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    朴氏「最大のタブー」崔順実スキャンダルはなぜ表面化したのか

    奧薗秀樹(静岡県立大学大学院 国際関係学研究科准教授) 今回のスキャンダルの一報を聞いて、これはある意味韓国現代史の悲劇であると言えるのではないかと感じました。朴槿恵氏は母・陸英修(ユク・ヨンス)女史と父・朴正煕元大統領を相次いで暗殺で失うという非常に悲惨な経験を経て、心に深い闇を抱えるようになりました。それが今回の事態の一因になっているように思います。バランスを失った朴槿恵氏の心の隙間に崔順実氏の父親、崔太敏(チェ・テミン)氏が巧みに入り込んだのです。ある種の「マインドコントロール」にかかったような状態が現在まで続いているのではないかと思わせるものがあります。そんな人物が国民の直接選挙で大統領になってしまったのです。取り調べのため、ソウル中央地検に入る崔順実氏=1日(聯合=共同) 崔太敏氏と朴正煕氏が親密だったこともあり、娘の朴槿恵氏を取り巻く崔順実氏と元夫の鄭允会(チョン・ユンフェ)氏、さらに崔太敏氏をめぐる噂は昔からありました。私が韓国に留学した1980年代後半でも、特に朴槿恵氏と崔太敏氏の根拠なき与太話が酒場で飛び交うほどでした。権勢をほしいままにした朴正煕の娘であり、陸英修氏亡きあとはファーストレディの代役を務めるなど国民的人気もあった朴槿恵氏は、それだけでも特別視される存在だったのです。 崔順実氏に関しては、元夫である鄭氏が朴氏の元側近であり、2年前にも旅客船セウォル号沈没事故の当日に「朴氏と鄭氏が密会していた」という根拠のない噂が広がり波紋を呼びました。疑惑はなんとか収束して朴氏は困難を乗り切ったかに見えましたが、甘かったようです。「最大のタブー」は他にもあったのです。今回の事態は、大統領府が設立に関与した疑いのある2財団を崔順実氏が私物化したという資金流用疑惑がきっかけでマスコミから追い掛けられるようになり、機密資料が入った崔氏のタブレット端末の存在が発覚しました。 終わったはずの疑惑がぶり返した背景には、4月の総選挙で与党セヌリ党が惨敗を喫したにもかかわらず、親・朴槿恵体制が続いたことがあると思います。与党からは有力な次期大統領候補があがらず、潘基文国連事務総長に頼るほかないありさまです。朴政権がレームダック化していく中で、隠しきれるはずのスキャンダルが世に出てしまった側面があるように思います。与党が総選挙に勝っていたらこうした事態には至らなかったかも知れません。朴氏を自縄自縛した「国会先進化法」 今回のスキャンダルのきっかけとなった資金流用疑惑の構図は、歴代大統領がたどったパターンだと思います。崔氏は朴氏にとって唯一信じられる「身内」といっても過言ではない存在だったと思われるからです。歴代の大統領は、親族による大統領の権力を笠に着た不正・横暴が暴露される形で悲惨な末路をたどっています。朴氏は自伝で認めているようにある種の人間不信に陥っていて、大統領になってからも「不通」問題が指摘されてきました。妹の槿令氏や弟の志晩氏が崔太敏氏との関係を切るように80年代から言ってきたにもかかわらず、朴氏は耳を貸しませんでした。崔順実氏は孤独な朴氏にとって、母も父も殺されて周囲がみんな離れていく中でも心の支えになってくれた牧師の娘だったわけで、権力を利用してさまざまな不正を働いたという構造はこれまでと変わりません。 野党も当初は挙国一致内閣を求めたかと思ったら、真相究明が先だと言い出したり、対応が揺れています。与党内からも解党的出直しを迫る声が出てきていますが、与野党とも1年後に控える大統領選挙を念頭にどう対応していくべきか図りかねている状態です。中立的な人物を立てて与野党による挙国一致内閣を組織するのか、それとも大統領の弾劾に動くのか、世論の動向を見ながらタイミングを測っている感じだと思います。いずれにせよ、朴大統領は与野党の駆け引きの道具として使われた末に惨めな形で退任することが避けられないでしょう。 ただし「朴正煕の娘」という政治家・朴槿恵の強さが失われたわけではありません。彼女の政治的アイデンティティは政策でもイデオロギーでもなく「朴正煕の娘」であることなのです。朴氏には何があっても彼女から離れない「コンクリート支持層」がおり、彼らは朴正煕氏を心から信じてきた層でもあります。支持率もさすがに大きく落ち込みましたが、これほどの大スキャンダルにもかかわらず何とか踏み止まっているのはこうした支持層のおかげだと思います。韓国の大統領選は同じ与党でも現職を批判しなければ勝利できませんが、朴氏に対しては、3割はいるとされてきた支持層を敵に回すことから、そうした戦法が使えないと言われたほどです。2012年12月、ソウル・青瓦台で会談する韓国大統領選で当選した与党セヌリ党の朴槿恵氏(左)と李明博大統領(聯合=共同) 韓国の国民にとっては当然、衝撃の事態です。自分が選んだ国家元首が正体不明の新興宗教の牧師の娘に操られていたということが受け入れられないのです。韓国はいま、経済は苦境に立たされ、安全保障でも困難に直面しています。朴氏が野党時代に主導して作った「国会先進化法」は、与野党が対立する案件は6割の賛成がないと国会に上程できない規定となっており、大統領就任以降、政権が提出する主要法案が国会を通らない異常事態が続いています。雇用問題や所得格差など改善できていませんから、国民生活は火の車です。安保も北朝鮮の度重なる挑発の前に危機的状況です。未だ国論を二分する朴正煕の評価 そんな最中に起きた国を揺るがす大スキャンダルですから、国民に動かされる形で与野党が朴氏の弾劾に動く事態もあり得ると思います。ただ弾劾については、盧武鉉元大統領の時の失敗を教訓に、安易に動くことには与野党とも慎重にならざるを得ません。今は沈黙しているコンクリート支持層の反発に触発された世論の批判を受けて、しっぺ返しを食らう事態を恐れるわけです。ただし、盧氏の時と今回とは状況が大きく違います。盧氏は就任1年後、それも総選挙直前の弾劾請求でしたが、朴氏の場合は残り任期1年余りのうえ、総選挙も敗北する形で終わっているからです。記者会見で謝罪する韓国の朴槿恵大統領=10月25日、ソウルの青瓦台(聯合=共同)  もし与野党が合意して国会で弾劾が可決されれば、憲法裁判所の判断に委ねられますが、認められれば60日以内に後任の大統領選挙が行われます。ここで問題になるのは、与野党とも大統領選への準備が全く進んでいないということです。潘基文氏や、野党からは実質的な最高実力者である文在寅(ムン・ジェイン)氏の名前が挙がりますが、韓国政治が大転換点を迎えたいま、果たして彼らが国民の目に新しい道を提示できる人物と映るかどうか、疑問が残ります。既存の政治に対する不信感は頂点に達しています。 潘氏が支持を集めてきた理由は、国内で「世界大統領」とも呼ばれる国連事務総長という抜群の知名度に加え、外交官出身のクリーンなイメージによるものですが、任期末になって、与党の親・朴槿恵派に近づきながら大統領への色気を露骨に見せるようになってきたことから、今回のスキャンダルで大きな打撃を受けると思います。むしろこの二人を飛び越えて、次の次の大統領候補と目されていた人たちによる世代交代が一気に起こる可能性もあると思います。 現在の韓国の繁栄を作り出す上で、朴正煕が果たした役割が大きいことは疑いないものの、一方で、韓国社会が抱える様々な矛盾にも朴正煕の存在は大きな影を落としています。英雄か、単なる独裁者か、朴正煕をめぐる評価は未だに国論を二分するほどです。非業の最期を遂げた朴正煕の娘である朴槿恵までがこうした形で惨めな末路をたどることになったことは、韓国現代史の大きな悲劇だと思います。(聞き手、iRONNA編集部・松田穣)おくぞの・ひでき 静岡県立大学大学院国際関係学研究科准教授。福岡県出身。九州大学大学院比較社会文化研究科博士後期課程単位修得退学。NHK記者、朝日新聞記者、韓国東西大学校国際学部助教授などを経て、平成22年から現職。専門は現代韓国政治外交、朝鮮半島をめぐる国際関係。

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    東京五輪招致不正疑惑、政府・JOCはなぜ後ろ向きだったのか

    郷原信郎(弁護士、関西大学社会安全学部客員教授) 5月12日、フランス検察当局が、日本の銀行から2013年7月と10月に2020年東京オリンピック招致の名目で、国際陸上競技連盟(IAAF)前会長のラミン・ディアク氏の息子に関係するシンガポールの銀行口座に、「東京2020年五輪招致」という名目で約2億2300万円の送金があったことを把握したとの声明を発表した。 この疑惑は、前日に、英紙ガーディアンが特ダネとして報じていたもので、フランスの検察当局の声明を受け、AFP、CNNなどの海外主要メディアも続々と「重大な疑惑」として報じているようだ。 こうした事態を受け、日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長は、5月13日、自ら理事長を務めていた東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会(2014年1月に解散、以下、「招致委員会」)としての支払の事実を認めた上で、「正式な業務契約に基づく対価として支払った」などと説明した。衆院予算委で答弁するJOCの竹田恒和会長。右端は安倍首相=5月16日午前 しかし、竹田会長の説明内容は極めて不十分であり、フランスの検察当局が声明まで出して指摘している、東京2020オリンピック・パラリンピック(以下、「東京五輪」)招致をめぐる疑惑に対して、納得できる説明とは到底言えない。竹田会長の発言に対する重大な疑問 サンスポのネットニュースに、以下のような竹田会長と記者との一問一答が掲載されている。――報道をどう受け止めたか。 「招致活動はフェアに行ってきたと確信している。支払いはコンサルタント料と確認でき、公認会計士の監査、指導を受けた上で送金されている」――送金口座について。 「(国際陸連前会長の)ディアク氏とどういう関係があるかは知らない」――どんな会社か。 「中東の情報分析に実績がある会社だと報告を受けた。細かく承知していないが、事務局が必要だと判断した」――フランスの検察当局から連絡はあったか。 「ない。国際オリンピック委員会(IOC)からは照会があったので、全て伝えている」――活動報告書に記載のある支出か。 「裏のお金なんてあるはずない。正当なお金。業務契約に基づいて払われ、招致活動に使った」 ――約2億円は高額では。 「事務局で判断した」 竹田会長の発言中、まず、招致活動がフェアに行われたと「確信している」と言っている点だが、フェアに行われたか否かは、今回の疑惑に関して、不明な点が明らかにされて初めて評価・判断できるものだ。竹田会長が、全ての支出先について具体的にその当否を判断して支出したというのであれば別だが、問題とされている送金先について「細かく承知していない。事務局が必要だと判断した」と言っているのである。現時点においては、招致活動がフェアであったか否かについて重大な疑問が生じ、その疑問が払拭されるだけの情報もないのであり、「確信する」と言えるだけの材料がそろっているとは思えない。 重要なことは、竹田会長が「裏金ではなく、正当な業務契約に基づいて支払われた」と述べている点、つまり、問題とされている会社への約2億2300万円の支払が、招致委員会という組織において承認された正式な契約に基づいて支払われたと認めていることだ。 もちろん、組織内での正規の出金手続きを経ないで支出された「裏金」であれば、それ自体が不正であり、目的も不正なものであった疑いが濃厚となる。しかし、「裏金」ではなく組織の正式な契約に基づいて支払われたものだったからと言って、支払いに問題がなかったとは言えない。「監査法人の監査・指導」は否定の根拠にならない フランス検察当局の声明によれば、送金した先がIAAF前会長の息子に関係する会社の銀行口座であるという事実があり、それが2020年五輪開催地を決定する時期にあまりに近いタイミングであることから、開催地決定に関して権限・影響力を持つIOC委員を買収する目的で行われた不正な支払いだった疑いがあるということだ。 問題は、招致委員会側に、そのような不正な支払いの意図があったのか否かであり、事務局側の判断で行ったことであれ、会長等の幹部が了承して行ったことであれ、JOC側にそのような意図があったのに、それが秘匿されていたのだとすれば、JOCが組織的に開催地決定をめぐる不正を行ったことになり、東京五輪招致をめぐって、極めて深刻かつ重大な事態となる。 そして、もし、招致委員会側には不正の意図はなく、支払った先が、偶然、そのような疑いを受ける存在だった、ということであれば、2億2300万円もの多額の金銭の支払いの目的と理由が何だったのかが問題となる。その点について、JOC側が十分な説明を行っていないことで、不正の疑いが強まることになる。 このように考えると、招致委員会による正規の支払であり、組織としての決定に基づく支払いだと認めたことのほうが、問題は、より重大かつ深刻とも言える。 前記問答での竹田会長の発言の中で気になるのは、「支払いはコンサルタント料と確認でき、公認会計士の監査、指導を受けた上で送金されている」と述べている点である。 「正規のコンサルタント料として支出したものであり、それについて、監査法人による監査、指導を受けた上で支出しているので、何の問題もない」「少なくとも、(会長の)自分は、監査法人の指導を受けた上で事務局が支出したということで、正当な支払と信じていた」ということが言いたいのであろうが、ここで「監査法人による監査」を持ち出すのは的外れであり、問題の「すり替え」を行おうとしているように思える。 招致委員会の支払が、不正な会計処理によって行われ、裏金として支出されていたのであれば、そのような不正の有無は監査法人による監査でチェックされるべきであって、監査法人の指摘がなかったのだから、不正はないと信じていた、ということも言えなくはない。 しかし、招致委員会の組織の意思決定に基づいて行われた支出なのであれば、監査法人が指摘できるとすれば、支払いの勘定科目が適切ではないことや、手続き上の瑕疵があった場合である。このような問題があれば、監査法人が監査で指摘すべきということになるが、竹田会長自身が、「正当な業務契約に基づいて支払われた」と言っているのであるから、少なくとも、契約や承認の形式面には問題はなかったという趣旨であろう。 むしろ、今回の疑惑に関して問題となるのは、①招致委員会側が実際には不正の意図をもっていたが、それを秘匿したまま機関決定したのではないか、②支払承認の機関決定の時点で、支払の目的・理由について内部での説明・検討が不十分だったのではないか、の2点であるが、少なくとも、①の問題は、委員会側の主観的な意図の問題であり、それを秘匿されていれば監査法人には知りようがない。また、②の問題も、書類上、形式が整っていれば、監査法人としては、委員会内部の検討・議論の当否に言及することはできないであろう。 結局のところ、今回の約2億2300万円の支払について、監査法人の監査・指導を受けていることは、疑惑を否定することの根拠にも、招致委員会幹部の責任を否定する根拠にもならない。 JOCの広報官も、「支払われた2億2300万円は、コンサルティング、招致運動のプランニング、プレゼンの指導、情報・メディア分析などの対価として支払われた」と説明しているようだが、2013年7月、10月という支払の時期との関係で、その業務の内容、対価の合理性などが具体的に説明されない限り、疑惑が晴れるものではない。「調査」を行おうとしない日本政府・JOC「調査」を行おうとしない日本政府・JOC 不可解なのは、フランスの検察当局の声明によって、東京五輪招致に関する重大な疑惑が生じているのに、日本の政府・JOCの側で、それに関して客観的事実を調査する姿勢が見えないことだ。 JOCの竹田会長は、まさに、招致委員会の理事長として今回の約2億2300万円の支払を承認した当事者だ。支払先に際してどの程度の認識があったかに関わらず、少なくとも重大な責任があることは否定できない。しかも、JOCのトップの竹田会長が、今回の問題について、「東京五輪招致活動がフェアに行われた」「正当な支払だった」などと現時点から断定的な言い方をしているのは、むしろ、フランスの検察当局の声明で表面化した疑惑を否定するどころか、一層疑惑を深めるものと言える。 そして、このような事態に対して、現時点で、JOC側にも、日本政府側にも、「調査」を行う動きが全く見られない。 菅官房長官は閣議のあとの記者会見で、「フランスの検察当局から発表があったので、関係省庁との連携を図りつつ、政府として事実関係の把握にさらに努めていくと同時に、改めて、東京都、JOCに対し事実関係をきちんと確認していきたい」と述べたということだが、要するに、「フランスの検察当局が把握している事実関係を、日本政府としても把握すること」とJOCに事実関係を確認することしか、現時点では考えていないということだ。鈴木大地スポーツ庁長官も、「これは招致活動のうえでのコンサル料であり、コンサルティングに対する対価だとの報告を聞いている」とコメントしたと報じられている。 招致委員会が組織として正規の手続きで支払った2億2300万円もの多額の資金が、五輪招致をめぐる不正に使われた重大な疑惑が生じているのであり、しかも、JOCのトップは、支払いを行った招致委員会のトップで、まさに当事者そのものである竹田会長であり、JOCに事実確認しても、真実が明らかになることは全く期待できない。利害関係のない、外部の第三者による調査が最も強く求められるケースであることは明らかである。JOCがそれを行わないのであれば、政府がJOCにそれを強く求めるか、自ら設置すべきであろう。 もちろん、フランスの検察当局の声明も、現時点では、「東京2020年五輪招致」という名目で、開催地を決定する時期にあまりに近いタイミングで、2億2300万円を超える金額が、五輪開催地を決める投票権を持つIOCメンバーの息子に近い人物の会社に送金されている事実を指摘しているだけだ。 しかし、少なくとも、フランスの検察当局の声明とその前後の各国メディアの報道によって、日本の五輪招致活動に対して重大な疑念が生じていることは否定できない事実であり、それについて、日本政府・JOCが「フェアな招致活動」だと主張するのであれば、少なくとも、その約2億2300万円の支払について、疑念を解消できるだけの説明が行われ、その是非を判断するための調査を行う必要がある。 その際、現時点での問題が、「裏金」の問題や、監査法人の監査の対象になるような会計処理の問題なのではなく、招致委員会の決定に基づく支払いの目的・理由と、その是非の問題であることに留意が必要であろう。 この点、急きょ「オリンピック・パラリンピック招致裏金調査チーム」という名称のチームを立ち上げた民進党も、問題を正しく理解しているとは思えない。 疑惑に関する調査に、日本政府も、JOCも後ろ向きの姿勢を示しているのは、「綺麗ごとだけで五輪招致を実現できるわけではない」という認識から、徹底した調査を行えば、ある程度の不正な資金提供等の事実が出て来ることも十分にあり得ると考えているのかもしれない。そうだとすれば、「今更、東京五輪開催を辞退することはできないので、開催に決定的な支障となるような事実が表面化しないようにするしかない」と考えていることになる。 しかし、そのような考え方は、これから4年余りに起きることを想定した場合に、適切な判断とは到底言えない。このまま東京五輪開催で本当にいいのかこのまま東京五輪開催で本当にいいのか 今年8月開催されるリオデジャネイロ五輪を、ブラジル国民はどのような思いで迎えようとしているのであろうか。ブラジル経済の急速な悪化、大統領周辺も含む大規模な汚職事件での政治の混乱、そして、五輪直前の大統領の職務停止、ジカ熱の蔓延、五輪関連工事の遅れ等々。これらの事態の中で、「五輪招致は行うべきではなかった」と考えている国民が増えているのではないだろうか。 しかし、このような事態の中でも、リオ五輪の開催をやめることができなかったのは、このような事態が相次いで発生したのが、既に開催辞退ができない時期に入ってからだったからだ。4月27日、リオデジャネイロ五輪開催まで100日の特集紙面を組んだブラジルの地元紙グロボ そのリオ五輪で、「次期開催地は東京」と何の限定もなくアナウンスされてしまえば、事実上、開催地変更はできなくなるであろう。そういう意味では、開催辞退を決断するとすれば、今後1~2か月が、最後の時点と言ってよいであろう。 新国立競技場の建設、エンブレム選定をめぐるトラブルに加え、大地震の連続という過去に例のない熊本大震災の発生、五輪開催予定地東京の首長舛添要一都知事の政治資金の私的費消等の問題など、4年後に東京五輪が開催されるとすれば、想像しただけで気が滅入るような出来事が続いている。 それに加えて、海外から、その東京五輪招致自体に対して疑惑の目を向けられるとすれば、このまま東京五輪の開催を維持することが、日本の国にとって、社会にとってプラスになることとは到底思えない。 五輪招致をめぐる疑惑について、徹底した調査を行ったうえ、問題があったことが明らかになっても、それでもなお、東京五輪を開催するというのが国民の意思であれば、招致を巡る問題を呑み込んだうえで国民全体が心を一つにして、開催に向けて取り組んでいくべきであろう。 今回の招致委員会をめぐる疑惑について、客観的かつ独立の調査機関を設けて徹底した調査を行い、速やかに招致活動をめぐる問題の真相を解明した上で、東京五輪の開催の是非についての最終的な判断を、国政選挙の争点にするなどして、国民の意思に基づいて行うべきではなかろうか。(ブログ「郷原信郎が斬る」より2016年5月16日分より転載)

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    100兆円に膨れ上がった巨大スポーツ資本主義「腐敗の構造」

    松野弘(千葉商科大学人間社会学部教授、早稲田大学スポーツビジネス研究所・スポーツCSR研究会会長)「111兆円市場」の巨大化したスポーツ資本主義 2013年8月にフランスで刊行され、まず欧州で評判となり、次いで日本でも2014年12月に邦訳版が刊行された、フランスの経済学者のトーマス・ピケティの『21世紀の資本』(山形浩生他訳、みすず書房)が世界で大評判のベストセラーとなったことは記憶に新しいことである。あのリーマン・ショック以降、崩壊したと思われた「バブル経済」が復活し、富裕層と貧困層の拡大を進化させ、「所得格差」が社会問題化したからこそ、資本主義のあり方を問題とするこの本が話題となったのである。 これをスポーツの世界に置き換えてみると、前近代社会(封建社会)では、狩猟・乗馬等のスポ-ツ(気晴らし)は貴族階級の娯楽であったのに対して、産業革命によって近代産業社会(資本主義社会)が登場したことが歴史的背景としてあげられる。その結果、労働者階級にも労働の対価や精神的・身体的な余暇としてのスポ-ツが普及してきたことが娯楽としてのスポ-ツをビジネスに変換させるという、スポ-ツビジネス市場を出現させたのである。ここに、労働者階級のためのスポ-ツとしての競馬・サッカ-などのギャンブルの対象となるような新しい資本主義的なスポ-ツが登場したのである。 翻って、現代のスポーツ界を見てみると、私たち一般大衆にとって、労働の後の娯楽としてあったスポーツのビジネス化はさらに加速化して、2017年に世界のスポーツ関連市場が111兆円という巨大な市場を形成すると予測されている(ニッセイアセットマネジメント資料、「ファンドマネージャーに聞く、スポーツ関連市場の魅力と投資戦略」)。このように、今や「スポーツ資本主義」(Sports Capitalism)というべき怪物を誕生させているのだ。ここでいう「スポーツ資本主義」とは、「スポーツ・ステイクホルダー(スポーツ市場の利害関係者-国際的なスポーツ組織・スポーツ用具メーカー・スポーツ支援企業群・スポーツファン等)がスポーツ市場に資本を投下して形成される社会経済システムのこと」である。 人間の飽くなき物質欲はスポーツビジネス市場を拡大・増殖させるだけでなく、あらゆる組織のトップリーダーやその部下が自己利益のためにさまざまな不正な行為をするのが昔からの常套手段だ。世界で大騒ぎをしている国際サッカー連盟(FIFA)の役員の不正賄賂問題、五輪の開催地決定をめぐる国際オリンピック連盟(IOC)の役員に対する賄賂問題、世界アンチ・ドーピング連盟(WADA)によるロシアの陸上競技選手によるロンドン五輪のメダル獲得者のドーピング問題等、スポーツをめぐる不正な問題は枚挙にいとまがない。これはスポーツにおける「競技者間の競争原理」がスポーツビジネス市場をめぐるスポーツ・ステイクホルダー間の利益の争奪戦という、「資本主義的な競争原理」に変質していることを意味している。スポーツが「DO Sports」(実践のためのスポーツ)から、「Spectacle Sports」(見て楽しむスポーツ)に変化し、数多くの観客が楽しむための装置としてのマスメディア(新聞・雑誌・テレビ・ラジオ)が出現したことがスポーツビジネス市場を拡大させる大きな要因の一つとなったといえるだろう。 ここに、スポーツ・ステイクホルダーを巻き込んだ「腐敗の温床」が生まれ、IOCや他の競技団体の国際組織における「金銭をめぐる腐敗の構造」が構築されていったのである。なぜスポーツビジネスは腐敗したのかなぜスポーツビジネスが腐敗したのか なぜ、こうした不正が横行するのか。それは、スポーツビジネスがスポーツ人口の拡大に伴い、ナイキ・アディダス・プーマ等の世界的な「スポーツ用具メーカー群」やスポーツイベント・スポーツビジネスをマネジメントする「スポーツ支援企業群」にさまざまな利権を与えているからだ。「濁った水には、魚は棲まない」の諺(ことわざ)にあるように、スポーツビジネスの利権を漁る人たちが巨大なスポーツ市場を独占しようと戦っているからだ。 一つのイデオロギーは民間企業や国民だけでは形成することができない。もう一つの大きな力、国家の支援が必要だ。かつて、ソ連・東ドイツ等の社会主義国家が輝かしい成績をあげられたのは、国家によるアスリートの支援という「ステートアマ」の存在があったからだ。こうしたスポーツビジネス最大の不正の根となっているのはオリッピックの開催候補地決定をめぐる熾烈な国家間(各国のオリンピック委員会)の戦いだ。 1970年代までの五輪には各種目とも「アマチュア規定」があり、プロ選手は五輪に参加できなかったが、1984年にアメリカで開催されたロサンゼルス五輪では、オリッピックは「商業化されたイベント」(冷泉彰彦、「五輪、拡大する商業主義に問題はないのか?」、ニューズウィーク電子版、2017年7月17日)となり、ロス五輪のテレビの放映権料が1960年のローマ五輪の120万ドルから、一気に約3億ドルに膨れ上がった。これは、近代五輪の提唱者であり、創設者であるピエール・ド・クーベルタン男爵の近代オリンピックの理念「アマチュアリズム」に反するものであった。ロス五輪以降もオリンピックの放映権料はうなぎのぼりとなり、2012年のロンドン五輪では約12億ドルまでになってしまった。この他に、開催国スポンサーシップ、国際スポンサーシップ、入場料金、グッズ料金等の収入がIOCの懐に入るわけだ。まさに、「カネの宝庫」である。この巨大な「マネー市場」に利害関係者が参入するのは当然のことだ。それゆえに、この市場に参加するための利権を獲得するために必死になるのだ。 そこに、賄賂などの腐敗の構造が出て来ることになる。こうしたオリンピックをめぐる利権争いが激化し、腐敗の温床となった背景には、IOCのトップリーダーたちが、欧州の富裕な貴族階級からスポーツビジネス目当ての実業家、政治家などに交代したこと、IOC職員はこうしたリーダーの忠実なる官僚であったこと、巨大な収入であるメディアとの関係強化(莫大な放映権料の収入化)、「オフィシャル・スポンサー」というスポンサー企業の参入があったこと、その結果、オリンピックが「アマチュア・スポーツの祭典」から、「スポーツビジネスショー化」したこと、などがあげられる。東京五輪招致不正疑惑の背景と要因東京五輪招致不正疑惑の背景と要因 最近のザ・ガーディアンの報道(2016年5月12日)によれば、国際陸上競技連盟(IAAF)前会長でIOC委員だったラミン・ディアク氏と、その息子でIAAFのコンサルタントを務めていたパパマサッタ・ディアク氏は、フランスの検察当局より汚職の罪で告訴されて捜査中だという。さらに東京五輪の招致活動で、日本の招致委員会側が2013年7月と10月の2回に渡って、パパマッサタ氏と関係が深いスイスにあるマーケティングコンサルタント会社、AMS(アスリート・マネジメント・サービス)のシンガポールの 関連会社「ブラック・タイディングズ」の口座に総額200万ユーロ(約2億3000万円)を振り込んだということである。この口座の管理者は、AMSのコンサルタントをしていた、イアン・タン・トン・ハン氏であるとしている。 この背景には、五輪招致をめぐる開催候補都市間の壮烈な争いがスポーツ・ステイクホールダー間の利権に争いにつながっているということがある。ここで暗躍しているのがスポーツロビーストで、元IOC委員・職員、コンサルタント等の個人ロビイストや、PRエージェンシー、広告代理店、スポーツ用品メーカー等の組織ロビイストなどがいる。彼らは候補都市の招致委員会の依頼を受けてIOC委員から賛成票を獲得すべく、委員の家族構成、趣味趣向、経済状況等に至るまで詳細な個人情報を収集、賄賂攻勢をかけることで、五輪招致に導くための最大限の戦略的行動をとっている。 報道によれば、今回の2020東京五輪招致委員会は、これまでの招致運動の失敗の要因はスポーツロビイストの効果的な活用ができなかったからだとし、こうしたロビイストを戦略的に活用し、招致決定に影響力を与えようとしたと推測されている。ロビイストの活用に関して東京五輪招致委員会に戦略的な助言をし、ロビイストの紹介等で主導的な役割を果たしたのが世界有数の広告代理店「電通」であるといわれている。しかし、こうしたロビー活動の表舞台に電通が出ることはない。さまざまな関係者、関係企業が当該関係者に働きかけを行い、その成果に対する報酬の支払いを行うのが通例である。今回の場合も、元IOC委員のラミン・ディアク氏の息子のパパマサッタ氏と近い関係と言われる「ブラック・タイディングズ」のコンサルタントであるタン・トン・ハン氏が、不正送金をしたとされている銀行口座の管理人となっている。当時の日本の招致委員会の竹田恒和理事長は、正式なコンサルタント契約に基づき正当な報酬の支払いをしたと先日の衆議院予算委員会で答弁している。このことを証明していくためには、契約内容が記載されている契約書や支払い明細書等の書類の情報公開をする必要がある。なぜならば、招致委員会が使ってきた資金は国民の税金や寄附という公金だからだ。 五輪招致運動等の国際的なスポーツイベントをめぐって、買収・賄賂等の不正な金銭のやり取りがあること自体、クーベルタン男爵の「アマチュアリズム理念」に反するものであり、スポーツ交流を通じて、世界の平和を実現しようとした五輪開催の意図に背くものである。その根底には、スポーツビジネスが巨大化し、利権争いが加速化・増殖化しているという現実があることを忘れてはならない。スポーツ資本主義はどこへいくスポーツ資本主義はどこへいく 国家的事業としてのオリンピックや、プロスポーツビジネスとして発展しているサッカー、野球、ゴルフ、バスケットボール等はスポーツ市場に参入している企業群(「スポーツ用具企業群」「スポーツ支援事業群」「スポーツ施設・設備事業群」「スポーツ情報産業業群」)は、ヘルスケア産業の増大化に伴ってスポーツ市場が今後も拡大し、その利益奪取をめぐって熾烈な戦いが展開されることが予想される。そこに、巨大なスポーツビジネス市場を形成する「スポーツ資本主義」という、スポーツをビジネス資本とし、既存の社会・経済システムを超えた新しい資本主義が形成されつつある。スポーツ資本主義の本来の主役とはスポーツの担い手である選手であるが、現実はそうではない。選手は金儲けのための手段にすぎない。スポーツ資本主義を牛耳っているのは、スポーツ利権の奪取を目論んでいる政治家、実業家等である。巨大の利権があるからこそ、そこに腐敗の温床があるのだ。 今、世界の注目を集めているFIFA(国際サッカー連盟)の場合、腐敗の原因は、会長の任期が長期間に渡っていること-元会長のアベランジェ氏は24年、前会長ブラッター氏も17年という異常な任期の長さだ-、重要事項を決定する理事会が「密室」(非公開)で行われてきたこと(これは、会長の意思決定を理事に逆らわさせないための方法で、賄賂を分配して口を防ぐためと推測される)、会長・理事を監視するための「監査委員会」等といったの第三者委員会がないこと、であると言われている(NHK国際報道「FIFA 腐敗はなくせるか」、2015年7月)。加えてアベランジェ会長は事務局入りして会長に昇りつめた「事務局職員の星」ということも挙げられる。彼はテレビ放映権料・企業のスポンサーシップ・開催候補地からのさまざまな賄賂の差配等で卓越した成果をあげ、FIFAの利権システムを作り上げていった。 これがIOCとなると、FIFAが集金した不正な資金の何倍もの金額になるはずだ。IOCの不正も基本的にはFIFAの場合と同じだが、五輪は国家の威信を高揚させるための国家事業なので、五輪開催に伴う直接的な経費(会場・宿舎・輸送・食事等の整備等)よりも、鉄道・道路・インフラ整備等の莫大の間接経費が必要となってくる。こうした事業に参入するために、スポーツビジネス関係者のみならず、一般事業者も「利権」獲得を求めて、関係者に多額の賄賂や寄附を提供してきた。この背景には、スポーツによる国際平和への貢献という気高い理念という大義名分があり、そこに不正が入り込む余地があるといわれている。なぜならば、スポーツ関係者に「賄賂をもらって、セレブな生活を送る」という拝金主義が浸透しているからだ。 こうした不正を正さない限りスポーツビジネスは発展しないし、それを支える「スポーツ資本主義」は破綻することになるだろう。例えば、五輪が「アマチュア・スポーツの祭典」としての理念・活動を遵守し、スポンサー企業もフィランソロピー(社会貢献)企業としての「品性」を保っていれば、こうした不正や腐敗は起こらないはずだ。 「スポーツ資本主義」思想を「スポーツファンやスポーツ関係者のための健全なユートピア」にするのか、それとも、「一部権力者による拝金主義のための悪の帝国」にするのかは、私たちの社会倫理性の高い良識とスポーツ活動を公正・公平に推進していくための、「スポーツ・ガバナンス」(多様なスポーツ・ステイクホールダーによる組織の統治)の構築にかかっているといえるだろう。[主要参考文献一覧](1)) 一ノ宮 美成/グル-プK21(2014)、『2020 東京五輪の黒いカネ』(宝島社)。(2) 小川 勝(2012)、『オリンピックと商業主義』(集英社新書)。(3) ジェニングス,J.,(1998)、『オリンピックの汚れた貴族』(野川 春夫訳、サイエンティスト社)。(4) ジェニングス,A.,(2015)、『FIFA腐敗の全内幕』(木村 博江訳、文藝春秋)。(5) シムソン,V/ジェニングス,A.,(1991)、『黒い輪-権力・金・クスリ:オリンピックの内幕』(広瀬 隆監訳、光文社)(6) 通商産業省産業政策局(1990)、『スポーツビジョン21:スポーツ産業研究会報告書』(通商産業調査会)。(7) 日本政策投資銀行地域企画部(2015)、「2020年を契機とした国内スポーツ産業の発展可能性および企業によるスポーツ支援:スポーツを通じた国内経済・地域活性化」、Retrieved February 12, 2016, from http://www.dbj.jp/pdf/investigate/etc/pdf/book1505_01.pdf(8) 原田宗彦(1999)、「スポーツ産業の構造的変化」原田宗彦(編著)『スポーツ産業論入門(改訂第2版)』杏林書院:東京。(9) FIFA(各年版)、 『FIFA Financial Report』 Retrieved March 11, 2016, from http://www.fifa.com/about-fifa/official-documents/governance/index.html(10) BBCニュ-ス,2016年5月12日号。(11) BuzzFeed Japan 2016年5月13日号。(12) ミラ- J.(1980)、『オリンピックの内幕』(宮川 毅訳、サイマル出版会)。

