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    日本でiPhoneが広まったのはアップルの巧みなキャリア選定にあり

    石川温(ケータイ/スマホジャーナリスト) いよいよ9月25日に発売となるアップル「iPhone 6s」と「iPhone 6s Plus」。一部では「世界で過去最高の予約数を達成した」という報道もあるなど、今年も大ヒット間違いなしとなりそうだ。 しかし、この「過去最高の予約数」という言葉を鵜呑みにしてはいけない。なぜなら、アップルはiPhoneの新製品を発売する毎に、初日に販売する国を増やしている。 しかも、今年はアップルにとって最大のマーケットである中国が初日の販売国に名を連ねている。いま、中国の人にとってiPhoneは「富の象徴」とも言える存在であり、お金に余裕のある人たちは我先にとiPhoneに飛びつく。つまり、去年に比べて中国市場が初日販売に仲間入りしたことで、「過去最高の予約数」は必然のものと言えるのだ。 とはいえ、iPhoneの人気が高いのは何も中国に限った話ではなく、日本での人気は世界でも類を見ないほどといえる。なぜ、こんなにも日本人はiPhoneが好きなのか。 当然のことながらiPhoneの操作性が良く、またアップルが作り上げたイメージにより、「iPhoneは使いやすくて、持っていると格好いい」からと、iPhoneを購入している人が多い。ただ、それだけでここまで日本でiPhoneが突出的に人気になるのは難しい。 アップルが上手かったのは、やはり日本で最初にiPhoneを扱ったキャリアをソフトバンクにして、独占的に販売させたというのが大きいだろう。米アップルのスマートフォン「iPhone 4S」の予約受け付けを前に、端末価格と料金を発表するソフトバンクの孫正義社長=2011年10月7日、東京都港区(高橋朋彦撮影) 当時のソフトバンクは、「ホワイトプラン」という低料金プランで攻めていたが、なかなかNTTドコモやKDDIに追いつくのが難しかった。そんななか、iPhoneという武器を独占的に手に入れたことで、徹底的に販売キャンペーンを行って、一気に契約者を奪っていったことは記憶に新しい。 さらに、アップルは通信技術の進化により、次にKDDI、2年前にNTTドコモといったようにシェアの小さいところから、日本で取り扱わせることにした。当時、NTTドコモは、自分たちのサービスを載せられないiPhoneを敬遠していたが、最後は押し切られる形でiPhone導入をせざるを得なかった。アップルの巧みなキャリア選定が、結果として日本でiPhoneを普及させるのに成功した。 また、3キャリアで同じiPhoneを扱うことで、キャリア間での料金やキャンペーンが過熱したのも、iPhone人気を加速させることにつながった。 iPhoneがLTEに対応すれば、各社でLTEネットワークの広さや速度などの品質を争うし、古いiPhoneを下取りするキャンペーンが始まれば、各キャリアで一斉に導入が進む。 最近でもKDDIが月額2700円の音声通話かけ放題プランを1700円に値下げすれば、その日のうちにソフトバンク、翌週にはNTTドコモが追随してきた。 iPhoneが発売されるタイミングに合わせて、各社のキャンペーンが盛り上がる。 ユーザーの立場とすれば、iPhoneが発売されるタイミングにiPhoneを購入すれば、値引きされるなど、得する機会も多くなる。例えば、iPhoneを使っていれば、次の機種変更の時にiPhoneを下取りに出すと高く買ってくれることがほとんだ。 つまり、「Androidを買うよりもiPhoneのほうが得」という結果となり、さらにiPhone人気が高まるのだ。 また、日本人は「自分だけ違うもの」を持ちたがらない傾向にある。まわりでiPhoneが普及すれば「自分もiPhone」という空気に流されるかたちで、商品選びをする事が多い。iPhoneが普及したことで、さらにiPhone人気に拍車がかかるというわけだ。日本でも毎年、気軽に新型iPhoneが手に入る? 今年からアップルは、米国で「アップグレードプログラム」という仕組みを開始する。毎月、数千円を支払えば、1年ごとに新製品のiPhoneを手に入られれるというものだ。いままで使っていたiPhoneは回収されてしまうが、手軽な出費で、毎年、新製品が手に入るというのはユーザーにとってもメリットは大きいだろう。 日本でも、KDDIを筆頭に各キャリアで一定額を支払うことで、18カ月毎に新製品が手に入る仕組みが始まっている。この9月からは18カ月から12カ月で新機種にできるキャンペーンも導入されている。 つまり、日本でも「1年ごとに新製品のiPhoneを使い続ける」という環境が整いつつあるのだ。 実は1年間使い続け、回収された中古のiPhoneは整備されたのち、中国やアジアなどの新興国に転売されているという。 新興国では新品のiPhoneは高くて手が出ないが、中古品だったら何とかなるとして、人気の商品となっている。 新品のiPhoneは富の象徴であるが、中古品ならば手に届く人もいるというわけだ。もしかすると、中古のiPhoneを手にした人が、裕福となり、翌年には新品を買うかも知れない。 アップルとしては、単にハイエンドモデルとして世界で販売しているだけでなく、中古品を流通させることで、ユーザー層の拡大に力を入れているというわけだ。 このような仕組みは、世界的に同じモデルが流通し、リセールバリューの高い商品だからこそ、実現できるエコシステムと言えるだろう。 世界中のキャリアをコントロールしつつ、世界規模で製品を流通させているアップル。iPhoneの世界的な人気はしばらく安泰と見て良さそうだ。いしかわ・つつむ 日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、日経TRENDY編集記者として携帯電話業界などを取材し、2003年に独立、フリーランスに。現在は国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップル、海外メーカーなども取材。主な著書に「iPhone5で始まる! スマホ最終戦争」(日本経済新聞出版社)。

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    「ひとり負け」マクドナルドがおそらく今やるべきこと

     8月12日、日本マクドナルドホールディングスはサラ・カサノバ社長の記者会見の中で、上期予想とほぼ同じ上期売上高1720億円、当期純損失は262億円と発表しました。4月16日に発表した日本マクドナルドの『ビジネスリカバリープラン』から4ヶ月が経ち、新たなマクドナルドがブランド力強化や顧客満足度の回復のためにどのような施策を打ってくるのかが焦点となっています。平成27年12月期第2四半期連結決算状況および特別損失の計上のお知らせhttp://www.mcd-holdings.co.jp/news/2015/release-150812a.html 昨年7月に使用期限切れ鶏肉問題が発覚してからというもの、失墜した顧客からの信頼を回復することがなかなかできず18カ月連続減収に喘いでいる状態で、減益幅こそ徐々に縮小しつつあるとはいえ日本市場ではダウントレンドから抜け出せていません。 何しろ、全店客数が前年比マイナス19%、全店売上高で前年比マイナス27%ですから、どれだけ厳しい数字であるかは想像に難くありません。私事ながら、今年のマックのハッピーセットはポケモン各種遊具であり、私の家の子供たちは見事にまったく食いつきません。以前、ハッピーセットにブーブという車のおもちゃが起用されたときは、この子達は一生マックを食べて生きていくのではないかと不安になるほどのリピートをしていたんですけれども。 個人的な事情と合致するように、外食系の調査会社ではかねてからマクドナルドが強いとされてきたファミリー客の足が遠のき、一回の購買あたりの訪問客数平均も減少。それに被さるように、一時はマックコーヒーで盛り返したはずの顧客が今度はコンビニのコーヒーに取られ、結局はもっとも客単価の低いティーン層に店舗スペースを長時間占領される、という悪循環に見舞われております。つまり、落ち着いた雰囲気でコーヒーを飲みたい層も、ファミリーで手軽な食事を楽しみたい層も失い、よりジェネラルには新鮮な野菜の入ったハンバーガーやサンドイッチを百円高くても食べたいニーズをすべて落として、学生と近所のサラリーマンやOLのランチ需要だけで成り立っているような状態です。 昨今では新たに進出した中国市場での苦戦も伝えられるなど、グローバルに展開する優良企業であったはずのマクドナルドの暗雲が晴れません。一方、堅調な欧州市場や一部のアジアでは顧客とのエンゲージメントにある程度成功しており、そういううまくいった事例をロールモデルに日本でどのような展開をするのか関心を持たれてきました。決算会見で説明する、日本マクドナルドHDのカサノバ社長(中央)=12日、東京都中央区(荻窪佳撮影) が、今回の発表の中には、マクドナルドが顧客への信頼回復策や、変化するニーズに対応するための抜本的な改革を打ち出すのではないかと予測される向きもありましたが、蓋を開けてみるとこれといった内容はなく、むしろマクドナルドとして何に取り組むのが良いのかいまなお思案中であるかのような印象を受けました。 日本では、むしろマクドナルドだけでなく、ワタミグループやゼンショーホールディングスの各チェーン系業態の伸び悩みを埋める形で新たな需要を創造する店舗が拡大し、マクドナルドの凋落した「朝食市場」での争いや、居酒屋業態での脱低価格居酒屋といった別の次元の競争が始まっているのが現実です。 一連の問題の根幹には、マクドナルドが本来持っていた強みがマイナスに転嫁してしまう社会変化があります。というのも、マクドナルドに代表される外食チェーンにおいては一般的にコストを低減させるための大きな方法として本社機能の強化による集中購買がまずメインにあります。そこから、手間のかかる一次加工から場合によっては店舗で簡単な調理だけで済ませられるよう「半製品化」を行うセントラルキッチン方式や、経験の乏しい店員でも一定の味付けにできるようなマニュアル化や、すべての店舗で同じサービスが提供できるような均一化されたデザインといった、安く、一定の品質のものをどこでも同じサービスで提供できるようにする、というのがマクドナルドのビジネスの勝ちパターンであったわけです。 おそらく、マクドナルドの不調は、きっかけこそ鶏肉の使用期限問題だったものの、根本の原因はマクドナルドをマクドナルドたらしめているメソッド、ビジネスモデルそのものが、日本の外食を楽しみたいメイン層のニーズから離れてしまった、というかなり危機的なものであることは言うまでもありません。つまり、ブランド力の低迷や商品企画力という表向きの話よりも、もっと根底にある「安いものよりも新鮮でおいしいものを食べたい」という日本国内市場の環境変化をもろに被ったということです。 7月に投入したレギュラーメニューにたっぷり野菜を加えた新商品がありましたが、客足の早期の回復には結びつかず不発に終わりました。マクドナルドが取り組むべき改革の方向性としてはおそらく間違っていないもののマクドナルドが本来持つ強みとは異なった施策であるため、効果が出てくるまで時間がかなりかかるのでしょう。やはり、マックで飯といえば、しょっぱいポテトと紙コップに入った冷たい炭酸飲料というセットメニューがベースにある限り、上に野菜が載ったところで食指が伸びるのか、というところだろうと思います。 おそらくは、やるべきことは現状の顧客ニーズに合う商品企画を打ち出してブランドの修正を徐々に行いつつ、次の消費者のトレンドがマクドナルドに有利になるまで地道に清掃や業務見直しをして準備することでしょう。当面の「ひとり負け」の現状から脱するために、どの客層にフォーカスした事業に仕上げていこうとするのか、マクドナルドの挑戦を見守っていきたいと思います。

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    トヨタに「死角」はないのか

    2015年3月期決算で過去最高の営業利益(2兆7000億円)と純利益(2兆1300億円)を見込む世界企業トヨタ。絶好調に見えるトヨタに「死角」はないのか。中長期な視点から見た、一つの可能性を紹介したい。

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    究極のエコカーにも最悪の環境破壊車にもなるFCV

    [WEDGE REPORT]トヨタが本気の理由 水素社会の未来は不透明(後篇)(前篇はこちら)安井至水素の製造、運搬方法等で、燃料電池車のCO2排出量は大きく変わる。一連のエネルギー効率に目を向けるべきである。「水しか排出しない究極のエコカー」、といった記述に出会うことが多くなった。トヨタが水素燃料電池車(Fuel Cell Vehicle、以下FCV)「MIRAI」を2014年12月15日から670万円+税で発売すると発表して以来のことである。世界初の量産燃料電池車「MIRAI」(BLOOMBERG/GETTY IMAGES) 当初1台1億円以上と言われていたFCVが、この価格まで下がったのは驚くべきことである。大容量の発電機を搭載した電気自動車(EV)とも言える車なので、EVの最大の難点である充電時間の長さを完全に克服しており、ガソリン車なみに約3分間で燃料(水素)を満タンにすることができるという高い実用性を備えている。 しかも、災害時には電力が供給できる非常用電源車としての機能があるので、通常の家庭であれば、一週間以上の電気が使えるだろう。日本での究極的自己防衛に適合した車とも言えそうであり、将来の主流になる可能性を秘めている。 まず、この車の走行時に「水しか排出しない」ことが一つの究極であることは認めよう。環境上、極めて優れているからである。これは、FCVが水素をエネルギー源として使用しているから得られる特性である。ガソリン車では、いくらクリーンな排気を目指しても、その燃焼時にでるCO2をゼロにすることは不可能である。 しかし、「走行時には」という条件がついている。環境負荷を考えるときには、まず境界条件を設定するが、FCVの場合少しだけ視野を広げて、燃料になる水素はどうやって作るのか、と問われた途端に、非常に多くのことを考えることになる。 水素をどのように作るか。これは、多種多様な方法がある。しかし、ここでは説明を省略したい。その代わりとして、いくつかの方法で作った水素でFCVを走らせたときに、走行1kmあたりでどのぐらいのCO2が出ることになるか、その比較を図に示した。 ちなみに、Well to Wheelとは、ガソリンの場合であれば「油井」から汲み上げる段階から、車の「車輪」を動かすところまでの全段階を意味する言葉である。ガソリン以外でも、すべての負荷を考えていることを意味する。 最もCO2排出量が少ないケースが、太陽光発電由来の電力でEVを走らせる場合で、1kmあたりのCO2排出量は非常に少なく、1グラム程度ということになる。これに対し、最も多いケースが、ガソリン車のケースで147グラムのCO2排出である。ハイブリッド車であれば95グラムとやや少ない。 そして、肝心のFCVであるが、太陽光発電での電力を使って、水を電気分解して得た水素を使えば14グラム/kmである。すなわち、FCVの環境負荷は現在のガソリン車の1/10になる。これは、本質的な改善だと表現しても良いだろう。 しかしFCVも、都市ガスを水素ステーションにて改質した水素を使えば79グラムのCO2を排出し、天然ガスを水素ステーション以外で改質し、液化して輸送してきた場合には、111グラムのCO2を排出することになる。 なぜこのような差が生まれるのか。まず、この地球に住む限り受け入れなければならない事実がある。エネルギーの源には、(1)化石燃料、(2)原子力、(3)自然エネルギーの3種類しかないことである。 これらを「一次エネルギー」と呼ぶことになっている。一次エネルギーを大別すれば2種類あって、一つは、地球が蓄積している化石燃料と核燃料(原子力)である。これらは地下を掘ることによって、得ることができる。もう一つは太陽が毎日毎日与えてくれる自然エネルギーである。 さて、水素は一次エネルギーには入っていない。なぜなら、地球をいくら掘っても出てこないためである。ごく最近、「東芝が人工光合成の変換効率1.5%を達成」というニュースがあった。これは、太陽光を直接水素に転換する試みである。しかし、まだ実用レベルには程遠い。現状では、化石燃料から水素を作るか、自然エネルギーか原子力で発電をして、水を電気分解する方法のいずれかを使うことになる。しかし、3種の一次エネルギーは欠陥だらけなので、環境負荷やリスクなどを作りだしてしまう。軽すぎる水素がうむエネルギー負荷 将来重要な役割を果たす水素ではあるが、「軽すぎる」ことが弱点である。 ガソリンとその軽さを比較してみよう。1リットルのガソリンは、35,000kjという熱を出す。この熱で40℃のお湯を400リットルほど得ることができる。熱効率を考えれば、お風呂1回分ぐらいである。一方、水素1リットルの発熱量は、たったの11.7kjである。40℃のお湯130ml程度に相当するので、コップ1杯分沸かすことができないことを意味する。 「軽すぎる」ことが問題になるのは、「運搬」と「貯蔵」をするときである。すなわち、水素をどうやってFCVに搭載するかが大問題だった。この問題の解決法は、700気圧という高圧にして、カーボンファイバー強化プラスチックのタンクに入れるという方法である。700気圧とは、良く見かける産業用の高圧ボンベは150気圧なので、その5倍に近い圧力である。 水素ステーションでは、水素をさらに高圧にしてFCVに供給することになる。MIRAIが満タンになるだけの水素を700気圧以上にするためには、多くの電力が必要で、それは同クラスのEVを100~150km走らせる電力量に相当する。 液化すればその体積は、ガソリンの3.5倍程度で収まる。しかし、液体水素はマイナス252.6℃で沸騰してしまう。気体に戻った水素は処分をしなければならない。結論として、自動車に液体水素を搭載することは不可能である。単に駐車しているときにも燃料が失われる上に、もし、マンションの地下駐車場であれば、放出した水素が天井付近に溜まって大爆発を起こす可能性が大だからである。 個人的には、化石燃料の実体は「地球を破滅させる悪魔」だと称している。地球の大気は人類が出すCO2のゴミ捨て場になっている。東京都の場合、廃棄物は焼却され、焼却灰は東京湾の中央防波堤最終処分地に埋め立てられるが、その容量には限界がある。今のペースでは、数十年後には廃棄物を出すことができなくなる。 14年11月に発表されたIPCCの第5次評価統合報告書によれば、産業革命時点からの温度上昇を2℃とか3℃に決めれば、それによって排出できるCO2の量が決まってしまう。もしその限界に到達すれば、それ以後、CO2を排出できない、と記述されている。 すなわち、大気も実は廃棄物処分場と似ているということを意味する。仮に2℃上昇までと決めると、世界全体で現在の排出量を全く増やさないという不可能な仮定をしても、35~40年後には、CO2排出量をゼロにしなければならない。現状でも、異常気象は確実に増えているが、2℃上昇であっても、将来の異常度は想定を超えることだろう。となると化石燃料は、35~40年後にはそのままでは全く使えないと考えるべきなのだろう。 代替案のひとつである原子力は、「暴力的人物」である。余りにも大量のエネルギーを取り扱うことができるために、きっかけがあれば暴力的被害をもたらすからである。 また、自然エネルギーは、「気まぐれな浪費家」である。その気まぐれに対応するためには、かなりのお金を貢がなければならない。水素は、この「気まぐれ」を抑える切り札になるかもしれないと期待されているのである。 FCVは、どのようにして作られた水素を搭載するかによって、理想のエコカーにもなり得る一方で、最悪の環境破壊車にもなり得る。理想的、かつ、そのうち現実になると期待される水素は、メガソーラーや風力発電の不安定な電力だけで水素を製造し、圧縮し、そして、供給する水素ステーションで作られたものである。これが可能になれば、EVなみのCO2排出量になる。一方、最悪の水素は、石炭発電の電力で製造された水素で、260グラム/km程度のCO2排出量になり、現状のガソリン車の2倍もの環境負荷になる。その他の水素は、この両者の中間のものになる。 となると、どのような水素であるかを明示することを義務化することによって、はじめて、理想が達成できることになる。それには、カーボンフットプリントという仕組みがある。商品の一生で排出されるCO2量を表示する仕組みではあるが、この表示を強制すべき最初の商品が水素ということになるのではないだろうか。 さて、「今、このFCVを買うか」と聞かれたら、まずは、水素ステーションが整備されることが大前提であるので、今すぐということではなさそうである。また、上述のカーボンフットプリントが制度化されることも条件に思える。 文頭に述べた非常用電源車としてのFCVの機能はかなり魅力的である。個人として所有している車はプリウスPHVであるが、この車を選択した理由の一つが、実は、非常用電源車であった。12年にニューヨーク市を襲ったハリケーン・サンディは大停電をもたらした。その際、プリウスにオプションのAC100V1500W出力を搭載した車は、タンク2/3のガソリンで、1週間電気が使えたという報道があった。 しかし、将来の環境負荷低減のさらなる向上には期待しているものの、当面供給されるであろう水素は、図に示されているオンサイト都市ガス改質か、オフサイト天然ガス改質によるものになるだろうから、ハイブリッドなどの現行車より決定的に良くはならない。結論としては、「しばらく様子を見る」ということになりそうである。関連記事■ 円安はアベノミクスに不可避■ 松下幸之助が重視していた「経営力」とは■ 太陽光買い取り「29円」でも高すぎる   

