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    沖縄や徳島にも球団が誕生? 「プロ野球16球団拡大」のXデー

     2月15日の衆議院予算委員会で「プロ野球16球団構想」についての質疑応答があった。 まずは日刊スポーツの報道を引用して紹介しよう。 自民党の後藤田正晴衆院議員は15日の衆院予算委員会で、プロ野球を現在の12球団から「16球団」に増やす構想に触れた上で、政府がどう対応するか、覚悟をただした。安倍晋三首相、石破茂地方創生担当相、石原伸晃経済再生担当相、高市早苗総務相の名前を挙げ、「4人が(推進すると)言えば、NPB(日本プロ野球機構)も分かった、というと思いますよ」と、迫った。 後藤田氏は、地元の徳島県や南九州、沖縄県にプロ球団がないとした上で、「今までのプロ野球は、企業の宣伝みたい(な役割)だった。そうではなく、地方再生と同じパターンで、(地方に球団が)できたら盛り上がると思う」と、提案。サッカーのJリーグでは、チーム数がプロ野球より多いことも指摘した。 これに対して石破氏は、「球団が増えれば若い人たちに競争の機会を与えられる。楽天みたいに地域活性化にもつながる」とした上で、「官がものを言うことはなく、民が主導することになるが、ご指摘を踏まえて、政府としても検討する」と応じ、前向きに検討する考えを示した。 これに対する世間やメディアの反応は案外、冷ややかだった。 「えっ、プロ野球が16球団に増えるの!」といった無邪気な歓声はほとんど聞こえて来なかった。それが私には不思議に思えた。 「16球団構想」は2年前、自民党の日本経済再生本部(本部長・高市早苗政調会長)による「日本再生ビジョン」の安倍晋三首相への提言の中に盛り込まれたことに端を発している。アベノミクスに沿って、「プロ野球市場の拡大を通じての地域活性化」を狙う提言だった。ところが、この時もプロ野球関係者やメディアの反応は辛辣だった。 「現在の12球団のうち、黒字経営がいくつあるのか知っているのか」「4球団増やしたら何人の選手が必要か分かっているのかね」といった声が球界関係者から挙がっている」と報じたメディアもあった。 政治側からの一方的な提言は「筋違いだ」という理屈はあるが、上記の批判はまったく本末転倒の感が拭えない。2年経ったいまも、同じような反応で、世間の空気が動き出すことはどうやらなかった。肝心なプロ野球側、その周辺にいるメディアまでが、16球団構想を冷笑し、阻止する方向に舵を切っている。大手新聞の中には、このニュース自体を黙殺して報じなかった会社もあるという。 私は、別の機会に「プロ野球存在の意義と使命」を明快に共有する必要を前提にした上で、「プロ野球16球団構想」を歓迎する立場で今回の原稿を進める。 野茂英雄投手がMLBに挑戦した当時、MLB全体の売上げは年間約1200億円程度で、日本のNPBの売上げ約1200億円とほとんど同じビジネス規模だったと言われる。ところが、大リーグ選手会が長期ストライキを決行し、野球に対する冷ややかな空気が全米に広がったことに危機感を覚えたMLBは、結束して新たなビジネス構築に動き出した。その結果、この約20年でMLBは売上げを約6倍に伸ばし、いまも健全な成長産業として発展を続けている。一方、日本のNPBは相変わらず約1200億円の規模にとどまり続けている。メジャーリーグに学んだ楽天、DeNA 前記の「12球団の中に黒字球団がいくつあるのか知っているのか」はその通りで、「多くの球団が親会社の広告宣伝効果に対して補填を受け、経営している実態がずっと続いていた」との指摘は常識化している。そもそも、その体質こそが問題であって、球団が独立採算で利益を上げる方向に転換しなければ企業としての発展はない。以前からその方針を貫いているのが広島カープだ。広島は、マツダ(東洋工業)はスポンサーであって親会社ではない。そのため「貧乏球団」などと揶揄されることも多かったが、本当はプロ野球経営の王道を歩み続けてきたといってもいい。いまその流れを追従し、メジャーリーグ球団の経営に学び、新たな方向性を模索し始めているのが、楽天、横浜DeNAなどの新しく参入した球団だ。 このオフ、横浜DeNAが横浜スタジアムを買収したことが話題になった。あれは、球団経営にとって核心にも通じる大きな変革だ。なぜなら、球団が期待できる最も大きな収入源のひとつが、スタジアムでの販売事業だからだ。チームや選手のオリジナルグッズを初めとするお土産品、お弁当やお酒・ソフトドリンクなどの飲食売上げは、莫大だ。球団がスタジアムを持っていなければ、これら収入は球場側に入って、球団は一部をパーセンテージで受け取るにとどまる。これまで、それを放っておく球団があったこと自体が、ビジネスの観点からいえば不思議と言える。それも、「どうせ親会社が補填してくれる」という暢気な発想が底流にあったからだろう。 最近、巨人が新たな球場を建設するらしいとの噂が一部でささやかれている。東京ドームの耐用年数の問題があるからだと言われるが、同時に、上記の問題にも通じる。東京ドームは巨人軍と別の会社だ。つまり、人気球団であり、球界の盟主を自認する巨人軍でさえ、経営の中核に置くべき球場での販売収益を他社に大盤振る舞いしている。 このような経営の隙は他にいくつも例を挙げることができる。それほど、球団経営は大らかに行われてきた。その点を改善し、プロ野球の経営をもっとビッグスケールに変革しようと動き出せば、いくらでも増収増益、スケールアップの可能性はある。 サッカーのJリーグが、現にJ1、J2さらにはJ3まで組織している。Jリーグの各チームがいずれも健全な収益を確立しているとは言えないが、旗を立て、それぞれが収益を目指し精進する先に繁栄の可能性がある。サッカーは着実に日本じゅうに種を蒔き、根を張りめぐらせている。野球はといえば、高校までは全国にチームがあるが、それ以上の年代になるとあとは草野球チームがあるだけで、自治体や地域と連動して発展を目指す本格的なチームはほとんどない。野球の未来が見えないのはある意味当然だ。プロ野球阪神宜野座キャンプ ファンにサインをする福留孝介外野手 =2016年2月22日、宜野座村野球場(撮影・松永渉平) 私は、J3やJFLのような組織が日本じゅうにもっと円滑にできておかしくないのは野球の方だと感じている。プロ野球16球団はもとより、さらに多くの傘下のチームが各都道府県にできたら、楽しいだろう。 プロ野球を16球団に増やすための本拠地は、日本海側の新潟または金沢、東海の静岡、四国のいずれかの県、南九州または沖縄県など候補はある。親会社に頼るのでなく、独自の会社を立ち上げ、地域の企業や自治体と強い絆を結んで経営する方向で進めば、プロ野球改革のみながら、日本の社会そのものを変革する一石にもなる。 最後に……。IT企業の参入もあり、またアメリカで経験を積んだフロントの人材台頭もあり、日本のプロ野球ビジネスの内部にも新しい発想を持つ人々は着実に育っている。ところが、「巨人の人気があればプロ野球は大丈夫」「巨人人気こそプロ野球発展の核心」と信じる旧態依然とした経営者、実力者の牙城がなかなか崩せず、プロ野球は停滞を続けている。忸怩たる思いをしているのは、実は改革を急務と感じているこれら当事者たちだろう。 侍ジャパンを支える会社を独自に立ち上げたことなどは、せめてもの抵抗というか、現勢力下でできるささやかな一歩なのだと感じている。すでに水面下では、プロ野球改革の構想は多くの人々がふくらませている。旧態依然とした態勢が変わるのは、大物実力者が引退する日であろう。このXデーに向けて、準備は進んでいるはずだ。そうでなければ、本当に日本のプロ野球の呼吸は止まりかねない。