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    カネを生まないスポーツを排除する広告業界の闇

    小林信也(作家、スポーツライター) 日韓共催となった2002年のW杯サッカー招致決定の日を覚えているだろうか? それは1996年の6月1日だった。  あのとき事前の報道では「日本有利」「日本開催は決定的」との空気が濃厚だった。1993年にJリーグが誕生し、空前のサッカー・ブームを巻き起こし、W杯サッカーへの注目と熱狂も俄然盛り上がる中で、「日本開催」は日本中の願いのようになっていた。前年に、立候補予定だったメキシコが辞退し、「日本に先を越されてはならない」とばかり名乗りを上げた韓国と日本との一騎討ちとなっていた。 ところが、決定直前になって、意外な情報が伝えられた。私もちょうどTBSラジオのニュースワイド番組に出演するため、TBSのスタジオにいた。もたらされた情報は、「どうやら日韓共催に決まりそうだ」という、思いがけない展開だった。「日韓共催」のアイデアは一部にあるにはあったが、ほとんどのメディアが真剣に取り上げていなかったし、日本人の大半が選択肢として認識していなかった。FIFAの理事会で決定されるのは、「日本か、韓国か」であって、まさか「共催」とは誰もが予想しなかった。日韓共催で行われた2002年のサッカーW杯開会式 当時のアヴェランジェ会長が一貫して日本開催を支持していた事実もあって、日本が有利に招致活動を展開していたのは間違いない。問題は、韓国による巻き返しだった。要約すれば、「日本対韓国」の図式では勝ち目がないと悟った韓国はしきりに政治的な動きとロビー活動を展開。アヴェランジェ会長との派閥争いが激化していたUEFA(欧州サッカー連盟)のヨハンソン会長(FIFA副会長当時)と欧州の理事たちを懐柔し、「日韓共催」の票を着実に積み重ねた。 決定前日になって自分の立場(日本開催支持)が危うくなったと察したアヴェランジェ会長が、理事会で自ら「日韓共催を提案し、満場一致で決まる」という、日本にとっては青天の霹靂ともいえる出来事が起こった。 それまでの日本の関係者たちは、ロビー活動などの裏の動きにはさほど熱心ではなく、「アヴェランジェ会長が日本を支持しているから大丈夫」と楽観していた。世界のスポーツ界はそんなのんびりした了解では動かないと日本が体験した大きな分岐点となった。スポーツがビジネス化したロス五輪 それ以前にも、1996年の五輪招致で圧倒的に優勢と言われた名古屋が敗れた相手がソウルだった。 その後も、大阪が2008年の五輪招致に敗れるなど、国際舞台における日本のスポーツ政治力の不足は深刻な課題と認識されるようになった。余談だが、大阪が北京に2008年開催地の座を奪われた後、「大阪に投票したのに残念だ」というメッセージが、得票数を上回る数で届いたと言われている。 誰かは嘘をついたわけだし、嘘をついてでもメッセージを送る必要があったと推測することもできる。 そのような苦い体験を重ねて、日本も裏側での活動に熱を入れ始めたのは想像に難くない。元々ロビー活動に長けている韓国と対照的に、日本はそのような活動が苦手で、経験を重ねたスペシャリストも少ない中で、今回の支払先となったような海外の専門家にその役目を金銭的報酬を持って依頼するのは、ごく自然な選択とも言えるだろう。 スポーツが、「平和の祭典」「国際親善」「青少年の健全な活動」という枠を超えて、「ビジネス」の側面を大きく持ち始めたのは1970年代ころからと言われ、象徴的には1984年のロサンゼルス五輪が「スポーツがビジネス化、プロ化に向かった大きなきっかけ」と語られる。 今回問題のテーブルに上がっている電通は、1982年に世界のスポーツ・ビジネス界の実力者であるホルスト・ダスラーと共同で、ISLという会社をスイスに設立する。ダスラーは短期間のうちに、IOC、FIFAだけでなく、IAAF(世界陸連)、UEFAの権利も得て、世界の主要スポーツ・ビジネスを手中に収めていく。電通の資金力、日本企業の経済力と世界マーケットへの進出意欲がそれを支えた。 スポーツはこうして、〈純粋な競技への愛情と情熱を持つ熱心な元選手たちによって運営される分野〉から、〈大金を生み出すビッグ・ビジネスの素材となり、スポンサー企業の広報宣伝を主な目的として、広告代理店がその中枢を担う分野〉に転換した。 ルールとマナーを尊重し、スポーツマンシップを最重要視するのはスポーツマンの当たり前の感覚だが、広告代理店にそれを求めるのは筋違いなのだろう。スポーツ界は広告代理店に軒先を貸したつもりで母屋を取られた格好だ。 私がスポーツの取材を始めてまもないころ、1970年代の後半か80年前後のことだったと思う。 「陸連には電通から出向している広告代理店の社員がいるんだ」と聞かされ、戸惑った記憶がある。(純粋に競技の普及振興や公正な競技運営を主とすべき競技団体の中枢にお金儲けの人が入って影響力を行使している) その現実が、感覚的に融合しなかったのだ。いまとなってはマネジメントやプロモーションの発想が競技団体にも重要なこと、組織を運営し発展させるには資金も必要だと理解できるが、素朴な感想として、競技団体と広告代理店は水と油というのか、間違っても広告代理店に組織運営の根幹まで任せてはいけないだろうという青春時代の感覚はあながち間違ってはいないのではないか。スポーツ界に繁殖する広告代理店 ひとつ強烈な記憶がある。 私がトライアスロンの普及や選手のサポートに携わっていた頃の話だ。1980年代の終わり。ちょうどトライアスロンが日本でブームになり始めていたころ。縁あって、選手とともに電通のスポーツ・ビジネスの中核を担う人物とお会いした。スポーツ・ビジネス界に圧倒的な影響力を持ち、“天皇”の異名さえ持つ人だと紹介された。彼は、スポーツライターと記した私の名刺を一瞥して言った。 「お前は、書き屋か」 書き屋という言葉に初めて接したので、最初は意味がわからなかった。私がまだ30歳を越えたばかりの若輩者だったことを差し引いても、初対面でそのような侮蔑的な呼ばれ方をしたのはそれが後にも先にも一度きりの経験だ。彼は、やがて開催予定の宮古島トライアスロンに関して、持論を展開した。 「スイムも長いんだから、海の途中にお汁粉か何か、温かいものを用意したら、選手は喜ぶだろう。そうしてやれよ! なあ、いいアイディアだろう」 選手とスタッフに胸をそらして同意を求めた。スタッフは「ははあ」と平伏したが、選手と私は呆然としていた。その場にいた選手で、スイムの途中でお汁粉を必要とする選手はひとりもいなかった。たとえ完走目的の参加者であっても、海上のエイド・ステーションにお汁粉を見つけて感激する選手がどれだけいるだろうか? 世界のスポーツ界を動かしていると言われる人物のスポーツ観、プロデュースの心根がその程度のものかと知って、深く失望したのを覚えている。 スポーツ界における広告代理店の繁殖ぶりは、広がる一方だ。電通や博報堂に限らず、スポーツ・マネジメントを専門にする代理店も数多く誕生している。私も数社と仕事で関わった経験がある。すべてを否定するわけではないが、その大半が、 「スポーツはどうあるべきか」ではなく、「大きなお金を動かすにはどうしたらよいか」が先にあり、スポーツの未来を語り合って熱く共感できる人は少ない。 彼らの多くは、「お金が生み出せてメディアも関わって人気になれば、結果的にそのスポーツは繁栄する」という論理を前提にしている。 一方で、だから当然、「お金が生めそうもない競技には見向きもしない」。広告代理店に相手にしてもらえない競技団体は自らアイディアを生み出す方向でなく、なんとか広告代理店やスポンサーに声をかけてもらえるよう、オリンピック種目になるための努力に懸命になったりする。本末転倒の現象がスポーツ界を覆っている。 早く、運営の主導権、未来像を持ってスポーツを活性化する中枢の座を、スポーツを本当に愛する専門家の手に委ねる必要がある。

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    五輪コンサルタントとIOC委員を繋いだ電通の「スポーツ錬金術」

    春日良一(スポーツコンサルタント) 国際オリンピック委員会(IOC)会長、トマス・バッハは本気でIOCと五輪の改革に乗り出している。1993年9月東京が2020年の五輪開催地に決定した同じIOC総会で第9代IOC会長に就任した。即座に「アジェンダ2020」(五輪改革提言20+20)を提唱し、「クリーン」で「サステナブル」(持続可能)なオリンピックを目指している。 来年決定する2024年五輪開催都市に向けての行動規範を含む、2016年版「倫理規範」が発表された。その規範はIOC委員の招致都市への訪問を禁止し、贈答品についても一切だめとする厳格さを前のバージョンから受け継いでいるが、「コンサルタント」という項目が新たに登場していることが特筆に値する。立候補都市が契約するコンサルタントについては、個人、法人を問わず、IOCにすべてリストアップして届け出なければならない。IOCのバッハ会長=2015年5月18日(共同) そんな中、2020年東京五輪招致委員会がシンガポールに本社を置くブラック・タイディング社に支払った「コンサルタント料」について、不正疑惑が取りざたされている。今回の疑惑について招致委員会理事長の立場にあった日本オリンピック委員会(JOC)竹田恒和会長は、5月18日の衆院文部科学委員会で、この契約について国際陸上競技連盟(IAAF)前会長のラミン・ディアク氏と同社の関係を知った上で、コンサルタント契約を結んだと証言している。竹田氏の説明によれば、「五輪招致に成功するためにはコンサルタントとの契約は必須であり、この契約は妥当」なものであるという。 五輪招致に関わるコンサルタントについては、それなりの歴史があり、その歴史を知らなければ、今回の疑惑の深層も理解できないだろう。遡ればきりがないが、そもそも五輪開催を獲得するために都市がしのぎを削るようになるのは、五輪開催が利益をもたらすようになってからだ。私が関わった長野冬季五輪の招致活動から水面下にいたコンサルタント的存在が表舞台に出始めてきた。 後にソルトレークシティー五輪招致疑惑の問題が起こる1999年になって、長野五輪当時からスタジオ6なるエージェントが存在していたことが明らかになるが、このスタジオ6、1988年カルガリー冬季五輪の時には、当時日本選手団渉外として選手村入りしていた私に接触を求めてきたことで記憶にある。その頃は、確かIOC公認の出版メディアとして現れたが、当時は五輪招致に関わるやりとりは表向きのものではなかったのである。1票2000万円、アフリカの10票を狙ったのか 長野五輪が成功した時のライバル、最有力候補だったソルトレークシティーは、その敗退に痛くショックを受け、その敗因を長野のIOC委員接待攻勢と分析した。これが大きな誤謬であったことに気付くには、1999年まで待たねばならなかったが。メディアでは長野招致も同等の扱いを受けているが、長野招致成功の最大の要因は当時のJOC国際委員会の戦略指導にあった。時のIOC会長、サマランチ氏との高度な世界戦略での対話があったからこその成功であったが、そこは見落とされてきた。これについては後述する。 さて、ソルトレークシティー招致委員会はトム・ウェルチ氏率いるトップダウン型の機構だったので、IOC委員への過剰な接待攻勢と水面下で暗躍する人々を懐柔する作戦に打って出たら、その勢いは留まらなかった。そして、念願の2002年の開催権を獲得するが、余りにも露骨な買収工作が露呈し、世界の批判を浴びることになる。それによってIOC自身が抜本的な改革を余儀なくされた。その結果、これまで水面下で行われていた活動は公のものとならざるを得なくなり、次々にコンサルタントを名乗る個人や法人がオフィシャルな存在として出現した。これが、五輪招致が五輪コンサルタントの市場となるきっかけである。 五輪の世界は独特である。スポーツというツールを通すことによって、世界中の皇室や元首へのアクセスが可能になる。それも対等な立場で接触できるのである。この独自性が実は「スポーツで世界平和構築」のキーポイントになるのだが、これが個人を利する素材となることもあり得るのだ。 五輪コンサルタントは自らの活動の中で得たIOC委員、IOC事務局、国際競技連盟(IF)や各国のオリンピック委員会(NOC)との人脈を利用して、立候補都市に有利な情報を提供する。その上で招致戦略の専門的助言をしたりするもの、さらにプレゼンテーションに特化したコーディネートをするものなど各種乱立する状況になっているようだ。 「五輪コンサルタントとの契約なしに招致の成功はありえない」状況がIOC改革によって生まれてしまったという皮肉な現状となっている。2016年版IOC倫理規範は、そのコンサルタントにIOCの承認を必要として、その管理に乗り出すというわけである。 このようなコンサルタントがいる中で、今回のブラック・タイディング社に支払った「コンサルタント料」について私が直観したのは、1票2000万円、アフリカの票10という数字だった。招致活動に携わった現場感覚では、それが一番ピンとくるものだ。コンサルタント会社のディアク氏との関係、総額約2億3千万円。支払いが7月と10月。これらの情報からの直観である。 ディアク氏を頼るとすれば、逆に言えば、ディアク氏が売り込むとすれば、アフリカ出身のIOC委員の票である。アフリカにいるIOC委員は約10人である。7月に約半数の票を確約したことにより、1回目の支払いが行われ、10月には残りの票について、成功報酬として支払われた。 1票2000万円は相当額である。一人のIOC委員を懐柔する工作費として、その活動費も含めている。2億3千万円の一割がコンサルタントの対価であれば納得できる数字と思える。五輪招致不正疑惑をなくす唯一の方法東京港区の電通本社ビル このコンサルティング会社を紹介したのが電通と言われているが、そのことについては、何の不思議もない。もともとスポーツ情報をお金にする構造を思いついたのはアディダスの二代目ホルスト・ダスラー氏であり、そのダスラーとともにIOCのスポーツマーケティング代理店ISLを設立したのは電通の服部庸一氏であるからだ。ISL社はもう存在しないが、そのスポーツ国際情報戦略のネットワークは脈々と受け継がれている。IAAF会長との繋がりは確固たるものであったはずだ。 かような「五輪招致の成功にはコンサルタントの契約が必須」であるという現状について、日本のオリンピック運動の代表者が肯定したことが、元JOC職員として悲しい。なぜならもともと五輪招致の活動は、オリンピズムに基づくものだからだ。五輪は単なるスポーツの祭典ではない。単なる世界総合競技大会ではない。それは「スポーツによる世界平和構築」という使命を担っている。その開催都市を選ぶための活動もその思想に基づいて行われなければならない。 各立候補都市が競うべきは、いかにして自らの都市がオリンピズムを実現できるオリンピック競技大会を開催できるかである。その熱意と情熱の上に築かれた計画と実践に対してIOC委員が評価を下すのである。立候補を決めてから選ばれるまでその都市はオリンピズムとは何かを考え、五輪運動をその都市に啓蒙し実践する努力をするのである。それによって、オリンピックに賛同するステークホルダーを創出していくのである。 「確かにそれは理想であるが、現実はそうはいかないだろう。実際、IOC委員もすべてが善人というわけではないのでは?」という声もあるだろう。だからコンサルタントが必要なのだ!ということになりそうだが、そうはならない。 悲しい気持ちになったもう一つの理由がそれである。それはJOCのパワーの問題である。もともと五輪立候補都市に対して、招致活動を指導助言するのは、その開催都市のある国内オリンピック委員会であるからだ。その委員会がいわゆる五輪コンサルタントが有している程度の情報を蓄積していないではどうしようもない。長野冬季五輪時には、JOCが日本体育協会から独立した時で、新生JOCとして、その国際委員長に国際卓球連盟会長の荻村伊智朗氏を招き、彼のリーダーシップの下、当時のスポーツ界の国際通を少数精鋭で集めた。そしてそれぞれが収集した情報を分析して招致戦略を構築、長野招致委員会への助言に尽くした。 NOCとして日常から各国NOCとの交流を深め、援助の必要なNOCには協力し、IOCやアジアオリンピック評議会(OCA)、そしてIFなどの国際機関からの情報を収集し、オリンピック運動の具体的施策を提言するなどの活動をしていれば、そこに蓄積される情報は、コンサルタントの掌中にあるものを遥かに超えるものになるだろう。またそこで得られる国際的信頼は半永久的財産となる。当時の荻村国際委員会はそれを求めて行動してきた。その継承がなされていれば、コンサルタントに頼ることはない。あったとしても、戦略に基づいてコンサルタントを利用する程度で収まるはずだ。 バッハIOC会長の五輪改革は本気である。ドーピング問題にも招致不正疑惑にも目を瞑ることはないだろう。五輪憲章第59条の制裁には、オリンピック開催都市の開催権剥奪も入っている。 今回のような疑惑が起こることは、オリンピックの「持続可能性」に赤信号が灯ることだ。そのことを今のIOCは軽くは見ないはずである。 オリンピズムを尊重した五輪招致活動を指導する国内オリンピック委員会の日常的な仕事こそ、五輪招致不正疑惑をなくす唯一の方法であろう。そのことを強く感じるところである。

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    東京五輪不正疑惑 「電通」の名を報じぬ各局の見解

     東京五輪招致活動に際して、開催地決定の投票権を持つIOC(国際オリンピック委員会)委員に総額2億3000万円も渡していたという贈収賄疑惑が大きな話題になっている。そのスクープを報じた英ガーディアン紙の記事には、その疑惑の鍵を握る存在として日本の広告代理店最大手「電通」の名が繰り返し登場する。同紙は、「疑惑と電通の関係」にさらに踏み込んでいる。世界反ドーピング機関の報告書を紹介するかたちでこう記していた。〈BT(ブラック・タイディングス)社(電通が送金をした相手であるシンガポールのコンサルタント会社)の口座は、アスリート・マネジメント・サービス社(以下、AMS社)のコンサルタントであるイアン・タン・トンハン氏によって管理されている。AMS社は(電通関連会社の)電通スポーツがスイスのルツェルンに作り、国際陸連から与えられた商業的権利の配分を行っている〉 それが事実ならば、国会に参考人として呼ばれた竹田恒和JOC会長が答えたように、電通から招致委への「(BT社は)実績がある」という説明が、お手盛り推薦だったという問題も浮上しかねない。 海外の疑惑拡大にも関わらず、国内メディアが電通の名を報じる例は少ない。 ガーディアン紙報道の2日後から新聞各社はこの問題を報じたが、「電通」と企業名を書いたのは14日の朝日朝刊が最初。記事の最後でわずかに触れたのみだった。テレビ各局は、本誌が放送の録画を確認する限り、16日の竹田氏の国会答弁を『報道ステーション』などが報じるまで、電通という言葉は確認できなかった。 逆に電通の存在を“消す”報道もあった。ガーディアン紙の記事の核心は、複雑な資金の流れを説明する相関図にあった。そこには「Dentsu」も登場するのだが、テレビ朝日やTBSのニュースで紹介された図は、ガーディアン紙を出典としているにもかかわらず、「電通抜き」のものだった。 この件について、テレビ朝日は「5月12日放送時点では、事実関係が確認できた図を放送した。現在は電通についても必要に応じて報道しています」(広報部)、TBSは「放送内容についてのお問い合わせは、お答えしておりません」(総務局広報部)とそれぞれ回答した。博報堂出身で『電通と原発報道』の著作がある作家・本間龍氏が指摘する。「及び腰の正体はメディアの自主規制。特にテレビに顕著ですが、代理店の機嫌を損ねたくないのです。テレビ局側は“代理店を怒らせたらCM枠販売に支障が出る”と懸念し、勝手に報道を自粛してしまう。各局とも広告収入が減る中で、遠慮が大きくなっている」 さらに、電通と各テレビ局は五輪をはじめスポーツ中継やイベント開催などで密接な協力関係にある。また、朝日、読売、毎日、日経の大手新聞4社も、東京五輪のオフィシャルスポンサーとして合計60億円のスポンサー料をJOCに支払うことが決定している。“東京五輪ビジネスの仲間”であることも尻込みする一因なのか。関連記事■ オウム事件 1週間に40~50時間も各局から報道されていた■ TVの言葉が「語り」から「喋り」に移った理由を解説した本■ 皇太子ご成婚で白黒TV1000万台売り受信契約者200万人突破■ 「TV局を減らせ」と説く元業界人がTV界の現状を描いた書■ 三菱銀行人質事件 犯人射殺までの42時間視聴率42.3%

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    五輪招致活動の顔はJOCや招致委だが頭脳と手足は電通

     英ガーディアン紙が報じたところによれば、東京五輪招致活動に際して、開催地決定の投票権を持つIOC(国際オリンピック委員会)委員に総額2億3000万円が流れていたという。同紙では広告代理店最大手「電通」が繰り返し登場する。しかし電通の知名度は、関わりの有無によって大きく分かれる。関係する人には「巨大な影響力を持つ会社」だが、直接関わりがなければ「何をやっているかよくわからない会社」に見える。 無機質な説明をすれば、「日本最大の広告代理店」だ。年間売上高は4.6兆円。業界2位の博報堂DYホールディングス(同1.1兆円)を引き離し、国内シェア25%を占める。 一般的にはテレビCMや新聞・雑誌広告の企画・制作や営業を行なうビジネスで知られ、テレビ局や新聞社、出版社などメディア界や、スポンサー企業にとっては欠かせない存在となっている。だが、「自社の宣伝」をしているわけではないので、視聴者や読者に電通の企業イメージは沸きにくい。 しかも社員4万7000人の巨大組織における最大の「花形部署」はいわゆる「広告」を扱う部署ではなく、「スポーツ局」といわれる。ジャーナリストの伊藤博敏氏が解説する。「約150人の局員はそれぞれ得意のスポーツ分野を持つ精鋭で、テレビ放映権を扱い、有名選手をサポートする。イベントやスター選手を招致してスポンサーを探し、グッズ販売も企画して収益化するなど、あらゆるスポーツをビジネスに変えてきた」 電通と国際スポーツイベントの関わりの嚆矢は、1977年の「サッカーの神様」ペレの引退試合だ。「サッカー未開の地だった日本に世界的ヒーローを招き、国立競技場は超満員となった」(同前) 史上初の民間運営方式で進められた1984年ロサンゼルス五輪では、日本でのエンブレムやマスコットキャラクターの使用許諾権などの独占契約を結んだ。以降、「電通に頼まなければ、五輪ビジネスは成功しない」という“常識”が、スポーツ界やテレビ局に浸透した。その後、2002年の日韓W杯でも招致や運営面で電通は力を発揮した。 世界的な景気減速の中でも国際スポーツビジネス市場は不況知らず。電通にとって東京五輪が過去最大の商機になることは間違いない。だからこそ招致への意気込みは強かった。 「リオデジャネイロに敗退した2009年以来、国際的な働きかけが拙いJOCや都庁の尻を叩いてロビー活動を推進してきたのが電通でした」(都庁関係者) 当然、都庁や招致委の「電通頼み」は強くなっていく。2016年五輪招致活動が佳境を迎えていた2009年3月には、東京都議会でこんなやり取りがあった。 招致活動のための基礎調査などが電通に特命随意契約で委託されたことが野党議員から「癒着」と批判されると、石原慎太郎・都知事(当時)は、「電通が持っている影響力は、他の広告会社では及ばない。選ばざるを得ない」と答えた。口調や状況こそ違うが、竹田恒和JOC会長の答弁と同じく“電通に丸投げするしかない”という率直な心情が分かる。 石原氏も認めた「電通の影響力」を端的に示す写真がある。それは、電通の社史(『電通100年史』)に掲載されたもので、撮影は2000年。当時の成田豊・社長と握手を交わす黒人紳士は、今回の疑惑の渦中にいるラミン・ディアク氏だ。ディアク氏はその1年前に国際陸連会長とIOC委員に就任していた。 この2000年から、電通は世界陸上をはじめとした国際陸連が主催する大会の国内テレビ放映権を獲得した。「電通の人脈力」を物語る写真といえる。『電通とFIFA』の著者・田崎健太氏はこう解説する。「電通は日本では最もIOCの理事や委員にパイプがある企業です。そのため人脈に不安があるJOCは電通に頼らざるを得ない現実がある。招致活動の顔はJOCや招致委であっても、頭脳と手足は電通なのです」関連記事■ 五輪の各種独占権を持つ電通 東京五輪特需で株価の上昇期待■ 五輪危機レスリング 米国や日本のスポンサーで存続可能性も■ 五輪招致失敗で最大のダメージ受けるのは安倍晋三首相との声■ 92年ぶり五輪復活のラグビー IOCへのロビー活動は一切なし■ 6000人参加 都庁五輪招致報告会は8000人にメールで参加誘う

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    電通と五輪マネー「裏金疑惑」の真相を読む

    目下、東京五輪招致の不正疑惑で最も注目を集めているのが、広告代理店最大手「電通」が果たした役割である。ネット上ではさまざまな憶測が飛び交うが、どこまでが真実でウソなのか、関係者も含めフランス検察当局の動きを注視する。巨大な利権にまみれた五輪マネー。にわかに浮上した「裏金疑惑」の真相を読む。

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    竹田JOC会長の五輪招致活動をめぐる矛盾した発言

    大塚耕平(参院議員、民進党政務調査会長代理) 6月1日は今国会の会期末。来週の今頃は7月10日が衆参ダブル選挙になるか否かが決まっているでしょう。ついでに、舛添東京都知事の辞職も決まっているかもしれません。その場合は、都知事選も加えてトリプル選挙です。通算10回目 フランスのクーベルタン男爵(1863年生、1937年没)が提唱したオリンピック。ゼウスの神殿のあったオリンポスで古代競技会が開催されていたことに由来して命名されました。 第1回は1896年アテネ大会(以下、「大会」は省略)。1900年パリ、1904年セントルイスまでは同時開催の万博の余興的存在。1908年ロンドン、1912年ストックホルムの頃から体制が整い始めたそうです。冬季大会の第1回は1924年シャモニー(フランス)。 1988年ソウル以降、オリンピック終了後、パラリンピックも開催。1994年リレハンメル以降、4で割り切れる年の夏季大会、中間年の冬季大会の交互開催が定着しました。 開催都市は北半球が大半。南半球での夏季大会は1956年メルボルン、2000年シドニー、2016年リオデジャネイロの3回。冬季大会は開催実績がありません。 南半球は開催可能な経済力を有する国が少ないこと、降雪量が少なく、ウィンタースポーツの設備が十分でないことなどが影響しています。 アジア開催は、夏季が1964年東京、1988年ソウル、2008年北京、2020年東京の4回。冬季は1972年札幌、1998年長野、2018年平昌、2022年北京の4回。北京は夏季冬季両方を開催する初めての都市になります。 中南米開催(夏季)は、1968年メキシコシティー、2016年リオデジャネイロの2回。南アフリカが候補に挙がったことはありますが、アフリカでは未開催。 この間、歴史の波に翻弄されています。第1次大戦の影響で1916年ベルリンが中止。1936年ベルリンでは、ナチスが国威発揚に利用。聖火リレーが始まったのもこの時です。 第2次大戦の影響で2度流会した後、1948年ロンドンで再開。敗戦国のドイツと日本は招待されませんでした。 1952年ヘルシンキにソ連が初参加。東西冷戦の影響から、米ソのメダル争いが過熱。中国と台湾、東西ドイツ、韓国と北朝鮮等の対立も競技を過熱させました。 1968年メキシコは黒人差別反対運動の場となり、1972年ミュンヘンではアラブゲリラによるイスラエル選手に対するテロ事件が発生。 1976年モントリオールでは、ニュージーランドのラグビーチームが南アフリカに遠征したことに反発し、アフリカ諸国22ヶ国がボイコット。 1980年モスクワでは、ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議して米国・西ドイツ・日本等の西側諸国がボイコット。1984年ロサンゼルスでは東欧諸国が報復ボイコット。 冷戦終結後の1996年アトランタでもオリンピック公園を標的としたテロが発生。2008年北京では貧富の格差を放置しての開催に反対するデモが頻発。 2014年ソチでは、ロシアの「ゲイ・プロパガンダ禁止法」に抗議して、米国・ドイツ・フランス等の欧米諸国首脳が開会式欠席。 大会規模の巨大化に伴い、開催国の財政負担も増大。1976年モントリオールでは大幅な赤字発生。以後、立候補都市が減少しました。 1984年ロサンゼルスの大会組織委員長ユベロス氏がオリンピックのショービジネス化を推進。スポンサーを「1業種1社」に絞り、スポンサー料を吊り上げ、黒字を達成。 国際オリンピック委員会(IOC)委員長にサマランチ氏が就任後、商業主義が加速。利権の温床となり、放映権の高騰、IOC委員へ賄賂提供等、問題が深刻化しました。 現在のIOCの収入構造は、47%が世界各国での放映権料、45%が「ワールドワイド・パートナーまたはTOP(The Olympic Programme)」と呼ばれるスポンサーからの協賛金です。 クーベルタン男爵の強い勧めによって、日本は1912年ストックホルムに初参加。1928年アムステルダムから女子選手も参加。1940年東京(夏季)、1940年札幌(冬季)招致に成功したものの、日中戦争激化の影響下、自ら開催権を返上。 戦後、1960年開催に立候補するも、わずか4票で落選。1964年東京(夏季)、1972年札幌(冬季)、1998年長野(冬季)招致に成功する一方、夏季は1988年名古屋、2008年大阪、2016年東京招致に失敗。2020年東京は、通算10回目の招致挑戦でした。コンサルタント料コンサルタント料 ところで、スクープ報道で知られる某月刊誌が2月に「東京五輪招致で電通買収疑惑」と報じました。 それから3ヶ月、5月11日に英紙「ガーディアン」も招致委員会(以下、招致委)が裏金(賄賂)を関係者に渡していたと報道。月刊誌も英紙も同じ英国人記者の記名記事です。 東京開催決定は2013年9月。その前後の7月と10月、招致委がシンガポールのブラックタイディングズ社(BT社)に約2億2300万円を送金。これが開催地決定の票買収の賄賂だったとの指摘です。 5月12日、フランス検察当局がこの事実を追認し、BT社は国際陸上競技連盟(IAAF)前会長ラミン・ディアク氏、パパマッサタ・ディアク氏親子に関係するとの声明を発表。 ディアク親子は五輪開催地選考に強い影響力を持ち、IOC委員を兼任していたラミン氏は「アフリカ票」のとりまとめ役。つまり、ラミン氏に働きかけるためにBT社に資金提供したという構図です。 フランス検察当局の声明を受け、BBC、CNN等の海外主要メディアが続々と疑惑を報道。シンガポール現地紙によると、BT社登録地は集合住宅内。BT社代表(イアン・タン・トン・ハン氏)の母親を名乗る女性が居住。BT社は2014年7月に廃業。資金洗浄(マネーロンダリング)目的のペーパーカンパニーだったと報じています。 英紙等によると、ハン氏は日本の電通と関係が深く、上記の資金授受に介在したのも大会組織委員会理事である電通元専務と報じられています。 5月13日、竹田恒和日本オリンピック委員会(JOC)会長(招致委理事長を兼任)が、本件に関して「資金はコンサルタント料」「賄賂等の不正はなかった」と釈明。 5月16日、国会に参考人招致された竹田氏は「正式な業務の対価」「票獲得に欠かせなかった」「BT社から売り込みがあった」「BT社は電通に紹介された」という趣旨の発言。要するに、事実関係を認めたということです。 一方、竹田氏は、BT社がディアク親子と関係が深いこと、ペーパーカンパニーであることは「知らなかった」と弁明。竹田氏の発言は信じ難いですが、招致委にBT社を紹介した電通はこの事実を知っていたと考えるのが普通です。 竹田氏は「支払いは公認会計士の監査・指導を受けた」「送金先について詳細は承知していない」「事務局が必要と判断した」「招致活動はフェアに行われたと確信する」と抗弁。 しかし、「詳細は承知していない」のならば、なぜ招致活動がフェアであったと「確信する」ことができるのか。論理矛盾した発言です。 2億2300万円のコンサルタント料でどのようなコンサルティングを受けたのか、説明と証拠提示が必要です。監査法人の関与は不正否定の根拠にはなりません。 さらに深刻な問題は、日本のマスコミがこの事件を詳細に報道しようとしないこと。その理由は「マスコミが電通に頭が上がらないから」と言われています。 今年1月、朝日・毎日・読売・日経の全国4紙はJOCと15億円の「オフィシャルパートナー契約」を締結。その仲介はもちろん電通。及び腰の背景が透けて見えます。 五輪エンブレム盗用問題、白紙撤回となった新国立競技場のザハ・ハディド氏案を巡っても電通が関与。開閉屋根式の競技場にこだわったのは、電通がコンサート会場への転用を計画していたからとの情報もあります。 菅官房長官は記者会見で「フランス検察当局の開示した事実を政府として把握に努める」と述べるのみ。本来であれば、第三者か政府による独自調査が必要ですが、ヤル気なし。 五輪規則では招致を巡る不正行為を禁止していますので、賄賂が事実であれば、開催辞退という展開も否定できません。 英国「デイリー・ミラー紙」は五輪招致で東京に敗れたトルコ(イスタンブール)オリンピック委員会のアクソイ副事務総長のコメントを報道。 曰く「不正が認定された場合、東京の開催権を剥奪すべき。敗退したイスタンブールとマドリードの代替開催は間に合わないので、ロンドンで開催すべき」と言及しています。 1970年開催が決まっていた米国デンバーでは、地元住民の反対運動から1972年10月の住民投票で開催返上が決定。1973年2月、インスブルックに開催地が変更されました。1940年東京も日中戦争激化の影響で開催返上。「幻の東京オリンピック」と言われました。ゼウス・ホルキオスゼウス・ホルキオス それにしても、なぜ五輪を開催したいのでしょうか。経済効果が目的とも言われますが、本当に経済効果はあるのでしょうか。 インフラ整備の遅れている新興国であれば理解できます。高速道路や新幹線を整備した1964年東京はその典型例。しかし、先進国での経済効果は期待薄。インフラ整備は進んでおり、新興国ほど投資は伸びず、経済規模も大きいのでプラス効果もわずか。 東京都の試算では、2020年東京の経済的な直接効果は1兆2200億円、波及効果は2兆9600億円。直接効果の対GDP(国内総生産<約500兆円>)比はわずか0.24%。ほとんどゼロと言っても過言ではありません。 逆に大会後の「オリンピック不況」が懸念されます。公共投資、それに付随した民間投資、民間消費が落ち込むためです。観光客増も大会中のわずかな期間。 2008年北京の場合、前年に14%を超えた経済成長率が開催年と翌年は9%台に鈍化。1988年ソウル以降の夏季6大会で、開催年より翌年が上昇したのは1例だけです。 一方、莫大な費用が重荷になります。1976年モントリオールは大幅な赤字を出し、2006年までの30年間、特別税を徴収して債務を償還しました。 大量失業と債務危機に直面していた中での1992年バルセロナでは、オリンピックは「飢えの競技会」だと酷評されました。 2004年アテネは施設建設費等を国債で賄ったことが、2010年のギリシャ危機、財政破綻につながりました。ユーロを導入したことで、簡単に借金できたことも一因です。 こうした懸念に対し、東京都の招致決定前の説明では「既存施設を改装して活用」「運営費はチケット収入やIOC予算等で賄い、税金は使わない」としていましたが、決定後の費用見積もりは急膨張。 意外にも、五輪開催の経済効果に関する専門家の定説は「招致決定都市より、最終候補都市(次点都市)の方が良い経済効果が得られる」ということです。 五輪開催の経済効果を研究テーマとしているビリングズ教授(ノースカロライナ大学)、ローズ教授(カリフォルニア大学)、マセソン教授(ホーリークロス大学)、ジンバリスト教授(スミス大学)等の分析によって、いくつかの特徴が明らかになっています。 共通するのは、最終選考まで残った都市は既に勝者との結論。最終選考に残るための先行公共投資等が奏効する一方、実際に開催するための費用負担を回避できるためです。 1950年から2006年までの五輪開催地となった国々を分析した結果、選考過程の対策として行った貿易や為替取引の自由化等の効果によって貿易量が30%増加したそうです。 五輪は非常に費用がかかるイベントであり、開催都市が費用を埋め合わせるだけの経済効果は得られないとの評価で一致。 将来の維持管理を要する施設建設費用が嵩み、開催が近づくと例外なく追加費用が発生。また、9.11後、警備費用が膨張。1984年ロサンゼルスのように黒字になる五輪開催は難しいとしています。 さらに、五輪招致に成功する都市とは、特別な利益を追求する不透明な利害関係者の結束の強い都市であるとの警鐘を鳴らしています。 招致を勝ち取るのは、建設会社、広告代理店、競技団体等、多くの利害関係者が招致決定に向けて努力する都市。今回の賄賂騒動を鑑みると、もっともな指摘です。 2020年東京が日本の財政に与える影響も注視が必要です。東京圏以外でも、観光客を当て込んだ諸事業が活発化し、各地でインフラ整備等が加速するでしょう。 1964年東京の際も、翌年の「昭和40年不況」対策で戦後初の国債発行に至りました。たしかにインフラ整備は進みましたが、日本の財政悪化の端緒だという指摘もあります。 オリンポスの主、ゼウスは宇宙や天候を支配する天空神。強力なケラウノス(雷霆<らいてい>)を武器とし、ゼウスがケラウノスを使うと世界を一撃で破壊します。 オリンポスで4年に1度開催される古代競技会はゼウスを讃える大祭。開催期間中、戦士は戦争を止め、競技会に参加するためにオリンポスに向かい、「不正を決して行わない」という宣誓「ゼウス・ホルキオス(誓いのゼウス)」を捧げ、競技に参加したそうです。 ゼウスは弱者の守護神、正義と慈悲の神、悪者を罰する神。不正を行った者には容赦のない荒ぶる神。経済効果試算や招致活動に不正がなかったことを祈ります。

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    パナマ文書で暴かれた件数は世界一! 「金権」中国の深すぎる闇

    遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士) パナマ文書が中国政治の中枢、中南海に衝撃を与えている。なぜならその中に習近平の親戚を始め、党内序列ナンバー5の劉雲山やナンバー7の張高麗など、チャイナ・セブン(習近平政権における中共中央政治局常務委員会委員7名)が3名も含まれているからだ(説明が必要なとき以外は敬称略)。また、かつての指導層の血縁者の名前もある。件数は中国が世界一だという。 4月の初期では、中国以外の国でリストアップされた指導者の名前の一部を公開したりなどしたが、それも削除され、五月に入ると中国大陸のネット空間で「パナマ文書(巴拿馬文書)」と入力すると、なんと、ヒット数は「ゼロ!」という徹底ぶりになってしまった。完璧封鎖なのである。 それはそうだろう。5月10日にはパナマ文書名簿の第二弾が発表されるとあって、中国政府は必死だ。万一にもチャイナ・セブンで腐敗取締りに辣腕を振るっている党内序列ナンバー6の王岐山(中共中央紀律検査委員会書記)の名前でもあったらお終いだからだ。 そのようなことにでもなったら、習近平政権の看板である反腐敗運動も挫折しかねない。ひょっとすれば、一党支配体制を揺るがす事態に発展する可能性だってある。 だから、これは西側諸国の陰謀だと言いながらも、完全封鎖なのだ。第一弾公表で名前が挙がった中国の新旧指導者たち それでは、いったいどういう人たちの名前が挙がっているのかをみてみよう。1.習近平(国家主席、チャイナ・セブン党内序列ナンバー1):習近平の姉の夫、鄧家貴が、オフショア会社2社の董事長で株主。2.劉雲山(チャイナ・セブン党内序列ナンバー5、イデオロギー担当):息子・劉楽飛の妻・賈麗青(エール大学MBA)が、オフショア会社1社の董事長で株主。3.張高麗(チャイナ・セブン党内序列ナンバー7、国務院第一副総理):娘婿の李聖溌がオフショア会社3社の董事長および株主。4.李鵬(元国務院総理、1987年~1998年):娘の李小琳がオフショア会社1社の董事長および株主。5.曽慶紅(元国家副主席、2002年~2007年):実の弟・曽慶淮がオフショア会社1社の董事長。6.賈慶林(元チャイナ・ナイン、党内序列ナンバー4、2002年~2012年):孫娘の李紫丹がオフショア会社1社を所有。(チャイナ・ナインは胡錦濤政権における中共中央政治局常務委員会委員9名を指す。)7.薄熙来(元中共中央政治局委員、2007年~2012年):妻の谷開来がフランスの弁護士(Patrick Henri Devillers)とともにオフショア会社を利用してフランスに別荘を買い、2000年からは代理人を通してオフショア会社を開設していた。8.胡耀邦(元中共中央総書記、1982年~1987年):三男の胡徳華がオフショア会社1社の董事長で株主。9.毛沢東(建国の父!):孫の娘婿・陳東升がオフショア会社1社の董事長で株主。 以上だ。本稿では、現役のチャイナ・セブンに関してのみ分析する。習近平の姉と「犠牲になった」その夫習近平の姉と「犠牲になった」その夫 パナマ文書に書いてある習近平の親族とは、習近平の姉・齋橋橋の夫、鄧家貴のことである(習近平の姉なのに苗字が違うのは、父親の習仲勲が文化大革命時に投獄されたため、娘が虐められるといけないので、母親の姓を名乗らせたためである)。 しかし齋橋橋が雲南の商人だった鄧家貴と知り合ったのは1990年ごろで、結婚したのは1996年。鄧家貴は1980年代に香港で金儲けをして、すでにリッチになっていた。習近平とは全く無関係な場所と時間で富裕になっていたのである。このころの習近平はまだ福建省の福州市でウロウロしていて、まったくの無名だ。 齋橋橋が持っている不動産などの財産は、すべて夫の鄧家貴からプレゼントされたものだ。それも1991年とか90年代初期のことである。鄧家貴は90年に知り合った時から齋橋橋が気に入り、何度もプロポーズしているが、齋橋橋はどうしても振り向かない。そこで彼女の心をつかもうと、貢いだのだと言われている。こうしてようやく96年に結婚するが、それでも齋橋橋が商売を始めるのは2003年で、習近平はまだ浙江省の書記に着任したばかりだ。 齋橋橋は2002年までは父親の習仲勲の面倒を見ており、2002年5月に他界したので、商売を始めたという形である。 習近平が2007年にチャイナ・ナインに選ばれると、習近平は突如、姉に「商売から手を引いてくれ」と頼む。この頃までに姉夫婦の商売は大きく広がり、二人で10社以上の会社を持っていた。その中の一つだけを残して、齋橋橋は商売から手を引く。 このとき習近平はチャイナ・ナインの党内序列ナンバー6(国家副主席)で、李克強はナンバー7(国務院第一副総理)。5年後の2012年の第18回党大会では、習近平が中共中央総書記に(2013年には国家主席に)上り詰めるであろうことは既に予測されていたからだ。 ただ、文革時代、父親の習仲勲が投獄されていた16年間、姉が献身的に一家の面倒を見て苦労していたのを知っているので、習近平は、少しくらいは姉に楽をさせてやろうと思っていたという。だから全ての会社を手放してくれとは言わずに、1社だけ残して、と譲歩したと言われている。 今般、パナマ文書で発見された鄧家貴のオフショア会社の一つは、2012年11月に習近平が中共中央総書記に選ばれたときから、休眠状態にあるという。それも実は鄧家貴の才覚により6年間もかけて成長させてきた企業で、手を引かなければ莫大な利益を手にすることができたのに、習近平が総書記などになったために、閉鎖させてしまった。そのため鄧家貴は莫大な損失を被ることになり、「習近平の犠牲になってしまった」と、中国大陸以外の中文メディアは書いている。「こんな人のお姉さんと結婚したばかりに、商売を縮小するしかなくなり、財産を失ってしまった」と、周りにぼやいているとのことだ。 こうなると、少なくとも習近平に関しては、この件に対して果たして責任があるのか否か、判定が難しい。党内ナンバー5の息子の複雑な利権関係党内ナンバー5の息子の複雑な利権関係 劉雲山の息子・劉楽飛は逃れられないと見ていいだろう。複雑な利権と腐敗関係の中、昨年すでに辞職に追い込まれている。中南海に走る激震の最も大きな震源地が見える。 1973年生まれの劉楽飛は、95年に中国人民大学で経済学を学んだあと、中国社会科学院の研究生院(大学院)で学び、工商管理で修士学位を取得。2004年から中国人寿保険投資管理部総経理を務め、2006年から中国人寿主席投資執行官(CEO)に就任している。 ところで2012年の薄熙来失脚にともなって重慶市書記に任命された孫政才は、吉林省の書記であった時代(2009年~2012年)に、吉林省の大きなプロジェクトを中国人寿に発注し、劉楽飛に儲けさせている。そのお礼だろう、当時まだ中宣部(中共中央宣伝部)の部長をしていた劉雲山(劉楽飛の父親)は吉林省を訪問し、孫政才に会っている。この時から、劉雲山と孫政才の利権はつながっている。 中国人寿をスタートとして金権世界でのし上がってきた劉楽飛は、その後「中信産業投資基金管理公司(中信資本)」傘下の投資会社「中心証券」などを掌握してアリババ集団の株主の一人となり、ボロ儲けをした。中信資本の運用資産90億元(13億2000万米ドル)。 2014年9月20日(ニューヨーク時間19日)、アメリカのニューヨーク証券取引所に上場したアリババ集団には、劉楽飛以外に江沢民の孫で薄熙来と関係のあった江志成(博祐資本)や、元国務院副総理・曽培炎の息子・曽之傑(中信資本)、胡錦濤政権時代のチャイナ・ナインの一人で中央紀律検査委員会の書記だった賀国強の息子・賀錦雷(国開金融)、守旧派で薄一波と仲良かった元国務院副総理だった陳雲の息子・陳元、そして、あの温家宝(前国務院総理)の息子・温雲松(新天域資本)などが株主として参入していると、7月21日付の「ニューヨークタイムズ」が報道している(詳細は『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』)。 その間、劉楽飛は元最高検察院検察長だった賈春旺の娘・賈麗青と結婚している。これは不正摘発を逃れるための政略結婚だと言われたものだ。習近平政権の反腐敗運動の網に引っ掛かる習近平政権の反腐敗運動の網に引っ掛かる 習近平政権が誕生してから、反腐敗運動が本格化し始めた。 実は胡錦濤政権の時から反腐敗運動は行っていたのだが、何と言っても集団指導体制の中で多数決議決をしようとするときに、チャイナ・ナインの構成メンバーが良くない。ほとんどが江沢民派によって占められ、胡錦濤が出す提案はほぼ毎回否決されて、身動きが取れなくなっていた。 習近平政権になってからは、チャイナ・セブンのほとんどが習近平の息がかかっている上、チャイナ・セブン入りする際に、反腐敗運動に賛同するか否かの誓約を要求されている。その上で第18回党大会の初日である2012年11月8日に胡錦濤が最後のスピーチで「腐敗問題を解決しなければ党が滅び、国が滅ぶ」と叫び、中共中央総書記に選ばれた11月15日、就任の挨拶で習近平も胡錦濤とまったく同じ言葉を使って反腐敗運動を誓った。 反腐敗は胡錦濤政権から習近平政権に移るときの最も大きな約束事であった。 二人とも、腐敗問題が解決しなければ、これで共産党による一党支配体制は崩壊することを知っていたのだ。 そこで習近平政権が誕生するや否や凄まじい反腐敗運動が始まった。その業務は「中共中央紀律検査委員会(中紀委)」が担う決まりがあるので、チャイナ・セブンの中の王岐山が中紀委・書記として大鉈(おおなた)を振い始めた。 中紀委は定期的に中国の全ての組織や機関を巡回し、不正がないかを調べている。 2015年9月、その一環として金融界にメスが入った。特に株の乱高下があまりに不自然で激しいので、捜査当局は背後に空売りをしている犯人がいると見定めていた。 フォーカスが絞られたのが、中国証券最大手である「中信証券」だ。 程博明・総経理や中国証券監督管理委員会の張育軍・主席補佐などが取り調べを受け、中信証券の副理事長・劉楽飛にフォーカスが絞られた。 その父親で、チャイナ・セブンの党内序列ナンバー5で中共中央精神文明建設指導委員会主任としてイデオロギー界に君臨する劉雲山は、チャイナ・ナイン時代にやはりイデオロギー担当として君臨していた李長春(党内序列ナンバー5)の腹心で、李長春は江沢民派。 習近平自身、江沢民の後ろ盾があってこそ、今日の地位を獲得できた経緯がある。 しかし反腐敗運動は、腐敗のトップにいる江沢民の安全を脅かす。そこで捜査当局は、株式市場の乱高下の裏には、元をたどればこれら江沢民から派生する派閥の結託による株式市場の弱点への攻撃に原因があると見ていた。具体的にはインサイダー取引や情報漏洩である。中信証券は、表向きは株式市場の危機に対処する救済機構を標榜しながら、裏では空売りをして株式市場を乱していたのだ。 結果、劉楽飛はこれらを操ったとして辞職へと追い込まれている。劉雲山系列は、パナマ文書以前からクロなのである。それでもチャイナ・セブンの息子が逮捕されるということになれば、そうでなくともぐらついている一党支配体制に大きな打撃を与えるとして、そっと静かにしていたというのに、パナマ文書という外からの強打を受けては、抵抗のしようがなく、情報封鎖の度合いも尋常ではないのである。党内ナンバー7から見えた恐るべき金権政治党内ナンバー7から見えた恐るべき金権政治 パナマ文書には張高麗の娘婿・李聖溌がオフショア会社3社を所有しているとある。張高麗の関与がどれくらいあるのかを考察してみよう。中国の恐るべき金権政治の世界が見えてくる。 1946年、福建省晋江(しんこう)市で生まれた張高麗は、1970年から1984年まで石油部「広東茂名(もめい)石油公司」におり、言うならば「石油閥」の一人である。広東省茂名市党委員会の副書記や広東省副省長などを経て、1997年に広東省深圳市(中国共産党委員会)書記になるなど、ひたすら広東で31年間にわたって仕事をしてきた地味な前半生だった。 しかしこれが出世のきっかけを作ったのだから、人の運命はわからないものである。 2000年2月、国家主席だった江沢民が広東省茂名市に来て、ここで「三つの代表」論を初めて公開した。 「三つの代表」論は「中国共産党は無産階級(プロレタリアート)の先鋒隊を代表する」という伝統的な中国共産党理論を真っ向から否定するものであり、「有産階級(資本家階級)を入党させる」という「金持ちと権威」を結び付けるものとして、北京では保守派長老や伝統を守ろうとする党員たちから激しい反対を受けていた。そこで江沢民はこの「三つの代表」の最初の意思表明を、北京から遠い改革開放発祥の地、広東省に来て、しかも本丸の「深圳市」を避けて、ちょっと離れた「茂名市」で行なおうとしたのである。 この選択によって張高麗の運命が決まる。このとき広東省の副書記をしていたのは張高麗。深圳市の書記でもあり、特に茂名市には1970年から1985年まで15年間もいた。したがって江沢民の「三つの代表」講話の主たるお膳立てと接待はすべて張高麗が担った。 張高麗はすっかり江沢民に気に入られ、やがて山東省書記、天津市書記へと、出世階段を上っていくが、そこには後半で述べる李嘉誠との関係が絡んでいる。張高麗と習近平の関係も「深圳市」 習近平との関係において決定的だったのは「深圳市」だ。 習近平の両親は、習仲勲の政界引退後の80年代末、風光明媚な広東省の珠海市に住もうと決めていた。ところが珠海市の書記は、そこは一等地だとして、当時はまだ田舎だった深圳に習近平の両親を追いやった(詳細は『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』)。 習近平はその頃まだ無名で、福建省寧徳市の副書記などをしており、どこにでもいる普通の地方幹部に過ぎなかった。 97年から深圳市の党委書記となった張高麗は、深圳迎賓館に習仲勲夫妻が住んでいることを知ると、早速自宅を訪問し、「なにかご不便なことがあったら、なんでも申し付けていただきたい」と挨拶に行っている。春節や中秋節など、季節の折々にも必ず習仲勲夫妻のもとを訪れ、何くれとなく世話をした。 習近平が出世するかどうか分からない時期に、すでに政界を引退している習仲勲に敬意を表して足しげく訪れた張高麗を、習近平は非常に信頼し感謝したため、張高麗の現在の地位があるという側面も否めない。 なんとも「美談」に見える。ところが―張高麗には別の顔があった。ナンバー7と娘婿の「金権関係」張高麗と娘婿・李聖溌との「金権関係」 張高麗は妻との間に子供に恵まれず、父方のいとこが70年代にフィリピンで他界したので、その娘・張暁燕(ちょう・ぎょうえん)を引き取って養女として育てた。1989年になってようやく男の子が生まれはしたが、張高麗は養女の張暁燕を可愛がっている。やがて彼女が年頃になった1997年、張高麗は張暁燕を香港商人で同郷(隣り村)の李賢義の息子・李聖溌(り・せいはつ)と結婚させた。 1952年生まれの李賢義は、貧乏から逃れるために香港に渡り、ゼロからたたき上げてそれなりの成功を収めていた。1989年には、深圳に「信義集団有限公司」を設立している。自動車の窓ガラスを中心として成長し、香港の大陸への返還が実現しそうだという「政治の風」を読み取り、深圳に渡る。香港商人として大陸に進出したのだ。 そして香港の大陸返還が実現した1997年、張高麗は深圳市の書記に赴任してきた。 このときには、李賢義の工場は37万平方メートルの広さ、累計資金10億元、2000人の社員を抱える大企業に発展していた。車のガラスだけでなく、ビルのガラス窓のガラスや防弾ガラスなども生産し、「ガラス大王」と呼ばれるようになっていた。 深圳市の書記と深圳市の大企業のオーナーが接触を持つのに時間はかからなかった。同郷のよしみが加わり、結婚は一瞬で決まった。 金と権力。まさに金権関係による婚姻だ。中国では「官商婚姻」と言っている。 香港の中国返還に伴う香港商人への優遇策という大きな流れの商機を、二人は見逃さなかった。ここから江沢民を巻き込んだ闇の世界が広がり始める。華人世界最大の資産家・李嘉誠が仲介 小さいころに福建や広東から香港へと逃れた華人華僑は多く、中でも有名なのが李嘉誠(り・かしん)だ。彼は1928年に広東省潮州市に生まれたが、1940年、香港へと逃れた。香港フラワーと呼ばれた造花で大成功し、その後、香港最大の企業グループ長江実業を創設している。華人としては世界最大の資産家だったが、最近ではアリババの馬雲(ジャック・マー)や大連万達(ワンダー)集団の王健林などが頭角を現し、やや陰りが見えてきた。 しかし当時は絶大な財力を誇っていた。香港で成功した大陸生まれの商人の一人として、張高麗の娘婿の父親・李賢義は、李嘉誠とも仲がいい。そこで李嘉誠を張高麗に引き合わせ、張高麗はすぐさま李嘉誠を江沢民に引き合わせた。江沢民が喜んだこと、喜んだこと! 李嘉誠は、江沢民の息子・江綿恒の「中国網絡(ネットワーク)通信集団公司」に500億元を投資した。すると江沢民はそのお礼に、北京の王府井(ワンフージン)周辺にある一等地を李嘉誠に提供し、「東方広場」なる巨大な商店の地を提供している。お蔭で昔の情緒豊かな「汚い」王府井は姿を消してしまった。その陰には張高麗がいたのである。一党支配体制を信じていないという「烙印」一党支配体制を信じていないという「烙印」 江沢民と李嘉誠を結びつけたキューピットが娘婿・李聖溌の父親・李賢義だとすれば、パナマ文書に名前が載るまでに李聖溌を成長させたのは張高麗であるということができよう。 張高麗は江沢民の覚えめでたく、2001年に山東省の副書記に、2002年11月には書記に昇進。2007年に天津市の書記に抜擢されている。 それに伴って、娘婿の李聖溌は香港に17社もの上場企業を持つに至り、不動産業に手を付け始めたので、父子が得た莫大な利益は尋常ではなく、フォーブスの中国富豪ランキングに名前が載ったほどである。 李聖溌は、張高麗が李嘉誠と江沢民を結びつけたことから、李嘉誠から投資を受けるようになり、2001年に「匯科(かいか)系統」というIT関係の会社を共同で深圳に設立した(李嘉誠側が70%の株)。 しかし2008年になると、「匯科系統」の株の70%を「信義科技集団」の董事長になっていた李聖溌が持つようになり、同時に李聖溌は「匯科系統」の董事長にもなった。さらに「民潤」というスーパーマーケットのチェーン店を運営するようになる。 「匯科系統」にしても「信義科技集団」にしてもコンピュータのソフトウェア関係を主たる製品として生産するだけでなく販売、サービス分野においてもマーケットをつかんでいたため、李聖溌は総合的なハイテク科学産業で活躍する存在となっていく。 張高麗と江沢民が背後にいれば、怖いものなし。張高麗が天津市書記として力を発揮するにつれ、信義科技集団の顧客は個人から「中共公安系列」へとシフトしていき、「公安情報化と監視カメラ」「人相識別技術」「バックグラウンド・チェックシステム(学歴の真偽、犯罪歴の有無、過去の就職先における問題発生の有無などをチェックするために入力されているソフト。身分証番号を入れると一瞬で出てくるようになっている)」「ネット上の作戦シミュレーション」「財富(財産)分析システム(腐敗問題における犯罪摘発のため)」など、数多くのソフト開発を行うようになった。 これらのソフトは、「公安、武装警察、軍隊、金融、石油、飛行場、監獄、電力、通信、学校のキャンパス」など、非常に広範な領域をカバーするに至る。 残念ながら、自らの会社が開発した「財富分析システム」は、自分自身の情報を入力しない「特殊な」システムになっていたのだろうか。 パナマ文書によって、タックスヘイブンに少なくとも3社ものオフショア会社を持っていることが明らかになった。チャイナ・セブンのうち、3人もの最高指導層の名前がひっかかり、そのうち劉雲山と張高麗は、詳細に見れば見るほど「アウト!」だという実態が浮かび上がってくる。 反腐敗を叫び党紀粛正をアピールすることによって人民の求心力を何とかつなぎとめようとしてきた習近平政権だが、これまで説明してきた部分だけでも、いかに一党支配体制の危機が迫っているかが見えてくる。 そこに広がっているのは、金権政治の巨大な闇だ。 チャイナ・セブン関係者が資産を海外に移している事実は、統治者自身が一党支配体制を信じていない証拠だ。そう長くは続くまいと思っているからこそ、いざとなった時に自分の資産を守ることができるように海外に移してしまう。それが人民に知られることを習近平政権は最も恐れているのである。 国家資本主義と化してしまった「特色ある社会主義国家」中国は、パナマ文書の激震に堪えられるのか。これからが見ものだ。

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    「パナマ文書」が晒した強欲セレブを許すな

    世界を震撼させた「パナマ文書」が、ついに日本の富裕層にも飛び火した。中米パナマの法律事務所から流出した内部告発は、世界各国の首脳や富裕層らを巻き込み、波紋は今も広がるばかりだ。特権を利用して課税を逃れ、蓄財に励む強欲なセレブどもよ、庶民の怒りを知れ!

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    アメリカの「陰謀」なのか 世界中を疑心暗鬼に陥れるパナマ文書

    仲野博文(ジャーナリスト) 今から1年以上前、ドイツのミュンヘンにある南ドイツ新聞に匿名の内部告発者が接触。この人物はパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の内部資料を暗号化したデータファイルで南ドイツ新聞に送り、「この法律事務所が行ってきた犯罪行為を世に知らしめてほしい」と、ファイルの公表を要求。そこから数か月の間に、追加資料がデータファイルで送られ、南ドイツ新聞が受け取ったファイルの合計は2.6テラバイトに達した。このファイルはのちにパナマ文書という名で世界を震撼させることになるが、「アメリカが主導した」という陰謀論も囁かれている。全体像がまだ見えない中で、パナマ文書公開の意図を考えてみる。パナマ市の法律事務所「モサック・フォンセカ」の建物の外で警備する警官=4月12日  日本時間の10日午前3時に一部情報が公開されたパナマ文書。6日にはのちにパナマ文書と呼ばれる2.6テラバイトのデータを南ドイツ新聞に送った匿名の情報提供者が、「革命はデジタル化される」と題した声明を発表し、南ドイツ新聞や国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)がウェブに声明を掲載した。情報提供者は「John Doe」という身元不明男性に使われる俗称を使い、収入格差を是正したいという思いが情報提供のきっかけになったことを明かしている。これまでの情報提供者が、結果的には逮捕・拘留されてきた事例を挙げ、免責を確約してくれた場合には各国政府に協力する姿勢も打ち出している。  この匿名の情報提供者は声明の中で、これまでに政府や諜報機関に一度も勤務したことはないと断言。特定の国の利益のために情報をリークしたのではないと主張している。また、映画「戦場のメリークリスマス」のロケ地としても知られ、近年はタックスヘイブンとしても知られるクック諸島(もともとはニュージーランドの属領)に対して何の対応もしてこなかったニュージーランドのジョン・キー首相が名指しで批判されている。キー首相と共に名指しで批判されたもう一人の人物は、先月26日に米財務省傘下の金融犯罪取締ネットワークの局長を辞任すると発表したジェニファー・カルベリー氏で、彼女はパナマ文書でも名前が頻繁に出てくるHSBC(香港上海銀行)に重役待遇で迎えられると一部で報じられている。金融犯罪の取り締まりを指揮していた人物が、パナマ文書でその存在が大きく取りざたされた金融機関に転職することへの問題提起も声明では見られた。なぜこの二人が名指しで批判されたのかは不明だ。 パナマ文書の内容の一部は4月3日に公表され、世界各国の現職のリーダーがオフショア取引を行っていた実態が明らかになり、アイスランドではグンロイグソン首相が辞任する騒動にまで発展した。また、ロシアのプーチン大統領が総額2000億円以上の隠し資産を保有し、10代の頃からの友人でチェロ奏者のセルゲイ・ラドゥーギン氏が所有する複数のオフショア法人を中心に送金が行われたとする記録も発表されている。パナマ文書のリークはアメリカが裏で糸を引いている?  プーチン氏の他にも、シリアのバジャール・アサド大統領の2人のいとこや、キャメロン英首相の父親(2010年に他界)、米軍侵攻後に樹立されたイラク暫定政権で首相を務めたアラウィ氏、ウクライナのポロシェンコ大統領の名前などが判明している。「クリーンな政治」をスローガンに、昨年アルゼンチン大統領に就任したマウリシオ・マクリ氏も、モサック・フォンセカ経由でバハマにオフショア企業を設立し、取締役に就任していたことが判明。その時期、マクリ氏はブエノスアイレス市長を務めていたが、個人の収支報告にバハマに関する記載を行っていなかった。おもちゃのお札を銀行の前でばらまいて抗議する人々=4月6日、ウィーン  4月3日の発表ではアメリカ人の名前がほとんど出てこなかったため、「パナマ文書のリークはアメリカが裏で糸を引いている」という陰謀論をめぐって、ネット上では現在も議論が続いている。陰謀論の存在が注目されたのは、4月5日にウィキリークスが公式ツイッターで「パナマ文書によるプーチンへの攻撃は、ロシアと旧ソ連諸国を標的にしているOCCRP(組織犯罪・腐敗報道プロジェクト)が考え出したもので、この団体はUSAID(米国際開発局)とジョージ・ソロスに資金援助を受けている」とツイートしたことで、アメリカ政府による何らかの関与が囁かれるようになったのだ。 ICIJとOCCRPはパートナー関係にあり、OCCRPのウェブサイトではスポンサーとしてUSAIDとソロス氏が運営するオープン・ソサエティ財団のバナーも確認できるが、これらの団体がICIJにも資金提供を行っているのかは不明だ。しかし、ICIJは1989年に設立された調査報道を行う非営利団体「CPI(センター・フォー・パブリック・インテグリティ)」のプロジェクトの1つであり、CPI本体にはソロス氏の財団から巨額の資金が提供されている。オープン・ソサエティ財団は1993年の設立時から2014年までの間に、約16億ドル(約1700億円)をロシアや東欧諸国における民主化の促進に使っている。USAIDやオープン・ソサエティ財団の存在もあり、「ロシアが標的にされている」という陰謀論が湧き上がり、ロシアの一部メディアもこの陰謀論を取り上げて、プーチンを擁護する姿勢を見せている。  モサック・フォンセカ経由で海外のオフショア法人を利用するアメリカ人やアメリカ企業が少ないのには理由がある。デラウェア州やネバダ州など、アメリカ国内にタックスヘイブンを提供する州があるため、わざわざ海外にオフショア法人を設立する必要がないのだ。デラウェア州は人口90万人ほどの小さな州だが、2014年の時点で州内に設立された法人の数は110万を超える。英ガーディアン紙は先月25日、デラウェア州ウィルミントンにあるコーポレーション・トラスト・センターについて報じており、それほど大きくない2階建ての建物に28万5000社以上が登記している実態が判明した。この建物にはアップルやアメリカン航空といった大企業も法人登記を行っており、米大統領選で民主・共和それぞれの党からの指名が確実なヒラリー・クリントン氏とドナルド・トランプ氏も法人を設立していたことが明らかになっている。大統領選で格差拡大が争点の米国にとって大きな爆弾  デラウェア州では数日もあれば法人設立が可能で、役員や株主の権利は州法によって保護される。そのため、デラウェア州での法人格取得は現在も非常に人気があり、毎年10億ドル以上が州政府に流れ込む。法人設立で財源を確保しているため、デラウェア州では消費税が存在しない。しかし、税金を「取り損なった」他の州からは絶えず不満が噴出しているのも事実だ。ニューヨークタイムズ紙は2012年、デラウェア以外の州で過去10年の間に徴収できなかった税金が総額で1000億円近くに達していたと報じている。  パナマ文書で公開されていない情報がまだ多く存在するため、ネット上で議論されている陰謀論の存在について断言するのには無理がある。しかし、これまでにない規模でタックスヘイブンを巡る状況が世界で大きなニュースとなったことで、アメリカを含む各国が租税回避への対応に本腰を入れざるを得なくなったのも事実だろう。むしろ、パナマ文書によってアメリカも国内外のタックスヘイブンとどう向き合うのかを示さなければならない流れになったことを考えれば、パナマ文書は格差拡大が大統領選挙でも大きな争点となっているアメリカに大きな爆弾を落としたようにも思える。 世界中のタックスヘイブンが実際にどのくらいの規模なのか、はっきりとした数字は出ていない。秘匿性なども存在するため、細かいデータ収集や分析を行うのが非常に困難なためだ。カリフォルニア大学バークレー校のガブリエル・ザックマン准教授(経済学)は、昨年上梓した『国家の隠された資産』の中で、世界中のタックスヘイブンで扱われている資産の総額は約7兆6000億ドルに達すると指摘。この数字が正しければ、世界に存在する純資産の約8パーセントに達することになる。 フランスの経済学者トマ・ピケティは著書『21世紀の資本』で、格差社会を生み出す一因がタックスヘイブンにあるとして、金融市場の透明化を訴えている。ピケティの理論に対して現実的ではないと批判する声も存在するが、まるで歴史をプレイバックするかのような昨今の格差拡大への対応策として、「目に見えないカネ」の可視化とその運用はもっと議論されるべきではないだろうか。

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    庶民よ、声を上げよ! タックスヘイブンで私腹を肥す強欲なセレブども

    荻原博子(経済ジャーナリスト) 税金を払わなくてもよくするために、タックスヘイブン(租税回避地)に世界の24万の企業が法人を設立してきたことを示す「パナマ文書」が、経済界に激震を与えています。 タックスヘイブン(租税回避地)に関するパナマ文書  これは、パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した、利用者の企業や個人の情報が書かれた密文書。「パナマ文書」と呼ばれ、ここにはロシアのプーチン大統領の友人やイギリス、パキスタンの首相、中国の習近平の親戚やアイスランドの首相本人の名前も挙がっていたことで、世界中に衝撃が走りました。 日本でも、財界の要人をはじめとして約400の個人や企業が、このリストに載っているといわれ、ケイマン諸島と並ぶタックスヘイブンのメッカであるカリブの英領バージン諸島には関連会社を持つ日本企業などにも疑いの目が向けられています。 実態については、今後の解明が急がれるところですが、ただ、世界の金融資産半分以上がこうしたタックスヘイブンの国に流れていると言われていて、これは見逃せない大問題です。 タックスヘイブンといえば、代表的なのがジャマイカから北西約30㎞に位置するケイマン諸島。人口6万人に満たない日本の佐渡島の3分の1程度の面積のこの島々に、なんと6万社以上の法人があります。これだけでも、いかに幽霊法人が多いかがわかりますが、この小さな島に、日本からだけで55兆円とも63兆円とも言われるお金が流れているといわれています。 世界ぐるみの税金逃れの地で、あまりにもスケールが大きすぎてなんだか庶民には関係ない雲の上の話のような気がしますが、実は、そうではありません。実は、このタックスヘイブンが、私たちの暮らしにも脅威をもたらすのです。富の再配分を根底から崩すタックスヘイブン 日本国憲法の30条では、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ」という納税の義務が定められています。なぜ、憲法で納税の義務を定めているのかと言えば、国に当然納めるべき税を納めない人がいると、税金を払う人と払わない人の間に不公平が生まれ、税の公平性が保てなくなるからです。 同じ領土内に住んでいる人の中には、富める人も入れば貧しい人もいます。富める人はその分を負担をして、貧しい人を助ける富の再配分をしているのが国です。ですから、日本の税の三原則は、公平・中立・簡素。公平とは、みんなが同額の税金を払うことではなく、応能の原則といって貧しい人がほとんど税金を払えなくても、経済力のある人がその能力に応じてより多くの税金を支払うことをいいます。こうした集められた税金は、公共サービスに使われ、多くの人の暮らしを支えます。租税を回避する魔法の杖 この税金の使い道を決めるのが政治で、政治は、みんなから集めた税金でより多くの人が幸せに暮らせるような予算をつくり、税金を再び配分していきます。 ですから税制は、公平性と同時に応能負担の原則を守る必要があります。応能負担の原則については、憲法13条、14条、25条、29条にもあって、日本の所得税の考え方は、高額所得者からは高い税率の所得税を徴収し、低所得者には低い負担を課しています。 ところが、タックスヘイブンを利用して税金逃れをするということは、お金を稼いでもそれに応じた税金を支払わず、本来なら負うべき社会保障の負担を負わないということです。けれど納税しない人たちでも、日本に住んでいる限りは治安の安定や社会保障など、国からの恩恵だけは受けられます。けれど、これはあまれに理不尽です。なぜなら、治安の安定や社会保障を支えるために、タックスヘイブンなどとは無縁な一般の額に汗して働く人たちが重税を課せられなくてはならなくなるからです。富の再配分によって弱者を支えるという民主主義が成り立つ基盤が、根底から崩れることにもなりかねません。 租税回避の魔法の杖  いま新自由主義が世界を席巻し、グローバルなことがすべて良いような風潮が生まれています。ただ、世界がグローバル化する中で問題となってくるのが、税金です。 現在、日本の海外現地法人は2万3000社、売上げ242兆円となっています。これらの企業が2014年時点で7・5兆円の純利益を上げていますが、そのほとんどは現地企業に内部留保されたり設備投資にまわされて日本には戻ってきません。しかも、親会社の収入として日本に戻ってくるライセンス料や配当金は4兆円前後ありますが、外国子会社配当益不算入という税制があるので、ほとんど課税されないことになっています。画像はイメージです たとえばトヨタの場合には、利益が2兆円を超えた日本最大の企業であるにもかかわらず、2009年から2013年まで5年間も、国内では一銭も法人税を支払っていません。確かに、リーマンショック後の2010年、2011年は赤字でしたが、それ以外は立派な黒字企業でした。このトヨタが税金を払っていなかった最大の要因が外国子会社配当益不算入という税制にありました。トヨタが外国の子会社から配当を受け取った場合、その95%が課税対象からはずされるというものです。 ちなみに、国内事業者は消費税を払わなくてはなりませんが、トヨタのような輸出企業は消費税を払わないどころか、下請けが払ってきた消費税を国から還付されます。この還付金は、トヨタだけでも年間2000億円以上あるといわれています。トヨタのような日本の稼ぎ頭の企業が、税金を納めないだけでなく私たちが払った税金を国からもらうというのは、どう考えてもおかしな話でしょう。 実は、こうした仕組みの中にタックスヘイブンをからませると、海外進出している企業などはほとんど日本国内で税金を払わなくてもよくなってしまいます。 そのいっぽうで、国内に住む私たちの消費税は、税率が徐々に引き上げられつつあります。消費税は、収入が少ない人でも同じ税率で徴収されるために、貧しい人ほど税負担が増えて税の応能負担の原則に反しているといわれています。しかも、高額所得者の所得税や儲かっている企業の法人税はいっぽうで下がっていますから、税負担はますます収入が少ない人の肩にかかってきました。 そんな中で、庶民生活に追い討ちをかけるように、「パナマ文書」で、儲かっている人たちの税金逃れが発覚しました。黒い金はマフィアの武器やテロ資金に 今の時代、企業のグローバル化はもはや止められない状況にあるのかもしれません。けれど、法整備をするなり、法の網の目をくぐっても納税しないことに社会的制裁を加えるなりしないと、税金を払わない企業がどんどん増えて、結局はそのツケを、海外に法人をつくるどころか海外旅行さえままならない一般の国民が重税に喘ぐということになりかねません。  タックスヘイブンに集まるお金は、企業が稼いだ儲けやM&A、投資などの資金だけではありません。麻薬販売の代金や各種の賄賂といった公にできない黒い金もこの中にかなり含まれています。 こうした金は、そのままタックスヘイブンの金庫の中に眠っているわけではなく、マネーロンダリングされ、マフィアの武器やテロ資金に姿を変え、巨額な投機マネーとなって世界中に流れ出していきます。そして、戦争を引き起こし、人々を不幸な紛争に巻き込み、大量の難民を生み出し、経済を破壊して穏やかな日常生活を踏みにじります。その金がバブルを引き起こした後始末をするのは、投資もしたことがない人たちです。不況というダメージだけを与えられ、路頭に迷いながらそこから抜け出せなくなる人も多くいます。 暴力的な金が世界を闊歩するようになり、その最大の被害者となっているのは、タックスヘイブンとはまったく無関係で政府にいわれるがままに税金を払い続けてきた善良な人たちということです。そうした人たちが、テロの恐怖に怯え、薬物中毒の被害者となり、バブルがはじけて生活を破壊されていく。こんな理不尽な話はないでしょう。 それなのに、日本政府は、その深刻さを充分には理解していないように思います。 もちろん、熊本の地震などがあったのでそこまで手が回らないということもあるでしょうが、どうすれば納めるべき税金をしっかり取れるのかということにもっと本腰を入れて欲しいものです。 政府は「課税上の問題があると認められる場合には税務調査を行うなど適切な対応に努めていく」といいますが、日本国憲法30条で定められた納税の義務を回避しているような企業は、徹底して取り調べるべきです。法的な処罰は免れても、社会的な倫理観は問われてしかるべきです。 タックスヘイブンをどうするかは、日本一国の努力では難しい面があります。だとしたら、伊勢志摩サミットという各国が集まる公の場で、どうすれば相互の連携を強めながらタックスヘイブンを消滅に向かわせることができるのかを真剣に話し合うべきでしょう。

