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    オバマでも屈したアメリカ銃規制の高すぎる壁

    、銃を乱射した。 コンサート会場に集まった2万2千人の観客を標的にした無差別事件であり、現代の無差別テロの傾向に似ている。ラスベガスという観光地、そしてランドマークのホテルから、コンサートというメディアイベントの大規模集客施設を狙った、典型的なソフトターゲットへの攻撃といえる。 また、容疑者はラスベガスから約130キロ離れたメスキート在住の米国人という意味でローンウルフ(一匹狼)型であり、ホームグロウン(自国育ち)型といえる。そういう意味では、典型的な現代的テロリズムの特徴を備えた事件であり、実際、「イスラム国」(IS)系のアマク通信はこのラスベガス銃乱射事件に対して犯行声明を出し、男は「2~3カ月前にイスラム教に改宗した」と発表した。 しかしながら、この事件は「テロリズム」ではないとされている。実際、連邦捜査局(FBI)は記者会見で、この容疑者にはイスラム国との接触経験はなく、そのほかの国際テロ組織との関連性もないと発表し、この事件は「テロリズム」ではないとする判断を示した。テロと大量殺傷の「境界線」 この事件が「テロリズム」であるのか、銃乱射による大量殺傷事件なのか、という違いは、そこに政治的目的・意図があるかないかによる。拙著『メディアとテロリズム』(新潮新書)と『テロとインテリジェンス~覇権国家アメリカのジレンマ』(慶応義塾大学出版会)でも示したように、国際的なテロリズム研究や、テロ対策の文脈において、「テロリズムとは政治的目的・意図をもって爆破や銃撃事件を起こしたり、人質事件を起こしたりすることによって、世界から注目を集め、メディア報道を通じて自分たちの政治的な主張やメッセージを世界に宣伝することで、一国の政策を変更させたり、社会に不安や混乱を発生させることを目的とした暴力行為である」と定義することができる。 この事件が「テロリズム」とされるためには、イスラム過激派、白人至上主義、反グローバリズム、民族解放、極左ゲリラ、環境問題や動物愛護といったシングル・イシュー型など、この犯行には政治的目的・意図が必要となる。容疑者が自殺した以上、容疑者に対して直接的にその犯行の目的や意図を聴取することはできない。捜査によって容疑者の中にこうした政治的目的があることを示す証拠が出てこなければ、「テロリズム」とはみなされない。(iStock) 現在の報道で明らかになっている情報には、容疑者はカジノ、ギャンブルが好きで多額の賭けを繰り返していたこと、多額の借金を抱えていたギャンブル依存症の人物であったことが挙げられる。また、ホテルの一室には23丁のライフルなどの銃器のほか、自宅にも他に19丁の銃、爆発物、大量の弾薬を所持していたことが明らかになっている。また容疑者の父親は、有名な銀行強盗事件の実行犯であり服役していたことも判明している。 こうした情報から分析できることは、容疑者はこのような事件を起こすほどの心神喪失状態にあったか、または多額の借金の返済に困り、自暴自棄になって自殺するのに大量の人を道連れにしようとした、ということである。現在、こうした高齢者による自暴自棄犯罪や、自暴自棄型の自殺が目立つようになったが、そこにあるのは社会への恨みを晴らすために他者を巻き込む心情と自己顕示欲である。犯罪対策や危機管理のためには、今後、こうした容疑者のプロファイリングが重要となる。本格的な銃規制にはつながらない もうひとつの論点となるのが、米国における銃規制の問題である。米国は州によって多少の制度面の差があるものの、銃を持つ権利、自由が認められている銃社会である。イデオロギー的には、銃を持つ自由や権利を主張することはリバタリアン(自由主義者)の特徴であり、銃を持つ権利を規制する銃規制の立場はコミュニタリアン(共同体主義者)の特徴である。こうしたイデオロギー上の問題だけでなく、米国内で繰り返される銃犯罪に対する被害を目にして心情的に銃規制に賛成する国民も多い。 オバマ前大統領は繰り返される悲劇に対して、銃規制を政策化するための動きを見せたが、全米ライフル協会などの反対もあり実現しなかった。今回も、細かい銃の種類や性能について、その購入や保持に関する規制の議論は発生するものの、本格的な銃規制に向けた制度改革には結びつかない可能性が高い。米国には、銃を持つ権利・自由を保持しながら、銃犯罪が発生しないような社会をつくる犯罪対策、危機管理の構築が求められている。銃保有者の登録に関するデータベース管理や行動監視の強化など、具体的な施策の強化が必要である。 今回の銃乱射事件は「テロリズム」ではなかったが、この大量殺傷をもたらした手法は、十分にテロリズムに応用可能なものである。実際に現在のテロ対策の警備では、スポーツ競技の会場や、コンサート会場では手荷物検査が強化されているが、ホテルなどの宿泊施設では手荷物検査は実施されていない。これは米国でも、日本でも状況は同じである。野外コンサート会場で手荷物検査が実施されていても、今回の事件のように隣接するホテルの32階から銃を乱射されれば、大量の死傷者が発生することは警備の専門家から見れば自明の理であったが、これまでその対策は実施されなかった。 日本においても、例えば東京の迎賓館に外国の要人が来賓として滞在しているときには、その迎賓館をライフル等で射撃が可能な近辺の高層ビルには警備のために警察による規制が入る。こうした迎賓館のようなハードターゲットだけではなく、今後は、こうしたコンサート会場やスポーツ施設など屋根のない野外会場などソフトターゲットにも、近辺のビルなどに警備が必要となる可能性がある。米西部ラスベガスの銃乱射事件で、スティーブン・パドック容疑者が割ったとみられるホテル「マンダレイベイ」の窓=10月3日(共同) 2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、日本のテロ対策に新しい課題が突き付けられたといえるだろう。

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    史上最悪の銃撃犯は“ギャンブラー”謎の素顔

    出し、戦士が指導者バグダディの「十字軍の連合国を狙えという呼び掛けに応じた」と再び主張した。 ISはテロ事件と関わりがなくても、自分たちの犯行とするケースもあるが、今回は短時間のうちに執拗に犯行を主張しており、犯人との関係に相当自信を持っているのかもしれない。フィリピンで6月、カジノでの乱射、放火で、37人が死亡した事件が発生した時も、ISは犯人をISの戦士として犯行声明を出している。この事件はギャンブルの借金が犯行の動機だった。 ラスベガスの事件の前、米国で最大の銃撃事件は昨年6月、フロリダ州オーランドのナイトクラブで起きた49人殺害事件だった。この時はISの過激思想が引き金になった「一匹オオカミ型テロ」だったが、今回の事件の被害者はそれをはるかに上回る史上最悪のテロとなった。犯人は「引きこもり男」? 問題は動機だ。その解明は今後の捜査に任せなければならないが、ギャンブルによる借金やトラブルが原因なのか、それともISの過激思想に共鳴した犯行なのか、全く不明だ。ワシントン・ポストなど米メディアの報道からは、引退して余生を「ギャンブラー」として過ごす「引きこもり男」の素顔が浮かび上がってくる。 パドックはここ数年、ラスベガスから北東約130キロのところにある町メスキートにM・Dと一緒に住んでいた。子供はいない。住んでいた地区は引退した人々のコミュニティーだが、近所づきあいはほとんどなく、静かで、よそよそしく、引きこもりの印象だった、という。 パドックは2013年にこの住宅を購入したが、州内の他の場所にも住宅を所有していた。M・Dはパドックのことを「プロのギャンブラー」として近所に紹介しており、ラスベガスを訪れてはポーカーなどのギャンブルをし、時にはカントリーミュージックのコンサートに行くなど引退生活を楽しんでいるかのようだった。 フロリダに住んでいるパドックの弟の話として伝えられるところによると、パドックは金持ちで、ギャンブルにはたびたび、数万ドルを賭けていた。「25万ドル儲けた」と言ってきたこともあった、という。5日前には、パドックはフロリダを襲ったハリケーンの被害を心配してメールしてきた。 パドックはフロリダで会計士や不動産屋として稼ぎ、1985年から3年間、軍事産業のロッキード・マーティンに勤務したこともある。その後、テキサスやカリフォルニアなどを転々とし、ネバダ州に移った。弟によると、精神疾患もなく、また宗教や政治団体とも関わりがなかった。なぜこんな事件を起こしたのか全く理解できない、としている。米ラスベガス銃乱射事件のパドック容疑者が銃を乱射後、自殺したホテルの部屋の様子(UPI=共同) パドックは航空機のパイロットの免許も持っており、自家用機2機を保有、アラスカでの狩猟免許を取得している、と報じられている。ただ、父親はパドックが小さい頃、銀行強盗容疑でFBIから指名手配を受けていた。 パドックは少々変人のような面も持っていたが、史上最悪の銃撃テロを起こすような人物像とはかけ離れている。何が彼をテロに駆り立てたのか、米国の銃社会故の犯行なのか。東京に滞在しているとされるM・Dが何らかのカギを握っている可能性もある。何よりも早急な動機の解明が求められるところだ。ささき・しん 星槎大学客員教授、共同通信社客員論説委員。ベイルートやカイロ支局長を経て外信部副部長、ニュースセンター長、編集局長などを歴任。