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    電気か水素か…エコカー覇権めぐり火花

    “ガラパゴス”防ぐ「解」 電気か水素か 今年1月の北米国際自動車ショーは、さながら“次世代エコカー”の覇権をめぐる決戦場の様相を呈した。 「信じられないほど、ばからしい」 米国の電気自動車(EV)ベンチャー、テスラ・モーターズのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、刺激的な言葉でトヨタ自動車を挑発した。 トヨタが昨年12月に一般販売した燃料電池車(FCV)に使われる水素は貯蔵や製造が難しい。マスク氏はそれを念頭に、意味がないと批判したのだ。 これに対し、トヨタのジム・レンツ専務役員(北米トヨタ社長)は「テスラは素晴らしい商品を作っている」と持ち上げつつ、「FCVはEVより航続距離が長い」と応戦した。 現状、一般的なEVが1回の充電で走行可能な距離は200キロ程度。だが、トヨタのFCV「ミライ」は650キロを走行できる。ホンダもFCVのコンセプトカーをお披露目して来年3月の発売を表明し、トヨタの援護射撃に回った。左上から時計回りにトヨタ「ミライ」、テスラ「P85DモデルS」、日産「リーフ」とホンダ「FCVコンセプト」航続距離300キロ以上 地元の米ゼネラル・モーターズ(GM)は、航続距離300キロ以上というEVのコンセプトモデルを発表した。2017年にも発売予定で、メアリー・バーラCEOは「これまでのEVの流れを変える商品だ」と強くアピールした。 未来のエコカーの覇権をめぐる前哨戦は、自動車ショーの前から始まっていた。 1月5日、トヨタは燃料電池関連の5000以上の特許を無償提供すると発表。他社のFCV開発や水素供給インフラの普及を後押しするためだ。 テスラも昨年、EV関連特許の開放を打ち出したが、ミライの発売からわずか1カ月足らずでの特許公開は異例。同社幹部は「歴史の転換点になる」と胸を張る。 FCVは二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを排出せず、水しか出さないため“究極のエコカー”と呼ばれる。日本で先行発売されたミライの受注はすでに1500台を超えた。 政府も補助金などでFCVの普及を支援。エネルギーの大半を化石燃料に頼る日本にとって、水素は新たな選択肢となる。トヨタの豊田章男社長は「自動車会社1社で水素社会は実現できない。オールジャパンで足並みをそろえていただいている」と謝意を示す。軽自動車感覚で所有 ただ、それだけでFCVに軍配が上がったとみるのは早計だ。 「技術的にもコスト的にもEVが(CO2削減の)『解』になりつつあるときに、他の技術に向かって時間を浪費すべきではない」 1月下旬にスイスで開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、米エネルギー省前長官のスティーブン・チュー氏はこう指摘した。会議では参加者から「各国が強制的にEVに切り替えるアクションが必要だ」などの意見も出たが、FCVは話題にならなかったという。 温暖化防止へ政府がさまざまなEV優遇策を打つ北欧のノルウェーでは昨年1月、日産自動車のEV「リーフ」が新車販売のトップに立った。1位になるのは2度目だ。日産は「維持費が安く、日本でいえば軽自動車のような感覚で買われている」と説明する。 「FCVはポテンシャルがある。だが(量産)準備の整った技術だとは思わない」 日産のカルロス・ゴーン社長は強調する。 現在、トヨタのミライの生産台数は年700台。生産能力を増強しても、今購入した場合の納期は18年以降だ。水素ステーションの建設は数億円とされ、新興国ではインフラの整備も容易ではない。大気汚染が深刻化する中国は中央・地方政府がEVの購入を支援する。 「FCVに力を入れすぎると日本は“ガラパゴス”になるのではないか」 国内メーカーの開発担当幹部は不安を隠せずにいる。関連記事■ 発電開始、わずか1割 再生エネ「買い取り制度」認定の設備■ サラリーマンの発明は誰のものか ■ あの「名経営者」はどんな教養を身につけてきたのか?

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    特許無償開放 トヨタ自動車とテスラの違い

     年明け早々からビッグな知財ニュースです。 トヨタ自動車が、燃料電池自動車に関する約5,680件の特許を無料で開放すると発表しました。 燃料電池自動車の導入初期段階においては、普及を優先して他社と協調した取り組みが重要。 水素の供給・製造といったステーション関連の特許70件については、期間を限定することなく無償で開放し、燃料電池スタック1,970件、高圧水素タンク290件、燃料電池システム制御3,350件といった、燃料電池システム関連の特許に関しては、市場導入初期と見込まれる2020年末までを目処に特許実施権を無償とします。 特許強者であるトヨタ自動車による、非常にアグレッシブな取り組みと言えそうです。特許無料公開の目的 特許権は独占排他権であり、他社の実施を制限して、有益な発明を公開した自社のみが事業を独占することが元々の制度趣旨です。 また特許権の取得・維持には相当の費用が発生します。手続き費用だけを見ても、権利取得までに1件当たり数十万円~100万円程度、維持にも1件当たり年間数万~10数万円程度が必要になります。 そういう特許を6000件近く取得しておきながら、権利を放棄するのではなく、無償提供という選択肢を取るのは、どのような狙いがあるのでしょうか。  一言で言うと、オープンな市場を作り拡大を図りながら、それをコントロールすることが狙いでしょう。 オープンとクローズには、様々な言葉の意味が含まれます。出願した特許は当然公開されるので、情報としてはノウハウのようにクローズに(秘匿)されるものではなく、オープン(公開情報)となります。テスラ・モーターズの急速充電施設でモデルSに充電するオーナー=2月13日、大阪市北区 しかし、特許という権利を持つことによって、市場としては一部独占(クローズ)が可能となり、誰もが参入可能(オープン)な市場にならないよう制御が可能となります。 今、あえてオープンとクローズを2つの意味で使ってみました。 トヨタが狙っているのは後者の意味で、つまり特許権による参入障壁の有無で言う市場のオープンとクローズを、コントロールすることにあるでしょう。 特許権の無償開放によって、一見オープンな市場を作り出し、燃料電池自動車とステーション設備等の普及を狙います。しかしそれは、完全にオープンな市場ではなく、トヨタの特許権によってコントロール可能な市場。普及時期が過ぎた後は、権利行使により膨らんだ市場からライセンス収入を得ることも出来るし、普及段階においても個別の契約条項によって、自社に都合のよい技術仕様に誘導することもできる。 無償ということで、一見太っ腹のようですが、実は非常に考えられた戦略です。 当然そういう考えは透けて見えるので、2020年末までという期限付きの無償公開をもって、他社がどこまでそれに協調するかは微妙なところな気がします。テスラとトヨタの違い さて、特許の無償開放というと、2014年にテスラが電気自動車関連の特許権を無償開放したニュースが記憶に新しいですね。 これも、テスラによるEVの普及を狙った戦略で、トヨタ自動車もこれを参考にしたことでしょう。 しかし、テスラとトヨタには細かい違いがいくつかあります。 まずは特許の数。テスラが開放した特許権は200件程度で、トヨタの5,600件とは大きな件数規模の差があります。 これは戦略の違いというよりは、背景の違い。まだ特許弱者であるテスラは、大胆な戦略が取りやすいですが、特許強者であるトヨタ自動車が数千件の特許を開放するとなると、金銭的なインパクトは大きく違います。 次に開放の仕方。トヨタ自動車の場合は、通常の特許実施権の提供を受ける手続きと同様に、トヨタに申し込みをして具体的な実施条件を協議した上で契約書を締結することで、無償の「条件付」実施権を得ることができる。 逆に言うとこの手続きをしない者には実施権は与えられず、契約書によって何らかの条件が課されることで、トヨタのコントロールが可能となる。 一方のテスラは、テスラの技術を信義誠実に利用する者には誰であっても、特許権を行使しないことを宣言する形を取っています。なんというか、非常にざっくり。 最後に重要なのが、無償開放の期限。テスラは、特段の期限を述べていないのに対して、トヨタ自動車はステーション系を除いて普及初期段階の2020年までとしています。 前述のように、市場の普及期以降は、ライセンス収入を得ることを目的としているからです。 こうして見ると、同じ特許権の無償開放であっても根底にある考えや戦略は大きく違うような印象を受けます。 特許弱者であるテスラは、自社の権利に拘らず、真にEV市場を普及させる目的で特許を開放しているのに対して、特許強者であるトヨタは、自社の権利に拘りつつ、燃料電池自動車の普及を図りながらも、普及後にはしっかり回収することを考えている。 トヨタのほうが真っ当な戦略ですが、テスラのほうが思い切っている。この戦略の違いが、EVと燃料電池車の普及スピードの違いに影響を与えていくのか、注目します。(IPFbizより転載)関連記事■ 人材不足が「発明の母」の大きなチャンスに■ あの「名経営者」はどんな教養を身につけてきたのか?■ 太陽光買い取り「29円」でも高すぎる