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    パナマ文書騒動、納税の透明性は確保できるのか

    の「週刊ニュース深読み」に出演したところ、午後になって一部の外資系証券経由で「本件問題は、米国主導のスキャンダルリークだったのではないか」というような情報が出回って、週末でみんな暇なんだろうと思いつつ、そういう合理的な疑いがあってもおかしくないよね、とは思います。10日に予告されている内容は、おそらく言われているほど(日本やアメリカにとっては)たいした内容にはならないのかもしれませんが、そもそも二重課税や為替予約の仕組みをオフショアで使うことと、租税回避の仕組みを構築することとは本来異なるはずです。“税金逃れ”に世界が怒り! パナマ文書って何?http://www.nhk.or.jp/fukayomi/maru/2016/160507.html租税回避地の利用が指摘されたアイスランドのグンロイグソン首相に抗議するデモ参加者ら=4月5日、レイキャビク また、保険商品を組み合わせたり、なんとか特区などの国や地域別の産業振興策を組み合わせる仕組みは、別に秘匿性が高くなくても「必要だから使う」「余分に税金を払わなくてすむのであれば、いま払っている税金が減らせる分の何割かを手数料で払っても構わない」という合理的な判断が成立するなら普通に活用されるものです。適法だから使って何が悪いという話ではなく、企業が税金を余分に払おうとしても、株主がそれを納得しないのが通常である以上は、そこの地域でビジネスを行う上でのCSRとしての現地納税みたいな話になるわけですね。 番組の冒頭で、森信茂樹せんせがいきなり「世界中どこにいても、日本在住者は日本の税金がかかる」と仰ったので、海外の日系現地法人が価格移転税制の枠内で現地で経常利益を出し現地で税金を払う、グループ決算をしたり、為替予約を機動的にやるためにオフショア口座を使うといった話にはいたらずじまいでした。どこの国でも徴税担当者は同じ発想ですから、企業やファンドの責任者は当局対応として「聞かれたことだけを喋る」という話になってしまうのもむべなるかな、といったところでしょうか。オフショア、タックスヘイブンが駄目だとなると… なお、オフショアがいけない、タックスヘイブンが駄目だとなると、現在主流となっている海外の直接投資や、香港市場などでの上場のためにケイマン諸島やヴァージン諸島などにホールディングカンパニーを立てるといった定番の租税回避策はできなくなります。もちろん、そういう手当てを日本がすれば、そのようなお金はなくなるわけですが、それは日本人が海外に投資をする際に一方的に不利になるだけでなく、海外から日本に投資するときそのような規制があるなら必要最低限の資金しか日本に置かないという話になります。まあ、対日投資を呼び込みたくないというなら話は別ですが、これから日本の国債消化余力が乏しくなりそうなところで海外からの商人を寄せ付けないというのは結果として日本が海外で資金調達をしたいとなったときに90年代のような余計なプレミアムを払わないと金が借りられないという本末転倒な事態に陥るので、うまい具合にやってよね、と思う次第でございます。画像はイメージです したがって、透明性を確保して、納得できる税体系にしましょう、という本筋は誰も反対しないのですが、実際には透明性を確保するための申告制度を義務付けたら、外からカネが日本に入らなくなるうえ、日本企業が海外で何か展開するときに不利を起こす可能性があります。東電、海外に210億円蓄財 公的支援1兆円 裏で税逃れhttp://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014010102100006.html たとえば、一昨年東京電力が海外子会社を通じて事業を行い、別の海外事業者との取引で得た利益をプールしてたら、東京新聞から謎の叱責を食らうという「事件」がありました。現地で稼いだ現地のお金を現地に置いて現地で納税することは別に公的サービスだろうがファンドだろうが問題にはならないはずが、公的支援を得ていたからそれが駄目だ、税逃れだという話になるのであれば大変なことです。  語るべきことはさまざまあるのですが、企業は利益を追求することが求められているけれども、同時に市民社会の一員としての責任も果たさなければならないので、適切な納税を公平感のある形で行わなければなりません。一方で、制度として透明性を強めようとしたときに起きる諸問題については、企業と国民の間で決定的に利害が対立するものでもあります。投資家は概ねにおいて両方の立場ですので、放送を通じてもう少し「何が対立軸なんだっけ」というのは語ったほうが良かったかなと思いつつ、語ったところで言葉足らずだと誤解も広がるんだろうなーと感じて、ぜんぜん違うことを喋っておりました。 どうせICIJが次の公表をするので、取り急ぎはそれを正座して待ちたいと思います。はい。 (やまもといちろうオフィシャルブログ 2016年5月7日分を転載)

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    「パナマ文書」多くが合法なのが問題 プーチンから習近平まで疑惑数々

     [WEDGE REPORT]佐々木伸 (星槎大学客員教授) タックスヘイブン(租税回避地)を使って各国首脳や有力者、著名人、富裕層らが税金逃れや不当蓄財、マネーロンダリング(資金洗浄)など闇の“悪行”を重ねていた実態が「パナマ文書」によって次々に暴露されている。格差社会にあえぐ国際社会に権力者や金持ちだけがいい目を見ているという怨嗟が広がっている。スノーデン文書を超える衝撃 「パナマ文書」はタックスヘイブン法人の設立支援をてがける中米パナマの法律事務所「モッサク・フォンセカ」の内部文書。ドイツの有力紙南ドイツ新聞が入手し、「国際調査報道ジャーナリスト連合」(JCIJ)が分析・調査をしている。iStock これまで判明したところでは、文書の法人情報の中には、10カ国の現旧指導者12人、これら指導者の親族ら61人、それ以外の政治家、政府幹部128人が含まれている。また世界のサッカー界のスター、バルセロナ所属のメッシ選手、香港の俳優ジャッキー・チェンさんら著名人、日本の警備大手会社の創業者らによる法人設立も分かった。 各国の指導者で、自身や親族、友人らが会社設立などで関与していたとされるのは、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席、キャメロン英首相らをはじめ、シリアのアサド大統領、ウクライナのポロシェンコ大統領、韓国の盧泰愚元大統領らだ。 アイスランドのグンロイグソン首相は妻と共同で英領バージン諸島の会社を購入し、数百万ドルの投資を行っていた。同国は2008年の金融危機で国家経済が破綻状態になって以降、国民生活はどん底にあえいでいる。このため同首相が権限を利用して“うまい汁”を吸っているのではないかとの批判が高まり、首相は辞意表明に追い込まれた。 中国では、習近平国家主席の義兄や、中国共産党序列5位の劉雲山・政治局常務委員、同7位の張高麗・筆頭副首相の親族の名前も含まれており、タックスヘイブンにある企業を利用して金融取引を行っていたのではないか、との疑惑が浮上している。 習指導部は反腐敗運動を推進し、「虎もハエもたたく」と綱紀粛正を看板にしてきただけに今回の疑惑暴露により、政権に批判が強まるのは避けられない。中国では報道規制が敷かれ、この問題について7日からインターネットの検索ができなくなっており、都合の悪いモノにはフタをするという全体主義特有の強権姿勢が出ている。 プーチン氏については、友人のチェロ奏者ロルドギン氏らがキプロスのロシア商業銀行から融資を引き出し、この資金がバージン諸島に設立した企業を経由するなど金融取引が行われ、その総額は約20億ドル(2100億円)にも達している。 ロシア大統領報道官は「でたらめだ」と否定し、同銀行もロルドギン氏への便宜供与などを否定したが、一連の「パナマ文書」による衝撃は米国の情報活動や国防政策の秘密を暴露したあの「スノーデン文書」よりも大きい、との指摘もある。国際的に広がる格差社会の一端を明るみに出すものだからだ。捜査と規制の動き急捜査と規制の動き急 大きな問題はこうした数々の疑惑に違法性があると単純に決め付けることができない点だ。タックスヘイブンで資産や企業を保有し、金融取引を行うこと自体は違法ではない。「多くの取引が合法で、それがむしろ問題だ」とオバマ米大統領が指摘している通りだ。 問題は情報が公開されない闇の中で取引などが行われているため、脱税、粉飾、資金洗浄、非合法活動・テロ支援など不正活動の温床になっているということだろう。 北朝鮮への不正送金に関わったとされる複数の企業や、米国がテロ組織に指定しているレバノンの武装組織ヒズボラやメキシコ、グアテマラの麻薬密売グループに関わる企業の関与も浮き彫りになっている。「どのパナマ?」と書かれたプーチン露大統領の疑惑をパロディー化したポスターを調べる警察官(ロイター) 「パナマ文書」に関する当局の捜査の動きも急速に進み始めている。パナマ検察当局が違法行為の有無などについて捜査をすると発表、情報流出先の法律事務所を捜査する方針だ。米司法省も米国の法律に違反している事実がないかどうかの捜査を開始した。FIFAにも飛び火 スイスの捜査当局は6日、この文書に関連して欧州サッカー連盟(UEFA)の本部を家宅捜索した。文書をめぐっては、国際サッカー連盟(FIFA)のインファンティノ会長がUEFAの法務責任者時代、FIFA汚職事件の被告2人が経営する会社と放映権の契約を結んだと伝えられている。 タックスヘイブンの影響で世界各国が被っている税金逃れの損失は数兆ドルにも達するといわれており、米国を中心に税金逃れを規制する動きが加速しつつある。日本も含め欧米各国でタックスヘイブンへの移転企業に何らかの形の「出国税」が掛けられる仕組みも導入されている。 オバマ政権は近く、米国内で銀行口座を開設するペーパーカンパニーに対して実質的な会社の所有者らを特定することを銀行に義務付ける法律の制定を目指す考えとされ、規制と法の抜け道利用との“イタチごっこ”が今後も続くのは間違いない。

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    パナマ文書で名指しの商社幹部「脱税のレッテルでいい迷惑」

     タックスヘイブン(租税回避地)の金融取引に関する大量の秘密ファイル「パナマ文書」が流出したことに頭を抱えているのは外国の要人だけではない。日本の大企業や個人の大富豪も、その名がいつ表に出るのかと戦々恐々としているはずだ。 事の発端は、欧州有力紙『南ドイツ新聞』への匿名人物による情報提供だった。パナマの法律事務所モサック・フォンセカの内部文書が流出すると、各国メディアはその内容を一斉に報じた。 報道によると、10か国の現旧指導者12人を含む公職者140人、国家の現旧指導者の親族61人の関係する法人などがタックスヘイブンを利用した金融取引に関わっていたことが文書から明らかになった。 その中には、ロシアのプーチン大統領の友人、中国の習近平国家主席の義兄、アイスランドの首相、英国のキャメロン首相の亡父、さらにはサッカー選手のリオネル・メッシ、俳優のジャッキー・チェンなど、名だたる大物たちの名前があり、世界中に波紋を広げている。 すでに、疑惑を指摘されたアイスランドの首相は辞任に追い込まれ、亡父が設立した投資ファンドから利益を得ていたことを認めたキャメロン首相も、イギリス国内で辞任を求める声が上がり、窮地に立たされている。 日本ではセコム創業者の飯田亮氏の名前が報じられたほか、日本企業の名前が記された真偽不明のリストまでネット上で拡散している。 その中には、航空、商社、小売り、金融業界のリーディングカンパニーなど、錚々たる大企業が名を連ねている。名指しされた商社の幹部は困惑を隠さない。「いまの状況で名前が挙がるだけで“脱税企業”のようなレッテルを貼られてしまう。株価への悪影響も考えられるし、本当にいい迷惑ですよ」関連記事■ 新生児の名前で人気上位の「結愛」「大翔」 読み方が多すぎる■ 日本の社長の名前調査 「いかにも長男」の名前が少ない理由■ 塩崎厚労相「地元の老人ホーム事業に口利き」証拠メール報道■ 膨大なパナマ文書 解析終了は5月上旬、企業・個人名発表か■ 米の就活 マイナーな名前は書類送っても面接に呼ばれにくい

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    パナマ文書をリークした不正調査ツール 国家間での情報戦争でも活用

     [WEDGE REPORT] Nuix Investigator Labの正体に迫る!ゴン川野 (フリーランスライター) 世界を震撼させたパナマ文書は、データ量の観点から見ても桁違いだった。容量2.6TB、480万点のメール、300万点のデータベース、100万点の画像、210万点のPDFファイル、32万点のテキストファイルが流出したのだ。ドイツの新聞社に持ち込まれたデータはICIJ(国際調査報道ジャーナル連合)の手に渡り、Webサイトに見やすく整理された情報がアップされている。現在も76カ国に点在する370人以上のジャーナリストが協力してその全貌の解明を続けている。これらのビッグデータはどのように解析され公開に至ったのだろうか。2.6TBを2日間でインデックス化 ICIJに持ち込まれたデータの解析に協力したのがオーストラリアNuix社である。聞き慣れない名前の会社だが、同社の開発した「Nuix Investigator Lab」は政府を含む世界の一流調査機関に欠かすことの出来ないフォレンジツール、すなわち不正調査ツールだという。 デジタルフォレンジックとは膨大なデータを解析して名前、会社、預金などの個人情報を抜き出し、相互参照をおこない、隠れていた関連性を浮かび上がらせる作業で、国際カルテル調査などに欠かせない。 それでは実際のパナマ文書はどう解析されたのか。専門の調査機関に持ち込まれたと仮定して推測してみよう。まずHDDなどのハードウエアで持ち込まれた2.6TBのデータは、HDDデュプリケータと呼ばれるマシンを使って完全複製されオリジナルを保全。次に複製されたデータが改ざんできないように書き込みを禁止するライトブロッカーと呼ばれる装置に収められる。 次にフォレンジツールが解析できないPDFファイルと書類をスキャンした画像データのテキスト化が待っている。OCRを使うのだが、おそらく最も時間のかかるパートに違いない。この作業にはクラウドコンピュータを使い数カ月を有したと言われる。次にデータ自身に付けられたメタデータを全文検索エンジンなどを使って切り出している。メタデータとはファイルタイプやタイムスタンプ、画像データであればExifやGPS情報などで、これらを利用してデータを分類することが可能になる。 メタデータを利用してNuixはインデックスを作成。処理速度は1時間で85GBと超高速である。パナマ文書も2日あれば余裕で解析できる計算だ。インデックスを元に人物、会社、メールなどの相関関係を明らかにするためのダイヤグラムが自動生成される。このようなネットワーク構造を示すダイヤグラムはグラフと呼ばれる。グラフは中心になるノードとそこから伸びるエッジで形成されている。 Nuixは400種類以上のファイルタイプをサポート。クラウドにあるメールアーカイブからもデータを収集可能である。また、画像分析機能もあり肌の色調から画像を抽出できる。地図上に位置を確定するためGPS情報やIPアドレスを利用。通信記録の解析、レジストリ分析、削除ファイルの復元、破損ファイル抽出など高度な機能を搭載。これらの機能を使ってNuixは名前、社名、金額、メールアドレス、IPアドレス、クレジットカード番号からなるグラフデータを構築する。可視化されたグラフによって、ターゲットの会社の中心人物が誰なのか、その人物が最も多くメールでやりとりしている人物は誰か、またその人物は誰とつながっているかなどの相関関係が一目で分かるようになるのだ。 今回はおよそ100万ノードのグラフが完成、これを元にグラフデータベースが構築されたようだ。データベースが人工知能で自動解析できれば、話は早いのだが、そこまで技術は進んでいない。最終的には世界中にいるジャーナリストが協力してデータベースにアクセス、解析作業を進めているのだ。 Nuixを日本で販売する会社を直撃Nuixを日本で販売する会社を直撃 世界各国の政府機関、法律事務所、日本でも証券取引等監視委員会をはじめ主要な政府機関や大企業でも使われているというNuixを日本で販売、操作のための専任スタッフの教育も手掛けているのがAOSリーガルテック。Nuixは1000万円以上もするソフトウエアで、その操作にも専門知識が要求されるため日本でも数社しか扱っていないという。佐々木隆仁氏(左)と、Nuix Japan事業部シニアシステムコンサルタント戸叶徹氏©Naonori Kohira 同社の代表取締役・佐々木隆仁氏はこう語る。 「パナマ文書がリークされる以前から、すでに国家間での情報戦争は始まっていました。ビックデータを収集、分析するのに最も秀でているのは国家機関ですからね。そこで必要になったのがフォレンジツールです」 膨大なデータを収集、分類、分析するには膨大な人員を抱える必要がある。しかし、世界中を飛び交うデータの量は年々、加速度的な勢いで増えていく。 「例えばガラケーからスマホに変わったことで個人が扱えるデータ量は100倍以上も増えました。国家機関は以前から仮想敵国の通話を盗聴していましたが、音声データの分析には非常に時間が掛かるため成果を上げるのは困難でした。現在はEメールのデータを収集してフォレンジツールに分析させています。これで人員とコスト、時間も短縮されました」 確かにパナマ文書のリークによって一国の首相が失脚するという事態が発生している。ビッグデータは情報戦争の有力な武器なのである。佐々木氏はこう続ける。 「情報戦争で最も遅れているのが日本です。アメリカの裁判にはe-Discovery(電子情報開示制度)があり、訴状が提出された120日以内にESI(電子的保存情報)を提出しなければなりません。このために企業もNuix Investigatorを所有、それを使いこなせる社員もいます。日本は特許訴訟をおこされるとあわてて対応して、見せなくてもいい資料まで提出。裁判はボロ負けで莫大な損害賠償を支払うはめになります」 ここで実際にNuix Investigatorのデモを見せてもらったのだが、メニューは日本語化されており、一見メーラーのようなインターフェイスだ。検索したい単語を入力するとメール一覧が表示され、本文中で見つかった単語がマーカーを引いたように色付きで表示される。ここにあるメールは全てメタデータによってインデックスされており、1通のメールをクリックするとメールをやりとりした人物のグラフが表示される。このグラフをマウスで動かし、つながりのある人物をクリックするとさらなるグラフが展開する。人と人、人と企業などの関連性、相互作用が直感的に理解できるのだ。プレディクティブ・コーディングが勝負の鍵を握るプレディクティブ・コーディングが勝負の鍵を握る Nuixを目の当たりにして改めて凄いソフトであることを実感したが、さらなる進化を遂げるための研究が進んでいるという。「それがプレディクティブ・コーディングですね。すなわち人間とコンピュータが協力してデータ分析をする技術です。まず、教師データと呼ばれるものを作成します。調査データの10〜20%をエキスパートによってピックアップして調査対象として重要なものかどうかを判断させます。これをAI(人工知能)にパターン認識させて残りのデータを自動的に抽出させるんです。プレディクティブ・コーディングを使えば、人間の負担を軽減させ、コンピュータの計算量を減らし、抽出精度を高めることができます」と佐々木氏は語る。特許訴訟のESI作成を法律事務所に依頼すると120万ドルかかると言われたが、これがプレディクティブ・コーディングを使うことで36万ドルに抑えられたという話もある。 プレディクティブ・コーディングの次の段階がAIによる完全自動分析である。佐々木氏はこう締めくくる。「シンギュラリティ(技術的特異点)が訪れるのは2045年と言われていますが、私は2030年頃だと予測します。これはAIが人間を超えるという意味で使われますが、AIが自分自身でシステムを改良し続けることができるようになるという意味です。つまり無限に進化するAIですね」。それは人間の職業がAIに奪われるという事になるのだろうか。「行政の仕事は大幅に人手が減らせますね。しかし、公務員は解雇できませんから、事務職で不要になった人員を人を相手にするようなサービスに回せば、行政サービス全体は充実すると思います。そう考えれば、人は人にしかできない仕事に就ける時代が訪れるのではないでしょうか」オフショア・リークスで名前、会社、住所まで分かる こうして分析されたパナマ文書の一部と言われているデータがICIJのオフショア・リークスというサイトでも見ることができる。このサイトは誰でも検索できるようになっている。実際に試してみよう。最初の検索窓でJpapnを選択すると国籍日本に関するデータが表示される。検索結果は3つのリストに分類され、左から社名、これをクリックすると関係者または仲介した人物の名前、会社、オフショアのダイアグラムが表示される。中央はタックスヘブンに住所を移転した事業所の名称が表示される。右は個人でタックスヘブンを利用しているクライアントの住所、クリックでダイヤグラム表示される。 公開されたデータは、まだほんの一部であり、グラフも限られた項目だけしか表示されていないようだ。5月上旬には全ての個人及び企業リストが公開される予定なので、無関係を決め込んでいる日本政府も何らかのリアクションを起こすに違いない。

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    日本が取りっぱぐれた税金 ケイマン諸島だけで消費税7%分

     タックスヘイブン(租税回避地)の金融取引に関する大量の秘密ファイル「パナマ文書」が流出した。タックスヘイブンとは、バミューダやケイマン諸島、パナマなど、課税率が著しく低い、もしくはまったくない国や地域のこと。ここに子会社を設立して、その子会社との取引で所得・資産を移転させ、課税逃れ、資産隠しを行なっている企業は、世界的に少なくない。 会社員時代にパナマにペーパーカンパニーを設立した経験を持つジャーナリストの若林亜紀氏はこういう。 「パナマの法律事務所の代理店が日本にあり、パナマに行かずとも、事務手続きはその代理店が全部やってくれました。資本金もなしで簡単に会社が作れるのです」 なお、流出元となったパナマの法律事務所モサック・フォンセカは、タックスヘイブンの法律事務所としては世界4位の規模。つまり、パナマ文書が明かすのは、課税逃れの実態のごく一部でしかない。公認会計士で『〈税金逃れ〉の衝撃』の著書もある深見浩一郎氏はこう解説する。 「こうした税金逃れの手法はあくまで合法なので、アメリカの企業ではやって当たり前、やらないのは経営者の職務怠慢だという状況になっています。そのため、アメリカでは法人税収入が落ちており、オバマ大統領が『大きな問題』と指摘するなど、合法的にタックスヘイブンを利用できる現行制度の見直しを求める声も上がっています」 日本も例外ではない。それどころか、アメリカに次いで世界第2位といわれるほど、課税逃れは膨大な額に及ぶという。 実際、日銀が公表している国際収支統計によると、日本が取りっぱぐれてきた税金額はケイマン諸島に隠匿された分だけで、約14兆円に上るという。消費税1%分の税収が約2兆円といわれるから、これは実に7%分に相当する。当然、パナマなど他のタックスヘイブンを合わせた額はさらに大きく膨らむ。これらを納税させれば、消費増税の先送りどころか、減税が十分可能となる額となる。 「とはいえ、合法ではあるので、文書の中に記載された企業名が明らかになったとしても、それだけですぐに悪いことをしていると批判することは難しい。ただし、本来入るべき税金が国に入らないわけで、結局、そのしわ寄せは国民にくる。パナマ文書は、実は身近な問題なのです」(深見氏) パナマ文書の分析を行なっているのは、米ワシントンに本拠を置くNPO法人「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)だ。日本からは朝日新聞と共同通信が参加している。 「文書の数は1150万件と膨大で、76か国の400人近い記者が分担して精査している。朝日と共同は、日本の法人および個人に関わる部分を解析していますが、専門的な文書のため解読に時間がかかっています。 いまのところ、日本関係では個人名はある程度判明していますが、個人投資家などが多く、政治家や大物経営者といった名前はまだ出てきていないようです。ただ、今後解明が進んでいけば、大物の名前が出てくるかもしれません」(共同通信記者) ICIJは5月上旬にもネット上で、文書にある21万余の法人やその役員、株主名などを公開する予定だ。その公開に戦々恐々としている日本企業の経営陣の心中やいかに。関連記事■ 膨大なパナマ文書 解析終了は5月上旬、企業・個人名発表か■ パナマ文書で名指しの商社幹部「脱税のレッテルでいい迷惑」■ 中国軍元制服組トップの収賄額 約272億円で史上最高か■ 日本の鉄道車両がケイマン諸島で資産になっていた過去■ 西欧で爆発的に増殖中のオオナマズ 少女が足首噛まれた例も

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    パナマ文書で注目される 「オフショア取引」と「タックスヘイブン」とは?

    (THE PAGEより転載) 78か国で活動する370人のジャーナリストがデータの分析や調査に参加し、全容が解明されるまでには数年を要するとも言われている「パナマ文書」問題。その衝撃は今月6日の記事でも紹介しましたが、アイスランドではすでに首相の辞任にまで発展。他の国でも現役の大統領や首相、国際的な企業に対する風当たりが強まっています。通常は税率が20%以下の地域がオフショア パナマ文書で大きく取り上げられた「オフショア取引」と「タックスヘイブン(租税回避地)」の存在。 所得税や法人税が極めて低い国や地域に法人を設立することを、自国から離れた「沖合」を意味するオフショア取引といいます。ネガティブなイメージが先行するオフショア取引ですが、海外には国内情勢の不安定さが原因で資産を安全に管理することができない国もあり、財産の保全や投資の分散化でもオフショア法人が利用されます。 今回は、それらがどういったもので、具体的に何が行われているのか、専門家へのインタビューを中心に紹介します。海外の投資ファンドでの勤務が長く、現在は東京を拠点にする金融関係者にお話を伺いました。画像はイメージです――オフショア取引とタックスヘイブン、この二つの違いや定義を理解するのも大変だが、タックスヘイブンは租税回避地で、オフショア取引の行われている場所の多くがタックスヘイブンという認識でいいか?「本国以外の場所で行われている取引を、総じてオフショアと呼びます。タックスヘイブンは、通常は税率が20パーセント以下の地域を総じてそう呼びます。例えば、観光業などが盛んで、税率をそこまでアップさせなくても問題のない国がタックスヘイブンになる傾向がありましたが、タックスヘイブンそのものが収益の多くを占め、タックスヘイブンやオフショア取引に依存する国も存在します。イギリスも間もなく法人税が20パーセント以下に引き下げられ、これまで使われてきたタックスヘイブンの定義も少し変わるような気もしますが、基本的には税率が20パーセント以下、もしくはゼロに近い国々を指します。カリブ海だけではなく、アジアではシンガポールや香港も有名ですね。本国以外の場所で行うオフショア取引に、租税回避地のタックスヘイブンが使われることは珍しくありません」――海外でのオフショア取引といえば、どうしても富裕層や、巨大企業のイメージが先行するが、一般人でもオフショア取引を行うことは可能なのか?いくらくらいの資産を持っていたら、オフショア取引のメリットがあるのか?「英領ヴァージン諸島やケイマン諸島といった、典型的なタックスヘイブンに、法人もしくは個人名義で口座を開設し、お金を預けている人は結構いると思います。その際に用いられるのがノミニー制度で(補足:法人の役員や株主を第三者名義で登録できる制度)、表向きはオフショア取引を行っている現地の人間が会社の代表になっていたりするものの、社会的に名前の通った人物が実際のオーナーで、経済的利益を手にしているというケースは少なくないと思います。ただ、ノミニーに支払うお金が年に100~200万円はかかると思いますので、それらを差し引いても、メリットを享受できる個人や法人になってくるのではないでしょうか?」パナマにオフショアを出すことは珍しい?パナマにオフショアを出すことは珍しい?――世界中のタックスヘイブンをみても、地域や国によって、銀行や信託など、得意分野があることが分かった。これはカリブ海諸国に限った話ではないのか?「得意分野という表現が適切なのかはわかりませんが、プライベート・エクイティ・ファンド(補足:投資家から集めた資金を事業会社や金融機関に投資し、投資先の経営にも参加し、企業価値を高めて最終的には売却後の内部収益率を獲得することを目的としたファンド)では、ヴァージン諸島やケイマン諸島はよく利用していますね。ヘッジファンドはイギリスのマン島を利用したりするイメージはあります。オフショア法人設立でパナマを用いることは、私の周囲ではほとんど聞いたことがなく(補足:モサック・フォンセカはパナマの法律事務所だが、ほとんどのオフショア法人設立には英領ヴァージン諸島やケイマン諸島が使われていた)、今回のニュースでパナマにもオフショア法人を出す人がいたことを知って驚いたくらいです。パナマでオフショア法人を出すメリットはあまりないような気がします」世界屈指の租税回避地である英領ケイマン諸島。首都ジョージタウンの中心街、グランドケイマン――タックスヘイブンやオフショア法人の設立で有名な国では、それらのビジネスによって、現地の経済や雇用は潤うのか?「法人登記だけではなく、ノミニーの採用でもかなりのお金がタックスヘイブンには落ちていて、これが現地の経済を支えていることは間違いないでしょう。ノミニーの中にはアメリカのロースクールなどを卒業したものの、アメリカでうまい具合に仕事が見つからずに母国に帰ってきた人もいます。そういった人たちの受け皿になり、さらに現地の経済を回す原動力にもなっているのです。ノミニー制度に加えて、決算書を出す必要がなかったり、機密保持を売りにしている地域もあり、そういった場所にオフショア法人を設立しようとする企業や富裕層は多いです。しかし、各国間の租税条約が今後厳しくなる見通しで、オフショア法人を持つ企業は自国で銀行などから情報公開を求められる可能性が高くなりそうで、タックスヘイブンの今後にも不透明な部分はあります」各国が連携してオフショア取引対策の流れ――パナマ文書のリークは、中長期的に見て、世界経済に何らかの影響をあたえるのか?「あると思います。オフショア取引、とりわけ租税逃れ的なスキームというのはこれから減っていくと思われます。オフショア取引そのものがなくなるとは思えませんが、取引数がだんだん減ってくるのではないでしょうか。また、各国が厳しい財政状況に直面しているなか、(パナマ文書の公開が引き金となって)各国が租税条約の見直しを連携して行うようになり、租税逃れと思われるオフショア取引がターゲットになりやすくなると思います」 誤解を与えないために言及しておくと、タックスヘイブンやオフショア取引そのものが全て脱税絡みというわけではなく、法的には問題のない節税対策などで用いられるケースがほとんどです。しかし、脱税に加えて、犯罪組織やテロ組織がマネーロンダリングに用いるケースも報告されており、問題がゼロというわけではないのです。 世界中のタックスヘイブンが実際にどのくらいの規模なのか、はっきりとした数字は出ていません。 秘匿性なども存在するため、細かいデータ収集や分析を行うのが非常に困難なためです。カリフォルニア大学バークレー校のガブリエル・ザックマン准教授(経済学)は、昨年上梓した『国家の隠された資産』の中で、世界中のタックスヘイブンで扱われている資産の総額は約7兆6000億ドルに達すると指摘。この数字が正しければ、世界に存在する純資産の約8パーセントに達します。パナマ文書によって、これまで知りえなかった情報がどこまで白日の下にさらされるのでしょうか? 「解読」にはまだ時間がかかりそうです。(ジャーナリスト・仲野博文)

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    寛容さを失う日本人と「一発レッド社会」

    さながら「一発レッド社会」といったところか。不倫騒動が話題になったタレント、矢口真里を起用した日清カップヌードルの新CMをめぐり、「不貞をネタにしている」との批判が渦巻き、たった一週間で放送中止になったことが波紋を呼んだ。日本人は本当に寛容さを失いつつあるのか。

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    どうしたニッポン、なぜ謝罪はここまで増える?

    岡本裕明(Blue Tree Management 株式会社 代表取締役) ベッキー、SMAP、横流しのダイコーに教科書出版会社、バス運行会社…ごく最近の謝罪例だけでもこれぐらいすぐ思い浮かびます。甘利大臣も釈明が謝罪に変るのでしょうか?多くは「脇が甘い」結果が生んだ失態で、深々と頭を下げ、フラッシュとシャッターの音が象徴的なシーンであります。 海外から見る私としては「いい加減にしてほしい!」と言いたくなります。 日本はこんなに人に頭を下げ続けなくてはいけないほどの恥ずかしい国だったのでしょうか?まじめで一生懸命働き、人に迷惑をかけない筈じゃなかったのでしょうか?私は小さい時からそういう国だ、と習っていました。が、経済がどれだけ成熟しても人間は成熟していないということでしょうか?「SMAP存続へ」と報じた2016年1月18日付 サンケイスポーツ 少なくとも海外ではこのようなシーンはまずお見かけすることはありません。勿論、非を認めない世界(=裁判など第三者の判定を仰ぐスタイル)との相違はあるもののそれにしてもこのところの日本の謝罪は尋常なペースではありません。日本に在住の方はこれをテレビのニュース番組でみてどう思っているのでしょうか?もはや、当たり前の行為として日本の謝罪文化として受け入れてしまったのでしょうか?そうだとしたらとんでもなく不思議な国になりつつある気がします。 私は謝罪する状況を作る人間の弱さが気になります。特に問題視すべき事件は教科書事件だと思います。とにかく対象者が多すぎます。教科書会社が12社、図書券や現金を貰った先生は4000人と言われています。先生の大半は公務員ですから賄賂の贈収賄であって本来なら全員クビになりかねません。が、この問題は今後、すっーと収まる気がしています。日教組あたりがマスコミを抑え込むとみているからです。それぐらい見せたくないシリアスな問題ともいえ、ルール通りに行けば日本から先生がいなくなってしまうぐらいの勢いなのです。 日本的謝罪を求めるならば、学校側、つまり収賄された側の代表者の弁明がまだない気がします。表に表れないもう一人の代表者にSMAPの飯島三智マネージャーも上げられると思います。SMAPにしても教科書問題にしても本来のトラブルを起こした当事者に代わり本来謝罪をすべきかどうかわからないSMAP本人たちや文科省が弁明、謝罪するという奇妙なスタイルができつつあります。謝罪文化は組織のトップないし顔役が頭を下げるという仕組みができているともいえ、この独特の文化のフレーバーとも言えそうです。また、「謝罪のコンサルタント」もいる時代ですから驚きです。 例えば政治家の秘書が賄賂や政治資金規正法の問題を起こしても謝罪するのは政治家本人です。これはその顔役が頭を下げることで「水に流せ」と言わんばかりのような気がします。家父長制度の典型とも言えそうです。見る人たちはそれで溜飲が下がるのでしょうか?これを繰り返していても根本的日本人の弱さを解決できないように思えます。 謝罪が増えるその原因は世の中が複雑化、情報化、コンプライアンス、規制、ルール、監視体制など正直「住みにくい」「やりにくい」世の中になったことがあるかもしれません。進化する世の中に対して全員が全員、ついて行っているわけではありません。細かいルールなど正直、フォローできないのです。その為、「多分、悪いことかも…」と思いながらも「まぁ、いいか」という気持ちになるのではないでしょうか?また、完全競争下にある業界ではズルをしてでも生き残りを図るという苦しい実情もありそうです。 朝日新聞の報道によると北海道、登別の温泉宿で厨房の皿洗い場を風呂にして浸かる高校生アルバイトの写真が拡散したようです。これも以前からある悪さの典型ですが、ツィッターがなければばれることはなかった、ではなくてツィッターなりYoutubeがあるからこういう「目立つこと」をして見せびらかせる行為をするわけです。 民泊について緩和策が出てきそうな感じです。一定の細かいルールが設定されるはずですが全ての民泊に興味がある人にこのルールを周知、徹底させることが出来るかといえば100%無理だと今から断言しておきます。必ず、トラブルが発生し、そのトラブルに対して役人が頭を下げる時が来るはずです。 これらは日本人の常識感がややあいまいになりつつあることも原因かもしれません。それぐらい社会は急速に変化し価値観が世代と共に変わってきています。このギャップが埋められないのかもしれません。先行き、一抹の不安を抱くのは私だけでしょうか?では今日はこのぐらいで。(2016年1月24日 岡本裕明ブログ「外から見る日本、見られる日本人」より転載)

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    良心が暴走する「謝罪社会」を生んだ 文春無双を許すメディアの罪