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    テロという暴力に対抗するにはエロスの力が必要

     多発するテロなど、昨今は暴力があふれている時代になってしまった。これに対応しうる手段はないのか。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏が指摘する。* * * 世界中でテロ事件が勃発している。ここ数か月間に発生したものだけでも、その件数と死傷者の多さに驚く。 米国フロリダ州オーランドのナイトクラブで、男が銃を乱射。50人が犠牲となった。イラクの首都バグダッドでは、少なくとも2か所の自爆攻撃により200人以上が亡くなった。 トルコのイスタンブールでは空港で銃撃と3件の自爆テロが同日発生した。アフガニスタンでも自爆テロがあり、少なくとも80人が死亡した。 フランスのニースでは、男がトラックを暴走させ、パリ祭を祝う人々を次々とはねた。84人が亡くなったが、うち10人が子どもだったという。 バングラデシュのダッカでは、武装グループがレストランを襲撃し、日本人7人を含む20人の命を奪った。犠牲になった7人の日本人は、バングラデシュ発展のため国際貢献に尽力していた。許せない! あまりにも悲しい。ダッカ市内のテロ現場近くで、市民が供えた多くの花束の前で犠牲者の冥福を祈る政党関係者ら=2016年7月7日(岩田智雄撮影) 犯行グループには、政治家の子弟や外国に留学経験もある恵まれた若者たちがいることがわかった。日本の大学で教えていた男もいた。 貧しさから生まれた犯行というのとはちょっと違う。豊かであり、高等教育を受けている者たちがなぜ、このような暴力に突き進むのだろうか。20世紀の精神医学の巨匠フロイトは、こんなふうに言っている。「人間がすぐに戦火を交えてしまうのが、破壊衝動のなせる業だとしたら、その反対の衝動、つまりエロスを呼び覚ませばいいことになります。だから、人と人の間の感情と心の絆をつくりあげるものは、すべて戦争を阻むはず」(『ヒトはなぜ戦争をするのか』花風社)。愛と絆がキーポイント。愛する相手にむき出しの性的な欲望を向けるような愛も大切だ。もう一つの感情の絆は一体感や帰属意識によって生み出される。 人間のなかには、死へと向かう破壊欲求と、生きようとする生存欲求が内在する。タナトス(死への欲求)とエロス(生への欲求)の二つといわれる。 この相反する欲求は、互いに絡み合って、人間をより複雑な生きものにしている。長い歴史のなかでぼくたち人間は、破壊衝動や暴力に偏り過ぎないように、スポーツやゲーム、法律や風習、文化など、さまざまな仕掛けで自分たちを守ってきた。 だが、今世紀、資本主義の行き詰まりによって均衡が崩れ、またもや人間の暴力性が暴れだしているように感じる。フロイトのいうように、暴力に対抗していくには、人間の基本の部分にあるエロスの力が必要なのだろう。●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。近著に『「イスラム国」よ』『死を受けとめる練習』。関連記事■ 消費や海外旅行せぬ「さとり世代」の61名と本音で語った本■ 子供の頃の虐待経験が寿命を短くする デューク大研究で判明■ 暴力団組員にとって「法の下の平等」は絵空事と溝口敦氏分析■ 日本で初めて公安捜査官の戦いを実名で描くノンフィクション■ 戦争を経験した老人が社会に不満を持ち立ち上がる村上龍新作

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    世界一厳しい「共謀罪」がある英国でなぜ無差別テロは続発するのか

    理学部教授) 英国マンチェスターにおける歌手アリアナ・グランデのライブ会場で5月22日に発生した爆弾テロ事件の死者は22人、負傷者は多数に上った。サルマン・アベディ容疑者による自爆テロであった。容疑者はリビア系イギリス人の22歳の男性、リビアからの難民二世であったと伝えられている。6月4日、英中部マンチェスターでアリアナ・グランデさんらが出演した慈善公演(ロイター=共同) これこそ現代の国際テロの特徴がそろった典型的なテロリズムだといえる。まずは一般市民を狙った無差別テロという特徴である。標的となったのはライブ会場という「ソフトターゲット」で、「メディアイベント」「ランドマーク」「公共施設、交通機関」などが挙げられる。 メディアイベントとは国際的に要人やメディア、観客が集まる五輪、サッカーW杯、サミットのような国際的イベントがそれに当たる。また、2つ目のランドマークとは、2001年の米同時多発テロ事件でニューヨークのワールド・トレード・センター・ビルが攻撃され、計画段階では自由の女神像までも標的となっていたようにその国の文化的、歴史的な象徴となるもの、観光地などが含まれる。3つ目の公共施設には誰でも利用できるライブ会場やスポーツ競技場、レストランなどが含まれ、交通機関には鉄道の駅や空港などが含まれる。 さらに、現代テロリズムの次の特徴はその国で育った国民、住民がテロを起こす「ホームグロウン」(自国育ち)型テロという側面であり、テロ組織に所属しない個人や兄弟などでテロを実行する「ローン・ウルフ」(一匹狼)型テロという側面である。今回のマンチェスター爆弾テロ事件には、これらの現代的テロリズムの特徴がすべて当てはまることが分かる。実は、2013年の米ボストンマラソン爆弾テロ事件など現代の多くのテロ事件がこの特徴に該当する。イスラム国(IS)をはじめとするイスラム過激派組織が「グローバル・ジハード(聖戦)」と呼ぶ戦略に基づいたものである。 この現代的テロリズムの特徴を改めて問い直すことが重要なのは、この現代的テロリズムの特徴が、現代のテロリズムを未然に防ぐことが極めて困難になりつつあることの原因だからである。かつて1900年代中盤くらいまでは主流であった要人暗殺テロよりも、現代において一般市民を狙った無差別テロが増えたのは、政治家など権力者の警備が極めて強固になったことにより、要人暗殺テロの実行が容易でなくなったことの反動である。また同時に、社会が民主化されることにより、国民の生命の価値がより尊重される時代が到来したこともその遠因の一つである。テロリズムと対策の「いたちごっこ」 また、ホームグロウン型が増加したのは、2001年の米同時多発テロ事件以降、世界各国のテロ対策が強化され、出入国管理が極めて厳しい状況に変わったことが大きい。米同時多発テロ事件は、中東各国から国際テロ組織「アルカーイダ」によってリクルートされた若者たちがアメリカに入国して潜伏することにより実行された。事件後、出入国管理が強化され、外国からテロ組織に関与する人物が入国することが極めて困難になったことにより、もともとその国に生まれ育った国民を過激化させ、その国内でテロ事件を起こさせるという手法に切り替わったというのが、ホームグロウン型が潮流となった原因である。 一方、ローン・ウルフ型が増加したのは、テロ対策の一環で監視カメラの運用や、電話やメールなどの通信傍受が強化されたことの反動である。通信傍受や監視カメラなどテロ対策における監視の強化によって、テロ組織がメンバー同士で会合をしたり、連絡を取り合ったりすることが極めて困難となった。そこで、テロリズムを実行するためにグループでメールや電話の連絡を取り合う必要のない、単独犯の個人または兄弟など極めて近しい関係者だけで実行されるローン・ウルフ型が増加したのである。ロンドンで起きたテロ事件で、車が通行人をはねたロンドン橋付近を警戒する警官ら=6月3日(ロイター=共同) このように、テロ対策やインテリジェンス活動が強化され、進化すると同時に、テロリズムの形、テロリズムの特徴も変化してきたことがわかる(※1)。テロ対策と監視活動を強化するほど、それをすり抜けるための新しい形のテロリズムが誕生する。さらに先日6月4日にロンドンで発生したテロ事件は、3人の容疑者が車を暴走させて市民を引き倒し、その後市街地のレストランやバーでもナイフを使って無差別に刺殺するという犯行であった。このように近年増加している車やトラックの暴走により一般市民をひき殺すテロ、ナイフなど身近な道具を使ったテロは、未然に防止することが極めて困難である。 イギリスには2006年に制定されたテロリズム法や2005年のテロリズム防止法など、テロ対策に関する基本法的な法制度が存在する。これらの包括的なテロ対策の仕組みにより、イギリスでは容疑があれば令状なしで48時間拘束することができる。 同時に、共謀罪の枠組みも整備されており、イギリスは最もテロ対策、特にテロを防止するための法制度が進んでいる国の一つだといえる。さらには、情報局保安部(MI5)、秘密情報部(MI6)などの機関によるインテリジェンス活動も世界でトップレベルの運用がなされている。しかしながら、このようにテロ対策が進んでいるイギリスにおいても、こうしたテロ事件を食い止めることが難しいという現状がある。それは、テロ対策の進化と同時に、それをすり抜けるためのテロリズムの形も変容し、進化しているためである。文化的多元主義を許容できるか マンチェスター爆弾テロ事件の容疑者は、事件前からインテリジェンス機関の要注意人物リストに含まれていたという情報がある。それでもこの事件は未然に防ぐことはできなかった。それはインテリジェンス活動におけるテロリズムの監視の「5W1H」に鍵が潜んでいる(※2)。 インテリジェンス機関はその諜報活動、監視活動により危険人物が誰か(WHO?)を特定することはできる。だが、その危険人物が、いつ(WHEN?)、どこで(WHERE?)、テロリズムを実行するかを特定するのは極めて難しい。それがローン・ウルフ型のテロリズムの防止、監視の難しさであり、この5W1Hを完全に把握するためには、より強大な監視体制を構築せねばならなくなる。テロ対策による「安全・安心」の価値と、監視や諜報活動により損なわれる可能性のある「自由・人権」の価値のバランスこそが民主主義社会においては重要であり、市民の「自由・人権」を守ることができる民主的でリベラルなテロ対策のあり方が求められている。5月23日、英マンチェスターの市役所前にささげられた花の前でうなだれる女性(ゲッティ=共同) マンチェスター爆弾テロ事件において、ISが犯行声明を出した。その声明の中には、このような表現があった。「爆弾は恥知らずな祝宴のためのアリーナで爆発し、約30人の十字軍兵士を殺害、約70人を負傷させた」。グローバル・ジハード戦略によって世界各国で発生するホームグロウン型テロに対して、ISは事後的に犯行声明を発表して追認する姿勢を常にとってきた。 イスラム原理主義者、イスラム過激派の思想には、こうした欧米のポップシンガーのライブが「恥知らずな祝宴」であると映ること、こうした欧米の大衆音楽、ハリウッド映画、ディズニーランドといった欧米型エンターテインメントが文化帝国主義的な「十字軍兵士」と映ることに、世俗社会に生きる私たちは想像力を巡らせなくてはならない。文化的多元主義を許容できる社会を目指して、孤立する個人やコミュニティーの過激化を根本的に防ぐ長期的なアプローチの構築が必要であることを、このテロ事件は示している。【参考文献】(※1)福田充『メディアとテロリズム』(2009、新潮新書)(※2)福田充『テロとインテリジェンス~覇権国家アメリカのジレンマ』(2010、慶應義塾大学出版会)