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    松井秀喜の「真実」 長嶋茂雄との師弟関係

    松井秀喜(元プロ野球選手) ―1992(平成4)年のドラフト会議で、復帰されたばかりの長嶋監督に劇的にクジを引き当てられましたね。そのことを今ではどのように感じていらっしゃいますか?あれは日本球界にとってエポックメーキングなできごとであり、運命的なドラフトでした。 一言で言ったら、やっぱり引き寄せられたというんですかね。御縁をいただいたという感じです。本当に感謝しています。そもそも僕をドラフトで指名することをいち早く決断してくださったのも、長嶋監督だったと聞いていました。 監督が「松井でいくんだ」と指名してくださり、ドラフト会議で引き当ててくださったからこそ、今の松井秀喜があるのだと思っています。僕のプロ野球人生のすべてのスタートがあのドラフトです。長嶋監督は、野球選手、松井秀喜に一番影響を与えてくれた人です。 えっ?残りクジだったんですか?当たりクジを最後に残してくださったのも、いわゆる長嶋監督の幸運を引き寄せるパワーだったのではないでしょうか。 ―1999(平成11)年の開幕後、不調に陥ったとき、長嶋監督からアドバイスがあったそうですが、それはどのようなものだったのですか? ある意味、入団からずっとアドバイスや指導をいただいていたので、この時期だから、このアドバイス…というのは特になかったような気がします。 監督の打撃指導は一貫しておられました。すべてはスイングのキレに集約されるのですが、キレの良さを出すために、ボールの見方からとらえ方まで、素振りを通して教えていただきました。ボールを打つわけでもなく、ただ黙々とバットを振る。素振りというのは、見方によっては単純なことなのかもしれません。でも僕にとってはとても充実した、大切な時間でした。監督からいただいたアドバイスは、松井秀喜の打撃をつくるうえで礎となっています。 ―2002(平成14)年にFA権を取得し、2003年(平成15)にヤンキース入りをされましたが、大リーグへの挑戦は、いつ頃、どのような思いで決めたのですか?大リーグ入りに際して、長嶋監督からはどのような言葉をかけられましたか? はっきり決意を固めたのは、日本シリーズが終った直後のことです。心の中でくすぶっていた思いが抑えきれなかった。日本一になったことで、その思いがより一層抑えにくくなったのはあったと思います。 もし長嶋監督がユニホームを着ていたら?...どのような判断ができていたかはわかりません。それは今でもわからないです。ただ、大リーグへ挑戦することが決まってからは、「とにかく頑張って来い」と声をかけてくださいました。 長嶋監督がジョー・ディマジオ選手のファンであったことはよく知られていますが、僕がセンターのポジションにコンバートされたとき、「ディマジオになれ」とおっしゃっていました。そういう意味では、ヤンキースは運命的であり、必然的だったのかもしれません。 ―2006(平成18)年5月11日の試合で骨折し、日米通算試合連続出場の記録が止まりました。そのとき、長嶋監督からどのようなアドバイスがありましたか?「リハビリはうそをつかないぞ」という内容だったと報道されていますが。 確か手術が終って、すぐに電話で話をさせていただきました。とにかく監督は「やったのはしかたない。しっかりリハビリして頑張りなさい」という言葉をかけてくださいました。 監督は僕よりも毎日、過酷なリハビリをされていたと思います。それを考えたら、自分のリハビリなんて限られた数カ月です。大変な状態でありながら、逆に僕を励ましてくださる監督には、本当に感謝の気持ちでいっぱいでした。 ―ニューヨークのご自宅に、長嶋監督から届いたサイン入りの色紙が飾ってあるというのは本当ですか?それには「最後まであきらめずに頑張れ」と書いてある、という報道があります。その言葉をどう考えていらっしゃいますか? 本当です。今でも大切に飾らせていただいています。色紙の言葉にはどんなに励まされたかわかりません。色紙をいただいたのは、後半戦も中盤にさしかかっていた頃だったのですが、あの言葉に奮起し、シーズン終了まで頑張ったことを覚えています。 監督が左手で書いてくださった文字を見て、心が震えたというか、魂が揺さぶられたことを、昨日のことのように思い出します。松井秀喜(Hideki MATSUI)1974(昭和49)年石川県生まれ。星稜高校時代の4度の甲子園出場を経て、1993(平成5)年、ドラフト1位で巨人入団。日本球界屈指の強打者として活躍し、2002(平成14)年にFA権を取得。2003(平成15)年にニューヨーク・ヤンキースへ移籍した。開幕戦で初打席初安打初打点を記録。ワールドシリーズでも本塁打を放つなど、1年目から勝負強さを発揮し、7年に渡りチームの主軸として活躍。2009(平成21)年オフにロサンゼルス・エンゼルスへ移籍。その後、オークランド・アスレチックス(2011年)、タンパベイ・レイズ(2012年)等でプレー。2012年シーズン限りで現役引退。2013年長嶋茂雄氏と同時に国民栄誉賞を受賞。(『長嶋茂雄ドリーム・トレジャーズ・ブック』(産経新聞出版)より)

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    「カープ女子」の次は「オリ姫」! イケメン選手に女性ファン殺到

