシアに対して断固たる和平を欲するならば、決してロシアと接触してはならない』としたうえで、現・安倍政権を『対ロ国防全面放棄主義』と批判している・服部倫卓のロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪(ブログ版) http://blog.livedoor.jp/httrmchtk/ ロシアNIS貿易会・ロシアNIS経済研究次長の服部倫卓氏が開設しているブログは、ロシア、ウクライナ、ベラルーシを中心とした旧ソ連圏に関する最新情報を常時収集・掲載している

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    日本は今後ロシアとどう付き合うべきか

    い。 だが、それだけだと一面的だ。マスコミは政権の危機や苦境をあおり立てるのが大好きである。だから、ウクライナ問題が起きるまで接近を続けていた日ロ関係が一転、冷え込みそうだとなれば、過剰に反応して報じてしまう。 事態を冷静に眺めれば、プーチンは対話の回路もキープしておく意思を示している。さて、そこで本題である。日本は今後、ロシアとどう付き合っていくべきか。一方には、日本は自由と民主主義の価値観を共有する欧米と協調して、ウクライナを脅かすロシアに厳しく対応すべきだという意見がある。私は欧米との協調路線を守りながらも、日本は独自外交も模索すべきだと思う。なぜなら、日本は地政学的に欧州や米国とは異なる環境に置かれているからだ。 具体的に言えば、欧州にとって中国は脅威ではない。中国が欧州に軍事侵攻する事態はありえない。米国はロシアにも中国にも中東情勢にも関与しているが、いざとなればハワイから東方に勢力圏を縮小しても生き残れる。 だが、日本は違う。尖閣諸島周辺で現実化している中国の脅威に加えて、ロシアも敵に回してしまうのは悪夢である。中国に加えてロシアとも二正面で戦うわけにはいかないのだ。 だから、欧米と足並みをそろえるあまり、ロシアと無用な緊張状態に入るのは避けたほうがいい。北方領土問題は言うに及ばず、そもそも日本はロシアと平和条約さえ結べていない。 ロシアにとっても、日本との友好関係は重要である。隣に中国を抱えているからだ。かつて中国はロシアの弟分だったが、いまや国内総生産はロシアの4倍、核兵器もある。ロシアは中国が強くなりすぎる事態をなんとしても避けたいはずだ。 中国の南シナ海進出とロシアのウクライナ侵攻によって、世界は完全に変わってしまった。両国は国連安全保障理事会の常任理事国であり、重要案件で拒否権を行使できる。だから国連は基本的にもう頼りにならない。 ずばり言えば、これからの世界はガチンコ勝負である。緊張高まる世界で、これまでのように米欧協調一辺倒の外交で日本が生き残るのは難しい。日本にとって対ロシア外交が最初の試金石になるだろう。(文中敬称略)文/長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) 東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。規制改革会議委員。近著に『2020年 新聞は生き残れるか』(講談社)※週刊ポスト2014年10月3日号 ・ロシア通記者が露大統領再登板のプーチンの実像を記した本 ・池上彰氏 メドベージェフ氏の国後島訪問に隠れた意図を解説 ・良好な日露関係が中国への「牽制」になる、と鈴木宗男氏指摘 ・皮肉好き外務官僚 前原氏に「お子様ランチ」のあだ名つける ・訪露の森喜朗元首相 銅像に献花しプーチン氏の琴線に触れた

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    毒ヘビVS毒サソリ ロシアとウクライナ

    ウクライナをめぐって世界が駆け引きを続けている。 欧米発の情報だけではウクライナ危機の実相は見えない。

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    佐藤優が分析する ウクライナ危機の黒幕

     ウクライナ人とロシア人は民族意識の分節化が十分にできていない。こういうところで突然分化が始まると、差異を強調しなければならないので、対立がエスカレートする。  ウクライナの政変はソチ五輪期間に発生した。普段ロシアの諜報員はウクライナに入り込んでいるが、五輪期間に国内でテロが起こっては国の面子が立たないため、在外の諜報員をロシアへ戻していた。普段であれば、事前に情報をキャッチし、殺し屋を雇って中心人物を暗殺するなどして抑えているはずだ。プーチン大統領が怒っているのは「お前らよくもこの隙を狙ってやりやがったな」ということ。暗躍する裏組織 親露派とは最近になって政治に関与した人たちだ。突然、自称「国家」の長なんかになってしまい、舞い上がっている偶然のエリートに過ぎない。指導者層はロシアの軍人というか、裏世界の組織の人間だ。GRUという昔のソ連軍参謀本部情報総局、今のロシア軍参謀本部情報総局。兵器販売ライセンスを保有しているので、資金力があり、独立王国になっている。予備自衛官の情報番みたいなもの。こういう連中がデタラメをする。 プーチンは制御できるが、あえて見て見ぬふりをしている。西側や米国、ウクライナが言っているような、「プーチンが傀儡政権を作っている」という見方は間違っている。この連中を放っておけば何かするのは分かっているが放置している。不作為の責任がある。佐藤 優( Masaru Sato)さん 作家、元外務省主任分析官。1960年生まれ。85年同志社大学大学院神学研究科終了後、外務省に入省。在ロシア日本大使館、国際情報局分析第一課などで勤務。 2009年背任と偽計業務妨害の有罪確定。『国家の罠』で毎日出版文化賞特別賞、『自壊する帝国』で 新潮ドキュメント賞および大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。 ポロシェンコ政権の影の主役はトゥルチノフ最高会議議長。昔の秘密警察の長官で、以前KGB系の連中をすべて切り、米CIAと英SISのノウハウを入れて新しい秘密警察をつくった。米国との裏の連絡はこの人物が担い、空爆を決定したのも彼だ。 この問題のケリをつけるのはプーチンだろう。取り引きする相手はウクライナでなく、オバマだ。ロシア人やロシア系だと思っている人たちへのジェノサイドが起きたりすると、軍事介入もありうるが可能性は低いだろう。だらだらと今の状況が続くはずだ。 落としどころは簡単で、ウクライナを連邦制にすればよい。東部、南部については自己決定権を与えるが、外交、安全保障はキエフ政権が担う。独自軍の保有や独自外交は認めない。ただしロシアが連邦制を提案し、ウクライナはこれを拒否しているので、連邦制でなく別の名をつけないといけないだろう。 この軟着陸を阻害する要因は、率直にいうとお互いにまだ殺し足りないことだ。これ以上犠牲が出るのは嫌だとお互い思わないと、和解は成立しない。満足のいく犠牲者の数がどのぐらいかというと、定量的には表せない。ある国では何十人だが、ある国では何万人。時期によっても変わる。そのラインに達したとき、和解は成立する。 これは両者とも悪。毒ヘビ対毒サソリの戦いなので、日本は加わらないほうがよい。米国が来させるなと言っているようだが、プーチンは来日させるべきだ。来させて「おかしいことをしている」と文句を言えばよい。逃げる必要はない。それと現実を見据える必要がある。オバマはじきにいなくなるが、プーチンはあと10年はいる。 ただしこの外交ゲームに入り過ぎてもいけない。日米同盟の基本線は崩す必要はない。北方領土や対中牽制のほうがよっぽど大切だ。