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    介護施設で働く外国人ってどうなの?

    2017年11月、外国人技能実習制度に介護職が追加され、深刻な人手不足に悩む介護業界は大きな期待を寄せる。一方で、コミュニケーションが中心で高齢者の健康に深くかかわる介護職を、外国人に任せられるのか、不安視する声があるのも事実だ。そこで、約10年前から積極的に外国人スタッフを受け入れている山梨県の介護施設を取材した。

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    「介護移民」受け入れを甘くみるな

    日本で働きながら技術を学ぶ外国人技能実習制度の対象職種に「介護」が新たに加わった。深刻な人手不足が続く介護の現場では期待も大きいが、一方でわが国の移民政策に直結する重大な問題でもある。移民の受け入れを拒否し、労働力だけ確保するという「ご都合主義」の政策で本当に大丈夫か?

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    大移民時代に突入した「亡国のニッポン」を憂う

    三橋貴明(経世論研究所所長) 現在の日本は、財務省主権国家であり、政商主権国家でもある。とにもかくにも、財務省の緊縮財政路線が強要され、国民が貧困化し、同時に人手不足が深刻化し、政商たちが「外国人労働者」の受け入れビジネスで利益を稼ぐスキームが成立してしまっているのだ。 政府の目的とは、ビジネスでも利益でもない。経世済民である。国民が豊かに、安全に暮らせる国を作る。これが、経世済民の精神だ。 それに対し、自らのビジネスにおける利益最大化のみを目的に、政治を動かそうとする政商と呼ばれる連中がいる。代表が、竹中平蔵氏が代表取締役会長を務めるパソナ・グループだ。さらには、自らの出世のこと以外には眼中になく、ひたすら緊縮財政路線を推し進める「亡国の省庁」たる財務省。 日本は財務省と政商たちに都合が良い政策「のみ」が推進され、国民が貧困化すると同時に、移民国家への道をひた走っているのだ。 筆者は10月31日に小学館から刊行した「財務省が日本を滅ぼす」に、「2018年度は、診療報酬と介護報酬が同時に改定される、6年に一度の年となる。財務省は、もちろん診療・介護報酬の『同時引き下げ』を目論(もくろ)んでいる」 と、書いたのだが、予想通り来た。 10月25日の財政制度等審議会(財務大臣の諮問機関)において、財務省は医療および介護サービスの公定価格を見直す報酬改定について、いずれも減額を要求してきたのである。すなわち、診療報酬と介護報酬の同時引き下げだ。 ちなみに、介護報酬引き下げの理由は、財務省に言わせると、「15年度の改定時に、基本報酬4・48パーセント削減という大幅なマイナス改訂をしたが、さらに削減が必要。介護サービス全体の利益率は、中小企業の平均よりも高く、おおむね良好な経営状況である」というものだった。生活習慣やルールの違いなどについて説明を聞く外国人職員ら =2017年5月31日、島根県出雲市 財務省の緊縮財政により、日本の総需要の不足は続き、デフレからの脱却が果たせないでいる。需要が拡大しないデフレ下では、中小企業の利益率は落ちていき、赤字企業が増えていかざるを得ない。介護産業は、15年度の介護報酬減額で利益が一気に減ったとはいえ、まだ「プラス」である。だから、さらなる減額、と財務省は言ってきたわけである。 財務省の緊縮財政路線でデフレが深刻化し、中小企業の利益が減った。結果、介護の利益率が中小企業平均を上回る状況になったため、デフレ化政策たる介護報酬引き下げが強行される。これが、現在の日本の姿だ。 現在、介護職の有効求人倍率は3倍を超え、産業としては医療や運送、土木・建設を上回り、日本で最も人手不足が深刻化している。理由は、単純に給料が安すぎるためだ。悲惨な介護職の平均給与 介護職の平均給与は、産業平均と比較し、女性が月額▲3万円、男性が月額▲10万円と、悲惨な状況に置かれている。その状況で、財務省は「利益率が高い」などと言いがかりをつけ、介護報酬を削ろうとしているのだ。 2016年度の介護関連企業の利益率にあたる収支差率は、全介護サービスで3・3パーセント。介護報酬減額(15年)前の2014年度の7・8パーセントから、大きく落ち込んだ。 この状況で、さらなる介護報酬削減に踏み切ると、どうなるか。高齢化で需要が増え続ける中、介護報酬が削減され、今度こそ介護は「赤字が常態化」する業界になる。そうなると、事業を継続する意味がなくなるため、日本は介護の供給能力が激減し、高齢者が介護サービスを受けられなくなる形の「介護亡国」に至る。(当然、日本のデフレ化も進む) あるいは、介護事業者がさらに給料を引き下げ、人材の流出(というか「逃亡」)が加速することになる。図 日本の介護福祉士登録者(左軸、人)と介護福祉士の従事率(右軸) 出典:厚生労働省 現在、介護福祉士として登録している「日本人」は140万人を超す。それにも関わらず、従事率は55%前後の横ばいで推移したままだ。 さらに不吉なことに、2017年から介護福祉士の国家試験への受験申込者数が急減している。社会福祉振興・試験センターによると16年度は16万919人だった受験者が、17年度は7万9113人と、半減してしまったとのことである。政府の介護報酬削減(2015年)で介護が儲からない産業と化し、就職すると「貧困化する」という現実を、介護産業への就職志望者たちが知ってしまったのではないか。 本来、介護産業における人手不足は、介護福祉士の資格を持っていながら、業界で働いていない「日本人」を呼び戻すことで埋めるべきだ。とはいえ、そのためには介護報酬を引き上げなければならない。すると、財務省の緊縮財政路線とぶつかる。「財務省主権国家」では、介護報酬の引き上げはできない。むしろ、介護報酬は引き下げられ続ける。すなわち、介護サービスの給料はさらに低下し、日本人が逃げる。「ならば、外国人を雇えばいいではないか」 ということで、17年11月に外国人技能実習生制度の、介護分野への適用につながるのだ。介護分野が技能実習生制度に解放されたことを受け、デイサービス大手のツクイが、ベトナムから年内に約150人を、学研ココファンも、2020年までにミャンマーや中国などから120人程度を受け入れる予定とのことである。もう後戻りできない そもそも「技能実習生」は外国人労働者ではない。先進国である日本が、アジア諸国から「実習生」を受け入れ、現場で働くことで技能を身に着けてもらう。通常3年、最長5年間の「実習」の終了後は帰国させ、祖国に貢献してもらう。これが技能実習生の考え方だ。 とはいえ、今回の外国人技能実習制度の介護への適用は、明らかに「人手不足を補うための外国人労働者受け入れ」である。何しろ、介護の有効求人倍率は3倍を超えるのだ。しかも、対人サービスとしては初めての技能実習生受け入れとなる。 介護分野における人手不足の原因は、政府が介護報酬削減を続けるため、十分な給与を支払えないことだ。解決策は、介護報酬拡大(および人件費に関する規制強化)であるにも関わらず、そこからは目をそらし、国民的な議論なしで対人サービス分野において「移民」の大々的な受け入れが始まる。わが国は、恐るべき国である。 ちなみに、「移民と外国人労働者は違う」といった詭弁(きべん)は通用しない。国連は、出生地あるいは市民権のある国の外に12カ月以上いる人を「移民」と定義している。経済協力開発機構(OECD)の定義では「国内に1年以上滞在する外国人」が移民だ。1年以上、わが国に滞在する外国人は、全てが「移民」なのである。もちろん、介護分野に流入する技能実習生も、れっきとした移民になる。介護施設で利用者を介助する外国人スタッフ=2009年9月25日  現在の安倍政権は、恐るべき熱心さで日本の「移民国家化」を推進していっている。安倍総理は、保守派の政治家と思われている。普通、国民や国家を重要視する「保守派」の政治家は、移民受け入れに反対するはずなのだが、とんでもない。日本の憲政史上、安倍内閣ほど移民を受け入れた政権は存在しない。2012年には68万2千人だった日本の外国人雇用者数は、2016年に108万4千人に達した。4年間で、およそ1・6倍にまで増えたのだ。 特に、今後も人手不足が深刻化することが確実な介護分野において「移民」受け入れを決めてしまったことは、将来に重大な禍根を残す可能性が高い。 現在は、介護サービス業が試験的に技能実習生を受け入れているだけだが、今後も「外国人労働者」の需要が拡大すると、なし崩し的に規制緩和が進み、やがては「ヒトの売り買い」で儲けるパソナをはじめとする大手派遣業者ら「政商」が市場に参入してくることになる。政商たちの手により、世界中のあらゆる地域から、「安く働く外国人労働者」を日本の介護分野に大量供給されていく。 やがて、わが国の国民に、「介護? ああ、外国人が働く業界ね」といった認識が広まり、日本の介護サービスは移民無しでは成り立たない状況に至る。 そこまで行くと、もはやポイントオブノーリターン(後戻りできない地点)である。われわれは日本国の二千年を超す歴史上初めて「移民国家、日本」を将来世代に引き継ぐことになってしまうのだ。 将来の日本の教科書には、2017年11月1日の技能実習制度の介護分野への適用こそが、日本の本格的な移民国家化の始まりだったと書かれることになる。 本当に、それでいいのだろうか?

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    「移民拒否」の日本が介護危機から脱出する方法はこれしかない

    山脇康嗣(弁護士) 介護分野への外国人労働者の受け入れが拡大している。これまでは、インドネシア、フィリピン、ベトナムとの経済連携協定(EPA)に基づく特例的な枠組みの中で、EPA介護福祉士しか受け入れてこなかった。しかし、今年からは、一定の要件を満たす外国人が、在留資格「介護」や在留資格「技能実習」で介護職に従事できることとなり、間口が一気に広がった。介護老人保健施設「ウェルケア悠」でアルバイトとして働いているインドネシア人留学生スリスティヨリニ・ノフイさん=2017年1月、奈良県大和郡山市 それぞれの制度の内容は、複雑でわかりにくいが、大きな視点でみると、「介護分野の人手不足対応」と「アジア健康構想の推進」という趣旨で統一的に理解できる。 EPA介護福祉士の枠組みは、一定の要件を満たすインドネシア、フィリピン、ベトナム国籍者が対象となる。在留資格「特定活動」により、最長で5年間、まずは日本の介護施設等で介護福祉士候補者として就労しながら、日本の介護福祉士の国家資格を取得するための研修を受ける。その後、介護福祉士の資格を取得できた場合には、引き続き日本で就労できるというものである。本来的には2国間の経済連携の強化を目的とし、各国300人という年度ごとの人数枠がある。 さらに、2016年入管法改正(今年9月施行)により、新たな在留資格「介護」が設けられた。これにより、日本に留学して介護福祉士養成施設を卒業し、介護福祉士の資格を取得した外国人が、介護の業務に従事することが可能となった。介護分野における外国人留学生の活躍支援を直接の目的としている。この法改正を受け、介護福祉士志望の外国人留学生が、5年で30倍と急増している。  さらに、今年11月には、在留資格「技能実習」に介護職種が追加された。これにより、最長で5年間、技能実習生として、介護施設等においてOJTで介護に必要な技能を学ぶ。同一の作業の反復のみによって在留資格が習得できるものではないが、単純就労的な側面は否定できない。 現在、介護保険法によって、入居者3人に対して、1人の介護職員もしくは看護職員を配備しなければならないとされているが、実習開始後6カ月経過した時点から、実習生もこの職員配置基準にカウントできる。また、離職率が高い介護業界にあって、実習生は、制度上、少なくとも3年間は自己都合による転職がない。本来的には、技能実習制度は、人材育成を通じて開発途上地域等へ技能を移転し、国際協力を推進することを目的としているものの、これらの理由から介護事業者が実習生の受け入れに強い関心を寄せている。人手不足解消だけではない 在留資格「特定活動」(EPA介護福祉士)、在留資格「介護」および在留資格「技能実習」は、細かくみれば、それぞれ趣旨や目的が異なるようにも見えるが、大きな視点でみれば、「介護分野の人手不足対応」と、「アジア健康構想の推進」が目的であるということで共通している。以下、この視点で説明する。(iStock) まず、日本の高齢化社会の実情から考えると、2015年には、1947年~1949年生まれの団塊世代の全員が、前期高齢者(65~74歳)となった。2025年には、団塊世代の全員が75歳以上の後期高齢者となり、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という、人類が経験したことのない超高齢社会に突入するといわれている。いわゆる2025年問題であり、医療・社会保障財政が破綻の危機を迎えるほか、厚生労働省の推計によれば、38万人の介護職員が不足し、このままだと多数の介護難民が発生すると見込まれている。現状でも、介護分野での人手不足は深刻であり、離職率も依然として高い(昨年度16・7%)。 前述した3つの枠組みでの外国人登用は、この人手不足への対応という側面がある。もちろん、日本人介護従事者の待遇改善による人材確保が優先であるが、それだけではとても間に合わず、外国人を受け入れざるを得ない状況なのだ。 また、アジア健康構想とは、日本が先行する介護の技術やシステム(地域包括ケアシステム、自立支援介護サービス)をアジアの諸地域に輸出するという政府が強く推進している官民連携のプロジェクトである。アジアにおいて、急速に進む高齢化に対応した健康長寿社会の実現を目指した取り組みであり、アジア地域全体の持続可能な経済成長を支援する目的がある。さらに、日本の介護事業者のアジア地域進出を後押しする目的がある。 アジア地域では急速に高齢化が進み、2035年には、アジア地域の高齢者率は約20%に達し、高齢者向け市場は約500兆円になると見込まれている。高齢者向け市場とは、医療・医薬産業、介護産業および生活産業を指す。 日本では、今後も高齢化率は上昇するものの、2025年以降は65歳以上の高齢者数の増加は頭打ちとなり、その後、高齢者数は横ばいとなり、2042年以降は減少に転じると推計されている。そのため、日本国内の高齢者向け市場も、ある時点以降は縮小傾向となり、アジア地域への事業進出による新たな市場開拓を検討せざるを得なくなる。また、日本の介護保険財政が逼迫(ひっぱく)しているため、事業者は、介護保険制度による介護報酬の増加を見込めない状況にある。よって、事業者は介護保険外での収入の確保(収益源の多角化)を図る必要があり、そのため、官民一体となって、日本の優れた介護システムをアジアに輸出し、アジア地域に介護産業等を興すことを狙いとしている。大きな問題は起きないのか? 日本の介護事業者がアジア地域に進出するためには、当然、日本式の介護システムを習得した現地人材の育成や、その人材の環流が必要不可欠である。こういった観点から、政府は、介護職への外国人受け入れの間口を広げている最中である。つまり、介護分野において、アジアから日本への留学生や技能実習生を増やし、母国帰国後に、現地施設での即戦力となってもらったり、経営に参画してもらったりすることを可能にするための法改正を行っているのである。介護福祉士の国家試験に向けた講習で、休憩中に記念写真を撮る外国人の候補生=2017年5月、大阪市 しかし、このように外国人人材の介護職への受け入れを推進していくことで問題は起きないのだろうか。 まず、EPA介護福祉士については、公益社団法人国際厚生事業団が唯一の受入調整機関として、厚生労働省等と連携しながら運営しており、人権侵害や事故発生等の大きな問題は起きていない。そのため、今年から、介護福祉士資格取得後は、施設内介護のみならず訪問介護に従事することも解禁された。介護福祉士候補者の介護福祉士国家試験の合格率も、基本的に上昇傾向にある(最新で49・8%)。 次に、在留資格「介護」は、介護に必要な知識を体系的に学ぶ養成施設を卒業し、介護福祉士国家試験に合格した者のみが対象となっており、一定程度以上の専門性が制度的に担保されている。さらに、日本の専門学校等に通学している間に、アルバイト活動を行えるため、それにより、言語化されない日本社会のルールや「空気」を読む力など日本独特の文化に触れる機会を得ることもできる。したがって、チーム作業である介護業務に従事しても、大きな問題は起きないのではないかと考えられる。 懸念が残るのは、技能実習制度による受け入れだが、2016年に新しく成立し、今年11月から施行された技能実習法が規定どおりに厳格に適用されるのであれば、大きな問題が起きる可能性は高くない。確かに、技能実習の3年目までは、自己都合による転職が基本的に認められておらず、その意味で完全な労使対等が実現しないから、人権侵害等の問題を引き起こす要因となりうる。 しかし、技能実習法は、そのような3年目までは完全な労使対等が実現しないことを前提としつつ、それでも問題が起きないようにするために、刑罰規定を含め、極めて厳格な規制を行っている。さらに、介護職種については、コミュニケーション能力が重要な対人サービスであり、また、事故が起きたときの被害が深刻であることから、他の職種に比べて、かなり厳しい上乗せ要件が規定されている。現実的な解決手段 具体的には、実習生に一定の日本語能力が求められているほか、実習生の受け入れを認められる機関もかなり限定されている。そのため、法律の規定どおりに制度が適用されるのであれば、これまでより問題は減少すると考えられる。介護現場で働く外国人の国家資格取得に向けた講座が開講し、講師の説明を受ける受講生=2017年4月、仙台市宮城野区 日本では、単純就労的(現業業務的)な分野での外国人労働者については、期間限定のローテーション型の受け入れしかありえないであろう。単純就労に従事する外国人を、広く一般に、定住を前提として受け入れるための制度的基盤は整っていない。それになにより、全面的な移民を解禁することに対して国民の合意も形成されていない。したがって、少なくとも現時点においては、単純就労に従事する外国人の定住を前提とした全面的な受け入れは無理である。技能実習制度を批判するのは簡単だが、他に方法がないのが現状だ。 技能実習法が規定する技能移転による国際協力を目的とすることと、適正な技能実習実施の結果として国内産業の人手不足の解消にもつながることは、必ずしも矛盾しない。日本の外国人政策として、単純就労従事者は原則として受け入れず、生産年齢人口の減少については、基本的には生産性の向上や女性・高齢者の活用での解決を目指す。しかし、それを前提としつつも、著しい少子高齢化の中で、国内産業の空洞化を防ぎ、国の経済力を全体として継続的に維持するためには、適正化を図った上での技能実習制度が現実として必要不可欠だ。ICT技術やロボットの活用を図るとしても、直ちに人手不足を解消するほどに生産性が向上するわけではないし、そもそも、それが適さない分野もある。技能実習制度を廃止することは、単純就労者を全面的に受け入れることにつながるが、そのような国民的コンセンサスはできていないし、今後も無理であろう。 これまで述べたとおり、介護分野における喫緊の人手不足に対応する必要がある。また、一定時点を越えると日本国内の介護市場が縮小してしまうことも懸念される。さらに、事業者が介護保険報酬だけに頼らず、収益源を多角化するために、官民連携してアジア健康構想を推進する必要がある。それを実現するためには、介護分野の現地人材育成と環流の促進が不可欠である。外国人にとっても、自国で介護産業に就くことが可能になり、日本での学習、技能実習および就労が、キャリア形成の柱となる。さらに、アジア地域において関連医療や生活産業が興ることで、高齢化対応の経済・産業構造になり、国際貢献にも資する。 したがって、日本は、入管法や技能実習法を厳格に適用しつつ、問題が起きないか細心の注意を払いながら、介護分野への外国人労働者の受け入れを、慎重かつ確実に進めていくほかないといえる。

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    外国人にとって日本の介護現場は本当に魅力的なのか

    小山朝子(介護ジャーナリスト、介護福祉士) 「人材不足」と「低賃金」。この二つの問題に帰結する介護の記事を目にするたびに「またか」と思うようになってきた。こう書くと問題に直面している方々から批判を受けそうだが、それを承知の上で本音を吐露した。 「人材不足」と「低賃金」は数値で示すことができるが、数値で示すことができない課題もあり、そうした課題をていねいに拾っていくことが「介護職が辞めない」職場をつくるための本質的な課題なのではないかと感じている。 外国人を介護職に受け入れる取り組みに関しても、「介護人材の不足を補う存在」として、数に焦点を当てて論じられている。2017年11月から施行された「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」についてもしかりだ。 この「外国人技能実習制度」は発展途上国の若者を受け入れ、実践的な技能・知識を学び、帰国後、母国の経済発展に役立ててもらうことを目的としている。従来は農漁業や製造業といった職種において実施されてきたが、このたび「介護」が加わった。対人サービスのジャンルでは初となる。(iStock) 同制度では、これまで長時間労働や残業代の未払いなどの劣悪な環境のほか、実習生の失踪者の増加など数々の問題が浮上している。そのため、外国人技能実習生の受け入れを予定している施設からは、文化や価値観の違いを踏まえた教育ができるか不安の声もあがっているようだ。 今年7月、私は外国人介護職の受け入れに成功している施設があると知り、担当編集者とともに山形県内にある特別養護老人ホーム(以下、特養)へ取材に出向いた。特養は利用者の介護を看取りまで行う施設である。 この特養で取材したのはEPA介護福祉士候補者(以下、EPA候補者)の外国人だ。EPAとは、国・地域の間で、関税を引き下げて貿易を自由化するだけでなく、お互いに投資や人の行き来をしやすくして経済の結びつきを強める包括的な協定だ。EPA候補者は、日本の介護施設で就労、研修をしながら、日本の介護福祉士資格の取得を目指す。業務の統一につながる受け入れ 現在までのEPA候補者の受け入れ国はインドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国。2008年から2016年度までに2777人を受け入れ、542人が資格を取得した。取材した特養は2010年から現在に至るまでEPA候補者の受け入れを行っている。同施設が受け入れに成功している背景には以下のようなポイントがあった。・外国人介護職の技術指導を統括するリーダー職を配置している・施設内で外部講師を招き、日本語を学ぶ機会を提供している・施設近くに宿舎があり、職場から通いやすい環境を整えている・メンタル面でのサポートは地域で暮らす同じ国の出身者に依頼している・同じ県内に住む外国人介護職員同士の交流会なども開催している 実際に同施設の施設長は、取材時「とにかく急いで人材不足を解消したいという短絡的な考えで外国人介護職を受け入れたのでは成功はしない」と繰り返し話していた。 また、現在同施設で働くインドネシア人の男性は「日本の介護施設で質の高い介護を学び、将来は自国で介護施設を建てたい」と夢を語ってくれた。彼の発言に対し、施設長は「その夢が叶えられるよう支援していきたい」とこたえていた。 日本の国家資格である介護福祉士の資格取得を目標に掲げ、介護施設で就労・研修に励むEPA候補者と外国人技能実習生とではそのモチベーションに温度差があることは否定できない。これまで外国人技能実習生の多くは出稼ぎ目的で来日し、「介護」に対する意識が低い外国人も少なくないとの指摘もある。 しかしながら、受け入れに成功している上記の特養の取り組みと心構えは、これから外国人技能実習生を受け入れようとしている施設にとっては指針となりうるのではないか。 EPA候補者の斡旋等の業務を行う公益社団法人国際厚生事業団(以下、事業団)による調査(2016年)では、施設がEPA候補者を受け入れた目的として「人材不足解消のため」との回答と並び、「職場活性化のため」という回答が上位だった。 さらに、EPA候補者受け入れを「良かった」と評価している点については、「教えることで日本人職員自らも基本を見直すことができた」「介護記録の記入を容易にする工夫など業務の標準化が進んだ」といった意見があった。後者の「標準化」とは、提供される介護サービスのばらつきを抑えるため、介助方法を業務手順として統一化することである。特別養護老人ホームで介護福祉士として働くフィリピン人=愛知県武豊町 私は現在東京都福祉サービス第三者評価の評価者として評価業務(事業所の組織経営や提供されているサービスの質を評価する)を行っている。この評価の項目の一つに「標準化」があるが、都内においても標準化が十分に整備されている施設はわずかであるといっても言い過ぎではない。利用者に対する介助方法の指導は「私がやっているのを見て覚えてね」というOJT(職場内訓練)が主流であるところが、今もなお少なくない。 「Aさんが着替えの介助をしてくれるときは痛みを感じることはないのに、なぜかBさんが介助をしてくれるときは腕が痛くなるのよね」と利用者が不満を漏らす事態が起きる。人が行う行為なのでいたしかない部分はあるが、利用者にとってはAさんが介助をしてもBさんが介助をしても、同じように痛みを感じないのが望ましい。量よりも質向上が重要 冒頭で、介護現場には「数値で示すことができない課題がある」と述べたが、上記の事例のような標準化も、その一つである。今後外国人を職場に受け入れようとする施設は、「人材不足を解消するため」という視点のみならず、自らの施設で行っている介護サービスの質を省みる機会と捉えてみることをおすすめしたい。 例えば、自分たちが提供している介護の技術をわかりやすい日本語で解説した「手順書」のようなものを作成することが可能かどうか。一人ひとりの職員が思い思いの方法で介助をし、情報の共有がなされていなければそれを作成することは不可能だ。 外国人の実習生に介護の知識や技術を伝達することは、自分たちの日頃の業務を振り返るきっかけとなり、サービスの質を向上させるヒントとなりうる。むろん、手順書を作成する時間を確保するには業務の効率化をはかることも求められる。 介護は単純労働ではない。とくに認知症の高齢者が増加している昨今、プロとして介護を行うには相応の知識や技術が必要だ。外国人技能実習制度による人材を「使い捨て」のように考えていたのでは信頼関係は構築できず、継続的な受け入れは困難になる。(iStock) 外国人技能実習生のみならず、彼らを受け入れる日本人職員もともに成長できるような関係性が望ましい。介護職が働きやすく、向上心がもてる職場づくりは、外国人を雇用している、していないに関わらず、現在の日本の介護現場が抱える課題であるといえる。 私が2009年に台湾の高齢者施設を視察した当時、台湾人の介護職とともにインドネシアやフィリピンからやってきたという介護職がはつらつと働いていた。取材に応じてくれたインドネシアの女性は「お給料は欠かさず家族に仕送りしているのよ」と話してくれた。あのまぶしい笑顔は今も覚えている。 諸外国と比較しても日本の介護サービスの質は高いという評判はしばしば耳にする。世界に誇れる介護サービスを提供し続けるためにも、介護現場の課題が「量的確保」のみならず、「質的確保」の面からも論じ、検証されていくことを期待したい。

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    K・ギルバート氏「参政権付与は忠誠誓った帰化人に限定せよ」

     安倍政権が推進する「移民受け入れ」政策は、はたして日本の国益に繋がるのか。40年近く日本で暮らす弁護士でタレントのケント・ギルバート氏(64)が、「在日外国人」の立場からあえて移民問題に斬り込む。* * * 私は移民の受け入れを頭ごなしに否定するつもりはない。むしろ、受け入れ態勢の拡充や、法整備を前提とした議論は大いにすべきだと考えている。ちなみに私は人生の半分以上を日本で過ごしてきたが、帰化はしていない。在留資格は「定住者」で、日本で働くために5年に1度、就労ビザを更新している。 だが、日本が現状のまま無条件に移民を受け入れることには反対だ。なぜなら、受け入れ側も、日本に来る外国人も共に不幸になることが目に見えているからだ。(iStock) 安倍政権は少子高齢化による労働力不足を補うため、介護や建設などを受け持つ「単純外国人労働者」や、高い技術や知識を持った「高度外国人人材」の受け入れを進める方針とされる。 しかし、安直な外国人労働者の受け入れは日本社会を大混乱に陥れかねない。 まず懸念されるのは治安の悪化だ。例えば第二次大戦後、トルコ系を中心に多数の外国人労働者を受け入れたドイツでは、経済成長が止まっても労働者が帰国せず、二世、三世として住み着いた。技術を持たない彼らの暮らしは貧しく、貧困が犯罪の温床となり、治安が急激に悪化した。 日本には開発途上国の外国人が農業や建設業などで働きながら技術を学ぶ「技能実習」制度があるが、これを利用して来日した外国人の失踪者は2015年に5800人を超え、過去最多を記録した。国別では中国が3116人で最も多く、2011年からの5年間で失踪した中国人実習生は累計で1万580人に達した。 失踪者の多くが不法滞在となり、犯罪予備軍になるとの指摘もある。外国人労働者の受け入れが増加すれば、こうしたリスクが増す。 治安面だけでない。安価な労働力の増加は自国民の労働賃金を押し下げ、暮らしの悪化や景気低迷を招く。ゆえに現在、移民の多い米国や欧州で「反移民」「反外国人労働者」が声高に叫ばれているのだ。 一方で、政府は高度外国人人材が永住許可を得るため必要な在留期間を現行の5年から大幅に短縮する「日本版高度外国人材グリーンカード」構想を掲げる。だが永住権を取得して日本に住み続ける外国人が増えれば、彼らの社会的影響力が増し、やがて参政権の付与を求める声が出てくるのは間違いない。これは極めて危険な兆候だ。子ども手当554人分申請子ども手当554人分申請 歴史的に民族間の争いや宗教対立と、ほぼ無縁だった日本では、「性善説」を前提に法律や制度を制定し、権利の乱用や悪用に注意を払わない傾向がある。一例をあげると、2010年に当時の民主党政権が子ども手当を導入した際は収入制限や人数制限がなく、海外に子供がいる在日外国人も申請できた。 すると兵庫県尼崎市に住む韓国人男性が、「妻の母国であるタイに養子縁組した子供がいるから」と、554人分の子ども手当を申請しようとした。さすがに却下されたが、これが子供5人分程度なら問題なく受理されたはずだ。 また、日本の難民認定制度は2010年3月に運用が変わり、難民申請から半年経てば国内で就労できるようになった。認定まで申請から半年~1年ほどかかるが、不認定となれば再申請でき、その間はずっと働き続けることができる。 このため就労目的の偽装申請が急増し、制度が改正された2010年に1202人だった申請数は右肩上がりで増え続けた。2016年は統計開始から初めて1万人の大台を超えたという。 このように合法であれば堂々と権利を行使するのが世界の常識であり、“みんな善い行いをするはずだ”との性善説は通用しない。 特定の地域に言葉や常識の通じない異民族が集まってコミュニティを作ると、密入国者や不法滞在者が群れを成し、地元の警察官すら近寄れない無法地帯となる。そんな地域に住む外国人に参政権を与えたら、日本国内に外国人自治区を設けるようなものだ。 こんな愚策に賛成するのはよほどの愚か者か、日本を壊したい勢力の回し者であり、参政権の付与は日本に忠誠を誓って帰化した人間に限定すべきである。異民族との交流が苦手な日本では文化や宗教面での衝突も避けがたい。 例えばイスラム教徒は一日に複数回の礼拝のほか、豚肉や飲酒の禁止など生活習慣上の厳しい戒律が多い。彼らが、「受け入れ側の受忍は当然の義務」だと主張すれば、日本社会に溶け込むのは容易でない。(iStock) もちろん、そうした点は相互理解で補えるし、イスラム教自体は平和な宗教だが、日本に住むイスラム教徒がシャリーア(※注)と呼ばれる厳格な法律を貫けば、日本人や他の在日外国人との間に深刻な溝を生み出すことが懸念される。(※注/イスラム教徒の実生活を宗教的に規制する法。「イスラーム法」とも呼ばれる。礼拝や断食を定めるほか、軽犯罪には鞭打ち、窃盗には手首切断の身体刑を科すなど、厳格な刑罰があることでも知られる。) 移民を認める前提条件は、彼らがその国の法律や習慣を尊重し遵守することだ。これは移民を考える上で非常に大きなポイントである。【PROFILE】ケント・ギルバート●1952年、米国アイダホ州生まれ。ブリガム・ヤング大学在学中に19歳で初来日。1980年、大学院を修了し、法学博士号と経営学修士号、カリフォルニア州弁護士資格を取得。東京の弁護士事務所に就職し、法律コンサルタント、マルチタレントとして活躍。『日本覚醒』(宝島社刊)、『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社刊)、『日本人は「国際感覚」なんてゴミ箱へ捨てろ!』(祥伝社刊)など著書多数。関連記事■ 中国人がスペインで飲食店や風俗店買収し始め地元民に警戒心■ 外国人参政権 基地抱える等安全保障が絡む自治体は議論必要■ 在日朝鮮人・韓国人へのヘイトスピーチについて石原氏の見解■ 外国人労働者と労働者不足に悩む国同士はWin-Winの関係■ 移民受け入れなら東京五輪後失職外国人を税金で面倒見る必要