     開幕前の低い下馬評を覆すプロ野球オリックスの快進撃。前半戦44試合で100万人を超え、1試合平均2万2734人は前年同期と比較して16・2%増。この大幅増の裏側には若き女性ファン「オリ姫」の存在があった。 データを活用  夏休みに入った後半戦は客足がさらに伸びた。週末のロッテ戦は8月2日が3万1765人、3日も3万3989人と3万人を超すファンで本拠地の京セラドーム大阪は連日ほぼ満員。最後に日本一に輝いた1996年の179万6000人の球団最高記録を抜く可能性も出てきた。 「ここからが観客動員の“勝負のかけどころ”だと思っています」。山本康司リテール営業部チケットグループ長も鼻息が荒い。 観客の大幅増にはチームの快進撃はもちろん、昨年から本格的に活用を始めた「ビッグデータ」が大きく寄与している。 ファンクラブ「BsCLUB」の会員証はICカードになっていて、グッズやチケット購入、飲食履歴などをデータとして蓄積。性別、年齢別に分類しグッズや飲食の好みなどを分析、チケットセールスやイベントの企画、告知メールの文面までファン層に応じてアプローチを変えている。 こうしたきめ細かい対応がファンの満足度を高め、リピーターが増えた。新規加入も増え、ファンクラブ会員数は昨年比1・5倍の4万人に到達した。20~30代増加 特筆すべき点は「ウチが最も弱かった層」と山本グループ長が指摘する「20~30代の女性層」のファンクラブ会員が前年比5~6%増加したことだ。 ネット上で「オリ姫」「猛牛女子」とも呼ばれる若い女性。このファン層はお目当ての選手を追いかける傾向が強い。侍ジャパン(野球日本代表)の4番打者、糸井嘉男外野手(33)が日本ハムから移籍してきた昨年も女性会員が増える現象がみられたという。今季、金子千尋投手(30)、西勇輝投手(23)、伊藤光捕手(25)らイケメン選手の活躍、露出増の効果は大きい。ダンスで応援 データ分析による球団のマーケティング戦略も見逃せない。京セラドーム大阪ではフードメニューに女性向けのスイーツを今季から5種類増やした。 昨年12月には、伊藤捕手、海田智行投手とその当時は独身だった安達了一内野手の“独身・イケメントリオ”が登場する女性限定のクリスマスパーティーを開き、2部構成各30人限定の募集を掛けると、あっという間に完売。先月1~3日の楽天戦では、七回攻撃前に応援歌にのせグラウンドで踊るという企画を各日100人限定で募集し、全日完売。女性ファンの取り込みに球団挙げて取り組んでいる。 今後の重点試合はソフトバンクとの首位攻防戦。京セラドーム大阪では17日までと9月16~18日の3連戦が予定されている。いずれも優勝争いを左右する戦いだけに「じゃあ1回ドームに行ってみようという人も多いでしょう。そういう人たちが真のファンになってもらえるように引き込みたい」と山本グループ長。快進撃は最大のビジネスチャンスでもあるのだ。

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    プロ選手の増加歓迎 経営の合理化必要に

     自民党の日本経済再生本部(本部長・高市早苗政調会長)がまとめた政府への提言「日本再生ビジョン」に「プロ野球16球団構想」が盛り込まれた。静岡、北信越、四国、沖縄などプロ野球のない地域に新たに球団を創設。球団数を現行の12球団から16球団とする内容だ。「プロ野球市場の拡大を通じた地域活性化」が目的で、アベノミクスの「第3の矢」の一環として注目されている。夢のある構想ではあるが、果たして実現は可能だろうか。    ◇ ≪小関順二氏≫プロ選手の増加を歓迎 ――16球団構想は以前から提案していた 「20年近く前から、雑誌などで書いていた。J1だけで18チームあるサッカーと比べても12球団しかないプロ野球は停滞している感じを受ける。世間に訴えるためにも賛成だ」 ――球団が増えるメリットは 「プロ選手の数が増える。日本はアマチュアの裾野が広い。高校の野球部をみても、韓国は約50校しかないが、日本は4千校もある。大学野球もあり、近年は独立リーグもできた。レベルはすごく高いが、プロの身分を手に入れられない選手がたくさんいる。毎年、育成選手を除いて約80人がドラフト指名されるが、120人は指名されても良いと思う。高校野球、大学野球の頑張りに報いるために、受け皿を増やすのが一番だと思う」 ――球団の増加でレベル低下が懸念される 「最初は仕方がないだろう。米大リーグも30球団に増やした当初は、レベルが低下した。時間が解決する問題だと思う」 ――球団を新設する地域は 「提言とは若干違う。アクセスなどの観点から沖縄と四国の代わりに、倉敷マスカットスタジアムのある岡山県と、鹿児島県か宮崎県の南九州が良いと思う。地域密着型の球団運営は、宮城の楽天、北海道の日本ハムなどが成功している。人口が少ない地域は経営が厳しいとの見方もあるが、サッカーをみても人口はあまり関係ない気がする。リピーターが増えればよい話」 ――日本一はセ、パをさらに東西に分けた計4チームで争う 「クライマックスシリーズ(CS)の導入で、リーグ3位のチームも日本一の権利がある。勝率が5割を切る可能性もあるが、そのチームを日本一とは呼びたくない。CSはなくしてはいけないと思うが、お客さんに新しいメニューを提示するのは大事」 ――赤字経営の球団は多いが、手を挙げる企業はあるのか 「アベノミクスは景気を良くするための経済政策。景気が上向きの時期を前提としているのだから出てくると思う。IT企業など、知名度はないがお金を持っている企業はある。DeNAも知名度が上がった。プロ野球は社会的な影響が大きい。赤字解消のためには、選手の年俸の高騰を抑えるのも必要。日本ハムのダルビッシュ有、楽天の田中将大のように年俸が上がった場合、ポスティング(入札制度)を利用するのも一つの手だと思う」 ――プロ野球人気の低下が指摘されている 「逆に、今が全盛期だと思う。特に、パは球場に足を運ぶ客の量がすごい。2004年の球界再編騒動で、ファンが目覚めた感じがする」    ◇ ≪井箟重慶氏≫経営の合理化が必要に ――今回の構想をどうみる 「構想自体は良いと思うが、理想と現実は違う。実現にはいろんな問題が山積している。パ・リーグはずっと赤字経営が続いている。セ・リーグもテレビの放映権料が減り、苦しい状況。赤字も1億、2億ではなく、何十億という単位。親会社が宣伝費名目で肩代わりしている球団もあり、真の独立採算にはなっていない。赤字を背負ってまでプロ野球を持ちたい企業があるかは疑問だ」 ――球団経営は知名度アップにつながる 「新興企業が一気に全国区になりたいと考えたとき、プロ野球は手っ取り早い。過去にもそういう企業はあったが、数年で手を引いたケースもある。それは、球界のためにならない」 ――入場料収入のみでは黒字にはならない 「観客の負担が増えるので、これ以上の入場料の値上げはできない。4球団も増えたら、一時的にレベルは低下する。面白くなければ観客が入らず、収入が減るという悪循環を起こすだろう」 ――米大リーグは球団を増やして成功した 「経営が違う。メジャー40人枠とマイナーリーグの選手の給料には大きな差がある。一方、日本は支配下選手が1球団70人。最低でも年俸420万円が保障されている」 ――赤字解消策はあるか 「経営の合理化が必要。プロ野球は一般の企業では考えられないほど無駄が多い。オリックスの球団代表だった当時、景気が悪くなり、親会社の役員はグリーン車の乗車を控えた。しかし、プロは裏方を含め全員がグリーン車の球団もあった。廃止を試みたが、選手らから『他球団と比べ待遇が悪い』と反対された。経費の合理化は1球団ではできない」 ――球団の収入差も大きい 「巨人、阪神など収入の多いチームは運命共同体の観点から、12球団で利益を分配しようという考えがあればよいと思う。昔、『巨人が強ければ客がついてくる。そのおこぼれを他球団が拾えばよい』と言い切る球団幹部がいた。今は変わったのかもしれないが、球界のリーダーがそれでは厳しい。新規参入する球団が苦労するだろう」 ――野球の競技人口も減っている 「大会に参加する少年野球チームが毎年、減っている。野球はお金がかかる。月謝が4万円のチームもあると聞いた。用具代もかかるので、子供が野球が好きでも親がサッカーに転向させるケースもある。プロ野球界は、金の卵がどんどん減っている実態を分かっていない。野球界をアマからプロまで一本化し、底辺の拡大を考えた上で、球団を増やす議論をしていくべきだ」    ◇小関順二(こせき・じゅんじ)  昭和27年、神奈川県出身。61歳。日大卒。単行本の編集者を経て、スポーツライターに転身。ドラフト戦略に着目するなどプロ野球に精通。著書に「プロ野球問題だらけの12球団」など。井箟重慶(いのう・しげよし)  昭和10年、岐阜県出身。79歳。上智大卒。平成2~12年、オリックス球団代表を務める。著書に「プロ野球 もうひとつの攻防『選手VSフロント』の現場」。関西国際大名誉教授。