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    「共謀罪」があってもテロは防げない?

    共謀罪の構成要件を厳格化した「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が成立した。与党が委員会採決を省略する異例の中間報告に踏み切ったことに、野党は「究極の強行採決」と非難したが、そもそも共謀罪はテロ対策になり得るのか。海外の先行事例も踏まえ、この問いについて考えたい。

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    安倍総理が絶対に言いたくない「共謀罪」の恐るべき狙い

    小口幸人(弁護士) テロ対策にならない「共謀罪」が成立しました。政府与党は、最後まで「テロ対策」として成立させました。この事実は、二つのことを物語っています。 一つは、安倍政権はテロ対策を真面目にやっていないということです。一国民としてはとても心配ですが、裏を返せば、日本でテロが行われるという危険はそこまで差し迫っていないということなのかもしれません。 もう一つは、目的不明の共謀罪が成立したということです。任意捜査の名の下に警察による監視活動が広がることは止めようもありませんし、通信傍受法改正も数年以内に行われるでしょう。 将来、どの政権が共謀罪を戦前の治安維持法のように乱用的に使い始めるかはわかりませんが、そのボタンはセットされてしまいました。 そのボタンが押される対象としては、沖縄の辺野古新基地建設反対運動が最有力でしょうが、原発再稼働反対運動もその候補です。今後予定されている、核のゴミの最終処分場選定にまつわる反対運動も候補でしょう。 望み薄だとは思いますが。乱用される前に、警察が「任意捜査」の名の下に行う捜査・監視に法規制をかけることで実質的に法の支配を確保し、捜査の必要と人権保障を適正に両立できるようになることを期待したいと思います。※以上6月15日追記、以下は法案成立前に執筆テロ等準備罪法が成立。記者団の質問に答える安倍晋三首相=6月15日、首相官邸(酒巻俊介撮影) 政府は、テロ等準備罪(共謀罪)法案は、国際組織犯罪防止(TOC)条約の批准に必要だとし、TOC条約に批准することがテロ対策になるとしています。しかし、TOC条約を批准している国でテロが起きています。共謀罪発祥の地とも言われるイギリスでもテロが続いています。 TOC条約や共謀罪がそろっている国でなぜテロが起きているのか。答えは簡単です。TOC条約はテロ対策ではないからです。共謀罪もテロ対策の役に立たないからです。政府は事実と異なる説明をしているということです。 TOC条約がテロ対策でないことは、条約の立法ガイドを書いた張本人であるニコス・パッサス教授が断言したことで、議論の余地がないほどはっきりしました。疑問に思われる方は、ネットで検索して外務省のホームページから和訳を読んでください。最初の数条を読めば、経済目的の犯罪対策、つまりテロ対策ではなくマフィア対策であることがおわかりいただけます。政府は説明してくれない そもそもTOC条約は、インターネットもまだ普及していない1992年にイタリアで起きたマフィア犯罪をきっかけに成立した条約です。主な内容はマネーロンダリング(資金洗浄)対策です。1993年から会合が重ねられ2000年に国連総会で採択されています。2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロより前に採択された条約が、今のテロ対策になると強弁するのは、余りに国民をばかにしていると思います。 そして、共謀罪法案もテロ対策になりません。共謀罪は、今でも犯罪として定められている277の罪を、実行されなくても、計画段階でも犯罪にするという法案でしかありません。計画段階で処罰できるようになったからといって、警察が突然パワーアップするわけではありません。 もっとも、わが国は9.11の翌年に行われた日韓ワールドカップを無事開催した国です。サミットも開催し続けています。日本の安全対策は国際オリンピック連盟にも高く評価されるほどであり、その結果、オリンピックが東京にやってくることになりました。 そもそも犯罪の未然防止は、今でも警察法に定められた、警察の立派な使命です。警察は今も犯罪の未然防止に力を尽くしており、手を抜いているわけではありません。そしてその結果、犯罪は減り続けています。刑事事件の数は、統計上戦後最低水準にあります。 なお、TOC条約に批准したとしても、その結果海外から提供されるようになる情報はマフィア犯罪に関する情報です。よって、この点でもテロ対策能力が高まるわけではありません。テロ対策訓練で化学兵器を調べる県警NBCテロ対応専門部隊 =5月18日、千葉県の幕張メッセ(長谷裕太撮影) 他方で、わが国はテロ対策の代表的な条約を全て批准しています。政府も2004年から体系的なテロ対策を立てており、安倍政権になった後も2013年12月10日に「世界一安全な日本創造戦略」を立て、その中で独立した項目を設け、オリンピック開催に備えたテロ対策を講じています。 ここまで述べたとおり、TOC条約はテロ対策ではありませんし、共謀罪もテロ対策の役には立ちません。どちらもテロ対策でないとわかれば、既に批准した国で、共謀罪のある国でテロが起きているのも何ら不思議ではありません。 では、さらなるテロ対策を講じる必要はないのかということですが、正直なところ、私にはよくわかりません。どんなテロがどの程度懸念されているのか、具体的にどんな事象があったのかを、政府が説明してくれないからです。嘘をそのままにするな! ただ少なくとも言えることは、新たなテロ対策を検討する必要があるならば、まずすべきことは2013年に策定されたテロ対策「世界一安全な日本創造戦略」を改定し、体系的な対策を検討することでしょう。テロ対策でない条約をテロ対策と言ってみたり、2003年から何度も出してきた共謀罪を突如テロ対策として出してくることではありません。 その上で、日本人のわれわれが、なぜイギリスでテロが起きたのか、そして防ぎきることができないのかを考えるのは重要なことだと思います。イギリスは防犯カメラ対策が最も講じられている国であるとされ、通信の監視等もアメリカのそれに近いものが行われていると言われています。それでもテロが起きていることに照らせば、日本が新たに2、3法律をつくったところで、果たしてどうなんだろうという気がします。 この部分で、一弁護士にすぎない私がお伝えできることは数多くありませんが、考えていることは三つあります。一つめは、見ている世界地図が違うということです。日本人は日本が真ん中の世界地図を見ていますが、多くの人は大西洋が中心の世界地図を見ています 日本は極東の島国に過ぎません。二つめに考えていることは、わが国がイスラム国に不利益なことを、他国と比べてどれほどしているかということです。三つめは、テロを減らすために、なくすために本当に必要なことは何なのかということです。自分と異なる価値観を認め合える社会を築き、貧富の差を縮める努力をし続ける、そこに尽きるのではないかと思います。組織犯罪処罰法改正案の採決で牛歩で投票に向かう野党議員(左下奥)=6月15日、国会(斎藤良雄撮影) 仮に、本当にテロ対策を講じる必要があるのであれば、検討するのは捜査機関の捜査能力をパワーアップすることであって、共謀罪を設けることではありません。新たな捜査手法を警察に付与し、装備や設備や人員を増強、日本版の国家安全保障局(NSA)や連邦捜査局(FBI)を設けることなどでしょう。そして、正直に国民に話すこと。これだけテロが起きそうな予兆があり、テロを防ぐためには監視を強め捜査権限を高める必要がある。だから一般市民も幅広く監視するし、通信も監視する。自由も狭められる。衛星利用測位システム(GPS)捜査も幅広く行うし、通信記録も携帯電話会社から開示してもらう。アメリカから提供された監視システム「XKEYSCORE(エックスキースコア)」も使う。それぐらいしないとテロは防げないから国民のみなさん我慢してください、と。 しかし、ご存じのとおり政府はそんなことは言いません。一般の人は対象にならないと強弁し続けるだけです。これで信用しろというのは無理というものです。 そして歴史は教えてくれます。政府が本当の目的を言わないときは危険だということを。もし、国を憂い、テロ対策を真面目に考えるのであれば、共謀罪がテロ対策だという嘘をそのままにして成立させてはならないと思います。テロ対策でないことを明確にし、本当にテロ対策が必要なら、そっちの議論を求めるべきです。