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    トヨタが本気の理由 水素社会の未来は不透明

    [WEDGE REPORT]トヨタが先導 水素立国なるか日本Wedge編集部 年初、トヨタ自動車は同社が単独で保有する約5680件の燃料電池関連の特許の実施権を無償で提供すると発表した。迫る環境規制や“新参者”の台頭がトヨタに「危機感」をもたらし、燃料電池車普及に向けたトヨタの「本気」を感じた各企業が、取り組みを加速させている。 2014年11月18日、トヨタ自動車は水素を酸素と化学反応させることで電気を発して走行する燃料電池車(FCV)「MIRAI」を、12月15日から発売することを発表した。前日には本田技研工業(Honda)も、FCVのコンセプトカー「Honda FCV CONCEPT」を発表するなど、水素を次世代のエネルギーとした社会に向け、自動車メーカーが動きを活発化させている。 トヨタはなぜこのタイミングでFCVを他社に先駆けて発売するのか。裏には政府との思惑、そしてトヨタ自身が感じる危機感が透けてみえる。 トヨタは、14年5月まで、FCVの発売を最速でも「15年内」と発表していた。突如発売を14年度内に早めた理由、それは15年度予算編成のタイミングにあわせたのではないかという推測がはたらく。 通年、各省庁が財務省への概算要求案を作成するのは6月、各省庁の概算要求を受けて財務省が予算案を作成し閣議提出するのは12月だ。「MIRAI」についても、14年度内に発売することを発表したのは6月、実際の発売開始は12月である。 資源エネルギー庁燃料電池室で室長補佐を務める日原正視氏も「ちょうど各省庁が予算原案を考えているときに合わせて、トヨタが14年度内にFCVを発売するとの情報があった」と語る。 結果、経済産業省は8月に提出した15年度予算の概算要求で「水素社会実現に向けた取組強化」として401億円を要求。水素ステーション整備にかかる費用については「2014年度内の燃料電池車の市場投入を踏まえ」て38億円増の110億円を要求するなど、水素関連予算は14年度予算より総額で236億円増額の要求となった。 4月に閣議決定されたエネルギー基本計画で、「水素社会の実現に向けたロードマップの策定」と初めて記載され、6月23日には経産省が「水素・燃料電池戦略ロードマップ」、24日に政府が「日本再興戦略」改訂2014、そして25日にトヨタが14年度内のFCV発売を発表した。政府とトヨタの動きは表裏一体に見える。トヨタが感じる2つの危機感 そもそもトヨタがインフラも法整備も整わない中で、15年内にFCVを発売しようとしていたのは、迫り来る「2つの危機」を敏感に感じ取り、各方面に「トヨタの本気」を見せつけ、水素社会への取り組みを加速させたかったことがあるとみられる。 1つめの危機は、米カリフォルニア州におけるZEV(Zero Emission Vehicle)規制の強化だ。ZEVとは、排出ガスを一切出さない電気自動車(EV)や燃料電池車を意味し、現状ではプラグインハイブリッド車やハイブリッド車も含まれている。05年以降、カリフォルニア州内で一定台数以上の自動車を販売するメーカーは、その販売台数の一定比率をZEVにしなければならないと定められた。このZEV規制はニューヨーク州やマサチューセッツ州でも取り入れられており、北米市場で新車を販売する各自動車メーカーにとって無視できない規制だ。 ZEVの比率を一定以上達成できなかった自動車メーカーは、米国カリフォルニア州大気資源局(CARB)に罰金を支払うか、または他社が持つ「クレジット」を購入しなければならない。クレジットは、一定比率を超過して達成したメーカーが持つ「排出枠」を指す。 このZEV規制において18年モデル以降、これまでZEVに含めていたハイブリッド車が含まれないことになる。日産自動車の「LEAF」のように主力となるEVを持たず、クレジットを獲得できるのがプラグインハイブリッドのみとなるトヨタは、14年12月6日付日本経済新聞にもある通り、規制の強化をにらんで、規制の枠内であるFCVの発売を行う。 2つめの危機は、自動車業界における“新参者”の台頭だ。現在、米電気自動車メーカーのテスラモーターズなど、既存の自動車メーカーではない“新参者”が、長らく自動車メーカーの庭であった北米市場で存在感を放っている。すり合わせ技術の最高峰であり、鉄板1つ成形することもこだわってきた既存の自動車メーカーは、突如現れた“新参者”に驚きを隠せない。米テスラモーターズは北米で存在感を増している (REUTERS/AFLO) そうした新たな脅威にトヨタはいち早く対抗策を打ったと言える。電子・電気工学の結晶ともいえるFCV技術は、自動車産業への“新参者”の参入を阻む大きな壁になることができるからだ。家庭用燃料電池(エネファーム)の普及に向けて、資源エネルギー庁で燃料電池推進室長として指揮をとった経験のある、経済産業省の安藤晴彦通商交渉官も、テスラが製造しているEVに使用する蓄電池技術も容易に参入できるものではないことを断ったうえで「確かにテスラモーターズの脅威はあるし、EVに比べFCVの参入障壁が高いことは事実だ」と語る。 「トヨタの本気」は、他の企業の背中を押した。「鶏が先か卵が先か」─インフラが先か燃料電池車の普及が先かという、延々と続けられてきた水かけ論を終わらせたといえる。 FCVの燃料となる水素を供給する水素ステーションの整備については、JX日鉱日石エネルギー、岩谷産業などのエネルギー事業者10社が、15年度内に水素ステーションを国内に100カ所整備することを発表している。現在設置を予定している水素ステーションは42カ所(14年12月1日現在、次世代自動車振興センター補助金交付決定数)であるが、4大都市圏を中心にFCV利用者が15分~20分で“給油”できるよう整備が進んでいる。 水素自体の販売価格については14年1月14日、岩谷産業が自社商用水素ステーションでの販売価格を1100円/kg(100円/N㎥)とすると発表した。これは「(FCVと)同車格のハイブリッド車の燃料代と同等となる水素価格」だという。トヨタも岩谷産業も、コスト積み上げではない、赤字前提の価格設定で消費者に働きかけている。 しかし、仮に車とステーションが整ったとしても、簡単には成立しないがのが水素社会だ。ネックになるのは水素の調達である。この上流を手掛ける代表的企業は川崎重工業と千代田化工建設だ。水素調達=結局輸入 川崎重工業は培ってきた技術を用いて水素サプライチェーンの構築を提案している。オーストラリア南端にあるラトロブバレー地区で産出する褐炭をプラントにて水素に改質し、マイナス253℃まで冷却することで液化して貯蔵、その後、液化水素運搬船にて日本に輸送してくるというものだ。 褐炭は石炭の一種だが、これまでは水分量が多いことによる輸送効率の悪さ、自然発火性が高いことによる貯蔵・輸送の難しさから、産出国は採掘した現場で火力発電等に使用するしかなかった。川崎重工は一連のサプライチェーン構築に対し、自社のプラント技術や液化水素運搬船を売り込みたい考えである。 しかし、化石燃料である褐炭を水素に改質する際には、結局CO2が発生してしまう。発生するCO2について川崎重工の西村元彦水素プロジェクト部長は「CCS(二酸化炭素回収・貯留技術)にてCO2フリーにする」と話す。しかしCCSは、CO2の注入技術は確立しているものの、CO2が漏れ出していないかを継続して監視する方法や主体、費用等の課題も残っている。 千代田化工建設は独自技術「SPERA水素」で名乗りを上げる。「SPERA水素」の特徴は、水素をトルエンに固定し、メチルシクロヘキサンという液体に変えて常温常圧で水素を輸送できることだ。つまり、現状のガソリン等に用いているエネルギーインフラをそのまま活用できるという強みがある。 従前の技術では輸送した後、固定した水素を再び分離させるのが難しかったのだが、千代田化工建設は分離に有効な触媒の開発に成功した。分離には約400℃の熱を用いる必要があることが弱みであるが、追加のエネルギーを使用しないためにも、元々余剰エネルギーを持つ発電所とセットにした使用が見込まれる。 水素は、石油や石炭のように自然界にすぐに使える形で存在しない。その調達は、結局、資源国の化石燃料に頼らざるを得ないのだ。 電機業界が沈んだ今、日本の製造業の未来は、自動車産業にかかっている。部品点数が大幅に減るEVでは、日本が強みとするすり合わせ型ものづくりは維持できない。FCVへの期待感は高まるが、世界はついてくるだろうか。 世界の主流は化石燃料であり、消費者にとって「水素は化石燃料より安い」などの明確なメリットがなければ普及は難しい。しかし現状のFCVや水素価格には、化石燃料を中心とした社会に優る明確なメリットは見つけられない。エネルギーを使う消費者や企業が、半ば強制的に水素を使用する状況にならなければ普及は難しいといえる。 前出の日原氏も「CO2排出量が規制されるなど、強制力が働かない限りは、FCVや水素インフラの普及について、現状ではなんとも言えない」と苦しい表情を覗かせる。 水素に取り組む企業の関係者は、大義は「エネルギー安全保障」と口を揃える。電気やガソリンに依存する二次エネルギー構造や、中東依存度の高い石油資源からの多様化を図るというものだが、既にある送配電網やガソリン供給網に代わる、水素供給ネットワークを構築するには巨額の資金が要る。製造、運搬、貯蔵、利活用すべての局面で、コストを下げる技術革新が必要だ。道のりは長い。関連記事■ IT企業は初任給が高い 楽天の30万円は就職人気200社中最高■ 円安はアベノミクスに不可避■ 発電開始、わずか1割 再生エネ「買い取り制度」認定の設備   

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    あなたの会社は生き残れますか

    日本市場だけを相手にしていては世界には勝てない。戦後、日本経済を牽引してきた半導体や家電産業はキャッチアップされている。では日本企業はこれから何をめざせばよいのか。また働く人たちはどのような能力を身に付ければよいのか。課題先進国・日本がグローバル化した世界で生き残るための方策を考えた。

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    DeNA創業者が語る 21世紀に身に付ける「4つの力」

    南場智子(DeNA・取締役ファウンダー) ゲームサイトであるMobage(モバゲー)の運営会社として、あるいはプロ野球球団のオーナー会社として、はたまた東大生の就職先としても人気のある株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)。同社は多角経営を積極的に推進しているが、新たに教育分野への進出も視野に入れている。 昨年10月から今年の2月にかけて、佐賀県武雄市ならびに東洋大学と協定を結び、同市内の小学校1年生を対象に、プログラミング教育の実証研究を行なった。市が配布しているタブレット(多機能携帯端末)で動く専用ソフトを開発、DeNAのCTO(最高技術責任者)が講師となって、児童たちにプログラミングの仕組みや方法を教え、デジタルでのものづくりを体験させたのである。なぜ小学生にプログラミング教育の必要があるのか。教育分野のプロジェクトを推し進めている同社の創業者である南場智子氏に真意を聞いた。聞き手:オバタカズユキ(フリーライター)発想ひとつでシェアを伸ばす海外のITベンチャー ――南場さんは、日本の産業は危機的な状況にあり、根本的な改革が必要だと主張されています。とくに、製造業をはじめとした日本の伝統的な産業が、海外のITベンチャーに次々と出し抜かれている現実はシビアに受け止めるべきだ、と。それは具体的にどんな事象を指しているのでしょうか。 南場 よく例に出すのは、アメリカのGoPro(ゴープロ)という「アクションカメラ」が、日本のメーカーが圧倒的に強かったビデオカメラの市場を、あっという間に奪い取っていったことです。スノーボーダーやサーファーが、GoProを自分の体に装着して、撮った動画をワンタッチでYouTubeに流す。そのためだけの機能に特化したカメラが、ものすごい勢いで市場を席巻しています。 カーナビも同様です。少し前までは、日本のメーカーが世界市場を分け合うような強みを見せていました。ところがいま、スマートフォンとの連動を前提とした海外製品あるいはスマートフォンそのものに、どんどんシェアを奪われている。日本製品は性能こそ良いのですが、ここでもいわゆるガラパゴス化を起こしています。 ――家電以外の産業でも事例はありますか。 南場 スマートフォン繋がりでは、タクシーの即時手配サービスのUBER(ウーバー)。2009年にサンフランシスコで、トラヴィス・カラニック氏が創業したスタートアップです。すでに世界42カ国以上でサービスを実施しており、昨年春からは日本でも本格運用を開始し、東京で働いている方にはお馴染みの存在です。日本でも大手タクシー会社が迎車サービスのスマホアプリを開発していますが、UBERのような業界外のベンチャー企業が手掛けることはありませんでした。 クルマといえば、テレコミュニケーション(通信)とインフォマティクス(情報工学)を掛け合わせた名称の「テレマティクス保険」という任意保険も注目を集めています。自動車にセンサーを付け、ほぼリアルタイムでどんな運転をしているのか情報を取る。そして、安全な運転をする人の保険料を安くするという新しい自動車保険です。日本の損保会社が相次いで導入を決めましたが、この技術を生み出し、ビジネスに繋いだのはイギリスやアメリカの若い保険会社でした。 伝統的な産業でいうと、ホテル業でも2008年創業のAirbnb(エアビーアンドビー)という新興企業が急成長しています。アパートで1泊できればいい人から、ヴィラ(別荘のような宿泊施設)で1カ月滞在したい人まで、ありとあらゆる旅人のオーダーをインターネット上でかなえるサービスです。旅行者(ゲスト)の要望と空き部屋などをもつ世界中の宿泊場所提供者(ホスト)を繋ぐハウスシェアリングのビジネスですが、これが世界の旅人たちの心を鷲づかみにしています。 ――新味のある事例がたくさん挙がりますね。 南場 それだけ世界が動いているわけです。従来の産業のあり方をガラリと変える製品やサービスが、IT(情報技術)の力を活用し、各ジャンルで誕生している。 しかし、やっているビジネス自体はそこまで難しいものではありません。GoProのアクションカメラにしても、撮影機としての基礎的な技術スペックは日本のメーカーのビデオカメラのほうがはるかに勝っています。ただ、ビデオで何かを撮影するというニーズ自体、スマートフォンに内蔵された機能でだいぶ満たされるようになってきました。そこでGoProはビデオカメラの用途をぎゅっと絞り、YouTubeに動画を簡単にアップロードするためのアクションカメラを作った。すると爆発的にヒットしたのです。 これらは、ちょっとした発想の転換から生まれたビジネスなのです。タクシー手配のUBERやテレマティクス保険も同様です。Airbnbのハウスシェアリングにしても、技術的に高度な何かをしているわけではない。発想ひとつの勝負で急速にシェアを伸ばしています。橋を架けていたら間に合わない橋を架けていたら間に合わない ――そうした新しい発想が、なぜ日本からは生まれないのでしょう。世界では先鋭的な企業、いわゆる「ニューエコノミー」が続々誕生しているのに、どうして日本では製造業を中心とした「オールドエコノミー」がガラパゴス化するばかりなのか。 南場 問題はそこなのです。このような話をすると、日本の伝統的な企業の経営者の方々は、「僕たちと新興のIT企業のあいだには大きな川が流れているから、南場さんたちがそこに橋を架けなきゃいけないんだよ」とおっしゃるのですが、私からは「橋なんか架けていたら間に合いませんよ!」と返答するしかない。 ――何が間に合わないのでしょうか。 南場 製品やサービスの開発から、マーケティングの広め方まですべて間に合いません。シリコンバレーの競争相手は社長から受付担当者まで、社員全員が当たり前にIT素養を身に付けています。なのに、彼らと対等にビジネスをすべきわれわれの側が、「ITはわからないから、得意な人間に橋渡しをしてもらうまで待つ」という消極的な姿勢では、勝負になるはずがありません。 だから私は、これからはあらゆる産業でIT素養を有する人材が必要不可欠だといいたいのです。 ――南場さんのおっしゃるIT素養は、どんなものだと考えればいいのですか。 南場 一言でIT素養といっても、エクセルやパワーポイントを使いこなすところから、本格的なプログラミングまで大きなレベルの幅があります。可能なら、社員全員がプログラミングをできるところまでいけるといいのですが、そのレベルの素養はそう容易く身に付けられません。でも、若い人には、ただインターネット上のサービスを利用するだけではなく、インターネットを使って何かサービスを生み出せるぐらいの素養を求めたいところです。あるいは、自分の手でアプリを作ることはできなくても、アプリが作られる過程や仕組みはわかっていてほしい。それだけでも、発想はずいぶん広がるからです。またIT素養のある人材が集まれば、組織内のコミュニケーションがとてもスムーズになります。日本人に求められる「4つの力」 ――そうした人材養成のために、学校でのプログラミング教育が必要だと言われ始めています。日本でも2012年度からの新学習指導要領で、中学校の「技術・家庭」科目内の「プログラムによる計測・制御」を必修化しました。ただ、世界のなかでは遅れているとの指摘もあります。 南場 ここ2~3年、プログラミング教育の必要性について議論が盛り上がっていますけれど、アメリカやイギリスはもちろんのこと、北欧、イスラエル、シンガポールあたりはずっと先に進んでいます。日本はまだまだこれからでしょう。それと、教育改革の必要性については、ITだけの話ではありません。日本の学校教育は、戦後の復興で世界の工場となるべく「間違えない達人」を大量に育ててきました。おかげで加工貿易立国として日本は成長を遂げたのですが、いまはもうそんな時代ではない。加工貿易は中国のほうが圧倒的に強いわけですし、先進国としての日本に求められているのは、もっと別の力ではないでしょうか。 ――日本のどんな力が求められているのですか。 南場 大きく分けて4つの力があると思います。一つは、日本の素晴らしさを世界に伝える力です。自分の情熱、パッションを伝えて他者に共感してもらう。日本人はお世辞にもうまいとはいえませんから、意識的に身に付けていくべき力です。 もう一つは、クリエイティブな課題解決の能力。エネルギー、自然災害、人口構造の歪み、社会保障など、日本は他国に先駆けていくつもの大きな課題に直面しています。それらを解決していくには、高いレベルのクリエイティビティが不可欠です。 あとは、海外のITベンチャーがさまざまな産業でイノベーションを生み出しているような、新しい付加価値を創っていく能力。発想、アイデアを生む力ですね。 そして、そうした三つの力を引き出すためには、文化的な背景の違う人びとと共働(コラボレーション)する力が必要です。日本人だけで「閉じた」チームができることには、もう限界が来ています。これからは世界中のいろいろな仲間の力を借りて、協力してさまざまな課題に取り組んでいかなければならない。日本人が苦手としている働き方ではありますが、そこはもう自ら世界に対して切り拓いていくしかない。 ――一つ目のパッションを伝える力というのは、具体的にはどんなことなのでしょう。 南場 それに関しては面白いエピソードがあります。2009~13年に米国駐日大使を務められたジョン・ルース氏の奥さま、スージーさんのお話なのですが、彼女が「智子、私、びっくりしたのよ」と目を丸くして私にいいました。何があったのか聞いてみると、スージーさんがある日本人の家に行くと、小学3年生ぐらいの女の子がとても小さいフライパンやテーブルなどのミニチュア玩具を何千個も集めていた、というわけです。 彼女は大いに感心して、「このコレクションのことを、学校でみんなに発表した?」と尋ねたそうです。女の子は「いいえ、誰にも話していません」。スージーさんは、「はぁ?」と首を傾げたそうです。女の子のお母さんが慌てて「違うのです。これは学校の宿題ではなくて、娘の個人的な趣味なんです」と説明しても、スージーさんは「いや、だから、これを学校でみんなに見せた?」と問い質す。お母さんは、「ですから、これは学校とは関係ないんです」というしかなくて、もう話がまったく噛み合わない(笑)。 そのとき彼女が何に驚いたのかというと、要するに、「女の子があんなに素晴らしいミニチュアコレクションをもっているのに、どうして学校でそのことをプレゼンテーションしていないんだ!」というコンプレイン(不満)だったんですね。「これはもうサプライズ・オブ・ザ・マンス(今月いちばんの驚き)」とスージーさんが本気で驚いているのを見て、今度は私がその彼女のリアクションにびっくりしてしまいました。なぜかって、私は日本で生まれて育ちましたから、彼女の驚きが理解できないのです。 ――アメリカでは子供が自分の趣味を学校でプレゼンして当然、ということですか。 南場 北米の学校を中心に行なわれている教育科目の一つで、「ショー・アンド・テル」と呼ばれる授業があります。子供たちが先生から「あなたの最も大事なものを家から持ってきなさい」という課題が出され、各自が持参した思い出の写真やお気に入りの玩具などをクラスメイトに見せながら、どんなふうに大事なのかを語ってみせる。つまり、自分の感動をクラスのみんなと共有する訓練ですね。ほかにも、自分が最も好きな人の絵を描き、その人がなぜ好きなのかをクラスのみんなに伝える、といった授業を毎週のように行なっているのです。 ――日本の学校では、そういったいわゆるプレゼンテーション力を涵養するような授業に多くの時間を割きません。せいぜい、会社に入って受講する研修で行なうぐらいでしょう。 南場 この話を知ったとき、私はアメリカで働いている弊社の従業員200人に思いを巡らせました。先ほど申し上げたような教育を小学生のうちから受けてきたトップを頂くライバル他社と競争するのは、この上なく大変なことだ、と。パッションを伝える訓練を積んでいればいるほど、共感のパワーは高まります。たとえば誰かが、「こんな夢を達成していこうよ」「この問題はこう解決しよう」と言い出したとします。そのパッションをみんなで一つに纏めていく力が、われわれ日本人よりも恐ろしいほど上回っていると思わざるをえません。受験勉強で社会的課題の正解は出せない受験勉強で社会的課題の正解は出せない ――全社員が一丸となって目標達成に向かっていく、というのは、伝統的な日本の会社が得意としている部分ではないでしょうか。 南場 それはそうですが、日本の場合は、リーダーシップを発揮した人のパッションを共有するのではなく、「会社」といった実態が不明瞭なものに対する忠誠心で一つにまとまる傾向があります。でも、その構造は終身雇用が保障されていないと維持できません。そこが崩れ始め、一つの組織に固定的に従属して一生を終えることが難しくなっているなかでは、全社員の心が纏まってパフォーマンスを発揮することもなかなか叶わなくなってきているのではないでしょうか。 ――だから、日本でもパッションを伝える力を付ける教育が必要だ、と。DeNA創業者の南場智子氏 南場 それが日本に求められている力の一つ目ですね。そして、先ほど申し上げた二つ目のクリエイティブな課題解決の能力。これは、正解が一つではない問題に対して取り組む力のことです。受験勉強のなかで身に付くのは、答えが一つである問題を解く力ですが、現在のわれわれの前に立ちはだかる多くの社会的課題は、そんな簡単に正解が出るようなものではありません。何が正しいかはわからないけれども、課題に取り組み、そこから新しい価値を創造していく能力こそが求められている。 三つ目の新しい付加価値を創っていく能力も同じことです。それはクリエイティビティそのものです。 四つ目の共働力も、いまの教育のなかではほとんど養われていません。一部の大学ではグローバル教育が重視されるようになってきたものの、感受性の豊かな子供時代に異質な他者と共に働くことについて学びを深めることは難しいでしょう。プログラミング教育に秘められた可能性 ――四つの力を身に付けるには、そうとうな教育改革が必要そうです。現実的に可能でしょうか。 南場 そこで私はプログラミング教育が、四つの力の問題をある程度解決する「オヘソ」になるのではないかと思っています。 その意味で、小学校1年生に授業でプログラミングを教えた佐賀県武雄市での教育実験。すごく手応えが良かったですよ。 ――先日、学習成果の発表会があったそうですね。 南場 教えた40人全員の生徒が、当社の用意したソフトでアプリを作ることができました。もっとも多かったのはゲームでしたが、なかには動く絵本のようなストーリーのある作品を作った子もいました。 一つ例を挙げると、作り始めたのがクリスマスの時期だったのですが、「サンタさんが子供たちの家にプレゼントを届けるプログラムを作りたい」と言い出した子がいました。その子は、実際に自分で描いたサンタさんの絵が家の絵にぶつかるとプレゼントを置いて、そのプレゼントが点滅する、という作品を仕上げました。ステージに立って発表してもらいましたが、「すごーい」と大人たちから歓声が上がりましたよ。 余談ですが、発表会のあと、プレゼンテーションも含めて私たちが素晴らしいと感じた作品を表彰しました。すると選ばれなかった生徒が泣き出したそうです。よほど自分の作品に愛着があったのでしょう。普段、感情を発露する授業や経験は限られますから、先生側からすれば思わぬ収穫だったようです。 ――小学校1年生でも、クリエイティブなプログラミングができるものなのですね。 南場 自分の心の中にある“作ってみたい!”というパッションをプログラミングで作品として表現する、という課題に向かって、その子ならではの創造力を発揮させた結果です。そして、その作品はみんなの共感と感動を呼ぶことに成功しました。 授業を受けた子供たちは、もう日本人に必要な力のうち三つを発揮できたわけです。次はオンラインで海外の小学生たちと繋がり、チームをつくり、みんなで一緒に作品づくりをしたら共働力も養えますよね。プログラミング教育に秘められた可能性の大きさを感じませんか。 ――なるほど。教育改革だと身構えなくても、プログラミング教育の導入で、おのずと子供たちは四つの力を身に付けていける。そうなると、大人たちもプログラミングを覚えて自分を変えていかないと、時代から取り残されそうですね。 南場 いやいや、好きな人はチャレンジすればいいのですが、IT素養に乏しい大人が無理やりプログラミングを覚える必要はありません。苦手なことを必死にやるよりも得意なことで世の中に貢献しましょうよ。たとえば、子供たちや若い人たちがプログラミング教育を当たり前に受けられる環境づくりに賛同するなど、いますぐできることに意識を向けていただけたらいいな、と期待しています。なんば・ともこ DeNA取締役ファウンダー。新潟県生まれ。1986年、津田塾大学卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。90年、ハーバード・ビジネス・スクールにてMBAを取得し、1996年、マッキンゼーでパートナー(役員)に就任。1999年に同社を退社して株式会社ディー・エヌ・エーを設立、代表取締役社長に就任。2011年6月より現職。今年1月に 横浜DeNAベイスターズ取締役オーナーに就任する。関連記事■ 孫正義・25文字の成功哲学「孫の二乗の法則」とは■ 現場力が活きる「ライト・フットプリント(LFP)経営」とは■ 灘校・橋本武先生が語る「横道」のすすめ