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    田中将大投手を襲ったケガの裏にあるもの

    アプレイ・データ) では、田中投手の肘痛の原因はどこにあるのか。さまざまな要因が考えられるが、日本のプロ野球の全試合を分析するフェアプレイ・データの石橋秀幸社長(慶應大スポーツ医学研究センター研究員)は、田中投手の「投球の組み立て」に注目する。 石橋さんが、田中投手の楽天時代の2013年と今年ヤンキースでの配球を分析したところ、スプリット(フォーク)の多投が顕著だったという。 全配球のデータからもそれが伺える(図5)。昨年は、①ストレート36% ②スライダー24% ③スプリット(フォーク)19%の順だったが、今年は、①スプリット(フォーク)26% ②ストレート22% ③スライダー22%の順に大きく変化した。 石橋さんは、「大リーグでは田中投手のような切れのある、スプリットを投げる投手は少ない。パワーヒッターが多い大リーグでも十分に威力を発揮しているため、キャッチャーもスプリットを中心に組み立てている」と指摘する。 その証拠に、今年は初球からスプリットを多く投げている。大リーグでは初球から積極的に打ってくるバッターが多いのと無関係ではない。 2ストライクと追い込んだ、投手有利な場面でもスプリットが目立っている。昨年は、こうした場面ではストレートを厳しいコースに投げていたとみられるが、今年はスプリットが多く、昨年のストレートがそのままスプリットに置き換わった形だ。早めに勝負球を投げ、球数を減らす狙いがあるとみられる。同じく1-1、2-2などの平行カウントでもスプリットと、ストレートの使用割合が日本時代と逆転しているという。 こうしたスプリットの多投で何が起きたか。田中投手は、ある程度深くボールをはさみ、指の間からボールを抜く感じで投げている。ボールをリリースした瞬間、腕には急ブレーキがかかるが、フォーク(スプリット)はストレートより大きな力でブレーキをかけなくてはいけない。 石橋さんは「フォークを多投する投手に聞くと、投げすぎると握力が落ち、手がむくむことがあったという。フォークを投げた時の肘には、ストレートより1.4倍も大きな力の急ブレーキがかかる(図9)。それだけ肘への負担が大きくなる。スプリットの多投は肘への負担を高めた要素の一つ」と強調する。図9 直球とフォークボールを投げた時、肘にかかる加速度。ボールをリリースした後、フォークを投げた時の肘には、直球の時の1.4倍も大きなブレーキがかかっている (参照:車谷洋、村上恒二、「フォークボールと肘関節障害」、臨床スポーツ医学 19-4)中4日の登板による疲労説も もう一つの要素と考えられるのは、中4日の登板による疲労の蓄積だ。田中投手は楽天時代、中6日で登板していた。この2日の違いは、休養の取り方、投球練習、筋力トレーニングなどの調整の内容、スケジュールに大きく影響する。 ダルビッシュ投手が「中4日では肘の炎症がとれない。もっと間隔をあけるべきだ」と主張するのは、この投球間隔がいかに過酷であるかを示す悲鳴にも聞こえる。 このほか、田中投手のフォームは、大リーグの固い、急傾斜のマウンドには向いていないという分析もある。 下の写真は、このコラム「楽天・田中将大投手 25連勝 強さの秘密」で紹介したフォームである。図10 楽天時代の田中投手のフォーム(提供:フェアプレイ・データ) 文句のつけようのないきれいなフォームであるが、松坂投手のけがの理由について解説した「ダルビッシュと松坂を科学する」でも触れたように、ステップ幅が大きく、重心が低く、体を前に送り出すフォームでは、大リーグの傾斜の高い、固いマウンドでは無理な姿勢で投げなくてはならない。肘への負担が大きくなってしまう。こうした大リーグのマウンドでは、ステップ幅を狭くし、踏み出した足を突っぱねるようして地面からの力(反力)を得て投球するのが理にかなっているのである。 しかし、大リーグ入り後の田中のフォームには、ほとんど変化は見られなかった。「大丈夫かな」と思っていた矢先のDL入りだった。 現在、リハビリ中の田中投手は、ビデオ映像を見ながらフォーム改造に着手した。従来のフォームでは肘への負担が大き過ぎると判断したのだろう。幸いヤンキースには、田中と同じような、重心の低いフォームから大リーグ型のフォームに見事修正した黒田博樹投手がローテンションの柱として健在だ。 石橋さんは「目指すべき姿、目標が近くにあることは大きい。3年目のダルビッシュやシアトル・マリナーズの岩隈久志投手らも大リーグにあったフォームに進化している」と語る。幼少期からの投げすぎが一因にも図11 野球で肘痛を発症した大学生の過去の既往歴との関係(参照:『「野球医学」の教科書』) 一方で、馬見塚さんや、筑波大の川村卓准教授(同大野球部監督、スポーツ科学)らは、「ジュニア時代からの投げ過ぎなどが今回の肘障害の背景にある」との見方を提示する。田中投手は中学時代にキャッチャーからピッチャーへ転向し、特に肩や肘を傷めたとの報告はなし。しかし、キャッチャーやピッチャーは、ジュニアではともに肘などの故障がダントツに多いポジションだ。 馬見塚さんは、「精密なMRI検査をすると、ジュニア時代に繰り返す軽微な肘痛の裏には内側側副靭帯の異常があることが多い。田中投手の場合、肘の障害のきっかけはジュニア時代の障害があったのではないかなど、過去にさかのぼって考える必要がある。これにメジャーでの慣れない環境、中4日登板などによって、疲労が十分に取れない中で、投球数の多さも重なって症状がでた可能性はある」とみる。 馬見塚さんによれば、大学生で肘の痛みを訴える人の86%はジュニアや高校時代などに肘痛の既往歴があった。大学生になって初めて発症するのは2%に過ぎなかった。発症しやすさは、過去に傷めたことのある人の方が既往歴のない人に比べ25倍も大きいことになる。 「つまり、大学生からの障害対策では遅い。もっと小さい時からの障害予防の取り組みが欠かせない。成人と同じような、勝利至上の野球は障害の要因になるだけだ。なぜなら、ジュニアと成人では骨や靭帯の発達が違うからだ。肘の場合、子どもは軟骨が多く、耐久性はない。指導法が異なることを指導者は知らなくてはならないが、まだそこまでいっていない」と語る。図12 子ども(10歳、左)と成人(27歳、右)の肘のMRI画像。緑色の矢印は軟骨を指す。青色の矢印は靭帯を指す。子どもは骨が発達せず、軟骨が極めて多い(参照:「別冊整形外科No.64」(南江堂))。投げ過ぎの基準は球数以外にも強度やフォームも考慮 馬見塚さんがもう一つ警鐘を鳴らすのは、「投げ過ぎが球数だけで考慮されている野球界を取り巻く空気」だ。大リーグでは先発投手の交代の目安は100球。青少年も「1試合75球以下、1シーズン600球」を推奨する野球ガイドラインがあるが、野球肘などの障害防止の特効薬にはなっていない。 日本でも同様の興味深いデータがある。小学生の投手149人を対象に、1年間追跡した調査で、1日50球以上投げていた62人中42人(66.1%)が肘などの障害が発生した。一方、50球以下の障害発生は少なくなったものの87人中25人(28.7%)が発症している。このことは「肘痛の減少に球数を抑えることは有効だが、球数を少なくしても、約30%が肘痛を発症していることは、投球数制限だけでは十分ではないことを示している」(馬見塚さん)。 では、何が重要かと言えば、投球の強度とフォームという。全力投球は肘に負担がかかることをこどもたちに教えることはとても大事である。そしてその指導は決して将来の投球スピードを減らすものではないことを知ることである。じっくり成長を待つことが大切だ。 また、ストレートの肘への負担を100とすると、カーブは91、チェンジアップは83と適切な指導を受けた場合変化球は決して負担の多い球種ではない。「学童野球ではチェンジアップなどを許可し、指導者講習会などで指導者に指導法を学んでいただくことも大事だ」と馬見塚さんは強調する。 もう一つは、肘や肩に負担の少ないフォームを身につけることだ。フォームが身についていないと、球数が増え、疲労がたまると投げ方が悪くなりがちだ。年齢に応じた筋力とスタミナをつけないと、フォームを修正しても昔の癖が抜けきらないことがある。 田中投手らが大リーグで活躍することは、未来を担う少年たちにも大きな夢となる。今後、田中投手の一挙手一投足には注目が集まるが、今回のDL入りは、日本、アメリカのプロ、アマチュア、ジュニアを超えて、改めて野球を冷静に見直す良い機会を与えてくれた。科学的に野球をすることの大切さだ。   関連記事■昨季の田中将大 投手酷使指数ではMLB先発投手の5年分に相当■マー君の故障 米では原因を日本での投げ過ぎに求める声強い  (ともに週刊ポスト 2014年8月8日号)