    常見陽平(千葉商科大学 国際教養学部専任講師) 「謝罪社会」である。今年に入ってから、政治家、スポーツ選手、芸能人、企業や大学のトップなどによる謝罪が相次いでいる。献金疑惑、不倫、経歴詐称、賭博、消費者からのクレームなど、謝罪する理由も多岐にわたっている。著名人、権力者たちの不祥事に頭にきている人もいれば、何でもかんでも謝罪させる社会に苛立ちを覚える人もいることだろう。 個人的には、これは相当、問題を切り分けて、丁寧に論じなくてはいけない問題だと考えている。オヤジギャグではないが「誤った謝り方(誤らせ方とも言える)」は、いかがなものかと思うのだ。我々にはNOと言う権利がある 前提としては、私たち庶民は政治家にしろ、企業の経営者にしろ、異議申し立てをする、意見を言う権利を持っていると考える。明らかに道義に反することが行われている場合に、NOというべきだ。特に政治は、我々の血税で動いている。我々の投票により成り立っている。だから、政治家の不正に対してNOという権利を我々は手放してはならない。 消費者としても、特に我々の安全に関わる問題に関しては、NOというべきだろう。お金を払って買った商品によって、命を縮められたとしたならばたまったものではない(もちろん、酒やタバコのように、健康を害することがあることを最初から宣言している商品は別だが)。いわゆる詐称などが行われ、期待していたものを手に入れることができなかった場合も我々は怒っていいと思う。 1999年に2ちゃんねるができ、その後もブログやSNSなどが普及していく過程でネット発の異議申し立てというものが行われるようになってきた。庶民が物を申す場としてのこれらの場、機会が多様化したという点では、評価できる部分はあることだろう。 まず、ここでは庶民は政治家や経営者に物申す権利があるということを確認しておきたい。まず、謝らなくてはならないようなことをするな まず、「謝らなければならないことをするな」という前提も確認しておきたい。なんでもかんでも謝罪するのは良くないと思いつつも、ここ数ヶ月の謝罪案件では、謝って当然のものはある。 「他のみんなもやっているだろ」という批判もあるかと思うが、やはり政治家が闇献金を受け取ってはいけないし、オリンピック代表候補になる選手が闇カジノでギャンブルに興じるのは良くないだろう。前者も後者もルールを逸脱したものだからだ。違法賭博問題で会見、うつむく田児賢一選手(左)と質問に答える桃田賢斗選手=4月8日、東京・大手町(寺河内美奈撮影) もっとも、世の中のルールを逸脱した行為を行う際の覚悟を問いたくなる瞬間もある。例えば、不倫だ。これまた、会社でも見聞きするようなドラマでありつつも、いわゆる不貞行為と言われ、民法上は問題となる行為であり、訴訟を起こされると負けるリスクだってある。単なる火遊びから、略奪愛を実現しようとするレベルのものまであるわけだが。発覚してすぐ謝罪というのは、その覚悟がなかったのかと問いたくもなる。芸能人に関しては、メディアやスポンサー筋との関係もあるわけだ。そういうリスクもわかっていつつ、不倫に走るなら、何かあった時に責任をとる覚悟、あるいは開き直って「これは本当の愛だから」と言うくらいの想いが必要だ。 この春には、CMの打ち切り騒動もあった。表現というものは常に賛否を呼ぶものだ。特に尖った表現などはそうだ。あるCMなどはクレームを受け、簡単に打ち切りが決まってしまった。ただ、言うまでもなく大金を投入したCMである。クレームは折り込み済みだったはずだ。ここは批判を受けようとも、それでもCMを流す意図というものを主張するべきところではなかったか。ただ、それを主張しないということは、このCMを流した企業や、創り手が中途半端だったということだろう。もっとも、打ち切りになることを話題にしようとしていたとしたならば、たちが悪いが。 このように、そもそも、謝らなければならないようなことをするなということを確認しておきたいし、物事には筋の通し方というものがあるのだ。誰が誰に何を謝っているのか?誰が誰に何を謝っているのか? もっとも、一連の謝罪騒動を見ていて不思議に思うことがある。それは「誰が誰に対して謝っているのか?」という問題である。いや、国民の代表として政治に関わっている政治家が謝罪するのはわかりやすい。もっと謝れと言いたくなることもある。 ただ、芸能人やスポーツ選手などの謝罪においては、誰が誰に、何を理由に謝っているのか、わからなくなる瞬間がある。そんな謝り方をされても、申し訳なくなるし、戸惑うだけだ。論点がずれていて、逆に怒りを抱いてしまうことだってある。 例えば、ベッキーの謝罪問題などについては、もう何が何だかわからなくなった。迷惑をかけるのは番組関係者であり、スポンサー筋であり、主人を奪われそうになった川谷の嫁だろう。まあ、たしかに世間を騒がせた案件であったが、メディアを通じた謝罪のあり方としてはどうだろうか。 騒ぎになったからと言って、すぐ謝罪するのも考えものだ。それは、誰が誰に対して、何を謝っているのか。 結局、この手のものは筋の通し方が大事なのである。下手な謝罪は、さらなる怒りを買うことになる。メディアの構造的な問題も ここで、誰が誰に謝らせているのかという問題を考えてみたい。思うにこれは、ウェブ社会の構造的な問題ではないかとも思うのだ。 前段で触れたように、生活者がネットという手段を通じて、主張をする、異議申し立てをできるようになったことは、権利や機会が広がる意味ではよい。しかし、それが良心の暴走とも言える状態になっているのだが、現在の炎上社会と謝罪社会ではないか。 結局、何か問題が起こり、炎上し、謝罪するという出来事があると、それを取り上げるサイトは、PV数を稼ぐことができ、広告収入が入るのである。だから、ネットのまとめサイトや、一部のネットニュースがそうであるが、この手の謝罪ネタをひたすら探している。中には、それほど騒ぐべきことでもないことも、歪められて伝えられ、炎上させられる。この炎上→謝罪の連鎖で我々は踊らされているのではないか。 そして、今年の流行語大賞にノミネートされそうな「センテンススプリング」。文春がやり過ぎなのではなく、他メディアの劣化の結果なのではないかと考える。スクープを連発しているが、他のメディアには取材する体力もなく、後追いになっている。テレビですら文春を後追いする。結果として、皮肉にも文春の独占メディア化というか、影響力がますます増し、他のオルタナティブがない状態になってしまっている。 このように、炎上→謝罪の連鎖するネット社会、センテンススプリングに対抗するメディアの不在、劣化の末に、この謝罪社会は成り立っている。解決策は簡単ではないが、不要な炎上、謝罪を誘発しないためのメディアリテラシーの強化がまずは課題ではないか。また、縁起が悪いが、企業も人も、謝罪リテラシーが必要だ。 というわけで、誤った謝り方、謝らせ方がこれ以上、加速しないことを祈るのである。

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    マスコミ対応のプロが斬る! 不倫夫の妻、謝罪の成功例と失敗例

    (THE PAGEより転載) 2016年は新年早々、タレントから政治家まで、不倫報道があとを絶ちません。不倫をしてしまった本人の謝罪は当然と思えますが、被害者である妻が「私のせいでもある」と重ねて謝罪するのは、火に油を注ぐ結果になり、かえって印象を悪くしてしまうケースも。 このようなとき、妻はマスコミに対してどう対応したらよいのでしょうか? 広報コンサルタントの石川慶子さんがプロならではの視点で、不倫夫の妻の謝罪方法の成功例と失敗例を解説します。珍しいことをすると余計に目立つ乙武洋匡(おとたけ・ひろただ)氏が自身の公式サイトで、週刊誌で報道された不倫について16年3月24日に妻と共に謝罪文を公表しました。私の第一印象は「珍しいことしてしまった。妻が謝罪するとは今までにない新しいパターン。女性はなかなか共感しづらい。このような対応は賛否両論になるから報道が長引くかもしれない」。案の定、その通りになってしまいました。 私たち広報プロフェッショナルは、平時は企業のサービスや商品について報道で取り上げてもらおうと、新しい切り口、珍しいことを強調することで話題を作ろうと努力しています。ところが、不祥事になればなるべく報道されない方がよいわけですから、ありふれた情報に見えるにはどうしたらいいかと考えます。よくあることは面白くないので報道で取り上げる価値がないからです。たとえ取り上げたとしても一回で十分と思ってもらえればいい。 不倫はどこにでもある日常の風景ですから、目立たないような工夫はそれほど難しくはありません。ありがちは風景とは、夫の不倫に妻は怒るものの、夫が許しを請えば、妻はしぶしぶ許す。ここで妻が一緒に社会に対して「私も責任があるのです」と謝罪をしてしまうと女性達の共感を得ることができません。多くの妻は、不倫をした夫への怒りで気持ちが一杯で、自分の至らなさを認める余裕などないからです。たとえ、本当に妻にも責任があったとしても、そもそも性の問題というトップシークレットについて夫婦の真実はほかの人が知る必要もないことです。立派な行動なのに批判されるのはなぜ? 乙武さんの妻、仁美さんが夫のために一緒に謝罪し、引き続きの応援を依頼する姿は素晴らしい、という評価があります。おそらく彼女は本当にとても立派な方なのだろうと思います。しかし、彼女が立派に見えれば見えるほど「妻があんなに素晴らしいのに。不倫だけならまだしも妻にも謝罪させるといったさらなる負担をかけるとは」と夫の対応への評価を低めてしまいます。つまり、不倫そのものへの批判ではなく、その後の対応への批判というあらたなクライシスを呼び起こすことになるのです。 これは専門的な言葉を用いると、クライシスコミュニケーションの失敗となります。クライシスコミュニケーションとは、クライシス(危機)発生時のダメージを最小限にするコミュニケーション活動(情報発信、説明責任等)のことで危機管理広報とも言います。ここで失敗すると対応がよくないといった新たな批判が起こるのです。選挙に出る予定があったのであれば、関係する組織の広報担当者がクライシスコミュニケーションの観点からアドバイスできていたらよかったのだろうと思います。しぶしぶ許すのは「ありがち」でよいしぶしぶ許すのは「ありがち」でよいパーソナリティーを務めるFM番組の公開収録後、会場から出てきた石井竜也(右)と妻のマリーザさん=3月17日、東京都内 では、どうしたらよかったのでしょうか。ミュージシャンの石井竜也氏はありがちな対応でうまく収束したといえるでしょう。自分のファンと不倫していたことを報道されたことに対し、16年3月17日、自身の公式サイトで軽率な行動であったと謝罪コメントを公表しました。追いかける報道陣に対しては、妻のマリーザさんと二人で手をつないで登場し、それを撮影させた上で、妻を車に乗せた後、一人で報道陣に一礼し、軽率な行為であったと短くコメント。自分もさっと車に乗って去りました。 なかなかうまい。妻と手をつないでいるということは、妻が許していることを十分表現しています。不倫は妻が許していれば他の人がとやかく言うことではありませんから。マリーザさんはしぶしぶ承知して手をつないでいた可能性はありますが、これはいかにもありがちな対応で共感できるのです。 「許したくはないけど、これ以上報道されたくないし、子どもも傷つくから。手をつなぐくらいは協力するか」と。”怒り”は共感を得やすい 痛快だったのは金子恵美衆議院議員が、夫である宮崎謙介元議員に言い放った「恥をかいてきなさい」。週刊誌で不倫を報道された宮崎議員は、当初は否定したり報道陣から逃げるといった対応をしていましたが、2016年2月12日記者会見を行い、議員辞職を表明しました。会見の前、出産直後の妻は、謝罪する夫に対し「やり直す気があるなら恥をかいてきなさい」と喝を入れたとのこと。この言葉には怒りと許しが同居しており、不倫された妻の心情を見事に表しています。 「許したくはないけれど、生まれてきた子どもの父親でもある。かといって、簡単には許せない。怒りをぶちまけたい。やり直す気があるなら皆の前で恥をかき、責められてきなさい。そうすればもう一度チャンスをあげる」 このような複雑な気持ちは多くの妻たちが共感できる感情ではないでしょうか。マスコミから逃げていた夫、宮崎元議員も、この言葉に押されて妻と子を守るためになすべきことは何かと考え、火だるまになる決意が持てたはずです。妻の怒りと許しの気持ちを表現すると共に、夫の決意さえも促す役割を果たした名セリフであったといえるでしょう。(日本リスクマネジャー&コンサルタント協会 理事/広報コンサルタント 石川慶子)

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    それでも、不倫疑惑タレントを「抹殺」してはいけない。

    に、二人で男性の実家を訪問するなど、深い仲であるという。バンド「ゲスの極み乙女。」の川谷絵音さんとのスキャンダルについての会見を終え退室するベッキーさん=東京都新宿区(山田俊介撮影) その後のベッキーさんらに対するバッシングの嵐は言わずもがなだ。特にCMや出演番組を多数抱えるベッキーさんに対しては、スポンサーが損害賠償請求やCM降板を検討しているなど、多くのネガティブな報道がなされた。先日開いた謝罪会見も、記者からの質問が許可されなかったなどの内容に、逆に批判の声が多く寄せられる結果となっている。看過できない報道について 先に述べたとおり、今回の一連の騒動について特段の興味もなかったのだが、先日のある報道が気になった。以下の内容だ。 タレントのベッキー(31)が、ロックバンド「ゲスの極み乙女。」のボーカル川谷絵音(えのん、27)との不倫疑惑騒動で10日で約4キロ痩せたことが16日、分かった。(中略) 関係者によると、1月4日に川谷の長崎県の実家を訪れ、出てきたところを週刊文春の記者に直撃されてから「軽はずみなことをしてしまった」と食事が喉を通らない状態が続いているという。知人によると、今回の騒動で、出演するCMの一部が差し替えられるなどの影響が出てしまったことで、ベッキーはなかなか寝付けず、食欲がない日々が続いている。 「ベッキー 10日で4キロ減 騒動で食事喉通らず寝付けず 仕事以外は自主謹慎」 スポニチアネックス 1月17日(日)5時32分配信(ヤフーニュース) 寝付けず食欲がない、ひきこもりがちなど、心の病の兆候ともいえる状態にあるという報道だ。ベッキーさんといえば「いつも前向き、元気な清純派」なタレントであり、今までゴシップとも無縁であった。「むしろできすぎ」という声もあったほどだといい、その反動からか、ネット上でも辛辣なコメントが目立つ。無論、仮に不倫という事実があったとすれば、倫理的な行為とは言えず、男性の妻は第一の被害者と言え、スポンサーなどの関係者にも損害を与えたというロジックは成立するだろう。ファンの信頼を傷つけた、という見方もできるのかもしれない(筆者はファンというものはある種の強烈な片思いのようなものであると考えるので、「信頼を傷つけられた」と逆上するのもなんだかなあと思わなくもないが)。 以上の報道やバッシングを傍観しながら、ある事件を思い出した。STAP細胞を巡る笹井教授の自殺事件だ。STAP細胞騒動と本件の類似点についてSTAP細胞騒動と本件の類似点について まだ記憶に新しいSTAP細胞を巡る事件。小保方さんの指導者役として記者発表を仕切っていたのが笹井教授であった。ご存知のようにSTAP細胞論文の信頼性について疑義が生じてからは、それまでの「ノーベル賞級の偉業」という評価が一転し、小保方さんと不適切な関係があったのではないかという趣旨の報道が数多くなされた。 その後、笹井教授は自殺という選択をしてしまう。死後、関係者の証言により、笹井教授と普通のコミュニケーションがとりづらい状況にあったということ等、騒動のさなかに、心の病に急速に蝕まれていったと思われる事実が判明した。死後は、笹井教授の功績を称え、その早すぎる死を悼む報道が主となり、不適切な関係を糾弾する内容がフェードアウトしたのが非常に印象的であった。 無論、本件とSTAP細胞の騒動では内容も質も異なる。ただし、これまで賞賛の対象でありマスコミによって持ち上げられていた対象が、ある瞬間にまさに手のひらを返されるようにどん底に叩き落されるという過程や、当事者とは言えない不特定多数の者から人格攻撃のような辛辣な非難がなされることは酷似しているのではないか。おわりに 無論筆者は、不倫という行為があるとすれば、それを肯定するつもりは毛頭ない。不倫は文化だともいうつもりもないし思ってもいない。従来からのファンでもない、むしろアンチのような人たちや、今回の報道で初めて存在を知ったような人たちがヒステリックに自身の正義感から罵詈雑言を浴びせる姿に、ある種の危険性を感じるから、拙稿にて問いかけるのである。 我々の発する言葉は、時として鋭い矢のように相手の心身に突き刺さることがある。その結果、相手が死を選ぶということもある。我々はそれでも、相手に対し非難を続けるべきだろうか。相手を抹殺しなければならないほど、その相手と自分の関係性は深いのだろうか。どれほどの利害関係にあるのか。 本件が仮に事実とするならば、好感度を商売の手段としているベッキーさんらは、なんらかの責任を負うことになるだろう。暫くの間となるかもしれないが、「芸能界から抹殺」されるのかもしれない。ただしかし、「この世から抹殺」等ということは、仮に当事者だったとしても、現法令下では決して許されるものではないという当たり前のことを、我々は再認識すべきではないのだろうか。 「常に笑顔で、前向きに頑張っていました。勇気をもらいました」等と、死後に功績を称賛したところで、何らの意味もないのである。【参考記事】■「年も明けたし、何か資格を取ろう!」と思ったあなたに伝えたいこと (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)■「未達成感」が育児ストレスを増大させるのでは。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)■元猿岩石芸人から学ぶべきスキルとは (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)■「俺、メンタル的にヤバいかも・・・」と思ったら。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)■山本耕史流アプローチがストーカーとならない理由。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)

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    ショーンKの涙に感動? 謝罪の「うまさ」にこだわる日本人の滑稽さ

    パオロ・マッツァリーノ(日本文化史研究家) じつは謝罪という行為は、なにひとつとして問題を解決していません。それどころか、謝罪は問題の本質をあいまいにする目くらまし効果によって、根本的な解決や改善をかえって遠のかせてしまうのです。 人間は必ずミスをします。そのミスをどうカバーするか、そしてミスの再発防止のためにどんなシステムを構築するか。尽力すべきはそこですよ。なのにちかごろの日本人ときたらどうですか。謝罪という生ぬるい感傷でいかに問題をうまくごまかすか、そればかりに熱心になってしまいました。高木京介投手の野球賭博関与について謝罪するプロ野球巨人の久保博球団社長(右から2人目)ら=3月8日、東京都千代田区(三尾郁恵撮影) 重大な副作用に気づかずに、謝罪という行為に値千金の逆転満塁ホームランのような効果があると妄想し、過大な期待を寄せる日本人は、こどものころから道徳の時間に、失敗したら素直に謝りましょう、と繰り返し刷り込む教育を長年続けてきました。 その努力が結果にコミットしはじめたのか、だいたい西暦2000年ごろから日本では、謝罪会見という儀式がそれまでにはなかったくらいの頻度で執り行われるようになりました。自分とはなんの関係もない芸能人・著名人が開く謝罪会見の模様を見て、その所作の出来不出来で罪の軽重と人間性を判定する悪趣味なゲームは、国民的娯楽としてすっかり日本人のあいだに定着したのです。 謝罪が問題解決の役に立たないという真理を理解できないかたのために、簡単な例でご説明しましょう。 人混みを歩いていて、前の人のかかとをうっかり踏んでしまったら、「すいません」と謝罪しますね。 なんだ、謝罪で問題は解決してるじゃないか? いいえ、それは誤解です。かかとを踏まれたという問題に対して、なんの解決案も再発防止策も提示されてないのですから。 われわれはこのミスを教訓に、いかにすれば他人のかかとを踏まずに歩けるのか、それを研究・練習して事故を未然に防止することで問題解決へ向けて一歩でも前進しなければいけないはず。 しかし謝罪という対応によって、かかとを踏んだのはわざとではないと宣言することで、悪意があったか否かというところに論点がずれてしまうのです。 謝罪は問題の本質をあいまいにし、論点をすり替えてしまいます。非生産的なごまかしでしかないのに、それに釣り合わぬくらいに高い精神的満足感を、多くの人に与えてしまいます。 だからわれわれは死ぬまでに何度も、他人のかかとを踏む単純ミスを繰り返すことになります。 謝罪は問題を解決に導かないばかりか、再発防止の役にも立たないんです。二度と繰り返しません、と涙声でいったところで、具体策を伴わなければ必ず再発します。 こんな愚かな手段なのに、多くの人が謝罪に重きを置いて、謝罪のうまいヘタで有罪無罪を決めようとするさまは滑稽としかいいようがありません。謝罪がうまい人は、問題解決に長けているのではありません。ごまかすのがうまいだけなんです。カン違いしてはいけません。ショーンKさんや乙武さんの奥さんの謝罪がよかった? 最近ですと、ショーンKさんや乙武さんの奥さんの謝罪をよかったとほめてる人がいましたが、そのひとたちは問題の本質を見る目がないし、論理的判断力も曇ってます。 「うまい」謝罪によって、ショーンさんや乙武さんの問題は解決したのですか? なんにも解決してませんよね。うやむやにされただけです。ショーンK氏 学歴や経歴を詐称して仕事や報酬を得るのがなぜいけないのか。それは、詐称がまかり通れば、まっとうな手段で勉強する意味がなくなってしまうから。高い学費払って必死に勉強して学歴を得た人と、なにも努力せずウソついた人が同じ報酬を得られるとしたら、こどもたちはだれも勉強なんかしなくなります。教育システムの信頼性に関するかなり重大な問題です。他にも医者や教師の経歴詐称が以前から問題になってます。経歴確認をどうやるべきか。それをもっと真剣に考えなければならないのに、ショーンさんの涙ながらの謝罪に感動したと盛り上がってる連中のおかげで、その機会は失われました。 乙武さんの浮気グセに関しては、奥さんには悪いんだけど、たぶん一生治らないと思いますよ。 たった1度だったらまだしも、5回も、しかもかなり計画的に同じ手法を繰り返してたんでしょ。だったらそれは過ちではなく、ルーティーンです。金があるかぎりいずれまたやるでしょう。 これは予言や占いではなく、歴史の必然です。これまでの人類の歴史上、浮気がばれて謝罪したにもかかわらず性懲りもなくまた浮気した男は累計何億人にものぼります。 むしろこの件では、障害者が性欲の処理に苦労している切実な問題を検討するチャンスでした。乙武さんは謝罪なんかしなくていいから、政治家になって、性風俗店のバリアフリー化や障害者割引制度導入を提言すべきでした。しかしこれまた謝罪でごまかされ、問題解決が先送りされてしまったのです。 謝罪のうまさにこだわることは、社会にとって無意味どころか有害です。そんなことを続けていたら、問題解決能力を持つ真に有用な人が評価されず、ごまかしのうまいヤツばかりが重用されるよのなかになってしまいます。パオロ・マッツァリーノ イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。著書は『反社会学講座』(ちくま 文庫)、『誰も調べなかった日本文化史』(ちくま文庫)、『13歳か らの反社会 学』(角川文庫)、『つっこみ力』(ちくま新書)、『「昔はよかった」病』(新潮新書)『怒る! 日本 文化論』(技術評論社)、『ザ・世のなか力』(春秋社)、『偽善のすすめ』(河出 書房新社)などがある。 

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    夫の不倫で妻が謝罪 政治家の妻なら主導権握る究極の手法

     年明けのベッキー(32才)とゲスの極み乙女。のボーカル・川谷絵音(27才)から始まった、芸能界不倫劇場。第2、第3のゲス不倫が続くなか、釈明の場に“妻”が出てきている。 女性セブン13号でスクープした石井竜也(56才)の場合、女性セブン発売前夜に自身のHPで不倫を認め、ファンをはじめ妻や母親などへの謝罪コメントを掲載。その翌日には、報道陣の前に妻マリーザさんと手をつないで現れ、夫婦仲の修復をアピールするパフォーマンスをやってのけた。しかもそのすべてを仕切っていたのは妻。そのかいあって、2日ほどで不倫報道は沈静化した。 その迅速な対応ぶりは、坂上忍(48才)も「今の芸能界をよくわかってらっしゃる」と絶賛するほど。あるスポーツ紙記者は話す。「マリーザさんは石井さんの事務所の社長も務めていて、本当に頭の切れる人なんです。でも彼女がなぜこれだけ素早くこのような対応ができたのかというと、彼女自身も不倫・略奪の末に石井さんと再婚しているからでしょうね」 そして乙武洋匡氏(39才)。連名で出された妻の謝罪については、賛否両論を巻き起こしている。乙武洋匡氏は夫婦による謝罪コメントを発表した だがこのような対応は、政治の世界であれば珍しくないのも事実。かつては後藤田正純議員(46才)の妻・水野真紀(46才)や、山本モナ(40才)との不倫が報道された細野豪志議員(44才)の妻も「私も反省するところがある」などと後援者に頭を下げている。 夫婦問題研究家・岡野あつこさんはこう分析する。「政治家の妻としては当たり前の対応です。夫の人気=収入という世界ですから、もし夫が社会的制裁を受け続ければ、家族が路頭に迷ってしまいます。もちろん、腸は煮えくり返っていると思いますよ。でも生活のためには、寛容な妻を演じるしかないんです。“自分も悪かった”という妻たちが多いのですが、これは本当に自分を責めているわけではありません。あくまでも周囲へのパフォーマンス。ですが、これで夫も世間も“なんて懐が深いんだろう、かなわない”となる。これこそ、妻が主導権を握る究極のリベンジなんです」(岡野さん) では一般的には、妻は夫の不倫が発覚した時、どう対応すればいいのか。「もし離婚する気がないのなら、の話ですが、きちんと怒って、それから許す。“今度から気をつけてよ”と口で言うだけではまたやっちゃうでしょうね。男は懲りない生き物ですから、次はもっとうまくやろうと思うはず(苦笑)。 そういう意味では“罰金”というペナルティーは有効です。“あなたのことは許すけど、彼女のことは許せないから、彼女に慰謝料請求するわよ”といえば夫も震え上がるはずです」(岡野さん) もし別れないならば、今後の結婚生活で夫を奴隷のごとくすることも可能であり、すべては妻しだい。関連記事■ 不倫のしやすい現代社会について考えつつ打開策を提唱する本■ 不倫相手に「学歴」求める妻は0.2% 「社会的地位」は1.8%■ 男性の74%は不倫経験アリ、相手の3分の1超が仕事関係■ 41歳人妻 「カッコいい人から誘われたら不倫を絶対断わらない」■ 社内の男転がし35才OL 「結婚したい」でハゲ上司以外去る

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    なんでも謝罪する社会、とにかく謝らせようとする人々

     なんでも謝る人たちが増えている。それが行き着く社会とは。フリーライター・神田憲行氏が考える。* * * SNSの世界では「謝ったら死ぬ病」というのがある。自分の発言の事実関係の間違いを指摘されても、絶対に誤りを認めようとしない人たちのことだ。まるで謝ったら即死するかのように、頑なに間違いを認めようとしない。 逆に「なにがなんでも謝ってもらわないと死ぬ病」の人もいる。たとえば見知らぬ人が「焼肉美味しかった」とつぶやけば、「私は貧しくて焼肉なんて食べられません。あなたのツイートに傷つきました。謝ってください」というような人だ。SNSは自己の承認欲求を満たす装置なので、いずれもフォアグラのように自己を肥大化させた人たちの姿である。 一方でリアル社会では「なにがなんでも謝らせてください病」が進行しているようだ。週刊新潮で複数の女性との不倫を報じられた乙武洋匡氏のホームページでは、乙武氏だけでなく妻の仁美さんの「お詫び」まで掲載した。なんで浮気された妻が謝っているのか、「このような事態を招いたことについては、妻である私にも責任の一端があると感じております」という一文に、頭の上にでっかい「?」マークを点滅させた人は多い。 埼玉県で起きた女子中学生誘拐事件では、容疑者が通っていた千葉大学が徳久剛史学長名で謝罪文を公表した。《このたび,本学工学部の卒業生が,未成年誘拐の容疑で身柄確保されましたことは,誠に遺憾であり,事件の被害者の方・ご家族のみなさまはもとより,世間のみなさまに多大なご迷惑とご心配をおかけしましたことを,心よりお詫び申し上げます。大変に申し訳ございませんでした》《今後,このようなことがないよう学生への指導に努めてまいります》《なお,当該者の処分については,卒業取り消しも含め,今後学内で検討していく予定になっております》 大学が管理責任を負う学内で起きた事件・事故ならいざしらず、学生が学外で起こした犯罪にまで大学は責任があるのだろうか。大学に電話してくるクレーマーのような存在を想定して先回りしたのかも知れないが、「卒業取り消し」はいくらなんでもやり過ぎだ。 乙武氏の奥さんもそうだが、世間を騒がせたので謝るという姿勢が私にはわからない。 簡単に謝罪する社会は、簡単に人に謝罪を求める社会につながる。なんか嫌な世の中だなあと感じていたら、やっぱりこんなことが起きていた。 3月30日の毎日新聞によると、産経新聞社が日本野球機構(NPB)から記事の抗議を受け、施設内の立ち入りを拒否されているというのである。その理由は野球賭博が発覚した巨人の高木京介元投手の処分について、産経新聞社がスポーツ評論家・玉木正之氏の《「涙を浮かべて謝ったから処分が軽くなったのかと疑ってしまうし、そもそもきちんと調べているのかも疑問だ」》 という談話を紹介したところ、NPBは談話が事実に反するとして産経新聞社に抗議書を送り、訂正記事の掲載と書面での謝罪を要求した。産経新聞社がこれを拒否したところ、NPB事務局などの敷地立ち入りを禁止されたという。 この件に関しては産経新聞社は圧倒的に正しい。絶対に謝るべきではない。玉木氏はただ感想を述べたに過ぎず、論評の範囲内だ。NPBが反論したければHPでも掲載すればいいし、そもそも玉木氏が毎日新聞の取材で答えているとおり、玉木氏本人に抗議すれば良い。NPBは「(産経新聞社に対して)取材拒否ではないが、敷地内への立ち入りはご遠慮願いたい」と毎日新聞の取材に回答しているが、まるで子どものような言い分ではないか。 こんなところでハレーションを起こしていて、NPBは本当に賭博問題に真摯に取り組む姿勢があるのか疑ってしまう。本来なら記者クラブ全体で逆にNPBへの取材を拒否するくらいやってほしいが、ま、しないだろうな。 千葉大学にしてもNPBにしても誰かひとり「謝ろう」「謝罪させよう」と言い出した人がいるに違いなく、またその人の声が組織内で大きいことも考えられる。余計に気持ちが悪い。関連記事■ 朝日内々定説登場したSEALDs代表「本当に入りたいのは産経」■ 産経に「たかが電気発言」批判された坂本龍一 産経で連載中■ 朴氏の産経新聞名誉毀損起訴 韓国の法曹界は無罪論が支配的■ 増税批判する産経新聞に財務省有力OB「おたくはひどいな」■ 産経締めだし前原氏 政界の嫌われ者とバラされ激怒しただけ

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    清原和博容疑者逮捕の現場 TBSスクープの裏側

     2月2日の夜、元プロ野球選手でタレントの清原和博容疑者が覚せい剤所持の疑いで現行犯逮捕された。このとき、TBSだけが警察官に伴われて任意同行される場面を撮影していた。もっともセンセーショナルな場面をTBSに独占された同業他社は「ずっとマークしていたのに」と悔しがり、挽回のためにいま必死で独自ネタをとろうと走り回っている。報道陣に取り囲まれた、送検される清原和博容疑者の乗った乗用車(中央)=2月4日、東京・霞が関(寺河内美奈撮影) 「清原が警視庁に覚せい剤でマークされていることは知られていましたから、ずいぶん前から自宅だけでなく、行きつけのサウナ、銀座の店、常連の焼肉屋など姿を現しそうな場所の目星をつけて、折に触れて彼の動向を確認していました。TBSが今回、独占で同行される場面を撮れたのは、偶然なのか、独自ルートで情報をつかんでいたのか。とにかく悔しいの一言につきますよ」(在京テレビ局社会部記者) 清原容疑者の覚せい剤疑惑が初めて大きく報じられたのは、2014年3月13日号の『週刊文春』だった。それ以前から、関係者の間では何かまずい薬に手を出しているのではとの噂が広まっていたが、『週刊文春』で具体的に報じられたことをきっかけに、警視庁が捜査対象として清原容疑者への照準を定めたといわれている。 それ以来、清原容疑者については何度も「もうすぐ逮捕らしい」という話が出ては消え、の繰り返しが続いていた。今回の逮捕には、実は予兆があった。 「雑誌編集部やカメラマンへの情報提供が何件かあったんです。あるときなどは『●月●日●時ごろに▲▲で待て。清原があるものを買う場面を撮影できるぞ』とやけに具体的な内容でした。結局、思うような場面は撮れなかったらしいのですが、逮捕させてクスリを止めさせようと身近な人間に思われるほど清原は重症なのかもしれない、と部内で話題になりました」(中堅出版社編集部員) 薬物リハビリのために入院したこともあると噂された清原容疑者だが、結局、止められなかったようだ。今回の逮捕をきっかけに、周囲が願うようにクスリと縁を切れるか。関連記事■ 妻が出て行き清原和博邸がゴミ屋敷化 銀座ママ宅に入り浸り■ 清原和博が頬こけ激ヤセ 行きつけの韓国料理店が減量に協力■ 薬物疑惑報道の清原和博 妻・亜希さんがやつれていたとの声■ 清原亜希 小学校でのママカースト考えると離婚は正解との説■ 清原亜希 元夫に養育費支払わせるために仰天奥の手使用か

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    清原和博容疑者 消えたブログにあった「不安定な文面」

     元プロ野球選手でタレントの清原和博容疑者が覚醒剤取締法違反(所持)の疑いで2月2日夜に逮捕されて以来、同容疑者が綴っていた公式ブログの内容が話題になっている。現在は削除され閲覧できないが、マスコミは逮捕から削除されるまでのわずかな時間の間に保存し、撮影したブログを引用して、彼の最近の様子や不安定さをにおわせる記述を報じている。「何か事件が起きると、インターネット上に残っている関係者の痕跡を探すのは必須になっています。今回も清原容疑者逮捕の連絡を受けブログの保存を始めたのですが、始めて3か月あまりのブログなのに記事が約200本もあった。すべてを保存する前に、運営会社の措置だと思うのですが、ブログが削除されました。あと少しで全部を保存できたのに、悔しいですね。 2009年に首都圏連続不審死事件で逮捕された木嶋香苗被告のブログも大量に記事がありましたが、あのときは削除されるまでに時間の猶予がありました。最近は、事件関連のブログ削除がすごく早い印象です」(在京テレビ局情報番組AD)試合後、古巣、西武ドームのホームベースに一礼したオリックス・清原和博=2008年9月29日、西武ドーム(撮影・尾崎修二) 清原容疑者は昨年11月25日から「清原和博オフィシャルブログ」を始めている。初めての投稿は「午後3:33」。3並びの時間に合わせて初投稿した理由を「僕のラッキーナンバーは3番です。もちろん5番にも愛着はありますが…。あえて初心に帰りたいと思います。」と記していた。 日常の出来事や喜怒哀楽を素直につづったブログは次第に話題を集め、今年1月24日には『ワイドナショー』(フジテレビ系)に清原容疑者自身がブログの記事内容を説明するため生出演した。そして、”飲食店で怒りを鎮めるため灰皿を割った事件”の顛末について語った。ブログが世間の注目を集めるようになったのはこのときだったろうが、野球ファンは、昨年12月ごろからブログが更新されるたび不安を感じていた。 「書いてあることが、まるで思春期の女の子のような繊細さなんです。たとえば12月5日は夕方と深夜の2回、ブログを更新しています。夕方は、息子の野球の試合のためにグラウンドへ行ったら場所を間違えていたことがわかり、よその野球チームのお母さんがわざわざ電話して本当の場所を探してくれて親切にしてもらった、という内容でした。 それだけならいい話で終わるのですが、深夜に更新したブログは『眠れない』というタイトルで『親切 なんで親を切るて書くんやろう』でした。だから同じ月に、久しぶりに息子とキャッチボールをし、ダルビッシュ有投手がサプライズで来てくれて息子たちが大喜びしたのを『今日からサンタさんはいると信じよう』とか、食事をして息子と別れたら『涙が出た』『今、1人ぼっちで部屋にいる』と書いてあると、抒情的な話ではなく薬物依存症は本当かもしれないと疑っていたんです」(PL学園時代から清原ファンの40代男性) オフィシャルブログの運営会社が提示する規約には「社会倫理や法令に反するもの」を禁止事項として掲げており、それに違反した場合は「送信等をした内容の削除、本サービスの全部又は一部の利用停止、退会処分、その他当社が適切と判断する措置をとることができるものとします」とある。おそらく、今回の清原和博オフィシャルブログが3日午前から閲覧できなくなったのも、その規約にのっとった措置がされたと思われる。 捜査はまだ続行中で、清原容疑者が今後、どのような罪状で起訴され、償うことになるのかはこれから決まる。関連記事■ 清原和博容疑者逮捕の現場 TBSスクープの裏側■ 坂上忍 清原和博氏を前に「入れ墨問題」に言及した真意■ 息子が元チームメートの清原氏と清宮氏 対照的なサポート法■ 慰謝料なし離婚 シングルマザー・清原亜希を支える男性とは■ 清原和博氏 自宅差し押さえでウィークリーマンション転々か

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    清原はこうやって逮捕された! 元警視庁麻薬刑事が明かす「薬物捜査」