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    コンビニより薄給! 外国人労働者しか日本を救えない介護の現実

    中村聡樹(医療介護ジャーナリスト) 介護人材の不足は、新聞紙上で語られる以上に深刻度を増している。 新卒学生の募集では、大手企業が内定のピークを迎える6月ごろの段階で、介護事業者への応募はほとんどないというのが現実である。企業から内定を受けられなかった学生が、仕方なく応募してくる9月以降からが採用活動のピークとなっている。もちろん、早くから介護の仕事に就きたいと考える学生もいるが、大半は就職先がなくて介護業界の門をたたくというケースが多い。 「必要な人数を確保するために、採用基準を低く設定することになり、結果的に優秀な人材を得ることは難しくなっています。就職しても3カ月くらいで辞めていく学生も少なくないですね」と介護事業者の採用担当者は語っている。 苦労して集めた人材も、仕事がきつく給料が安いという環境では長続きしない。多くの介護施設や訪問介護事業者が、年中、人材募集を行っている。転職やパートの募集に加えて、最近では定年退職したシニアを募集のターゲットにしている事業者も増えている。定年制を廃止して、働く意思があればいつまでも働ける環境整備に力を入れる企業も増えてきた。 しかし、これほど努力を重ねても人材不足の解消には至っていない。今年4月にオープン予定だった特別養護老人ホームが、半年たっても開業できないなどという事態も起こっている。表向きは工事の遅れが理由となっているが、実際は、人材確保が進まず施設をオープンできないというのが本当の理由である。 オープンまでこぎつけた施設でも、人材不足の影響で、すべての居室を稼働させることができないケースもある。入居待ちの高齢者の数が40万人以上といった報道もあるが、受け入れをしたくてもできない施設がかなりの数にのぼっていることはあまり知られていない。(iStock) 一方、東京や大阪など都会の事情と地方ではその深刻度が大きく違う。地方では本当に人材が集まらない。コンビニエンスストアで働く方が時給の高い地域も少なくない状態で、人材確保は、ほぼ不可能な状況に追い込まれている事業者もある。介護と看護のミスマッチ こうした状況を解決するために、外国人の介護人材に期待する声は大きくなっている。経済連携協定(EPA)によって、平成20年から外国人看護師、介護福祉士候補者の受け入れがスタートし、10年目の今年は、フィリピン、インドネシア、ベトナムから約850人の外国人労働者が日本にやってきている。介護人材確保が難しくなっている背景から、今年は、全国で1900法人が受け入れを希望したが、多くの事業者がEPAによる人材を確保できていない。過去10年間の実績がない法人は、受け入れ希望を出しても人材が回ってこない状況となっている。 さらに、今年の11月からは、技能実習制度を利用して外国人人材を受け入れる制度に「介護」の項目が加わり、期待が集まっているが、どれくらい人材確保が進むか未知数である。同時に、入国後に職場からいなくなってしまう事例も多数報告されていることから、外国人の受け入れに伴うリスクへの対応を考えると、一気に介護人材の充足までには至らない可能性も高い。 私は、介護の現場に外国人の人材確保を進めていくという考え方には賛成であるが、その受け入れ方法については、多くの疑問を持っている。外国人の入国に際して、多くのリスクを考慮する必要は認めるが、設定された条件は決して理にかなったものとは思えない。 今回実施される技能実習では、語学力が日本語能力試験N4レベル以上であり、母国で看護や介護の経験を積んでいる者が対象となっている。しかし、アジア諸国において、日本以上に高齢化が進んでいる国もなければ、高齢者施設などの施設が充足している国もない。そこで、ある程度の経験値を持った者を探すとなれば条件は非常に厳しくなる。各国ともに、看護師の養成学校は数多く存在するので、日本にやってくる人材の大半は看護師資格を持つ人材となる可能性が高い。 しかし、看護師としてやってきた人材が、日本で介護の仕事をさせられるとなると、その段階でミスマッチが起きることは容易に予想される。看護師としてのプライドを傷つけられたといった反応を示す者も過去のインタビューで何人か出会ったことがある。理屈をこねる必要はない それ以上に不思議なことは、受け入れ側の日本が外国人介護士人材の受け入れの理由として「日本で介護の技術を学び、母国に帰ったときにその技能を生かせることを目的とする」ということを示しているということだ。技能実習後に、海外に技術移転をするという考え方であるが、移転する「場」は海外には不十分である。アジア諸国の高齢化が深刻化するには早くても10年はかかる。 日本に長く滞在するためには、研修期間中に日本語レベルを上げ、さらに介護福祉士の取得、大学や専門学校への進学などステップアップすることが求められている。しかし、日本にやってくる外国人の大半が、そこまでのスキルアップを求めていないのが実情で、決まった期間にできるだけお金を稼ぎたいというのが本音でもある。 日本が設定した受け入れ基準とやってくる外国人との考え方には大きな溝が生まれている。私は、もっと素直に、介護人材不足に陥っている窮状を訴えて、助けを求める姿勢を示すべきではないかと思う。 高齢社会の諸問題に、どこの国よりも先に直面している日本が、どのように難題を解決していくのか、多くの国が注目していることは事実だ。であれば、その大変さをきちんと伝え、外国人人材の助けも借りながら問題解決を図っていく姿を見せることが必要である。困っているのに、どこか「上から目線」の人材受け入れを続けているようでは理解が得られない。(iStock) 不足している人材を海外からの人材に頼ることは恥ずかしいことではない。彼らの働く環境を整え、きちんと賃金を支払い、日本人と変わらない環境で働いてもらう体制づくりを早急に整える。その中で、いくつもの失敗を経験しながら、外国人労働者の受け入れのノウハウを構築すべきだ。先に、理屈をこねて体制を整える必要はない。 私が長年お付き合いしている社会福祉法人は、この10年間で多くの外国人を受け入れてきた。そこで、多くの失敗も経験したが、今では日本語学校も設立し、現在70人以上の外国人が働いている。日本人スタッフとのコミュニケーションも問題なく、法人全体の雰囲気が明るくなった。 こうした成功体験を参考にして、外国人労働者が介護の現場で働くことのできる環境作りを目指すことが重要である。先を見据えた政策は必要ない。介護問題はこの10年間が勝負である。

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    自由が人・モノ・カネをもたらす象徴的都市・バンクーバー

     経営コンサルタントの大前研一氏が主宰する企業経営者向けの勉強会「向研会」では、毎年秋に1週間ほど海外への研修旅行を行っている。今年は、成長著しいアメリカ西海岸北部のシアトルとカナダ・バンクーバーを訪れた。大前氏が、バンクーバーの強みについて解説する。それは、米・トランプ大統領の方針により、アメリカ人の雇用を増やすため、専門技能を持つ外国人向け就労ビザ「H-1B」の審査が厳格化され、海外の人材がアメリカで働けない事態になっている件とかかわっている。* * * もともと私がバンクーバーを視察先に選んだのは、日本の経営者たちに自然が豊かなカナダの魅力を知ってもらいたいと思ったからだが、今はこの国の人材の豊かさが、トランプ政権の移民対策と人手不足に悩むIT企業にとって大きなメリットになっているのだ。 バンクーバーでは、いわば無限に人が採用できる。そのため、マイクロソフトは3000人の人材プールをバンクーバーに作ると発表しているし、(シアトルに本拠を構える)アマゾンが最大5万人を雇用するとされる第二本社の候補地としても取り沙汰されている。カナダ・バンクーバー(iStock) カナダのトルドー首相は、ツイッターで「迫害、戦争、テロから避難してきた人々へ。信仰にかかわらず、カナダはあなた方を歓迎します。多様性は我が国の強みなのです」というメッセージを投稿し、難民・移民を歓迎する姿勢を打ち出した。「カナダは違いがあって“も”ではなく、違いがある“からこそ”強くあることを学びました」とも述べている。実際、カナダは毎年25万人以上の移民を受け入れ、国内の多様性を生かしたイノベーションによってグローバル化を推し進めている。 その象徴的な都市がバンクーバーである。ここは、シアトルと同じく、住環境が非常に良い。ダウンタウンから海と山が見え、鮭をはじめとする魚介類は旨いし、夏はウォータースポーツやトレッキング、冬はスキーが楽しめる。英誌『エコノミスト』の調査部門が発表した「世界で最も住みやすい都市ランキング2017」では、オーストラリアのメルボルンとオーストリアのウィーンに次ぎ、僅差で3位に選ばれている。 地元の広報担当者に同じ移民国家であるアメリカとの違いを聞くと、こんな答えが返ってきた。「アメリカに来た人たちは、みんな一刻も早く“アメリカ人になろう”とする。社会がアメリカ人であることを要求するからだ。しかし、カナダは“カナダ人になる”必要がない。それぞれの国の人のままでかまわない。だから精神的にものすごく楽で、居心地が良い」 これは一面で真実であり、カナダの素晴らしさである。実際、バンクーバー都市圏の人口約270万人のうち、中国人が約50万人、インド人が約20万人もいる。 考えてみれば、世界には個人にカネがあっても自由のない国がたくさんある。中国の金持ちは1兆円持っていても自由に使えない。ロシアはプーチン大統領自身が海外資産を凍結されている。中東の富豪も国内に自由はない。 そんな中でカナダには自由があり、広大な土地があり、チャンスがある。専門的なスキルを持っていたり、カナダで熟練を要する職業の経験が1年以上あって公用語(英語かフランス語)の十分な能力を有していたりすれば、永住権(国籍)も取得できる。だから世界中から優秀な人材と富が集まるのだ。つまり「自由」が人・モノ・カネをもたらすのである。これが21世紀の繁栄の方程式だ。 ところが、日本の政府はそうした世界の現実から目をそむけ、移民を認めないなど(実際には2016年末現在の在留外国人数は238万人余りに達し、過去最高になっている)制度が閉鎖的で、海外から人・モノ・カネが集まらない。「教育無償化」や「人づくり革命」などという日本人のみを対象とした内向きで無意味な政策ばかり打ち出している。それこそ「国難」にほかならない、と痛感した視察旅行だった。関連記事■ 米・シアトルが繁栄する理由を大前研一氏が解説■ クラウド活用で間接部門のコストは億単位で即座に削減できる■ 電子マネー先進国中国のモバイル決済革命が世界を席巻する日■ 中国人のカナダ移民で仲介業者が虚偽 800人が資格取消か■ セミ アメリカでは最も嫌われる虫の一つで「ただの騒音源」

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    電通過労死で消えた「働きたい権利」

    「国難突破解散」と首相自ら銘打った今回の解散劇だが、働き方改革を柱とするアベノミクス「第三の矢」はいまだ道半ばである。電通過労死事件を機に残業規制の議論が進む一方、労働者の「働きたい権利」は主張しづらくなったという指摘もある。労働意欲と生産性向上のバランスを欠く一方的な議論でホントに大丈夫か?

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    あなたの給料が減っても「働き方改革」を支持しますか?

    田岡春幸(労働問題コンサルタント) 電通の労基法違反事件や働き方改革で長時間労働の抑制が、健康維持やワークライフバランスの観点から求められている。 では、労働時間とはどの様な時間を指すのだろうか。労働時間管理のガイドライン(労働時間の適正な把握のために使用者が講ずるべき措置に関する基準)で、厚生労働省は企業に対して、厳しい労働時間管理を求めている。厚生労働省などの入る中央合同庁舎5号館=東京・霞が関(撮影・桐原正道) 同ガイドラインで、労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たることとしている。また、労働時間について、使用者が自ら現認して確認することなどとされている。 これらを踏まえ、政府は近年、厚労省(労働基準監督署)を使い、長時間労働の取り締まりを強化している。厚労省に「過重労働撲滅特設対策班」を置き、各労働局に「過重労働特別監督管理官」を任命している。月残業が80時間を超える場合は、是正指導や企業名の公表などを積極的に行っている。 法の違反がある場合は、送検などの厳しい措置も取っている。労基署にとって過重労働取締まりは、最重点項目になっているのだ。この流れは、この先も続くと考えられ、9月13日に行われた自民党の働き方改革に関する特命委員会でも長時間労働抑制の議論がなされた。 現状では、36(サブロク)協定(労働基準法第36条:休日労働や時間外労働をさせる根拠になる条文で、36条に記載の届出をしないと、時間外労働ができない。この届け出をしないで残業をさせたり、届け出している以上の残業をさせたりすることは違法になる)を締結すれば残業時間は事実上野放しだ。 このことが、過労死などの問題を引き起こしているとの考えから、働き方改革の一環として、残業時間の規制(上限)を設ける動きが出てきている。厚労省原案では、時間外労働の上限について、月45時間、年間360時間を原則とし、特別な事情がある場合でも年間720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間に設定することされている。違反した場合は、罰則が付く。 仮に月45時間だと、一日の残業時間が2・5時間を超えたら(週休2日、月22日勤務の場合)違反になってしまう。 確かに、行き過ぎた残業は健康面を含めて問題になる。しかし、今、最も重要なのは、サービス残業が横行していることではなかろうか。しっかりとした労働に対する対価を支払われるような制度にしていくべきである。一律規制は時代にそぐわない その制度として、筆者は正社員であっても時間給にして単純に労働時間をかけるような給与体系にしてはどうかと考える。そうすれば、同一労働同一賃金にも耐えうることが可能ではないだろうか。 一年中忙しい会社はほとんどなく(そんな会社は、組織のマネジメント不足である可能性が高い)、ある時期だけが忙しいことが多い。ゆえにもっと運用に弾力性を持たせるべきである。残業時間を厳しくすると、徒弟制度を取るような業界の技術力は間違いなく落ちるであろう。 そもそも仕事とは、厳しい修行を経て一人前になっていくのである。修行と労働は明確に分けることが難しい。マッサージ店や美容室の時間外の店内で残って行う個人修行も残業時間だと上記ガイドラインでは規定されている。また、厳しくしすぎると残業代が払えなくなり、倒産する可能性も出てくるのではないか。結局、産業そのものに影響し、国力や日本の文化の衰退をもたらすであろう。 うわべだけの残業規制は、仕事量が減らない限り、間違いなく持ち帰り残業が増えることになる。すなわち、逆にサービス残業の増大に繋がると考える。規制すればするほど隠れてやろうとするのではないだろうか。 要は行き過ぎた規制が、経済活動を委縮させ、経済を停滞させるのではないか。そうなれば経済効果にマイナスの影響しかない。特にサービス業においては、人手不足も相まって大きなダメージになる。人手不足による倒産が増える恐れがある。 さらに、大企業が残業規制を守り、納期の時間を今まで通りとしたならば、その下請けである中小企業にしわ寄せがくるであろう。中小企業が、長時間労働を課せられることになる可能性が高い。打ち合わせを土日にやらざるを得ない状況になるなど、残業規制が国の中小企業いじめに繋がる可能性もある。国は、下請けの弱い立場にある中小企業をこの問題から守らなければならない。 また、働いて稼ぎたいと考えている労働者も多く、法律でその人の働きたいという権利を奪うことはいかがなものか。残業代を含めた給与水準を考えているケースがあるのも事実だ。(iStock) 会社が残業をやりたい人、やらない人に分け、それぞれそれに対応した雇用契約書を作成して管理すればいいだけである。そして、例え残業をしない労働者でも優秀であるならば、出世できる仕組みを構築すればよいだけだ。 個人の多様な働き方を目指すならば、個々人が契約により自由に労働時間を設定できるようなシステムにしていけばよい。これが本当の意味での働き方改革になり、一律に規制をかけることは時代にそぐわないのではないだろうか。

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    マスコミは電通のブラック批判より自らの「仕事バカ」を是正せよ

    IT化や情報化の進行が挙げられます。パソコン、携帯電話、スマートフォンなど情報ツールの浸透は、人々の働き方や日常生活の過ごし方を大きく変えました。 新しい情報通信技術は業務処理を迅速化し、労働時間の短縮を実現する可能性をもっています。しかし、現実にはノートパソコン、携帯電話、スマートフォンの普及によって、仕事の時間と個人の時間との境界があいまいとなり、仕事が労働者をどこまでも追いかけてくるようになりました。私生活への仕事の介入が進行したのです。24時間化した経済活動 現在では多くの労働者が、オフィスの外にいても、家庭の中にいても職場とクライアントの両方から、メールや携帯電話、ラインなどで仕事の世界に引き戻されます。職場でさばききれないほどのメールやラインのメッセージを処理した上に、家庭でもメールやラインのメッセージに悩まされます。 また、新しい情報通信技術は仕事やビジネスの加速化、時間ベースの競争の激化をもたらし、経済活動のボーダーレス化や24時間化を促進します。これらは全体でみても一人あたりでみても、仕事量を増やしています。 特に、24時間営業のコンビニエンス・ストアや全国翌日配達の宅配便は、利便性と引き換えに、過剰なサービス競争を生み出し、労働の過酷化と長時間労働を促進しています。そしてこれらの業態は、もう一方で長時間労働を強いられている労働者の生活を支えており、両者は相互依存の関係となっています。 さらに、長時間労働が蔓延しているなかで、マスコミ関係者や医師、教員、警察官などの過酷な働き方が問題となっています。これらの分野の労働者はその労働の特質から、定まった時間内での勤務が難しい状況に置かれているからです。 取材、治療、教育、犯罪捜査などは、突発的な事態が起これば、いかなる状況やどんな時間であっても対応をせまられることが多いでしょう。こうした分野の労働者にとって、長時間労働の是正が困難であることは容易に予想できます。(iStock) しかし、これらの分野の労働者についても、長時間労働の是正は必ず実現しなければならない課題でしょう。長時間労働や過酷な労働は、過労自殺や過労死、うつ病や精神疾患などを多数もたらしています。 また、「共働き」世帯の増加や高齢化の進展は、これまで以上に男性労働者が家事、育児、介護に関わる必要性を高めています。男性労働者の長時間労働が是正できなければ、女性の労働参加や社会参加を妨げたり、仕事と家事、育児、介護の加重負担を女性に課すこととなってしまいます。 それに加えて長時間労働や過酷な労働は、その労働の質を劣化させます。マスコミ関係者や医師、教員、警察官の働き方は、この点からも改善されなければなりません。取材、治療、教育、犯罪捜査は画一的・定型的な業務ではありません。どれも深い思考力や個々の労働者の創意工夫が求められる仕事です。長時間労働や過酷な労働によって十分な思考力や創意工夫が発揮されなければ、それは必ず取材、治療、教育、犯罪捜査の質の低下となってはねかえってきます。マスコミなどの改善が急務 これらの分野の労働者の長時間労働の是正はどうやって行えばよいでしょうか。第一に、それぞれの分野の労働組合や業界が労働時間削減に取り組むことです。戦後長い間、労働組合や業界は賃金上昇と比べると、労働時間削減に熱心に取り組んできませんでした。電通の書類送検について会見する、東京労働局の特別対策班、樋口雄一監督課長(右)ら=4月25日、東京都千代田区(荻窪佳撮影) むしろ、労働時間削減よりもその分のエネルギーを賃金上昇に向けるという傾向が強かったといえます。今後は、労働組合や業界が、長時間労働の是正を最重要の課題として取り組むべきです。 第二に、「自発的な働きすぎ」を見直していくことです。これらの分野の労働では、仕事についての「やりがい」や「面白さ」がよく強調されます。この「やりがい」や「面白さ」が、労働者の「自発的な働きすぎ」を促進している可能性があります。仕事の「やりがい」や「面白さ」が、労働の過酷化に疑問をもつことを困難にし、長時間労働を促進させている面はないかを、労働者自らが点検する必要があるでしょう。 また、仕事における強制や圧力、過剰な仕事量や競争、少なすぎる人員配置など、長時間労働を生み出す雇い主の意向や職場の実態があるにもかかわらず、職場で「やりがい」や「面白さ」が強調されることによって、労働者の「自発的な働きすぎ」=「自己責任」と労働者自身が思わされている構造にも目を向けることが重要です。 第三に、これらの分野の労働者の長時間労働を是正するためには、社会全体の労働時間削減とセットで進めていくことが重要です。なぜなら、マスコミ関係者、医師、教員、警察官の長時間労働を生み出している要因の一つは、彼らの仕事の対象者である取材対象者、患者、子供・保護者、一般市民の多忙化だからです。取材対象者、患者、子供・保護者、一般市民が多忙であれば、それに合わせてマスコミ関係者、医師、教員、警察官の側も厳しいスケジュール調整を強いられます。 マスコミ関係者、医師、教員、警察官のみなさんが、自分たちの働き方を問い直すと同時に、日本社会全体の労働者の働き方を改善していく視点を持つこと、それが将来的には長時間労働の是正につながると思います。

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    ニッポンの企業に蔓延する「働き方改革疲れ」の実態

    常見陽平(千葉商科大学国際教養学部専任講師) 読者の皆さんに問いかけたい。「働き方改革」で疲れていないだろうか。日本をサービス残業大国にしないためにも「働き方改革疲れ」は正直に口にすべきだ。 この春、『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)を発表した。わが国において残業が減らない理由として、雇用システムの問題や、仕事の絶対量、「神対応」に代表されるサービスレベルの問題を取り上げ、これらの普遍的・根本的な問題に切り込まない限り、非妥協的に立ち向かったところで「働き方改革」は「改善」程度にしかならないこと、そこに踏み込まずにいるならば長時間労働を規制しようともかえってサービス残業を誘発してしまうのではないかと警鐘を鳴らした。 おかげさまで、新聞、雑誌を合わせ20近くの媒体で書評や著者インタビューが掲載された。講演の依頼も殺到している。手応えありだ。みんなが「働き方改革」に疑問を持っていることを肌で感じるからである。特に、大手企業の人事責任者が集まる勉強会などはそうだ。参加企業の中には、働き方改革の成功事例としてメディアで紹介される企業もいる。メディアで成功事例として紹介される企業も、ここでは社内の問題を語り出す。現場には浸透したとも、納得感を得ているとも言い難く、かえって疲弊感が広がっている様子などが伝えられるのだ。まさに「働き方改革疲れ」そのものである。 もっとも、その実は「採用氷河期」において、より良い労働環境を整えないと採用ができないことにも起因している。さらには、この取り組みをIR(投資家向け広報)、CSR(企業の社会的責任)、PRに生かそうという魂胆もみえみえだ。人材ビジネス企業やIT企業などの場合は、自社の事例化という側面もある。特にIT企業の場合は、優秀なエンジニア獲得のために条件を良くせざるを得ないという側面もある。このような点を読み解かなくては「働き方改革」の深層は理解することができない。 「働き方改革」の盛り上がりは、電通違法残業事件の衝撃による部分が大きいことは間違いないだろう。若手社員が自殺に至っただけでなく、これまでも過労死・過労自殺事件が起きているほか、長時間労働が慢性化し、労働局から何度も是正指導を受けていたにもかかわらず、電通は改善の努力を怠った。そして書類送検され、立件に至った。もちろん、電通で起きてしまったことは許される問題ではない。ただ、同社に急激な改革を求めることもまた「働き方改革疲れ」を誘発しないか。7月27日、労働環境改革基本計画を発表する電通の山本敏博社長=東京都中央区 すでに電通は改革を進めている。2016年10月半ばには、時間外労働の上限を月70時間から月65時間に引き下げる方針を固めるとともに、同月24日から午後10時以降を全館消灯とした。11月に当時の石井直社長ら役員8人で構成される労働環境改革本部が設置され、業務内容と仕事のやり方の点検が行われたのを皮切りに、改善策が次々と発表された。従業員の行動規範とされてきた「鬼十則」の従業員向け手帳からの削除をはじめ、増員や人員配置の見直し、有給取得の義務付けなどがそれである。「改革成功企業」への欺瞞 今年1月には、過労自殺した高橋まつりさんの母、幸美さんが記者会見し、電通に対して過労死や過労自殺の再発防止に向け、遺族への謝罪、慰謝料などの支払い、再発防止措置などを盛り込んだ合意書を結んだことを明らかにした。再発防止措置は長時間労働・深夜労働の改革、健康管理体制の強化、18項目に及ぶものである。運用においては社内研修に遺族や代理人が参加するほか、年に1回、再発防止措置の実施状況を遺族に報告するなどの措置を取っているのは画期的だといえる。 7月27日、電通は記者会見を開き、労働環境改善に向けた基本計画を発表した。主な柱は次のようなものである。1.従業員1人あたりの年間総労働時間を14年度の実績2252時間から、2019年度には1800時間に約2割削減する。2.達成のために、人員の増強、業務の削減、IT投資の強化、自動化の推進などに取り組む。3.休暇の連続取得日数の増加を行う他、週休3日制導入や給与制度の見直しを検討する。 労働環境改善に向けた、電通の「本気度」が伝わる高い目標だといえる。電通違法残業事件の初公判後、会見を終えた高橋幸美さん。手にする写真は、アメリカ旅行で撮影された娘のまつりさん=9月22日(飯田英男撮影) ただ、これらの取り組みは、プロセスと結果をみなくては評価することができない。率直に難易度の高い目標である。この高い目標に立ち向かうがゆえに、現場が疲弊してしまったり、サービス残業を助長しないようにしなくてはならない。まず、労働者が死なない職場、倒れない職場にすることは急務だが、この改革によって現場が疲弊してしまうなら本末転倒である。 もう一つ注目したい点は、電通が具体的に人材、ITに投資するということだ。70億円とも報じられる予算を投じて改革を行うのである。もし、電通の改革で成果が出たとしても、この点には注目しなくてはならない。働き方改革は常に痛みを伴う。創意工夫だけでは限界がある。このように人材やITに投資せず、創意工夫だけでなんとかなるわけではない。 「働き方改革」は、来月投開票の解散総選挙でも論点になりそうだ。ただ、これらの改革が国民丸投げプラン、人材ビジネス企業やIT企業への利益誘導の側面が垣間見られる現実も直視しなくてはならない。すでにビジネス雑誌などでは「働き方改革成功企業」なるものが欺瞞(ぎまん)に満ちていないかという疑問が渦巻いている。 電通の目標や取り組み事項は立派だが、プロセスと結果を見なくては評価できない。うがった見方をするならば、社員手帳から「鬼十則」を削除したにもかかわらず、相変わらず気合と根性の改革にも見える。「人が死ぬ会社」からは即刻変化するべきだが、電通を起点に「働き方改革疲れ」が広がらないことを祈っている。

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    電通裁判は安倍政権「働き方改革」のみせしめに過ぎない

    に労災認定が出た電通の新人女性社員の過労自死事件は、社会に大きな衝撃を与えた。当初政府が掲げていた「働き方改革」における長時間労働是正策の狙いは、もっぱら労働生産性向上など経済対策の一環としての提起ばかりであり、長時間労働是正について論じる際に本来中核に据えられるべき、命や健康の問題は脇に追いやられていた。 しかし、これを一変させたのが電通過労自死事件であった。「働き方改革」、とりわけ長時間労働に関しては、電通事件によってその意味合いが大きく変化したといえる。政府も電通事件のインパクトは無視できず、これまで経済対策としての長時間労働是正、例えば、少子化対策や女性活躍といった側面ばかりが強調されていたが、それに加えて命や健康に着目した対策が重視されるようになった。 過労死・過労自死を生むような働き方、働かされ方がこれまでにない大きな政治課題として世間の関心を呼び起こし、結果、労働基準法改正において、罰則付きの時間外労働の上限規制の導入が急ピッチで議論され、政府主導によって上限規制を含む法案要綱が諮問・答申されるに至った。電通の本社ビル=2016年12月28日、東京都港区(共同) また、政府が2年以上前に法案を提出したまま、あまり注目されずに棚ざらしとなっていた、いわゆる「残業代ゼロ法案」(高度プロフェッショナル制度導入と企画業務型裁量労働制の拡大)への社会の関心が徐々に高まっている。近時、労働組合のナショナルセンターである連合が、残業代ゼロ法案を容認したのかという問題が広く報じられ注目されたが、電通事件によって長時間労働は労働者の生命や健康の問題であることが再認識されたといって間違いないだろう。 このように電通事件は、過労死・過労自死問題のいわば象徴として、政府、財界のみならず、労働側の取り組みを含め、長時間労働の問題に関する対応について大きな影響を与えた。そんな中で、労働基準法違反により、法人としての電通自体が刑事罰を科されるという事態に至ったのである。統計上1%未満の極めてまれなケース そもそも、労働基準法には数多く刑事罰を定める規定があり、理論的には刑事罰を科しうる違反は日常的に起きている。しかし、実際に労働基準監督署が捜査をして、刑事罰が科される案件はそのうちのごく一部である。しかも、刑事罰が科されるケースであっても、一般的には刑事事件の「略式手続き」が選択されるケースが圧倒的多数である。 この「略式手続き」は、簡易裁判所が取り扱う軽微な刑事事件の場合、検察官の請求により、被疑者(本件では法人である電通)が同意している場合に限り行われるものだ。報道によれば、今回の電通事件でも検察官は通例通り略式手続きを選択しており、電通もこれに同意したはずだ。被疑者にとって、事実関係を認めている限り、略式手続きを拒否するメリットはないからだ。 しかしながら、本件では簡易裁判所が、略式手続きでの審理が「相当でない」として、正式な裁判が実施されることになったのだ。こういった事態は、司法統計上1%にも満たない、極めてまれなケースだ。 裁判所が簡易な略式手続きにより進めることを「相当でない」と判断した理由は、この電通事件が社会に与えた強い影響、大きな社会的注目を考慮したとしか考えられない。違法残業事件の初公判で東京簡裁に入る電通の山本敏博社長(左端)。起訴内容を認めた=22日(共同) そもそも、略式手続きであっても、正式な刑事罰が科されること、そして科される刑事罰の重みは全く変わらない。結果的に有罪判決になり、被告人には前科がつくからだ。ただ、事件が与えた社会的な影響力を抜きに、起訴されている事案の刑事罰の重さから考えれば、むしろ正式裁判されることが異常事態といえよう。 しかし、略式手続きではその過程が公開されることなく書面で進行してしまうので、公開の法廷で審理されない。公開の法廷で行われる場合、席数に限度があるとはいえ、誰もが希望すれば裁判手続きを傍聴することが可能となる。これが裁判の本体の在り方だが、略式手続きの場合、事件自体が人目に触れる機会は限られてしまい、社会的な注目に答えるためにはふさわしくない。 分かりやすい例で言えば、テレビや新聞などで報道される刑事裁判の様子(人物画などで描かれるもの)は、全て公開の法廷で行われている正式審理された刑事事件だ。被告人の様子や事件に対する反省の言葉がきちんと報道されるのは、公開裁判で審理されたからに他ならない。裁判所の画期的な判断 電通事件においても、ここで問われている刑事罰の中身などは、検察官が法廷で朗読する起訴状や、冒頭陳述でも明らかになる。出頭した電通の社長自らが、大きな社会的注目を集め、経営トップとして公開の法廷で証言をする機会が与えられたのは、電通に対して改めてこの事件を風化させず、真摯(しんし)に企業体質を含めた再発防止を問いかけるという、重大な意味がある。 裁判所は、これまで電通事件が社会に与えた強烈なインパクトを考慮して、刑事手続きの場面でも略式手続きではなく、広く世間に開かれた公開の法廷で審理し、判決を言い渡すべきと判断したと考えられる。一言で言えば、電通事件の社会的なインパクトをきちんとくみ取った、画期的な判断といえるだろう。 また、電通事件について考える上で重要なのは、残念ながらこれが過労死・過労自死で命が奪われるケースの氷山の一角に過ぎないということだ。2014年6月20日に過労死等防止対策推進法が成立したものの、過労死・過労自死は一向になくなっていない。電通違法残業事件の初公判後、会見の冒頭で頭を下げる電通の山本敏博社長=22日午後、東京都(飯田英男撮影) 日本を代表する大企業で、過労自死が繰り返されてしまったことなどから、大きな社会的注目を集めた電通事件であるが、本件以外にも数多くの過労自死が存在するのは厳然たる事実だ。実際に脳心臓疾患・自死を合わせると、平成28年度も約200件の労災認定がなされており、証拠がなく申請や認定されなかったものの実際は認定されるべきであったケースは膨大に存在する。 だからこそ、電通には、なぜ長時間労働による過労自死が起きてしまったのか、長時間労働を本当に防ぐためには何が必要か、労働時間記録を徹底するにはどうするべきか、パワハラ対策などを含む自殺予防措置はどうするべきか、企業風土を含めた働かせ方への反省、クライアントとの関係など、さまざまな視点から今回の事件と真摯に向き合ってもらいたい。 日本を代表する大企業が引き起こした過労自死事件について、被告人として電通が真摯に労務管理の在り方、労働者の働かせ方を見つめ直し、改善をする姿を世間に伝えることは、過労死・過労自死根絶に向けて、社会を変える大きな原動力になるはずだ。正式裁判を選択した裁判所は、この点を期待したのだろうし、私もこれを願ってやまない。