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    「監視カメラ大国」英国の共謀罪はここまで進んでいる

    宮坂直史(防衛大学校教授) イギリス・マンチェスターのコンサート会場で先月23日に自爆テロが起き、多数の死傷者が出ました。今月4日にはロンドン橋とその付近でもテロが起きました。もちろんイギリスだけではありません。この2つの事件の間にも、バンコク、バクダッド、アテネ、ミニヤ(エジプト)、ホースト(アフガニスタン)、ジャカルタなどでテロは起きていますし、年間の総数では全世界で1万件は下らない不安定な情勢が、ここ何年も続いています。 ただ、イギリスの場合、先進民主主義国家としては最も厳しいテロ対策を導入している国ということもあって、ひとたび事件が起きると、大きな関心が向けられます。日本で15日に成立した、いわゆる「共謀罪」も長年イギリスにはあります。 加えて、2001年の「反テロ法」制定以降の取り組みの中では、容疑者の無期限拘束を可能としたり、テロを称賛することを禁止するなどしてきました。令状なしの身柄拘束という日本ではありえないこともできますし、「監視カメラ大国」(約600万台)とさえ揶揄されています。犠牲者へのメッセージや花束、供え物を見て涙を流す警察官=2017年5月、英マンチェスターのアン女王広場 そういう国でテロが起きると、取り締まりや規制を中心とする小手先のテロ対策をしても、あるいは共謀罪などを導入しても結局、テロは防げないではないか、だから不要だといわんばかりの議論も出ています。 このような考え方は、テロテロ対策についての無知や誤解に基づくものだといえます。イギリスでは2005年7月に同時テロが発生しましたが(その国で育った人が起こす「ホームグロウンテロ」の先駆けと言われた)、同国に在住している2万人以上といわれるイスラム過激主義者の多さに比べて、よくテロを防いできた方です。 一例をあげると、2006年に24人もの英国人を逮捕して、米国とカナダに向かう旅客機10機の同時爆破計画を共謀・準備段階で防ぎました。これは、過去最大級の未然防止の成功例になるでしょう。 この事件をきっかけに、航空機内への液体の持ち込みに厳しい規制がかかったので、それを記憶している方も多いと思います。ロンドン五輪(2012年)当時もグローバルテロの情勢は不穏でしたが、当局はテロを封じ込めました。では、どのようにしてテロを防ぐのでしょうか。共謀罪に限らず、何か法律を整備したからといって自動的にテロが防げるものではありません。法的万能薬など、どこにもありません。 まず、テロを企てるのではないかと思われる人物に関する情報収集や分析と、関係機関での情報共有がカギになります。マンチェスター事件の自爆犯は、英情報局保安部(MI5)の監視対象者でした。それは約3千人もいるうちの1人です。監視といっても1人に対して何人もの要員が必要で、対象者を24時間、通信傍受も含めてすべて見ていることは物理的にできません。 ロンドン橋での実行犯のうち1人はイタリア人であり、同国で監視対象者だったようですが、イギリスとの情報共有が問題になっています。 上記した航空機テロの防止は、住民の通報に依拠していた点も見逃せません。市民が周囲の異変に気づいて警察に一報を入れることは、初動として決定的に重要になるでしょう。他にも、テロ組織内およびその周辺にいる情報提供者の役割もあります。 例えば、おとり捜査では、実行直前に容疑者を逮捕しても、情報提供した容疑者については不起訴処分にして捜査側のために働かせるのです。テロを100%なくすのは無理 テロリストは、次々と最新の電子ツールを使って謀議を図り、情報・捜査当局はそれを見破る努力をしています。こういう時代だからこそ、尾行さえついていなければ、昔のように喫茶店の奥のテーブルで、小声で謀議したほうが察知されないかもしれません。 テロの防止が難しいのは、テロの主体が「組織」に限定されないからでもあります。組織として一定期間存続し、メンバーシップが明確ならば、監視も、封じ込めもそれなりの手を打てます。 しかし、1回の事件のために一時的にグループを作る場合や、ましてや単独犯ですと、よほど前科があるとかでなければ、当局の目にはとまりません。市民から通報が不可欠になってきます。自宅で爆弾をつくっていたり、不自然なまでの車両や人の出入りがあれば、周囲に怪しさを発散させているものです。 単独犯でも大勢の犠牲者数を出す例がありますが、テロの歴史を振り返れば、組織・グループのほうがはるかに大きな被害をもたらしてきました。ですから、共謀段階で察知し摘発するか、遅くとも準備に着手しているときに摘発することが最も望ましいのです。けが人を救急車に運ぶ救急隊員=ロンドン国会議事堂近く 最後に、「テロを防ぐ」という意味もよく考えねばなりません。完璧になくすということであれば、自由で民主的な社会とは決別しなければなりません。北朝鮮では、統計上テロは発生していません。 全体主義国家では、テロリスト(非国家主体)が活動する余地などありません。国民がテロのリスクをゼロにして欲しいと願うのは逆に危険なことです。いざ起きてしまうと、政府は何をやっていたんだと批判し、その結果、今より厳しい規制をとらざるを得なくなります。 すべてを政府や警察任せにするのは、自由民主主義の価値から遠ざかります。市民ひとり一人が身近なところで異変に気づき、防止に貢献する意識と行動が必要です。また、海外でテロに巻き込まれないような注意情報は外務省などからも出されていますが、それを真摯に受け止め、回避行動をとるかどうかも、市民の判断にかかっているのです。 テロは100%防げない。だからこそ、日本でもテロ発生後を想定した「国民保護訓練」などが全国的に多数行われてきたことも付言しておきます。