    吉川祐二(元警視庁・麻薬拳銃担当刑事、防犯コンサルタント) 2014年春、週刊文春で清原和博容疑者が「薬物治療のために入院していた」というスクープが報じられました。彼は記事が出た後、一時公の場から姿を消したことがありましたが、私は「ああ、これは間違いなくやってるな」と直感しました。 警視庁は文春の報道があったころから、清原容疑者への内偵を進めていたことは間違いありません。しかし、薬物事件とはいっても捜査の流れは普通の事件と何ら変わりがない。今回の件で唯一「違い」があるとすれば、清原容疑者への身辺捜査を進めていることが周囲に漏れてしまうと、すぐにメディアに広まってしまうという捜査側の懸念ではないでしょうか。警察は清原容疑者を24時間体制でマークしていたようですが、行動確認はあくまで逮捕直近の話だと思いますし、捜査員は張り込む場所によってマークの緩急をつけていたと思います。覚せい剤所持で逮捕された元プロ野球選手・清原和博容疑者の自宅マンション前には、一夜明けても報道陣が詰めかけている=2月3日、東京都港区東麻布(寺河内美奈撮影) 薬物捜査は、対象の被疑者が覚醒剤(ブツ)を使用し、体内に残ったまま逮捕することが最も重要です。それは決定的な証拠があれば、被疑者を確実に公判請求、つまり起訴できるので、捜査する側にすれば、最も理想的な状況になるわけです。 それと、捜査員が行動確認する上で最も重要なのは、対象被疑者がいまどんな状態なのかを的確に見極めることです。被疑者は覚せい剤が体内に入っている状態なのか、それとも効果が切れかけているのか、あるいは完全に切れているんじゃないか。もちろん、それを見極めるのは薬物捜査のプロなんですが、これにはどうしても時間がかかります。さらに、その上で対象被疑者がブツを持っているかどうかを狙っているわけです。 昨夏、清原容疑者本人がテレビのバラエティー番組に出演し、薬物使用について否定したことがありました。このとき、警視庁は清原容疑者の逮捕寸前まで捜査を進めていながら、立件が立ち消えになったとも言われています。真偽のほどは定かではありませんが、もし仮に事実だとすれば、清原容疑者側に捜査の動きを察知され、内偵捜査を進めてもブツが付かないという状況が続き、検挙できなかった可能性があります。もしくは、しばらく泳がせておいて、清原容疑者へのマークが緩んだと思い込ませて隙を与えた上で、決定的な物証をつかんで今回の逮捕に至ったという可能性もあります。いずれにしても、被疑者を現行犯で逮捕した今回の捜査の手法は、最も理想的な流れだったと言えるでしょう。 覚醒剤事件の捜査では、捜査員が実際に検挙に踏み込む場合、ドアのチャイムを鳴らしたり、ノックをしたりすることなどはありません。捜査対象の自宅ドアの動きをずっと観察して、ドアノブが回ったところで一気に突入します。清原容疑者の自宅マンションに踏み込んだとき、本人は注射器やストローを手に持っていたそうですが、それはあくまで偶然であって、被疑者が覚醒剤を今まさに使う瞬間というか、そんな絶妙のタイミングを狙って、捜査員が検挙するのはやはり難しいでしょう。球界ではスターでも薬物事件では末端の人間 逮捕された被疑者は、警察の取り調べで使用の有無や入手経路などを徹底的に追及されます。覚醒剤密売組織の中枢への「突き上げ捜査」や「掘り下げ捜査」の端緒をつかむためです。清原容疑者のような末端乱用者が検挙されるケースはよくありますが、密売組織の中枢にたどり着くのは決して簡単なことではありません。警察内部では末端乱用者の摘発のことを「足を取る」と言いますが、足をたくさん取った上で同じ密売人にたどり着く手法は捜査の常道でもあります。 ただ、これまで数多くの有名人が薬物事件で逮捕されていますが、密売人まで特定できたケースはまれです。有名人を相手にするような密売人は口が堅く、人数自体も少ないので決して「音」を立てるようなことはしません。よくマスコミでは、著名な芸能人なんかが薬物事件で逮捕されるたびに「これにより芋づる式にほかの大物芸能人が捕まる」などと報じますが、逮捕された有名人からは密売相手の供述がほとんど取れないわけですから、そこまでたどり着けないというのが捜査の実情なんです。 清原容疑者は球界ではスターだったかもしれませんが、薬物事件では末端の人間にすぎません。一昨年、覚醒剤事件で逮捕されたASKAもそうですが、ここ最近薬物に手を染める有名人は押収量などを考えれば末端乱用者ということになります。有名人に限らず、一般人が絡んだ事件でも、警察は常に密売人の特定、つまり密売組織中枢の壊滅を目指して捜査を続けています。 これは余談ですが、私が携わった有名人の薬物事件に、平成4年ごろにある大物AV女優の覚醒剤事件を摘発したことがありました。当時、捜査員だった私たちが逮捕したとき、その女優は覚醒剤が体内に入った状態だったのを記憶しています。彼女は逮捕されたという事の重大性を理解していない状態で、ショックを受けている様子はあまり伺えなかったですね。ただ、このときはその後の捜査できちんと密売組織を特定することができましたが、何度も繰り返しになりますが、これはやはり特殊なケースだったのかもしれません。 清原容疑者ほどのビッグネームの逮捕をきっかけに、「薬物に手を染めた人間はいずれはこうなる」という薬物犯罪根絶の啓蒙につながることは間違いないでしょう。だからといって、警察の捜査が「有名人だけを狙い撃ちにする」なんてことは絶対にありません。薬物事件にかかわる捜査員の信念はあくまで「薬物根絶」だからです。有名人による薬物事件が起きれば、他にも同じようなケースはないか、当然捜査が行われて、別の有名人が浮上することだってあるかもしれません。 ましてや、所轄の警察署であれば、捜査員が警察本部の評価を意識するようなこともあり得るのかもしれませんが、今回は警視庁の組織犯罪対策5課の「特命班」が捜査しています。彼ら特命班は、芸能人が絡む薬物犯罪や特殊な内偵捜査を専門に行うスペシャリストです。捜査のターゲットに序列をつけるような捜査は絶対にしないと思います。 もし仮に有名人と一般人が同じタイミングで捜査対象になっていたとしても、彼らはきっと同時に動くんじゃないでしょうか。末端の乱用者が5、6人いても、組対5課は200人規模の組織ですから、よっぽどの大掛かりな事件でもない限り、捜査の人手が足りないなんて事態が起きることはないと思います。ただし、「有名人だからいつもより慎重に行おう」という意識はあります。今回のケースでは、特命班が慎重に慎重を重ねた結果、清原容疑者の逮捕にまでこぎつけたんだと思います。 「薬物乱用を絶ち切きろう」という言葉で表すのは簡単かもしれませんが、一度手を染めると抜け出せない人が多いのも実態です。覚醒剤などの薬物事件の再犯率は非常に高く、生半可な覚悟では決して抜け出せません。ただ、私の周りには薬物を止めて更生している人だっています。薬物から抜け出すのは、結局本人の意思次第なんです。 清原容疑者に関して言えば、一昨年の週刊誌報道によって球界だけでなく芸能界からも干され、経済的にも困っていたそうなんですが、今回の事件の背景には、転落した彼の生活環境とも密接なかかわりがあるような気がしてなりません。 彼は自身のブログで寂しい胸の内をつづっていましたが、一昨年秋に離婚し、2人の子供の親権を手放して孤独感にさいなまれ続けたことで、薬物に手を染めるようになったのかもしれません。ASKAも楽曲プロデュースが上手くいかず、追い込まれたことがきっかけでした。元タレントの田代まさしも、仕事がなくなった切迫感から繰り返し薬物に手を出すなど、芸能関係者の場合は特にこんなパターンでのめり込む人が多いですよね。(聞き手、iRONNA編集部・松田穣)よしかわ・ゆうじ 昭和31年、埼玉県出身。法大在学中に警視庁に入庁。少年、防犯、麻薬・拳銃担当刑事を歴任。警部補任官中、池袋署を最後に退職。「オフィスワイズ調査探偵事務所」を設立。薬物問題、少年問題に精通し「防犯コンサルタント」やテレビ・映画の「警察監修」などでメディアで活動中。

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    甘利氏辞任、罠に嵌った政治家の末路

    甘利明経済再生担当相が電撃辞任した。週刊文春が報じた金銭授受疑惑をめぐり、建設会社側から現金100万円を大臣室などで受け取ったことを認めた。いわくの「告発」をきっかけに、閣僚辞任に追い込まれた甘利氏。「罠」に嵌った政治家の末路はこんなにもあっけない。

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    安倍総理だろうが、いつでも嵌められる「悪意」の献金は避けられない

    なかった。 でも、「悪意」のある人が政治家を貶める目的で献金し、それをネタにしてマスコミに売り込んだスキャンダルが発覚すれば、必ず大臣を辞めなければいけないということになると、政治家はすべての献金者の素性を調べてからでないと、政治資金を受け取れないということになる。当たり前の話だが、すべての献金者の身元を調べるなんてことは、国会議員の事務所や政治家秘書の能力をはるかに超えていることで、事実上不可能です。ということは安倍総理であれ、嵌めようと思えばいつでも嵌められるっていうことです。記者会見で閣僚辞任の意向を表明し、涙ぐむ甘利経済再生相=28日夕方、内閣府 甘利さんは政治資金報告書に後日記載したとはいえ、大臣室と事務室でそれぞれ50万円ずつ直接もらっている。秘書が500万円もらって200万円しか申告せず、残りの300万円は全部遊興費に使ったということですから、普通なら収賄罪が成立します。少なくとも、500万円のケースについては政治資金規正法が守られていなかったわけですから、たとえ秘書が単独でやったにせよ、議員の責任が問われるのは当然のことです。こうなると、甘利さんが辞任しない限り、国会の審議も始まりませんし、参院選の日程も組めなくなる。6月1日までに通常国会が終わらなければ、国政運営は大変なことになる。結論は初めから甘利さんを本気で続投させるのか、やめていただくかの二つに一つしかなかった。 ただ、『週刊文春』の記事を読んだ人は誰もがおかしいと感じたと思いますが、なぜ甘利さんの会話が録音され、隠しカメラで撮られていたのか。政治家が何か悪いことをしたのがバレて、正義の『週刊文春』がスクープしたという構図とは全然違うことは誰でも分かる。どうしても、金を渡し文春にネタを売った告発した人物の側にきな臭さを感じる。『週刊文春』にしてみれば、大臣の首一つ取ったわけですから、週刊誌ジャーナリズムとしては「金星」です。ただ、問題なのはそれで今後こういうことが起きないのか? いや、きっとまた起きるでしょうという。与野党を問わず小選挙区の厳しい選挙を勝ち上がらなければならない国会議員にとって、同様な手法で「悪意」のある人がアクセスしてきたら、我が身を守るのは非常に難しいだろうということが、今回すべての政治家が学ぶべき教訓とも言えます。 実を言うと、私も2010年12月から2011年6月まで、宇都隆史参院議員の政策秘書を務めた経験がありますが、国会議員の周りに群がってくるのはすごく「変な人」が多いんです。まともな人や常識のある人は頻繁に事務所に来たりしません。議員会館の中を意味もなくうろうろする「政治ゴロ」と呼ばれる人たちがいる。おいしい話があれば、ガンガン食い込んでいって飯を食っているような連中がいっぱいいて、大体が筋の悪い人たちです。そういう人であっても、小選挙区を抱える国会議員は地元の選挙民だったら「胡散臭いやつだなあ…」と思いながらも、とりあえず大臣室に入れざるを得ないのが実情なんです。辞任劇はまた繰り返される 甘利さんの金銭授受疑惑に限って言えば、甘利さんは当初の対応がちょっとまずかったと思います。「記憶を整理したい」とは、政治家が絶対に言ってはいけない「禁句」だった。甘利さんを擁護するつもりはないけれど、例えば『週刊文春』の記事になぜ甘利氏の写真、録音があったのかということを読者もいま一度冷静に考えるべきだと思います。 今回のような記事内容の『週刊文春』が完売するというのが、われわれが今生きているこの国の世論なんです。それが日本の主権者の意識であり、レベルなんです。政治家は献金に対してもっと慎重であるべきだし、読者ももっと賢くなるべきです。「辞任した甘利大臣は最後は潔かった」などと適当なことを言うのではなく、甘利さんはどこがまずかったのか、刑法の第何条に違反しているのか。もし仮に法律上の問題がないのであれば、なぜ甘利さんは大臣を辞任しなければならなかったのか。それをきちんと説明できない人は、意見を求められても言うべきではない。 いま純粋な「善意」で政治家を応援し、献金をするような日本国民がどれだけいるでしょうか? 正直いないのではないでしょうか。政治家に献金する人たちは何か「下心」があるというのが実際のところではないでしょうか。アメリカだったら、オバマさんを絶対大統領にしたいと思って手弁当で選挙応援をするとか、巨額な献金をするとか、見返りを求めない純粋な支援者がゴマンといるわけです。創価学会や民青は別にして、普通の政治家に投票している普通の国民はただ投票しているだけです。私に言わせれば、あんまり政治を批判する資格がないんじゃないかということです。 今回の一件に関して言えば、問題を起こした甘利さんの公設秘書がまずかったということになるんでしょうが、別の事務所から移籍してきた人物だと聞いています。そもそも秘書という職業には「人格」がない。永田町では名前を呼ばず、「秘書さん」という呼び方をします。政治家本人の代理人であり代行者であり、自衛隊で言うと当直幕僚みたいなものだから、秘書がお金をもらうのは政治家本人がもらったのと同じことで、秘書がまずかったでは通らない。 では問題を起こさないような秘書を雇えるかというとこれが簡単ではない。例えば、一番給料が高い政策担当秘書は、弁護士や医師の国家資格があれば国家試験なしでもなることができますが、実際、医者や弁護士をやめてまで秘書になろうという人がいるでしょうか。逆立ちしても国家試験には受からない学力の人しか秘書になっていないということです。「秘書さん」扱いをし、何の敬意も払われていないわけです。その人たちに高い倫理観を求めるのは身勝手な話ではないですか。政治家は落選したら「ただの人」といいますが、秘書も大変です。 自民党議員の秘書の後任に元民主党議員の秘書がなるといったことが政治の世界では普通にある。だから、国会議員は秘書に相当気を使っていないと優秀な人であれば、どんどん辞めてしまいます。石破茂・元防衛庁長官の政策担当秘書、吉村麻央さんは永田町では珍しく、ちゃんと試験に合格した政策担当秘書で、石破氏が合格者名簿から面接し、制度が始まってすぐ採用されたそうですが、そんな秘書についての「美談」を他の政治家の事務所で聞くことなんて、ほとんどないですよ(笑)。 今回のような閣僚辞任劇は、また繰り返されるでしょう。なかなか難しいですが一旦仕切り直して政治献金に関する新たなルールをつくるのが一番良い方法だと思います。政党助成金は一つの解決策にはなり得たが、より透明性を持たせつつも、「悪意」のある反社会的勢力からお金を受け取ったとしても罪には問われない、社会的な非難も制裁も受けないような規範を作る。そういう風にしていかないと、国会議員を嵌めたやつだけが得をする、本末転倒の結果をもたらすのだということを、これを機会に多くの人が考えるべきです。(聞き手、iRONNA編集部・溝川好男)うしお・まさと 昭和35(1960)年生まれ。早稲田大学法学部卒。旧防衛庁・航空自衛隊に入隊。大学院研修(早大院法学研究科博士前期課程修了)、長官官房などを経て3等空佐で退官。帝京大准教授など歴任。東海大学海洋学部非常勤講師(海洋安全保障論)。『日本人が知らない安全保障学』(中公新書ラクレ)など著書多数。

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    甘利氏を嵌めた週刊文春「禁じ手」スクープに屋山太郎がモノ申す!

    角栄の金脈を暴いたときは、誰もが文句のつけようのない完璧な「調査報道」だった。私はね、どうせ政治家のスキャンダルを暴くんなら、ああいうスカッとした調査報道をしてもらいたいと常々思っている。「天下の文春」には特にそれを期待していたしね。甘利氏の収賄疑惑告発第2弾を報じた週刊文春 2月4日号 それはさておき、今回のスキャンダルは、野党にとってはおいしいネタではあったよね。国会で安倍政権を責める材料が何もないだろうから、本筋のTPP交渉とかで議論もできないだろうし、甘利さんのスキャンダルをことさら追及していた。もうこうなるときりがなくなる。ところが、甘利さんは弁護士に調査を依頼して、あっさり辞任を表明した。ぱっと身を引いちゃったもんだから、野党にしてみれば肩透かしをくらったみたいなもんだね。こうなると、野党の方がひっくり返ってしまう。いくら野党が反発したところで、疑惑の当事者が辞めちゃったものは仕方がないし、国会に呼ぶわけにだっていかない。そう考えると、甘利さんはうまく切り抜けたと思う。 甘利さんはTPP交渉を推し進めたが、もっと大きな視野で見ればTPPによって日本の市場は確実に増える。例えば、1955年に日本はGATT(関税及び貿易に関する一般協定)に加盟したが、その時は市場が広がるといって日本中が歓迎した。これは私の個人的な見解だけど、今回のTPPによって、世界のGDPの4割を占める巨大な経済圏ができるっていうのに「反対」というのは違うと思う。甘利さんはフロマン(米通商代表部代表)に怒鳴られたこともあったが、アベノミクスの柱でもあるし、国のためとの思いで必死になってやっていた。 私が記憶している限り、今回のような「禁じ手」を使ったスキャンダルは過去になかったのではないか。現金を手渡す時も用意周到に記者が録音や撮影をするなんて、こんな露骨なやり方はこれまでなかった。スキャンダルが発覚した当初、自民党内でも「ヤラセではないか?」という疑念の声が上がったのも無理はない。昔はユルかった政治とカネ 昔は政治家の秘書の給料なんて、今とは比べものにならないくらいずっと安かった。給料の半分はチップで補う欧州の給仕みたいなものだった。政治家秘書の給料がびっくりするほど安いもんだから、どうやって生活しているのかと思ったら、政治家の事務所を訪れた陳情客を案内するたびに、彼らはお金をもらってたんだよ。たとえば、秘書が陳情客に対して「先生に会わせてやる」と言って20万円を受け取って、その半分をポケットに入れるとか、そんなことは当たり前だった。秘書を雇う政治家なんかも、彼らに大した給料を支払っていないから、そのことを黙認していた。でも、時代が変わって、それまでの「常識」が金権政治の元凶になっているという批判の方が大きくなったから、政治家のカネと秘書の給与については、とにかく法律で縛って厳しくするという流れになった。 しかし、甘利さんなんかは当選11回の大ベテラン。これは推測なんだけど、古い体質が残っていたんだね、きっと。その典型的な例が一昨年、政治資金規正法違反で元会計責任者の秘書2人が有罪判決を受け、辞任した小渕優子(元経産相)。親父の代からの「金庫番」が勝手にやっていたんだから、小渕さんは本当に何にも知らなかった。 ロッキード事件のころだったら、政治資金をいくら集めようが犯罪要件は成立しなかった。田中角栄(元首相)なんかは、公共工事をばらまいて集めていたんだから。いま、角栄みたいなことを政治家がやったら、翌朝には留置場だよ(笑)。だから、昔とはまったく違う。政治家の倫理観というのは、とにかくカネを絞ることで育つ時代になったんだ。 甘利さんは、安倍さんが最も信頼を寄せる政治家の一人だよね。麻生(太郎副総理兼財務相)さんと菅(義偉官房長官)さんを含めたこの3人は、安倍さんにとって特別な存在だったと思う。そんな甘利さんも、安倍さんの信頼に応えて懸命に支えることで日本を良くしようと考えていた。それしか手はないと。安倍さんを利用するだけ利用して、次の総理の座を狙うとか、そんな野心すらなかったはずだ。私欲がない人で、頭が真っ白になるまで安倍さんを支えた。彼にとってのそれは、本当にお国のためなんだな。だからこそ、安倍さんは、甘利さんや菅さんたちには心を許していた。この2人は邪心なく、日本を良くしたいという一心で政治を動かしているよね。 甘利さんの後任には、石原伸晃元幹事長が選ばれたけど、その理由は今の閣僚の顔触れをみれば分かる。現職閣僚の中に石原派の議員がいないよね。安倍さんにしても、いつまでも彼を干していてはまずいと思ったんじゃないかな。彼の政治家としての手腕や人物を評価しているというより、派閥の力学というか、バランスを重視しての判断だったと思う。そういう余裕が、今の安倍政権にはある。 では、甘利さんはどうなるのか。もし復帰のタイミングがあるとすれば、安倍さんが首相をやっている間しかないでしょう。もしかしたら、1年ぐらい冷や飯を食って、それから重要ポストに復帰するかもしれない。いま、最も考えられるポストとしては、自民党政調会長とかなんだろうけど、これだけは確実に言えるのは、今回のスキャンダルで野党がいくらあがこうとも、今夏の参院選にはほとんど影響しないと思いますよ。(聞き手、iRONNA編集部・川畑希望)ややま・たろう 政治評論家。昭和7年、福岡県生まれ。東北大卒。時事通信社入社後、政治部記者、ローマ特派員、官邸クラブキャップなどを歴任。56年から第2次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。平成13年に正論大賞を受賞。近著に『安倍晋三興国論』(海竜社)など。

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    甘利氏は「絵に描いたようなあっせん利得」をどう説明するのか

    郷原信郎(弁護士、関西大学社会安全学部客員教授) 本日(1月21日)発売の週刊文春が、甘利明TPP担当大臣や秘書がUR(独立行政法人都市再生機構)の道路用地買収に関して「口利き」を行い、業者から多額の金品を受領していたことを報じている。この記事には、その行為について、あっせん利得処罰法違反や政治資金規正法違反が成立する可能性がある旨の私のコメントも掲載されている。報じられている疑惑の中身は以下のようなものだ。甘利TPP担当相の収賄疑惑を報じた「週刊文春」の記事(古厩正樹撮影) 甘利大臣の公設第一秘書が、URの道路用地買収をめぐるトラブルに関して、UR側に補償金を要求していた業者から依頼を受け、UR側との交渉に介入し、URに2億2000万円の補償金を支払わせ、2013年8月に、その謝礼として500万円を受け取った。 それに加え、甘利大臣自身も、業者と直接会って、URと業者との産業廃棄物処理に関するトラブルについて説明を受けて補償交渉に関する対応を依頼され、同年11月に大臣室、2014年2月には神奈川県内の事務所で、現金50万円ずつ計100万円を直接受け取った。 その後、別の秘書(現・政策秘書)が環境省の課長と面談し、URの担当者と面談するなどして、産廃処理をめぐるトラブルに介入。その秘書は業者から多額の接待を受け、URの監督官庁である国交省の局長への「口利き」の経費などと称して合計6百万円以上を受領するなどしていた。 公設第一秘書が受け取った500万円のうち400万円については甘利氏が代表となっている「自民党神奈川県第13選挙区支部」の領収書を渡されたが、同支部の政治資金収支報告書には、寄付100万円の記載しかない。また、甘利大臣が受け取った100万円のうち、最初の50万円は、政治資金収支報告書に記載がないという。 日曜日(1月17日)に、週刊文春の記者からの電話で、甘利大臣と秘書に関する疑惑の内容を聞かされ、私は耳を疑った。いまどき、そんな“絵に描いたような”国会議員や秘書による「口利き・あっせん利得」というのが行われているなどとは、にわかに信じ難かったからだ。しかも、甘利大臣はTPP担当大臣、最も有力な現職閣僚の一人だ。それが、大臣在任中の2013年から14年に、大臣自身や秘書による「口利き」に関して、多額の金品のやり取りが行われたというのだ。 「あっせん利得処罰法」は、国会議員等の政治家が、行政機関等に「口利き」をして金品を受け取る行為を処罰する法律だ。政治家が「口利き」をし、その見返りとして「報酬」を受け取るという行為は、政治家と行政との腐敗の象徴としてかねてから批判されてきたが、2000年に中尾元建設大臣が、公共工事発注の口利きの見返りに建設会社から賄賂を受領して受託収賄事件で逮捕されたのを契機に、改めて国民から批判が高まったことを受け、2002年に法律が制定された。その後も、「政治とカネ」をめぐる問題が表面化する度に、国民の政治不信が高まり、政治家のモラルが問われ、政治資金の透明化のため政治資金規正法の強化・改正も行われてきた。このような流れの中、2003年に施行された「あっせん利得処罰法」が実際に適用されて摘発された事例としては、市町村議会議員が公共工事の発注に関して「口利き」をして利益供与を受けた事件が数件ある程度で、国会議員や秘書が関わる事件が摘発された例はない。 国会議員レベルの政治家に関して言えば、政治資金の透明化、政治活動の浄化が進み、「口利き」による金品の受領などというのは「過去の遺物」になりつつあると、少なくとも私は認識していたし、多くの国民の認識もそれに近かったはずだ。あっせん利得処罰法違反、政治資金規正法違反 成否のポイント ところが、週刊文春の記事によると、まさに国論を二分したTPP交渉の最前線に立って活躍する政治家の甘利大臣の秘書が、古典的とも言える「口利き」を平然と行って、業者から金をせしめていた。しかも、大臣自身も関わったり、現金を受領したりしていたというのだ。 私は、コメントを求めてきた記者に、そのような疑惑を裏付ける証拠があるのかと聞いた。記者によれば、甘利大臣側と業者とのやり取りや「口利き」の経過に関して、録音等の確かな証拠もあるとのことだ。 この問題は、久々に「政治とカネ」に関する重大な疑惑として、国会等で追及されることは必至だろうが、何と言っても焦点となるのは、現職大臣やその秘書について、検察当局による犯罪捜査がどのように行われ、どのような刑事処罰に発展するのか、特に注目されるのは、本件について、過去に例がない「あっせん利得処罰法」の国会議員やその秘書に対する適用が行われるか否かであろう。 週刊文春の記事を前提に、甘利大臣や秘書に関するあっせん利得処罰法違反、政治資金規正法違反の成否に関してポイントとなる点を述べておくこととしよう。 あっせん利得処罰法1条1項は、「衆議院議員、参議院議員又は地方公共団体の議会の議員若しくは長が、国若しくは地方公共団体が締結する売買、貸借、請負その他の契約又は特定の者に対する行政庁の処分に関し、請託を受けて、その権限に基づく影響力を行使して公務員にその職務上の行為をさせるように、又はさせないようにあっせんをすること又はしたことにつき、その報酬として財産上の利益を収受したときは、3年以下の懲役に処する」と定めており、2項で、「国又は地方公共団体が資本金の二分の一以上を出資している法人」の「役員又は職員」に対しての行為も同様としている。また、同法2条は、「衆議院議員又は参議院議員の秘書」が同様の行為をおこなったときは2年以下の懲役に処するとしている。 URは国交省が100%出資している独立行政法人であり同法2項の「法人」に該当すること、甘利大臣は衆議院議員であり、その秘書が、2項の「衆議院議員の秘書」に該当することは明らかだ。 問題は、①秘書のURの職員に対する行為が、法人の「契約」に関するものと言えるか、②「請託」があったと言えるか、③「権限に基づく影響力を行使」したと言えるか、である。 ①については、秘書が関わった問題は、URの道路用地買収をめぐる業者との間の補償交渉であり、公共工事などとは違い、契約の内容が具体化しているものではない。しかし、補償交渉の結果、URと業者との間で合意が成立すれば、それは契約であり、その合意が業者にとって有利なものとなるよう、URの役職員に対して働きかけが行われたのであれば、「契約」に関するものと言うことができるであろう。 ②の「請託」とは「一定の行為を行うよう又は行わないよう依頼すること」である。請託事項は、その案件の具体的事情に照らして、ある程度の特定性・具体性を要するものでなければならない。「請託を受け」とは、単に依頼されたという受身の立場では足らず、その職務に関する事項につき依頼を受け、これを承諾したことが必要である。記事によれば、甘利大臣の秘書は、実際にURの職員と面談したりしているのであるから、URの役職員に補償に関する「職務上の行為」を行わせるよう働きかけるという「具体的行為」を、業者が依頼したことは明らかであろう。 ③についても、ここでの「権限に基づく影響力の行使」というのは、「大臣としての権限」ではなく、「国会議員の権限」に基づくものでなければならないが、政権与党の有力閣僚である甘利大臣は、国会議員としても、予算や法案の審議や評決に関して大きな影響力を持っていることは明らかであり、その秘書も、それを十分に認識した上で活動しているはずなので、UR側への働きかけが「権限に基づく影響力の行使」であることは否定できないであろう。 甘利大臣についても、「権限に基づく影響力」を行使してUR側に一定の職務行為を行うことの「請託」を受け、現金をその報酬として受領したのであれば、あっせん利得が成立することになる。「請託」について緩やかな解釈を取る検察 記事では、甘利大臣は、業者とURとのトラブルに関して、資料に基づいて説明を受け、同席した秘書に、「これ(資料)を、東京の河野君(現・大臣秘書官の河野一郎氏)に預けなさい」と指示したとされているが、大臣自身がその後、実際に業者からの依頼に基づく行為、例えば、自ら行政庁やURに働きかけたり、秘書へ指示するなどの行為を行ったのか否かは明らかではない。 また、「請託」というのは、依頼する行為が、何らかの具体性を持ったものであることが必要であり、漠然としたものでは「請託」とは言えないというのが一般的な理解であろうが、記事を前提にしても、業者側が大臣に具体的にどのような行為を依頼したのかは明らかではない。 しかし、検察は、「請託」の具体性についてはかなり緩やかに解している。 現在名古屋高裁に控訴中の美濃加茂市長事件では、一審で賄賂の授受が否定され無罪判決が言い渡されているが、この事件で、検察は、藤井美濃加茂市長が市議時代に業者から浄水プラントの導入に関して依頼を受けたとして、受託収賄、事前収賄と併せて、「あっせん利得処罰法」違反の事実も起訴している。 この事件での検察の主張は、浄水プラントの導入に関して、具体的に市議会議員としてどのような職務を依頼したのかが特定されていなくても「請託」に当たるというものである。 もちろん、同事件で市長の主任弁護人を務める私は、そのような「請託」の要件の拡張解釈は不当だと考えており、同事件の公判でも「請託」を認める余地がないことは強く主張しているが、一審では弁護側の主張どおり「賄賂の授受」そのものが否定されているので、「請託」の有無は裁判所の判断の対象にはなっていない。しかし、検察は、「請託」について、そのような緩やかな解釈で起訴し、無罪判決に対して控訴まで行って有罪判決を求めているのである。これからすると、今回の甘利大臣の事件について、「請託」が認められないことを理由に消極判断をすることはあり得ないであろう。参院決算委で、民主党の江崎孝氏の質問に答える甘利経済再生相               =1月21日(斎藤良雄撮影) また、大臣自身についてのあっせん利得罪は成立せず、秘書についてのみ同罪が成立する場合であっても、秘書と大臣との共謀による犯罪の成立が問題になり得る。過去に、「政治とカネ」の問題について、政治家が秘書に責任を押し付けているとの批判が繰り返され、秘書について、政治的責任のみならず、秘書との共謀による刑事責任の追及が遡上に上った例は枚挙にいとまがない(最近の例では、小沢一郎氏の秘書が政治資金規正法違反に問われた例で、小沢氏自身も共謀による刑事責任が問題とされた。)が、実際には共謀の立証は困難であり、刑事責任が問われた例はほとんどない。本件でも、秘書が業者から受け取った金について、甘利大臣が認識していたことの証拠が得られるかどうかが鍵となるだろう。 今日の参議院決算委で、この問題について質問された甘利大臣は、「会社の社長一行が大臣室を表敬訪問されたことは事実だ。一行が来られて正確に何をされたのか、記憶があいまいなところがある。きちんと整理をして説明したい」と答弁した。 まさに、唖然とするような答弁である。50万円もの現金を受け取ったか否か記憶が曖昧だ、ということは、その程度の現金は、いちいち覚えていないぐらい受け取っているということであろうか。 現職有力閣僚をめぐる「絵に描いたようなあっせん利得」の疑惑は、一層深まっている。(ブログ「郷原信郎が斬る」より2016年1月21日分より転載)

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    政治家の金銭スキャンダル 「裏切り者」はいったい誰か

    ていたのかもしれません。病を患っていなければ、甘利氏も注意深く秘書を監視できていたでしょうし、こんなスキャンダルに発展することはなかったのではないでしょうか。 政治家が金銭をめぐるスキャンダルに巻き込まれるケースはこれまでもよくありましたが、その原因の一端として特に多いのが秘書に裏切られるパターンです。政治家は一人で悪さをすることは少なく、取り巻きの秘書がまったく知らないなんてことはまず考えられません。つまり、秘書に何か秘密をベラベラしゃべられたらアウトの政治家なんて、今さら言うまでもないですが、ほとんどがそうだと思います。かなりの大物政治家だって、スキャンダルが表面化したケースは、秘書だけじゃなく家族にまで裏切られるというパターンが多いですよね。 例えば、ロッキード事件。田中角栄元首相の榎本敏夫秘書がその典型ですよね。世間がロッキード一色で、いよいよ田中氏が逮捕されるという直前だったと記憶していますが、通産省(現・経済産業省)に入省して間もない私に「田中角栄が危ないぞ。でも、別の実力者は大丈夫だろう」と耳打ちしてきた人がいました。理由を聞くと、当時榎本秘書と児玉誉士夫の秘書だった太刀川恒夫氏が逮捕され、検察の事情聴取を受けていたんですが、その人は「太刀川はアウトローで自供したら殺されるから口を割らない。でも榎本はカタギだから自供しても殺されない」と言ったんです。カタギは身柄を拘束されて取り調べを受けると弱いですから、榎本秘書は捜査段階で現金授受をあっさり認めてしまったわけです。検察の取り調べはものすごく厳しいでしょうから、普段言わないこともベラベラしゃべっちゃったわけです。 先ほどもお話したように秘書だけではなく、家族に裏切られて失脚する場合もあります。みなさんも記憶に新しいと思いますが、小沢一郎氏の政治生命をほぼ終わらせたのは、小沢氏の元妻、和子さんですよね。小沢氏の支援者に向けて書いたとされる「離縁状」でさえ週刊誌に公開されましたが、痴情のもつれがこじれてスキャンダルが明るみになるケースなんて珍しくはありません。結局はお金に困っていたのか 男女のもつれということで言えば、政治家が自分の愛人に裏切られるというパターンも実に多いですよね。宇野宗佑元首相なんか、自分の女性スキャンダルが表に出たのは宇野さん自身がケチだったからです(笑)。宇野さんはとても健全な金銭感覚の持ち主で、愛人への口止め料なんか無駄な金だと考えて払うのをしぶったんです。「あいつなんて放っとけばいい!」と言わんばかりに、愛人への手切れ金をケチったことが仇になったんです。 海外に目を向けると、内部告発サイト「ウィキリークス」のように、これまでの技術では考えられなかった盗聴や情報流出が起きて政治家のスキャンダルが発覚したというケースもありました。中国なんかでは、政治家に女をあてがう「ハニートラップ」なんか当たり前のように起こり得ます。 そういえば、かの国で最近起こった政治家をめぐるスキャンダルといえば「薄熙来事件」がありました。ご存じの方も多いでしょうが、自分の腹心で公安のトップだった王立軍が抹殺されるのを恐れて、こともあろうに成都の米総領事館に逃げ込んだことが失脚の糸口になりましたよね。こうなると、江沢民と親しい関係で権勢を誇っていた薄熙来でも、コントロールが効かなくなりますから、もう手の打ちようがなくなります。 どこの国でもそうですが、政治家というのは建前では清廉潔白を求められる職業です。わが国でも、政治家が反社会的組織の人物とのツーショット写真が週刊誌等に掲載され、釈明に追われるというスキャンダルがよくあります。でも、常識で考えれば、政治家が「一緒に写真を撮ってください」と支援者かもしれない人物に言われて、それを断るなんてことはなかなか出来ませんよね。こんなケースではむしろ、ことさら問題にして取り上げるマスコミや野党の側だって悪い。暴力団関係者と知りながら、誕生パーティーに出席するのとはワケが違う。もちろん、一瞬話題にはなっても、その後大きな問題にはならずに収まっていますよね。 政治家に限らずどんな職業であれ、未熟な人間であれば罠にひっかかりやすいのは当然です。要するに個々人の「脇が甘い」わけです。ただ、今回の甘利氏のように、海千山千の政治家が引っかかるのは、それなりの「理由」があると思いますよ。それに報酬や供与が賄賂になるのかどうか、基準がはっきりしていればいいんですけど、どれもこれも曖昧なもんだから、「お前、カネを受け取っただろ」と脅される隙がどうしても生じてしまう。 私の官僚時代で言えば、贈答品などでも月給の20分の1までならOKなどという暗黙の「目安」がありましたね。先輩からは「ジョニ赤はセーフ、ジョニ黒はアウト」などと教えられた記憶があります。当時の私の初任給なんて約10万円程度でしたから、ウイスキーの昔の価格でいえば、5千円のジョニ赤なら問題ないが、20分の1を超える1万円のジョニ黒ならダメとなるわけです。ある銀行では「いただいたモノの半返しならセーフ」というルールなんかあったそうです。 アメリカなんかは、日本よりもっとはっきりしていますから、食事も贈り物も上限がきっちり決まっている。ワシントンでは「オフィサーズランチ」というのがあって、高級レストランの1万円のメニューでも高官だけが割安になる制度なんてのもありました。 まあ話はいろいろ横道になりましたが、今回の疑惑で考えれば、甘利氏の疑惑を告発した人物は、決定的な証拠をつかんだ上で甘利事務所側を強請ろうという意図なんかがあったのかは知りませんけど、結局はお金に困っていたんじゃないのかと疑わしい部分もありますよね。いずれにせよ、甘利氏はこの人物の告発がもとで失脚したことは間違いないですが、甘利氏が辞任したところでTPP交渉に影響が出て、御破算になるわけではありません。いま、甘利氏を辞任に追い込んで得をする利害関係者なんか見当たらないし、告発した人物の背後に誰かいるとも考えづらい。このスキャンダルは、甘利氏と告発した人物をめぐる利害のもつれが引き起こしたと考えるのが一番自然なんじゃないでしょうか。(聞き手、iRONNA編集部・松田穣)やわた・かずお 1951年、滋賀県生まれ。東大法学部卒業後、通産省入省。フランス国立行政学院(ENA)留学。大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任し、退官。作家、評論家として新聞やテレビで活躍。徳島文理大学教授。著書に『誤解だらけの韓国史の真実』(イースト新書)、『歴史ドラマが100倍おもしろくなる 江戸300藩 読む辞典』(講談社+α文庫)など多数。