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    「電通ブラック批判」急先鋒の朝日新聞がブーメランで沈黙

     大手広告代理店・電通の女性新入社員が過重労働で自殺した問題は、2016年9月に労災が認定され、11月には厚生労働省が家宅捜索に入るという事態となった。これまで広告代理店の不祥事には及び腰と言われた大手メディアも一斉にこれを取り上げたが、中でも急先鋒となったのが朝日新聞だった。 「朝日は労働問題には定評がある。とくに今回は亡くなった女性が学生時代に『週刊朝日』でアルバイトをしていたこともあり、深く追及した」(朝日関係者) 10月12日付の「社説」では〈形式的で不十分な労働時間の把握、残業は当然という職場の空気……。企業体質の抜本的な改善が必要だろう〉と厳しく指摘。家宅捜索のあった翌日の11月8日朝刊は、1面トップ、天声人語、さらに2面でも図表入りで解説する力の入れようだった。 ところが、である。その1か月後の12月6日、朝日新聞東京本社が社員に長時間労働をさせていたとして、中央労働基準監督署(労基署)から是正勧告を受けたのである。 財務部門の20代男性社員が2016年3月、法で定められた残業時間を4時間20分超過していたと労基署は指摘。編集部門の管理職が部下の申告した出退勤時間を短く改ざんしていたことも判明した。さらに12月15日、社内調査の結果、他にも5人の社員が労使協定の上限を超える残業をしていたことが分かったと発表した。 紙面で労働問題を意欲的に取り上げている最中という“ブーメラン”だが、この最も身近な労働問題に関する報道は切れ味が鈍かった。朝日がまさかの「特オチ」 是正勧告についてはインターネットメディア『バズフィードジャパン』を始め、毎日、産経、日経などが相次いで報じたが、真っ先に情報を入手していたはずの朝日新聞はまさかの“特オチ”。各メディアの報道が出た翌日になってから「労基署、本社に是正勧告」とわずか240文字の小さなベタ記事を載せただけだった。 その後も、電通事件については14日に「過労死の四半世紀」と題した記事をオピニオン欄を全面使って展開している一方で、その翌日に発表した追加の社内調査結果については、またしても小さなベタ記事なのである。 この落差には朝日社内でも疑問の声があがった。本誌が入手した朝日労組が実施した組合員アンケートの回答には、〈電通以上のブラック企業だ〉〈電通問題を胸を張って追及できなくなった〉〈本来であれば会社が率先して外部公表する内容の事案だ〉といった辛辣な言葉が並んでいる。 朝日は報道が遅れたことについて、「是正勧告について社内で検討し、10日付朝刊の掲載に至りました」(広報部)とした上で、「弊社は現在、ワーク・ライフ・バランスの推進を重要な経営課題として掲げ、時短に取り組んでおり、今回、長時間労働について是正勧告を受けたことを重く受け止めています。再発防止に努めるとともに、引き続き、時短を一層推進していきます」(同前)と回答した。 これを“天ツバ”と言う。関連記事■ ABCマートを送検した労働Gメン ブラック企業の摘発は進むか■ AIの発達によって日本でもBIが必要になるのか■ ヤマト運輸役員「サービス残業の黙認は会社にとってリスク」■ ブラック企業、非正規雇用等 労働問題をエヴァから語る本■ “派遣の規制” 審議したのは現場の声代弁せぬ経営者や学者ら

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    電通より長時間労働もある医療界 患者の感謝が心の支え

     過重労働が社会問題としてたびたび取り上げられているが、政府が唱える「働き方改革」が、働く人にとって有益なものとなっている気配はない。それどころか、経済界からの意見に押されて、強く規制することをためらう内容になっている。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、これから、どんな働き方を目指すべきなのかについて考察する。* * * 2015年のクリスマス、電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)が女子寮4階から飛び降り自殺した。彼女は、月100時間以上の残業を日常的に行なっていたことが問題となった。 生前のツイッターから過酷な働きぶりがうかがえる。自殺の2か月前には「体が震えるよ……しぬ」、1か月前には「がんばれると思ってたのに予想外に早くつぶれてしまって自己嫌悪だな」などと投稿していた。 東京大学卒の頑張り屋。深夜帰宅が続き、「睡眠時間2時間」という日もあった。高橋さんの自殺は過重労働のためだったと労災認定された。電通は夜10時に消灯し、深夜の残業を防止。しかし、カフェで仕事をしたり、早朝出勤したりするなど長時間労働の実態は変わっていないという指摘もある。 それにしても、1か月100時間以上の残業時間というのは尋常ではない。医療界はもっとひどい。20代の勤務医の労働時間は、平均週55時間。これに、当直や待機の時間が週12時間加わる。これを1か月に換算すると120時間を超える時間外労働をしていることになる。こんな「ブラック」な状況下で、日本の医師は患者さんの命を預かっている。それでも、何とか続けられているのは、医師としての使命感や、自分が成長するプロセスを実感できるからだろう。患者さんが元気になり、「ありがとう」と感謝されることも、心の支えになっている。 諏訪中央病院に医師が集まるのは、地方の中小病院なのに100名の医師がいて、他院より余裕が少しあるためかもしれない。高橋まつりさんのツイッターで長時間労働以上に気になるのは、上司から言われた言葉の数々だ。「君の残業時間の20時間は、会社にとって無駄」「今の業務量でつらいのはキャパがなさ過ぎる」働きすぎるとどうなるか? 新入社員の彼女の仕事ぶりは未熟なことが多かったのかもしれないが、もっと長い目で彼女を見て、仕事の一部でも評価してあげていたら、こんなことにはならなかったのではないだろうか。 いや、すでにそのレベルは超えてしまっているのかもしれない。どんなに優秀な人でも、やる気のある人でも、十分に眠れない、休めない、自分の仕事に意味を見出せないという状況下では、遅かれ早かれ擦り切れてしまう。 イギリスの医学雑誌「ランセット」に一昨年、興味深い研究論文が発表された。脳卒中になったことがない約52万9000人を、平均7.2年経過を追った結果、働く時間が長いほど脳卒中の危険性が高くなることがわかった。週55時間以上働く人は、週35~40時間働く人に比べて、脳卒中のリスクは1.33倍に増える。高血圧や糖尿病、食習慣だけではなく、労働時間も脳卒中を引き起こす要因になっているということだ。 日本の法定労働時間は、原則1日8時間、週40時間と決められている。法定労働時間を超える場合は、36協定で残業時間の上限を「月45時間、年360時間以内」と規定されているが、罰則付きのぎりぎりの特例として「月平均60時間、年720時間」という規定も設けられた。 長時間働くことは、脳卒中やうつ病、過労死など、健康に害を及ぼすリスクがあることを、もっと重く受け止める必要がある。 国をあげて働き方改革が議論されているが、雇用者側に立った「働かせ改革」ではなく、働く人の健康や生き方を大切にするような「生き方改革」を進めていってもらいたい。●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。近著に、『遊行を生きる』『検査なんか嫌いだ』関連記事■ 音楽家が原発労働者を訪ね歩いて知られざる現実を記したルポ■ 福島原発作業員 平均約12時間拘束で日当は2~4万円■ 高齢化が進み生活保護受給者が増えたドヤ街の現状を描いた本■ 戦時徴用は強制労働は嘘 1000名の募集に7000人殺到していた■ 44の職業に就く女性の給与明細・残業時間・長短を紹介した書

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    「残業代ゼロ法案」は世界基準の働き方の第一歩である

    を支払う制度は、労働者が1時間余分に働けば、それに見合った量の製品が生産される集団的な工場労働などの働き方について合理的な仕組みである。他方で、個人単位の働き方であるプロジェクトの企画や研究者などの高度専門的な業務では、机の前に1時間座っていても何も生み出さない場合もある。労働時間の長さよりも仕事のアウトップット(成果)の質が重要である。 高度の専門職については、長時間働いても成果の上がらない者よりも、短時間で高い成果を上げる者の方が高い報酬を得ることが公平である。このため独立的に働く高度専門職について、時間に比例した残業手当を除外する仕組みが、欧米では一般に活用されている。 他方で、この成果に応じて賃金を決定する仕組みでは、過剰な仕事量を求める使用者や、自ら長時間労働で生産性の低さを補おうとする労働者もあり得る。このため残業時間に上限を課す一般労働者と同様に、一定日数の休業を使用者に義務付けることで「健康確保措置」を図っている。このどこが「過労死法案」なのだろうか。なぜか無視される「休み方規制」 日本でも特定の専門職について、実際に働いた時間の長さではなく、所定の時間を働いたとみなす「裁量労働制」がある。これには専門的な職種の「専門業務型」と、経営の中枢部門で企画・立案・調査・分析業務に従事する労働者を対象とした「企画業務型」がある。 これらは本来、成果に基づき賃金が支払われ、働く時間を自由に選べる職種であるが、欧米と異なり「深夜・休日労働には割増残業代の支払義務」が定められている。これでは同じ業務内容でも、早朝から夕方まで働く場合と、午後から深夜まで働く場合とで賃金に大きな差が生じるなどの不公平が生じる。 このため、時間にとらわれず働く新聞記者やテレビのディレクターなどは、あらかじめ定額の残業代を受け取り、個別に請求しない働き方が一般的である。これが働く現場では合理的な対応であるが、それは現行法上では違法になる。これが現場の働き方に対応して法改正が必要なひとつの理由である。  2000年代初めに、電機大手などの労働組合でつくる電機連合が会社との交渉で作り上げた新裁量労働制は、自らの裁量で働き、時間の空いたときには少しでも長く休むことが容易になるように、労働時間と切り離された定額の「裁量手当(本給・調整給の約3割が相場)」を定めた。この先進的な労働組合の主導で作り上げた仕組みを、形式的な労働基準法違反として摘発した、当時の近視眼的な労働基準監督行政が悔やまれる。 労働時間と報酬との関係を断ち切った、欧米並みの裁量労働制である「高度プロフェッショナル制度」を含む労働基準法改正案が2015年に国会に提出された。ここで対象となる高度専門職とは、工場労働のように、働く時間とそれ以外の時間の境界線が明確ではなく、例えば「風呂のなかでもアイデアを考える」働き方である。その場合に、「労働時間」の線引きが困難なため、逆に休業時間の下限を定める「休み方規制」で過剰な働き方の防止を図っている。これが「年間104日の休業日数(週休2日制に相当)」を与えることへの使用者の義務付けである。 これは社員がひとつのプロジェクトに集中して働いた後は、必ず連続して休暇を取ることを促し、疲労を蓄積させないことを法律で担保する仕組みである。この画期的な休業規制強化は、実は小泉純一郎内閣時の「ホワイトカラー・エグゼンプション(適用除外)」法案の大きな柱であったが、なぜか全く無視されていた。4月24日、首相官邸での会談で安倍首相(右)と握手する連合の神津里季生会長 今回の労働基準法改正の政府原案にも、この年間104日の休業規制が盛り込まれていたが、労働政策審議会での経営側との中途半端な妥協の結果、終業から始業までに一定の時間を空ける「インターバル規制」などと同じ、企業のとるべき選択肢のひとつに格下げされてしまった。連合の神津里季生(こうづりきお)会長は、安倍晋三首相とのトップ会談で、この年間104日の休業規制を、企業の選択肢のひとつではなく「例外なき義務付け」に昇格させるように修正を求めた。神津会長の主張はそれに加えて、他の休業規制の選択肢も上乗せで要求した正当なものであった。これは連合の修正要求の取り下げ後も、政府側はそのまま尊重するとしている。連合「修正提案」に労働側から批判のナゼ では、連合の建設的な修正提案に対して、労政審での合意をほごにされた経営側ではなく、逆に労働側からの批判が大きく、結果的に取り下げになったのはなぜだろうか。これには以下の3つの要因が考えられる。労働基準法改正案を巡り連合に抗議する市民=7月19日、東京都千代田区の連合本部前 第1に、この高度プロフェッショナル法案の対象者は、管理職手当と同様に定額の「裁量手当」を受け取るだけになり、少しでも多くの残業代を稼ぐために長時間残業したい労働者にとっては「残業代ゼロ」となる。他方で、残業代を増やすよりも、自由な時間を望む多くの労働者には、休業日が確実に増えることの方がより重要である。後者の利益を重視した神津会長の提案に対して、前者の利益を反映した反対論が強かったのだろうか。 第2に、「残業代がなくなると企業は際限なく仕事量を押し付ける」という懸念がある。使用者は残業代がなくなると、労働者の睡眠時間も削って働かせるというのだろうか。しかし、仕事の成果が重要な高度専門職にそうした働き方を強いれば、結果的に仕事の質が低下し企業の損になることは明らかである。もっとも、そうした合理的な思考ができない管理職もいることから、その防波堤として休業規制がある。これは一般労働者の残業時間の上限と共通した規制強化であり、「上限規制には賛成して休業規制には反対」というのは論理矛盾である。 第3に、こうした前例のない休業規制は実効性を欠くというものである。しかし、これは従来の残業代による規制がどれだけ実効性があったかとの相対的な問題である。もっとも、従来の未払い残業代請求に比べて、休業日数不足への損害賠償の訴訟手続きが、より面倒になることへの反発があるのかもしれない。 また、労働組合のない中小企業では、使用者の無理な要求にも労働者が対応せざるを得ないといわれる。しかし、企業規模別の残業時間を比較すると、雇用の流動性の高い中小企業よりも、むしろ組合組織率が高く、賃金に比例した残業代の多い大企業ほど、残業規制を免れる特別協定を多く締結しており、長時間労働者の比率も高い傾向がある(表)。 いずれにしても労働基準監督署の規制の実効性を確保することが大きな課題である。裁量労働制に対する批判も、入社直後の社員がその対象とさせられる等の違反行為に集中している。しかし、明らかな法令違反の放置は、法律の責任ではなく監督行政の問題である。日本の監督官の数は欧米に比べて著しく不足しており、今後、監督官の大幅な人員増や民間委託の活用などで対応すべき問題である。104日「休み方規制」に3つの意義8月30日、労働政策審議会分科会の終了後、厚労省前で開かれた連合の報告集会 もっとも、政府の規制だけで長時間労働を根絶することはできない。雇用の流動性の高い米国の労働市場では、慢性的な長時間労働を強いるような企業からの労働者の退出の自由度が大きいことが防波堤となる。大企業の残業時間が平均的に長いことは、仮に退職すれば賃金水準が大幅に低下するために「辞める自由度」が低いことが挙げられる。 このため日本の高度プロフェッショナル制度では、その対象者を企業との交渉力が大きいとみられる年収1075万円以上の著しく高い所得水準の労働者に限定している。もっとも、職種だけでなく極端に高い給与水準を設定したことには問題がある。これは国税庁「民間給与実態調査(平成27年分)」の給与所得者では全体の4.3%に過ぎず、管理職を除けば、金融分野の専門職など、ごく少数にとどまる。これでは、真に休業日数を確保したい多くの共働き世帯は対象外になってしまう。 今後、少子化の進展で労働力が減少することは、労働者にとっての「売り手市場」を意味する。日本では雇用の流動化に対して「クビ切りの自由化」という否定的なイメージが強いが、それは労働者にとっても「労働条件の悪い企業からの脱出」を容易にすることでもある。過大な残業是正のためには、「雇用保障のために生活を犠牲にする」現行の働き方ではなく、「働き方の質の高い企業に移る」労働者の選択肢を増やすことが基本となる。労働時間制度の改革は、労働市場の流動化を促す「同一労働同一賃金」など、他の制度改革と一体的に行うことで、大きな相乗効果を持つといえる。 高度プロフェッショナル制度に、104日の「休み方規制」を導入したことには大きな意義がある。 第1に、これまでの日本企業では、長期雇用と年功賃金さえ保障すれば、長時間労働や頻繁な配置転換・転勤を甘受せざるを得ないという暗黙の契約があった。この裁量性の大きな人事部の権限を政府の104日の強制休業という強力な介入で修正することは、職種・地域の限定正社員という働き方を制限する、他の改革にも結び付くといえる。 第2は、出来高払いの残業代を死守したい労働者と、カネよりも休日の増加を求める労働者との利害対立である。これは時間の制約なしに働ける専業主婦付き世帯主と、時間の制約の大きな共働き世帯との対立と重なる面が大きい。この点で、カネよりも休業規制を重視した神津会長提案の意義は、依然として大きい。 第3に、職務概念の乏しい日本の働き方の下で、欧米流の仕組みを導入しても混乱を生むだけという批判は当たらない。現行の無限定な働き方は過去の高成長期の産物であり、今後の低成長期には、一定の仕事に見合った報酬を受け取る働き方への転換が必要だ。今回の休業規制を含む労働基準法の改革は、世界標準の働き方への第一歩といえる。

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    「1日24時間労働も可能になる」残業代ゼロ法案はここがおかしい

    佐々木亮(弁護士) 「残業代ゼロ法案」と呼ばれる法案がある。この法案の枕詞として、多くのメディアがつける言葉がある。それは「働いた時間ではなく成果で評価する制度」である。短く「成果型労働」、または「成果型賃金」という場合もある。 そして、賛成論者も、残業代ゼロ法案の中の「高度プロフェッショナル制度」(高プロ制度)について、成果型賃金になることを前提に論じ、私のような法案反対派を「経済の分かってないやつ」的な扱いをする。厚生労働省などの入る中央合同庁舎5号館=東京・霞が関(撮影・桐原正道) しかし、この法案の高プロ制度に関する条文を目を皿のようにして読んでも、どこにも「働いた時間ではなく成果で評価する制度」の導入を義務付ける条文はない。もっといえば、賃金制度には一切言及していないのである。にもかかわらず、多くの賛成論者は、それが前提となっているかのように論じる。私からすれば、そういう論者にはぜひ条文をお読みくださいと言いたい。 この法案が国会に上程される数年前、私はあるBS放送の番組に出て、某エライ学者の方と論争をしたことがある。その際、その学者の先生が掲げたフリップで、本法案のメリットというものが3つほど記載されていた。それは次の通りである。① 労働時間の上限が初めてできた② 残業代を稼ぐためにダラダラと働く必要がない③ 女性・若者・高齢者が活躍しやすくなる 私はこれを見て、思わず笑ってしまったのであるが、まず、①は嘘である。高プロ制度には、一応「健康確保措置」というものがあり、3つのうちから1つを選択すればよいとされている。その3つとは、以下のものである。① 労働者に24時間について継続した一定の時間以上の休息時間を与えるものとし、かつ、1か月について深夜業は一定の回数以内とすること②健康管理時間が1か月又は3か月について一定の時間を超えないこととすること③4週間を通じ4日以上かつ1年間を通じ104日以上の休日を与えることとすること この3つから1つ取れば、あとは規制がない。おそらく、学者の先生が言いたいのは、この②であると思われる。しかし、②を選択する義務は企業にはない。したがって「労働時間の上限が初めてできた」というのはミスリードであり、嘘である。ちなみに、1つ選択すればいいだけなので、どういうことが可能になるかというと、たとえば、③を選択して1日24時間働かせることもできるし、①を選択して1年360日働かせることもできるわけである。ダラダラ残業が過労死の原因ではない 次に「ダラダラ残業」であるが、これは都市伝説のようなものである。いや、全くないとは言わないが、これが長時間労働の原因とするのは無理がある。我が国において、過労死・過労自死、過労による精神疾患が増えているのは周知のとおりであるが、彼らはダラダラ残業をしたから死んでしまったり、病気になったりしたのだろうか。 そうではない。たとえば、最近の調査(平成28年版過労死等防止対策白書『2015年委託調査』)では、残業が生じる原因として、次の結果が出ている。企業調査1位 顧客(消費者)からの不規則な要望に対応する必要があるため 44・5%2位 業務量が多いため 43・3%3位 仕事の繁閑の差が大きいため39・6%4位 人員が不足しているため 30・6%労働者調査(正社員フルタイム)1位 人員が足りないため(仕事量が多いため)41・3%2位 予定外の仕事が突発的に発生するため 32・2%3位 業務の繁閑が激しいため 30・6%4位 仕事の締切や納期が短いため 17・1%※ 残業手当を増やしたいため 2・2% これによれば、残業が発生するメカニズムはダラダラ残業が原因ではない。ちなみに、推進論者が使うデータとして、次のデータがある。エンジニア情報サイト「fabcross for エンジニア」が今年3月2日に公表した、会社員・公務員1万145人を対象にした「残業に関するアンケート」である。このアンケートは、残業をする主要な要因を4つ挙げ、それぞれ「非常にあてはまる」「やや当てはまる」「どちらとも言えない」「あまり当てはまらない」「まったく当てはまらない」を回答させるものである。そして、4つの選択肢は次のとおりである。・残業する主な要因は、上司からの指示だ・残業する主な要因は、担当業務でより多くの成果を出したいからだ・残業する主な要因は、自分の能力不足によるものだ・残業する主な要因は、残業費をもらって生活費を増やしたいからだ このうち最後の「残業費をもらって生活費を増やしたいからだ」の「非常にあてはまる」「やや当てはまる」の合計が34・6%で、他の3つよりも多く1位だったようで、それが一部のネットメディアで報じられた。これがダラダラ残業が長時間労働の原因だとする論者の拠り所となっているようである。※画像はイメージ しかし、このアンケートをよく見ると「あまり当てはまらない」「まったく当てはまらない」も「残業費をもらって生活費を増やしたいからだ」が34・7%で4つのうちで1位なのである。また、このアンケートをしたサイトに行ってその詳細を見ると、残業時間が長い層ほど「残業費をもらって生活費を増やしたいからだ」について「当てはまらない」が増える傾向にあり、「71~100時間」の層では「あまり当てはまらない」「まったく当てはまらない」の合計が6割ほどとなっている(ただし、101時間以上の層の合計は約40%)。 なお、私がこのアンケートで疑問に思うのは、他の調査では1位になる「業務量が多い」という項目が抜けている点である。もしこの「残業する主な要因は、仕事量が多いため」という項目があったらどうだっただろうか。その意味で、選択肢にやや疑問があるといえる(当たり前過ぎて、外したのだろうか?)。いずれにしても、このアンケート結果では、ダラダラ残業が長時間労働の要因であるとは言えないであろう。推進論者の印象操作 学者の先生が掲げた最後の「③女性・若者・高齢者が活躍しやすくなる」については、おそらく高プロにより男性の長時間労働が是正されることを前提にしているものと思われる。私も、長時間労働の是正が社会にとって必要であるという点は異論はない。しかし、高プロ制度は残業代を払わないようになるところが一番の「売り」の制度である。冒頭で述べたとおり「成果で評価する」ことは、この法案とは無関係なのである。 よく推進論者が高プロ制度のいいところとして強調する「仕事が終わった労働者は早く帰れる」という点であるが、これは、今でもできる。すなわち、仕事が終わった労働者が所定の終業時刻より早く帰っても成果さえ上がっていれば高く評価をする、このことは現行法で誰も禁じていないのである。 したがって、すぐにでもそうした制度を導入することは可能なのである。そうすると、高プロ制度の導入と、労働者が早く帰れるようになるということには、全く因果関係がないことが分かる。多くの推進論者がメリットとして掲げる「労働者が早く帰れるようになる」とは、単なる「印象操作」に過ぎないのである。 逆に現在規制されているのは、残業した場合に残業代を払う、という点である。ところが、高プロ制度では、この規制から企業は解放される。高プロ制度は、実際はここがメインである。にもかかわらず、政府はメディアを通して「働いた時間ではなく成果で評価する制度」などと宣伝させているのであるが、失当というほかない。生産性向上を目指す官民協議会の初会合に出席した(左から)安倍首相、経団連の榊原定征会長、連合の神津里季生会長=5月24日、首相官邸 この法案は、秋の国会で最重要法案として出てくるという。その際、他の制度(均衡待遇や労働時間の量的規制)と一括りにして「残業代ゼロ」法案とういことが分かりにくい形にするようであるが、本来、性格の違う制度を一括審議にするのは丁寧な議論の妨げになる。労働法制は多くの労働者に影響があるのであるから、安易な一括審議をすることなく、しっかりと分けて、丁寧に議論されることを願いたい。

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    「残業代ゼロ法案」にモノ申す

    専門職で年収の高い人を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」と、残業時間の罰則付き上限規制を一本化した労働基準法改正案が秋の臨時国会に提出される見通しとなった。それにしてもこの法案、「過労死法案」やら「残業代ゼロ法案」などと悪評がつきまとうが、それは本当なのか。議論の本質を読む。

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    教師のブラック労働をみれば「過労死促進法案」の本質がよく分かる