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    カープ女子で経営安定の広島 マツダとの連携強化なら常勝か

    いるのだが、それでもマツダとの連携が薄いのはなぜなのか。 「カープ自体は原爆被害からの復興を目指したプロ野球球団として市民球団の位置づけにあるため、筆頭株主であるマツダは口出しできないという理由もありますが、それ以外にマツダと創業家の関係性も大きい。 1970年代のオイルショックでマツダの前身である東洋工業が経営危機に陥った際、当時の松田耕平社長が経営責任を取って非創業家にバトンを渡し、1979年マツダとフォードの資本提携を機にマツダ株も放出しました。それ以降、マツダにおける創業家の発言力はみるみる低下していきましたが、球団の経営権だけは手元に残す形になったのです」(『月刊BOSS』の児玉智浩記者) マツダへの威光がなくなった創業家ゆえに、球団経営は死守すべき大事な稼ぎ頭ともいえるわけだ。しかし、「市民球団を名乗っている以上、松田一族がいつまでも私物化するのはおかしい」(カープファン)との批判も根強い。「カープは選手の年俸総額が12球団中最低の20億円程度。徹底的なコストカットで安定した収益を叩き出す経営スタイルは確立できたが、マエケン(前田健太投手)の大リーグ移籍問題をはじめ、有望なスター選手がどんどん他チームに流れれば、人気を維持するのは難しい。 カネをかければいいという問題でもないが、球団の黎明期に地元の電力・電鉄会社やマスコミなどがこぞって出資していたように、多くの企業にスポンサー支援を仰いだほうが広島経済全体の活性化にもつながる」(スポーツ紙記者) 幸い、マツダは前3月期で過去最高益を計上するなど業績は絶好調。新型の『デミオ』が2014~15年の「日本カー・オブ・ザ・イヤー」に選出されるなど勢いづいている。 仮に、マツダがカープとの連携をさらに深めて積極的な財政支援を行えば、“常勝チーム”を狙う選手補強の原資にもなる。果たして、松田一族は「広島東洋カープ」の未来像をどう描いているのだろうか。 (2014年10月15日)関連記事■広島市民溺愛のカープうどん 2年前から「全部のせ」が登場■「カープ女子」の平均的プロフィール判明 26歳ラーメン好き■24歳美女「窓を開けて風を感じたい」とドライブデートを夢想■車メーカー・マツダのアルファベット表記が「MAZDA」の理由■「巨人の選手は東京ドームの本塁打の打ち方を熟知」と専門家

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    ビジネスとしてのプロ野球 ポストシーズン改革で収益改善を