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    甘利氏だけじゃない TPPにも逆風が吹き荒れている

    岡本裕明(Blue Tree Management 株式会社 代表取締役) TPPの署名式が2月4日にニュージーランドで執り行われることになりました。渦中の甘利大臣がニュージーランド行きの切符を手にすることが出来るのかも含め、注目に値するイベントとなりそうです。 この署名式はTPPの12の協定参加国が集まり、協議、合意した内容について署名するものです。大きなベンチマークとなります。プロセスとしてはこの署名された合意文書を各国が自国に持ち帰り、内容を検討し、それぞれの国が批准することになります。日本は政権が安定し、可決批准するハードルが最も低い国の一つとされ、日本のリーダーシップがまずはポイントとなります。 通常、各国の議員はTPPの内容を精査するため、数か月程度の時間をあてがわれ、その後、審議に入ります。この審議が曲者で必ず反対派は存在し、関連産業、業界ではロビー活動も活発に行われています。よって様々な議論が想定されるわけですが、この署名された内容は修正が出来ず、take or leave it(無条件で飲むか拒否するか)しか選択肢がありません。 批准は書名から2年以内を目標としていますから上手くいっても発効そのものは2018年ごろになる見込みです。 さて、その中で一番注目されるのはアメリカの動きでしょう。オバマ大統領は氏がまだ大統領でいるうちに批准させたいと考えているようですが実態は厳しいように見えます。これは民主、共和ともに反対派が存在し、クリントン候補も「現時点では賛成しがたい」と発言している意味を慎重に考える必要があります。オバマ氏の描く批准に対して議会を相当紛糾させることで時間稼ぎをし、オバマ大統領のレガシーにはさせない勢力が勝るようです。TPP交渉が閣僚会合で大筋合意し、共同記者会見に出席した甘利明TPP担当相(左)とフロマン米通商代表部(USTR)代表=2015年10月6日、米アトランタ(共同) では、クリントン氏が「現時点では」と述べる理由の裏は何でしょうか?多分、選挙を考慮しているものと思われます。今、TPP賛成の旗を振ることは大統領候補としては不利な立場に追いやられるとみていないでしょうか?とすれば、それは議会の思った以上に強い抵抗勢力とも受け止められ、新大統領が決まった際にちゃぶ台返しがないとは言い切れない気がします。それぐらい今のアメリカは一枚岩ではなく、微妙なバランスを維持している感があります。 アメリカが批准しなければどうなるのか、ですが、結論から言うとTPPは流れます。 TPPは発効の前提として参加国全てが批准するのが前提です。原則一カ国も脱落が許されません。仮に2年以内に全ての国で批准できなければ「国内総生産(GDP)で全体の85%以上を占める6カ国以上の批准」が条件となっています。このGDP 85%を満たすにはアメリカ(60%)と日本(17%)が批准しないと絶対にパスできない為、アメリカの不参加はTPPの不成立を意味するのです。 以前にも申し上げました通りTPPの関門は貿易、関税だけではなく人の往来を緩和するところもポイントです。ところがテロが頻繁に起きている現代に於いて国家はその門戸をなるべく細目にする傾向が強まります。欧州を自由に行き来できるシェンゲン協定の行方が注目されています。テロリストが自国に自由に入り込めるからで協定参加国の中で国境管理が甘いところがあればそこからなだれ込む図式が懸念されているのです。 とすれば、TPPが内包する人の往来の緩和はシェンゲン協定とは違うものの当然、各国としては言葉通りに受け止められない事象となるでしょう。ところが冒頭に申し上げたようにこのTPPの草案は修正不可であります。よってそれを受け入れたくない派閥は批准遅延策に出るしか対抗手段がなく、結果として時間切れすら想定できることになります。 先日駐日カナダ大使の講演においてTPPについてちらっと触れていたのですが、正直、全く前向きな感じがしませんでした。「我々はアメリカにフォローする」というスタンスだったのですが、これは裏を返せばカナダとして国内でTPPを批准するにはアメリカというドライバーが必要で、さもなければ国内の反対派を押し切れないと聞こえます。 マスコミはアメリカの批准の可能性は5分5分(つまりTPPの成立の確率も5割という意です)と見ていますが、私はもう少し分が悪い気がします。あとは今後2年間の経済状況、テロ問題、中国の動きが展開のカギを握るかと思います。 甘利大臣はそこまで持つか分かりません。今回の報道が週刊文春に書かれている通りだとし、賄賂を渡した証拠があるとすれば大臣職を全うするのは厳しくなります。それは国内批准の責任者すら全うできなくなる意でもあります。 TPPには相当の逆風が吹き荒れているという感がいたします。(ブログ『外から見る日本、見られる日本人』より2016年1月25日分を転載)

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    甘利氏をめぐる事件で真価を問われる検察

    郷原信郎(弁護士、関西大学社会安全学部客員教授) 昨日のブログ【甘利大臣、「絵に描いたようなあっせん利得」をどう説明するのか】で、週刊文春で報じられた甘利明大臣や秘書が業者からUR(都市再生機構)の道路用地買収の補償問題で「口利き」を依頼され、金品を受け取った疑惑について、記事の内容を前提に、あっせん利得処罰法違反の成否に関する解説を行った。 結論としては、①「契約」に関するものと言えるか、②「請託」があったと言えるか、③「権限に基づく影響力の行使」があったと言えるか、についての弁解・主張は出て来るであろうが、速やかに捜査に着手し、事実と証拠を積み上げていけば、少なくとも、秘書についてのあっせん利得を起訴に持ち込める可能性は十分にある。 また、甘利大臣本人についても、ご本人が、国会答弁で、現金を受け取ったか否か「記憶が曖昧」と述べているぐらいなので、甘利事務所と大臣室で現金を渡した状況を明確に述べている業者側の供述と比較して、業者側供述が信用できることは誰の目にも明らかである。 甘利大臣自身が「権限に基づく影響力」を行使してUR側に一定の職務行為を行うことの「請託」を受けたと言えるか否かについても、文春記事に出て来る、甘利大臣が業者から現金を受け取った際に、資料に基づいて説明を受け、同席した秘書に、「これ(資料)を、東京の河野君(現・大臣秘書官の河野一郎氏)に預けなさい」と指示したとの業者側の話について、河野という大臣秘書官が、資料を受け取ったか否か、大臣との間でこの件についてどのようなやり取りがあったのかなどについて、供述を固めていけば、立証の目途を立てることができる可能性がある。 それに加え、公設第一秘書が受け取った500万円のうち400万円については甘利氏が代表となっている「自民党神奈川県第13選挙区支部」の領収書を渡されたが、同支部の政治資金収支報告書には、寄付100万円の記載しかない。また、甘利大臣が受け取った100万円のうち、最初の50万円は、政治資金収支報告書に記載がないとされており、これらについて政治資金規正法違反(政治資金収支報告書の虚偽記入罪)が成立する可能性が高い。家宅捜索に入る東京地検特捜部の係官=2011年6月、東京都千代田区(岡嶋大城撮影)裏金献金摘発へのハードル このような、政治資金収支報告書に記載されない「裏献金」の問題を政治資金規正法違反の犯罪で摘発する際にハードルとなるのが、「政治資金の帰属」の問題だ。 政治資金規正法は、政党や政治団体の会計責任者に政治資金収支報告書の作成・提出を義務づけている。国会議員であれば、個人の政治資金管理団体のほかに、代表を務める政党支部があり、そのほかにも後援会など複数の政治団体があるのが一般的だ。このような政治家が、企業側から直接政治献金を受け取ったのに、領収書も渡さず、政治資金収支報告書にも全く記載しなかったとすれば、政治資金の透明化に露骨に反する最も悪質な行為だが、このような「裏献金」の事実について政治資金規正法違反で刑事責任を問うことは容易ではない。 政治資金規正法違反の事実として考えられるのは、「企業等は政党または資金管理団体以外に対して寄附をしてはならない」との規定に違反して「政治家個人宛の寄附」を受領した事実か、受領した寄附を収支報告書に記載しなかったという虚偽記載の事実である。ところが、その「裏献金」が、政治家個人に宛てたものか、資金管理団体、政党支部などの団体に宛てたものかがはっきりしないと、どちらの規定に違反するのかが特定できない。裏金は、最初から寄附を「表」に出すことを考えていないのだから、政治家個人宛か、どの団体宛かなどということは考えないでやり取りするのが普通であり、結局、「政治資金の宛先」が特定できないために、政治資金規正法違反の事実が構成できず刑事責任が問えないということになる。 議員の職務権限との関連性が認められないために賄賂にはならない「贈収賄崩れ」のような裏金のやり取りは、政治資金の透明化という法の趣旨から言うと最も悪質な行為だが、このような「政治資金の帰属」の問題があい路となって立件できない結果に終わる場合が多かった。裏金献金摘発が容易な例外的ケース裏金献金摘発が容易な例外的ケース しかし、例外的に、この「刑事立件の壁」を超えられるケースがある。それは、政治団体名等で領収書が交付され政治資金収支報告に記載される「表の献金」と「裏の献金」の両方がある場合だ。 その典型例が、2002年から03年にかけて、私が、長崎地検次席検事として捜査を指揮した「自民党長崎県連事件」だ(拙著【検察の正義】(ちくま新書)の「最終章 長崎の奇跡」で、地方の中小地検の全庁一丸となった独自捜査で、政権政党の地方組織の公共工事受注業者からの集金構造に迫ったこの事件について述べている。)。 この事件は、自民党長崎県連が、公共工事の受注額に応じて政治献金をするようゼネコンに要求し、多額の寄附が行われていた事件だ。政党への政治献金に対して公職選挙法を初めて適用したことで全国的にも注目を集めたが、長崎県知事選挙に関して公共工事受注業者から寄附を受けたという公選法違反に加えて、多額の「裏献金」を政治資金収支報告書の虚偽記入罪で立件・起訴した。 それが可能だったのは、長崎県連の幹事長と事務局長が、正規に領収書を発行して収支報告書にも記載して処理する「表の献金」を受ける一方で、同じような形態でゼネコン側から受け取った献金の一部については、領収書を渡さず、収支報告書にも記載しないで処理し、県連の「裏金」に回していたからだ。「自民党長崎県連宛の寄附」として収支報告書に記載すべき寄附であるのに、その記載をしなかったことの立証が容易だった。 今回の甘利大臣をめぐる政治資金の問題も、長崎県連事件と同様に、収支報告書に記載された「表の寄附」と、記載しない「裏献金」の両方がある。例外的に、政治資金規正法違反で立件可能なケースだと言えよう。 文春の記事を前提にすれば、甘利事務所の政治資金の処理はあまりに杜撰であり、しかも、大臣の現金授受についての記憶は「曖昧」であり、このような政治家の事務所に捜索に入れば、不正な金の流れがほかにも発見される可能性も高い。 甘利大臣をめぐる疑惑は、事件の中身としては、検察が大物政治家をターゲットとして捜査に着手することが十分に可能だと言えよう。政界捜査で繰り返されてきた法務省からの圧力 もっとも、この種の政治家に関連する事件の場合、しばしば検察と法務省との関係が問題になる。 人事・予算を内閣に握られている法務省の側には、安倍内閣の有力閣僚の事件を摘発することに対しては、相当な抵抗があるであろう。 とりわけ、現在の法務省にとっては、「日本版司法取引」の導入や盗聴の範囲の拡大などを盛り込んだ刑事訴訟法改正案が、昨年の通常国会で成立せず、参議院で継続審議となっており、今国会での議案の取扱いは、安倍政権側の判断に委ねられている。法務省側からは、甘利大臣の事件の検察の捜査を抑え込むことと引き換えに、刑訴法改正案の審議を進めることを求めるという「闇取引」を持ち掛けるというのも考えられないことではない。 安倍政権が絶大な政治権力を誇る状況下で、法務省サイドの圧力を跳ね返して、甘利大臣自身の事件をも視野に入れた捜査を積極的に進めていくことができるか、検察の真価が問われることになる。 前記の自民党長崎県連事件の捜査でも、ちょうど小泉政権の絶頂期だったこともあり、政権与党に打撃を与えること避けようとする法務省サイドから強烈な圧力がかかった。当時、長崎地検では、議長を逮捕して、自民党有力政治家の疑惑に迫ろうとしており、県連の裏金に関して、中央の有力政治家に絡む事件のネタも多数あったが、捜査が政権政党に大きな打撃を与えることを懸念した法務省や法務省系の最高検幹部の猛烈な反対に行く手を阻まれ、在宅捜査に切り替えて略式起訴に持ち込み、捜査を終結させざるを得なかった。検察の正義を巡る環境を変えた検察審査会の起訴議決検察の正義を巡る環境を変えた検察審査会の起訴議決 過去にも、政治に絡む事件で検察と法務省との確執が繰り返されてきた。しかし、今では、そのような法務省側の消極意見があったとしても、法改正によって権限が強化された検察審査会の存在が、圧力を跳ね返す大きな力となり得る。「検察の正義」をめぐる環境が大きく変わっているのである。東京電力福島第1原発事故で、検察審査会が当時の東電経営陣の「起訴相当」を議決し、議決書を張り出す職員=2014年7月31日、東京・霞が関(栗橋隆悦撮影) 近著【告発の正義】(ちくま新書)でも書いたように、2009年の検察審査会法の改正で、検察審査会の議決によって起訴される制度が導入されたため、告発された事件が不起訴になった場合、告発人は検察審査会に審査の申立てを行うことができる。そこで、「起訴相当」の議決が出ると、検察は再捜査を行うことになる。以前は、再捜査の結果、検察が再度不起訴にすれば、刑事事件はそれで終結していたが、法改正により、検察官が二度目の不起訴を行っても、検察審査会で再度審査して「起訴議決」を行えば、裁判所が指定する弁護士によって起訴手続きがとられることになった。 起訴議決制度が導入されたことで、検察は、社会的に注目を集めた告発事件については、検察審査会の議決によって起訴議決に持ち込まれる可能性がないかどうかという観点から検討せざるを得なくなった。「市民の常識」を尊重した捜査・処分をせざるを得なくなっている。 週刊文春の記事によって、甘利大臣の疑惑もあっせん利得処罰法違反、政治資金規正法違反の犯罪に該当する可能性があることが広く世の中に認識されていることから、市民団体等が告発を行ってくる可能性は高い。告発された場合、いろいろ理屈をつけて検察が不起訴にしても、検察審査会への審査申立てが行われ、「市民の常識」に基づいて起訴議決が行われる可能性がある。検察にとって千載一遇のチャンス 2009年、政権交代をめざす野党第一党の民主党党首小沢一郎氏の秘書を、僅か2000万円の、しかも政治資金収支報告に記載された「表の寄附」に関する政治資金規正法違反で逮捕した検察にとって、現政権の有力閣僚の秘書の事件の捜査に消極的な姿勢をとることなど許されない。 法務省の圧力に屈し、十分な捜査を行わず、告発をされても不起訴にするというような姿勢をとれば、市民を代表する検察審査会の審査員から「起訴議決」の鉄槌を下されることになることとなるだろう。 その時は、大阪地検特捜部の証拠改ざん等の不祥事、東京地検特捜部の陸山会事件をめぐる虚偽捜査報告書による検察審査会の議決誘導問題など、一連の不祥事で大きく傷ついた検察への国民の信頼は完全に回復不能となる。 逆に、甘利大臣とその秘書に対して、適切な捜査を行って証拠を固め、適切な刑事処分を行うことができれば、不祥事で失われていた検察への信頼を、一気に回復させることができる。本来であれば、即刻辞任してもおかしくない重大な疑惑が表面化しているのに、TPP問題の国会審議の関係などで大臣を辞めるに辞められない状況は、検察にとっては、まさに千載一遇のチャンスだと言えよう。 文春の早刷り版で、記事の内容が明らかになってから既に2日経過している。その間にも罪証隠滅が行われている可能性が高い。しかも、甘利大臣は、「第三者を入れて調査を行う」というようなことを言っている。明らかに犯罪に当たる今回の問題について「非犯罪ストーリー」で関係者証言を固めてしまう罪証隠滅になりかねない。 速やかに強制捜査に着手し、証拠を収集しなければ、刑事事件として立件・起訴できる可能性が低下していくことは確実だ。もはや一刻の猶予も許されない。 一連の不祥事に関して、厳しく検察を批判し、今も、美濃加茂市長事件の控訴審で検察と徹底的に戦っている私だが、今回の事件については、検察の威信をかけた戦いに期待したい。(ブログ「郷原信郎が斬る」より2016年1月22日分より転載)

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    「自己陶酔型不倫」の典型、ベッキーをなんとなく応援してみる

    吉田潮(ライター・イラストレーター) 不倫のドツボにハマる女性は、大概が真面目な優等生タイプだ。遊び人はゲーム感覚で淡々と飄々と不倫を楽しむ。別れたら次。面倒くさくなってきたら次。そもそもレンタル、延滞金取られる前にしれっと返却。 ところが優等生タイプは不倫を「障壁のある純愛」と脳内変換してしまう。背徳感は使命感に、罪深さは愛の重さへと都合よく変換。しかも頑張り屋の彼女たちは障壁を乗り越えようと自らを鼓舞してしまう。そこも真面目か、と驚くほどに。 ベッキーの不倫騒動を週刊誌で知り、まさに優等生タイプの「自己陶酔型不倫」の典型だと思った。サンミュージックの「第3回東日本大震災チャリティーイベント」に参加したベッキー=2012年07月26日、東京・池袋(撮影・吉澤良太)  厄介なことに優等生タイプは、人の話を聞かない・聞く耳持たない。ふたりだけの世界に浸り、罪悪感も甘い言葉でコーティング。なんだろう、あの万能感は。ベッキーもたぶんそんな感じだったのかなと推測する。 実は、今回の不倫騒動について周囲の女性に聞いてみた。登場人物の誰に思いを寄せるか。ベッキーか、ゲス(ゲスの極み乙女。のボーカル・川谷絵音を略して)か、ゲス嫁(ゲスの極み乙女。のボーカル・川谷絵音の嫁を略して)か。 驚くことに、不倫経験がある女性ほど「ゲス嫁が可哀想だ」と言う。え? そこはベッキーじゃないんだ? 同じ境遇に同調しないで、同類嫌悪の他罰方向にいくのか……。女心は複雑怪奇だと唸った。 個人的には、不倫している女性に寛大なほうである。「好きになっちゃったんだもの、仕方ないよね」と聞き流すことにしている。叱咤も激励もせず。ただし、バレたら慰謝料を請求されるリスクだけは伝える。相手がヌケサクで馬鹿っぽいときや、相手の嫁が抜かりない手練れのときは要注意。 ベッキーは誰にも相談しなかったのだろうか。いや相談して苦言を呈されたベッキーが聞く耳を持たなかった可能性もある。話せる友達がいなかったのか。優等生の孤独が、道ならぬ恋を一途に加速させたのかも。不倫は代償が大きいことを、ヒルズ族に教えてもらえばよかったのにね。 速攻で開いた謝罪会見は一見100点満点とも言える殊勝さだったが、あくまで友達だと言い張った時点でアウトだった。干されてもそう悲観することもない では、なんと言ったらよかったのか。「あくまで体だけの友達です」とか「彼は単なる芸の肥やしです」とか。ある種のビッチ宣言をしていれば、それはそれで見直した人もいたのではないか。別の意味で。 逆に、真面目さを貫き通すならば「私は真剣に彼のことを好きなんです、嘘はつけません」と正直に言って、一途な女をアピールすればよかったのかもしれない。ゲス嫁と全面対決宣言。 しかし、売れっ子タレント人生にこれだけの災いをぶっこんだ男が本当に大切な人なのか、ベッキーはもう一度冷静に考えたほうがいいのではないか(あいつ、ホントに卒論出せるのか、と不安要素が大きい)。裁判に持ち込んで長期戦&泥沼化してでも奪う価値がある人なのか。それでも共に人生を歩きたいならば、闘うしかない。入口は不倫でも、貫き通せば純愛という名に取って替わるからな。 今となっては、別れるも地獄、愛を貫くも地獄となっている。まずは、ゲス嫁に潔く謝罪して、払うべきものを払って解決を。そして、サンミュージックが今後抱えるであろう負債に対して、一生かけて奉公する腹積もりを決めないとね。 そもそもは、テレビタレントとしての才能が高かったベッキー。絶妙なコメント力、あしらいのうまさ、場をつなぐ&まとめる委員長センスで、数多くのレギュラー番組をもっていた。大手企業のCMも数社契約があり、間違いなくサンミュージックの稼ぎ頭のひとりだった。 この騒動で「まんべんなく好感度の高いベッキーというアイコン」は使用不可になった感がある(ネットでは以前から腹黒さが揶揄されてはいたけれど)。たかが不倫で。されど不倫で。 今はテレビを根城に活動する女性タレントにとって、不倫は絶対NGの時代だ。独身女が他人の夫を寝取る略奪愛も、自分が既婚で、夫とは別の男を寝室に引っ張り込む肉欲愛も、とにかく叩かれまくる。世論に。 そしてスポンサーもテレビ局も尻込みして使わなくなる。結果、干されて視聴者からは忘れ去られる。 ただし、この一連の流れは「女性タレント」で「権力をもたない事務所所属」の場合に限られる。男性タレントで大きな事務所に所属していれば、不倫していようと隠し子がいようと、テレビでは一切触れられない。爽やかな朝の顔を継続できるし、ワイドショーの切り口鋭いMCとして君臨できる。それがテレビ界だ。 とはいえ、世間は忘れっぽい。忘れた頃に再びテレビ界は、何食わぬ顔で傷口に塩を塗る切り口を引っ提げて、引っ張り上げてくれるだろう。視聴率のために。 つまりは、そう悲観することもない。覚醒剤使用で逮捕されたって(あら、奇しくも同じ事務所)、なんらかの活動を続けられるのが芸能界なのだから。この特殊な世界に骨埋める覚悟ならば、不倫のひとつもネタに昇華してしまえばいい。それくらいの図太さはそもそも持ち合わせているはずだし。開き直って「好感度の低いタレント」売りに出るという手もないことはない(茨の道だけれど)。  実はテレビ界には、問題や騒動を起こした芸能人に、さまざまな救済措置的番組がある。「しくじり先生」(テレ朝系)、「有吉反省会」(日テレ系)、「金スマ(中居正広の金曜日のスマたちへ)、「爆報!THEフライデー」(TBS系)などなど。テレ東だったら「ヨソで言わんとい亭」に出演してみるか。同じ事務所のダンディ坂野風の黄色いスーツで登場して「ゲッス!」とかましてみる。なりふりかまわず火に油を注ぐ芸風で。 ということで、なんとなくベッキーを応援してみたつもりだが、正直ベッキーの去就に関心はあまりない。サンミュージックという不運でうっかりな事務所を心の底から気の毒に思うだけ。そうか、私が思いを寄せるのはベッキーでも、ゲスでも、ゲス嫁でもなく、サンミュージックだったのだ。 強大な権力をもつ事務所と、そうでない事務所のタレントに対するテレビ局の扱いの差にはウンザリする。事務所格差による偏向報道には、新年早々ウンザリだ。

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    ベッキーは本当にゲスな女なのか

    に立たされている。ロックバンド「ゲスの極み乙女。」のボーカルとの不倫騒動は「自業自得」とはいえ、このスキャンダルはどこまで尾を引くのか。彼女のバッシングはもう見飽きた感もするので、ここではあえてベッキーを擁護してみました(笑)。

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    良い子の代表「スキャンダル処女」ベッキーを無責任に擁護する

    キーの不倫騒動。多数のCMキャラクターを務め業界の内外で評判が高い「良い子」の代表的存在が「不倫」でスキャンダルデビューしてしまったことは世間でも業界内でも話題騒然となった。 ベッキーが良い子というのは、共演者や友人と称する芸能人仲間のコメントで良く分かると同時に「(ベッキーは悪くないという)擁護」の嵐も半端ない状況になったが、その反面これまで「ベッキー可哀想」という意見だった世間が反撃に出てきて、ますますイメージダウンのベッキーである。 つまり、事が不倫なだけに、どちらか一方が悪いという根本的な解釈があり得ないということに気が付いた。「ベッキーは良い子だから悪くない」というのは非常に可笑しい馬鹿丸出しな意見であり、不倫とはいえ立派な「不法行為」。不貞を犯した罪は罰も科せられる重大な行為に当たる。そこに当事者としていることに基本的に擁護は出来ないだろう。バンド「ゲスの極み乙女。」の川谷絵音とのスキャンダルについての会見で、一礼して会見場に入室するベッキー=東京・新宿区(撮影・山田俊介) 例えば「知らなかった」というのはよくある話。旦那さんがいる、奥さんがいるなんて知らなかった、騙されたというのならそれは可哀想だろう。18歳未満と知りながら「知らなかった」で捕まっている中年オヤジを誰も擁護はしないが、ベッキーは「知っている」わけで完全に後者と同様である。普通に捉えたら誰も擁護はしないし守りようがないだろう。 また良い子でキレイ、透明感バツグンのイメージでCMとバラエティーの女王にも等しい立場からのギャップだからこそマスコミもネタとして大きく扱い、ファンや世間も驚きを隠し切れなかったのだろうが、良い子は不倫しない訳ではなく、また「そう見えない子がそういうことをよくやっている」のが実情でもある。不倫はもとより援助交際、風俗、AVの素人女優といったところでも「そんなふうに見えない系」が主流である。いわゆる「ギャップ萌え」といった外観、性格的な嗜好というものは多少なりとも誰にもあるわけで、それもベッキーのようにイメージ先行型の見た目や振る舞いからは想像できないレベルだと余計に興味がわくというものだ。 そんなキャラ感を持つベッキーだからこそ誠意ある対処と対応も望まれたところだが、これにも大きく裏切られた印象は残る。釈明会見にせよ、平然と活動を続けるにせよ、被害者から見たらますます許せない事情が重なってきてしまう。そう、「被害者」がいるということに焦点が移行して現在は責められる立場に追われている始末だ。 良い子というギャップと良い子過ぎることからの擁護がすべて仇となって返ってくる一方で被害者だって黙ってはいない。裁判沙汰にでもなれば慰謝料だって払わなければならない立場がベッキーであることは承知すべきだろう。擁護されればされるだけ悪女になっていく 多くの芸能人が中途半端に擁護する中で、俳優の坂上忍くんの意見だけが最も妥当でマトモではないか。「身内(芸能人・仲間)が擁護するのはいかがなものかと思う」「被害者である川谷の奥さん」と言い放ち、「擁護できない」意見を発するも、ベッキー個人の良さは認めている。前出しているが、「良い子は悪くない」という、非常識で低レベルな意見のキャッチボールをテレビ番組で公開するのもどうかと思うところだ。 ベッキーからすれば恋愛の相手にたまたま奥さんがいただけで、正攻法に「卒業(離婚)」を待っている姿勢だったのかもしれないが、乙女としての行動はそうではなかった。かなりの勇み足もあり感情的にも大きく土俵を割ってしまっていることから反省すべき点も多々あろうというものだが、それでもやめられない情事(連絡を取り合うなど)の継続を願うなら、芸能人を辞める覚悟を持ったほうが良いでしょう。 事は単なる不倫かもしれないが、それが原因でもっと大きな事件に発展する恐れがあることを理解する必要もあるでしょう。夫の裏切り、愛人への憎悪を苦にして自殺ともなったら、その責任は尋常なく重くなる。芸能人どころか人間失格にも相当する世間からの罵声がうなるように浴びせられ、社会からの転落は免れない。そんなリスクを冒してまで好きならばそれはそれで立派ではあるが、傷つく人がいて迷惑を被る関係者も多いなか「良いお友達」で片づけようというのはムシが良すぎるだろう。 もっとも最悪なのは「川谷絵音」で間違いないが、矢面に立たされているベッキーはその印象から「被害者」にも見受けられることが擁護される理由になりつつある反面、したかかさも垣間見られる姿勢に、世論を請け負う女性たちに批判が広がっている。 大体からして「いいお友達」ならあんな会見を開く必要もないだろう。不倫とは違うという釈明に終始し「会見で話したことがすべてです」という所属事務所のサンミュージックの対応もやはり弱いし、良い子を貫こうというイメージ命のベッキーを擁護するお友達タレントも多いが、擁護されればされるだけ悪女になっていく印象は止められないという実態が彼女自身を陥れていることに気が付かないのか。 好感度ナンバーワンのCM女王がまさかの「不倫」で商品価値を自ら破壊した事実は変わらないが、彼女自身の価値観まで変わるものでもなければ「好きなら好き」でそれは致し方ない。今後も「卒論」と「卒業」をじっと待っている乙女でいるのかどうか。興味があるのは、川谷が相応の慰謝料を積んで円満的に別れられたのち、ベッキーはどうするのか!?というところだろう。成就させるのか、はたまた「二度と会いません」で突き通すのか、そこはまた別のドラマがありそうだ。

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    それでも不倫疑惑タレントを「抹殺」してはいけない

    後藤和也(産業カウンセラー・キャリアコンサルタント) 芸能界ではスクープが相次いでいる。特に、好感度抜群とされた女性タレントのベッキーさんの不倫疑惑をめぐるニュースは、連日さまざまな報道がなされている。今回の騒動とは? 筆者はベッキーさんと不倫相手とされる男性ミュージシャン(以下、「男性」)のファンでもアンチでもない。ベッキーさんについては「あぁ、テレビによく出ているのねえ」という程度の認識であり、男性側に至っては今回の報道で初めて存じ上げた次第だ。言い方は悪いが、両者にそんなに関心はない、ということを冒頭にて明確にしておきたい。また、筆者は当事者間に不倫関係があったかどうかは断定できる立場にないことも申し添える。 年明け早々に週刊誌が報じた内容によれば、ベッキーさんが妻子ある男性と不倫をしていることが、男性のLINEが盗み見られたことから発覚したという。報道によれば正月に、二人で男性の実家を訪問するなど、深い仲であるという。 その後のベッキーさんらに対するバッシングの嵐は言わずもがなだ。特にCMや出演番組を多数抱えるベッキーさんに対しては、スポンサーが損害賠償請求やCM降板を検討しているなど、多くのネガティブな報道がなされた。先日開いた謝罪会見も、記者からの質問が許可されなかったなどの内容に、逆に批判の声が多く寄せられる結果となっている。看過できない報道について 先に述べたとおり、今回の一連の騒動について特段の興味もなかったのだが、先日のある報道が気になった。以下の内容だ。 タレントのベッキー(31)が、ロックバンド「ゲスの極み乙女。」のボーカル川谷絵音(えのん、27)との不倫疑惑騒動で10日で約4キロ痩せたことが16日、分かった。(中略) 関係者によると、1月4日に川谷の長崎県の実家を訪れ、出てきたところを週刊文春の記者に直撃されてから「軽はずみなことをしてしまった」と食事が喉を通らない状態が続いているという。知人によると、今回の騒動で、出演するCMの一部が差し替えられるなどの影響が出てしまったことで、ベッキーはなかなか寝付けず、食欲がない日々が続いている。「ベッキー 10日で4キロ減 騒動で食事喉通らず寝付けず 仕事以外は自主謹慎」スポニチアネックス 1月17日(日)5時32分配信(ヤフーニュース) 寝付けず食欲がない、ひきこもりがちなど、心の病の兆候ともいえる状態にあるという報道だ。ベッキーさんといえば「いつも前向き、元気な清純派」なタレントであり、今までゴシップとも無縁であった。「むしろできすぎ」という声もあったほどだといい、その反動からか、ネット上でも辛辣なコメントが目立つ。無論、仮に不倫という事実があったとすれば、倫理的な行為とは言えず、男性の妻は第一の被害者と言え、スポンサーなどの関係者にも損害を与えたというロジックは成立するだろう。ファンの信頼を傷つけた、という見方もできるのかもしれない(筆者はファンというものはある種の強烈な片思いのようなものであると考えるので、「信頼を傷つけられた」と逆上するのもなんだかなあと思わなくもないが)。 以上の報道やバッシングを傍観しながら、ある事件を思い出した。STAP細胞を巡る笹井教授の自殺事件だ。STAP細胞騒動とベッキー疑惑の類似点STAP細胞騒動と本件の類似点について まだ記憶に新しいSTAP細胞を巡る事件。小保方さんの指導者役として記者発表を仕切っていたのが笹井教授であった。ご存知のようにSTAP細胞論文の信頼性について疑義が生じてからは、それまでの「ノーベル賞級の偉業」という評価が一転し、小保方さんと不適切な関係があったのではないかという趣旨の報道が数多くなされた。 その後、笹井教授は自殺という選択をしてしまう。死後、関係者の証言により、笹井教授と普通のコミュニケーションがとりづらい状況にあったということ等、騒動のさなかに、心の病に急速に蝕まれていったと思われる事実が判明した。死後は、笹井教授の功績を称え、その早すぎる死を悼む報道が主となり、不適切な関係を糾弾する内容がフェードアウトしたのが非常に印象的であった。 無論、本件とSTAP細胞の騒動では内容も質も異なる。ただし、これまで賞賛の対象でありマスコミによって持ち上げられていた対象が、ある瞬間にまさに手のひらを返されるようにどん底に叩き落されるという過程や、当事者とは言えない不特定多数の者から人格攻撃のような辛辣な非難がなされることは酷似しているのではないか。おわりに 無論筆者は、不倫という行為があるとすれば、それを肯定するつもりは毛頭ない。不倫は文化だともいうつもりもないし思ってもいない。従来からのファンでもない、むしろアンチのような人たちや、今回の報道で初めて存在を知ったような人たちがヒステリックに自身の正義感から罵詈雑言を浴びせる姿に、ある種の危険性を感じるから、拙稿にて問いかけるのである。 我々の発する言葉は、時として鋭い矢のように相手の心身に突き刺さることがある。その結果、相手が死を選ぶということもある。我々はそれでも、相手に対し非難を続けるべきだろうか。相手を抹殺しなければならないほど、その相手と自分の関係性は深いのだろうか。どれほどの利害関係にあるのか。 本件が仮に事実とするならば、好感度を商売の手段としているベッキーさんらは、なんらかの責任を負うことになるだろう。暫くの間となるかもしれないが、「芸能界から抹殺」されるのかもしれない。ただしかし、「この世から抹殺」等ということは、仮に当事者だったとしても、現法令下では決して許されるものではないという当たり前のことを、我々は再認識すべきではないのだろうか。 「常に笑顔で、前向きに頑張っていました。勇気をもらいました」等と、死後に功績を称賛したところで、何らの意味もないのである。【参考記事】■「年も明けたし、何か資格を取ろう!」と思ったあなたに伝えたいこと (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)http://sharescafe.net/47304400-20151223.html■「未達成感」が育児ストレスを増大させるのでは。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)http://sharescafe.net/47075444-20151202.html■元猿岩石芸人から学ぶべきスキルとは (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)http://sharescafe.net/46884848-20151113.html■「俺、メンタル的にヤバいかも・・・」と思ったら。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)http://sharescafe.net/46714386-20151027.html■山本耕史流アプローチがストーカーとならない理由。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)http://sharescafe.net/46042230-20150825.html

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    ベッキーの「一方的ウソつき記者会見」は最悪の対応