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    会社を改革したいのならまず上司と部下を入れ替えよ

    坂本幸雄 エルピーダメモリ元社長 インタビュー(聞き手:Wedge編集部)大手3社の寄せ集め部隊を牽引した坂本幸雄氏は外資で育った。日本と米国の人材育成の違いとは。坂本幸雄氏 (MASATAKA NAMAZU) 日本の会社の人たちが経営改革をしたい、もっと会社をスリムにしたい、そのためにはどうしたらいいのかと、私のところに聞きに来られます。私は、端的にたった一つのことをお尋ねします。「上司と部下を入れ替えられますか?」と。 上司と部下が入れ替わったら、人間はすごく緊張します。このたった一つのことができないで、どうして経営改革ができるのでしょうか。 私は、米半導体大手テキサス・インスツルメント(TI)の日本法人に入社し、28年間勤めました。私の歴史は、常に上司が部下になることでした。辞めるときの自分の部下は、全員、自分の元上司です。 初めの仕事は倉庫番です。24歳の時、課長に抜擢されました。29歳で部長になって、33歳の時、工場ラインの長になり、39歳で事業部長、40歳で米国に呼ばれ、製造と開発両方を束ねることとなり7000人の部下を抱えました。 米国に残ればさらなるポジションがあると言われましたが、このままでは日本に残した妻に離婚されると考え、41歳で帰国しました。子どもは4人いました。米国は行くときも帰るときも一人でした。 米国の企業は、こんなスピードで新しい仕事を与え、いろいろな組織を経験させるなかで、次の経営者を選び抜いていきます。おかげで私は技術とマーケティング、両方のことがわかるようになりました。 次のトップをつくるのは教育では無理だと思います。いろいろ経験させるなかで結果を出す人をトップに据えるということが大事。 海外では重要案件はCEO同士が1対1で話して決断します。日本の企業だけがぞろぞろ連れてくる。 日本企業には「経営企画部」がありますね。あれは英語にはないんです。そこでやるようなことはCEO自身が1人でできないと。全部の組織を把握しなくてもCEOができるなら、それは下の人の言いなりになっているということ。 私は日体大で野球ばかりしていて、行くところがなくて外資系に入社しました。英語も技術もファイナンスもわからないから倉庫番。 あるとき、凄まじい不況がやってきてコスト削減が必要だとなり、いろんなアイデアを出しあうことになりました。当時半導体はアルミの容器に入れて出荷していましたが、アルミは高かった。だからそれを回収するシステムを提案したんです。40人くらいを束ねている米国人の企画部長がきちんと見ていて、課長に抜擢してくれた。日本企業でもこういうことはできるはずです。さかもと・ゆきお 1947年生まれ。日体大卒業後、日本テキサス・インスツルメンツ(TI)入社。93年副社長。神戸製鋼所、日本ファウンドリー社長を経て、02年エルピーダメモリ社長に就任。NEC、日立、三菱電機3社の統合会社を力強く率いるが、円高などの逆風で12年、会社更生法の適用を申請。現在、ウィンコンサルタント代表を務める。関連記事■ あの「名経営者」はどんな教養を身につけてきたのか?■ 「ニッポンの今」を象徴する大塚家具問題■ 松下幸之助が重視していた「経営力」とは

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    「グローバル人材」育成のためには教員採用を世界標準に

    永久寿夫(政策シンクタンクPHP総研 研究主幹)《政策シンクタンク「PHP総研」研究員コラムより》  「KPI(重要業績評価指標)を設定し、PDCA をきっちり回す」。民間企業においても、口にするのは容易だが、いざ実行となると難しい。それを知りながら、政府や自治体の事業にも導入すべきと、ことあるごとに唱えてきたのは、税金はより効率的・効果的に使われるべきだし、さもなければ財政がもたないという危機感からである。その観点からすると、安倍政権が、「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」で政策群ごとにKPIを設定し、それをフォローしていることは、画期的と評価すべきである。これはまた、マニフェスト選挙や「事業仕分け・レビュー」などに対する社会的評価の反映でもある。  だが、KPIは、ともすると本来目的とは異なった方向に事業を導く恐れがある。たとえば、「グローバル化等に対応する人材力(グローバル人材)の強化」のため「2020年までに日本人留学生を6万人(2010年)から12万人へ倍増」という目標が設置され、KPIとして日本人留学生の「数」が示されている。たしかに留学経験者はグローバル化に適応しやすいかもしれないが、旅行のような短期留学も学位取得を志した長期留学も同じ「1」にカウントされる。効率よくKPIを上げるなら短期留学を増やせばよいが、これで「グローバル人材」が増えると言えるだろうか。  KPIを1人あたりの留学期間にすれば、この問題は解決されるが、それを伸ばす事業が「グローバル人材」を育てるもっとも効率的・効果的な方法とも限らない。一昨年秋、この事業のレビューに評価者として参加した某商社の人事関係者は、一定の語学力は必要としたうえで、「グローバルな環境の中で、臆せず自らの考えを論理的に話して、自ら考え、自ら行動する、いわゆる最後までやり抜くというチャレンジ精神の旺盛な人物。まさにこういう人材を我われは育てているし、大学にも求めていきたい」と述べている。グローバルにビジネスを展開する商社が求める人材は、まさにグローバル人材であろう。そうした人材を育てる方法は留学以外にもあるはずだ。  文科省はさまざまな取り組みを行っている。なかでも注目は「スーパーグローバル大学創成支援」だ。「我が国の高等教育の国際競争力を強化することを目的」とし、そのための構想を国内の大学を対象に募り、審査を経て採択されたものに対して、定額の補助をするというものだ。平成26年度の採択校をみると、有名校がずらりと並んでいる。そしてこの事業の数値目標として示されたのが、今後10年間で世界大学ランキング100以内に我が国の大学が10校以上入るということである。  世界トップ100にランクインされる大学は、教授やスタッフ、カリキュラムといったソフト面、設備や校舎も含めたハード面ともに充実している。そこでは、世界中から研究者や学生が集い、時には協力し合い、時には競い合い、お互いを磨き合っている。それが競争力の源泉であり、そのような環境で学んだ人間はおのずと「グローバル人材」に育つ可能性がある。現在、100以内にある日本の大学は東大(23位)、京大(52位)の2校のみ(Times Higher Education World University Rankings 2013-2014)。偏差値志向の延長線にも思えるが、世界ランキングをKPIにしたこと自体に異論はない。  採択各校の構想は、それぞれに手が込んでいる。多様な国際交流プログラムが用意され、成果目標も置かれている。だが、肝心なのは、教える側の採用を世界標準にすることではないか。世界の有力大学で学位をとった人間は、よりよい条件を求め、競い合いながら世界中を回っている。大学側もよりよい人材を獲得するために世界的規模で競い合っている。それが大学の競争力と学生の質を高める理由なのだが、日本の大学はその国際市場の外にあるといってよい。外国人教員や英語での授業を増やせというのではない。結果としてそうなるとしても、なすべきは、国籍を問わず、教員採用のマーケットをオープンにし、国内と国外の壁をなくすことである。  テレビで人気を博したサンデル教授の「ハーバード白熱教室」のような授業の進め方は、もちろん内容の良否はあるが、珍しくはない、いわば世界標準である。学生からみれば、それを日本にいながら享受できるのだから、サンデル教授じゃなきゃダメという人以外は、留学する必要はなくなる。こうしたことをある教育関係者にお話ししたところ、それはもっともだが、どの大学でも教授会がいい顔をしないとのこと。たしかに、国際競争力に乏しい教授たちにとって、「世界標準」の新規参入は脅威であろう。なるほど「スーパーグローバル大学創成支援」は、彼らの「既得権益」を守りながら、ゆっくりとソフトランディングをはかる方法だったのか、とうがった見方もできてしまう。  昨年の学校教育法の改正において、教授会は学長の決定に意見を述べるにとどまる組織となった。教授会の「拒否権」がなくなり、学長の権限が強化されたということだ。これによって大学改革が進むという期待が高まる一方、学長の判断一つで大学経営が大きく振れるため、リスクが高まるという批判もある。だが、高校からすぐに海外留学を目指す若者もちらほら見受けられるなか、日本の大学が思い切ったリスクをとらなければ、「グローバル人材」の育成はおぼつかず、他国任せにもなりかねない。資金や雇用の問題を考慮すると、一朝一夕にできることではないのも分かるが、悠長に構えている場合でもない。リスクをとる勇気ある大学が出現し、政府がそれを応援することを期待する。ながひさ・としお 1982年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。同年PHP研究所入社。88年、スタンフォード大学にてロシア・東欧学修士号(A.M.)取得。94年、カリフォルニア大学(UCLA)にて政治学博士号(Ph.D.)取得。国家経営研究部長などを経て、現在に至る。杉並区行政評価検討委員会委員、神奈川県「21世紀の県政を考える懇談会」委員、内閣府国際青年育成事業ハンガリー派遣団団長、東京外国語大学非常勤講師、熱海市行財政改革会議委員、内閣府行政刷新会議・事業仕分け分科会評価者、国家戦略会議フロンティア分科会事務局長などを歴任。現在、関西大学客員教授を務める。関連記事■ 地方創生と大学の役割~「L型大学」に舵を切れ■ 真の「グローバル化」とは何か?―「世界で戦える人材」を育てるために■ <使える英語>大人気旅館・澤の屋の「単語英語」のおもてなし