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    「時間の問題だった」英国テロ、一匹オオカミか

    佐々木伸 (星槎大学客員教授) ロンドンの国会議事堂周辺で起きた22日のテロは「起きるかどうかではなく、いつ起きるかだ」(元警視総監)という“時間の問題”だった。しかも車という誰でも容易に入手することができる手段が使われており、事前に犯行を阻止することの難しさも露呈。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出し、事件は一匹オオカミの呼応テロだったことが濃厚だ。 英国のメイ首相が23日、議会で明らかにしたところによると、犯人は英国生まれ、過去にイスラム過激主義との関連で保安局(MI5)の事情聴取を受けたことがある男だった。首相によると、この男は現在の監視対象から外されており、治安当局には事前に犯行に関するような情報はなかった、という。 ロンドン警視庁は犯人を英南東部ケント州生まれのハリド・マスードと発表。当局はマスードが単独犯で、「国際テロリズムに感化された犯行」としており、ISの「地元でテロを起こせ」といった呼び掛けに応じたローン・ウルフ型テロだったのではないかと見られている。事件では、これまでに4人が死亡、28人が重軽傷を負った。ロンドン国会議事堂近くで起きたテロで、けが人に治療をほどこす救急隊員=2017年3月 捜査当局は事件後、ロンドン、中部バーミンガムで家宅捜索などを行い、8人を事件の関連で拘束。ISからの指示など背後関係、犯行を支援した共犯者がいなかったのかどうか、実行犯がいつ、どういう形で過激化し、そして何がテロの引き金になったのかなどに焦点を絞って調べている。 治安関係者が最も懸念し、注目しているのは、テロの手法とテロが起きた3月22日という日時だ。手法については昨年7月にフランスの保養地ニースで発生したアイスクリーム冷凍車の暴走テロ(86人死亡)や同年12月にドイツ・ベルリンで起きたクリスマス市へのトラック暴走テロ(12人死亡)と同様、銃や爆弾など入手が困難な凶器ではなく、どこでも手に入る車を使っていることが特徴だ。 昨年、米空爆で殺害されたISの海外作戦の責任者モハマド・アドナニは「石で頭を砕け、ナイフで殺せ、車でひき殺せ」など、どんな手段を使ってでも米主導の有志国の市民を殺害するよう訴えていたが、2つの事件はこの指示に呼応したテロだったことが濃厚だ。アマク通信は今回の声明で、自分たちの兵士が有志国の市民を襲え、という呼び掛けに応じて作戦を実行したとしており、同種のテロの可能性が強い。 もう一つは日時の問題だ。ちょうど1年前の3月22日にはベルギーのブリュッセルで国際空港、地下鉄の同時爆破テロが起きており、ISにとっての“記念日”に犯行を起こしたとの見方が強まっている。ベルギー・テロの実行犯が犯行前に英国を訪れ、協力者と会っていたことも分かっている。 英国では2005年に地下鉄やバスの爆破テロで52人が死亡する事件が発生。それ以降、国内の過激派への監視や情報網を強化し、テロを未然に防いできた。特にロンドンの監視カメラ数は世界一といわれ、テロ防止に役立ってきた。当局によると、2013年からの3年間で阻止されたテロ計画は12件に上るという。続発が懸念されるテロ だが、フランスやベルギー、ドイツなど欧州でテロが続発する中で、英国だけが無関係のままでいられるはずはない。ロンドン警視庁のホーガンハウ元警視総監は昨年、英国でテロが起きるのは時間の問題とし、英国内のテロの警戒レベルが5段階中の「4」であることを「テロがかなりあり得る」ことを意味すると警告していた。 英国や欧州の治安当局者は今回のロンドン・テロをきっかけに各地でテロが続発するのではないかと恐れている。というのも、シリアとイラクのISが現在、戦場で軍事的に追い詰められ、組織崩壊の瀬戸際に立たされているからだ。 イラクでは、ISの最後の拠点である北部のモスルがイラク軍によってすでに市全体の4分の3が奪還され、5月までには完全制圧されるとの見通しが強まっている。モスルが陥落すれば、ISは事実上イラクから一掃されることになる。イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」との戦闘で、前進するイラク軍特殊部隊 シリアでは首都のラッカ包囲作戦が進み、クルド人らの武装勢力がラッカから10キロ程度にまで迫っている。トランプ政権もシリアの米部隊を増派し、すでに1000人程度が駐留。近く2000人にまで増やすと伝えられており、迎え撃つISは組織存亡に直面している。 治安当局はISがこのように戦場で劣勢になればなるほど、欧州などでのテロが増えると見ており、ロンドン・テロを契機に欧州に潜入しているISの休眠細胞が一斉に動き出すという懸念がある。 ロンドン・テロの後にベルギー・アントワープ繁華街でも車が暴走しようとした事件が発生。トランクからライフル銃などが見つかり、男が拘束された。2月の初めにはパリのルーブル博物館の前で、またこの3月18日にはオルリー空港でテロが未然に食い止められている。テロ続発の兆候は現実のものだ。 欧州では今、「反イスラム」「反移民」を掲げる極右が台頭している。最近のオランダ下院選挙では極右の自由党が票を伸ばし、今後のフランス大統領選挙、ドイツ総選挙などでも極右勢力が勢いを増している。テロが続発すれば、こうした極右が勝利することになりかねない。欧州の政治にテロは直結している。

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    日本でのテロ 当局が警戒するのは新幹線狙った爆弾テロ

    テロ現場になったロンドン橋は、予定されていたライブ会場からテムズ川に沿って車でたったの10分の距離。まさに危機一髪でした。もしあのまま開催して、ファンやメンバーが巻き込まれでもしていたら──」(芸能関係者) 6月3日夜、英ロンドン中心部のテムズ川に掛かるロンドン橋でテロ事件が発生した。刃物で武装した3人が乗るワゴン車が暴走。歩行者を次々とはねた後、近くの飲食店を襲撃。少なくとも7人が死亡、50人近くが重軽傷を負う大惨事になった。「実はその前夜、EXILEの弟分の、7人組の人気グループ『GENERATIONS』がロンドン公演を行う予定でした。オフィシャルツアーが組まれ、日本からも大勢のファンが現地に向かうはずだった。ところが、運営サイドは2週間前に起きた英マンチェスターでのテロ事件を受け、開催直前に中止を決断していたんです。本当に英断でした」(前出・芸能関係者) 5月22日のマンチェスターの事件は音楽イベントを狙ったテロで、米人気歌手のアリアナ・グランデ(23才)が収容人数2万人の屋内アリーナで開催したコンサートの終了直後、会場入り口でテロリストが自爆。8才の女児を含む22人が死亡、59人が負傷した。 欧州ではイベント会場や繁華街を狙った無差別テロが相次いでいる。昨年7月にはフランスのリゾート地のニースで、花火の見物客にトラックが突っ込んだ後、銃を乱射し84人が死亡。12月にはドイツ・ベルリンで、買い物客で賑わうクリスマスマーケットに鉄骨を積んだ大型トラックが突入した。今年に入ってからも、3月にはロンドンの国会議事堂を狙って車が暴走し、4人が犠牲になっている。日本も安全ではない いずれのテロ行為も、過激派組織イスラム国の関与が報じられている。彼らが2015年、「すべての日本人が標的だ」と宣言したのは記憶に新しい。では、日本国内ではどんな場所が狙われるのか。「いちばんのターゲットは彼らが最も敵視するアメリカの大使館(東京・虎ノ門)でしょう。実は、そこにアメリカの情報機関CIAの下部組織『中近東分析室』があり、イスラム国の情報分析を行っています。しかし、最近のテロでは政府や軍の施設といった警備が厳重な“ハードターゲット”ではなく、劇場やカフェといった一般市民が集まる“ソフトターゲット”が狙われる傾向があります」(公安関係者) なかでも当局が警戒しているのが走行中の新幹線を狙った爆弾テロだ。「上り列車と下り列車のすれ違いざまに先頭車両で爆弾を爆発させれば、2つの列車が同時に脱線する。猛スピードで走る新幹線だけに、膨大な数の被害者が出るのは避けられません。日本では火器銃器の使用は難しいが、爆弾の製造は簡単です。材料は街中のドラッグストアで簡単に購入できるし、製造方法はネット上に公開されていますから」(前出・公安関係者) 英仏海峡高速列車『ユーロスター』では、空港と同様に手荷物検査やX線検査が行われている。ご存じのように、日本の新幹線にはそのような検査はない。「実際に、2002年に過激派組織アルカイダの関係者が逮捕された際、関係先から新幹線の運行システムに関する資料が見つかっています。標的の1つとしていたと考えられます」(前出・公安関係者) 東海道新幹線の定員は16両編成で1323人。もしすれ違いざまが狙われれば2000人以上、旅客機5機分の乗客の命が危険に瀕することになる。東京五輪を控え、世界から注目を浴びる日本は、ますます狙われやすい。テロは決して対岸の火事ではない。関連記事■ 新幹線建設の歴史を振り返り新幹線網整備が急務と提言した本■ 元新幹線運転士の著者ならではのエピソードが満載された本■ ドクターイエロー 初の車体上げ実演に34240人集結で「うぉー」■ 驚異の定時運行率を誇る新幹線 フランス基準ならほぼ100%■ 日本の新幹線 速度ではフランスに、価格では中国に敵わない

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    北朝鮮の特殊部隊 日本にとっては弾道ミサイルよりも脅威

    士と「警察官」として対峙しなければならないのだ。 このような、北朝鮮国外における暗殺や破壊工作などのテロを主任務とする特殊部隊の存在は、日本にとっては弾道ミサイルよりも現実的な脅威といえるのではないだろうか?特殊部隊によってテロが起きる可能性も 近い将来、特殊部隊が大型輸送機で日本へ侵入するような事態が発生する可能性は低いだろう。だが、米朝関係次第では(例えば、米国に対する「本気度」を示すため)、地方における小規模なテロを起こす可能性はある(偵察兵は、国外では通常3人一組で行動するよう訓練されている)。 テロの目的にもよるのだが、そもそもテロは大都市で起きるとは限らない。日本国民を不安に陥れることを目的とするなら、例えば、地方のローカル線を走るワンマン列車を爆破すれば済む。単なる脱線事故ではなく爆破事件となればマスコミが注目し、毎日のように様々な憶測が飛び交うだろう。 今回の「アメリカ先制攻撃説」以上の流言飛語がネット上で飛び交うことになる。さらに、爆発物が北朝鮮製のものと判明すれば、混乱はさらに大きくなるだろう。 特殊部隊出身の脱北者によると、人民軍偵察局(現・偵察総局第2局)では、1995年に発生したオウム真理教による「地下鉄サリン事件」を参考に討論を行ったことがあり、化学兵器そのものの効果よりも社会的混乱が大きかったことが議論の中心になったという。 日本が大規模攻撃や特殊部隊による攻撃などを受けた場合、陸上自衛隊は全国にある135か所の「重要防護施設」へ部隊を配備することになっている。これには、原子力発電所、石油コンビナートなど、破壊されると被害が拡大する可能性が高い施設のほか、国民への情報伝達ルートや通信手段を確保するため、放送、通信施設も盛り込まれている。 しかし、北朝鮮はこれらの施設への攻撃は行わないだろう。実際に、原子力発電所は警備が厳重であるため、破壊工作の対象から除外されたという証言もある。 米国からの報復攻撃を招きかねないような大規模な破壊工作は、能力を持っていても実行はしないだろう。小規模のテロを同時多発的に実行することにより、日本国内で社会不安が起きれば目的が達せられるからだ。 特殊部隊とて潤沢な予算が配分されているわけではない。実際に核開発とミサイル開発に多くの軍事費が使われている。しかし、テロなら弾道ミサイル数発分の予算で遂行可能だろう。 つまり、北朝鮮軍が狙うのは、日本人の心理なのだ。●みやた・あつし/1969年愛知県生まれ。朝鮮半島問題研究家。1987年航空自衛隊入隊。陸上自衛隊調査学校修了。北朝鮮を担当。2005年航空自衛隊退職。2008年日本大学大学院総合社会情報研究科博士後期課程修了。近刊に『北朝鮮恐るべき特殊機関』(潮書房光人社)がある。関連記事■ 敗れかぶれの北朝鮮、人口密集地の東京やソウル狙う恐怖■ 佐々木希が夫・渡部の前に「濃厚キス」していた相手■ 緊迫の北朝鮮情勢 「戦争の可能性ほぼない」と事情通■ 松戸女児殺害 澁谷容疑者、最初の結婚相手は未成年■ 元AKB48小林香菜 大胆すぎる露出「ヤッちゃった」