    長谷川豊(フリーアナウンサー) まぁ結局こうなってしまうだろうなぁ…というベッキーさんの話。文春さん、相変わらずと言うかさすがと言うか…。新春一発目に、各スポーツ紙がウソ記事と飛ばし記事を書きまくって芸能マスコミの信用度を一気に低下させているなか、メガトン級の一撃。 個人的には「ゲスの極み乙女。」というバンドさん自体全く知らなかったですし、未だに「世界の終わり(←?)」との違いが分からないし…どうでもいいんですが、気になったのがあの「会見」です。 サンミュージックさん…ユカイさんもいて知らない仲じゃあるまいし、一言くらい聞いてくれればいいのに…。あの対応…ダメの見本ですよ…(涙)。リスク管理は一歩、間違えれば大ダメージとなる時代 近年「リスク管理」「リスク対応」が大きなテーマになることが多くなりました。それは「今までのネットがない時代の常識」がことごとく通用しなくなってきており、一歩間違えれば大損害に発展する可能性を秘めているからです。半年ぶりに店頭に並んだ「ペヤングソースやきそば」=2015年6月8日、東京都千代田区(寺河内美奈撮影) 多く取り上げられるのが「ペヤング」と「マクドナルド」の例です。2014年12月2日。まるか食品の『ペヤング』の異物混入が発覚。2015年1月3日日本マクドナルド・三沢店で『チキンナゲット』の異物混入が発覚しました。 この両者は、およそ1年前、わずか1か月差で起きた同様の「異物混入騒動」としてメディアでも繰り返し大きく報道されました。 発覚直後はまるか食品・日本マクドナルドともに「製造過程で混入は考えられない」と発表。まぁ、その通りだったのでしょう。私もその通りだと思います。今でも、この程度、彼らの提供する安い金額を考えれば、織り込み済みのことと捉える方が常識の範囲のはずです。 しかし、2014年12月4日、まるか食品は「可能性がゼロとは言いきれない」と同一ラインで製造した約5万個を自主回収することを発表します。対するマクドナルドはどうだったのか? 2015年1月8日の記者会見までに4件の異物混入事故が会社側に届けられていたにもかかわらず、公開せずにいたばかりか、その後も、問題商品の販売は自粛したものの、問題店舗においても休業することなく販売を続行したのでした。 その後の両社に対する日本国民の視線はもうご存知の通りです。ペヤングは復活を心待ちにされ、多くのファンに支えられ、マクドナルドは過去最悪クラスの決算をたたき出すこととなりました。私自身の体験から私自身の体験から ネットが普及してしまい、今までのように「写真週刊誌とテレビだけを押さえておけば勝手に国民は【バカだから】忘れてしまう」という時代はとうの昔に過ぎ去っています。今はリスクに対して『正しい対応』をしなかった場合、致命傷を受ける可能性のある時代です。古い芸能界の事務所には、まだそれを理解していない事務所がわずかですが残っています。 私事になりますが、私自身、過去に情けない事態を引き起こし、マスメディアに大きく取り上げられたことがありました。その大半は事実と反するものでしたが、ニュースでも全局で報じられました。 しかし現在、私はありがたいことに多くのテレビレギュラーだけでなく、月に30本近いコラム連載の仕事を頂き、大変充実した毎日を送らせてもらっています。今の私がいるのも、あの時の『対応』でミスをしなかったためと考えています。 当時の私が、マスメディア対応で絶対に「これだけは貫こう!」と決めていたのが実は2点だけです。1、格好悪くてもいいので、評判を下げてもいいので「ウソだけは付かない」こと。2、取材やインタビューは一つたりとも「断らない」こと この2点、私は現在における多くの「リスク」に対応するための、最も大切なファクターではないかと考えています 私は、一切の隠し事をしないように、5万文字にわたるブログ文章と12万文字を超える本を出版し、丁寧な説明を心掛けました。出来るだけ客観的にも事実であることが分かるように、当時交わした証拠となるメールの文章も、全文載せるようにしました。 また、今まで40件以上に及ぶ、当時の案件に対する取材依頼を受けましたが、その全てに相手の質問が尽きるまで対応をしてまいりました。丁寧に説明すれば、ほとんどの記者の方々はご理解してくださいました。 さて、しかし今回のベッキーさんの会見はその視点から見ると、少々彼女の今後に対して心配なものだったと言わざるを得ない気がします。 彼女の会見の特徴は2点です。1、会見をする、と言って取材陣を集めておきながら、一切の質問を許さなかったこと。2、「世間は誤解している」・「お付き合いはしていない」と発言したこと ベッキーさん、いや、ベッキーさんの事務所であるサンミュージックさんは、長らく日本の芸能界を支えてきた歴史と伝統ある芸能プロの一つです。なので、理解できなくもないのですが、どうか分かっていただきたい。 もう、そんな時代ではないのですよ。ボタン一つで、スマホの画面はキャプチャーができる。到底言い逃れできない『圧倒的な証拠』があるからこそ文春さんは「新春スクープ」に選んでいるのです。 裏事情を一つだけ言っておくと、そもそもこの話は、もっと以前からリークされています。しかし「せっかくのデカいタマなので…」と言うことで新春の一発目スクープになるように先延ばしにしていたのです。もちろん、新春号にすれば、「ベッキーの不倫相手はあの『紅白出場歌手』」とタイトルを打てるのも魅力だったことでしょう。それだけ時間をかけて取材をし、あれだけの証拠を突きつけられてなお… 見苦しいウソは絶対にやめた方がいいのです。 週刊文春さんに載せられたあの写真、あのラインのやり取り。あれで本当に男女の仲でなかったのであれば、逆に驚きです。男女の仲でなく、ホテルで朝まで過ごして「離婚が成立したら(文中では「卒論」と表現)いっぱいわがまま聞いてもらおうっと」とか言ってるのであれば、一度病院にかかられた方がいい。 そんなわけないのです。ベッキーさんは何とかという歌手グループのボーカルと男女の仲になったのです。一部スポーツ紙が「ベッキーは最初、妻子持ちと知らなかったようだ」と報じていました。あのスポーツ紙は芸能事務所の情報をそのまま書くことでよく知られるスポーツ紙です。要は、少しでもダメージを減らそうと、そのスポーツ紙に記事を書いてもらったというのが裏事情でしょう。全部裏目です。一番ダメな対応です。 文春さんは適当な記事なんてほとんど書きません。相手が大手の事務所であればなおさらです。私のくだらない記事が世間を席巻したときでも、奈良県にある私の実家にまで取材に来て下さり、「ハセガワの父親は『息子は絶対にそんなことをしていないと言っている』と語った」と記事にしてくださったのは、文春さんだけでした。足を使い、汗をかく。取材の基本を分かっている記者さんたちが集う週刊誌です。なので、ここまで他誌を圧倒的する部数を記録しているのです。質問には答え、ウソは付かないべきだった マスメディアを集めたにもかかわらず、なぜあんな『100%ばれるウソ』をつかせたのか? わざわざ記者に集まってもらったにもかかわらず、なぜ質疑を受け付けなかったのか? あそこでは全てをさらけ出すべきだったと思います。これは私の個人的予測ということで読んでいただきたいのですが…まぁ、ほとんどの日本人が同じように感じているんでしょうけど…・結婚の事実を隠したままで口説かれる      ↓・ある程度親密になった段階で結婚してたことを打ち明けられる      ↓・でも、離婚をちらつかせられて交際をズルズル続ける      ↓・男は誠意を見せるためになどと言って実家などに連れていき、さらに交際を続ける ってとこでしょ?どうせ。まさにリアルゲス。 こういうことって、結局、今の時代は全部筒抜けになっちゃうんです。ラインのやり取りまで出されたらしょうがないんですって。そこは昔と全然違うところです。逆に、徹底的に謝った方が絶対にいい。そして、芸能リポーターの皆さん方に、泣かされるまで厳しい質問を浴びまくって、最後までそれに答えるべきでした。なぜ、その方がいいかと言うと、まず、芸能リポーターの質問は必要以上に厳しいことも多いので…「芸能人に同情が集まるときが多い」からというのと、もう一点はそうしないと「傲慢に見える」からです。 「なんだよ?わざわざ取材にいったのに、質問にも答えないのかよ」って言われる可能性が出てきてしまいます。 時すでに遅しで、結局、昨日も今日も、ワイドショーと言うワイドショーは久しぶりにいいエサを与えられた感じで、大喜びでこすりまくっています。北朝鮮であんなことになったにもかかわらず、何十分時間を割いてんだか。 今回の件、ベッキーさんは相当のダメージです。でも彼女はいい子です。私も2度ほど仕事を一緒にしていますが。今後が心配です。 むしろ、深刻なのは相手のゲスのなんとかというバンドの方。ベッキーさんはナベプロさんやジャニーズさん、バーニングさんなど、大手芸能事務所のお偉方にも高評価で知られるタレントさん。その子にこういうミソをつけて、平気でいられる世界じゃあない。厳しいことを言いますが、もうアウトじゃないかな。しばらくは。ま、自業自得か。(公式ブログ「本気論 本音論」より2016年1月8日分を転載)

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    文春無双!週刊文春がスクープ連発する3つの理由

    を拒否されているのです。 従って、週刊文春に代表される出版系週刊誌は、権力に迎合することなく政治家のスキャンダルをすっぱ抜くことに、なんの躊躇もなく、実践していくことができます。 特に週刊文春の発行元の文藝春秋は、その長い歴史の中で、保守系ではありながら、ときの権力者に対して絶えず厳しく対峙することをモットーとしてきております。 1974年10月9日に発売された雑誌『文藝春秋』11月号で田中角栄に関する特集が組まれました。立花隆の「田中角栄研究―その金脈と人脈」は1969年から1970年にかけて田中ファミリー企業群が信濃川河川敷における約4億円で買収した土地が直後に建設省の工事によって時価数百億円となった信濃川河川敷問題等の資産形成を暴きます。 やがてロッキード事件として田中逮捕へとつながるこの歴史的スクープも文藝春秋がもたらしたのでした。・・・ 今回は、独自スクープ連発&独り勝ち状態、まさに『文春無双』状態の理由について、当ブログなりに掘り下げてみました。本エントリーが読者の参考になれば幸いです。

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    「ゲス」は自分に絶対の自信を持ちありのままに生きる人物

     1月5日夜、ベッキー(31才)が記者会見を開き激震が走った、ゲスの極み乙女。のボーカル川谷絵音(27才)との不倫騒動。“優等生キャラ”でベッキーは、芸能界屈指の好感度タレントだったわけだが、こうなると彼女のこれまでの好感度とは何だったのかと疑問が湧く。 そもそもタレントにおける好感度は、そのキャラが一般に支持されているかどうかの指標。だが、そうした指標も時代とともに変わりつつあると、心理カウンセラーの心屋仁之助さんは言う。 「一昔前までは頑張ることや我慢することが美徳とされてきましたが、それによりうつになる人が増えたりもして、時代には合わなくなってきた。今こそ、その精神的な縛りから解放される時。誰がなんといおうと、“自分の人生を、自分のために歩く”ゆるぎない自信が評価されるんです」 指標が変われば、生き方も変わる。『ゲスな女が、愛される。』(廣済堂出版刊)の著書もある心屋さんはシンデレラを引き合いに、女性たちには、“ゲスデレラ”をめざしてほしいと語る。 「舞踏会の当日に、1日では到底終わらないような仕事を押し付けられても、いじわるな姉たちにドレスを破られても、魔法使いだ、ネズミだと、あらゆる力を総動員して舞踏会へ出かけるあのガッツ。しかも躊躇なく、王子様と踊ってしまうのです。なぜって、シンデレラは王子様に見初められる自信があったから。『私はかわいい』と確信していたからです」 極めつきは、12時の魔法が解ける瞬間にガラスの靴を置いてシンデレラが去っていく、有名なシーン。「もちろん王子様が自分を捜しに来ると確信していてのこと。案の定、王子様は靴を手に国中を捜し回ります。そして靴を履こうとしても入らない姉たちを尻目に、『あ、それ私でした!』とシレッと出てきて一発逆転。ボロ服を着せられてこき使われようと、自分はプリンセスになれると疑わない。なんて厚かましいんでしょう(笑い)。でもだからこそ、彼女はがっつり幸せをつかんだ」(心屋さん) この世の中は厚かましくて、ナンボ。「劣っているから愛されない」なんて縮こまった考え方を捨てて、ありのままの自分でいることが、今の時代に愛される必須条件なのだという。 「私が考える“ゲス”とはつまり、自分に絶対の自信を持って、ありのままの姿で生きること。“私だから大丈夫!”と信じ、どんな姿を曝け出そうとも自信が揺るがない人です」(心屋さん)

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    FIFA汚職 02年W杯共催の日本も捜査対象となる可能性

     あまりにも早い退場劇だった。FIFA(国際サッカー連盟)のゼップ・ブラッター会長が5選を果たした会長選(5月29日)の4日後、辞意を表明した。電撃辞任の背景は、もちろん米司法省により現職の副会長2人を含む複数のFIFA幹部が逮捕、起訴された汚職事件である。 W杯開催地の誘致やスポンサー権を巡り、幹部たちが受け取った賄賂の総額は1億5000万ドル(約185億円)以上。捜査の手は既にブラッター会長にも及んでいるといわれる。サッカー誌の記者が語る。 「17年の長期政権だっただけに、どこまで過去に遡って捜査が進められるのか注目されている。2002年にW杯を韓国と共同開催した日本も捜査対象となることは十分考えられる」 ところが、日本サッカー協会から危機感はまったく感じられない。協会関係者はこう嘆く。2002年サッカーW杯の決勝戦前に行われたセレモニー=2002年6月30日、横浜国際総合競技場(撮影・江角和宏) 「小倉さん(純二・日本サッカー協会名誉会長)は、自分がFIFAの理事だった2002年W杯では汚職の余地はなかったと会見でいいましたが、韓国がわんさか金をバラ撒いて共催にこぎつけたという噂は当時からある。日本もFIFAの視察団に対して、真珠など100万円以上のお土産を贈るなどしています。 これだけ大きな問題になっているのに、『悲しい』とか『早く正常なFIFAに戻ってほしい』などと他人事のようにいう気が知れない」 今回の会長選で日本はブラッター支持を投票前から明らかにしていた。 「ブラッター氏には会長選の前から汚職事件に関与しているという疑惑があり、大仁(邦彌)会長もそのことは承知していたはず。それでも票を投じたのであれば、投票した自らの責任についてきちんと説明すべきではないでしょうか」(前出の記者) ブラジルW杯の惨敗も、アギーレ監督の解任も、その責任問題には背を向けてきたサッカー協会。今回も知らぬ存ぜぬで通すつもりだろうか。関連記事■ 3年前のアギーレ氏疑惑把握しなかった協会を釜本邦茂氏批判■ 大韓サッカー協会HP「サッカーの起源は朝鮮半島」で抗議殺到■ 【日韓比較・スポーツ編】メダル数、歴代メジャーリーガー数他■ 佐々木則夫監督 協会から澤抜きのなでしこ作れと期待される■ 元日本代表福西崇史が実体験踏まえ試合の観戦ポイント語る本

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    FIFA汚職スキャンダルは日本にどんな影響を及ぼすのか

    藤江直人(ノンフィクションライター)(『THE PAGE』提供) 未曾有の汚職スキャンダルに見舞われ、5選を果たしたばかりのジョセフ・ブラッター会長が辞任を表明する事態に揺れている国際サッカー連盟(FIFA)。後任会長を選ぶFIFA臨時総会は今年12月から来年3月までの間に開催される見通しとなっているが、騒動は収束する気配すら見せていない。 ヨーロッパ各国のメディアはここにきて、W杯の開催国を決める理事の投票で不正があったと次々に報じている。7日付けの英紙『サンデー・タイムス』は、2010年のW杯招致において開票と集計作業で不正が行われ、本来の開催国は南アフリカ共和国ではなくモロッコだったと大々的に報じた。 ブラッター会長が辞任を表明する前日の今月1日には、南ア政府から賄賂を受け取ったとして起訴されたFIFAのジャック・ワーナー元副会長へ送金手続きを行ったのが、ブラッター会長側近のジェローム・パルク事務局長であることが判明。自身にも捜査の手が及びかねない状況下に追い込まれたブラッター会長が、観念したのではという見方も強まっている。 親日派として知られる世界サッカー界の“ドン”が任期途中で表舞台から姿を消す緊急事態は、日本サッカー界にも決して小さくない影響を与えてきている。そのなかで喫緊の懸案事項となりそうなのが、日本も招致に手を挙げていた2022年のW杯となる。 FIFA理事による投票で中東カタールでの開催がすでに決まっている。しかし、7日付けのヨーロッパ各国のメディアは、2018年ロシア大会と2022年カタール大会に関して、FIFAの監査・コンプライアンス委員会のドメニコ・スカラ委員長のこんなコメントを報じている。「カタールとロシアが賄賂によってW杯開催の権利を得たという証拠が存在するのならば、招致が無効となる可能性もある」 ロシアとカタールのW杯開催権が剥奪される可能性に関して、FIFA幹部が言及したのはこれが初めてとなる。現時点で明確な証拠は出てきていないが、もしもカタールが“クロ”となれば、2022年大会の開催国に立候補し、事前のインスペクションでカタールよりも高い評価を得ていた日本やアメリカが候補となることが十分に考えられる。 2002年から2期9年にわたってFIFA理事を務めた日本サッカー協会(JFA)の小倉純二名誉会長は、9日午後に都内で行われた「日本サッカーリーグ発足50周年記念パーティー」後に、日本の再立候補に関してこう言及している。「いまのFIFAの状態だと、誰が何をしたのかがわからない。現時点では南アフリカ大会の話に戻っているし、もう少し時間が経過しないとはっきりしたことがわからない、というのが正直なところです。状況がはっきりして、もう一度(開催国を)決めるのかどうかとなった段階で、日本が手を挙げるかどうかという議論となる。現時点ではまだ早すぎるし、もう少し待っていただければと思う」 スイスの司法当局はすでに、広範囲に及ぶ腐敗の調査の一環として、ロシア、カタール両大会が招致された過程についての調査も開始していると言われる。アギーレ氏の日本代表監督解任問題で、会見を終えて頭を下げる日本サッカー協会・大仁会長=2月12日、東京・文京区の日本サッカー協会(撮影・山田俊介) 翻って日本は2019年にラグビーのW杯、2020年には東京五輪を開催し、さらには2023年にはサッカーの女子W杯を招致する構想がある。そうした状況を受けて、JFAの大仁邦彌会長は日本での代替開催について「国内事情も考えないといけない」と慎重な姿勢に終始している。 1998年にFIFA会長に就任したブラッター氏は、ジョアン・アベランジェ前会長から引き継いだ親日派派閥のもとで、JFAと良好な関係を築いてきた。小倉名誉会長も「僕らはいい関係で仕事をしてきた」と理事として活躍した9年間を振り返る。 2005年に復活したFIFAクラブW杯を日本に招致できたのは、その一環といっていい。今年と来年の日本開催はすでに決定しているが、2017年以降は新会長のもとで刷新される新体制の決定に委ねられる。 W杯におけるアジア枠に目を向ければ、2018年のロシア大会は現状維持の「4.5」となることが5月下旬のFIFA理事会で決定している。昨夏のブラジル大会で1勝もあげられず、日本を含めた4カ国すべてがグループリーグで姿を消していたアジアに対しては強烈な逆風が吹いていた。 アジアサッカー連盟(AFC)選出のFIFA理事に初当選したJFAの田嶋幸三副会長が、最初の仕事として「アジア枠の死守」を掲げていたほどだ。結果として現状維持となった背景は、サッカー不毛の地とされたアジアやアフリカを支援し続け、権力を増幅させてきたブラッター会長の大きな後ろ盾を抜きには語れないだろう。 すでに決定した事項が覆ることはまず考えられない。それでも、あまりに影響力が大きかったブラッター会長に対する反動として、腐敗体質を一掃するとの名目で前体制下における取り決めに見直しのメスが入る事態も決して否定できない。 すでに新会長には複数の人物が立候補を示唆している。先のFIFA会長選でブラッター氏に敗れたヨルダンのアリ王子が「準備はできている」と表明すれば、元ブラジル代表で日本代表監督も務めたジーコ氏も出馬を表明、前FIFA副会長の鄭夢準氏(韓国)も可能性を否定していない。 ヨーロッパサッカー連盟(UEFA)のミシェル・プラティニ会長、FIFA会長戦に出馬しながら直前で立候補を取り下げたルイス・フィーゴ氏の名前も取りざたされるなかで、小倉名誉会長は日本協会が立ち位置を明確にすることが重要だと力を込める。「日本サッカー界にとっては、次のFIFAがどのような内閣になるかが一番の問題。これからどのような人が立候補するのか、UEFAがどのような対応を取るのかはわからないけれども、田嶋副会長が理事としてFIFAの中に入っていることが何よりもメリットになりますよね。どのような状況になりそうなのかをよく見てもらって、日本協会として誰を次期会長として推薦し、あるいは支持するのかということを上手く決められるかどうかによって(状況は)変わってくると思う」 先のFIFA会長選では、投票直前になってオーストラリア協会がアリ王子支持を表明するなど、アジアは一枚岩になれなかった。そうした反省に立ち、田嶋理事は7月に開催されるAFC理事会でFIFA次期会長に関するアジアの意見を集約する方針を示している。ふじえ・なおと ノンフィクションライター。1964年、東京都生まれ。早大第一文学部卒。スポーツ新聞記者時代はサッカーを中心に、また米ニューヨーク駐在としてMLBを中心とするアメリカスポーツを幅広く取材。スポーツ雑誌編集などを経て07年に独立。関連記事■ 澤穂希の言葉からみる 彼女が第一線で輝き続ける理由■ 岡田優介が見た日本のバスケ界 改革に選手の声は反映されるか■ 改革へ豪腕振るう川淵C 現場には困惑も

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    FIFAは国連より大きい組織だ

    長谷川良(ウィーン在住ジャーナリスト) 汚職。賄賂、腐敗容疑で幹部たちが逮捕された国際サッカー連盟(FIFA)には現在、209カ国・地域のサッカー連盟が加盟している。加盟国数では193カ国の国連より16カ国多い。すなわち、FIFAは加盟国数では世界最大の国際機関ということになる。そのうえ、サッカーは世界で最も競技人口が多いスポーツだ。世界各地を網羅し、競技人口も多いサッカーのナショナル連盟を主管するFIFAの影響はそれだけ大きい。「FIFAは国連より大きい政治的影響力を持った組織だ」といわれる所以だ。2010年9月の国連総会。オバマ米大統領が演説中だ そのトップに16年間君臨してきたゼップ・ブラッター会長(79)への疑惑調査が水面下で進行中だ。国連でいえば、潘基文事務総長が汚職容疑をかけられている状況といえる。FIFAは組織の存続の危機に直面しているわけだ。 ここにきて5選したブラッター会長の逮捕は時間の問題とも言われ出してきた。なぜならば、米連邦捜査局(FBI)に逮捕されたFIFAの元幹部たちがFIFAの内部情報を漏らし始めているからだ。ブラッター会長は5選直後の記者会見では、「捜査は自分を対象としていない」と、自身の潔白さを誇示していたが、スイス警察はFBIの捜査に協力し、ブラッター会長周辺の動向を慎重に調べ出している。 常識的にみると、元幹部や現職幹部たちが汚職や賄賂で逮捕されたということは、組織のトップに君臨しているブラッター会長がそれらの汚職事件にまったく関与していなかったとは考えにくい。 前日のコラムでも指摘したが、ワールド・カップ(W杯)誘致では、大会候補国ばかりか、スポンサー、テレビ放送権まで巨額の資金が動く。その資金を管理するFIFA 幹部たちがその一部を自身の銀行口座に入れてきた疑いがあるわけだ。ブラッター会長は「自分は全ての幹部を掌握していない」と弁明しているが、ブラッター会長の暗黙の了承で賄賂が日常茶飯事に行われてきたと受け取られているのだ。 元幹部たちの逮捕事件が発覚した直後に実施されたFIFA会長選でブラッター会長が楽勝した背後について、「FIFA関係者が全て何らかの腐敗行為にタッチしていたから、誰もブラッター会長に強く反対できなかった。組織の保全と犯罪隠蔽の必要性もあって、ブラッター会長は楽勝できたわけだ」という声が聞かれる。FIFAはマフィアと同じ組織構造だというわけだ。 独週刊誌シュピーゲル最新号の表紙にはブラッター会長の写真が掲載され、「腐敗」というタイトルが付いている。FBIはFIFAの幹部たちの汚職、マネーロンダリング(不法資金の洗浄)などを組織犯罪と見なしている。 FIFAにとって命取りとなったのは、2018年のW杯でロシアを、22年のW杯をカタールで開催することを決定したことだ。決定直後から、「誘致には巨額の黒い金がFIFA関係者に流れた」といわれてきた。 FIFAがサッカーの競技人口も少なく、夏50度の灼熱のカタールでW杯大会を開催すると表明した時、世界のサッカーファンたちは一瞬、耳を疑ったはずだ。ひょっとしたら、クーラー完備の競技場が建設される、W杯の開催を夏ではなく、冬にする、といった類の情報も流れてきた。 ちなみに、W杯の不正招致の疑いに対し、ロシアは「誘致には疑惑などない。今回の茶番劇は、ロシアに圧力を行使しようとする米国の政治的動機に基づくものだ」と強く反発している。 FIFAは組織改革を実施しなければならない。第一弾は会長職の2選制限だ。ブラッター会長のように長期政権を許せば、汚職、賄賂、縁故主義といった腐敗が必ず生まれてくるからだ。また、巨額の資金が動くFIFAでは、財政専門家から構成された内部監査員が資金の動きを監視し、透明化する必要がある。 ファンの皆さんには申し訳ないが、世界最高のサッカー選手といわれるリオネル・メッシ選手(FCバルセロナ)を取り巻く関係者にもマネーロンダリングと詐欺容疑が浮かび上がっている。FIFA関係者だけではなく、スター選手周辺にもさまざまな腐敗容疑が浮かび上がっているのだ。 FIFAもサッカー選手もフェアプレー精神を取り戻してほしい。ランス・アームストロング選手らスター選手のドーピング事件の発覚で信頼を完全に失った自転車競技、特にツール・ド・フランスの衰退は決して他人事ではないのだ。(ブログ「ウィーン発 『コンフィデンシャル』」より)関連記事■ 改革へ豪腕振るう川淵C 現場には困惑も■ 澤穂希を解き明かす4つのキーワード■ 韓国人はドイツ人を全く知らない

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    アングラマネーがアングラマネーを作った 最悪のFIFA贈収賄

    岡本裕明(Blue Tree Management 株式会社 代表取締役) ブラッター会長が5月29日の選挙で5選を果たしてわずか4日後の6月2日に辞任表明をしたことはFIFA(国際サッカー連盟)の透明性に大きな疑問を投げかけました。日本でも小さい子供は野球よりサッカーを選ぶ時代になり、サッカー競技人口は地球儀ベースでは2億7000万人(FIFA発表)と圧倒的であります。当然ながらそこに絡むお金の問題も起こりやすい状況にあったと思いますが、今回の問題は先行きが相当懸念されそうな気がします。 まず5月29日の選挙は27日にFIFA幹部14名が起訴された事態の中で行われた次期会長選でした。もしもこの選挙が公明正大なものであれば209票の行方はそれまでの趨勢のブラッター会長支持が揺らいでもおかしくありませんでした。事実、イギリス首相を含め、内外からその責任を問う声が上がっている中で結局対抗馬のヨルダン アリ王子に133対73と大差をつけて勝利しました。それを強力にサポートしたのは多くのアフリカ諸国と言われていますが、理由はブラジルでもアフリカの無名の小国でも一票は一票である仕組みがあるからでしょう。まさに一票の格差であります。FIFAの会長選挙で5選を果たしたブラッター会長=5月29日、チューリヒ(ゲッティ=共同) 事実、当選したその日のブラッター会長は喜びに浸っていたと報道されており、一方で反対票を投じた人に対して「I forgive but I do not forget.」という言葉を残しています。これは73票の流れた票についての怨嗟そのものでありますが、通常の選挙の結果ならばこのような言葉が出てくることはありません。個人的にはブラッター会長が側近の事務局長を通じて票を買収していたのに一部の票がそれに反してアリ氏に流れたという恨み節と見ています。 そのブラッター会長が事情聴収の対象になったことで一気に形勢が逆転、極めて早い幕引きとなりました。これも私の勘ですが今回のアメリカを中心とする捜査当局は選挙を予定通り実行させその証拠固めをする戦略だった気がします。事実、ブラッター会長を支持していたナイジェリア、ケニア、イラン、ギリシャなどは今、青くなっていると言われています。理由は会長選に伴う収賄でありましょうか。これではブラッター票を買い取るための資金がそれぞれの国に流れていたと類推したくなってしまいます。 ではもう一つの捜査、W杯や関連イベントなどの招致に関しての賄賂のルートであります。その疑惑は10年の南アフリカ、18年のロシア、22年のカタールが対象になっていますが、2014年のブラジルの名前がなぜないのかこれも不思議といえば不思議です。14人の起訴されたメンバーにはブラジル人も入っており、ブラジルの司法当局も捜査に乗り出していますから本件は泥沼と化す公算が高いのではないでしょうか? うち、最大の疑惑は22年のカタールで開催決定当時から不正疑惑が渦巻いていました。また、ロシアについてはプーチン大統領が「アメリカの常套手段で、自国の裁判権を他国に使っている」と息巻いていますが、ロシアもブラッター支持派でしたので何が飛び出すか、気になります。アメリカがロシア苛めをするならこれもチャンスかもしれません。 FIFAを中心とした贈収賄はアングラマネーがアングラマネーを作る最悪のシナリオに見えます。その上層部は腐りきっているともいえるでしょう。ブラッター会長の娘が「父はまじめでそんなことする人ではない」と声明を出していましたが、今となっては娘のボイスもむなしく聞こえてしまいます。 直接的に懸念があるのはブラッター会長がばら撒いたかもしれない票の買収資金がどの国のどのレベルまで渡っていたか、であります。当局がどこまで捜査する気なのか、あるいは影響力が大きすぎて問題をスルーさせるのかそのあたりも今後の注目ポイントとなりそうです。 いずれにせよ、多くのスポーツファンを失望させ、多くの世界の子供たちの夢であるサッカー選手がそのような組織体に影響を受けていたことは許されないでしょう。折しも当地ではFIFAの女子サッカーが間もなく始まるところでありますが、正直、あまり盛り上がっている感じはありません。女子サッカーとしては前回のドイツの80万枚を超える史上最高の150万枚のチケット販売を目標にしていますが、スタジアムベースでは75%程度の売れ行きで今や学生向け500円(5カナダドル)の安売りも一部で始めています。 疑惑を払しょくして明日に向かってボールを蹴ってもらいたいものです。(ブログ『外から見る日本、見られる日本人』(http://blog.livedoor.jp/fromvancouver/)より2015年6月5日分を転載)関連記事■ 「ニッポンの今」を象徴する大塚家具問題■ 岡田優介が見た日本のバスケ界 改革に選手の声は反映されるか■ 株式公開企業 創業者の振る舞いわきまえよ

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    FIFA汚職の裏側とアングラマネーの闇

    の腐敗と汚職は、1990年代からマスメディアによって批判されてきた。2012年、FIFAを巡る贈収賄スキャンダルが暴露された。この時は、ブラッター氏の恩師であるジョアン・アベランジェ・FIFA前会長(ブラジル人)と2人の幹部がFIFAから追放されている。この時は、メディア放映権を管理するスポーツ・マーケティング会社ISLに絡んだ贈収賄事件であった。アベランジェ氏はワールドカップの放映権を高額で売る事により、巨額の資金を捻出する事に成功した。現会長のブラッター氏は、このアベランジェ会長の側近としてFIFA内での実力を養ってきた人物である。FIFAの倫理委員会は2013年にISLが1992年から2000年までFIFA幹部に巨額の幹部を送っていたとする報告書を発表した。しかし、このスキャンダルでFIFAの金権体質を完全に抉りだす事は出来ず、寧ろ問題の大部分は隠蔽されたままとなった。 注目すべきは2013年にアメリカの圧力を受けて、スイスの金融界は銀行口座の秘密主義の原則を完全に方向転換せざるを得なくなっていたという事実だ。それ以降、スイスは国内法を改め、外国の捜査当局や税務当局に外国人や外国企業の口座情報を開示するように革命的な方向転換を成し遂げてきた。こういったスイスやアメリカを巡るアングラマネー追及の動きが、今回のFIFA汚職摘発に大いに役立った事は疑いがない。2012年にできなかったFIFA汚職の徹底追及が2015年の現在、行なえるようになったのは、まさにこのような法的・制度的な改革が行なわれたからである。その改革は、アメリカを中心とするアングラマネーとタックスヘイブンを根絶する戦いの大きな成果の1つであった。 5月29日にはFIFA会長選挙が行なわれる事になっていた。その為に、FIFAの最高幹部の多くは、チューリッヒの高級ホテル「ボーオーラック」に宿泊していた。米FBIの担当者は、その前の週からスイス警察当局の綿密な連絡を取り、5月26日から27日にかけて、容疑者の動向を継続的に監視したうえで、5月27日午前6時、スイス警察がこのホテルに踏み込んで、容疑者らの身柄を拘束した。 5月27日、リンチ米司法長官は、記者会見を行ない「(ワールドカップを)どこで開催するのか、誰が試合を中継し、誰が運営するのか。それは全て賄賂で決まっていた」と断言した。実はFBIとIRSの協力によるFIFA汚職の捜査は、かなり長期にわたって継続していた。そして、この案件でのブレークスルーとなったのが、2011年に、FIFA実行委員会の米国人メンバーであるチャールズ・ブレイザー氏をFIFA内部情報の提供者としたことだ。ブレイザー氏は、北中米からカリブ海サッカー連盟の事務局長を1990年から2011年まで勤めていたが、当局により、脱税の事実を把握されていた。2011年にブレイザー氏は司法取引を行ない、FIFAの内部情報の提供に合意していたのである。ブレイザー氏の場合、本来なら最大で合計100年の刑となるが、覆面捜査に協力した為に、この司法取引により、脱税資金洗浄による75年分の禁固刑を免れている。スイス政府のもう1つの決断 FIFA幹部が逮捕された5月27日、スイス政府は重大な決断を行なっている。スイス政府はEUとの間で、租税情報の自動交換協定に調印したのである。これによりスイスは、EU加盟各国に対して、2017年から口座情報を保存し、2018年から年1回、定期的に租税情報を交換する事になった。スイスは既に、口座情報の自動交換に関しては、経済協力開発機構(OECD)の加盟国とは既に交換協定を結んでおり、2016年から自動交換を開始する。 さて、ヨーロッパ大陸内には、スイスの他にもタックスヘイブンが存在してきた。それはアンドラ、サンマリノ、モナコ、リヒテンシュタインなどの小国である。ところがEUは、スイスと調印したのと同様の租税情報交換協定を、これらの国々と2015年年末までに調印する予定になっている。5月27日のEUスイス間の租税情報自動交換協定の調印は、勿論、FIFA幹部の逮捕とは直接には関係しているわけではないが、如何にも象徴的な事件であったと言える。 FIFAはそもそも、スイスの非営利団体として設立されている。この団体がスイスの銀行口座の秘密主義を十分に利用して、その腐敗構造を拡大してきた事は想像に難くない。最早、FIFAの不透明な金融取引を守るスイスの銀行秘密主義という暗黒の盾は完全に崩壊してしまったのである。 ちなみに米司法省は、現地司法当局の協力を得て、外国で容疑者逮捕を行なう場合がある。例えば、2015年4月には米司法省はロンドンを拠点とするトレーダーのナビンダー・サラオ容疑者を逮捕・起訴している。サラオ容疑者は2010年5月にダウ工業平均を数分の内に1000ドル以上、暴落させた所謂「フラッシュ・クラッシュ」の張本人と言われており、他の不正な金融市場操作の容疑ももたれている。この件では、米司法省は英国司法当局との協力で同氏を逮捕した。 米連邦捜査局(FBI)のコミー長官は「もし、アメリカ国内で汚職の謀議をしたり、アメリカの金融システムを使って腐敗資金の受け渡しを行なったりすれば、当局は決して見逃さない」と記者会見で言明した。ニューヨーク東部地区連邦地検が明らかにした起訴状によれば、FIFAは数10億ドルのカネをスイス大手金融機関にある自己の口座からその米国支店を経由し、賄賂の一部はJPモルガンチェースやシティバンクのニューヨーク店舗の口座に送金されていたとの事である。被告らが実際の賄賂の支払いについて話し合ったマイアミやニューヨークのクイーンズ地区での会合の詳細な内容も、この起訴状は明らかにしている。 5月29日に、5期連続で会長選挙に勝利したゼップ・ブラッターFIFA会長(79)が、6月2日にはこれらの事件の影響で辞任の意向を発表した。しかしそれ以降、ブラッター会長は辞任を撤回し、会長職にとどまる事をにおわせている。会長の側近筋は「アジアとアフリカからブラッター会長への支援のメッセージが多数届いている。納得できる後任候補が現れなければ続投を検討する」ともらしている。 一方、スイスの検事総長マイケル・ローバー氏は、2018年ロシアと2022年カタールのワールドカップ招致に関連し53件のマネーロンダリング疑惑があると発表している。マネーロンダリングに関しては今後、関連した金融機関自身が捜査の対象となる可能性がある。関連記事■ 岡田優介が見た日本のバスケ界 改革に選手の声は反映されるか■ 改革へ豪腕振るう川淵C 現場には困惑も■ 田中将大投手を襲ったケガの裏にあるもの

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    FIFAの腐敗とアングラマネー

    世界に衝撃を与えた米司法省によるFIFA(国際サッカー連盟)の強制捜査から1カ月余り。腐敗にまみれたFIFAの体質が次々と明らかになり、ついにブラッター会長を辞任に追い込んだ。だが、捜査当局の真の狙いはFIFAではなく、背後にあるアングラマネーともいわれる。巨大利権の闇は暴かれるか。