    佐久間大輔(弁護士) 「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)」は、政府が2015年の通常国会に提出した労働基準法改正案に含まれています。この制度では、年収要件と職務要件を満たす労働者は、労働時間、休憩、休日および深夜の割増賃金に関する規定が適用されなくなります。そのため、労働組合や過労死の遺族などからは「残業代ゼロ法案」とか、「過労死促進法案」と批判されています。厚生労働省前で「残業代ゼロより過労死ゼロを」とシュプレヒコールをあげる労働組合関係者たち=2015年1月16日(小島清利撮影) それでは、高度プロフェッショナル制度に当てはまるのはどのような労働者なのでしょうか。2つの要件について説明します。 まず、年収要件は、改正案では年間平均給与額の3倍の額を相当程度上回る水準と定められており、これは年収1000万円以上が想定されています。 職務要件は、高度に専門的な知識が必要とされ、その職務の性質上、労働に従事した時間とその成果との関連性が高くないと認められる業務をいいます。例えば、金融商品の開発・ディーリング業務、企業・市場等の高度なアナリスト業務、事業・業務の企画運営に関する高度なコンサルタント業務、研究開発業務等が想定されています。 労働時間規制が適用除外されてしまうと長時間労働になり得るので、企業側はこれを防止するために健康・福祉確保措置(セーフティーネット)をとることが求められます。 改正案では、下記3つのいずれかを労使委員会で決議することになっています。① 休息時間(勤務間インターバル)と1カ月における深夜労働の回数制限② 1カ月または3カ月における健康管理時間の上限設定③ 4週間を通じ4日以上かつ1年間を通じ104日以上の休日 ③が選択されることが多いと想定されますが、そうであれば1年間の労働日は261日(うるう年は262日)となり、極論すると「1日24時間働いても良い」のですから、年間6264時間働くことが可能となります。これではセーフティーネット足り得ないですし、そもそも「規制を撤廃するのならば長時間労働防止策を講じなければならない」という制度そのものが本末転倒です。 事実、労働政策研究・研修機構「仕事特性・個人特性と労働時間(労働政策研究報告書No.128)」(2011年)によれば、通常の勤務時間制度で働いている非管理職のうち月間のサービス残業時間が60時間を越える者の割合は5・5%であるのに対し、裁量労働制の非管理職は19・7%、時間管理のない管理職は25・2%です。また、時間で見ると、通常の勤務時間制度で働いている非管理職の月間サービス残業時間平均は12・2時間であるのに対し、裁量労働制の非管理職は32・5時間、時間管理のない管理職は36・2時間となっています。顕著なのは「あの職業」自殺した東京都の西東京市立小学校勤務の新任女性教員が自殺の1週間前に母親へ送ったメール=2007年12月(滝口亜希撮影) このように労働時間規制が緩和または適用除外されれば長時間労働に陥る実態があり、高度プロフェッショナル制度でも危惧されています。 実はこの危惧は、学校教員の労働実態を見ると現実的であることが分かります。学校教員は「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」により、割増賃金の規定が適用除外とされる代わりに、時間外労働や休日労働が禁止されています。仕事の性質上、自分の裁量で業務の遂行手段や時間配分をある程度決定できるものの、近時は部活動の指導を中心に長時間労働に従事しているのが実態であり、このことが社会問題となっています。 もし、アメリカで行われている同様の制度「ホワイトカラー・エグゼンプション」のように、職務の範囲を特定した職務記述書が作成され、さらに限定された職務以外の業務は、たとえ同僚が残業していても退勤できる風土があれば、長時間労働にならないかもしれません。 しかし、日本のように職場集団レベルである部課単位では職務の範囲が決まっているものの、労働者個人レベルでは特定されていないという風土のもとでは、職務要件はどうなるのでしょうか。想定されるのは、改正案が求める個別合意書が作成されても、多数の職務を列挙された挙げ句、「その他上記職務に関連する一切の業務」という文言が入ることです。職務の範囲が無制限となれば、長時間労働を誘発することになるでしょう。  このような環境で長時間労働に従事すれば、過労死が発生することは自明です。学校教員が過労死をして公務災害に該当した裁判例や認定例は枚挙に暇がありません。また、厚生労働省の調査によれば、高度プロフェッショナル制度の対象業務に類似する専門業務型裁量労働制の対象労働者が2011年度から2016年度までに労災認定を受けた件数は、脳・心臓疾患が21件、精神障害が37件に上っています。高度プロフェッショナル制度においても過労死が発生することが強く懸念されます。その意味で「過労死促進法案」と批判されることは当を得ているでしょう。仕事と健康どっちが大事? 時間ではなく成果で賃金を決める方が創造的な仕事ができるというのは一つの考え方かもしれません。しかし、健康に働けなければ創造的な仕事もすることはできません。健康に働くためには、疲労を蓄積しないこと、そのために身体を休めること、具体的には早めに寝ることです。寝ないと翌日仕事の効率が落ちますし、免疫力が落ちて大病になる可能性が高くなります。逆に労働時間を抑えてきちんと休み、前日の疲労を取ってから翌朝定時に出勤した方が効率的に仕事をすることができますし、免疫力を高めて風邪も引かずに働くことができます。これは誰もが経験済みのことです。高橋まつりさんの遺影と母親の幸美さん=2016年10月7日、東京・霞が関(天野健作撮影) この経験則に反し、健康リスクを生じさせるのが長時間労働です。長時間労働による睡眠不足と疲労蓄積が、高血圧症や動脈硬化症、うつ病などのストレス関連疾患を招きます。 文部科学省の「平成27年度公立学校教職員の人事行政状況調査」の結果によれば、教育職員のうち精神疾患による病気休職者数は5009人で、2007年度以降5000人前後で高止まりしています。 メンタルヘルス不調になると、労働者本人の業務遂行能力が低下するだけでなく、休職や退職に至るケースが多いです。「企業における従業員のメンタルヘルスの状況と企業業績」では、「メンタルヘルス休職者が増えると、2年程度で企業の利益率に悪影響が生じることが示唆される」と指摘していますが、不調者が出ればその分同僚の誰かが穴埋めをしなけければならず、結果として職場全体の労働力が低下し、それが売り上げ減少となって目に見えるまでに2年ほどかかるということです。これでは企業にとってもメリットがありません。 本制度の企業側のメリットとしては、労働時間の把握をしなくて良いという点が挙げられます。しかし、改正案では、労働者が事業場内にいた時間と事業場外において労働した時間との合計時間を「健康管理時間」として把握しなければなりません。今回の制度と併せて、「健康管理時間が1週間当たり40時間を超えた場合の超過時間が1カ月当たり100時間を超えた労働者は一律に医師との面接指導の対象となり、企業側がその面接指導義務に違反した場合は罰則の対象となる」よう労働安全衛生法が改正されます。 一般の労働者については、改正後の法定外労働時間の基準が80時間超ですが、疲労の蓄積や本人の申し出が面接指導の要件とされており、実施が罰則をもって強制されていないので、高度プロフェッショナル制度に関して、労働基準法では規制を緩和しつつ、労働安全衛生法では規制を強化するともいえます。過労死の立証が困難に 高度プロフェッショナル制度の対象労働者には労働契約法5条の安全配慮義務を履行しなくてもよいというわけではないので、結果として企業は自宅持ち帰り残業も含めた「健康管理時間」を把握した上で、業務量の調整をするなどして長時間労働を防止する措置を講じなければならないのです。 他方、労働者の側から見ると、事業場外にいた時間は休憩時間や不活動時間も含まれた拘束時間に近いものとなり、さらに自己申告した事業場外労働時間が疲労蓄積の要因となる労働時間と認定されない可能性があり、実働時間の証拠が乏しくなって、立証が困難となるおそれがあります。 このように見てくると、高度プロフェッショナル制度が労使双方にとってメリットがあるとは認められません。 しかも、労働者が深夜労働の対価である割増賃金すらも奪われながら深夜まで働くことを余儀なくされ、これにより健康を害するだけでなく、家事や育児、介護がおろそかになる事態が発生するのであれば、これは「反ワーク・ライフ・バランス法案」ともいえます。 高度プロフェッショナル制度を導入しなくても、労働者がプライベートに費やす時間を生み出すためのタイムマネジメント上の工夫を促すことで、労働生産性の向上につながります。プライベートを充実させることによって、私生活から得られたものが気づきとなり、新たな商品やサービスのアイデアが浮かび、仕事に好影響を与えることもあるでしょう。 これまで幾度も労働時間規制が緩和されてきましたが、国際的に見て日本の労働生産性は向上したのでしょうか。労働時間規制を緩和すれば、成果が上がったり、労働時間が減ったりすることは何ら証明されていません。「制度の使い勝手が悪かった」というのは言い訳にしかならないでしょう。むしろ労使双方が適度な緊張感を持ちつつ協力し合い、労働時間を減らして健康な状態で働くことができる職場環境へと改善していく努力が必要です。これを地道に実行することにより、労働者個人レベルの成果が上がり、職場集団レベル、ひいては企業組織レベルの生産性も向上していくと思われます。

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    政府が上から目線で罰則付き残業規制をするのは的外れ

     政府は「働き方改革」の目玉として、長時間労働を是正するために残業時間を制限する罰則付きの労働基準法改正案を検討している。経営コンサルタントの大前研一氏に言わせれば、仕事には「定型業務」と「非定型業務」があり、時間ではなく成果で図る仕事である「非定型業務」は残業規制の対象として適していないという。この政府の「働き方改革」が、いったいどのような意味を持つのか、大前氏が解説する。* * * かつて、ナイキの創業者フィル・ナイト氏は、こう述べていた。「よく『レストランを開きたい』と言う人がいる。しかし、厨房で1日23時間働く覚悟がなければ、やめたほうがいい」 私自身も、マッキンゼーに入社してからの数年間は自宅で夕食をとったのが週末も含めて年に数回だけという状態だった。しかし、若い時はその仕事を覚えたい、インパクトの出せる人間になりたい、とアンビション(野望)を持って夜も寝ずに働くことも貴重な経験になる。そういう人間がいなければ、日本はただの“受命拝命”専門の労働者の集団になってしまう。DeNA創業者の南場智子会長 たとえば、マッキンゼー時代の部下でDeNA(ディー・エヌ・エー)創業者の南場智子さんは、毎日午前3~4時まで残業し、寝る間も惜しんで働いていた、と語っている。経営コンサルタントの仕事は典型的な非定型業務だから評価は時間の関数ではないし、ましてや残業代は出ない。そういうきつい仕事を経験しながら成果を出してきたから、南場さんは起業しても成功したのである。 私が起業家養成学校「アタッカーズ・ビジネススクール」を20年間にわたって運営してきた経験から言えば、起業してしばらくは睡眠時間2~3時間が当たり前だ。事務所や店で寝袋で寝て、昼も夜も土日もなく働く。事業計画の策定も銀行に提出する資料の作成も営業も雑巾がけも、すべて自分でやる。そうした状況が最初の何年かは続くのだ。 それに文句を言ったり、へこたれたりする人間には、そもそも起業はできない。なぜなら、仕事のプロである起業家および社内起業家というのは、他人から命じられた仕事ではなく、自分が自分に命じた仕事をするからだ。つまり、会社の使用人ではなく、自分自身の成功──言い換えれば「プロフィット・シェアリング」(会社の業績に応じた利益配分)を夢見て働くのがプロフェッショナルという職種なのだ。 ホワイトカラー・エグゼンプションの議論で(使用人の象徴である)年収を指標に使ったのは、この点からも全く間違っている。 ビジネスは、商品やサービスを創造して新しい価値を生み出した人間(およびその集団)が勝つ。その新しい価値を生む人間にはいくら給料を払ってもかまわないし、何時間働いたかは全く関係ない。そういう貴重な人材を1人でも多く採用するのが、経営者の最も重要な役目である。 それを政府が“上から目線”で「残業の上限は最大で月60時間・年720時間」「違反したらペナルティ」「年収1075万円以上は例外」などと規制するのは、的外れもいいところだ。この規制を悪用して虚偽の長時間残業をさせられたと訴訟を起こす輩が出てくるかもしれないし、逆にサービス残業が増えるおそれもあるからだ。また、残業が少なくなったら、給料が減って困る人もいるだろう。 要するに、これは企業ごとの労使協議に預けたほうがよい問題であり、政府が杓子定規に全国一律に規制すべき話ではない。ビジネスの現場を知らない政治家と役人に「働き方改革」ができるはずはないのである。関連記事■ 女性の起業 計画づくりや人脈づくりは起業塾への参加を推奨■ 成功している女性起業家はピンチをチャンスの精神で克服する■ 2010年度だけで1386企業11万人が残業代をとりっぱぐれている■ 44の職業に就く女性の給与明細・残業時間・長短を紹介した書■ 学歴や才能、資本金がなくても大丈夫 起業に必要なのは勇気

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    残業代ゼロ法案が現実味 働き過ぎの貧困層が増える恐れも

    うに、経済界の意を汲んで明らかに矛盾した政策もゴリ押ししようとしているのです」 まさに「羊頭狗肉」の働き方改革。このままでは、サラリーマンはますます不安定な労働環境を強いられることになるだろう。関連記事■ 残業代ゼロ社会に向かう政府 年収300万円でもカット対象に■ 導入検討の残業代ゼロ法案 欧米とは似て非なるただ働き制度■ 佐川急便も導入の週休3日制 ビジネス上の損失が大きい現実■ 愛子さま「激やせからの15キロ増」に周囲は心配の声■ 田村英里子 伝説の「半裸カレンダー」写真リバイバル公開

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    外資系秘書の「どんなムチャ振りにも『NO』と言わない」仕事術

    フラナガン裕美子(国際コミュニケーション・コンサルタント)多くの外資系企業で活躍し、「伝説の秘書」と呼ばれるフラナガン氏。秘書というと、スケジュールを管理する程度の簡単な仕事だと思う人もいるだろうが、外資系企業では事情が違う。上司のムチャ振りに応えてきたフラナガン氏の仕事の習慣とは? 秘書にとって最も基本的で重要な習慣は、上司にどんな「ムチャ振り」をされても「できません」と言わないことだとフラナガン氏は話す。「日本企業の多くの秘書は、上司から言われたことをこなす一方通行のサポートが多いイメージでしょう。でも、外資系企業の秘書は、上司が業務に専念できるよう、右腕となって尽くすのが仕事です。ですから、秘書に『できない』という選択肢はないのです」 とはいえ、実際のところ、できないこともあるはずだ。そう聞くと、「考えさえすれば、何かしらの方法が見つかるものだ」とフラナガン氏。「たとえば、上司に飛行機のチケットの予約を頼まれたのに、その便がすでに満席になっていたことがありました。そこで『満席でチケットを取れませんでした』と報告するわけにはいきません。『それは俺の問題か? 君の問題だろう。君がどうにかするんだ』と言われるに決まっているからです。 そこで私がしたのは、まず、その航空会社に連絡を取ること。実は、どの便にも必ず要人用に確保している席があるので、それをなんとか譲ってもらえないかと交渉したのです。 同時進行で、別の航空会社にも連絡をしました。そのときには、『ビジネスクラスの席を、無料でファーストクラスにアップグレードしてほしい』と頼みました。上司が指定した便を予約できなくても、無料でファーストクラスにアップグレードしておけば、上司も納得するだろうと考えたからです」 このままでは、今度は航空会社に対してムチャ振りをすることになってしまう。とても受け入れてはもらえないだろう。そうならないよう、フラナガン氏は交渉の際、常に「Win-Win」になる提案をしている。「その代わり、以後、上司が出張をする際には2回以上はその航空会社を利用することと、社内でその航空会社の利用を勧めることを約束しました。それで航空会社に納得してもらい、席を確保することができたのです」 こんなムチャ振りは、外資系企業の秘書にとって日常茶飯事だという。「上司の奥様が来日して、道に迷ったこともありました。そのときは、本人に連絡の取りようがなかったので、立ち寄りそうなお店に片っ端から電話をかけて、『似た人が来たら連絡をほしい』と頼みました。 とても重要な会議に『出たくない』と駄々をこねはじめた上司もいましたね。言い出すと理屈は通りません。『会議の前に休憩を設けますから、ご自由にお好きなところでリフレッシュしてきてください』とか『会議では一番に発言させてもらい、次のアポがあることにして、すぐに退室させてもらうようにしましょう』などと、あの手この手を尽くして出席してもらいました」どんな上司でもまずは「好き!」と思ってみる「NO」と言わない習慣は、秘書にとって、これほどまでに絶対的なものなのだ。「上司の指示を、その言葉どおりに受け止めると、できないこともあります。しかし、『本当は何を求めているのか』を理解すれば、言葉どおりのことはできなくても、それに代わる提案をして、上司に喜んでもらうことができます。 上司によっては、具体的なやり方まで指示する人もいるでしょう。でも、それは他のやり方を知らないだけかもしれませんから、真意を読み取る必要があると思います」 たとえば、上司はAというものを所望していたとする。でも、上司が知らないBというものも好みかもしれない。そういう場合は、さりげなく、AとBの両方を提示する。すると、Bを選択することもあるという。「上司に対してNOと言わないのは、決して受け身になるということではありません。むしろ、主体的に行動することが重要なのです」 上司が喜びそうな行動を主体的に起こせるようになるためには、上司を「観察する」習慣を持つことが欠かせない。なかなか本心を見せない上司でも、日常の些細なことを観察することで、どんなことをすれば喜ぶのかがわかるようになるという。「『今日は表情が硬いな』ということに気づければ、『機嫌が悪いかもしれないから、複雑な話をするのはあとにしよう』といった判断もできるようになります。 好きな人のことなら、どんな小さなことでも見逃しませんよね。ですから、私がお勧めするのは、心の中で『好き』と思いながら上司に接することです。人は、本心でなくても、『好き』と思いながら相手を見つめると瞳孔が開いて、相手が心を開いてくれやすくなるそうです。 どうしても『好き』と思えなければ、お給料をくれる上司の顔を1万円札だと思えば、好きになれるのではないでしょうか(笑)」お礼メールの最後に入れる「一文」とは? 上司の指示を実行し、ときにはそれ以上の提案をすることは、自分1人だけの力でできることではない。幅広いコネクションを持ち、協力を仰げるようにしておくことも重要だ。コネクションを築くための習慣はあるのだろうか。「上司の仕事のために、さまざまな方と話をさせていただく機会があります。そのあとで感謝のメールを送るのですが、その文面の最後に『何かありましたら、お知らせいただければ、お力になります』と添えて、実際に何かあれば積極的にお手伝いすることでお近づきになれます。 ただし、利用したいという気持ちでは、相手が離れていってしまいます。『愛情』を持って接しているかどうかは、必ず伝わりますから」「愛情というと陳腐な響きがするかもしれませんが」とフラナガン氏も話すが、やはり仕事のベースは愛情だという。「上司に対しても同じです。私は、最初に勤めた会社で、上司からひどいパワハラを受けました。それで、胃を痛めて吐血したり、1円ハゲがいくつもできたりしました。でも、パワハラ上司に対して萎縮したら負けなんです。 もちろん、パワハラは許される行為ではありませんが、『ご指導ありがとうございます』とお礼を言うくらいの気持ちで愛情を持って接すると、かえって上司のほうがひるむものです」 愛情は、自分に対しても向ける必要がある。「秘書の仕事は『できて当たり前』なんですね。どんな難題をこなしても、上司は褒めてくれません。だから『自分で自分を褒める』ことが不可欠。鏡を見たり、自分で自分の肩を抱いたりしながら、『よくやってる』などと褒めるのです。 そして、完璧な仕事ができなくてもあまり落胆しないことも大切。完璧にできなくても、軽く反省するくらいでいいのです。ゲームで少しポイントが減点されるくらいのもの。努力はいずれ何かしらの役に立つはずです」《『THE21』2017年5月号より》《取材・構成:西澤まどか》フラナガン・ゆみこ 国際コミュニケーション・コンサルタント。1967年生まれ。津田塾大学卒業。スイス・ユニオン銀行を経て、バンカース・トラスト銀行から秘書のキャリアをスタート。以降、ドイツ証券、メリルリンチ証券、リーマン・ブラザーズ証券など、5つの外資系企業と日系企業で、日本人、米国人、英国人、アイルランド人、スイス人、豪州人、香港人、韓国人という8カ国のエグゼクティブをサポート。著書に『伝説の秘書が教える「NO」と言わない仕事術』(幻冬舎)など。関連記事■ 元社長秘書が見た「大きな仕事を任される人の習慣」■ ストレスを味方にする11の習慣■ <お勧め記事>「ストレスで胃が痛い!」ときに読みたい記事

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    嫌いな相手を「すごい」と言えば怒りが消えていく

    大嶋信頼(心理カウンセラー) 老いも若きもイライラしている現代社会。原因はいろいろありますが、とくに大きな原因の一つになっているのは、「インターネット」です。ニュースサイトや掲示板、SNSなどを見ると、政治経済からスポーツ、芸能人の不倫に至るまで、さまざまな問題について「良い・悪い」「正しい・間違っている」を裁いている人を大勢見かけます。まさしく「一億総評論家時代」といえますが、これは人間の心に負担をかけます。そうやって、人を裁くことをしていると、自分の心の中に怒りが溜まっていくからです。 さらに問題なのは、この怒りは伝染すること。怒りとは電気のようなものであり、一人の人から怒りが放電されると、周囲の人が無意識に怒りで帯電してしまいます。すると、元々怒っていない人にまで放電した人の怒りやイライラが伝染し、周囲の人までそんな気持ちになってくるのです。 科学的には、この現象は脳の神経細胞である「ミラーニューロン」が引き起こしています。その特徴は「他人の動作を見ているとき、脳の中で自動的にその人のマネをする」こと。緊張している人の近くにいると緊張が移ることがありますが、同様に、怒っている人の近くにいると、怒りが移ってしまうのです。 さらに厄介なことに、放電した人は、放電したからといって怒りを発散できないこと。周囲の人に放電し続けて、悪影響を与え続けます。すると、周囲にイライラした人が増えるという悪循環に陥ります。  以上の現象は、仕事にも悪影響を及ぼします。たとえば、多くの職場では上司が怒りを放電していると思いますが、その怒りが伝染すると、部下もイライラし、集中力を失ってしまいます。すると、仕事でミスすることが増えてきます。すると上司はさらにイライラし、部下はさらにミスをするという泥沼状態にハマってしまうわけです。※画像はイメージ 部下の立場の人がこのような状況から脱するためには、上司の怒りからうまく身を守る必要があります。その方法の一つが、「チューニング」。「呼吸」を合わせることで、相手の怒りを抑える方法です。 人は呼吸をする時に肩が動くので、その肩の動きを相手と合わせます。たとえば、息を吸う時には肩が上がるので、同じタイミングで肩を上げるのです。すると、鏡の細胞であるミラーニューロンが活性化することにより、最初は相手の怒りが伝染するのですが、そのうち波長が合ってくることで、怒りの波長が打ち消され怒っていた相手が自分に対して怒りを向けなくなるのです。 もう一つ、お勧めの方法は、相手に対して「◯◯さんってすごい」と心のなかで何度も唱えることです。怒られているときにはとてもそんなことは思えないでしょうが、何も考えないで「◯◯さんってすごい!」と唱えます。すると、これもミラーニューロンの働きで、あなたが「相手をすごいと思っている。尊敬している」という気持ちが相手に伝染し、相手の中にある、あなたに対する怒りが消えていくのです。  このとき、何がすごいかを具体的に考えてしまうと、「本当にそうか?」と疑念が生まれてしまうので逆効果。「○○さんってすごい」と言うだけでOKです。同じ要領で、周囲のすべての人に、「○○さんってすごい!」と唱えていれば、常に怒りから身を守れるようになります。怒りや不満、負の感情をどうおさめるか(1)《怒り》部下にイラッときたときは「本音モード」で叱る 上司のイライラが周囲に伝染してしまうとはいえ、部下が何度も同じミスを繰り返したり、支離滅裂な言い訳をしてきたりすれば、上司も人間ですからムカッとくることはあるでしょう。しかし、そんなとき、「こういう言い方をしたら傷つくのではないか」「メンタルダウンでもされたら困る」などと考え、はっきりと物が言えないという人は多いようです。 たしかに、我を忘れて怒りをそのまま相手にぶつけるのは良くないことですが、問題点をはっきり伝えず遠回しに優しく注意するというのも、良い結果につながりません。結局真意が伝わらないので、部下の行動改善につながらず、ますますストレスが溜まります。そうやってストレスを溜め続ければ、いつか爆発するでしょう。※画像はイメージ このようにはっきりと言えない人にお勧めするのは、叱ることが必要なときに、「本音モード!」と心の中で言うことです。すると、それだけでも気持ちが切り替わり、「この前と同じミスを繰り返しているぞ」「君の言いたいことが私にはよくわからないんだ」などと、はっきりと物が言えるようになります。「ストレートに言っても大丈夫だろうか?」と思うかもしれませんが、優しい言葉ばかりを投げかけるより、感じたままを伝えたほうが、相手も納得してくれるものです。 (2)《不満》嫌いな相手でも心の中で「すごい!」と言ってみる 理不尽なことで怒鳴られたり、朝令暮改を繰り返されて振り回されたり、クドクドと説教されたりして、上司や取引先に不満を抱えたとき。言い返す手もありますが、リスクが高いのも確かです。そんなときには、「すごい!」が有効です。その上司のことを「◯◯さんってすごい!」と心の中で唱えましょう。心の中で言うだけですから、「○○さんって、すげえ!」でも構いません。 何度も唱えていると、本気で「すごい」と思っていなくても、なんとなく「相手はすごい」ように思えてきます。すると、相手に対する自分の怒りは静まっていくのと同時に、「すごい」と思う気持ちが相手に伝染します。それによって、相手にも自分のことを尊重する気持ちが芽生え、不満の元になっていたふるまいをやめることがあるのです。 もう一つ、不満の元になったふるまいをやめてもらう手として、「逆暗示を入れる」という方法もあります。たとえば、クドクドと説教する上司には、「◯◯さんは、話が端的でわかりやすいです」などと逆のことを言うのです。すると、上司の頭の中に「自分は話が端的でわかりやすい」という暗示が入り、説教が長い上司でも、本当に端的に話してくれるようになります。 (3)《わずらわしさ》「相手の気持ちはわからない」でイライラを防げる 会議の席で空気を読まない発言を繰り返す人や、プライベートなことに平気で踏み込んでくるおせっかいな人…。自分には理解できないようなことをするわずらわしい人が、あなたの周りにもいませんか。 しかし、この人に対して、「なんでこの人はこんなことをするのか?」と考えてはいけません。相手の考えや気持ちを汲み取ったところで、それを変えることはできないので、余計にイライラするからです。さらに、相手の発言やふるまいに対して、「私が普段からヘラヘラしているから、平気な顔して仕事を押し付けてくるのか」などと自分に原因を求め始めたりすると、最悪。イライラはさらに加速します。 こんな状態に陥らないためには、相手のことを考えそうになった瞬間に、「相手の気持ちはわからない。自分の気持ちもわからない」とつぶやくことをお勧めします。すると、「相手の気持ちなんてどうでもいいか」という気分になって、深く考えなくなるので、イライラするのを防げます。「自分の気持ちもわからない」というのは、「自分の気持ちですらわからないのだから、他人の気持ちなんてわからない」と思えるようにするためです。おおしま・のぶより 心理カウンセラー/〔株〕インサイト・カウンセリング代表取締役。米国・私立アズベリー大学心理学部心理学科卒業。アルコール依存症専門病院、周愛利田クリニックに勤務する傍ら東京都精神医学総合研究所の研修生として、また嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室非常勤職員として依存症に関する対応を学ぶ。嗜癖問題臨床研究所原宿相談室室長、㈱アイエフエフ代表取締役等を経て現職。ブリーフ・セラピーのFAP(Free from Anxiety Program)を開発した。『あなたを困らせる遺伝子をスイッチオフ!』 (SIBAA BOOKS)、『「いつも誰かに振り 回される」が一瞬で変わる方法』(すばる舎)など、著書多数。関連記事■ メンタルを安定させるメモ・手帳の使い方とは?■ ビジネスマンの「ストレス」大調査■ 今の日本が「ストレス社会」になった理由とは?

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    青林堂パワハラ訴訟、泥沼バトルの舞台裏

    休刊した漫画誌『ガロ』で知られる出版社「青林堂」(東京都渋谷区)のパワハラ訴訟をめぐり、同社社長の蟹江磐彦氏がiRONNAに独占手記を寄せた。一方、会社を訴えた原告代理人からも反論手記が寄せられ、泥沼バトルの内幕がiRONNAでついに明らかになった。老舗出版社で何があったのか。

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    【青林堂社長独占手記】「あんな社員に謝る必要が本当にあるのか?」

    蟹江磐彦(青林堂社長) 青林堂は、現在「東京管理職ユニオン」および、TBSを筆頭に各マスコミから猛烈な攻撃を受けている。これは当社が男性社員に一方的にパワハラを行い、うつ状態にさせたとして提訴され、支援するユニオン側が実施した記者会見に端を発している。 TBSの報道番組「NEWS23」については、男性社員がうつ病にもかかわらず、2度にわたって出演させ、自分がいかに虐げられたかを語らせ、その現状を当社での録音音声をかぶせて放送している。この報道はユニオンだけの言い分を、マスコミが恣意(しい)的に流している点で大きな問題があると思っている。 では、そもそもユニオンとはいかなる労働組合なのだろうか。簡単に言えば、個人で加入できる、業種や会社をまたいだ労働組合だ。大企業にはもともと労働組合があり、労働者はその組合に加入して保護を受ければいいのだが、当社のように正社員3人といった零細企業には、そもそも組合などない。そういった企業の社員が加入できる労働組合がユニオンである。それどころか契約社員やアルバイトまでも加入できるというのが売りでもある。 確かに、社会には「ブラック」とされる企業があり、労働者はこうした企業から守られなければならず、ユニオンの活動がそこに向けられる分には正しい行動である。しかし、今のユニオンは現行の労働法に強く守られ、会社に無法の限りを行っても「良いか悪いかは別として」弱者の労働者としては正しいこととされてしまう。 実際に男性社員のように、会社内で録音盗撮したり、会社の重要な名簿やIDパスワードを無断で持ち出したりしても、労働法に守られた労働者の「権利」なのである。また、辞令を出しても自分が気に入らない仕事は「支配介入」という文言で拒否できてしまう。 男性社員は一日中机の前に座り、社内の動向を探りながら言動を逐一メモし、その情報をユニオンに報告していた。当社は、ユニオンとは思想的には真逆の書籍を発売している出版社である。このような状態が正常であるとは、到底思えない。現に東京管理職ユニオンの鈴木剛執行委員長からは「全力で青林堂を潰しに行く」と宣言されている。 また、不思議なのは、大半のテレビ局が今回の提訴を報道するなど、この裁判がなぜこんなに大きく扱われるのか、ということだ。先にも記したが、当社は社員が3人という、極めて零細な企業である。すさまじいユニオンの要求 しかも内容は、ユニオンが言うところの単純なパワハラである。これにはなんらかの恣意的な意図を感じずにはいられない。先日も、東京新聞からこの裁判について、取材依頼がきた。当社とユニオンしか知り得ない事柄を聞いてきたのであり、なぜ東京新聞がそれを知っているのか? 当社を狙ったマスコミ各社の動きをみれば、ユニオンと何らかのつながりがあると疑ってしまう。 東京新聞の取材の件は、当社が男性社員に直接連絡をとったことが支配介入に当たるためユニオンに陳謝しろという内容だったが、そもそも自社の社員に連絡することが、労働法では違法とされること自体疑問だ。 一方、ユニオンの要求だが、これがすさまじい。勤続半年の男性社員の和解退職金が1200万円である。キャリア官僚が10年勤めても400万円程度なのに。もしくは復職させて昼から5時までの5時間勤務、残業なし。この条件でさらに30万円の給料を要求しているのである。 零細企業である当社としては、「復職」させるしか選択肢はない。ゆえに、この条件を受け入れた。その後も給料を「48万円にしろ」と要求してきたが、さすがにこれは拒否した。他社員との給与格差が大きすぎて不公平になるからだ。 また、男性社員は復職後、初日から守秘義務契約を拒否し、大声で「支配介入だ!」と恫喝(どうかつ)していた。「これは闘いですから」と叫ぶ。辞令を出して編集業務として復職したのにもかかわらず、「営業業務をやらせろ」と要求する。(写真はイメージです) しかも、出版労連の講演で、当社の出版物に対してデザイナーからヘイト本の装丁を断られた経験に触れつつ、「言論の自由を言い募り、差別をあおる本を売ることに目をつぶってきた」と自省を込めながら振り返っているのである。 こんな社員に営業は任せられない。当然、当社としては語気強く毎日のように説得を続けた。だが、一連のやりとりを録音されていたのである。 こういった毎日のやり取りの中、突然男性社員はうつ病の診断書を提出して昨年2月に休職した。健康保険組合から傷病手当を受け取りながら、国会前デモや、安保法制反対デモに元気に参加している。当社にも何度も団体交渉や、中傷ビラをまきに訪れている。うつ病にもかかわらず、休職から一年後になる今年2月、東京地裁に提訴した。「青林堂でパワハラを受けてうつ病になった。損害賠償として2300万円を支払え」という要求である。 訴訟になった以上、判断は司法に委ねるしかないが、このような社員でさえユニオンは手厚く保護し、会社側は労働者に謝罪をしなければならないのだろうか。青林堂は今後もこのような左派系労働組合である東京管理職ユニオンと、これを支援するマスコミや団体とも闘っていくつもりだ。

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    青林堂社長にこれだけは言いたい 「パワハラに右も左も関係ない」