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    「留職」というグローカル人材育成

    川村雅彦(ニッセイ基礎研究所 保険研究部 上席研究員)新興国NPOでの社会的課題解決の体験から何を学ぶか? 留学ならぬ「留職」が日本の大企業で静かな話題となっているようだ。留職とは、簡単に言えば、企業の社員が、グローバルセンスを養うために、会社を一旦離れて新興国のNPOなどで一定期間働くことであり、本業で培ったスキルを活かして現地の社会的課題の解決に取り組むものである。  この留職プログラムを日本で初めて立ち上げたのが、2011年設立のNPO法人「クロスフィールズ」である。彼らのミッションは、社会の未来と組織の未来を切り拓くリーダーを創ることである。そのために、企業・行政・NPOの枠を超えて、新興国において社会的課題の解決に挑戦する「原体験」の機会を提供する。2012年度の採用企業は1社だけ(電機P社)であったが、現在ではその数も増え、今年2月時点での派遣実績はアジア8カ国、57名になったという。取組分野も多様である。 一見、企業の社会貢献活動のようにもみえるが、派遣経験者が異口同音に語るのは、日本とは異なる文化や価値観の中で様々な困難を克服することで、自らがリーダーシップを学びつつ成長できることである。また、現地の人々の考え方や必要とするものを肌感覚で理解できることの効果も指摘する。これは、“上から目線”ではなく、現地と同じ目線で考えることを意味し、“日本の常識”を相対化することでもある。日本では当たり前のことが、そのまま通じることは少ないからである。 派遣元の企業からみれば、社員を新興国のNPOに派遣することは、グローバル人材の育成や新興市場の調査・開拓につながる。国内市場の成熟や縮小を背景に、日本企業のアジア新興市場への期待が膨らむ一方で、それに対応できる人材育成が追い着いていないのが実情ではないだろうか。しかも、“育てる現場”がなかなか見つからない。とは言え、当面の国内市場を手薄にすることもできず、限られた人材をどう配置するかは経営課題となってきた。そこに留職プログラムの存在意義がある。 「彼を知り己を知れば、百戦して殆うからず」とは、孫子の言葉である。グローバル人材に求められる資質や能力はどのようなものであろうか。語学力や自社商品の理解は当然ながら、交渉力や現地人脈も必要条件であるが、それだけで十分とは言えない。多様な価値観(ダイバーシティ)を受容し、当地ローカルだけでなくグローバルな社会的課題(ニーズ)に対する感受性が不可欠である。 留職によって培われたグローバルセンスは、翻って「課題先進国」とも言われる日本にも適用できる。その意味で、イノベーティブなグローカル人材の育成が期待される。(ニッセイ基礎研究所 レポート『研究員の眼』2015年3月31日 より転載)関連記事■ 内も外もよく知る「二本」人たれ  ■ なぜ「高度成長」の考察が重要なのか■ あの「名経営者」はどんな教養を身につけてきたのか?

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    大塚家具は誰のものか

    父娘の対立が表面化してから連日メディアを賑わせた大塚家具の内紛劇は、娘の大塚久美子社長の続投が株主総会で決まり、お家騒動はひとまず決着をみた。企業統治の在り方にまで議論が広がった骨肉バトル。久美子社長にお尋ねします。結局、大塚家具は誰のものなんですか?

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    大塚家具は問い方が間違っている

    純丘曜彰(大阪芸術大学芸術学部教授)(ビジネスメディア『INSIGHT NOW!』より転載) 大塚家具の娘社長のやり方は、現場経験の乏しい新人コンサルがハマる間違いの典型。新人コンサルは、どちらが正しいか、を問う。だが、論理は、無時間的で、そこには、勝ち負けしかない。彼女が間違った問いを仕掛けた時点で、父会長一派を窮地に追い込み、会社をこのような断絶の事態に至らしめることは予測に難くなかった。 どちらの戦術が正しいか、を問うなら、娘社長が正しいに決まっている。時代は変わる。デパートがどこも縮小撤退策しか立てられない現在になお、デパートを追い、それに並ぼうとする父会長の戦術は、もはや時代錯誤としか言いようがない。まして、父は、娘が一橋の塩野谷ゼミ出身である、ということが経済界で持つ意味も理解できていない。この状況でプロキシファイトもないものだろう。 だが、娘社長も、いかにもシロウトくさい。問いの立て方を完全に間違えた。自分の戦術が正しいことは、社長になる以前の大前提。彼女が社長となって問うべきだったのは、どうやって会社を正しい戦術に連続的に導くか、だ。机上では、方針転換も、組織改革も、一瞬でできる。だが、現実の組織は、従業員も、取引元も、顧客も、みな人間だ。会社を変える、ということは、彼らの生き方を、それどころか彼らの家族の人生までも変えてしまう、ということだ。誰だって、自分の人生を他人に勝手に振り回されたりしたくはない。だから、変革の美名の下に、傲慢な強権を発動すれば、求心力は急激に低下してしまう。それをやって乗り切れるだけの人望も確立していない、それどころか、危難にいっしょに飛び込んでもらえるほどの信頼が必要だ、ということすらわかっていなかったのではないか。 塩ひとつまみを煮出すのに、七つの海を沸騰させるな。これは、経営の常識。イトーヨーカドーが全店舗をいきなり24時間営業のセブンイレブンに改装したら、コンビニというものは絶対に成功しなかっただろう。同じ世襲でも、トヨタが織機から自動車へ、カネボウが紡績から化粧品へシフトするとき、豊田喜一郎(現場現物主義)や武藤絲治(GK計画)は、創業者の親以上にこまめに内外に出向き、その途中のステップの連続的展開にこそ気を配った。過去の成功体験が強固であればあるほど、現場の顧客、従業員、取引元、株主、等々、これらの周到な根回し無しには、小さな実験的子会社さえ作ることはできない。 プロのコンサルの場合、何が正しいか、以前に、社内外の利害関係者「forces at work」の洗い出しから始める。これを先にやらないと、誰が本当のクライアントなのか、誰のための解決策を出すべきなのか、正しさそのものが定義できないからだ。とりあえずの理想は、全方一両得のWinWin、いわゆるパレート最適化。だが、そうもいかない、どうしてもパラダイムのブレイクスルーが必要であるとなれば、どの手順で、どこを抑え、どうやって向こう岸までたどり着くか、数年がかりの工程表を作る。これが「戦略」。 たとえいま父会長が勝ったとしても、いずれは、かならず死去する。相続分割では娘派にも株式が移動する。だから、長期的には会長=長男派には勝ち目が無い。だが、娘社長にしても、今回のことは、あきらかな経営の失策であり、たとえ勝ったとしても、やはり、接客技術を中心として地位を築いてきた中堅以上の従業員や、特権気取りの長年の会員制の優良大口顧客との信頼関係は失われ、経営的なダメージは計り知れない。金融機関などとしては、創業者一族には持ち株会社を作らせて、父娘双方とも、経営の一線からは退かせ、それぞれの子飼いで分社化し、そのそれぞれに外部から招いた第三者の経営陣を据える、ということになるだろう。 同じような親子対立は、赤福をはじめとして、戦後企業のあちこちで起こってきている。親の会社は相続できても、親の人望まで相続できるわけではない。いかに正論でも、自分自身に人望がなければ、人は変革に付いて来てはくれない。くわえて、まずいことに、戦後の親は長生きで、変化の対応は急務だ。だが、連続か、変革か、を争うのは、問い方が間違っている。変革は必要だ。しかし、連続も絶対だ。すみおか・てるあき 大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。著書に『夢見る幽霊:オバカオバケたちのドタバタ本格密室ミステリ』『悪魔は涙を流さない:カトリックマフィアvsフリーメイソン 洗礼者聖ヨハネの知恵とナポレオンの財宝を組み込んだパーマネントトラェラーファンド「英雄」運用報告書』などがある。関連記事■ 創業者の不信感 なぜ後継者に満足できないのか■ IT企業は初任給が高い 楽天の30万円は就職人気200社中最高■ ユニクロだけではない「恫喝訴訟」

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    大塚家具の株主総会が限りなく「大きな家族会議」だった

    に事業の再構築と業績の浮上であるだけでなく、株主構造の一新も含めた再発防止策の検討であり、世襲による企業経営との決別に他なりません。大事な経営権の帰趨を巡る株主総会の場において、創業者の妻であり現社長の母である人物がどういう経緯か一家の事情や娘の生い立ちを株主の前で語るのはニュースとしては面白いのでしょうが企業としては話にならないレベルで場違いであることは言うまでもありません。一見、新旧の価値観のぶつかり合いであるのはその通りではあるでしょうが、パブリックに株主を集めている会社が家族会議も同然の経営主導権争いを披露することが望ましい姿であるのか考えるべきでしょうし、久美子女史がどのような正論を並べたところで彼女が社長の地位にいる理由はひとえに創業者の娘であり、それなりの割合を持つ株主をバックにしているからです。 それが果たして健全な経営を取り戻す契機になるかは、もちろん社長の座を守ることになった久美子女史の手腕、能力の問題となるわけですが、大塚家具の過去の決算をつぶさに読み解いていくと、久美子女史に支持が集まった理由は勝久さんの過去の経営の対応の鈍さや商いを行ううえでの感性の鈍りが必要な業態転換を滞らせ結果として業績を落としたことへの反動になっています。つまり、勝久さんが経営の能力を喪失したように市場からは見えることで、相対的に久美子女史が優れているように感じられるという状況であることは容易に理解できます。 そして、これは各種経済メディアでも解説されていることですが、おそらくは大塚家具全体としては激化した家具業界の攻防の中で不必要に大きい販売管理費用や適切とはいえないマーケティング手法といった根本的な問題が大きく横たわっているように見えます。それを改革したくて経営者のポジションに固執したかった久美子女史の気持ちは良く理解できることですが、ではドラスティックな財務活動や事業のリストラクチャリングに挑戦できているかというと、まだまだやれることがいっぱいあり、むしろ経営改革のスピードは現在の市場環境からすると落第点に近い所見です。 頑迷な老経営者の老害とも揶揄される手法へ反発した聡明な娘というポジションは非常に得なのは事実ですし、そうであって欲しいと願う気持ちは理解できます。ただ、家庭の中や企業の組織内部の論理がどのように推移したのかすべては分かりませんが、悲劇のヒロインとして剛直で厳格な父親に立ち向かう女性経営者と周囲が持ち上げるにはあまり経営的な高い手腕を見て取れるだけの業績改善や「これならば」と言えるような経営方針を示す発表は特になされなかったのは非常に残念なことです。 あくまで株主ではない市場関係者の見方だと限定する言い方になってしまいますが、やはり騒ぎが大きくなった大塚家のお家騒動はできる限り市場の外でやって欲しいということであります。心情としては久美子女史に同情するところではあるのですが、上場企業である限り、能力を失った創業者を追い出すことができたいま、やるべきことははっきりしています。早々に増資などして創業者サイドの持ち株比率を減らして返り咲ける可能性を削り、業績を早急に回復させられるようリストラクチャリングを行い、一定の道筋ができたところで久美子女史が然るべき経営者を社内で育成してから禅譲して経営者から降り本来の意味での経営と所有の分離を行ってガバナンスをあるべき姿にするべきでしょう。 経済ネタのニュースとしては劇場型で楽しかったにせよ、騒動の「店仕舞い」の方法は是非にしっかりと考えて着実に実行していただきたいと強く祈念する次第であります。関連記事■ 「ニッポンの今」を象徴する大塚家具問題■ 「ユニクロ」的なものの限界と挑戦■ 創業者の不信感 なぜ後継者に満足できないのか■ IT企業は初任給が高い 楽天の30万円は就職人気200社中最高

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    株式公開企業 創業者の振る舞いわきまえよ

    磯山友幸(経済ジャーナリスト) 父と娘が経営権をめぐって争っている大塚家具。その雌雄を決することになる株主総会が3月27日に開かれる。双方が株主の支持を得るべく委任状争奪戦を繰り広げている。 娘の大塚久美子社長側が取締役会を押さえ、会社側提案として父である大塚勝久会長らを排除する取締役候補案を提出。一方の勝久氏は、久美子社長らを排除した対案を株主提案として出している。 勝久氏は創業者で、いまも発行済み株式数の18%余りを持つ筆頭株主。2%弱を持つ妻の大塚千代子氏も会長側で、2割の「基礎票」を持つことから、当初は株主総会でも優勢ではないかとみられていた。 一方の社長側は、10%強を持つ米投資ファンドや国内金融機関などの機関投資家の支持を固めたとみられ、両者はほぼ拮抗(きっこう)している。総会当日までどちらが勝っても不思議ではない状態が続くものとみられる。 残るは取引先などの法人株主や、個人株主がどちらを支持するか。会長は会見や新聞・雑誌のインタビューなどで「悪い子供をつくった」「娘はまだ反抗期」と、父娘の争いだという印象を前面に打ち出している。 これに対して社長は上場企業としてのガバナンス体制のあり方や経営戦略を冷静な語り口で訴えている。会長側が「情」に訴える戦略を取っている一方で、社長側は「理」を説く戦法に出ているといってよいだろう。 社長側の道理は機関投資家など「プロ筋」には理解されやすいに違いない。一方で、会長側の訴えで情にほだされる古くからの取引先や個人株主も少なくないだろう。経営戦略についての記者会見に臨む大塚家具の大塚勝久会長=2月25日午後、東京都千代田区(蔵賢斗撮影) 「株主総会で判断を仰ぐ」「大株主さんは判断を間違えない」と、会長は当初、株主総会の結論に従う姿勢を見せていたが、その後の発言は大きく変化している。 「負けるとは思っていないが、一度や二度で終わる気はない」。新聞のインタビューではこう答え、久美子社長側が総会を制した場合には、大株主として総会のたびに株主提案を出す姿勢を鮮明にしているのだ。あくまでも自身が社長に復帰するまでは、筆頭株主として、経営陣を揺さぶり続けるというわけだ。 また、別のインタビューでは「(総会の)27日以降も創業者だから来るなと言われても出勤する。創業者はいていいことになっている」とも発言。仮に総会で久美子社長体制が固まって自らは取締役ではなくなっても、すんなり引退したりはしない意向を示している。 創業者が会社は自分のものだと思う気持ちは理解できる。個人商店ならば、死ぬまで創業社長として君臨するのもいいだろう。だが、大塚家具はれっきとした株式公開企業である。公開によって私物化できなくなる代わりに、保有株式が生んだ膨大な含み益を、創業者は手に入れることができたはずだ。 株主総会でどちらが勝つにせよ、株式公開企業としてあまりにも恥ずかしい騒動を公然と繰り広げるのだけは勘弁してもらいたいものである。いそやま・ともゆき 1962年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年3月末で退社、独立。著書に『国際会計基準戦争完結編』『ブランド王国スイスの秘密』(いずれも日経BP社)など。共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)。現在、経済政策を中心に 政・財・官を幅広く取材中。熊本学園大学招聘教授、上智大学非常勤講師。静岡県アドバイザーも務める。関連記事■ 「ニッポンの今」を象徴する大塚家具問題■ 女性の活躍 男中心の企業文化を排せ■ NHKよ、スポンサータブーなしの責務を果たせ

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    「隠蔽」より「公開」の方が企業価値守られる可能性高い