    はリーグ型経営が必要だ 横浜の身売り話がささやかれる一方で、ポストシーズンと呼ばれる1カ月がはじまるプロ野球界。なぜ横浜ほどの市場規模がありながら球団経営が赤字なのか。プロ野球をスポーツビジネスとして捉えたとき、日本球界はまだまだ未成熟だ。クライマックス・シリーズから日本シリーズに続くこの1カ月間のポストシーズンをいかに収益化していくかが、今後のプロ野球改革の最重要ポイントである。 (2011年10月執筆)大坪正則 今年も日本プロ野球のポストシーズンがまもなくスタートする。元来、クライマックス・シリーズ(CS)と日本シリーズが行われるこの1カ月間は、日本のプロ野球(日本野球機構、以下NPB)のビジネスにとって最も大切な期間である。だが、実態は理想と掛け離れ、さらにはレギュラーシーズンの勝者を重視する一部の人からは「CSはやめるべし」との声も聞こえてくる。そのような考えには賛成できない。むしろ、CSの試合をもっと増やすべきだ。 ポストシーズンは面のビジネス プロスポーツリーグを構成する球団の収支は、図表にある主な勘定項目の増減の結果として表われる。収支を整えるには地方市場、即ち「点のビジネス」と全国市場、即ち「面のビジネス」の両立を図り、そして両市場から得た収入の範囲以内に支出を抑えなければならない。ポストシーズンは面のビジネス プロスポーツリーグを構成する球団の収支は、図表にある主な勘定項目の増減の結果として表われる。収支を整えるには地方市場、即ち「点のビジネス」と全国市場、即ち「面のビジネス」の両立を図り、そして両市場から得た収入の範囲以内に支出を抑えなければならない。 地方市場とは、フランチャイズ制の下で各球団に与えられた地域独占営業区域を指し、この地域ではチケットと球場内物品が販売される。球団が販売を独占するので、1人のオーナー対多数のファンの関係となり、オーナーによる「売り手市場」が形成される。 そして、テレビの電波は、フランチャイズ地域を越え、全国津々浦々、さらには全世界に届くので、全国市場を形成した。しかもテレビは、全国市場で販売・展開されるマーチャンダイジング(商品化)とスポンサーシップを牽引する。全国市場の管理は個別球団が行うよりもコミッショナー(または、1人の人物)に任せる方が効率が良い。ここでもコミッショナー1人に対して多数の契約候補者の関係になるので、「売り手市場」が形成されることになる。 プロスポーツリーグは地方市場と全国市場をそれぞれ1人の「売り手」の管理下に置くことができる。ビジネスの上で、これほどの理想的形態はない。 NPBの最大の問題は、そのビジネスが全国市場に広がらず、地方市場に留まっていることにある。(編集部作成) 日本では、1959年に後楽園球場で巨人対阪神の天覧試合が行われ、NPB人気を確固たるものにする一方、テレビ放送権が試合主催者である球団の管理下に置かれることになった。以来、一貫して巨人戦だけが地上波で全国放送されてきた。交流戦開催前までを例に取ると、各チームの年間ホーム試合数が70ならば、巨人に70試合分の、そして巨人以外のセ・リーグ球団に14試合分の放送権利料が入った。巨人との試合が無いパ・リーグ球団はセ・リーグ球団と比較して放送権利料収入が極端に少なかった。 この不合理はテレビ放送だけに限らない。球団が商品化とスポンサーシップを個別に管理すると、それらの権利は全国市場で成長・発展しない。全国市場で商品グッズを販売したいメーカーも、同じくスポンサーシップを展開したい大手企業も、巨人や阪神の人気が高いといってもファンの比率は20~30%が上限だから、契約することを躊躇する。巨人や阪神と契約した場合、70~80%のファンからソッポを向かれる可能性が高いからだ。したがって、NPBでは、全国市場の商品化とスポンサーシップが球団の収入に貢献しない構造になってしまった。結局、巨人中心のテレビ放送が、巨人に依存するセ・リーグと赤字体質のパ・リーグを生み出し、同時に全国市場の開拓がお座なりになった。収入増をもたらすプレーオフの長期化 米国では、62年、アメリカンフットボールのナショナルフットボールリーグ(NFL)が、コミッショナーの指導の下でテレビ局と地上波独占契約を締結した。コミッショナーによる独占契約は、後にメジャーリーグベースボール(MLB)など他のプロリーグでも採用された。 MLBの放送権の管理はNPBのそれとはまったく異なる。MLBは30球団で構成され、各球団は年間162試合戦うので、全ての試合を全国放送にすることはできない。全国に放送する試合をコミッショナーが選択し、残りは各球団の管理に戻される。各球団に地方市場での放送が許されるのだ。 このシステムでは、シーズン開幕から8月頃までコミッショナーの出番はない。なぜなら、フランチャイズ制の下では、ファンは地元のチームを熱心に応援するので、全国向けに放送をしても対戦する2チームの地元ファン以外は見てくれないからだ。全国市場に向かってテレビ放送が動き出すのは、優勝争いから脱落するチームが出始める8月頃からになる。優勝争いから落ちて行くチームを応援するファンの関心をプレーオフとワールドシリーズに惹きつけるために、地上波の全国放送の回数を徐々に増やすことになる。 商品化とスポンサーシップの収入拡大はテレビが牽引するので、MLBではコミッショナーがテレビに加え、商品化・スポンサーシップも一括管理することになった。これによって、全国市場のビジネス活性化のために、テレビ局、商品化のライセンシー、スポンサーなどのステークホルダーの協力を得て、全国規模でのプロモーションを展開できる準備も整う。8月頃からワールドシリーズまでが、ライセンシーの書き入れ時期になり、スポンサーはその間に大々的なセールスキャンペーンを行うのが慣例化する。その中心になるのが、シーズン終盤の優勝争い、プレーオフ、ワールドシリーズ終了までの連続した地上波による全国放送である。だから、戦力が拮抗して試合数が多くなり、そのためプレーオフの期間が長くなればなるほど収入増加に寄与する。参考までにNPBと米国4大プロリーグのプレーオフの組合せを別記する。 テレビ活用の上手なリーグと球団が潤い、テレビ活用に乗り遅れた所は売上が伸びない。現に、テレビ放送がMLBとNPBの経営の仕組みを決定的に違うものにし、今現在、大きな経済格差を生む要因となっている。 Forbes「The Business of Baseball 2011」によれば、MLB30球団の収入合計は61億3700万ドル。日本円に換算すると、約5000億円。一方のNPBは推定だが、約1200億円。球団当たりの平均収入が、MLBは約170億円、NPBが約100億円。この差が選手年俸の差となって表れ、日本人選手のMLB入りを促している。地域密着の営業で成果出すパリーグ 「親会社が、球団の当該事業年度において生じた欠損金を補填するため支出した金額は、広告宣伝費として取り扱う」(54年国税庁通達)の特例が日本の球団経営を甘いものにし、球団改革を遅らせたようだ。赤字を出し続けたパ・リーグでは、2リーグ制発足時の6球団の親会社が全て撤退し、総入れ替えとなった。 そして、04年大阪近鉄バッファローズの消滅が、他のパ・リーグ球団に大きな衝撃を与えた。親会社が赤字に陥り、その時球団が赤字であれば、球団が消えてなくなることを目の当たりにしたからだ。パ・リーグの球団は黒字に向かって改革を迫られた。だが、テレビ放送権が絡む全国市場の改革はセ・リーグ球団の了解を必要とする。セ・リーグの了解取得は至難の業、時間もかかる。そこでパ・リーグは地方市場からの収入拡大に着手することにした。 幸い、日本ハムが北海道に移転し、楽天が近鉄に代わり東北に進出、ソフトバンクがダイエーの商圏だった福岡を継承し、バランスの取れたフランチャイズを敷くことができた。これは、フランチャイズ制の利点の1つである地域密着の営業活動を展開できることを意味する。05年以降のパ・リーグの「元気良さ」は地域密着の営業が上手く行われている証であり、数字が如実に物語っている。 04年11月のオーナー会議でパ・リーグ球団の平均赤字額が32億2200万円と発表されたが、09年度には2球団が赤字だった(『AERA』10年11月29日号)という調査結果も出るようになった。親会社からの補填があった上での黒字だったかも知れない。それでも、観客動員数で見ると、実数発表が始まった05年と比較して10年は158万939人増の983万2981人となっている。赤字球団の減少が親会社からの補填に頼った結果だけでもなさそうだ。 パ・リーグは、6球団が協働して営業活動を行う会社を07年に設立し、パシフィックリーグマーケティング(PLM)と名付けた。PLMはホームページの作成、インターネット動画中継、リーグスポンサーの獲得などの成果を挙げており、今後も更なる業績拡大が期待されている。 一方、セ・リーグの観客動員数をパ・リーグの同期間と比べると、63万5451人の増加で、パ・リーグの半分にも満たない。フランチャイズの分布を見ると、バランスが取れていない。全国市場を優先して地域密着の営業が機能していない球団もあれば、東京及び近隣の都市に3球団が並存しているからだ。同じ日の同じ時間に、東京ドーム・神宮球場・横浜スタジアムで試合を行いファンの奪い合いをすることは、地域独占の観点に立てば、最悪の事例だ。関東以北に球団がないのもファン層が偏在する要因となっている。 現状打開は、全国市場のビジネスモデルを変えることだ。全国市場の管理を個々の球団から一括管理ができる1人の人物に移管しなければならない。それが達成できれば、球団の数を12から16に、更に16から24に増やすことも視野に入ってくる。全国市場が活発化すると、全国市場からの収入分配が増えるので、各球団の収支が改善される。ファン層と市場の拡大も期待できる。さらに良いことは、全国市場からの分配増加が各チームの「戦力の均衡」も促進できる。緊迫した試合が増え、これまで以上にファンを惹きつけることも可能となる。その中で核となって働くのが、MLB同様、シーズン終盤、CS、日本シリーズを連続して全国に放送するテレビなのだ。 以上のことから、CSと日本シリーズの地上波による全国テレビ放送の重要性が理解して貰えると考える。今NPBに求められるのはリーグ型経営の早期実現である。   