    、立法などの動きにつながることはなかった。 現在の安倍政権も、パワハラ問題を無視することはできず、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日閣議決定)には、「職場のパワーハラスメント防止を強化するため、政府は労使関係者を交えた場で対策の検討を行う」として、何らかの対策の検討を行うことを記している。 なお、政策として必要なのは、「パワハラ防止基本法」のような法律を制定して、腰を据えた対策が行われることであろう。そうでなければ、この問題は「当事者同士の問題」として矮小(わいしょう)化されかねない。しかし、セクハラなどと同じように、基本的にパワハラは違法であるとする明確な法規範があれば、企業の取り組みは変わってくるものである。 いずれにせよ、パワハラは社会問題となっており、国の政策として何か対策をとらねばならないところまで深刻化しているのである。 では、労働者はこうした時代にどうやって自分の身を守ればいいのだろうか。(本文とは関係ありません) 青林堂事件のように、暴言などのパワハラを受けた場合、まずは証拠を確保することが何よりも大事である。その際、録音が客観的な証拠として価値が高い。青林堂事件では、パワハラが日常化していたために、多くの録音記録が存在している。 あまりに多くて、訴えの提起にあたり選別するのが非常に大変であった。そのため、普通なら問題とすべき発言が、他のひどい発言に比べてレベルが低いと、「これは大したことないね」となってしまって、感覚がまひしてしまったほどである。 なお、対話者に無断で録音することが違法であるかのような誤解があるが、そんなことはない。職場におけるトラブルがある場合に、証拠保全の意味で録音することは問題ない。むしろ、労働者が取りうる唯一の証拠収集における対抗手段といっても過言ではない。気にせず「録音」を 裁判例でも、録音手段・方法が著しく反社会的ではない限り、これを証拠として認める旨判示している(東京高裁昭和52年7月15日判決)。最近の裁判例でも否定例は極めて例外的な場合のものしかないので、被害を受けている場合は、気にすることなく録音することが必要である。 一方、使用者側に期待されるのは、職場におけるいじめ・嫌がらせは、企業経営にとってマイナスしかないことを自覚することである。 そもそも、そのような問題が発生していること自体恥ずかしいことだという認識を持ってもらいたい。先に挙げた円卓会議において、ある企業の人事担当者の言葉として、次のようなものがある。 全ての社員が家に帰れば自慢の娘であり、息子であり、尊敬されるべきお父さんであり、お母さんだ。そんな人たちを職場のハラスメントなんかでうつに至らしめたり苦しめたりしていいわけがないだろう。 誰かをいじめてうつにすることは、その背景に多くの悲しみが生まれることを自覚することが必要である。社員は人間であり、ロボットではない。ましてや機械でも道具でもない。その当たり前を自覚することが第一歩である。相手は自分と同じ生身の人間なのである。 近年は、まともな企業や労働組合が機能している企業においては、こうした意識が徐々に高まり、パワハラになり得る行為類型を冊子やパンフレットなどにして全社員に配布し、啓蒙(けいもう)している企業もある。 本来は、こうした取り組みが一般化される必要があるだろう。一方で、社長が先頭に立ってパワハラするような企業は論外である。これについては、一つ一つ正していくほかない。(本文とは関係ありません) 青林堂事件は、ハラスメントの陰湿さと、それを支える証拠が多くあることでたくさんの注目を集めた。しかし、俯瞰(ふかん)的に見れば、これはわが国にはびこるパワハラ事件の一つに過ぎないのである。もっとも、一つに過ぎないとしても、これだけ注目が集まった事件である。青林堂には、パワハラを行ったことについて、しっかり責任を取っていただきたい。 また、労働者はこうした時代であるので、身を守る術を身につけ、何かあれば第三者に相談してほしい。一人で抱えても解決しない。労働組合や公的機関など、相談窓口は多い。 そして、国は「働き方改革実行計画」に記載したのだから、「啓発」「啓蒙」だけで終わることのない政策を実行してほしい。これについては与野党一丸となれるのではないだろうか。パワハラを撲滅するのに右も左も関係ないのだから。

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    なぜユニオンは「ブラック企業」退治の切り札と呼ばれるのか

    鈴木剛(東京管理職ユニオン執行委員長) 現在、「東京管理職ユニオン」は、青林堂による数々の違法行為について、東京地裁と東京都労働委員会に提訴・申立を行い、係争しています。また、これまでに3つの事件で私たちの主張が全面的に認められました。いずれもわれわれのブログで全文を公開しています。 また、本年3月28日に勝利した東京都労働委員会の命令文は、東京都のホームページに公開されています。青林堂関係者がメディアに公開している情報には、誤ったものが多くありますので、本件に関する正確な情報は、これらをご覧いただければと思います。 こうしたいわゆるブラック企業の問題は、近年、社会的な問題になっています。本稿ではブラック企業に対抗するために「ユニオン」と呼ばれる労働組合が有効であるという点について論じたいと思います。 ユニオンとは、合同(一般)労働組合と呼ばれる、一人でも加入することができる労働組合のことで、従来の合同労組の一種として、1970年代以降、新たに誕生したものです。ユニオンは企業内労働組合と全く同じ法的権限を有しています。ユニオンが急増した構造的背景は、経済成長率の低下に伴う雇用形態の変化があります。(写真はイメージです) それまでの男性正社員を中心とした年功型雇用システムから、派遣・有期契約・パートなどの非正規労働者の増大があります。日本の労働組合の多くは男性正社員をメンバーシップとする企業別組合でしたから、こうした非正規労働者は保護の枠外にありました。 また、諸外国と比較して日本の非正規労働者は、時間当たりの賃金が非常に低いという特徴がありました。昨今、政府も推進しようとしている「同一労働同一賃金」は、この構造的問題の解消を目指すものであり、いわば国民的な課題です。この点から、従来の企業別組合が受け入れなかった非正規労働者が数多くユニオンに駆け込んできたのです。 加えて、日本で構成比率が高い中小企業では、法令を無視した職場も多く、必然的に労働者がユニオンに助けを求めてくる実態もあります。そして、労働基準監督署などの公的機関や弁護士によるアプローチと比較しても遜色なく、被害者が納得する内容で解決していることから、ユニオンは増加傾向にあります。 解決内容も、労使双方が和解し、継続して円満な労使関係を確立し、就労を続けるケースも少なくありません。この点でユニオンはブラック企業対策として有効な武器であるといえます。近年、「ユニオン対策本」と題した書籍が出版され、「ユニオンは解決金目当て」などと書かれている場合がありますが、正確ではありません。 ブラック企業に対してユニオンが有効な手段足りえるのは、以下の法的根拠が考えられます。① 団結権に基づく企業内外での広範なネットワークづくり② 団体交渉権に基づく強い交渉力③ 団体行動権に基づく強い行動力たった一人でもこれだけ戦える ①は、企業内で組合員や協力者を拡大することや企業外の支援者ネットワークを活用し、広げることです。同様な被害にあった労働者が同じ目線で励まし、先行する経験からアドバイスすることは有益なことです。労働基準監督署などの公的機関にしても、弁護士を通しての訴訟にしても、被害当事者は一人で孤立しがちです。 また、企業は、経営者の強い権限で違法行為を隠蔽し、従業員に虚偽の陳述書を書かせ、被害当事者を孤立させることもあります。この点でユニオンは、企業内外のネットワークを駆使し、当事者が孤立することを防ぎ、交渉においても有効な証拠収集などを進めることができます。 ②は、法的に企業がユニオンからの団体交渉の申し入れを拒否できないということです。たった一人の労働者でも企業は団体交渉を受諾しなければならず、これを拒否すれば違法行為となります。また企業は、単に交渉すればよいのではなく、客観的資料などを示し、説明しなければならない「誠実交渉義務」が課されています。 そして③は、交渉が企業側の不誠実な態度によって行き詰まった際に、これを打開する手段として、行動することが法的に認められていることです。つまりユニオンは、法的根拠をもって被害当事者の立場で、多様な行動を取ることができるのです。 代表的なものは、ストライキ、抗議行動、取引先などのステークホルダーへの要請行動、SNSやメディアを通しての宣伝活動などです。一個人で行使すれば違法に該当する恐れがある行動に関しても、ユニオンが正当な手続きを踏めば、違法性が阻却されるのです。 もちろん、企業側が誠実な交渉をしている段階でそのような行動を取ることは許されません。従って企業がキチンと法令順守していれば、ユニオンとのトラブルになることはあり得ないのです。 ユニオンにも多様な組織があり、スタイルも異なります。しかし、基本的には労働組合法が定めるように、労働者が企業と対等の立場に立って、団体交渉や団体行動を行い、労働協約を締結するためのものです。ユニオンは、この点で法令に沿った存在であり、違法なブラック企業から被害を受けた人々にとって心強い解決手段です。 また、最近では、ユニオンと企業がセミナーを共催したり、職場環境改善に向けて講師依頼されるケースも増えています。私もこうした取り組みを歓迎し、引き受けています。経営環境が厳しい中小企業にとって、知恵と力を出し合い、労働者も成長し、企業が持続的に発展することを心から願っています。

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    労働者を洗脳し、企業をゆする「ユニオン」の正体

    田岡春幸(労働問題コンサルタント) ユニオンとは、パートであれ誰であれ、企業や職種・産業の枠にこだわらず、個人加入でき、主に中小企業労働者が加入する労働組合である。 では、なぜユニオンが登場してきたのであろうか。 第一は労働者の権利意識が強くなったことが一因だろう。労働者、特に正社員が労働条件に対して給料が右肩上がりで、今まで非正規には関心がなかった。だが、経済が停滞して不況になり、正社員になれない、いわゆる弱者とされている労働者たちが急に権利意識を強く持ち、声を上げ始めた。ここにユニオンは目を付けたのだ。逆に、ユニオンが権利意識をたき付けているところもある。 第二は、市民運動と称する運動の形態の出現があるのではないか。市民運動は、70年代から公害運動や消費者運動を契機に日本で定着してきた。この運動が労働界にも入り、市民運動の形態の一つとしてユニオンが結成されたといえる。 ユニオンの基本的な交渉の流れは、「団体交渉」「不当労働行為」「労働委員会」この3点セットだ。近年は、新たな戦術として「法律の利用・活用」がある。さらに戦術として、街宣活動、関係各所へのビラまきをしかけてくる。 まず、団体交渉で会社が組合の言うことを聞かないと、不当労働行為あるいは法律違反と騒ぎ、必ずと言っていいほど労働委員会を持ち出す。そして、労働委員会は、和解金の提案を必ずしてくる。 本来、労働委員会は、個別的紛争は扱わないはずである。労働委員会という国の機関を出せば知らない経営者は、恐れをなして金を払うという戦略である。公的機関が脅しの道具に使われているのだ。 また、ユニオンは会社側が金を払わない姿勢をみせると、労働組合の交渉とは呼べないようなやり方で攻めてくる。警察や司法機関も手が出せない状況にあり、まさにやりたい放題である。一番多く用いられる方法は、先に記した会社周辺でのビラまきや街宣だ。(本文とは関係ありません) これらは名誉毀損(きそん)罪に抵触しかねない極めて過激な行為である。ユニオンの最終目的は、会社から和解金と称して金を取ることであり、和解金の金額は、軒並み1000万円以上を要求してくる。 これは中小企業にとって、大変な金額である。彼らに金を払ってはいけない。払ったら最後、何度も不当労働行為で労働委員会に申請される。どのような手段を使っても金を払わせようとする。ユニオンは、組合員から和解金から得た金のうち、3~4割をピンはねしている。これが、彼らユニオンの資金源の一つになっているのだ。 そして金を支払わないと、ユニオンの嫌がらせはエスカレートし続ける。例えば「ブラック企業だ!」と名指ししたチラシを会社周辺で配る、取引先にユニオン側の主張を一方的に記した印刷物を配布する。その際に経営者の住所入りの地図を印刷したりする。会社に要求書を手渡す様子を動画で撮影し、それをネット上にアップするなど、ユニオンの要求をのまない限り、手口がエスカレートしていくのである。「街宣」攻撃の次は… 本来は、監督官庁が違法行為や行き過ぎた行為をたしなめなければいけないが、それもない。ほとんどの経営者は、街宣をやられた段階で参ってしまい金を払うことが多いという。このやり方は、経営者の人格権などを無視した卑劣なやり方である。経営者にも基本的人権はあるのである。 また、ユニオンは要求書なるものも会社側につきつけてくるが、この要求書も相手を怒らせようとしていることが見え見えのものである。経営者は、この要求書に対して、決して怒ってはいけない。ユニオンは、怒るのを待っているからだ。あくまでも要求書であることを忘れないでほしい。要求書は会社側がはね返しても問題にならない。 こうしたユニオンに、目をつけられないためにも、法律上のリスク管理を最低限行っておかなければならない。これは、近年ユニオンが法律を利用した労働条件の是正、もしくは救済を打ち出しているからである これをやられると明らかに法律違反の場合は当然アウトだが、グレーな部分についても心証が悪くなると思われる。ユニオンは手法を「労働基準法」的要求から「労働契約法」的要求に変えつつある。 これは、ユニオンが集団的労使紛争へ重きを置きはじめたとみるべきだ。契約というのは入り口の法律であり、これを結んでいないがために、他も全て法律的にアウトとなる印象をユニオンは狙っている。ユニオンは、印象操作に長けているのだ。 ゆえに経営者は、常に新しい労働法制を意識して対応をしていかなければならない。知らなかったではすまされない。無知な使用者に対してユニオンは攻めてくる。ユニオンに攻めの口実を与えてはいけない。ここを突破口に不当労働行為だと指摘し、金を要求してくるからだ。  ユニオンのターゲットになると経営者の損失も大きくなる。横の繋がり、メディアの扱いがうまく、情報が広まりやすいので注意が必要である。小さい組織だからといってなめてかかると痛い目を見る。(本文とは関係ありません) また、ユニオンとしては給与や待遇面は攻撃しやすい。なぜなら不満を持っている多くの労働者の同調を得やすいからである。同調をさせてユニオンは労働者を取り込み洗脳していくのである。洗脳されたユニオン側のことを何でも聞く状態になっている労働者と経営者は対峙(たいじ)しなければならない状況にある。 今後ユニオンは、残業代未払いや解雇など、今まで扱ってきた事案以外にも幅広く関わってくるであろう。すなわち、ユニオンの活動範囲が広くなる。例えば降格など、どちらかというと経営側の人事権の範疇(はんちゅう)であるケースにも関わってくる可能性が高い。現状は、ユニオンが、活動しやすい状況にあると言わざるを得ない。 経営者はやられっぱなしではなく、ユニオンに対して何をされたかもっと声を上げていくべきであろう。会社が潰されてからでは取り返しがつかないだけに、社員とその家族を守る気概でユニオンと対峙(たいじ)してほしい。 

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    部下を追い詰める「クラッシャー上司」との恐怖問答を実体験

     部下を精神的に追い詰めて最後には潰してしまう「クラッシャー上司」の存在が問題になっている。精神科産業医に取材したコラムニストのオバタカズユキ氏がその「手口」を再現する。* * * 一斉報道によると、〈厚生労働省神奈川労働局は11日、労使協定の上限を超える残業を社員にさせたとして、労働基準法違反の疑いで法人としての三菱電機と、同社の幹部を書類送検した〉(日本経済新聞電子版)。 昨年末には、電通が同法違反容疑で書類送検されたばかり。こんどは旧財閥系グループの「組織の三菱」だ。日本を代表する企業の雇用問題が、次々と可視化されている。 電通は若手女性社員の自殺から1年後にやっと当局が介入したわけだが、今回の件は、元社員だった31歳の男性が過重労働による精神疾患を発症、労災認定を受けたことで捜査が始まった。労災認定まで踏ん張った男性の功績を讃えたい。同様に苦しんでいるたくさんの人々の解放の道を開くきっかけになりえるからだ。三菱電機で違法な長時間労働を強いられた同社元社員の男性。入社から約1年後に適応障害と診断された=2016年12月 三菱電機の元社員は、実際の残業時間が最大月160時間にも上っていたという。平成13年に厚生労働省労働基準局長が通達した「心的負荷による精神障害の認定基準」では、〈発病直前の1か月におおむね160時間を超えるような、又はこれに満たない期間にこれと同程度の時間外労働を行った〉場合を「極度の長時間労働」としており、まさにそれに相当する過酷な働かせぶりだったわけだ。 電通の場合も三菱電機の場合も、当局が問題としたのは「残業時間の量」。そこには一定の規制が必要だ。しかし、そこだけでこの話が終わってしまっては表面的すぎる。人はどんなに働いても元気にやっていける場合もある。逆に、残業時間が数十時間でも潰れることがある。 ざっくりとした言い方だが、人はその意義を納得した上での労働ならば相当過酷な内容でも踏ん張ることができる。逆に、理不尽な労働が続くと、簡単にポッキリ折れる。 産経ニュースによると、三菱電機の男性は、上司からの厳しい叱責を受けていた。〈「お前の研究者生命を終わらせるのは簡単だ」「言われたことしかできないのか。じゃあ、おまえは俺が死ねと言ったら死ぬのか」〉とやられていたという。 これはどう考えても理不尽極まりないパワハラである。恐喝に近い。長時間問題のみならず、職場の暴力を、もっともっと報じてほしい。 ただ、パワハラは刑法上でも民法上でも良い意味で問題になりやすくなってきたので、以前ほど露骨にやる上司は減っている。最近は、もっと狡猾なモラハラが増えている。「クラッシャー上司」のモラハラ、実態はこれだ! その実態はどんなものか。発売されたばかりの『クラッシャー上司』(PHP新書)が詳しく紹介している。この本は私が企画・構成役で、〈部下を精神的に潰しながら、どんどん出世していく人〉である「クラッシャー上司」について、精神科産業医の著者・松崎一葉氏から長時間話を伺い、議論を重ね、まとめさせてもらった。 この世で初めて「クラッシャー上司」の実態と精神構造と問題解決法を明らかにした一冊なのだが、その中に詰めこめなかった素材がある。それをココで紹介したい。 モラハラの怖さがリアルに伝わる、筆者と著者のやりとりだ。オバ:モラハラがまだ曖昧なのですが、先生はどう定義していますか?松崎:モラールというのは、仕事に対する士気や意志。そういうものを潰す、削いでいくような言動がモラール・ハラスメントです。一般的なモラルではなくて、モラールのほう。オバ:やる気を失わせる言葉の暴力?松崎:そうですね。本来なら、チームの中でケーススタディをしながら改善法を探るべき課題などを、上司が部下を一対一で、ネチネチと雪隠詰めにしていくのが典型的なモラハラです。オバ:雪隠詰め……。先生、ここで再現できますか?松崎:あ、いいですよ。じゃあ、いじめていいですか?オバ:はい、いじめてください。よろしくお願いします。(途端に、松崎氏の目が据わる。不敵な笑み……)松崎:この間、オバタさん、こう言っていたじゃないですか。で、オバタさん、ここまでにこれ、まとめてくるっておっしゃっていたじゃないですか。オバ:はい、申しました。松崎:それが今回、ちょっと違う方向になったのは、どういうことですかね。オバ:ええと、自分なりに当初の計画に沿って……。松崎:(ノンブレスで一気に)自分なりとか、そういうこと言う必要はまったくなくて、この間おっしゃっていたことが実現できなかったということは、具体的に事実としてどういうことなのか、それを教えてもらえるかな。オバ:あ、事実としては、え、確かにおっしゃるように、まだ……。松崎:確かにとかじゃなくて、事実だけを並べてくれない? 時系列で並べてくれない?オバ:ええと、それは事実、松崎:(以下、オバタの言葉を食い気味に)この間、提示したのは、1月9日だったでしょ。オバ:はい。松崎:それが、2度目の今回、今日は1月の24日じゃないですか。オバ:はい、今日は、松崎:その15日間に、どこでこれがどう変遷していったか、その分岐点から明確にして教えてくれれば、それだけでいいんだよ。オバ:ええと、今、ちょっと頭が混乱して、松崎:混乱しているとかじゃなくて。別に考えなくていいんだよ。オバ:え?永遠に続く生き地獄松崎:考えなくていい。事実だけを羅列してくれれば。時系列で、ちょっと手帳かなんか見てさ、どこでどういうことが起こったのか、まず報告してくれる? あなたが考える必要ないんだ。あなたは考えなくていい。僕が全部考えていくから、あなたがどういう事実でこういうふうに変遷していったのか、その変節点だけを教えてくれるかな。オバ:それ、今、申し上げないと、松崎:「申し上げないと」というか、考える必要ないんだから。覚えているでしょ? 自分がやってきた事実ぐらいは。オバ:ですが、急にまとめるのは……ちょっと頭が混乱し、松崎:うん、混乱とか、そういう問題じゃないですよね。オバ:すみません。松崎:「すみません」はいらなくて、クライアントといつ会ったかというのは、自分の手帳に書いてあるでしょ?オバ:申し訳ございません。松崎:申し訳はどうでもよくて、そこの時点で、この話がどう変わったのかっていうことを、一つ一つ言ってくれれば、それだけでいい。さあ、言って。オバ:すみません、手帳にうまくメモしていなかったんです。松崎:そう?オバ:ほんとうに申し訳ござい、松崎:じゃあ、自分の記憶の中でわかっているものだけ、今、そこに書いておいてもらえるかな。オバ:この紙に、松崎:その紙に、ペンはこれを使って。事実をそのまま書くだけ、考えるのは僕がやるから、あなたはここでまず手を動かす。さあ、ペンを持って。事実を書いて。今ここで。記憶の断片でいいから。さあ、オバ:せ、先生!きつくなってきました~。松崎:ですよね(笑)。オバ:呼吸が浅くしかできない。松崎:そんな感じですよ。人間としての気持ちの揺れ幅みたいなものをまったく与えず、「俺が掘った溝の中で、それだけ行けばいいんだ」みたいにやる。それが雪隠詰めの基本形。オバ:警察の取り調べに近い。松崎:警察はもうちょっと優しいような気がします(笑)。──以上は、ほぼ録音おこしのママである。雪隠詰めは5分程度だったが、やられた私には永遠に続く生き地獄だった。こうして書き起こした今でもまだ呼吸が浅くなる。実際の職場でやられたら、どんなに辛いことだろう。 こんな上司の暴力が横行している日本の会社の問題がある。クラッシャー上司を生む企業には、滅私奉公することを善とする価値観が今でも存在し、それが理不尽を是としている。 おかしいものはおかしい。唾棄すべき悪弊を常識の風で吹き飛ばす時だ。関連記事■ 音楽家が原発労働者を訪ね歩いて知られざる現実を記したルポ■ ブラック企業、非正規雇用等 労働問題をエヴァから語る本■ パート主婦に打撃の制度改革 来春から手取り1割減の可能性■ 悪文の代表のような「資本論」を分かりやすく説明している本■ 日本が移住しやすくなれば外国人労働者流入し多様な人材育つ

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    働き方改革、新聞・テレビの報道ぶりがあまりにヒドい!

    :朝日新聞「配偶者控除 働く「壁」を残す罪深さ」(2016年12月4日)毎日新聞 配偶者控除維持 「働き方改革」に値しない(2016年12月5日)日本経済新聞 働き方税制、かすむ理念 「夫婦控除」見送り パート主婦は減税(2016年12月9日)日本経済新聞「女性活躍」はウソですか(2016年10月7日) このように、今回の改正に対し厳しい見方を一斉に伝えた。問題が複雑なだけに特集や解説を組んでいるところがほとんどだった。産経新聞 よくわかる配偶者控除 103万円、106万円、130万円…妻の就労妨げる壁だらけ(2016年10月26日)産経新聞 年収500万円なら“減税額”は? 配偶者控除見直しQ&A(2016年11月24日) 他にも新聞ならではの具体的な試算などは読者に分かりやすい。また独自の視点の提供も新聞のお家芸だ。例えば、日本経済新聞は非正規にとってむしろ打撃だとの見方を紹介している。日本経済新聞 配偶者控除「上げ」、非正規に打撃 永瀬伸子氏 お茶の水女子大学教授 非正規雇用者が、安価な主婦労働者と競争を余儀なくされる、と警鐘を鳴らしている。こうした多様な意見を紙面に載せることが出来るのも新聞の強みだ。総じて、さまざまな深い解説記事を掲載しているという点で評価できる。 一方で、新聞を定期購読する層が高齢者に偏り、20代から40代くらいまでの層はネット版を読むか、もしくはウェブメディアで見出しだけ追うことが多くなっている。これは一つの情報を深く知り、自分の頭で考えることの放棄につながりかねないと懸念する。テレビはどう報じたかテレビはどう報じたか 一方、テレビはどうだったか。この問題に一番興味があるのはやはり女性だろう。パートの人も非正規の人も、専業主婦の人も、もしくは彼女たちのパートナーも、それぞれ関心を持ってニュースを見ているはずだ。彼らにとって一番身近なメディアと言ったらやはりテレビであろう。 一方で午前中から夜7時ぐらいまで続く情報生番組や夕方のニュースを見ている人はリタイアしている高齢者か専業主婦だ。つまり、実際に働いている人はテレビからリアルタイムに情報を入手することはできない。 出勤前の早朝からやっている情報番組はあまり難しい問題を取り上げず、むしろトレンドや事件事故モノ、後はスポーツやエンタメ、それに天気予報であろう。仮に「配偶者控除」問題を取り上げたとしてもじっくり時間をかけて解説することはやらないだろうし、なにより働いている人たちは午前7時から8時くらいに出勤する人が多いので、仮に「配偶者控除」問題を取り上げたとしてもゆっくり見ている時間はない。 そこで地上波放送は、仕事をしている人が帰宅する夜の時間帯のニュースでこの問題を取り上げている。例えば、日本テレビの夜の『NEWS ZERO』は2016年11月14日、「桜井翔イチメン!」というコーナーで「配偶者控除」について放送した。 その中で、Aさん、Bさんが同じ会社に務めていて給与が同じ、2人の妻はパートで収入を得ているという前提で試算を行った。Aさんの妻は年間150万円の収入があり、Bさんの妻は102万円に収入を抑えた場合、各家庭の手取りを試算して比較している。結果はAさんの世帯収入(手取り)が511万円、Bさんが510万円でほとんど変わらない。つまりAさんの妻は「働き損」ということになる、と言った具体的な解説をしていた。こういう情報は視聴者にとって有益だ。ウェブコンテンツが貧弱な日本のテレビ局 また、NHKは「NHK NEWS WEB」というニュースサイトで2016年9月20日の放送「賛否両論!配偶者控除」の内容を記事と画面のキャプチャで掲載している。また、同年10月19日には識者や解説委員が時事問題を取り上げる「視点・論点」という番組で「配偶者問題」を取り上げ、同じくウェブサイトに「配偶者控除をどう見直すか」というタイトルで記事と画面を掲載している。中央大法科大学院の森信茂樹教授による解説は分かりやすく、「夫婦控除」にも触れ、「働き方改革」の必要性にも触れている。そう、本質を突いた議論になっている。こうした深い解説をウェブで見ることができることは極めて重要だ。 なぜなら働いている人は、テレビ放送をリアルタイムで見られないことが多いからだ。ドラマやバラエティを録画する人は多いだろうが、日々のニュースを録画してまで見る人はそう多くはないだろう。 したがって、ウェブに記事や動画を残しておくことが今の時代必要なのだが、日本のテレビ局は長年ネット戦略に本腰を入れてこなかったため、ウェブ上のコンテンツは貧弱なケースが多い。番組ホームページから過去の放送内容が検索できなかったり、アーカイブ化されていなかったりする。残念なことだ。 そうした地上波のニュースをBS放送が補完している。BSフジの『プライムニュース』がそれだ。2009年4月にスタートしたこの番組は、月曜から金曜まで午後8時から約2時間放送されている本格報道番組の草分けである。2016年11月23日に「女性の活躍阻む『壁』 配偶者控除を見直しへ」と題して、自民党税制調査会の野田毅最高顧問と学習院大の伊藤元重教授、「イー・ウーマン」の佐々木かをり社長をゲストに放送した。放送の動画(ハイライトムービー:前後編各約20分)は過去10日分だけしか見ることができないのは残念だが、HPからテキストだけは見ることができる。 他にもBSには帯の報道番組がある。BS日テレの『深層ニュース』、BSジャパンの『日経プラス10』、BS11の『報道ライブINsideOUT』などだが、どれも過去放送動画やフルテキストのアーカイブはない。健闘するネットメディア健闘するネットメディア 2016年は、フジテレビとテレビ朝日がそれぞれインターネット放送局を立ち上げた年として記憶に新しい。特にフジテレビのインターネットテレビ「ホウドウキョク」はかなりの時間を割いて複数回この問題を取り上げている。解説委員が取り上げたり、識者にインタビューをしたりして工夫を凝らしている。 中でも「あしたのコンパス」は、識者にスタジオから電話インタビューしてニュースを深掘りする番組だ。専門家にじっくり話を聞くことができるため、一つのテーマを理解するには最適だ。過去の放送がアーカイブ化されており、興味のある話題や話を聞きたいゲストが出ている番組を動画で見返すことができるのは画期的だ。「LINE LIVE」でも配信するなど、積極的なウェブ戦略は注目に値する。 一方、テレ朝が参画する「Abema TV(アベマ・ティーヴィー)」は基本地上波放送のネット版であり、地上波ニュースを補完するという目的はもっていないように見える。ニュース番組はあるが、独自編成で地上波との連携性は薄い。将来、ニュース解説番組が放送できるのか、関心は尽きない。 さて、深い情報を知るにはやはり活字系のウェブメディアに一日の長がある。人々が実際に知りたい情報は何か? それは自分に照らし合わせて税制改革で損するのか得するのか、その一点に尽きる。残念ながら、新聞とテレビはその質問に十分に答えられていない。例えば、ダイヤモンドオンラインを見てみよう。新配偶者控除「150万円の壁」で世帯の手取り収入はこう変化する!(2016年12月16日) ファイナンシャルプランナー、深田晶恵氏のこの記事は今回の改正で具体的に各家庭の手取り収入がどう変化するのか具体的にシミュレーションしている。まず夫の年収別に、・1120万円以下…パート主婦家庭は減税、専業主婦世帯は変化なし・1120万円超~1170万円以下…パート主婦家庭は減税が多いが一部増税、専業主婦世帯は増税・1170万円超~1220万円以下…パート主婦家庭は減税が多いが一部増税、専業主婦世帯は増税・1220万円超…パート主婦家庭は変化なし、専業主婦世帯は増税 と示した上で、次に夫の年収を700万円に固定、妻の「パート収入の壁」ごとに家計への影響をグラフで比較した。詳細は記事を見てもらいたいが、グラフを使って説明しているためとても分かりやすい。 さらに、「手取り回復分岐点(壁を超える前の世帯手取りが回復する妻の収入額)」が今回の改正で引き下がっていることを示し、妻のパート収入が「壁」を超えてどのように変化するかを解説、就業調整をせず「壁」を超えて一時的に世帯手取りが減っても中長期的に見て働き続けることが大事だと提言している。 他にも厚生年金や健康保険、介護保険の負担を強いられる「106万円の壁」(従業員501人以上:2016年10月から適用)に着目。パートの主婦が自分で保険料を負担しなければならなくなったとき、勤務先の社会保険に加入するべきか、国民年金・国民健康保険に加入するべきか、独自の分析をしている。こうした実用的な情報は、やはり経済専門メディアの独壇場だ。特に専門雑誌は紙が売れなくなって久しいため、ウェブ版に長年力を入れてきた。それが今花開いているといえよう。 新興メディアには、ヤフー系のTHE PAGEやBuzzFeed Japan、朝日新聞系のハフィントンポスト日本版、独立系のNewsPicksなども元気が良い。今はまだニュース解説にさほど力を入れていないようだが、今後、その分野に進出してくるところもあるだろう。引き続き注視したい。伝統メディアの今後の戦略伝統メディアの今後の戦略 そうした中、伝統メディアは今後どのような戦略を取るべきなのか。 まず新聞だが、専門誌に比べ、分析が弱い。というか、せっかく膨大な数の記者を抱えているのにそれが紙面に活かされていない。特にウェブ版は情報がどこにあるかわかりにくく、検索もしにくいのが致命的だ。 新聞の強みは社会部、政治部、経済部、外信部、それぞれに経験を積んだ記者がいることだ。一つのテーマを縦割りでなく、横断的かつ有機的に分析し、深掘りした情報を提供できるはずだ。 特に、自民党の茂木敏充政調会長が強く主張していた「夫婦控除」案はなぜ消えたのか。「選挙対策で断念した」という記事はあるが、どこにどのような力学が働いたのか、読者にとって興味のあるところだろう。安倍内閣が本気で女性の働き方改革に向き合っているのかを知る一つの指針となり得るからだ。この件について、日本経済新聞が5日連続で興味深い連載を掲載した。税制改正 激変の構図(1)まだ分からないのか(2016年12月13日)税制改正 激変の構図(2)「雑魚はいい、森を呼べ」(2016年12月14日)税制改正 激変の構図(3)「すべて菅さん次第」(2016年12月15日)税制改正 激変の構図(4)「動かぬならムチを」(2016年12月16日)税制改正 激変の構図(5)「メンツ保てれば」(2016年12月17日) これを読むと、各省庁の思惑の違いと政府与党間でのせめぎあいが交錯し、結局抜本的な改革がなされず、小手先の改正で終わった顛末がある程度わかる。しかし、それだけでは読者は満足しないだろう。 せっかくこうした取材力があるのだから、どうしたら今の税制が女性の働き方を変えるようなものになるのか、具体案を出してもらいたい、と思うのではないだろうか。ウェブ版には紙面の制約がないのだから思い切った編成で記事を書けるはずだ。 次にテレビだ。テレビは地上波のリアルタイム視聴にこだわっているからなのか、放送した内容をネットで拡散してより多くの人に知ってもらおう、という意識が希薄なようだ。「配偶者控除」のような生活に身近で誰しもが興味を持つような内容こそ、放送後もきちんとコンテンツとして残しておくべきだと考える。テレビと新聞に欠けている視点 前項で述べたように、一部のテレビ局はネット放送局を立ち上げ、地上波やBSで放送出来なかった内容を深掘りする試みを始めている。フジテレビの「ホウドウキョク」がまさにそうだ。しかし、まだまだインターネット放送を視聴している層は10代から20代前半の若年層に限られ、25歳以上の働く女性や専業主婦らにはなじみが薄い。特に専業主婦層は地上波を見ることが多いだろう。 したがって、まずは地上波のワイドショーや夕方のニュースでしっかり「配偶者控除」のような問題を取り上げることが大事だ。さらに放送だけにとどまらず、その内容をネット上にアーカイブ化し、スマホで気軽に見られるような工夫が必要だ。 テレビ放送は一過性のもので放送時間の制限もある。難しいテーマを扱うには不向きなメディアだ。視聴者に一つ一つのテーマについて理解を深めてもらうためには、放送にさらにプラスした深い解説をウェブで提供すればよい。視聴者は放送で未消化だった部分を補強することができる。 番組でそれを告知し、視聴者をウェブに誘導することで番組、並びにその局のファンを増やし、そこからまたリアルタイム視聴に回帰させる。地上波・BS・ネット放送・各々のウェブページを連動させることにより、中長期的にステーションイメージをアップさせ、固定視聴層を囲い込む戦略だ。 最後に、テレビと新聞に欠けている視点は、真に女性が働きやすい環境とはどのようなもので、どうすればそれが実現できるのか、という視点だ。単に税制をいじるだけで解決できるものではない。安倍首相が年初から力こぶを入れる「働き方改革」が具体的に動き始めることが、日本経済再生への道でもある。 実際に子育てしながら働く意欲のある女性は多い。彼女(もしくは育休中の彼)らが働きやすい環境を作り出すのが経営者の務めであろう。彼らの背中を押すためにもメディアの果たす役割は大きい。