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    英国首相にEU残留説得する力なし 欧州はテロと犯罪の巣窟に

    きな国家となっていたEUが崩壊の危機を迎えている。いきなり大挙してやってきた難民の受け入れに苦慮し、テロに振り回され、いったんなくした国境を復活させつつある。なぜ、このような事態に陥ったのか、ジャーナリストの落合信彦氏が解説する。* * * 総人口5億人超の“一つの国”が音を立てて崩れようとしている。この6月、イギリスで「EUに留まるか、離脱するか」を問う国民投票が行われる。首相のキャメロンは国民に対して「EU残留」を呼びかけてきたが、それに対し、一気に逆風が吹き始めている。英国民投票の結果を受け、首相官邸前で辞意を表明するキャメロン首相。右はサマンサ夫人=6月24日、ロンドン(ゲッティ=共同)“税金逃れ”のための取引が多数記された「パナマ文書」に、キャメロンの亡き父の名前が出てきたからだ。キャメロンは父親が設立したファンドに自らも投資し、利益をあげていたことを認めた。 キャメロンはこれまで合法の租税回避も批判してきた。それなのに、自分だけ懐を温め、国民には緊縮財政を強いてきたのだから、怒りの声が渦巻くのも当然だ。もはやキャメロンには、イギリス国民にEU残留のメリットを説得するだけの力はない。離脱派の声が大きくなるだろう。 それどころか、イギリス国民はわずか30kmほどのドーバー海峡を隔てた、ヨーロッパ大陸で起きている現実に慄然としているのではないか。 EUは、イギリスの国民投票を待たずして、その存続が問われる危機的状況に陥っている。ベルギーの首都・ブリュッセルで3月22日に起きた爆弾テロは、30名以上の死者を出し、日本人を含む300人以上が重軽傷を負った。 ベルギーは人口1100万人。国土はわずか3万1000キロ平方メートル足らずと、九州より狭い小国だ。その首都ブリュッセルにEUの政策執行機関である欧州委員会やEU理事会事務局、さらにはNATO(北大西洋条約機構)の本部が置かれたのは、まだテロリズムの暗い影がヨーロッパを覆っていない頃のことだった。 しかしその後、ヨーロッパにはアフリカや中東などから多くの移民が流れ込み、テロの土壌が生まれた。昨年11月にフランス・パリで発生し130人が犠牲になった同時多発テロの犯人グループにも、モロッコ系移民の2世が含まれていた。 そして今、新たに「難民」という形で大量のテロリストがヨーロッパに浸透しつつある。 ヨーロッパでは、移民・難民をこれ以上受け入れるべきではないという声が高まっている。 昨年の大晦日には、ドイツのケルンにある広場で北アフリカやシリアから来た難民を中心とする1000人以上がその場にいたドイツ人女性に対し性的暴行を加えたりバッグを盗んだりする事件が起きた。この「ケルン事件」では500人以上の被害者が出たが、同じような事件は、ハンブルク、シュトゥットガルトなどドイツのあちこちで起きている。 これらの事件で、移民に対するドイツ人の国民感情は極めて悪化したが、首相のメルケルは何ら有効な対策を打てていないのが現実だ。ケルン事件に対する捜査もまともに進まず、いまだに難民には甘い顔をしている。 ヨーロッパでは、パリやブリュッセルに続く第3の大規模テロが起きてもおかしくない。そして、直近1年で110万人も入った難民が治安を悪化させているのも事実である。いまやヨーロッパは、テロと犯罪の巣窟になってしまったのだ。関連記事■ 【キャラビズム】コンピュータ腕時計に続き健康診断腕時計?■ 【キャラビズム】残念ながら、テロは日本の玄関に来ている!■ 【キャラビズム】中国人の買い物で昔の日本人を思い出す!■ 生きにくい現代社会において「哲学」を使うことをすすめる本■ 【キャラビズム】歯医者の待ち時間が長すぎて歯の痛み忘れる

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    ドローンの恐怖 加速する進化についていけない日常社会

     “選挙に強い泡沫候補”はすべて計算ずくのことである■ 特許無償開放 トヨタ自動車とテスラの違い■ テロリズムを「劇場化」するメディア報道

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    官邸テロ対策の甘さが浮かび上がったドローン事件

    セキュリティのなさだけでなく、管理されていないといけないはずの、放射能汚染土が、福島で全く放置され、テロや犯罪に使われかねない状態にあることが、わかります。 しかも実際に「見えない武器」として、高浜町に使用されています。⇒見えない武器3 (03/14)⇒高浜町議会同意 (03/20)⇒第1の矢 (03/25) 結果として、高浜事件は、事件になっていないだけです。 今回のドローン事件が、真に悪意のあるテロリストのしわざで、なかったことが、本当に、運がよいくらいです。 集団的自衛権、憲法改正、太平洋戦争の戦禍に謝罪するか否かの議論など、正直、机上のことにばかりにかまけて、現実の、具体的なテロに対する安倍政権の甘さが、浮き彫りになっています。 今回のドローン事件は、1 首相官邸のテロへの備えの甘さ ⇒たとえば首相官邸の屋上管理の問題(⇒<ドローン>官邸屋上1カ月点検なし…警備を強化 (毎日新聞) - Yahoo!ニュース.毎日新聞 4月23日(木)21時50分配信)。山本泰雄容疑者が「ドローン」による侵入を狙った九州電力の川内原発2 原子力発電所及びその事故後の対応のテロへの備えの甘さ の2点を、明らかにしています。 そもそも原子力発電を進める政策は、テロとの戦いの最前線であり、日本の原子力発電所のテロへの脆弱性は、米国に比較しても、あまりにも弱いです。 発電所を守るのが、第一次的に「警察」では、テロへの備えとしては、不十分で、原子力発電所を本当に稼働させるなら、ふだんから自衛隊で守ってもよいくらいです。 今回のドローン事件は、オウム真理教事件でさえ、いまだに総括できない、日本政府と、そして野党を含む我が国の議会の平和ボケのような甘さを、教えています。[参考]■地下鉄サリン事件20年の節目にテロとの戦いに思う!=「オウム真理教事件(1995年)」の失敗を学んだ「IS(イスラム国)」と、失敗に学ばない「日本国」: 弁護士紀藤正樹のLINC TOP NEWS-BLOG版.2015.03.19■Twitter⇒たとえばテロ対策だと日本は世界で一番脆弱な国=小泉氏はまた「日本は世界一厳しい安全基準を持っているというが、アメリカやフランスなどと比べどこが一番厳しいのか、ひとつも説明していない=「小泉元首相、改めて原発ゼロに向けた政治決断訴え」 http://t.co/ySPwllMmky.23:07 - 2015年2月17日◇以下山本容疑者のブログより■ゲリラブログ参. 2014.07.14~2015.4.25(弁護士紀藤正樹のLINC TOP NEWS-BLOG版 『日本のテロへの備えの甘さが浮かび上がる「ドローン事件」の真相=容疑者のブログ「ゲリラブログ参」に一部始終が掲載されていた!』より転載)関連記事■ オウムの失敗に学んだ「イスラム国」と失敗に学ばない日本■ テロリズムを「劇場化」するメディア報道■ 韓国で結びつくナショナリズムとテロリズム

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    「ドローン規制」に有効性無し 必要なのは施設側の警備強化