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    プロ野球球団は増やせるのか 経済学の「視点」改めて議論

    日本が1次リーグでの敗退が決まると、すっかり人波は遠のいた。 列島がサッカー熱に浮かされているとき、プロ野球交流戦は盛り上がりをみせ、巨人対ソフトバンクの最終戦で巨人の優勝が決まる劇的な幕切れとなった。 プロ野球の1リーグ構想が突然明るみに出て、紆余(うよ)曲折を経て2リーグが継続してから10年目である。あの時の真相を探ろうとする報道が相次いでいる。「アベノミクス」の成長戦略の立案に対し、自民党が球団を現在の12球団から16球団にする構想を打ち上げた。 改めて、プロ野球の「経済学」が論議されている。列島に球団の数を増やすことはできるのか、球団経営は親会社からの補填(ほてん)なくして自立できるのか…。 千葉に本拠を置くロッテと、福岡のダイエーを合併して、1リーグにする構想は実は、10年前ではなく、その前年に水面下で開始されていた。 オリックスの本拠地のネーミングライツ(命名権)を購入したソフトバンクの孫正義代表が、この年にオリックスに招待されて試合を観戦したのが、のちに2リーグを維持することになるきっかけだった。観戦直後にプロ野球の球団買収の意向を示した。 買収できる球団はどこか。情報を収集する過程で1リーグ構想につきあたった。球界の情勢に詳しい2人の友人から情報がもたらされた。 そして、球界再編騒動の2004年に入る。ロッテとダイエー、さらにオリックスと近鉄の合併構想までが明らかになり、選手会のスト表明にまで至る。 ダイエー本体は10月、産業再生機構の支援を仰ぐ。孫代表はその瞬間に、球団が売り出されると読んだ。急遽(きゅうきょ)、休日に呼び出され、福岡と東京で買収に名乗りを上げる記者会見の設営を命じられた。 ダイエーとの交渉を進めるなかで、突然のように西武から身売りの打診があったのに驚かされた。 球団経営の収入は、チケットと関連グッズ、飲食である。支出のうちで大層を占めるのが実は球場の使用料なのである。米国では自治体が球場を建設して、年間の使用料を1ドルにしているところもある。ネーミングライツも補填する。仙台を本拠とする楽天が早期に黒字化したのは、県営球場の使用料が格安であることが大きな要因だ。 福岡はかつて西鉄が、仙台は準フランチャイズだったロッテに去られた経験がある。市民は地元に球団が存在する意義をよく知っている。 プロ野球球団を増やせるかどうか。その方程式を解く鍵は、多くの否定的な専門家が説くような、選手不足や親会社の維持費の問題ではないと思う。(シンクタンク代表 田部康喜)※フジサンケイビジネスアイ 2014年6月30日関連記事■プロ野球 16球団に拡大するなら完全ウェーバー制導入すべき■プロ野球16球団構想に江本孟紀氏「アホとしかいいようない」■プロ野球16球団拡大プラン 集客考慮した「4地区制」の提案■アベノミクスで「プロ野球16球団構想」 現状は厳しいと識者