    田村秀男(産経新聞特別記者) 創業者会長と実娘の社長が対立している大塚家具について、日本経済新聞は「泥沼化するお家騒動」という見出しで、「親子の意地の張り合いで企業価値を毀損(きそん)するのは賢明ではない。被害を受けるのは株主と従業員だ」(2月25日付電子版)。週刊誌顔負けの下世話な見出しで、一見もっともらしいお説教をたれるが、偽善である。大塚家具の株主総会が行われる建物に入る人たち=3月27日午前、東京・有明 大塚家具の場合、企業価値は「経営トップ同士の路線対立」が公然と行われることで、むしろ守られる可能性が高いからである。上場企業が内部対立に蓋をして、限られた身内、仲間だけで、事業の根幹を決める「隠蔽の共同体」であれば、毀損されるリスクが大きくなる。 考えてもみよ。サラリーマンあがりが圧倒的に多い上場企業の経営陣内部では多くの場合、「路線対立」がまず起きない。あっても、日のもとにさらされることがない。内々に収拾されるからだ。現社長は自身を後継者に選んでくれた前任者(多くは会長)の路線を否定せず、継承する。 内心は変えたい、と思っていても、ぐずぐずしてしまい大失敗してしまう。かつての山一証券経営破綻、最近ではオリンパスのような巨額の飛ばし事件はその典型だ。内々で激しく議論しても、らちが明かないなら、当事者同士、思い切って公然と論争すればよい。そのくらい、真剣に経営論争を闘わせるのが、不特定多数の株主が所有するという意味での公企業の対株主責任であり、ひいては従業員の利益にもつながる。 大塚家具の場合、父親の大塚勝久氏は創業者というわけで、道徳観念では絶対的存在だ。それに対して大塚久美子社長は世俗的には娘という血縁関係からくる独特の情緒を消し去って、凛(りん)として創業者のビジネスモデルが時代にそぐわないことや、自身の考えるモデルが収益を生むかについて、粛々と一般に説明した。 父親は娘を社長に選んだのが「間違いだった」と吐露したが、それこそ間違いだ。今後、私情を排し、自身の考えるモデルがいかに娘のそれよりも優れているかを、クールに論じていけば、さすが「経営のプロ」と評価もされるだろうに。 もちろん、とりわけ「和をもって貴し」の日本。大塚家具のようなケースはできればないほうがよい。一時的には社員のみなさんも、気が気ではないだろうし、株主だって委任状争奪戦の思惑だけで株価が上がるなら、あとはどうなるか、不安だろう。 どうすればよいか。実はその回答になるのが、本来の意味でのコーポレート・ガバナンスである。端的に言えば、経営路線を決めるのが最高経営責任者(CEO)であり、経営の最終決断はCEOに委ねられる。つまり、ガバナンスとは、CEOをどう選ぶかにかかっている。その選定の役割を担うのが、社外取締役である。個性が激しくぶつかり合う文化の米国で、新CEOが巨大企業の経営路線を大きなトラブルなしに大転換できる決め手がそれだ。関連記事■ 跡継ぎ娘の憂鬱─事業継承という大問題■ IT企業は初任給が高い 楽天の30万円は就職人気200社中最高■ 女性の活躍 男中心の企業文化を排せ

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    大塚家具の父娘バトル 泥沼化で「看板」外す事態もあり得る

     一族会社の経営支配をかけた父と娘の骨肉バトル――。大塚家具を舞台にしたお家騒動は、いよいよ3月27日に開催される株主総会で雌雄を決する。 総会の直前まで、娘の大塚久美子社長(47)率いる会社側と、創業者であり大株主の父・大塚勝久会長(71)は互いの退任要求を訴え、激しく株主の委任状争奪戦(プロキシーファイト)を繰り広げてきた。多数派工作でより多くの議決権を握ったほうが勝者となるからだ。 果たして、その結果はどうなるのか。事前予想では、米投資ファンド(ブランデス・インベストメント・パートナーズ)や機関投資家を味方につけた久美子社長に対し、フランスベッドをはじめ取引先や家具団体、従業員などの支持を受ける勝久会長の議決権は、ともに2割程度でほぼ拮抗している状況だ。 残る「基礎票」のうち勝敗のカギを握っているのは、三井住友銀行ほかメインバンクや、東京海上日動火災保険など安定株主の動向だが、これらの企業は父と娘どちらの肩を持つのか。 経済ジャーナリストの松崎隆司はこんな見立てをする。 「メインバンクや安定株主は儲け重視の機関投資家と違い、会社の経営を安定させるために株を持っているので、基本的には会社側につくケースが多い。 しかし、今回の場合は身内である会長や取締役が株主として反発しているので、どちらが会社側という単純な見方はできません。しかも、社員や取引先が会長についていることもあり、仮に会社側を支持して負けた場合は取引先との関係悪化も免れません」 そう考えると、勝久氏が優勢と言えなくもないのだが、金融機関の関係者はこんな懸念を抱いている。 「無謀な増配案を提示したことがネックになっている。前期比倍増の80円を約束した久美子氏に対抗し、勝久氏はその上をいく3倍増の120円を示したが、それだけの配当が払えるほど収益が持続する保証はまったくない」 父娘間の“私怨”も膨らみ、まさに正常なコーポレートガバンス(企業統治)の機能が働かない事態に、株主はほとほと呆れ果てている。 いずれにせよ、株主総会では白黒が分かれることになるのだが、「どっちが勝っても負けても泥沼のケンカは終わりそうにない」と話すのは、前出の松崎氏だ。 「勝久氏が勝てば、久美子氏を会社から追い出して長男の勝之氏(45)を後継者として社長に据えることになるのでしょう。しかし、いかんせん勝之氏は協調性こそあるが経営能力が乏しいと言われているので、集団指導体制を築く以外にはありません」 さらに、骨肉バトルが一層燃え上ってしまいそうなのが、久美子氏が勝利した場合である。 「久美子氏が勝っても勝久氏が大株主であることには変わらず、来年も再来年も株主提案権を行使して久美子氏の解任を要求することができますし、株式公開買い付け(TOB)で株をさらに買い集める選択肢もあります。 久美子氏は父親の持ち株比率をなんとか薄めようと、ファンドを介して市場から株を買い漁り、MBOという形で自分たちが会社を買う手段に出たり、敵対的買収を防ぐためにホワイトナイト企業(友好的な第三者)を探してきて第三者割当増資をしたりして、父親に対抗せざるを得なくなる可能性があります」(松崎氏) ここまでドロ沼にはまると、もはや「大塚」の看板を外さなければならないリスクまで高まってくるという。 「敵対的買収などによる攻防が長引けば経営が不安定になることはもちろん、別の会社に乗っ取られたり、他企業の傘下入りを余儀なくされることも考えられます。そうなったら一族経営という事業承継は断ち切られてしまいます」(同前) 大塚家具の父娘に「どちらかが矛を収める」という選択肢は残されていないのだろうか。関連記事■ 大塚家具 長女が勝てば長男追放も母は長女を許さぬとの指摘■ お家騒動の大塚家具の長女 結婚の質問は広報からNGくらう■ 大塚家具 勝久会長を社員が実の父のように思っていた時代も■ お家騒動大塚家具 父に帝王学叩きこまれた長女は経費削減の鬼■ 奇跡の54歳・大場久美子 35年ぶりグラビアで堂々ビキニ披露

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    大塚家具問題、僕は勝久氏を応援する

     何気に面白かった大塚家具の話。 ただのお家騒動だし、所詮は一企業の内紛でしかないので、本来であれば「報道ステーション」や「ミヤネ屋」であそこまでの時間を割いて報じなければいけないニュースでもないのだろうが、当事者たちには申し訳ないが、確かに…このニュースはそこそこ面白かった。 ほとんどの人が知ってるだろうが、見ていない人のために少々解説だけしておくと、日本を代表する家具メーカーである「大塚家具」の中でゴタゴタが起きているのだ。 大塚家具はもともと、創業者であり天才的な経営者でもある会長の大塚勝久氏が作った日本最大の家具メーカーの一つだ。わずか一代でここまでの規模の企業に育て上げたのだから勝久氏の手腕はすごいとしか言いようがない。「会員制」という、当時はまだ誰も知らなかったような画期的な手法によって、 「いい商品をまとめ買いしてもらう」 という経営方針の下、丁寧で高品質の接客を中心に経営が進められていた。 が、その経営に陰りが見え始める。 日本は長く続くデフレの波にのまれた上、規制緩和によって海外のメーカーがどんどん参入してきたのだ。特にめざましいのが皆さんもよくご存じの「ニトリ」と「IKEA」だった。 「安い商品を買いたいときにまとめ買いさせるのではなく個別売りで」 「ニトリ」と「IKEA」の経営方針はまさに大塚家具の真逆だった。デフレ、不況。苦しむ日本経済はまさにこの両者の追い風となった。 家具を買いたい人の数など、所詮はたかが知れている。大塚家具はこの両者をはじめとした「安い商品」を扱うメーカーに客をどんどん取られていった。記者会見で中期経営計画を発表する大塚家具の大塚久美子社長=2月26日午後 そこで2009年に天才創業者、勝久氏から娘の久美子氏に社長が変わったのだ。ここから大塚家具が大変な内紛状態になる。 久美子氏の経営方針は「過去との決別」だった。 もうそんな時代じゃあない。安い商品を扱っていかなければ。会員制ではなく、誰でも気軽には入れる店舗運営をしなければ。 久美子社長の下、大塚家具はどんどん経常利益を上げ続ける。しかし、それは勝久氏が大切にしていた…いわば大塚家具のハートを失うことだった…。…みたいな感じ。で、現在、会長の勝久氏と娘の久美子社長が大ゲンカ中。 大塚家具が真っ二つに割れて、「勝久氏の言うとおりだ!」「いや、久美子氏は間違いなく結果を出している!」とモメにモメて、よせばいいのに会見まで行うという、なかなかバイオレンスな展開が繰り広げられている。しかも、バカみたいに注目が集まったものだから会見の翌日、大塚家具の株はストップ高になるというオモシロ現象まで起きる始末だ。 さて、この親子喧嘩、みんなが思わずニュースを見てしまうのは…このケンカ…実は ものすごくありふれた「みんながやってるケンカ」 だからだ。そう。この平成27年、必ずみんな一度は経験しているケンカなのだ。少なくとも、社会人、このケンカをしていない人はほとんどいないのではないか?それくらい、みんなが理解でき、シンパシーを「どちらか」に感じるケンカなのである。ここで質問だ。皆さんは… どちらかにつかなければいけなかった場合、どちらに付く? この質問に対する答えは…恐らく、真っ二つのはずだ。だから面白い。・勝久会長は天才的な運営手腕によって大塚家具をここまで大きくした実績がある。が、逆にここ最近は不振が取りざたされ、確かに勝久氏が社長に変わった途端に利益が下がったりしているのも事実だ。・久美子氏は経営の実績は申し分ない。久美子氏が社長になった2009年以降、大塚家具は確実に利益を増やしている。まだ若いしこれからも十分期待できる新社長だ。しかし、彼女のとっている経営方針は…「大塚家具のハート」を否定するものだ。簡単に言えば、ヴィトンをイオンやイトーヨーカドーでセールで売る感じだと思ってほしい。このたとえを聞けば、勝久氏が反発したくなる気持ちも理解できるはずだ。・「今の」時代に合っているのは久美子氏の方のはずだ。結果が証明している。・が、勝久氏にも守りたいものがあるのだろう。・勝久氏の経営では近年は結果が出ていない。これはもう答えは出ている。勝久氏の経営は大塚家具を向上させられない可能性が高い。そして繰り返すが、久美子氏の実績は本当に見事なものなのだ。さぁ、皆さんはどちらにつく? ここまで考えると、このニュースは本当に面白い。 新聞などは久美子氏を「新しい時代の経営者」と解説する。そうは言われていないが、では逆説的には勝久氏はさしずめ、「古い時代の経営者」と言ったところか。このニュースに対する僕の見解 皆さんそれぞれの意見がおありだろうが、このニュースを見た僕の最初の感想をはっきり言う。 久美子社長、古いよね。 以上だ。はっきり言って申し訳ないが、久美子社長、一回り、遅れてると思う。あくまで僕の発想と価値観と思って聞いていただきたいのだが、久美子社長の経営方針は、10年遅れてる。 日本のデフレや少子化の大波は20年前から始まっている。それから10年ほどすれば、国民の経済状況(可処分所得)は厳しくなるのが当然だと判断できる。久美子氏がこの経営計画や発想を持ち出すのは本来、2000年初め頃であるべきだったろうと思う。今はすでに「ニトリ」や「IKEA」が結果を出し終わった後なのだ。 久美子氏が新しい経営者? いや、逆だろ。すでにとっくの昔に10年は古い。結論を言うと、僕ならこのお家騒動にもし巻き込まれていた場合… 迷わずに勝久氏に付く。経営戦略についての記者会見に臨む大塚家具の大塚勝久会長(左から2番目)ら=2月25日午後(蔵賢斗撮影) 勝久氏の経営方針は時代に流されない「信念」と「信条」がある。まず勝久氏の「想い」があって、その上で、時代が周囲にある感じだ。なので、時代によって、利益が出たりでなかったりする。が、僕は思う。 結果的にはきっとそちらの方が強いはずだ。 久美子氏は「他の結果」を見ているのだと思う。・IKEA、強いな~じゃあ、真似しようか?・グラフを見たら国民、みんな使えるお金が減ってるな~…じゃあ安売りしようか? 「大塚家具のハート」の前に「利益」があり「国民」がいるように感じる。 僕は「自分たちの信念」の前に「視聴率」や「事務所の意向」、「他局で視聴率の高い番組に出ているタレント」を重視して、その結果、大失敗しているテレビ局を知っている。そのテレビ局も、昔は信念をしっかりと持っている局だった。・怒られてもいい。楽しませよう!・視聴率が低くていい!自分たちが視聴者と一緒に笑える番組にしよう!・他が使ってなくていい!俺たちの局で、番組で人気者を作り上げよう! そのテレビ局は「楽しくなければテレビじゃないだろ!」という信念を捨て、視聴者におもねる番組作りをするようになった。視聴者の顔色を伺うようになった。その結果、どうなったのかは、皆さんもご存じの通りだと思う。視聴率が3位になった時に「やっと底は見た!」と、聞くのも恥ずかしい言い訳ばかりの会議をしていたが、今年は第1週目からテレ東に負け、ついに視聴率5位になった局だ。 僕の印象でしかないが、バブルのころまで、日本の企業は「自分たちの信念」が強くあったような気がする。しかし、バブル崩壊後、自分たちに自信を失っていった。利益が減っていった。その結果、信念を捨てて、利益、目先の金だけに執着するようになっていった。そして、企業のアイデンティティはどんどん失われていったように思う。 話を今回の大塚家具の件に戻すと、勝久会長は現在、久美子氏を提訴までしているのだが…正直言ってこの訴えは退けられるのではないか、と感じている。所詮素人の僕の見解でしかないが、素人なりに少し調べたが、ちょっと無理があるように見えてしまう。 そして、一点だけ、勝久氏に苦言を呈したいのだが、彼は会見で絶対に言ってはいけないことを口走っている。感情的になったのだろうとは思うが、同じ人の親として言う。「悪い子を作ってしまった」 これは絶対に言ってはいけない。親ならこの言葉は絶対に言ってはいけない。少なくともその子供を作ったのは自分だ。世間が「悪い子だ」と言ったとしても、親は子供を最後まで信じるべきだ。あの言葉だけは反省した方がいいと思う。 が、基本的には、ピケティではないが、これからは格差がどんどん広がる社会になる。残酷なほどに。 ここからは、むしろ顧客におもねる会社よりも、本物の「信念」を持っているメーカーの方が強いはずだ。これからは客層は2極化してくることは間違いない。上層部の人間相手に絞った方が買いに行く方も分かり易いと思う。 久美子氏の方針が合うのは今後10年以内と見る。そして、信念を捨てた大塚家具には、その後何も残されない気がする。 なので、もし僕がこのお家騒動に巻き込まれていた場合、迷わずに応援するのは勝久氏の方だ。皆さん、それぞれ、意見は違うだろうが、しかし、なかなか面白いニュースだと思った。(長谷川豊公式ブログ『本気論 本音論』(http://blog.livedoor.jp/hasegawa_yutaka/)より転載)関連記事■ 韓国の財閥3世に向けられる世間の冷たい視線■ 稲盛和夫氏が語るリーダー像■ テレビがつまらなくなった3つの理由