    文谷数重(軍事専門誌ライター)(「Japan In-depth」より転載) テロを法律で禁止してもテロは根絶できない。同じようにテロ対策としてドローンを法的規制しても、ドローンによるテロは根絶できない。 ドローンは従来警備の穴を明確にした。4月22日、首相官邸の屋上への着地発見により、重要施設でも空からは容易に進入できることが判明したのである。 この問題を受け、政府はテロ対策として早急なドローン対策を図ることとなった。発見翌日の23日には、重要地区での飛行禁止や、所持に手続きを持たせるといった話が出ている。だが法的規制を掛ければ、警備上の問題は解決するのだろうか?飛行禁止を守るだろうか?4首相官邸の屋上ヘリポートで発見された小型無人機を調べる捜査員ら=4月22日、東京・永田町(酒巻俊介撮影) テロ対策として飛行禁止を設定しても意味はない。テロ組織は法を守らない。殺人や傷害は刑法で禁じられているが、テロ組織はそれを守るだろうか? また、飛行禁止を強制する方法もない。現状では飛行中のドローンを阻止する手段はない。上空を監視し、侵入ドローンを発見し、撃ち落とすシステムといったものだ。将来的にドローンを落とすドローンや、飼いならした猛禽類等といったものがなければ、法律で禁止しても強制はできず、実効性は期待できない。 操縦者への強制も難しい。禁止地域の1km先から操縦されれば、操縦者を発見できず飛行中止の強制もできない。そしてドローンは本質的に遠距離からでも操縦できる。高いところに登れば1-2km先での操縦は問題とならない。高速回線の携帯電話を利用すれば、ドローンが見えない地下室や、海外からでも操縦できる。禁止ドローンを強制阻止できない以上、飛行禁止は実効性を持たない。操縦資格も販売・購入制限も効果なし 操縦資格を作っても、やはりテロ対策としての効果は少ない。もともと操縦容易である。姿勢安定が自動化されておりラジコンのように苦労する必要はない。飛ぶ方向を事前設定し、最終段階ではカメラ画像を見ながら方向だけ誘導すれば済む。技量が要求されない以上、資格や資格者登録はあまり意味はない。テロで使うなら、人目にどこかの山中で2-3回も訓練で飛ばせば充分である。 実際に制度を作っても、どうでもいい教育に終わる。「飛行禁止地区で飛ばすな」とか「高度は1000フィートまで」といったものだ。もちろん、テロを決意した人間には何の効果ももたらさない。 販売や購入、登録制度もテロ防止にはつながらない。ドローンは自作容易であるためだ。中核部分は一般品である。キモは安定機構だが、ほぼジャイロとプログラムである。汎用品のジャイロは販売制限できないし、ハードもPICと制御系で済み、そのプログラムの流通も制限できない。 通信系も入手容易である。見通し距離なら5GHzの無線LANで充分であり、いざとなれば電話回線とスマホそのものでもよい。動力部分もモーターとリチウム電池とプロペラに過ぎない。これも汎用品であり、販売制限も意味を持たない。 そもそもドローンだけを禁止しても仕方がない。ラジコンを改造しても作れるし、鳥を訓練しても代用できる。条件付けしたカラスに、電極とカメラ付きスマホをつければ、今回のセシウム程度は運べる。これはネズミでの先行例がある。本格テロをやるつもりならば、風船による人間の直接侵入もできない話ではない。必要なのは法的規制より施設防護の強化 むしろ、必要なのは施設側の警備強化である。まずは、防護強化である。ドローンそのものが危険なわけではない。ドローンに積まれた危険物が怖いのである。それならば、危険物が通用しない建物にしたほうが確実である。 ドローンに積める危険物は、たかが知れている。少量の毒ガスや放射性物質ならば、空調系の空気取入口の位置と吸気方向の変更で対処できる。少量の爆薬や体当たり防止ならば、窓ガラスの飛散防止や重要区画の無窓化で対抗できる。ドローン侵入防止はさらに簡単であり、開口部に網を張るだけよい。 その上で、ドローンの接近も阻止したいのならば、阻止手段を準備すべきである。妨害電波のジャミングによる操縦側との通信妨害や、カメラの目潰しや灼ききりを狙ったレーザ照射といったものだ。あるいは鷹匠と鷹でドローンを落とす準備でもよい。 法的規制は効果は少なく、むしろドローンの有効利用の妨げとなる。今のところは撮影や調査、監視で限定使用されたものだが、いずれは軽輸送や通信中継、空中配線といった用途に使われる。各種の法規制は、穏当な利用に無駄なハードルを課すものであり、害の多い規制となるのである。関連記事■ オウムの失敗に学んだ「イスラム国」と失敗に学ばない日本■ テロリズムを「劇場化」するメディア報道■ 韓国で結びつくナショナリズムとテロリズム

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    ドローン規制は平和ボケのしわざ

    進めることを決め、野党は問題が発生したことの説明と責任の追求を求めている。 ネットでも「とんでもないテロだ!」という声が上がり、「もしこれが、サリンや炭疽菌を運んでいたとしたら、大変な事になった」として、規制に賛同する人が多い。 相変わらずである。日本は新規性が強いものに対して、どうしてここまで警戒心を露わにするのだろうか。 思い出すのはインターネット黎明期だ。僕は1994年頃からインターネットを利用しているが、当時はまだインターネットというものに対する世間の認知はほとんどなかった。 だから、ちょっと犯罪が起きただけで「インターネットは危険だから規制しろ」という声が挙がったものである。たとえそれが電話や郵便でも行えるような犯罪であっても、電話や郵便には規制の声が上がらず、インターネットだけには規制の声が挙がった。今では企業もインターネットを利用しているし、インターネットが富を産むようになったからインターネット廃止なんて誰も言わなくなったけどね。 それと今回の件も同じことで、ドローンでできるようなテロ行為は、他の手段を用いてもできるのであり、ドローンを規制しても無意味である。 しかし、インターネットの時には「インターネットはあくまでも道具である。包丁がそうであるように、犯罪に使うこともできるし、有用なツールとして使うこともできる」という反論があるのが常だったが、今回はあまりそうした声は強くないようだ。 それには、やはり個人所有のドローンが、まだおもちゃに毛が生えたようなものだと理解され、仮に規制されたとしても一部のマニアが困るだけで、一般市民である我々には関係ないから困らないという感覚が強いのだろう。 しかし、僕は今回の事件において、ドローンに対する法規制があまりに早く検討されたことに危惧を念を抱く。なぜなら、こうしたテロ行為に対する過剰反応こそが、別のテロを呼び込みかねないからだ。 テロリストがテロを行う理由は、自分の主張を世間に広めることである。そのためには事件が騒がれば騒がれるほどいい。今回の事件でも、マスメディアが被告に成り代わって、その意図を一生懸命宣伝してくれている。(*1) 首相官邸屋上で小型無人機「ドローン」が見つかった事件で、送検のため警視庁麴町署を出る山本泰雄容疑者=26日午前8時45分 被告のものと思わしきブログにも、ドローンを墜落させた当初は全く反応がなくて、がっかりしていた被告も、官邸でドローンが発見されたことがニュースに流れると「犯罪者は自分の報道をこんな感じでみるのか...平常心を保つのが難しい」と、高揚感があったようなことが書かれている。それはまるで、ようやく自分の行動が発見されて「認められた」かのような受け入れ方である。 24日には、官邸近くにドローンを持った男女が現れて、機動隊員が駆けつけたという事態があった。2人は「おとといの事件を見て官邸の近くでドローンを飛ばしたくなった」ということだ。(*2) これはまさに、無闇に騒いだ事により、目立ちたがり屋が呼び寄せられた問題と言っていい。 テロの怖さというのは、決してその犯行単体だけではない。その犯行が誰かの共感を呼び、大小関わらず他の事件を呼びこむことが怖いのである。 テロリストに最も効く対抗法は、徹底的に無視することである。 彼らの主張を報じず、事件そのものも概要のみを伝え、犯人の個人像に一切触れない。そうすれば、テロリストにテロを起こすような誘因を与えずに済む。 被害者が出たような事件ならまだしも、今回のような全く被害のないような事件であれば、一切事件を報じずに無視したほうがいいのではないかと僕は思う。 今回の事件を受けて、早速の法整備が進んでいるようだが、ドローンを規制したところで、テロリズムは規制できない。テロリストは使えるものを使って、自分の主張を世の中に広めようとしてくる。 規制で安全が守れるなどと少しでも考えているようならば、それこそが「平和ボケ」と批判されて然るべきだろう。*1:「官邸ドローン」の狙いは「福井県知事選の混乱」 容疑者はブログで犯行を克明に明かしていた(J-CASTニュース)http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150425-00000001-jct-soci*2:官邸近くにドローン持った男女 一時騒然(日テレNEWS24)http://www.news24.jp/articles/2015/04/24/07273698.htmlあかぎ・ともひろ 1975年生まれ。自身のウェブサイト「深夜のシマネコ」や週刊誌等で、フリーター・ニート政策を始めとする社会問題に関して積極的な発言を行っている。著書に「若者を見殺しにする国 (朝日文庫)」など。(BLOGOS「赤木智弘の眼光紙背」より転載)関連記事■ 韓国で結びつくナショナリズムとテロリズム■ オウムの失敗に学んだ「イスラム国」と失敗に学ばない日本■ 拉致再調査 国家テロとの戦いであることを忘れてはならない