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    虎「打」とタカ「投」 投資の総決算

    日比野恭三(写真:iStock) あるプロ野球選手は、試合中、ベンチで選手名鑑を見てモチベーションを上げるのだという。なぜか? 名鑑には全選手の年俸が書いてあるからだ。 「アイツ、こんなにもらってやがるのか。絶対打ってやる!」 プロ野球界とは、残酷なまでに選手の「格」が年俸という数字に表れる世界である。二刀流で活躍する日本ハムの大谷翔平が高卒3年目となる来季には1億円を突破すると見込まれているように、年齢など関係のない非情な実力社会なのだ。相手がナンボほどの“給料”をもらっているのか、それは間違いなく選手を奮い立たせる燃料になる。補強に積極的な阪神、ソフトバンク 昨年の日本シリーズがまさに「格差」シリーズだった。 巨人が年俸総額38億円以上で12球団中1位だったのに対し、楽天は同18億円余りで第10位(年俸は推定、以下同)。たとえば第1戦の先発マウンドに立った楽天の則本昂大(1200万円)と巨人の主砲・阿部慎之助(現役最高額の5億7000万円)の対戦などは、年俸差47.5倍という途方もない開きがあった。 それでも第7戦までもつれたシリーズを制したのは楽天の方だった。もちろん田中将大という、のちにヤンキースと7年総額約160億円の超大型契約を結ぶことになる絶対エースがいたとはいえ、資金力の面から言えば、見事なまでの「下剋上」を成し遂げたシリーズだったのだ。 そして今年の日本シリーズには、セ・リーグからはCSファイナルステージでリーグ覇者の巨人に4連勝を飾った阪神が、パ・リーグからは同ステージで粘る日本ハムを振り切ったソフトバンクが出場する。ともに関西と九州に熱烈なファンを抱える人気球団だ。ソフトバンクは3年ぶり、阪神は9年ぶりの出場とあって、地元を中心に大いに盛り上がることは間違いない。 そんな両球団のもう一つの共通項が、特に近年、積極的に補強を行ってきたことである。 今季の年俸総額はソフトバンクが37億5100万円、阪神が31億8500万円で、これは12球団中2位と3位にランクインする(1位は巨人の45億1200万円)。昨季4位に沈んだソフトバンクは王座奪還に向けて次々と大物選手を獲得、年俸総額で約13億円を上積みした。阪神は昨季リーグ2位とはいっても巨人に12.5ゲームという大差をつけられた。やはり8億円以上の年俸を加算して今季に臨んでいる。 両チームの年俸総額には6億円近い開きがあるが、昨年の対戦カードに比べればその差はなきに等しい。今シリーズは大型補強を断行したチームどうしの、日本一をかけたガチンコ勝負と言えそうだ。阪神打線とソフトバンク投手陣が火花を散らす ここで、今シリーズで出場が予想される選手のラインアップを見てみたい。 まず野手について、年俸、今季成績、そして補強選手の入団年をまとめたのが表1だ。CSのスタメンを参考にして作成した(阪神のDHは独断で新井良太を選出)。表2の投手編は、先発が予想される4人と中継ぎの中心選手3人、クローザー1人の合計8人ずつを比較対象としている。 野手陣の年俸の合計額に大きな差は見られない。投手陣では阪神の方が高年俸だが、不調にあえぐエース攝津正(年俸4億円)が登板するとなれば一気に逆転する。出場予想選手の年俸対決は五分五分と見ていいだろう。補強選手の投資効果 だが「過去2年の補強選手」というフィルターをかけると、両チームの強化方針の違いが表れてくる。黄色で示した通り、阪神はこの2年で野手の戦力を厚くし、ソフトバンクは投手を大幅に強化しているのだ。つまり補強選手に限って見れば、西岡剛、ゴメス、福留孝介らの阪神打線と、中田賢一、スタンリッジ、五十嵐亮太、サファテらのソフトバンク投手陣とが火花を散らす構図が浮かび上がるわけだ。 彼らは首脳陣の期待の分だけ年俸も高い。補強戦力がその真価を発揮するのは果たしてどちらのチームなのか? そうした視点でシリーズの行方を見守るのも一興だろう。 レギュラーシーズンの成績に基づいた“投資対効果”を指標に、あえて結果を予想するとどうなるか。ソフトバンクの補強選手たちが年俸に比してまずまずの結果を残しているのに対して、出場24試合に留まった西岡と、104試合に出場して打率2割5分3厘の福留、この阪神の2選手に関しては物足りない成績と言わざるを得ない。 ならば「ソフトバンク有利」と言いたいところだが、シーズン終盤からCSにかけて、情勢は大きく変わりつつある。今季、西岡が欠場続きだったのは、開幕直後3月30日の試合で負った大ケガが原因だった。二塁後方への飛球を追って、右翼手の福留と激しくぶつかったのだ。開幕3試合目で年俸2億円の西岡が戦線離脱を強いられたのはチームにとっては大誤算だったろうが、CSでは本塁打を放つなどついに復活の時が訪れたことをうかがわせた。福留も、広島とのCSファーストステージ第1戦で前田健太から決勝のソロ本塁打を放ち、鋭い読みと勝負強さを随所に発揮している。今年の日本シリーズを制するのは、阪神か、ソフトバンクか…… (写真: Getty Images News) メジャー帰りという共通点をもつ2人は「期待はずれ」と批判の槍玉にあがることもしばしばだったが、過去、日本シリーズに複数回出場した実績があり、短期決戦の経験が豊富なのも事実。来日1年目で打点王に輝き、好調を持続するゴメスとともに、“補強打線”爆発への期待は高い。 一方、シーズン中は健闘してきたソフトバンク投手陣にはほころびが見える。象徴的なのはセットアッパー五十嵐の乱調だ。メジャーで習得したナックルカーブを武器に危なげない投球を続けてきた五十嵐だったが、オリックスとの優勝争いが佳境に入った9月25日の楽天戦で、まさかの5四球4押し出し(1イニングに4つの押し出し四球は60年ぶり、史上5人目のタイ記録だった)。その後の登板での不安定な投球内容から察するに、この時のショックはまだ完全には癒えていないと見る。先述の通り、李大浩と並んでチーム最高年俸4億円を受け取る攝津もシーズン最終登板で3回6失点、CSで2回7失点と絶不調にある今、低空飛行の「鷹」が牙を剥いた「虎」をおとなしくさせられるかは甚だ疑問だ。 もちろん、昨年がそうであったように、勝負は年俸で決まるわけではない。表には挙げなかったが、ソフトバンクでは飯田優也(育成選手2年目・年俸400万円で契約)、阪神ではルーキーの岩崎優(660万円)と岩貞祐太(1500万円)といった年俸の低い若手投手たちが一軍の先発マウンドを経験しており、彼らが1億円プレーヤーばりの大活躍を見せる可能性も十分にある。逆に、代打起用が予想される阪神の新井貴浩(2億円)などは、数少ないチャンスで存在価値を示したいところだ。 高給取りが底力を見せつけるのか、それともハングリーな若手が大物を食うのか。大阪と福岡、商人(あきんど)の街で繰り広げられる日本シリーズだけに、そんな“銭勘定”も観戦の楽しみの一つにしてはいかがだろうか。