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    「ニッポンの今」を象徴する大塚家具問題

     大塚家具の経営権を巡る実の父娘の騒動は、実は「ニッポンの今」を象徴する事例かもしれない。 代表取締役会長である創業者の大塚勝久氏と同じく代表権を持つ社長の大塚久美子氏の対立は、3月27日の株主総会で賛成票を奪い合う委任状争奪戦(プロキシ―・ファイト)へと発展した。 取締役会を4対3で握った久美子氏は、取締役候補者から、会長と自らの弟である勝久氏長男の大塚勝之専務を外す議案を「会社提案」とすることを決定。これに対して筆頭株主である勝久氏は「株主提案」として、久美子社長を外して自らが社長に復帰する議案を総会にかける。 両者の会見からはまったく歩み寄る姿勢は伺えず、このままだと、父娘が株主総会で激突するという前代未聞の事態になる見通しだ。 騒動が表面化したのは昨年7月。それまで5年間社長を務めていた久美子氏が勝久会長の主導によって取締役会で社長を解任されたのである。その後、久美子氏が巻き返しを行い、今年1月の取締役会に自らが社長に返り咲く動議を提出。賛成4対反対3で可決、社長に復帰した。その段階で、父娘間の経営権争いは決定的になったのだ。新旧価値観のぶつかり合い 冒頭、「ニッポンの今」を象徴していると書いたのはどういう意味か。大塚家具の有明本社ショールームにある、スイスの高級ソファブランド「デセデ」の専門ギャラリー 安倍晋三政権は成長戦略として、社外取締役の導入などコーポレートガバナンス(企業統治)の強化や女性活躍の促進を柱に掲げている。 実は、久美子氏は大塚家具のガバナンス体制を、創業者を中心とするワンマン体制から、株式公開企業にふさわしい社外取締役が機能する体制へと移行しようとしていた。創業者がすべてを決めるようなオーナー企業でありがちな古い体制を一新しようとした。これが勝久氏の逆鱗に触れたのである。 取締役会は形ばかりで、最高権力者の言うことを追認する。ひと昔前の日本企業では、当たり前に行われていたスタイルだ。そうした古い体制から専門性を持った社外取締役を加えて実質的に議論する場に変えようという変革の動きは、日本にとって大きな課題になっている。 もう1つの女性活躍という時代の流れと大塚家具問題はどう絡むのか。 父娘は口には出さないが、今回の騒動に「相続」が関係していることは想像に難くない。つまり、「家業」である大塚家具は誰が継ぐのか、という問題だ。 勝久氏と相談役である妻の千代子氏との間には、5人の子どもがいる。一番上が久美子氏だが、弟に長男の勝之氏がいる。日本的の伝統的な考えでは、弟といえども長男が跡を継ぐのは当然だった。だが、最近は考え方が大きく変わりつつある。兄弟姉妹は平等で、尊重するのは女性でも長子ということになってきた。 大塚家具の騒動では家族も真っ二つに分かれており、両親と長男は会長派、それ以外の兄弟姉妹は長女派となっている。長男に跡を継がせたい両親に、兄弟姉妹は長子の長女こそが継ぐべきだ、と考えているという構図なのである。 つまり、古い価値観と新しい価値観がぶつかり合っているのだ。 対立している経営戦略の違いも、この新旧の価値観のぶつかり合いだ。 買うものを決めてやってくる「目的買い」の顧客を積極的な広告宣伝で集める「会員制」にこだわる勝久氏に対し、気軽にふらりと入店できるようにオープン化することで新規顧客を獲得しようとする久美子氏。過去の成功モデルへのこだわりと、新しい時代の変化に対応しようとする改革が真正面から対立しているわけだ。経営戦略についての記者会見に臨む大塚家具の大塚勝久会長(中央)ら=2月25日午後(蔵賢斗撮影) 記者会見の開き方にもスタイルの違いが出た。勝久氏を中心に勝之氏らが並んだ雛壇の後ろには、部長職の社員がズラリと並び、勝久氏は「社員は私を支持してくれている」と力説した。一方で、久美子氏はひとりパワーポイントを前にに冷静な口調で経営戦略を説明。父親のやり方について「演出に社員を巻き込んだ」として批判した。 経営者も社員も一体で会社は家族だという考え方と、経営の責任を持つのは経営者であって社員にはそれぞれ個人の考えがあるという考え方。ここでも新旧の価値観が真っ向からぶつかり合っているのである。父娘激突、株主総会のゆくえ 3月の株主総会ではどんな決着になるのか。大塚家具の株式は、勝久氏が発行済み株式の18.04%を保有する筆頭株主。妻の持ち分を合せると20%に達する。一方で、一族の資産管理会社である「ききょう企画」が9.75%を保有。こちらは久美子氏が主導権を握っている。さらに10.77%を持つ投資ファンドの米ブランデス・インベストメント・パートナーズも久美子氏側を支持しているとみられている。ここまでだとほぼ拮抗しているのである。 カギを握ることになりそうなのが、国内の銀行や生命保険会社など機関投資家と、一般の個人投資家だ。特に大株主である金融機関がどちらに投票するのかが焦点になりそうだ。 安倍内閣の改革路線でいけば、社外取締役に積極的で、理路整然と経営戦略を語る久美子氏に、時代の風は吹いていると言えるだろう。日本の金融機関が新しい経営スタイルを支持するのか、創業者という過去の信用を大事にするのか。創業者によるワンマン経営を許容する決断をするようだと、日本全体の改革はなかなか進まないということを示すことになるのかもしれない。 テレビのワイドショーでは父娘の発言を対比し、対立の構図に焦点を当てている。だが、この問題の行方は、日本の企業の経営スタイルが変わっていけるのかどうかという、ひとつの試金石とみることもできそうだ。関連記事■ 孫正義が「規格外」の速さで決断できる理由■ まさに地獄! 潜入調査で見たユニクロ下請け工場の実態■ 韓国財閥の創業者一族はやりたい放題だ

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    創業者の不信感 なぜ後継者に満足できないのか

    岡本裕明(Blue Tree Management 株式会社 代表取締役) IDC大塚家具。新宿ビックロの裏に構える巨大なショールームは一歩足を踏み入れると営業マンが待ち構えていたかのようにすり寄り店を出るまで一人にさせません。「今日はどのような家具をお探しでしょう?」と言われ気軽に「ソファ」とでも言おうならば「革張りですと…」と言いながら見せられるのは50万円では安物の部類になるのではないかと思われるほど高級品がずらり。「当店では一切値引きをしません」というそのポリシーにデパートでも時として値引きさせる私としては内心「駆け引きできないのではつまらぬ」という気持ちが先立ってしまいました。(笑)東京都江東区のIDC大塚家具「有明本社ショールーム」 その大塚家具は創業者の長女が5年前から社長として采配を振るっていたようですが、正直、業績は振るっていません。社長就任の2009年という年はリーマンショックからの立ち直りで2013年は日本全体が「夢よもう一度」と盛り上がっていたはずですが、売り上げは回復できていません。更に直近では既存店売り上げでみると4月は101%程度で消費税引き上げの影響はなかったとみてもよい状況だったのですが、5月は89%、6月に至っては83%と激しく下落、先行きの回復の目途が立たなかったのかもしれません。これを受けて創業者の父親が社長解任を行い、社長に復活しました。 家具については語るほど知識を持ち合わせていませんが、商品の二極化は激しく進んでいます。ニトリやイケアに代表される価格追求型の家具と欧州家具と称する7ケタの値札が当たり前の青山あたりにショールームがある高級家具に分類できるのでしょう。ただ、家具というのはマークアップ(利幅)が非常に大きい商品の一方でショールームは広大な場所を必要とするため賃料やそれこそ大塚家具のようにあきれるほど多い店員の人件費で食われてしまうのです。 今から7-8年前、バンクーバーで世界中の家具屋から直接購入できるシステムの会員になっていたことがあります。そこそこお世話になったのですがこれは本当に安いです。いわゆるショールーム価格の三分の一ぐらい。仮に日本で家具が欲しければ海外の家具店から直接買って輸入した方が安くつくと思います。ただ、傷などがついていた時の処理は面倒ですが。 また家具屋の商品陳列はイケアに代表されるようにその家具がその部屋でどう生きるかイメージさせ、抱き合わせでほかの商品も売るぐらいの逞しさがないとだめでしょう。そのあたりが私の見る同社の改善点ですが。 今日は大塚家具の話をするつもりではなく、創業者のイライラについて触れてみたいと思います。伊勢の赤福の社長解任事件も今年、ニュースになっていましたが私は創業者のイライラの頂点といえばユニクロの柳井正社長をおいてほかにないと思っています。大塚家具の大塚勝久会長 柳井社長は2005年に玉塚元一氏を解任し、社長に復帰。当時の記者会見ははっきり覚えていますが、玉塚氏に辟易としている柳井氏の態度にかなりびっくりしました。その玉塚氏、その後、苦労しながらも立派に経営者街道を走り、今やローソンの社長となっています。多分ですが、柳井氏は誰が社長になっても満足できないタイプだと思っています。それこそ死ぬまで実権を握り続けるでしょう。 同じことはセブン&アイの鈴木敏文会長や自動車のスズキの鈴木修社長もそうかもしれません。 なぜでしょうか?一つに自分が築いた城と御家人の世界は盤石な情報網が敷かれているということであります。これらカリスマ創業者が一線を退いても御家人から「会長、実は…」という耳打ちは日常茶飯事。その度に血圧が上がるというのがだいたいのあらすじでしょう。結果としてそれは「内紛」という言葉でニュースとなって表面化するのがオチなのです。だからそれらカリスマは死ぬまで実権を握るか、傀儡の社長を立てるということなのです。 ではなぜそれらカリスマ創業者はいくつになってもこれだけうねり、複雑化した社会の中でも第一線として活躍できるのでしょうか?それは優秀な取り巻き、つまり、御家人達が作り上げる組織力だと思います。悪く言えば北朝鮮の金家と一緒で会社の実権が極めて集中し、否定も批判も反論もない世界なのであります。 ところが運悪く、経営者寿命がせいぜい80-85歳を最長老レベルだとすればどうやってこれからこの御家人たちが権力闘争せず、一つのベクトルを作り出せるのか想像を絶します。それがあと10年ぐらいのうちに次々と起きるということでしょう。まさに戦国時代が近づいてきたというのが日本型経営の弱い部分の一つであります。 ちなみに大塚家具の創業者は71歳、柳井正65歳、鈴木敏文81歳、鈴木修氏に至っては84歳であります。そういえばスズキはフォルックスワーゲン社との持ち株バトルも解決していませんが、私にはVWが高齢となった鈴木社長のことを計算に入れていることは間違いないとみています。 政治家ですら若返っているのに案外経営者は権限移譲が進まないということでしょうか?日本の社会はやはり難しいようですね。(ブログ『外から見る日本、見られる日本人』(http://blog.livedoor.jp/fromvancouver/)より転載)関連記事■ 「ユニクロ」的なものの限界と挑戦■ 韓国財閥の創業者一族はやりたい放題だ■ なんで必要かわからないホワイトカラー・エグゼンプション

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    吉本お家騒動 創業家のプライド、増幅された確執

    「吉本興業研究」第一部「黒い影」編より産経新聞連載再録(平成23年12月7、8日)※肩書、年齢等は当時のまま 1枚の写真がある。 ゴルフクラブを手にした吉本興業社長、大崎洋(58)と落語家、笑福亭仁鶴(74)、ベテラン漫才師、中田カウス(62)の3人が並ぶ横で、満面の笑みを浮かべるもう一人の男。4人が収まった構図の中で、大崎は一人浮かない顔をしていた。 滋賀県内のゴルフ場で平成17年6月に撮影された写真の人物は、大阪市に本社を置くリゾート開発会社の会長(67)。国内有数の観光地に会員制ホテルやゴルフ場を経営し、昨年3月期で60億円以上の売上高を計上する優良企業のトップである。 ただ、彼には実業家とは別にもう一つ、「元暴力団幹部」という肩書もついて回る。カウスによれば、会長とは10年来の知り合いで、大阪・北新地で食事をしたり、会長の息子の結婚式に出席したりするなど、家族ぐるみの付き合いだったという。 取材で入手した写真は、カウスが相方の中田ボタンと3度目の上方漫才大賞を受賞した際に開かれた祝賀コンペで撮影されたものだったが、カウスに説明を求めると、にわかに表情が険しくなった。 「まさかあの後、会長や創業家との全面戦争になるとは思ってもみませんでしたわ…」 コンペから2年後。カウスの言う全面戦争は「お家騒動」として世間をにぎわすことになるが、写真の中の大崎は、そんな吉本の不穏な未来を暗示していたかのようにも見える。62歳の早すぎる死故林裕章・吉本興業会長の「お別れの会」=2005年1月26日 17年1月、お家騒動の前兆とも言える出来事が起きた。吉本の「中興の祖」の林正之助の娘婿、林裕章が会長就任からわずか5カ月で急死した。62歳の早すぎる死。それは吉本全体のパワーバランスに大きな影響を与えた。 死後、吉本の経営権は現会長の吉野伊佐男(69)や大崎らに移ったが、これに猛反発したのが正之助の愛娘(まなむすめ)で裕章の妻、マサだった。マサの狙いは「林家」に経営権を取り戻すことだったが、その後、リゾート開発会社会長らに急接近し、創業家と現経営陣の対立は決定的となる。 この会長の腹心のリゾート開発会社社長(66)は、カウスと裕章の特別な関係が「確執」の元凶になったと指摘する。 「生前の裕章さんの女性トラブルを、カウスが暴力団の名前を使って解決したそうだが、これ以後裕章さんはカウスに頭が上がらなくなり、カウスは『特別顧問』の肩書まで手に入れた。だが、裕章さんの死後すぐに豹変(ひょうへん)し、創業家をないがしろにするようになった」 この件について、カウス本人に尋ねてみると「僕が先代のことでヤクザを使って女のことを解決したり、会社の経営に口出ししたことは一度もありません」ときっぱり否定している。最期まで引かなかった正之助の愛娘 双方の言い分は、お家騒動が収まった今でも食い違いをみせるが、そもそもマサとカウスの関係は良好だったという。確執の原因をカウスが振り返る。 「吉本株をホリエモン(元ライブドア社長、堀江貴文受刑者)が大量に買いに入ったとき、マサさんから慌てて『吉本には株のプロがおらん』と相談を受けました。たまたま僕の親戚にプロ中のプロがおりまして、マサさんにもお伝えして納得してもらったんですが、マサさんはその後、『あんな乗っ取り屋に会うもんじゃない』って吉野さんに告げ口ですわ。キレますやん、だれでも」 むろん、このエピソードはカウスの一方的な見方にすぎない。もう一人の当事者であるマサは2年前に他界しており、どっちの言い分が正しいのか、今となっては知るよしもない。 ただ、マサはその後も「創業家当主」を名乗り、カウスや経営陣と対立を深めていく。マサはなぜ最期まで引かなかったのか。その答えは、正之助が生前公言していたという、この言葉にあるのかもしれない。 「社員は虫けら、芸人は乞食(こじき)」 正之助のDNAを受け継ぐマサにとって、「社員」が吉本を牛耳り、「芸人」に自身のプライドを傷つけられたことがどうしても許せなかった。だからこそ、裏社会と接触を図ってでも、彼らを追い出そうとしたのではないか。 カリスマだった父をも上回りかねない創業家としてのプライド。それは吉野や大崎ら“外様”による創業以来最大の「決断」に少なからず影響を与えることになる。*   *   *上場廃止「興行とヤクザ」にピリオド 「非上場化で新しい吉本が生まれる」 平成21年9月11日、東京、大阪両証券取引所1部上場の吉本興業が計画する株式の非上場化をめぐり、元ソニー会長、出井(いでい)伸之(74)が代表を務める投資会社「クオンタム・エンターテイメント」による株式公開買い付け(TOB)の実施が発表された。クオンタム・エンターテイメントによる吉本興業株のTOP発表で握手する(左から)クオンタムリープの出井伸之代表取締役、吉本興業の大崎洋社長、大株主である大成土地の吉本公一社長=2009年9月11日(撮影・早坂洋祐)  クオンタムは、吉本の友好的買収を目的に設立され、在京キー局や広告代理店、ソフトバンクなどが190億円を出資。銀行からの融資などにより最大350億円を調達し、全株買い付けの必要資金に充てた。 財界の「大物」が旗振り役となったTOBに応じた吉本。株式上場からちょうど60年という節目の年に、上場廃止を前提にしたTOBに賛同した狙いは何だったのか。 吉本興業取締役、中多広志(50)は「上場している限り、株主に迷惑がかからないように振る舞うのが最も大事なことになり、大胆なチャレンジができない。もし上場を維持していれば、ハゲタカファンドに買いたたかれて、ボロボロになっていたでしょうね」 もっとも、「笑い」というソフトを売る吉本にとって、市場から資金調達するメリットはほとんどない。むしろ、経営側の視点からみれば、上場を維持するデメリットの方が大きかったのかもしれない。 ただ、TOBへの賛同という重大な決断に、経営陣と対立が続く創業家の「排除」という思惑はなかったのか。中多に尋ねてみると、こんな答えが返ってきた。 「創業家排除のためだけに、天下の出井さんが動くと思いますか? でも、TOBを進めた結果、一部の株主の影響から逃れることができたのは確かです」創業家の“影響力” 創業家の一人である林マサの告発に端を発した「お家騒動」から2年。当時、マサ個人が保有する吉本株は全体の3・3%。長男、正樹(40)名義の株を合わせると、全体の約4%に達しており、これを背景にマサが吉本の経営に隠然たる“影響力”を行使しようとしていたことは否定できない。 「株主本人の意思とは関係なく、強制的に保有株を買い上げる『スクイーズアウト』と呼ばれる手法を使うためにも、吉本側は何が何でもTOBを成立させる必要があったのではないか」。事情に詳しい関係者が振り返る。 ただ、ようやく買収資金調達のめどがついた21年7月、事態は急変する。クオンタム側に150億円の融資を約束した日本最大のメガバンク、三菱東京UFJ銀行が土壇場で撤回したのである。土壇場で裏切ったUFJ TOB開始直前でのUFJの撤退は裏切り行為に等しかったが、関係者は「撤退を決めた理由に、お家騒動と暴力団のつながりがあった」と証言する。 それはマサの背後にいた元暴力団幹部のリゾート開発会社会長(67)と大阪市の財団法人「飛鳥会」をめぐる関係にあったという。 関係者の証言によれば、この会長は平成15年までの6年間、同和団体である飛鳥会の理事を務めており、理事長の小西邦彦とも近い関係にあったとされる。 同和団体の「首領」として君臨した小西。18年、業務上横領容疑で大阪府警に逮捕され、翌年病死したが、飛鳥会事件に絡む不正融資をめぐり、19年にUFJは金融庁の業務停止命令処分を受けている。 関係者の一人は「事件後、旧三和銀グループは追いやられ、社内の勢力図も一気に変わった。だから、融資の一件も慎重にならざるを得なかったことは否定できない」と話す。 TOBは21年10月、吉本の自社保有分を除く発行済み株式の約9割の応募で成立、上場廃止が決まった。 吉本興業社長、大崎洋(58)は言う。「何かにつけてよかったな。興行会社って、時代の空気を吸いながらやる会社やから」 創業一族である林家に公然と反旗を翻した大崎らが、上場廃止前に掲げたフレーズは「吉本の近代化」。その意味は、創業以来脈々と続く「興行とヤクザ」の関係にも、ピリオドを打つという意思表示だったのかもしれない。(敬称略)