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    ザルだったと実感したドローンのテロ対策

    島田範正(ITジャーナリスト) 日本でも、テロ対策の観点から議論と対策立案が喫緊の課題になってきた。 かのイスラム国でさえ、敵対組織の軍事基地をdroneで偵察するという時代。まして日本も標的にされた昨今。テレビニュースによく映る総理大臣官邸(首相官邸)の前庭、あるいは皇居内に小型無人飛行機Droneが突入してから大騒ぎしても遅いかもしれません。 これは、今年1月下旬に書いた拙ブログ記事「ホワイトハウスへのドローン侵入は日本への警鐘だ」のお終いの部分です。首相官邸の屋上に落下したとみられる無人小型機「ドローン」(左の段ボールの下)=4月22日午前 ほかでもありません。昨22日に明らかになった首相官邸屋上へのドローン着陸(殆どの新聞は「落下」と書いてますが)事件のことです。読売によれば皇居外苑、北の丸公園上空を飛んでいるとの情報もあったそうですから、なんだか、脱力してしまいました。 結果的に大したことがなくて良かった、という意味ではなく、やっぱり、警備当局のテロ対策は、ことドローンに関してはザルだったんだな、と実感させられ、朝日によれば、切れ者で鳴る菅官房長官にして、「小型無人機を利用したテロの発生も懸念される」という、何をいまさら発言をしているからです。 笑えたのは産経の1面トップ記事の主見出し。「衝撃 厳戒破られ侵入」。そりゃあ、警備にあたる警視庁は、人の出入りや周辺警備は厳しいかもしれないけれど、空には「厳戒」どころか、全く無警戒だったことが露呈したからです。 屋上がヘリポートで、息抜きするようなスペースじゃないからだとしても、安倍首相が防大卒業式出席の際に使った3月22日以来、誰も上がってない(朝日)というのは考えられない。 ヘリの発着に邪魔だからでしょう、屋上にフェンスはない。しかし、監視カメラも省略しているのでしょうか。国会のフェンスには無数の監視カメラがあるのに。いや、多分、官邸屋上にもあるはず。それなら、それをモニターして当然でしょうが、それでも、発見できなかった、ってことは職務怠慢というか、やっぱり、空への警戒がゼロってことを裏書きしてます。(もしかして、ホントになかったのかな) 上記、1月下旬の記事にも書きましたが、米国のホワイトハウスの上空への警戒は徹底しているようです。ワシントン・ポストの報道によると、基本的にホワイトハウスとその周辺の上空を有人、無人を問わず飛行が禁止されていて、そこに侵入された場合に備えてレーダーで監視をしており、対飛行ミサイルまであるとか。高い塀と監視カメラ、環境センサーの配備はもちろんです。 しかし、それでも操作を誤ったドローンを阻止できず、ホワイトハウス前庭に着陸を許したのは、低空で小さな物体をレーダーが捕捉出来なかったからだといいます。その危険性については、政府はリスクマネジメントのコンサルタントを交えて検討を進めていたとのこと。 それで明らかになったのは、敏感なレーダーと音響追跡器のコンビネーションで、接近するドローンを探知することが技術的に可能だということです。しかし、探知しても、追跡して、怪しいかどうかを見極め、しかるのちにどう処理するかを決めるという手順になりますが、怪しいと分かっても、街なかで火器を使って撃ち落とすわけにも行きません。 では、飛行不能にする手はどうか。ところが、日本と違って、法整備が進んでいる米国では連邦法で、ドローンが飛行のために使っているGPS信号などを混信させたり妨害することを禁じている、とのことで、この手も難しい。 ということで、米国ではとっくの昔から連邦議会で取り上げられ、省庁横断的にこの難題に取り組んでいるようですが、少なくとも、今回の事件の経緯や対応を報道で知るかぎり、国会は音無しだったし、日本政府、警備当局の対応は後手に回っているように見えます。 人気ニュースアプリ「News Picks」では、この件について何百というコメントが寄せられていますが、「警備の甘さに驚き」「テロに屈しない国じゃなくて、テロに気づかない国、なんだな」「オウム全盛期だったら恐ろしいことになってる」「平和ボケ」などという辛辣な書き込みが目立ちます。 そして、「これを契機に規制が進むだろう」という書き込みも多いようです。国交省では「今回の事件を契機に法規制の検討を加速させる」(読売)とのことですが、規制しても、テロは法を無視して行われるのですから、その実行行為をいかに阻止するかが大事なことに変わりありません。 その意味で、前東京都知事の猪瀬直樹さんのNews Picksへの書き込みがまっとうだと思われますので紹介します。 ドローン、予想しようと思えば、予想できた場所ですね。これから予想できる場所は幾つもあります。今回の事件がきっかけで、今後予想できる場所、原発など、職員がどれだけ本気で対策を提案できるかが問われているわけです。自衛隊のテロ対策のプロからの助言をきちんと受けないと、いくら日本の警察が優秀であろうと、警察の守備範囲のみの考え方では無理でしょう。縦割りを超えた話し合いが必要です。 その通りだと思います。 蛇足ながら、米国では、接近するドローンを傷つけずに捕捉するという「Drone Net Gun」なる新兵器が495ドルで売り出されています。これは、顧客のセレブたちに、盗撮のためのドローンが接近してきたことをアラームやメールで知らせるサービスを提供しているDrone Shield社が開発したもので、50~100フィートまで接近したドローンに向けてネットを発射するというものだそうです。その発射映像はこちら。(KDDI総研「島田範正のIT徒然」より転載)島田範正(しまだ・のりまさ) 元読売新聞記者。国際大学グローコムフェロー。早稲田大学IT教育研究所客員研究員。

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    韓国で結びつくナショナリズムとテロリズム

    てる覚悟をした人は、躊躇(ちゅうちょ)せずに他者の命を奪う傾向があるからだ。そして、ナショナリズムとテロリズムが結びつくと厄介なことになる。素直に言うが、韓国でナショナリズムとテロリズムが結びつき始めている。襲われた駐韓米大使 5日朝、韓国のソウルで、リッパート駐韓米大使が、「愛国者」を自称する男に斬りつけられるテロ事件が発生した。この事件について、産経新聞社の藤本欣也支局長はこう報じた。 <リッパート米大使襲撃事件を受けて、大統領府の金寛鎮(キム・グァンジン)国家安全保障室長が5日、国家安保会議を緊急開催、今後の対策と対応を協議した。李完九(イ・ワング)首相は関係当局に対し、米国など各国の大使館・施設の警備と要人の警護に万全を期すよう指示した。 聯合ニュースによると、「主要外交官に対する深刻な襲撃事件でテロ行為ともいえる」(検察関係者)との判断から、捜査指揮はソウル中央地検の公安1部が担当。キム・ギジョン容疑者の犯行動機のほか、共犯者の有無など背後関係について捜査を進めている。 キム容疑者は2010年、日本大使にコンクリート片を投げつけた前科があるにもかかわらず、今回、米国大使に近づくことができた。 捜査当局の発表によると、キム容疑者は政治団体代表としてこの日の朝食会が開かれるとの案内を受けていたほか、米国大使館から警備要請がなかったとしている。だが、ただでさえ米韓関係がぎくしゃくする中、米要人への襲撃を防げなかったのは韓国当局の失態であり、責任問題に発展するのは避けられない>(3月5日「産経ニュース」)リッパート駐韓米国大使が出席した会合の主催団体が入るビルの前で、抗議集会をする保守団体メンバー=3月5日、ソウル(共同) キム容疑者は、要人テロを行う可能性がある要注意人物だ。韓国の警察力は強い。このような要注意人物を24時間、完全監視下に置いて事件の発生を防ぐことは、韓国警察の能力にかんがみれば、可能である。しかし、韓国はそれをしなかった。外交官、とりわけ特命全権大使は国家を人格的に体現する。駐米大使に対するテロ防止について、韓国当局の対応に不作為があったことは間違いない。 ただし、今回の事件は、精神に変調を来した人による突発的な事件ではないと思う。韓国では最近、反米機運が急速に高まっている。そのきっかけになったのが、2月27日のシャーマン米国務次官(政治担当)の発言だ。<シャーマン氏は特定の国を名指しせずに「国家主義的な感情が依然、利用されている」とし、政治指導者がかつての敵を中傷することで国民の歓心を買うことがないように求めた>(2月28日「産経ニュース」)。この発言は、日中韓3国の指導者に対して向けられているにもかかわらず、韓国の政府もマスメディアも、シャーマン次官が日本寄りの立場から韓国を批判したと曲解し激高した。このような、事実を事実として客観的に認識できない韓国の政治的空気が、リッパート大使に対するテロ事件が発生する背景にあったのだと思う。 韓国では、ナショナリズムがテロリズムと結びつき始めている。産経新聞の加藤達也前ソウル支局長が、朴槿惠大統領に対する名誉毀損(きそん)容疑で在宅起訴され、いまだに韓国からの出国を認められない状態もソフト・テロリズムだ。このようなテロリズムを許す空気が韓国人の集合的無意識を支配している。無意識のうちにある集団がとっている行動を変化させるのは至難の業だ。韓国のナショナリズムが危険水域に入っていることを、われわれは冷静に認識しなくてはならない。関連記事■ 韓国の論理「日本にある物はすべて略奪された」 ■ あの日を境に変わった私のメディア認識■ ケント・ギルバートが説く 日本がサンドバッグから脱するとき