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    骨抜きの働き方改革をみれば「アホノミクス」批判も納得できる

    が、こちらは、夫と妻の扶養がセットのほうが負担が少ないととらえられがちになる。 ならば、これで劇的に働き方改革が進むかと聞かれて、ピンと来る人も少ないだろう。計算が得意な人は、最終的には、たかが38万円分の所得控除や、妻の社会保険扶養外になることより労働時間を増やし、働いたほうがトータル所得は増えるわけだ。しかし、そうなっていない社会の実情を踏まえての103万円と130万円の壁に対してメスを入れる方法は下記のようにすべきと考える。 ① 壁をそもそもすべて撤廃する。控除をなくせば、自然と働かざるをえなくなる。 ② これまで以上に労働力投入、世帯収入の引き上げ、政府の歳入増加を考えるなら、逆に103万円以下に増税、負担増加、103万円以上に減税など、負の負担を与え、働きたくなる仕組みへ傾斜させる。 ③ 一般的には①が有識者では提言されているが、②はさらに過激である。しかし、どちらも政策を実現すると、有権者の票を減らすリスクがあり、結果として、103万円の壁を150万円に引き上げる折衷案とする。そもそも効果があるのか疑問 では、この150万円の壁に引き上げた給与所得控除は効果があるのか。そもそも非正規、パートタイマーの年収は200万円を超えることは極めて難しい。最低時給1000円で8時間、20日働き、192万円。4時間なら、96万円。150万円の壁だから、6時間平均で働けるのか。パートのシフトを考えたら現実的ではない。 サービス産業がパートの場合は多く締めるが、昼時と夕方、夜のシフトを考えると、10時から6時間だと組みにくい。もちろん、人手が不足しているので6時間も考えざるを得ないだろうが、扶養世帯の女性が6時間労働って、家事等を考えた場合にも効果は限定的ではないだろうか。 ということで、4時間から5時間のパートの人を、契約社員状況までまずは引き上げたくなる仕組みを作るインセンティブが第一のバーなら、思い切って年収200万円を所得控除のバーとして引き上げてみてはどうだろうか。 これは積極的な案ではなく、折衷案でという現実的な判断を踏まえた場合の提言である。社会保険のバーは、200万円までは選択式でいいようにも見える。または、こちらは、強制的な社会保険制度の加入を義務化するなら年金のみは必須という、セパレート的な政策案も一つかもしれない。 個人的には、年金は一旦解散し、シンガポール方式の確定拠出年金政府管理型のような制度にするなら社会保険は全加入でも問題ないとは思っている。 次に、そもそも女性の就労率の増加、M字カーブ(日本人女性の年齢階級別労働力率のグラフ)の解消という点については、すでにM字カーブは、アメリカと変わりはなくなってきており、限界が近い。あとは、女性一人当たりの所得をいかに引き上げるかだ。※写真はイメージ 正社員比率が4割程度ということで、世帯収入が同一賃金同一労働で変われば引き上がると思いたいが、こちらも実効性には疑問符が付く。そこで、給与所得控除に逆M字カーブを作ってみてはどうかという折衷案も出してみたい。 200万円までの非正規労働者は給与所得控除そのまま38万円で、200万円以上の正社員になると、給与所得控除は76万円と倍増させる。さらに、労使折半の会社負担分は、この制度の対象者には減免する。あるいは、250万円までは減免する。本来は野党の役割 減税ばかりすると財源がなくなるではないかと、聞こえが良すぎて実現性に乏しいという声が出るわけだが、103万円の人が200万円になれば、正社員のため会社と労使折半の社会保険料が国に入る。 税金も社会保険料も1円も払わない人に実質数万円の減税をしていた人から、減税額が10万円近くまで引き上げても、それを上回る税金と社会保険料で会社負担を減免しても、倍増して払ってくれる人を作り出すことになる。 家庭も世帯年収が平均の約600万円が700万円に引き上がるわけだ。財務省主導で消費増税、社会保険料増加などで個人の家計は実質賃金が伸び悩み、可処分所得はもとより、苦しいという家庭が多いのが現実である。 本来はこれらの対案こそ、与党より野党がやるべき政策である。「一強多弱」の理由は与党が強いのでなく、野党が「無責任」すぎる点にある。今回の150万円の壁の引き上げも、何でも反対の野党なら反対、理想は控除廃止。でも、これは野党が与党ならやっぱり踏めない踏み絵。与党が出した折衷案に理想を言いつつ、何種類か対案を出してほしいものである。民進党の蓮舫代表(右手前)の質問に答弁する安倍晋三首相 トランプ現象を野党が意識して「日本でも不満の受け皿を」とパクリ的にやろうとしてもうまくいかないだろう。トランプ現象の最大の効果は、インフラ投資と減税、所得格差是正。減税して税収を増やせる投資をしてリターンを生むビジネス感覚を政治にもという声がこれまた、日本でも潜在的な「トランプ現象」の入り口にあるのだろうと思われる。 とにかく、財政再建と減税、税収増加、景気拡大のトータルバランス、相反する矛盾の解決を与野党の政治家及び官僚に期待したいものである。

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    配偶者控除をなくしてどうする? 女性は「家庭」にあってこそ輝く

    細川珠生(政治ジャーナリスト) 誤解を恐れず言えば、女性が「仕事も子育ても」どちらも完璧にこなしていくことは不可能だ。必ず「どちらか」を選択しなくてはならない。それは一生にわたっての選択の場合もあるだろうし、瞬間的な場合もある。また時期による「濃淡」という意味の選択もある。 別の言い方をすれば、どちらもやっていこうと思えば「そこそこ」というので精一杯というのも現実である。最近は、ここに親の介護も加わり、そこそこの様相はますます強まっている。男性も積極的にこれら家庭の事情に加わっていくことが求められる時代になったが、それでも男女が全く同じようにその役割を担うのも不可能だ。 それは男性と女性という性別の違いが存在し、その違いをなくすことは根本的に不可能であるからだ。違いをなくすことより、むしろその違いを生かす社会の方が私は合理的であり、効果的であると思う。 その視点に立つと、「配偶者控除」という仕組みはあって然るべきものと考える。昨今の「女性の活躍」を目指す風潮の中で、配偶者控除がその障害となっているように捉えられているが、私はそうは思わない。 「先が見えない」と思ってきた私自身の子育ても、気がつけば義務教育を3分の2終えるところまでたどり着いた。私はどこかの社員として働いてきたのではないので、この間産休もなければ育休もなかった。事実、出産の4日前まで仕事をし、産後1カ月で仕事を再開した。また、いわゆる「自営業」扱いでもあり、夫の扶養家族にも結婚以来入っておらず、よって配偶者控除の適用対象者でもない。 また、保育園入園可否の優先度も低く、保育園など公的な子育て支援のお世話にならずに、仕事と子育ての両立を行ってきた。現実はとても厳しい毎日で、いつも「どっちつかず」と思いながら12年間この状態が続いてきた。 「中途半端」な自分自身にイライラすることもあったし、いつも時間に追われ、セカセカしている日常生活に、私の家族は本当に幸せなのだろうかと自省することもあった。しかしその中でも、私の軸足は常に母親としての役割に置くという決意は変わらなかった。 それは、仕事はその気さえあれば、後からいくらでも挽回できるが、子育てはやり直しがきかないと思ってきたからである。その結果、30代後半から40代前半に、思うように仕事ができなかったのも事実だ。子供にとって本当に幸せなことは何なのか しかし、子供が小学校中学年以上になれば、それまでに比べて随分仕事との両立が可能になる状況が増えてくる。それは子供の帰りが遅くなったり、子供が自分自身でできることが増えてくるので、物理的に余裕ができるということでもある。とはいえ、まだ小学生は幼く、いざという時の判断はできない。そう考えると、ちょっと楽になったことに油断して、軸足を仕事へ移すと、子供は一気に悪い方向へ進んでしまう。ここで気を緩めず、母親としての軸足をずらさないことが重要であるのだ。 母親の心配は尽きないもので、中学生になったらなったで、高校生は高校生で、その時々の母親としての役割に自分の存在意義を見出そうとするのかもしれない。時期的にはそこへ親の介護の問題が覆いかぶさってくる。介護はすべての人がその負担を経験するものでもないが、長寿社会の日本においては、育児と介護のダブル負担の問題は益々深刻化していくだろう。 子育ても介護も、別に女性だけの役割ではないし、特に介護は力仕事も多く、男性の協力は子育て以上に欠かせない。しかし、私が根本的に男女の役割の違いがあると思うのは、子供や親への対処の仕方が全然違うからだ。 女性、つまり母親は目の前にあることへの対処能力が高い。食事の支度をしながら、子供の勉強を見たり、親からの電話に対応したりしても、家の中のことは、常に同時多発的に起こる場合が多いが、それも何とかこなしていくことができる。食事の支度ひとつをとっても、片方で煮物をしながら、片方では炒め物をするなど、そもそもが同時進行の連続なのである。子供のちょっとした表情や顔色の変化に気づくのも、母親の能力として重要なところである。 一方、男性は、一つのことに集中して高い解決能力を発揮する。子供との勉強や遊びにしても、子供と同じ目線で徹底して、集中して行うことができるのだ。また目の前にあることだけでなく、もっと広い視点から物事をとらえることができるのも、女性にはなかなかできないことでもある。 もちろん、個人差はあるし、ひとり親世帯では両方の役割をしなければならないことが多いとはいえ、父親と母親が同じ能力で同じ役割でよいのなら、そもそも男女の違いがあることにすら意味がなくなってしまう。 私は配偶者控除の事を考える時、女性の家庭での役割の重要性をもっと考えるべきであると思う。特に昨今の配偶者控除廃止の議論は、女性を労働力として活用したいという産業界の都合だけに立っていることに、相当の違和感を覚える。 確かに、日本の経済力の縮小により、夫婦共働きが避けられない状況を抱えている家庭も多い。また、家族の形態が多様化している中で、世帯単位の考え方を再考する余地もあるだろう。高い能力を持った女性が、社会でその能力を発揮できないことは「社会的損失」であるというのも、分からないこともない。 しかし、女性は一度母親となったのならば、その役割や責任は、仕事の有無で変わるものではない。そう考えると、母親としての時間を大きく削ってまで社会に出ることが、特に子供にとって、本当に幸せなことなのかどうかは女性の活躍に関心が高まる今こそ、改めて考えるべきである。女性の能力は家庭においてこそ、発揮される場合も多くある。 時期はあるにせよ、母親と子供を引き離すような制度をあえて作ることが、社会の在り方として本当によいのか、母親の立場から再考を促したい。

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    アベノミクスの働き方改革は必ず失敗する

    安倍政権による働き方改革が進められているが、女性活躍やそれに伴う税制改革はいま一つの感がある。「配偶者控除」は年収上限を150万円まで引き上げるが、女性の社会進出や所得向上にどれほどの効果があるのか疑問だ。期待されるアベノミクスの一環とはいえ、野党もメディアもその役割を果たしておらず、予想される結末は「失敗」ではないか。

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    消費税アップより影響が大きい、子育て世代直撃の制度改正

    藤尾智之(税理士・介護福祉経営士) パンドラの箱がついに開きます。見直し対象となっていながら見送られ続けた配偶者控除制度。そして、破たんが心配されている介護保険財政の立て直し。この問題解決には痛みを伴う不人気政策が必要なため、時の政権は本腰をいれず、いつも「おおかみ少年」呼ばわりされてきました。しかし、今回は本当に実現されるようです。配偶者控除のおさらい 専業主婦(専業主夫)のいる家族に恩恵のある配偶者控除。配偶者控除は高度経済成長時代の昭和36年に誕生し、今年で56年目です。当時は夫が働きに出て、妻は専業主婦というサザエさんのような家族構成がモデルでした。専業主婦は働きにこそ行かないですが、家庭内の秩序維持や夫の後方支援を担っています。配偶者控除とは、いわゆるこの内助の功を夫の税負担軽減に反映させたものです。※写真はイメージ 所得税の配偶者控除は、専業主婦(夫)の所得が38万円以下の場合、その夫(妻)の所得税の計算上、所得控除として38万円の控除が受けられます。例えば、妻が年間100万円の給料を稼いでいるとすれば、妻の給与所得は所得控除額65万円を差し引いた35万円となります。38万円以下となるので、夫の所得税の計算上、配偶者控除が受けられます。 上記のケースを使いさらに具体的な節税効果を確認してみます。夫の給与を500万円、給与所得控除額を154万円とすると給与所得は346万円となります。そして、社会保険料を68万円、配偶者控除38万円、基礎控除38万円とすると所得税は10万4,500円となります。仮に配偶者控除がないとすると所得税は14万2,500円です。配偶者控除は、年間3万8,000円の節税効果を生み出しています。 忘れがちですが、住民税にも配偶者控除があります。控除額は33万円です。住民税の税率は都道府県民税・市町村民税合わせて10%なので、年間3万3千円の節税効果です。夫の給与が500万円の場合、所得税・住民税の節税効果は合計7万1,000円です。これはかなりの節税効果です。配偶者控除と似ている配偶者特別控除とは? 配偶者の給与所得が38万円を超えるとこの世の終わりと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。配偶者特別控除があります。配偶者控除とよく似ている名前のため、こんがらがる方もいるかもしれません。実は、配偶者特別控除の最大控除額も38万円です。ただし、最大がある一方で最低もあり、最低控除額は3万円です。配偶者控除はこの先なくなるのか? 配偶者控除は38万円の定額控除ですが、配偶者特別控除は、配偶者の所得が増えるにつれ控除額が逓減していく仕組みです。例えば、調整に失敗して妻の給与所得が39万円になったとしても、配偶者特別控除として38万円の控除が受けられます。一方で妻の給与所得が75万円だった場合の配偶者特別控除は最低の3万円となります。配偶者控除はこの先なくなるの? 政府が掲げる新3本の矢の1つである女性の社会進出を妨げているものの1つとして、103万円の壁が挙げられています。前項で触れたように配偶者控除を受けるために妻の働く時間を調整して103万円にしているケースが多々あります。税制が労働力供給の足かせとなっていると判断され、それだったら配偶者控除を廃止しようと議論されています。 この配偶者控除や配偶者特別控除は廃止となるのでしょうか。代わりに何か新しい控除は作られるのでしょうか。税制改正を議論しているのは自由民主党の税制調査会です。その会では、配偶者控除は廃止し、その代わりに夫婦控除を検討しているようです。夫婦控除の中身はまだわかりませんが、夫婦控除と名前が付くからといって期待すると裏切られそうです。国はお金がない中、消費税増税は見送られました。この流れでいくと、所得税は夫婦控除ができても、今までよりかは増税となってもおかしくはありません。※写真はイメージ 配偶者控除の廃止や夫婦控除の創設は、税制調査会で話し合われ、その後平成29年の1月ごろから始まる通常国会で議論される予定です。仮に可決された場合には、遡って平成29年1月から施行、遅くても平成30年1月から施行されることとなります。どれだけのダメージとなって私たちの生活に跳ね返ってくるかわかりませんが、さらなるダメージとして消費税10%への増税も平成31年10月に控えています。40歳未満も介護保険料を徴収されるの? 平成12年から始まった介護保険制度。いけいけどんどんで利用者は増え、いつからか財政の危機が囁かれています。介護事業者が受け取る介護報酬は削減され、介護保険を利用できる高齢者は軽度者から徐々に切り離されてきました。民間の任意保険だったら、サービス低下につれて加入者離れが起きてもおかしくない状況です。 さて、サラリーマンも個人事業主も40歳になると介護保険料を納めます。強制保険なので納付は原則免れません。介護保険料の平均納付額は第1号被保険者の65歳の場合で5,514円です。40歳以上65歳未満の第2号被保険者は、加入している保険者や収入によって異なるため、平均の算出はできません。仮に協会けんぽ(東京)に加入している企業で働いているサラリーマンのケースで月給30万円とした場合、介護保険料は月々2,370円となります。年換算に直すと28,440円です。ボーナスからも徴収されますので、その負担額は無視できません。私たちの生活はどうなる? 高齢者優遇となっているわが国の社会保険制度。子育て世代や子供そのものにも恩恵がないと現役世代の労働意欲に水を差します。これだけの痛みを国民に要求するのであれば、与党も野党も日本の未来のために真剣に議論を尽くさなければ納得がいきません。私たちの生活はどうなるのか? 所得税、住民税は増税。消費税も増税。社会保険料負担も増加。給与やボーナスが多少増えても全て吸収されてしまいそうです。さらに、安倍政権や日本銀行総裁の黒田氏の目指す2%の物価高政策が続き、物価が上がった暁には、生活はいったいどうなってしまうのでしょうか。 子育て世代にとって、共働きは簡単ではありません。可愛いわが子を保育園に預けられなかったらダブルインカムの道は絶たれます。保育園に入園できたとしても、フルタイムでの労働は肉体的にも精神的にも相当な負担がかかります。傍から見る以上に本当にきついんです。 一億総活躍。言うが易しですが、やる側にとっては覚悟と備えが必要です。国や自治体からの支援もあるでしょうが、今までの政策から考えても期待できません。なんとも住みにくい世の中になりそうですが、不平不満を言い続けても誰も助けてくれません。だからこそ、今のうちから気づいて備えれば、将来の自分の役にきっとなるはずです。【参考記事】■配偶者控除の廃止について、税理士に聞いてみた。 シェアーズカフェ・オンライン編集部http://sharescafe.net/38791870-20140513.html■介護保険はやっぱり保険ではなくなった(藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)http://sharescafe.net/48977075-20160701.html■介護保険は保険でなはい 「親の介護は老人ホームにお願い」は甘い考え 介護保険を考える(1) (藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)http://sharescafe.net/35018841-20131120.html■介護が必要になった!どうする?(藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)http://sharescafe.net/49045000-20160709.html■介護の問題を絶望にしない秘訣(藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)http://sharescafe.net/48944579-20160626.html

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    大前氏 日本に必要なのは働き方改革ではなく「休み方改革」

    日に行なわれた閣議で、安倍内閣は事業規模28兆1000億円もの経済対策を決定した。このなかの目玉は「働き方改革」で特命担当相を新設、加藤勝信1億総活躍担当相を兼務させている。経営コンサルタントの大前研一氏が、日本に最も求められている本当の働き方改革とはどんな内容なのかについて解説する。* * * 安倍政権が「最大のチャレンジ」と位置付けているのが「働き方改革」だ。とくに、同じ仕事をしている人に同じ給料を払う「同一労働同一賃金」の実現や長時間労働の是正、最低賃金の引き上げなど非正規労働者の処遇改善に力点を置き、それを実行するために第3次安倍再改造内閣で「働き方改革担当相」を新設した(加藤1億総活躍担当相が兼任)。 安倍首相は記者会見で「“非正規”という言葉をこの国から一掃します」と大見得を切っている。また、厚生労働省は、仕事を終えてから次の始業までに一定時間の休息を入れる「勤務間インターバル」制度を導入した中小企業に対して助成金を支給する方針を明らかにし、2017年度予算の概算要求に約4億円を計上した。  まさに“上から目線”のマイクロ・マネージメントだらけで、民間企業の箸の上げ下げまで政府が差配しようとしている感が強い。 それに経団連も表向きは同調しているが、実は“面従腹背”である。たとえば、御手洗冨士夫・元経団連会長(現在は名誉会長)が会長を務めているキヤノンは「国内生産回帰」を高らかに宣言しながら、今も半分ほどは珠海やベトナムを中心とした海外生産で、国内雇用はほとんど増えていない。 いま日本に必要なのは、政府による強制的・一律的な働き方改革ではなく、国民が自由に長期間の休暇を楽しめるようにする「休み方改革」の施策である。 観光庁がまとめた2016年版『観光白書』によると、2015年の国民1人あたりの国内宿泊観光旅行の回数は年間1.4回、宿泊数は同2.3泊にすぎない。一方、欧米の観光旅行宿泊数は、統計では年間20泊前後だが、実際に私が見るところでは30泊以上だ。 マッキンゼー時代の経験から言うと、たとえばイタリア事務所からは6月末に「See you in September.」という連絡が届き、7~8月の2か月は夏休みで誰もいなくなる。私たちが「なぜイタリアだけ2か月も休むのか」と文句を言ったら、「お客さんがいないから」という答えが返ってきた。 つまり、お客さんがバケーションで旅行に出かけてしまうため、コンサルタントはやることがないというわけだ。アメリカは事務所全体ではなく、個々人が自分の仕事の状況に応じてバラバラに2週間単位の休みを年3回くらい取得する。勤勉と言われたドイツも近年は1か月の休みを取るようになった。そうすると結局、日本だけが休めない。お客さんが休まないし、上司や同僚への遠慮、部下の手前などもあるからだ。人気取りのための押し付け愚策はいらない 実際、総合オンライン旅行会社エクスペディア・ジャパンの「有給休暇の国際比較調査」(2015年)によると、日本の有休消化率は60%で、韓国(40%)に次いで世界ワースト2位である。しかも、日本人は53%が自分の有休支給日数を把握しておらず、これは他国を大きく引き離して第1位だ。 また、有休を取得することに罪悪感を覚える日本人は18%で、これも第1位となっている。休み方に関しては、日本は世界の中でも極めて特異な国なのだ。 ドイツの場合、夏季は6月下旬~9月前半、冬季は12月後半~3月末に約2週間ずつ休みを取るのが普通だ。冬季はスキーバケーションで、その時期は学校の地区によって異なっている。だからドイツのスキー場は週末や年末年始だけ大混雑する日本のスキー場と違い、平日も週末も年末年始も同じようにそこそこ混んでいる。これはスキー場やホテルにとっても、利用客にとっても非常にありがたいことである。日本の場合はゴールデンウイークやシルバーウイーク、お盆、年末年始にバケーションが集中しているわけだが、今後はアメリカスタイルで自分の好きな時に1~2週間の休みを取れるような工夫をしなければならない。そうやって休みを平準化しないと、日本のツーリズム産業は成長しないと思う。そもそも国が祝日や連休を増やして国民を強制的に休ませようとすること自体、大間違いなのだ。 また、日本は1人あたりGDPが欧米より低く、初任給も大卒で平均月額20万円程度と、この20年くらい上がっていない。これは生産性が向上していないことの証左にほかならない。雇用を減らして1人あたりの生産性を高める努力を、企業が怠ってきたからである。つまり(雇用が大幅に減る)生産性の改善こそが日本企業に求められる最優先項目ということになる。 働き方・休み方改革は企業が各々の社内事情に応じて自主的に取り組むべき副次的な課題である。それを安倍政権は人気取りのために「働き方」を企業に一律的に押しつけようとしているわけで、これほどのポイント外れの愚策はない。さっさと引っ込めるべきである。関連記事■ 全国最年少31歳の千葉市長が地方行政の現場状況を綴った本■ 「秋の9連休実現より月1の有給消化定着を目指すべき」と識者■ 無制限残業の温床「36協定」見直し 労働者はラクになるのか■ 元経産官僚・古賀茂明氏が省庁の縄張り争いの実態明かした書■ 年収減少時代 公務員の給料は1001万円に増えている

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    負担増ラッシュが始まるも国と地方の税収は年間21兆円増

     半年前、安倍晋三首相は「内需を腰折れさせないため」と消費税率10%への引き上げを再延期し、国民は「これで大増税が遠のいた」と胸をなで下ろした。 しかし、こういう時が一番危ない。財務官僚は大型増税ができないとなると、細かい増税や減税廃止、社会保険料アップで国民の負担を増やそうとする“習性”がある。 かつて小泉純一郎首相は「私の内閣では消費税は上げない」と約束したが、財務省はそのかわりに所得税・住民税の定率減税廃止、年金保険料の引き上げなどを実施し、政権が代わるときには国民負担がなんと年間13兆円(国民1人あたり年間10万円)も増えていて愕然とさせられた。 案の定、今回も“消費税を上げなかった分を取り返せ”とばかりに負担増ラッシュが始まった。 政府はまず「増税見送りで財源がなくなった」と、来年4月に廃止されるはずだった自動車取得税の存続を決め、来年度の税制改正で自動車やビール類への課税強化を次々に打ち出した。「財源がないなら仕方がない」と鵜呑みにするとバカを見る。実は、安倍政権になって国と地方の税収は年間約21兆円も増えている(2012年の78.7兆円から2016年見込みは99.5兆円)。2014年に消費税率を8%に引き上げた分の税収増(年8兆円)を差し引いても年13兆円の純増だ。元大蔵官僚の高橋洋一・嘉悦大学教授が語る。「実は財務省が税制改正で一番狙っていたのは配偶者控除の廃止です。メディアにも“103万円の壁(※注)が女性の勤労意欲を抑制している”とキャンペーンを張らせて準備万端のつもりだったが、官邸は途中から、配偶者控除の廃止ではなく、控除を増やしてパート主婦がもっと働けるようにする方針に転換した。【※注/妻(もしくは夫)の年収が103万円までなら38万円の所得控除(配偶者控除)が受けられる。そのため、妻の収入を103万円以内に抑えようとする意識がはたらき、女性の社会進出を妨げているといわれる】 控除廃止で6000億円の増収をあてこんでいた財務省は面子が潰れた。まともな理屈で考えれば、せっかく消費税を延期して景気回復を優先したのだから、いま増税を急ぐ必要はない。しかし、この失敗で意地になった財務官僚は“それなら他でとってやる”といろんな増税に手を付け始めたわけです」関連記事■ 高額ローンの家 2014年4月~2015年9月に買うとおトクな理由■ 森永卓郎が増税他の影響試算 4人家族で1年に24万円負担増■ 消費税5%アップで年収300万円世帯 13万4046円負担増加■ 増税と値上げで年収300万円世帯の負担は年間40~60万円増■ 菅総理言及の消費税増税 「経済の常識知らぬ妄言」と専門家

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    そもそもパート労働者は労働を調整して節税しているのか