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    大塚家具、「骨肉争い」の裏側

    大塚家具の経営権をめぐるお家騒動が泥沼の様相をみせている。創業家の父娘が繰り広げる骨肉バトルは、株主を巻き込んでの第二幕へと発展することが必至だが、老舗の高級家具ブランドでいま何が起こっているのか。一連の騒動の裏側に迫る。

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    跡継ぎ娘の憂鬱─事業継承という大問題

    後藤百合子(「こるどん」代表取締役) 家具小売り大手、大塚家具の大塚久美子前社長(46)が、半年前に解任されたにもかかわらず再び代表取締役社長に返り咲き、話題になっています。  以下、騒動の顛末を要約してみます。  大塚久美子前社長は2009年代表取締役社長に就任。2014年まで社長をつとめましたが7月の取締役会で突然解任されました。ところが今年1月の取締役会で再び代表取締役社長に復帰。いっぽう、実父である大塚勝久氏(71)も依然として代表取締役会長として取締役会に残っており、解任、再任劇は勝久会長の拡大路線をめぐる父娘の確執の結果ではないかと各誌が報道しています。  大塚家具は上場会社とはいえ、勝久会長が発行済み株式の約18%、大塚一族の資産管理会社が約10%をもつ同族色の近い会社。『日経ビジネスオンライン』の記事によると、勝久会長、母、長男 VS 久美子社長と長男を除く弟妹が昨年7月の解任劇以降激しく対立し、さらに他の株主や取締役まで巻き込んでの経営権争いに発展していたようです。久美子氏の社長復帰も勝久会長の当面の妥協策であり、今後も親子の争いは続くのではないかという指摘もあります。 中小企業の後継者には女性が急増 最新の労働量調査によると企業の役員に女性の占める割合は26%となっています。この数字を多いとみるか少ないとみるかは判断の分かれるところでしょうが、少なくとも経営者の4人に1人以上は女性ということですから、大企業の女性管理職の割合に比べれば非常に多いのは確かです。彼女たちの大部分は中小企業の経営者であり、今後は後継者に女性がなるケースが増えて中小企業の社長は20年後には女性が半数以上になるだろうという推計もあります。  そこでこれから増えていくと思われるのが、今回の大塚家具で起きたようなケースです。  今後社長の座を降りていく60代から70代にかけての世代の社長は、ほとんどが高度経済成長期とバブル期の成功体験をもっています。特に創業社長であればその時期に積極的に銀行借入をして投資をし、自分がここまでの会社にしたのだという自負は非常に強いでしょう。逆に銀行員や会計士のように、細かく会社の財務内容をチェックして損益分岐点を計算し、ちまちまと管理するような経営は嫌います。また、「これは儲かるはずだ」という自分の直感のみを頼り、どんぶり勘定で事業を進める社長も多いのです。さらにこの世代の経営者の多くは自分の会社は自分の所有物だという意識をもっており、公私混同も珍しくありません。  反対に、バトンタッチされるほうの30代から40代の世代は高度経済成長は記憶にないか生まれておらず、社会に出る前にバブルも終わってしまっていた、という方々がほとんどです。将来に対しては漠然とした不安を抱き、父が昔話をした後に語るように「いつかまた景気がいい時代がくる」などという言葉は信じられません。いきおい父の時代に広げてしまった大風呂敷を何とかうまくたたみ、社内体制をしっかり整えて困難な時代を生き抜いていけるように守りの態勢に入るケースも増えるでしょう。特に後継者が女性の場合は堅実タイプの経営者が多いため、一代で急成長した会社を継承する場合には今回の大塚家具のような問題が発生する確率が高くなるのではないかと思います。 Daddy’s Girlの故に深くなった確執 英語で父と非常に絆が深い娘のことをDaddy’s Girlと呼びます。娘は父を尊敬し父のような男性と結婚したいと思い、父にとっては目の中に入れても痛くないほど可愛いだけでなく、息子と比べても優秀でいつまでも自分の手元に置いておきたい自慢の娘。事業を継承して女性社長になっていくのはこのようなタイプの女性が多いと思います。  大塚家具の久美子社長も一橋大学を卒業後、富士銀行(現みずほ)に就職。キャリア女性の道を歩んでいましたが、父の事業の急拡大に伴い銀行を退職して大塚家具に入社します。経営企画や経理などの責任者を歴任し会社の業績も順調に推移していましたが、なぜか入社10年後の2004年に退社。自分でコンサルティング会社を設立して経営されていましたが、5年後の2009年に今度は社長として復帰します。 久美子社長がいったん大塚家具を離れた2004年といえば10年前、久美子社長はまだ30代半ば、勝久会長も60代になったばかりです。おそらくこのときすでに今回の父娘の確執は始まっていたのでしょう。大企業でのキャリアを捨てて実際に父と一緒に働き始めたら、父の思い描く会社の将来像があまりにも自分とかけ離れていた。大学や大企業で勉強してきた知識と経験を駆使してさまざまな経営改革を行ってきたのに、父はそれを評価してくれないばかりか、自分とは正反対の無謀な拡大路線を走り続けている。そこにあったのは自分が描いていた会社経営の理想と現実との大きなギャップだったのでしょう。そこで娘は自ら会社を去り、自分自身の新天地を求めてDaddy’s Girlの座を捨てて自立する決断をしたのではないでしょうか。  しかしそれから5年後の2009年、勝久会長は60代半ばになり後継者選びを迫られます。長男を取締役にしたものの、やはり客観的にみたら娘の久美子社長のほうが経営手腕が高いことを認めざるをえず、呼び戻して社長に据えたのではないでしょうか。しかし残念なことに父娘の経営方針は食い違ったままで平行線をたどり、最終的に解任劇にまで至ってしまった。ところが今回は娘のほうも黙って去ることはせず、逆に父を追い詰める形で社長に返り咲いたというところが真相に一番近いのではないかと思います。 後継者を引き受ける前にとことん話し合いを 大塚家具の場合は上場企業なので大きな話題になっていますが、私の周囲の中小企業でも似たような話はときどき耳にします。後継者が男性の場合は妻の理解や応援でまだじっとこらえて時期がくるのを待ち、やりすごしていく場合も多いのですが、女性の場合は仕事に打込んできたため独身で相談する相手もなく一人ですべて抱え込んでしまったり、結婚している人は逆に仕事のストレスが元で夫婦仲が悪くなり離婚してしまうというケースもあります。また、夫が妻の実家に入って仕事をしている場合で父娘の関係が悪くなるとさらに問題は深刻で、夫婦そろって仕事を失ったり、最悪のケースには離婚して仕事も家庭も失ってしまうことさえも起こりうるのです。  中小企業の社長が自分の子供に会社に入って後継者になってほしいというとき、親子という遠慮もあってかあまり経営について詳しいことを語らず、実際に一緒に仕事をするようになってから経営観の違いがはっきりするというケースが多いと思います。しかし、就活や転職をするとき、入社しようという会社の業務内容を調べたり、経営者の経営方針や経営内容を調べてから入社試験を受けるのが当たり前なのに、一般の社員とは違い、一度なったら簡単には辞めることができない経営者になるのにそんなことさえわからないまま入社してしまう、というのはよく考えたらおかしな話です。  男性の場合は子供の頃から「お前が跡継ぎ」と言い含められて後継者になる場合が多く、時間的にも精神的にもじっくりと構えられますが、私の知る限り、女性の場合は最初はそのつもりがなかったのに、ある日突然「お前がやれ」と後継者になってしまう、というケースが頻繁にあり、経営者としての心構えもできないうちに社長になってしまうことも珍しくありません。そして実際にやってみたら先代からの横やりが激しく、自分が思い描いていた経営ができず、悶々と悩むという女性経営者も多いのが実情です。  このような状況を防ぐためには、まず、バトンタッチをされる前にじっくりと親と膝を突き合わせて経営の話をすること。そして親からの後継者の指名に対して「NO」と言える余裕をもっておくことが大切だと思います。 後継者問題は親子にとって非常に大切な問題であるのと同時に、雇用している社員の将来をも左右します。親子の関係がこじれればこじれるほど経営に支障が出ますし、社員の不安も増大していくのです。事業の継続を堅持し雇用を守るために、事業継承の前段階から、経営者も後継者も両者ともに納得できる経営方針のすり合わせを行っていくことが望ましいと思います。会長、社長の会見スタイルの大きな違い会長、社長の会見スタイルの大きな違い 1か月前の記事にも書いた大塚家具の父娘間の経営権争い、勝久会長が久美子社長の罷免を求める株主議案を提出し、いよいよ騒動は佳境に入ってきました。先週には父娘ともに会見を開き、3月の株主総会を控えてテレビなど大手メディアでも大きな注目を集めています。  父娘間の最大の争点は創業者である勝久会長のビジネスモデルである会員制セット販売を継続するか、久美子社長の経営方針である顧客の裾野を広げて単品売りを基調にするかという販売手法に対する考え方の違いと言われていますが、会見の様子をテレビで観ていて、それ以外に実は大きな問題があるのではないかと感じました。  それを如実に示したのは2人の会見スタイルの違いです。  勝久会長は「娘(久美子社長)を社長にしたのが間違いだった」「このままでは大切な社員たちが会社を辞めてしまう」と苦渋に満ちた顔で語りましたが、背後にずらっと背広姿の男性たちが10人以上並んだのはこれまで会長と長年苦楽を共にしてきた幹部社員たちなのでしょう、「俺たちが会長を守るんだ」という意気込みなのか、固い表情でテレビカメラを睨み付けるように直立不動の姿勢で立ち一種異様な雰囲気を醸し出していました。これとは対照的に、久美子社長の会見はたった一人で、パワーポイントの資料を指しながら淡々と現在の経営状況を説明しつつ質問に答え、「創業者はいつか引退しなければならない」と表情を変えずに語っていました。「人情に厚い集団のトップ」と「合理的な経営者」。両極端の2人 勝久会長の会見を見て私が率直に感じたのは「映画に出てくるヤクザの親分みたいだな」という感想です(反社会勢力的という意味では決してありません。念のため)。  男性が中心的な役割を占める集団のトップとして、部下の面倒を長年にわたってみ続け、時には叱咤激励しながらも厚い人情をかけながら彼らを引っ張ってきた老境の男性の心情が伝わってくるような気がしたのです。反対に、この親分に仕えてきた子分たちにとって、感情や人情に訴えるのではなく、あくまで数字や論理で現状と経営方針をクールに説明し「明日からこのように営業方法を変えてください」と新社長に言われたとしたら、いきなり突き放されたような気がして「やはり以前の社長のほうがよかった」と思ってしまいそうだなと感じたのです。  前回も書いたように、久美子社長は一橋大学卒業後、大手銀行でキャリアを積み、いったん大塚家具を離れたときにはコンサルティング業を営むなど、経歴をみれば絵に描いたようなエリート人生を送ってきています。勝久会長の部下をつとめてきた古参社員たちとのバックグラウンドはおそらくまったく違い、下手をすると久美子社長の話している言葉さえ通じていないということも起こっていたかもしれません。  そのような背景を考えると、今回の騒動のそもそもの原因は、直接的に父娘が対立したというより、久美子社長の経営スタイルについていけない社員たちが勝久会長に直訴し、その結果、もともと販売方針などをめぐる父娘の考え方の違いが決定的な経営者間の亀裂に発展したものではないかと強く感じました。 中小企業の事業継承に伴う古参社員の反発 大塚家具に限らず、中小企業で先代の子供が社長になるときには、必ずといっていいほど社員との軋轢が生じます。古参社員からしたら新社長は「おむつをしていた頃から知っている社長の子供」です。下手をしたら新社長を大学まで出してやったのは「俺たちが汗水たらして稼いできたお金のおかげ」と考えている社員もいるかもしれません。  「まだまだひよっこ」と心中では下に見ている新社長から「これまでのあなた方のやり方はもう通用しません」「これからは私のやり方でやりますので、それに従ってください」と言われ、引退した会長に「社長をなんとかしてほしい。そうでなかったら会社を辞める」と古参社員が直訴した、という話は社長仲間からもときどき聞きます。まして新社長が女性であれば、「あんな小娘の言うことなんか聞けるか」という反発を社員から招くことは往々にして起こるのです。 新たな経営方針をどう社員に理解してもらうかは社長の力量 いくら社長が素晴らしい斬新な経営方針を示しても、社員が本気になってその方針に従って動いてくれなければ決して会社の変革はできません。そのような逆境の中で、どう自分の方針を社員たちの腹の中まで落とし込み、同じベクトルに向けて引っ張っていけるかもまた、社長の重要な責務です。  客観的にみれば、会員制高級家具セット販売というこれまでの勝久会長の経営スタイルが現在の市場の変化に対応したものであるとはとても思えません。勝久会長もここまでの会社を創った名経営者ですから、それはある程度理解しているでしょうし、久美子社長の新しい経営方針のほうが株主にとって合理的かつ魅力的にみえることは間違いないでしょう(ただし商売は生き物ですから、合理的な選択をすることによって確実に売り上げや利益が上がるとは断言できないところがまた難しいのですが・・・)。  しかし、もし久美子社長が今回の父娘の闘争の勝者となったとしても、集団のトップとして社員たちのモチベーションを上げ、自分の経営方針を実現してもらう、という最も重要かつ困難な仕事は残ります。逆に勝久会長が久美子社長を追放できた場合でも、現在の消費者の購買行動の変化に素早く対処できる経営方針を社内に示し、それを実行していく社員を育てていく、という仕事はこれからも続くのです。  個人的には、7年ほど前に新宿の大塚家具でソファを単品買いし、今でも愛用しています。一消費者としてはニトリやIKEAだけでなく、多少高くても長く使える良いものを「単品で」売ってくれる大塚家具には、今回の騒動の教訓を活かし、ぜひ今後も生き残ってほしいと思っています。関連記事■ あの「名経営者」はどんな教養を身につけてきたのか?■ 韓国財閥の創業者一族はやりたい放題だ■ なんで必要かわからないホワイトカラー・エグゼンプション