    ※写真はイメージ 増税になるのなら思い切り働きたい、女性はそう思っているのではなく、同調査でも今後の働き方について「正社員になりたい」という希望は22%に対し、「パートで仕事を続けたい」が71.6%で大半がパートのままで十分と考えているようです。「女性活躍促進」はどのくらい進むのか 今年の4月に女性促進法が施行されました。これは、従業員が301人以上の従業員がいる会社に義務付けられたものです。女性の雇用や今後の労働改善に役立つものとなってほしい法律でありますが、現在のところ対象者が限定的で、女性全体の雇用の促進や改善につながるとは言い難いものです。女性が労働力となり社会に出て経済を活性化するためには、税のペナルティーをいち早く課すより女性がより働きやすい環境づくりが急務ではないのでしょうか? 多くの女性の雇用や労働改善がなければ「女性活躍促進」の言葉も、配偶者控除の見直し論とともに国家財政再建のために都合よくつかわれる口実になってしまのではないかと思えてなりません。【参考記事】■配偶者控除は本当に女性の社会進出を阻んでいるのか?(浅野千晴 税理士)http://sharescafe.net/47252222-20151218.html■自営業だと保育園に入れないって本当? (浅野千晴 税理士)http://sharescafe.net/49152786-20160724.html■スポーツ選手は見た目より厳しい?ご褒美には税金が待っている (浅野千晴 税理士)http://sharescafe.net/49318448-20160816.html■消費税増税延期でもバラマキ?給付金もらえます。 (浅野千晴 税理士)http://sharescafe.net/48884963-20160619.html■保育園の滞納問題。取り立ては年々厳しくなっている? (浅野千晴 税理士)http://sharescafe.net/48230568-20160330.html

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    中国はきっとほくそ笑む! 日本は移民国家「豪州の失敗」に学べ

    山岡鉄秀(AJCN代表) 経済大国の日本だが、国民一人あたり名目GDPでみると、IMF(米ドルベース、2015年)の統計によれば、世界26位($32,478.90)で、決して効率は良くない。一方、AJCNの拠点である豪州は10位($51,180.95)で、日本よりも2万ドル近く高い。この差は大きい。 この豪州の豊かさは、間違いなく移民に支えられている。今や人口の28%が海外生まれとされ、4人に1人以上が海外からの移民ということになる。 文化らしい文化がなかった豪州だが、移民が持ち込んださまざまな文化が融合して、格段に厚みが出てきた。もともとイギリス系で、料理らしい料理もなかったが、ここ10年ほどで豪州の食材を日本料理やフレンチのフュージョンで仕上げる「モダン・オーストラリアン」というカテゴリーが登場した。マスターシェフという料理番組がヒットするなど、まさに隔世の感がある。 移民国家の豪州が、同じく移民国家の米国ほど荒れないのは、豪州が巨大な島国で、米国にとってのメキシコのように「国境を接する国」がないことと、移民を基本的に技能ベースで入れてきたからだ。ボートで難民が押し寄せても、南太平洋の島々に収容し、本土への上陸を阻止している。 国力増強に貢献した移民政策だが、もちろんマイナス面もある。日本人はそこから早急に学ばなくてはならない。 まず肝に銘ずるべきは、特定の民族の移民数が一定数(臨界点)を越えた時、まるで自国にいるような傍若無人な態度に出ることがある、ということだ。 その典型的な例が、我々AJCNが最終的に阻止した、ストラスフィールド市における中韓反日団体による慰安婦像設置活動だ。ここでのポイントは、市議会は本来、そのような申請はポリシー違反を理由に即刻却下できたはずなのに、逡巡としていたずらに時間を浪費し、最終的に却下するのに1年半近くを要したことである。 いったいなぜか。それは市議たちが、合わせて住民の30%に達する中韓系住民の不評を買い、次の選挙で落選の憂き目に遭うことを恐れたからだ。市長を含めて7人の市議たち(市長は市議たちの持ち回り)のうち、常識に照らして慰安婦像に反対したのは3人だけだった。市長を含む後の4人は、明らかに中韓住民の顔色を窺っていた。我々の戦いは、いかに「良識の輪」を広げていくかだった。最後は住民の意識調査まで行われた。中国人経営者に懇願した商店街の会長 このように、慰安婦像設置が市の記念碑ポリシーに反し、豪州の多文化主義に反していても「有権者の横暴」の前にあっさり折れてしまったのである。我々が「住民の意思」として反対活動を展開しなければ、いとも簡単に建ってしまっていただろう。我々が学んだ最大の教訓は、民主主義社会とは決して自動的に良識に添った判断が享受される社会ではなく、正義を実現するために戦う手段が用意されているに過ぎない、ということだ。戦わずして正義は守れない。力なくして正義は実現できない。いま、日本人にその覚悟はあるか。 私がよく行く東京・下町の歴史ある商店街でも、歩いているとやたらと中国語が耳に飛び込んでくるようになった。廃業する商店が後を絶たず、家主が中国人に貸し出してしまうからだ。(写真はイメージです) これはその商店街の床屋で聞いた話だが、ある日、商店街会の会長が、中国人が経営する店に「会費を払って会員になって欲しい」と頼みにいった。しかし、応じた中国人は「我々は中華系住民のために商売をしているのだから、日本人の会に入る必要はない」と突っぱねてきたという。その後、この会長はどういう対応をしただろうか。なんと、「では会費を安くするから入ってくれませんか?」と頼みにいったという。もちろん、これも蹴られた。会長さんは困って区役所に相談に行ったが、「税金ではないので、強制的に徴収できません」と言われるだけだったらしい。この逸話はまさに、日本人が移民をコントロールする能力が完全に欠如した証左と言っても過言ではないだろう。 私は床屋の主に言った。「会長さんに伝えてください。懇願したら逆効果です。媚びる弱者と見下されるだけです。中国人の代表を訪ねてこう言うのです。この会費には街灯代が含まれている。払わないなら、君たちの店の前にある街灯からは電球を外すが、それでもいいかと」。もちろん、本当に外すつもりで臨まなければならない。また、区議会も「商店街で店舗を賃貸に出すときは、商店街会費も家賃とともに徴収し、納入しなくてはならない」という条例を作ってしまえばよい。 すぐに頭を下げてしまう日本人は、数で劣勢になった途端に簡単に凌駕されてしまうだろう。外国人に地方参政権など与えようものならどうなるだろうか。移民国家の豪州でさえ、帰化しなければ選挙権も被選挙権も与えられないのに、長く住んでいるという理由だけで参政権を与える愚かな国は、世界を見渡しても日本ぐらいである。豪州を震撼させた中国亡命外交官の「告白」 東京都江戸川区にインド人が多く住むことは有名だが、トラブルが起きた話は聞いていない。なぜだろうか。ひとつは、住民の多くがIT技術者などの高度人材(高額所得者)であることだが、基本的に「親日的で融和的」だからだ。 たとえ、高度人材が有用であっても「親日的で融和的」という条件を絶対に外してはならない。「反日を国是とする国」からの移民には永住権を出さないことにしても、人種差別にはならない。のっぴきならない安全保障上の問題だからである。 そのことを痛切に教えてくれたのが、2005年に豪州に政治亡命した元中国外交官の陳用林だ。 父親を無実の罪により中国共産党の拷問で亡くした陳は、天安門広場の虐殺を目の前で目撃して衝撃を受けたそうだが、それでもいつしか外交官として中共政府の「先兵」となっていた。命ぜられるままに、法輪功信者の弾圧、反政府勢力の監視、中共にとっての危険人物の拉致などに携わっていた陳は、ついに良心の呵責に耐えかねて豪州政府に政治亡命を申請した。 その際、陳の「告白」は豪州を震撼させた。陳によれば、その時点で豪州に1千人の中共スパイが潜伏し、軍事、科学、経済分野などのあらゆる情報を盗んでいるとのことだった。 スパイには2種類ある。現地にダミー会社を作り、そこにビジネスマンとして工作員を送り込んだり、研究機関に研究者として送り込むケース。そして、もうひとつは現地に住んでいる中国人や留学生を勧誘して「エージェント」に仕立て上げるケースだ。エージェントの勧誘には金とハニートラップが使用され、中央政府を含むあらゆる個所にスパイ網が張り巡らされている。その他にも、現地に住む中国人が自由主義に目覚め、中共に批判的にならないように、ありとあらゆる洗脳工作がなされるという。 陳は最近もテレビのインタビューに応じ、「この10年間でスパイの数は相当増加しているはずだ」と述べている。 最重要標的の米国や、その同盟国の日本にははるかに多くのスパイが入り込んでいると陳は言う。中華系団体(留学生を含む)の代表は、ほぼ間違いなく中共政府に繋がっている。政府やマスコミなど、あらゆる主要機関にすでにスパイ網が張り巡らされていると考えて間違いない。米国のフランクリン・ルーズベルト政権に、驚くほど多くのソ連のスパイが入り込んで日米開戦を工作していた事実が思い起こされる。反日工作員に城門を開ける愚 私が最も衝撃を受けたのは、陳の政治亡命申請に対し、豪州政府が当初取った冷淡な態度だった。わざわざ中国総領事館に陳の個人情報を照会し、実質的に陳の亡命をリークする有様だった。なぜそんなことをしたのか。答えは「経済」である。2000年のシドニーオリンピック後、豪州は資源を爆買いする中国への依存を高める一方だった。政治的な問題で、お得意様の中国の機嫌を損ねたくなかったのである。 日ごろは高邁な理想を掲げていても、現実には経済最優先で、お得意様がどんなに酷い人権侵害を繰り広げていたとしても、結局は二の次、三の次なのである。昨年は北の要衝ダーウィン港を人民解放軍と密接に繋がる中国企業に99年間リースするという大失態までやらかした。もちろん、州政府に対する工作がなされていたことは疑う余地がない。「極めて愚かだ」と陳は嘆く。 去る1月17日、法務省が外国人の永住許可について、高度な能力を持つ人材に限って許可申請に必要な在留期間を最短で「1年」に短縮する方針を発表した。これも、経済界からの要請によるものだろう。 私はグローバル企業勤務が長いので、国際的観点から、いかに日本で人材が枯渇しているかよく知っている。そして前述したように、私は移民の効果、特に高度人材の有効性をよく認識している。しかし、「親日的で融和的」という大前提を忘れれば、わざわざ反日工作員に城門を開ける愚を犯すことになる。すでに相当浸食されていると思われる日本にとどめを刺す「ダメ押し」となるだろう。戦わずして占領できる可能性がにわかに高まり、ほくそ笑んでいるのは間違いない。そして、日本の滅亡は、皮肉なことに長期安定保守政権である第二次安倍内閣が決定づけたと歴史に記憶されることになるだろう。 陳用林は今もシドニーで中共の監視下に置かれながら生きている。彼の生命を賭したメッセージを受け取れるかどうかに、日本の命運がかかっていると言っても過言ではない。

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    矛盾だらけの外国人労働者受け入れで浮かぶ「日本沈没」シナリオ

    加谷珪一(経済評論家) 日本の世論は、外国人労働者の受け入れに消極的といわれる。日本は外国人労働者を受けれていない国だと思っている人も多いが、それは幻想である。現実には、多数の外国人労働者がすでに国内で働いている。  厚生労働省が1月に発表した2016年末の外国人労働者数は前年同月比19.4%増の108万3769人となり、4年連続で過去最高を記録した。成田空港に到着した日本で介護福祉士と看護師の資格取得を目指す外国人 受け入れに積極的だったドイツや英国では、定義にもよるが300万人以上の外国人労働者が働いている(国籍を取得した移民は含まない)。人口比を考えれば、日本における外国人労働者の数は少ないともいえるが、欧州は陸続きで、主要国はたくさんの旧植民地を抱えている。こうした環境の違いを考えた場合、日本における外国人労働者の数は決して少ないとはいえない。 背景にあるのは、国内の深刻な人手不足である。日本は人口減少と高齢化が進んでおり、過去15年間で34歳以下の若年層人口は約22%減少し、60歳以上の人口は逆に43%も増加した。若年層の労働人口減少が顕著であることから、企業は常に人員確保に頭を悩ませている。 政府は建前上、就労目的での在留資格については専門的な職種に限っているが、現実には企業からの要請を受け「外国人技能実習制度」など、事実上の単純労働者受け入れ政策を行ってきた。この状況に拍車をかけているのが東京オリンピックによる建設特需である。建設業に従事する労働者の数はピーク時と比較すると約25%、数にして170万人ほど減っており、建設現場では慢性的な人手不足が続いている。政府は外国人建設労働者の受け入れ枠をさらに拡大したい意向だ。 建前上、外国人労働者を制限していながら、なし崩し的に受け入れを増やしているわけだが、こうした、ちぐはぐな対応はリスクが大きい。 外国人技能実習制度については、米国務省から人権侵害の疑いがあると指摘されており、現実に、賃金の未払いや、劣悪な環境での住み込み強要といった事例が発生している。諸外国でも外国人労働者が不当に安い賃金で雇用されるケースは少なくないが、この制度がやっかいなのは、れっきとした日本政府の事業であるという点だ。 政府がこうした事業に直接関与し、劣悪な労働環境を放置しているということになると、場合によっては国際政治の駆け引きにおいて格好の餌食となる可能性がある。日本はこれまで、似たようなケースで国益を何度も損なっていることを忘れてはならないだろう。 一方、日本の人手不足は極めて深刻な状況であり、のんびり構えている余裕はない。 国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、2040年の総人口は1億728万人と現在より15%ほど減少する見込みである。 特に、企業の労働力の中核となっている35歳から59歳までの人口は26%も減少してしまう。これまでは若年労働者の不足だけで済んでいたが、次の20年間は中核労働力の減少という大きな問題に直面することになる。 持続的な経済成長を実現するためには、資本投入、労働投入、イノベーションのいずれかを増やす必要があるが、人口が減少する以上、労働投入の低下は避けて通れない。需要が変わらない状態で、労働力不足から供給に制限がかかるようになると、企業は生産を抑制せざるを得なくなる。すでに供給制限による成長抑制の兆しが出ており、事態はかなり深刻である。労働力不足が招く日本の国力低下 この状況を改善するためには、①外国人労働者を受け入れるか、②女性や高齢者の就業を増やして労働力不足を補うか、あるいは、③イノベーションを活用して生産性を向上させるのか、という選択になる。日本は無意識的に①を選択してきたわけだが、労働をめぐる環境はこのところ大きく変化している。 近年、AI(人工知能)に関する技術が驚異的に進歩しており、人の仕事の一部あるいは全部をAIで置き換えることはそれほど難しいことではなくなってきた。経済産業省の試算によると、AIの普及によって2030年までに約735万人分の仕事がロボットなどに置き換わる可能性があるという。 ロボットの導入で余剰となった人材を、人手が足りない分野にシフトさせることができれば、供給制限で経済が停滞するという事態を回避できる。というよりも、全世界的にAIの普及が進む以上、これを積極的に活用していかなければ、相対的に高い成長を目指すことが難しくなっているのだ。日本も労働力不足という問題に対して、外国人労働者の受け入れではなく、積極的なAI化で対応するのが望ましいだろう。 だが社会のAI化を実現するためには超えなければならない大きな壁がある。それは人材の流動化である。 企業の現場にAIが普及すると、当然のことながら仕事の範囲が変わり、組織の人材を再配置する必要が出てくる。こうした動きは社内だけでは完結しないので、最終的には転職市場を通じた人材の流動化が必須となる。日本人はこうした人材の流動化に対する抵抗感が極めて大きく、これがAI化の進展を遅らせてしまう可能性があるのだ。受付役のロボットに症状などの情報を入力する患者役の自治医大担当者=2016年3月、東京都千代田区 実はこの問題は女性の就労拡大とも密接に関係している。女性の就労拡大が進まないのは、意識面での影響が大きいとされているが、それだけが原因ではない。女性の就労者が増加すれば、企業内部での人材の再配置は避けられず、結果的に流動化を促進してしまう。これに対する潜在的な拒否感が女性の就労拡大を遅らせている面があることは否定できない。 労働力不足は、日本の国力低下に直結する、まさに「国益」に関するテーマといえる。こうした重要な問題に対して、場当たり的な対応を続けることはもはや許容されないだろう。変化を頑なに拒んだ結果、AI化や女性の就労が進まず、外国人労働者の数だけが増えるという事態になってはまさに本末転倒である。

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    外国人労働者はどこまで受け入れるべきか

    日本で働く外国人労働者の数が初めて100万人を突破した。政府は労働力不足を理由に、高度人材の受け入れに積極姿勢をみせるが、現実には技能実習制度や留学生を通じて単純労働者の流入が急増している。場当たり的な対応では、いずれ「移民問題」に直面する。日本は外国人労働者をどこまで受け入れるべきか。

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    日本人はどこまでお気楽なのか? 「在日特権と犯罪」の現実を知れ

    坂東忠信(外国人犯罪対策講師) 国連人口部の定義によれば、移民とは「主権のある母国を1年以上離れて外国に暮らす人」を指しています。そしてこの移民の概念には正規滞在者はもちろん、密入国者や不法滞在者、難民申請中の人、さらに帰化した初代も含まれます。 逆に言うと、本国人とは「本国生まれ本国育ちで本国の国籍を持つ者」であり、それ以外は「移民」として区別され、移民には初代帰化人を含め参政権が制限されるなど、明確な区別が存在するのです。 しかし日本人はこうした移民の定義など政治家でさえ知りませんし、それでいて移民政策をぶちあげたり、なぜか黒人や白人などの人種の違う外国人による集団的定着をイメージしたりしているため、実際に日本が移民国家であることに全く気がついていません。 実は日本は「先進的移民政策失敗大国」なのです。 日本には戦後、「国籍離脱者とその子孫」による「特別永住者」という滞在資格保有者が定着しています。国際結婚などにより50を超える国籍にまで及び、外国籍のまま子々孫々に至るまでその血筋によって外国に滞在できるというシステムは他国に類例がありません。 しかも、一般外国人のような犯罪検挙による強制送還もないため、「在日」外国人枠内での犯罪検挙件数・検挙人口ともに朝鮮半島系がぶっちぎり状態です。警察庁が気遣って公表しなかったため、逆に暴露拡散されて(暴露したのは私ですが…)、日韓外交に関する世論にまで大きな影を落としているのです。詳細は昨年出版された拙著「在日特権と犯罪」にて資料を元に詳しく説明しておりますが、この件一つを見ただけでも、日本はすでに移民国家であり、移民政策に失敗していることがおわかりでしょう。 総務省の在留外国人統計(2016年6月現在)での「国籍・地域別 在留資格(在留目的)別 在留外国人」や同年7月1日現在の「国籍・地域別 男女別 不法在留者数の推移」によると、現在、日本には、230万7388人(中長期滞在者+特別永住者:平成28年6月時点)+6万3492人(不法在留:平成28年7月1日現在)=237万0880人の「実質的移民」が存在します。外国人メイドを使用する文化が日本にはない ただし、この中には「3月」以下の在留期間が決定された中長期滞在者と、1年以上の滞在を許可されながらまだ滞在期間が1年に満たない移民予備群が含まれ、逆に日本人としてカウントされている初代帰化人や、カウントしようのない密入国者の人口を含めた「移民」の数は含まれていません。「移民」の概念を持たない日本は移民のカウントすらできず、これに伴い発生している外国人による生活保護不正受給では、国籍別不正受給世帯数さえ把握していないのに、やれ国際化だ、移民政策だ、などと浮かれる政治家もいまだ多く存在しています。 日本に定着している移民には、他国にない特徴があります。現在、日本の「在留外国人」、つまり移民から帰化初代と不法滞在者を除いた「移民」のうち、29・4%が中国人、19・8%が韓国人、1・4%が北朝鮮出身者で、これを合わせると、なんと50%を超えているのです。不法滞在者数(6万3492人)を加えても、半数以上が反日を国是とする国から来日、定着しているのです。それが日本の「移民」の現状であり、これを国民がまったく自覚していないところが大きな特徴でもあります。 これを受け入れる日本人自身も、他国に類例を見ない「お人好し」であることが、この問題に輪をかけています。たとえば、国家戦略特区として「外国人メイド」を試験的に導入しようという地域がありますが、メイドを雇い使用する文化のある国の多くは、奴隷制度の歴史や王侯貴族文化に根ざした、厳然たる身分の違いというイメージが存在します。 しかし、日本人はどうでしょうか。たとえば、メイドを脇に立たせ給仕させて平然と落ち着いてディナーが楽しめるでしょうか。むしろ落ち着かず「あなたも隣りに座って食べなさい」と促せば、超高齢社会が進むわが国においては、食卓をともにする「話し相手」にしてしまうのではないでしょうか。 逆に経団連をはじめ、2020年に東京オリンピックを控えた大企業では、最初から低賃金で「技能実習生」を実質労働者にするため、国会に働きかけ、本来3年の滞在期間に「2年」の延長を法整備させる移民政策を後押ししています。ところが、大企業の幹部は外国人労働者の顔が見えず、加えて日本人自身が諸外国の労働者に比べて非人道的労働に慣れているため、普通に扱ったとしても世界レベルでは奴隷労働レベル、加えて現場は組織力が働き、情け無用の過酷な作業になりがちです。矢玉の戦争なしに国が乗っ取られる これら日本人のお気楽な優しさや、日本的組織社会の圧力に接して揉まれた一部は「人権商売」のお得意様になります。すでに人権、労働問題のNPO団体の多数が弁護士を擁して活動しており、間もなくその活動資金には年間1千億円ほど発生するという「休眠口座」が当てられることが国会で可決しましたが、NPO制度はすでに中核派など左翼や極左の資金源として悪用され、検挙者が出ているのにもかかわらず、ほとんどが放置されている状態です。その上、外国人を呼び込めば、今度は外国人団体がかつての民団や総連のように「集団の力」を活かした圧力団体を作り、各国出身の外国人が自国民のための労組を結成しかねません。そうなれば、将来的には経済的奴隷酷使国家とのそしりを免れませんし、現実には既に酷使している企業だって存在しています。 さらに、これらは外国勢力の都合によって、やがて「慰安婦問題」のように華飾され、新たな「強制連行」「奴隷労働」のファンタジー的反日プロパガンダを生み出す可能性があることも考えるべきでしょう。また、わが国には中国人女性に日本人男性を斡旋して結婚させて「日本人配偶者」の身分を取得させたり、永住資格取得後は離婚させて就職を斡旋し定住の手助けをする「事務所」なんかも存在します。そこには、革新政党の元国会議員らも絡んでいるとされ、これが明確に中国共産党の工作につながっていることを他の中国人民主活動家が私に訴えてくることもあります。そうした組織が、「反日」を国是とする母国の支援を得て勢力伸長を画策すれば、矢玉の戦争なしに国はいずれ乗っ取られるでしょう。 こうした過程の中で、大企業は一時期潤うかもしれませんが、やがて訴訟の嵐に飲み込まれるでしょう。そして、労働移民政策によってお金が回らなくなった日本人は、何の恩恵も受けないどころか地域の治安が悪化して、本来あり得なかった外国人同士の宗教抗争や民族抗争に巻き込まれる可能性もあります。オリンピック前の2019年には、労働移民の需要が現場の肉体労働者から「おもてなし要員」に移行し、肉体労働者の多くが不法滞在するであろうことも見込まれますが、そのころ中国や半島では、不法滞在者を強制送還することが人道的に許される状況になっているでしょうか。 彼らは不法滞在者である以上、身分確認不要の商売でしか生きてはいけません。その最たるものは、違法な物品売買や違法行為による経済活動ですが、ICチップリーダーを携帯していない警察官には、彼らが職務質問を受けて提示する偽造在留カードを見抜くことはできず、安上がりの「民泊」を拠点として身柄拘束を免れようとする彼らの実態すら把握することができません。 私が「通訳捜査官」をしていたころには、新宿のマンションが中国人によって既に「カプセルホテル化」していて、3人部屋に15人が1泊2千円で寝泊まりしていたのですが、最近は高級住宅街の戸建てを購入し、部屋ごとにベッドを置いて民泊ビジネスを始めており、毎回違う顔ぶれの「中国人家族」の出現に付近の住民も不安を隠せません。ついに移民政策の誤りを認めたドイツ 移民政策など実施しなくても、このまま事が進んだ場合、言葉さえろくに通じない外国人を起因とする犯罪や各種問題の予防や検挙のため、日本の国庫は大きく圧迫されます。東京オリンピック開催前後になれば、犯人の直近に座って命がけで通訳をする警視庁部外委託通訳人は、一人あたり8時間の取り調べを一つの署で平均3つは抱える事態になるかもしれません。通訳人の時給は約1万円と高額ですから、都内に102署を抱える東京都の予算が膨大になるのは、容易に想像がつくのではないでしょうか。 もし、来日した外国人労働者が犯罪を引き起こしても、彼らを受け入れた企業はこうした犯罪被害への補償には、きっと知らんぷりを決め込むのも明らかでしょう。彼らが国外逃亡したとしても、相手国が被害補償をするはずもなく、日本人は「やられ損」になる可能性だってあります。他にも、外国人労働者用に設定された低賃金労働が広がり、日本人は貧富の差を拡大させながら、増加した税負担に喘ぎつつ、真面目な経済奴隷になるか、外国人と組んで一発ヤマを狙ったヤバい仕事に加担するか…なんて事態も起こり得るかもしれません。 1月27日付ロイター通信によると、ドイツの人口が過去最高の8280万人を記録しましたが、その理由はドイツの好調な経済や、比較的リベラルな難民政策、手厚い福祉に群がった難民の急増だったそうです。確かに、少子化や人口減は回避できたでしょう。しかし、ドイツのメルケル首相は、集団レイプや暴動が頻発する国内の現状を知り、「時計の針を元に戻したい」と嘆いています。1月30日にはドイツのショイブレ財務相も、90万人を招き入れた移民政策の誤りを認めました。 一方、法務省の「平成28年における外国人入国者数及び日本人出国者数等について(速報値)」によると、外国人入国者数は約2322万人で、前年比約353万人の増加で過去最高を記録しています。 国民の安全と優良な外国人材の確保のためにも、今後は無制限に受け入れたり、移民政策を推進するのではなく、むしろ入国を規制すべきだと考えます。いま、わが国が足元を固めなければ、大企業と無関心層が目先の利益に踊り出し、私たちの子孫が本来活躍するはずの「舞台」が土台から崩れる、そんな未来が見えるような気がしてなりません。

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    景気は低調なのに雇用改善する背景に何があるのか

    【中島厚志が読み解く「激動の経済」】中島厚志 (経済産業研究所理事長) 現在、労働需給はひっ迫しつつあり、失業率は人手不足で賃金が上がる水準にまで達したとも計算される。しかし、1%前後の成長率と景気は大して強くないのに、雇用が改善しつづけている現状は違和感があるようにも見える。 実は、人口増減と経済成長との間には多くの国で共通の傾向が見て取れる。そして、日本は、ドイツと並んで少子高齢化の影響が最も色濃く出る段階にあり、現状程度の弱い景気でも雇用が改善する一因ともなっている。 原油安や円安もあって、今後景気は力強く回復し、人手不足がさらに広がる可能性は強い。少子高齢化もさらに進むことから、このままでは人手不足は恒常化していくことになる。これは、何年も前に少子高齢化の帰結として想定された事態がいよいよ実現しつつあることに他ならない。 このことは、日本企業にとって人材活用や省力化などでの生産性向上と労働力の確保が大きな経営課題となっており、それに注力しなければならないことを意味している。ところが、日本企業には、まだこの喫緊の経営課題が広く共有されているようには見えない。各国共通する生産年齢人口比率と実質GDPの関係 生産活動に中心的に従事しうる15歳から64歳までの年齢の人口が総人口に占める割合(生産年齢人口比率)と実質GDPとの間には多くの国で同じような動きが見て取れる。 それは、横軸に生産年齢人口比率、縦軸に実質GDPをとると、図表1のような横M字型となるものである。すなわち、第1段階は、人口が大きく増加して生産年齢人口比率も上昇することで経済が成長する段階である。【図表1】生産年齢人口比率と実質GDP 第2段階は、人口増加率が鈍化し生産年齢人口比率の上昇も止まる段階である。ただし、この段階では、それまでの経済成長や教育普及の成果が出て、生産年齢人口比率の上昇は止まっても人材の開発と資質向上で経済成長は持続する。生産性向上と労働人口確保にまい進すべき日本 その次の第3段階では、興味深いことに再度生産年齢人口比率が上昇する。それは、少子高齢化が進み始める初期では、子供が増えなくなるものの生産年齢人口がまだ増えつづけるからであり、人口増が乏しくなる中で生産年齢人口比率は見かけ上増加する。 そして、少子高齢化がさらに進展して生産年齢人口比率が一方的に減りだすのが、第4段階である。この段階になると、総人口も場合によっては減少に転じ、実質GDPの増加も極めて緩やかなものとなる。 以上の生産年齢人口比率と実質GDPとの関係が主要国でどうなっているのかを見たのが、図表2である。見ての通り、日本とドイツが第4段階にある。また、アメリカやフランスも第3段階から第4段階に入ったところにある。一方、中国は第2段階、ブラジルは第1段階にある。【図表2】生産年齢人口比率と実質GDP生産性向上と労働人口確保にまい進すべき日本 日本の課題は、この第4段階にあって、どのように経済活性化を実現するかにある。ちなみに、第1段階にあるブラジルといった国では、教育の充実と人材開発が柱となるし、第3段階にある国では、少子高齢化の速度を遅らせることで良好な成長をより長期間享受できることになる。 しかるに、第4段階にある日本やドイツでは、経済成長をするにも、活力ある社会を維持するにも、少子化対策が最優先の課題と言える。とりわけ、生産年齢人口が比率だけではなく、人数でも減少するようでは、良好な成長を維持し続けることは難しくなっていく。 しかし、少子化対策を強力に行うとしても、それが効果を挙げるには時間がかかる。特に、女性が働くと同時に出産育児をしやすい社会を創っていくとすれば、多方面での施策や環境整備が欠かせず、一朝一夕には実現しない。年平均労働時間の減少自体は必ずしも悪いことではないが…【図表3】主要国:労働生産性増減率の推移 したがって、日本の活力ある経済・社会の維持には、長期戦略である少子化対策だけでは足りない。短期的な対応も強力に推進していかなければならず、その最たるものが人材の一層活用やより少ない人数で同等の成果を挙げることによる生産性向上であり、内外の労働力の動員・確保である。 このうち労働生産性の伸びについては、日本は主要国と比べると比較的良好な位置づけにある(図表3)。しかし、内訳を見ると安心はできない。近年の日本の労働生産性上昇の背景には、短時間(パートタイム)労働者を多く含む非正規労働者が増加して労働者当たりの年平均労働時間が減少したことが効いているからである(図表4)。とりわけ、短時間労働者は平均で一般労働者(フルタイム労働者)の6割弱の時間しか働いていない。【図表4】一般労働者・短時間労働者別年平均労働時間 年平均労働時間の減少自体は、生活にゆとりをもたらすものであり、必ずしも悪いことではない。しかし、それが一般労働者の労働時間が高止まりする中で労働可能時間を充足しない短時間労働者が増える形で実現されている現状は、非効率であり、人材の十分な活用にもなっていない。 一方、労働力の動員・確保も欠かせない。同じような第4段階にあるドイツと比べても日本の生産年齢人口割合は4%ほど少なく、その分経済を支える活力は乏しいことになる。 もちろん、対応としては女性や高齢者の労働参加率を上げてその一層の活躍を図ることが第一である。くわえて、短時間労働者を多く含む非正規労働者を正規化すれば、その労働時間が増えて一層の労働力確保につながる。少子高齢化下での企業戦略を急げ また、ドイツを見ると、日本にない大きな外国人労働力の流入がある(図表5)。とくに近年では、経済危機にある南欧諸国から景気が堅調なドイツに優良な労働力が数多く流入している。一概に日本に当てはめることは出来ないが、可能な限り外国人材を活用することも不可欠である。【図表5】労働人口増減内訳の推移少子高齢化下での企業戦略を急げ 多くの日本企業では、未だにかつての労働力豊富な時代を引きずっているように見える。それは、相変わらず多人数のチームで事に当たったり、短時間労働者を中心に非正規労働者をバファ―として需要変動に対応したりすることである。職場に向かう会社員ら=東京・丸の内 しかし、時代は変わった。ドイツ以上に少子高齢化が進み、今後さらに進む日本の現状は直視されなければならず、そこに対する企業の戦略は明確である。それは、医療介護産業がさらに発展するとの見方ばかりではない。恒常化する人手不足への対応如何がビジネスの成否と企業存亡をも左右するとの見方である。 これからは、人材の一層の活用にくわえて、IT投資などを駆使した省力化と、女性・高齢者などいままで十分に活用されてこなかった人材の発掘・開発がどこまでできるかが企業の競争力を大きく左右することになる。人手不足の広がりといった形で世界で最も速く進む少子高齢化の経済への具体的影響が見えてきた中、新たな企業競争が本格化している。

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    外国人ヘルパーが我が家にやってくる!という報道から考えたこと

    藤尾智之(税理士・介護福祉経営士)         寝耳に水! 厚生労働省は外国人の介護人材受け入れについて検討を行い、訪問介護サービスにも外国人ヘルパーの受け入れ解禁を決めました。来年4月から実施されるそうです。驚きとともに、我が家にも来るのかと冷静になって考えてみると他人事ではないと感じました。しかし、なぜそんなことになったのでしょうか。日本の訪問介護サービスの現状 日本には全部で33,911の訪問介護事業所があります(平成26年10月1日現在)。これらの訪問介護事業所から介護サービスを受けている方は、203.6万人(うち予防訪問介護61.6万人、訪問介護142万人)いらっしゃいます(厚生労働省 平成26年度介護給付費実態調査 受給者の状況より)。 203.6万人は通過地点です。これから40年間、団塊の世代、そして団塊の世代ジュニアが高齢者となり、要介護者になります。訪問介護サービスの需要はますます増加します。介護事業所のビジネスチャンスも増えます。日本の中に残された最後の成長産業は介護産業だと言われる理由はここにあります。 しかし、ここで忘れてはいけないのが人口減少問題です。生産年齢人口が減り始めました。ヘルパーとして働く人も減っていきます。現在の介護サービス供給量は需要を上回っている状況ですが、将来は供給不足が予測されているのです。 介護産業はもともと人手不足ですが、将来の人手不足問題はさらに悲惨になるかもしれません。例えば、ケアマネジャーさんが訪問介護事業所に電話をして、ヘルパーの依頼をしても、「すいません、ヘルパーがいないんです。他をあたってもらえませんか」と言われるかもしれません。(本文とは関係ありません)外国人ヘルパーが我が家にやってくる平成29年4月から外国人ヘルパーが我が家にやってくる 突如、時事通信から下記のとおり報道されました。 厚生労働省は5日、外国人の介護人材の受け入れに関する検討会を開き、東南アジア3カ国の介護福祉士の訪問介護を解禁することを決めた。 介護需要が高まる中、担い手不足を緩和するのが狙いで、2017年4月からの実施を目指す。 経済連携協定(EPA)に基づき、ベトナム、フィリピン、インドネシアから来日し、一定の経験を国内で積んで介護福祉士の資格を取得した人が対象。今後は施設勤務だけではなく、高齢者の自宅でトイレや食事の介助などが可能になる。<ヤフー> 外国人の訪問介護、17年度から=人材不足緩和へ―厚労省 時事通信 2016/8/5 この報道を見て、驚いた方は少なくないのではないでしょうか。単に人をコマとして考えるのであれば、人手不足の解消方法として、海外から人を連れてくるという選択肢はありだと思います。しかし、訪問介護現場のようにマンツーマンサービスとなる現場にも導入となると首をひねりたくなります。今まで外国人に接したことのないような高齢者ならば受け入れには相当な決心がいるのではないでしょうか。一億総活躍プランはどこにいった? 日本には介護の国家資格である介護福祉士制度があります。公益財団法人社会福祉振興・試験センターの公開情報によると、平成28年6月末現在で約149万人が介護福祉士として登録しています。ところが、意に反して、介護現場で働いていない潜在介護福祉士が52万人いると言われています。この52万人が戻ってくれれば外国人ヘルパー解禁論は必要のない議論だと言えます。 介護福祉士が現場から離れた理由は人それぞれです。厚生労働省の社会保障審議会福祉部会では、介護福祉士の離職理由を次の通り分析しています。 離職理由が、賃金水準や3K(きつい・きたない・きけん)よりも、「結婚、出産・育児」、「法人・事業所の理念や運営のあり方に不満があった」が上位に来ていることがわかります。マスコミが繰り返し放送する「給料が安いから介護職が辞めていく」というイメージが私たちの頭にこびりついていますが、現実はそれだけではないようです。 それならば、離職理由の第一位から第五位くらいまでの理由に優先順位を付けて改善していけば、介護福祉士が介護現場に戻ってくるのではと期待ができます。もちろんすぐに戻ってくるとは思いませんが、着実に各事業所が改善できるように意図的に政策誘導すれば働きやすい介護現場となり、辞める人は減り、戻ってくる人が増えれば、将来の人手不足を少しでも和らげられます。 安直に海外から人を連れてくるのではなく、今この瞬間に日本にいる人達を最大限活用するというのが、一億総活躍プランだと思います。しかし、一億総活躍の言葉が発信されてからもうすぐ1年となります。掛け声は大きく、実行しないスローガンを続けていては手遅れになります。厚労省も再就職対策厚生労働省も介護福祉士等に対して再就職対策を打った 平成28年3月31日に社会福祉法が改正されました。この改正社会福祉法に、介護人材確保の強化策が盛り込まれています。その具体的な強化策は、介護福祉士等のデータベースを作って、そのデータベース登録者に対して、求人案内や復職研修の案内をメールするというものです。しかし、これでは再就職意欲には結びつかない気がします。強化策といいながらお知らせメールを送るだけでは、後方支援にしかなりません。 介護福祉士等の方が復職しても良いと思ってもらうためには、離職理由となっている理由をダイレクトに改善させるくらいの心を揺さぶる対策が必要です。海外から人を連れてきて、教育を施し、日本語を教え、生活に慣れさせてといくつもの高いハードルを越えるよりかはハードルが低い気がします。(本文とは関係ありません)離職理由の問題は普通の企業も問題となっている 離職理由第一位となっている結婚、出産・育児の問題は、どこの企業でも離職理由になっています。介護現場特有の離職理由ではありません。結婚しても、出産しても、育児後でも戻れる体制が整っている企業は、復職率が高いというのは周知の事実です。介護業界は、介護報酬の問題で福利厚生制度の充実は見送られがちです。介護報酬でのやりくりではなく、後押ししてくれるような政策の誕生を期待します。 そして、介護事業所の自助努力も必要ということもわかりました。第2位の離職理由として、「法人・事業所の理念や運営のあり方に不満があった」が挙がっています。この部分は国のせいにはできません。経営者の考え方ひとつです。実は、経営者の考え方ひとつで人は集まる 最近は理念経営を導入する介護事業所が増えています。理念経営を愚直に行って、その理念に感動して集まってくる介護職員は少なくありません。心理学の教えにもありますが、人は心が揺さぶれると行動を起こします。揺さぶられると気になって、行動を起こさざるを得ない状態になります。心を揺さぶられて人が集まってくるのです。外国人ヘルパーの導入は、やることをやってからでも遅くはないのではないでしょうか。【参考記事】■介護保険はやっぱり保険ではなくなった(藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)http://sharescafe.net/48977075-20160701.html■介護保険は保険でなはい 「親の介護は老人ホームにお願い」は甘い考え 介護保険を考える(1) (藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)http://sharescafe.net/35018841-20131120.html■よくある選挙公約「介護施設を増やします」について真剣に考えてみた (藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)http://sharescafe.net/49098975-20160717.html■介護が必要になった!どうする?(藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)http://sharescafe.net/49045000-20160709.html■介護の問題を絶望にしない秘訣(藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)http://sharescafe.net/48944579-20160626.html

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    「月月火水木金金でもハッピー」 仕事バカは死ななきゃ治らない

    高須克弥(高須クリニック院長、医学博士)  エイベックス・グループ・ホールディングスが昨年12月に三田労働基準監督署から是正勧告を受けてね、社長の松浦勝人君が「闘います」って怒り狂っていたんです。僕も気持ちは分かりますよ。松浦君が言ってる労働者ってクリエイティブな仕事が大半で、アーティストみたいな人たちなんだよ。それは高須クリニックと全く構造が一緒なの。  要は仕事好きでね「月月火水木金金」でもハッピーだという人たちはそれなりにいるんですよ。それなのにダメだって言われれば、そりゃそうだろうけど、それは状況を見て、柔軟に対応すべきなんだ。「月月火水木金金」でもハッピーだという人はそれなりにいる(瀧誠四郎撮影) 一般的には時間外勤務だとか、搾取だとかって言うんだろうけど、アーティストや聖職と呼ばれてる人たちって、そういうものとは無縁の世界なんですよ。だって、医者が時間になったからって帰っちゃったらどう思いますか。手術やってる最中に「時間になりました帰ります」って言ったら殴っちゃうもんね。「バカじゃないお前」って。  うちの麻酔医は、元東大の麻酔医だったけどクビになった。その理由はね、研修医が来て麻酔をやってる最中に「時間ですから帰ります」って言ったもんだから「おいこらっ」って体罰を加えたからなんだって。例えば看護師さんでも患者が危篤のときに「そろそろ時間外なんで帰ります」なんて絶対言わないでしょ。もしそんなやついたら殴りたくもなるでしょう。  高須クリニックはね、基本的に働いた分だけきっちりお金を払う。だから休みをあげるっていうとドクターたちが怒るんです。働きたいんですって。僕たちの世代は週休1日で日曜だけが休みだったけど、ほとんど休まなかったもんね。年末は夜明けまで仕事して正月は初日の出を東京で拝んでそれから名古屋まで車で帰るような生活をしてた。給料もそれだけ増えるから働きたい人たちも多かった。  だから逆なんですよ。無理やり休ませると不満が出る。腕を磨いて高い給料で雇われようという意識があって、場合によっては一本立ちしようという野心のある医者ばっかりがうちに来てるわけだからね。エイベックスもそうでさ、能力の高い人は自分でマネジメントして一財産つくろうというような人もいると思うんだ。そういう人たちはね、休みなく働きたいと思うんだよ。しゃくし定規にダメって間違ってるよ しゃくし定規にダメって間違ってるよ うちで働いてる売れっ子ドクターたちの管理は、基本的に松浦君ところのトップアーティストたちと同じ考え方。本人がやりたいと言ったらできるだけ働かせてやりたいと思うし、それは結果的に患者も喜ぶわけだから。ただうちの労務の担当者が強制的に「休んでください」って、無理やり休ませちゃうもん。  だから基本的な考え方としてはね、状況に応じてフレキシブルに対応すべきなのに、はじめから労働者は全部こういうふうにやるべきだっていうのは間違ってると僕は思うね。もちろんお金はきちんと払わないといけないけど、実際に現場を知らないお役人が、しゃくし定規にダメだっていうのは間違ってるっていうのはその通りだと思う。労働者は全部こういうふうにやるべきだっていうのは間違ってる(瀧誠四郎撮影) 現行の改正労基法が出来たのが20年前なんです。そのころ、エイベックスはCDを売りまくっていて、ディスコの「ヴェルファーレ」なんか経営してた。でも今はアーティストのコンテンツ販売なんかが中心で、業務形態はずいぶん変わっているんだよ。  当時「24時間働けますか」っていうキャッチコピーで栄養ドリンクの「リゲイン」が売れていたのを見てさ、法律作ったと思うよ。あの頃はそんなのが常識だったんだもん。企業戦士は眠らずに働くって、今の電通なんかのスタイルだよ。そのスタイルが電通に伝統的に残ってたんで、あとから法律が追っかけてきてつかまえるみたいなことだもんね。  なぜ国が時短とかゼロ残業とか検討しているかというと、失業者をなくすにはそれしかないんだもの。一人でバンバン働かさないようにしとけばさ、それを埋めるために、よそから人を集めなくちゃダメじゃない。そのとき同一賃金、同一労働って言ってたら失業者がみんな就職しに来る。でも僕たちはいそういう人はいらないもん。腕のない医者なんてほしくないし、穴埋めであっても一流の医者じゃなければいらないから。 だから成果主義が一番いいの。労働が苦痛だと思ってるもんだから共産主義は「労働は喜び」だって洗脳してたんだけど、洗脳しなくても労働に喜びを見いだす人はたくさんいるんだもん。  弱者救済は大事だけど弱者の方が主役になっちゃたら、本当に支えてる人たちがかわいそうなことになるじゃない。作業能率が10倍ぐらい違う人って実際にいる。だったらロボットの方がいいやって。  そんなわけでペッパー君(ヒト型ロボット)が今日から高須クリニックで働いてるの。ペッパー君が来てみんなの仕事がなくなっちゃうから「僕がいないときペッパー君をいじめたり壊したりしないでね」って訓示した(笑)。法律ばかり厳しくやると、単純労働はロボットにとって代わられる世の中が来るかもしれないよ。結局ね、そういうことしてるとクビが締まってくるんですよ。  うちで稼いでいる医師と看護師は全部年俸制です。年俸制はバリバリ働く人は喜ぶけど、給料安くてもいいからコツコツと年功序列で上がってくことを期待している人たちもたくさんいるからね。  でも定期昇給なんか当てにしてるんじゃなくて、初めからドカッと給料もらって、働けなくなってきたら下がってくるというのが一番フェアだと僕は思うな。若くてバリバリ働いてるやつが給料安くて、指導監督するって机の上で査定かなんかやってる人が一番給料もらってるって、あれは絶対間違いだと思う。柔軟にやらないと社会は発展しない柔軟にやらないと社会は発展しない実態にあわせて労基法は変えるべき(瀧誠四郎撮影) 日本人がもともと当然のように持ってた職業的な義務感とか社会的なコンセンサスみたいなものが、この何十年間で消えちゃったんだと思うな。のんべんだらりと機械的な生活をしてても4週8休、さらに祝祭日を増やしていく。  別にいくら休んでもいいんだよ。「働かざるもの食うべからず」と十分働かせて給料安いっていうよりか、高い給料をあげるからあんまり時間、時間って言わないで精進してくれって人のほうが僕は温かい経営者だなって思うね。  職種が増えて労働の形態もどんどん変わってる。だから、実態にあわせて対応できるよう、労基法は変えるべきだと思う。柔軟にね。硬直した法律通りにやっちゃったら社会は発展しないもん。過重労働で「蟹工船」みたいに働かせるのはもちろん言語道断だけど、職種ごとにちゃんとセパレートして、やりたい人がずっと仕事を続けられるようにね。  松浦君自身、1代目経営者でたたき上げの労働者だから、彼の言っていることの方が実際そういう世界で働いたことがないお役人より、よほど労働者の気持ちを分かっていると思うよ。(聞き手、iRONNA編集部 溝川好男)

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    「好きを仕事に」は幻想! エイベックス松浦は講釈垂れずに残業代払え

    労働を推進したいのであれば、その筋の方と同席で株主に「この野郎、埋めてやるぞ」ということが当たり前の働き方ですよということを募集広告にお書きになれば、お上に垂れ込まないような良い方が来られるのではないでしょうか。

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    「24時間仕事バカ」のどこが悪い

    「好きで仕事をやっている人は仕事と遊びの境目なんてない」。長時間労働などで労働基準監督署の是正勧告を受けたエイベックス・グループ・ホールディングス社長、松浦勝人氏のブログが物議を醸した。とかく働きすぎが叩かれる昨今。「仕事バカ」はそんなに悪いのか?

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    「時代に合わない」のは松浦社長、あなたの頭の中です

    佐々木亮(弁護士) エイベックス・グループ・ホールディングスの松浦勝人社長が、三田労働基準監督署から受けた長時間労働と残業代未払いなどに対する是正勧告について、「好きで働いていても法律で決められた時間しか働けなくなる可能性があるようだ」、「時代に合わない労基法なんて早く改正してほしい」などと述べたことが話題となった。しかし、失礼を承知で言わせていただくと、時代に合っていないのは松浦社長の頭の中というべきだろう。 法律により働く時間を制限しているのには意味がある。なんの意味もなく、「働きたい人」に対する意地悪で制限しているのではない。歴史を遡れば、19世紀の初頭には、働く時間を制限する法律など世界にはなかったのである。しかし、その結果、子どもや女性をはじめとして、多くの労働者が過酷な労働によって潰されてしまうという問題が起きた。 そこで、この問題をどうにかしようと法律で労働時間を規制することになるのであるが、最初の規制は、1833年にイギリスで制定された工場法であった。そこでは、9歳未満の児童労働を禁止し、9歳~18歳未満の労働時間を週69時間以内に制限するというものであった。他国もこれを追うように、1839年にドイツ(プロイセン)で児童労働保護に関する規定、1841年にはフランスで年少者労働時間規制に関する法が制定され、主に年少者と女性を対象とした規制が敷かれていったのである。 他方、我が国は、工業化が遅れていたので、労働時間を規制するようになったのも遅く1911年に制定された工場法という法律によって、はじめて労働時間を規制した。当時の対象労働者は、年少者・女性であり、成人男性は規制外であった。 労働者全員に対する労働時間規制がされるようになったのは、戦後の労働基準法によることになる(1947年)。我が国においては、このとき初めて全労働者を対象とした労働時間規制がなされたのである。 そして、現在の規制内容である週40時間となったのは、1994年の改正労基法による。ただし、その際、一部企業は適用が猶予されていた。この猶予された企業にも週40時間の規制が及ぶようになったのは、それから3年後の1997年まで待たねばならない。今年は2017年である。今の規制内容になってから、実はまだ20年しか経っていないのである。 松浦社長は、冒頭に引用した発言をして、労基法を時代に合っていないと断言する。しかし、松浦社長のような言動は実は珍しくない。これらの言動は、昔から一部の経営者が定期的に述べているところである。特に、労働基準法に対する攻撃をする際に、「時代に合っていない」「工場法が前身だからホワイトカラー労働者には向いていない」などというのは常套句である。 ただし、かつてはこうした言説をもてはやす風潮があったが、昨今の我が国の「ブラック企業」問題によって、長時間労働による過酷な実態が明らかになった。そのため、こうした発言は非常識な発言として「炎上」することがあり、最近では少なくなっていた。ところが、松浦社長は、労基署に是正勧告を出されたのが悔しかったからか、冒頭の発言を自身のブログでしてしまい、久々の「燃料投下」をしたのである。 もっとも、問題の本質は、労基法による労働時間規制が本当に時代に合っていないのか、という点である。増加する過労による精神障害 まず、現在の労働基準法の規制を概観しよう。労基法では、1日8時間、週40時間という労働時間規制をしている。これに違反すると、罰則まであるという厳しい規制である。しかし、これはあくまで原則であり、例外が用意されている。その例外とは「36(サブロク)協定」という労使協定を締結し、労基署へ届け出ることである。これをすれば、その協定に書いている時間内に限り、法律の制限を超えて働かせることが可能となる。 ただし、36協定の上限時間は厚労大臣が定めているものの、「特別条項」というものを入れることによって、その上限を突破でき、事実上青天井の労働時間が設定できるという仕様になっている。これが我が国の労働時間規制の構造である。この構造下では、合法的な労働をさせた挙句の過労死というのも珍しいことではない。 さて、このような法制度であるが、「好きで働いていても法律で決められた時間しか働けなくなる可能性がある」制度に見えるだろうか? 筆者にはそのように見ることは到底できないのであるが・・・。 現実に目を向ければ、このように法規制が弱いため、過労死、過労自死、過労うつなどが蔓延し、これが社会問題になっていることはご存知のとおりである。実態を表すものの1つとして、次のグラフをみていただきたい。(厚生労働省が毎年度発表している「過労死等の労災補償状況」より。作成者・井上伸氏) これは、厚生労働省が毎年発表している「過労死等の労災補償状況」をグラフ化したものである。上記はそのうち請求件数をグラフ化している。このグラフを見て、ひと目わかる通り、精神障害の請求件数が右肩上がりとなっており、この10年でほぼ2倍となっている。 昨年話題となった電通の痛ましい事件も、先日書類送検されて話題となった三菱電機の事件も、こうした流れの中の1つである。すなわち、過労死や過労による精神障害の発生をいかに防ぐか、これこそが、我が国の労働分野における重要なテーマの1つなのである。 そこで、もう一度松浦社長の発言である「時代に合わない労基法なんて早く改正してほしい」を思い出してほしい。最初に示したとおり、かつては労働時間規制などない社会であったが、それでは問題があるとして規制が敷かれ、現在の規制になったのは1997年である。 ところが、それも36協定という例外によって「ザル」状態とされ、上記のグラフの通り長時間労働による精神障害が増加の一途となっているのである。 こうした現状に照らせば、労基法の労働時間規制が時代に合わないのではなく、むしろその規制をしっかり適用することを時代が求めているのである。松浦社長の願いは、労働時間規制を撤廃した方向での労基法の改正なのであろうが、時代は全くそれを求めておらず、その方向性は全く逆の規制強化の方向なのである。 その意味で、失礼を承知で言わせていただけば、時代に合っていないのは松浦社長の頭の中なのである。

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    どれだけ稼げても、長時間残業は割に合わない

    の自由度と裁量で、極力残業せずに働き、必要時のみ遅くまで働き、その代わり休暇はたっぷり取る、そういう働き方の方がずっと幸せのような気がします。誰もがそんな高給取りの専門職ではないと言うなら、それこそ今から残業をセーブして専門職を目指して勉強すればいいでしょう。そこまでできなくても、家族や友人、恋人と過ごす時間を大切にする方が、よほど価値ある生き方だと思います。そうでないなら、同じ高給を目指すにしても、自由度と裁量のない残業時間を延々と過ごすか、です。コントロールできない状況をなくせ 人は、自分でコントロールできない空間や時間に閉じ込められ、意思に反して動かされる、あるいは動くことを禁じられることに到底耐えられるものではありません。トラブルでいつ動くかわからない途中停止の狭いエレベータ内、あるいは電車内に満員で閉じ込められた状況を想い起こしてみて下さい。 物理的な密閉状況は心理的な閉塞状況を生みます。強要された時間はそれと同じで肉体と精神を蝕みます。嵩にかけてハラスメントがあれば、正気の精神状態ではいられないでしょう。あと1分以内に救援が来て扉が開かれるとわかっていれば、人はなんとか平静でいられるものです。法的にもメンタル的にも、その「あと1分」を知らされる仕組みがわからずに苦しんできた(苦しんでいる)人は、少なくないはずです。 もし定時以降、個人的な生活の自由と権利を最優先したいと思うなら、それと引き換えに払われるあなたの今の残業代は「安すぎる」のです。そう思えたら、残業はそこそこに早く帰って自分の生活に重きを置いた方がずっといいでしょう。今のところ、割増手当も社風もそう簡単に変わりそうもないならば。【参考記事】■転職貧乏で老後を枯れさせないために個人型DCを勧める理由 (野口俊晴 ファイナンシャル・プランナー)http://sharescafe.net/49061150-20160714.html■定年退職者に待っている「同一労働・賃下げ」の格差 (野口俊晴 ファイナンシャル・プランナー)http://sharescafe.net/48662599-20160524.html■老後資金づくりでハマる心理的な罠  (野口俊晴 ファイナンシャル・プランナー)http://sharescafe.net/45918282-20150814.html■「宵越しのお金」が持てれば、老後の人生は変わる (野口俊晴 ファイナンシャル・プランナー)http://sharescafe.net/47053876-20151202.html■年俸制の契約社員でも未払残業代を堂々と取り戻せる法http://sharescafe.net/42292529-20141208.html(野口俊晴 ファイナンシャル・プランナー)

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    「残業しなくても成果は上がる」は本当か?

    「仕事が終わらない!」ときに読みたい記事■ 社畜人ヤブー(第1話<前編>)■ 業界別・あなたの仕事と働き方はこう変わる!

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    無制限残業の温床「36協定」見直し 労働者はラクになるのか

     安倍首相を議長に、関係閣僚や有識者を交えて9月にも発足するとみられる「働き方改革実現会議」──。そこで議題に上ることになったのが、“36(サブロク)協定”の見直しだ。 36協定とは、使用者(会社)と労働者の代表(労働組合)が協定を締結しさえすれば、「1か月45時間」という厚生労働相の告示で定められている残業時間の上限を超えて、実質無制限に働かせることができる労働基準法の“抜け道”のことである。これを見直し、残業の上限時間を厳格に定めることで、ブラック企業など社会問題となっている長時間労働を是正しようというのだ。 一見、労働者にやさしい改革といえるが、残業時間の規制強化によって新たな弊害も招きかねない。『2016年 残業代がゼロになる』などの著書がある人事ジャーナリストの溝上憲文氏に、残業時間をめぐる素朴な疑問や今後起こり得る懸念事項を聞いた。* * *──そもそも、なぜ「無制限残業」が可能な36協定がまかり通ってきたのか。溝上:労働基準法では、労働時間は「1日8時間、週40時間」と定め、それを超えて働かせると「使用者は懲役6か月以下、罰金30万円以下の罰金」が科される規定があります。いわば法律で許される労働時間ギリギリのラインです。 しかし実態は労基法36条に基づく労使協定(36協定)を結べば、労働者を無制限に働かせることができる。したがって実態はザル法になっています。 その原因は、1947年の法律制定当初、長時間残業は時間外割増手当による賃金規制で抑制ができると考えていたからです。当時の労組の組織率は今と違って高く、労組が安易に協定で妥協しないことを想定していたのでしょう。戦後間もない頃でもあり、いたずらに規制を強化すれば、日本の戦後復興が進まないと経済界・政府は考えたのです。 しかし、結果的に長時間労働が蔓延、労基法の規定は機能不全に陥っているのが現状です。──2014年に『しんぶん赤旗』が日本経団連や経済同友会加盟の企業40社に調査した結果では、1か月に延長できる残業時間を「過労死ライン」の80時間以上とする協定を結んでいた企業は8割近くの31社に及んだ。NTT150時間、東レ100時間など、名だたる大手企業も長時間労働を許容していたことが明るみになった。36協定の見直しで、こうした大手企業の勤務形態は変わるのか。溝上:すでに大企業は「朝勤務」「ノー残業デー」など残業の抑制に動いており、45時間になれば、その動きを強化することになるでしょう。生産年齢人口の減少、女性労働力の確保などの観点から、長時間残業は人材確保の障害となりつつあることを自覚するようにはなっています。深刻な人手不足に喘ぐ中小企業──その一方で、中小企業は深刻な人手不足に喘いでおり、残業時間が規制されると生産性が落ちて疲弊していかないか。溝上:確かに中小企業にとっては、新しく人を雇うより、少ない人数で残業代を払ってでも長時間働かせたほうがコスト的にも安く、効率的という形でやってきました。 おそらくこれまでの法令の制定がそうであったように、45時間を大企業から始めて、中小企業に施行までの猶予期間を設けるのではないでしょうか。ただし、大企業が45時間規制で、中小が例外とすると、ますます人材採用・確保に苦しむことになります。──企業規模にかかわらず、残業時間の規制強化は不法なサービス産業や「みなし残業」をエスカレートさせることにならないか。溝上:法規制が45時間になると、おそらく取り締まり強化のために労働基準監督官が増強され、違法残業の摘発、送検、企業名公表が増加することになるでしょう。ブラック企業の撲滅につながることにもなりますからね。 ただし、こういう企業は、社員ではなく、請負契約、業務委託契約を結ぶことで労基法逃れをする可能性が多分にあります。すでにヨーロッパではこの種の働き方が横行し、社会問題になっています。日本でも新たな労働問題に発展する可能性もあります。──また、基本給が安く、これまで残業代をアテにしていたような社員の給料が減っていく恐れもある。溝上:すでに非管理職の20~30代社員にとっては、残業代は生活費の一部として組み込まれています。45時間以上働く社員は実質的に可処分所得が減ることになりますし、残業代がなくなることになれば生活苦にもつながります。 これに対処するには、副業が必要になるかもしれません。すでに副業解禁の動きがあり、もしかしたらダブルジョブ、トリプルジョブで生活防衛を図る動きも出てくる可能性があります。「働かざる者、食うべからず」の風潮が蔓延も──政府は長時間労働の是正を掲げる一方で、“残業代ゼロ制度”とも揶揄される「高度プロフェッショナル制度」(高収入の専門職に徹底した成果主義を持ち込む働き方)を法案提出するなどして、「結果的に長時間労働を助長する」と批判を浴びている。安倍政権の目指す働き方改革は、本当に労働者の味方なのか。2016年11月、働き方改革実現会議であいさつする安倍首相溝上:安倍政権の働き方改革の狙いは、若者、女性、高齢者の労働参加を促すことで、日本経済の成長率持続、公的年金の支給額の抑制等にあります。極言すれば「働かざる者、食うべからず」の風潮が蔓延することになりかねません。 とくに女性については、子育て・介護と仕事の両立は難しく、これらを含めて大変な重労働下に置かれることになります。 ホワイトカラーエグゼンプションは、高収入者に対して、本人の同意を得て、残業規制を撤廃する仕組みですが、会社の意向に逆らえる社員がいるとは思えず、新たな長時間労働の火種も抱えています。 そのうえ、いずれ収入制限がアメリカのように下げられる可能性もあります。すでにアメリカでは会社の意向でエグゼンプト(※注/自ら時間管理を行なうことが適切な労働者)にされた社員の低収入が社会的問題になっています。 安倍政権の働き方政策は、一方で非正規という名前を一掃したいと言っていますが、非正規の待遇が多少よくなっても、多くの正社員にとっては、アメとムチの両面を抱えています。 例えば、同一労働同一賃金も法制化されれば、人件費のパイが限られた中小企業では、非正規の給与を上げると、正社員の給与を下げざる事態になりかねません。おそらく安倍首相の頭の中には、働き方改革が労働者に及ぼす影響までは考えていないのでしょう。関連記事■ ブラック企業は3タイプ 選別排除型、消耗使用型、秩序崩壊型■ 「業績が悪く残業代払えない」という会社の言い分は覆せるか■ 2010年度だけで1386企業11万人が残業代をとりっぱぐれている■ 導入検討の残業代ゼロ法案 欧米とは似て非なるただ働き制度■ 再浮上する残業代ゼロ案は「企業をブラック化する」と専門家