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    太陽光、破綻のカウントダウン

    経済産業省が太陽光発電の買い取り価格を1キロワット時あたり29円へ3年連続で引き下げる案を公表した。再生エネ全体を増やす政策が見えないまま、先行する抑制策。国民負担はもう取り返しがつかない状態に陥っている。太陽光破綻へのカウントダウンが始まった。

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    太陽光買い取り「29円」でも高すぎる

    大江紀洋(月刊「Wedge」編集長) 4月からの再生可能エネルギーの買取価格が決まろうとしている。 2月24日、経済産業省の有識者会議「調達価格等算定委員会」が示した2015年度の買取価格案(委員長案)によると、太陽光発電(10kW以上、通称メガソーラー)は1kWhあたり29円(税抜き)。これまで3年間、委員長案のとおり決定しており、この価格で決まることは濃厚だ。 29円は高すぎる。 固定価格買取制度(FIT)が始まった2012年度は40円。その後、36円(13年度)、32円(14年度)と切り下げられてきて今回29円だから、順調に切り下げられてきたようにも見えるが、まったくもって切り込みが甘い。安直な価格切り下げ 直近のドイツの価格は9ユーロセント(1ユーロ=135円で計算して約12円)、スペインやイタリアに至っては買取を停止したままだ。他のFIT導入国で高いところを探しても15ユーロセント(同20円)程度。なぜ日本の電力消費者だけが世界標準の2倍も負担しなければならないのか。太陽電池パネルやパワーコンディショナーなど、機器類は世界的に流通している。日本の国民だけが高掴みさせられているようなものだ。 29円は6月までで、7月からは27円となる。これはFIT法制定時に、国会での“改悪”により、制度開始から3年間(12年7月~15年6月)は特に事業者の利益に配慮するという附則が追加されたからだ。40円から毎年4円ずつ切り下げてきた流れから言えば15年度は28円。ちょうど28円を挟むように29円と27円にしたのだろう。なんと安直なことか。27円でも世界標準から見れば高すぎる。 業界からは「日本は欧州と違う。高コストだから仕方がない」といった声も聞こえてくる。しかし、世界中で日本だけなのだ。3年間も異常な買取価格で制度運用してきてコストが下がらないなら、もはや太陽光をこれ以上普及させる意味がないのではないか。膨大な金額が国民から事業者や地主に移転 さらに恐ろしいのは、「すでに手形は振り出されてしまっている」ことだ。40円や36円の価格が認定されたまま、運転開始していない太陽光が山のようにあるからだ。運開率はなんと約2割に過ぎない。いまさら29円や27円に切り下げても遅いのだ。これから残り8割の設備が「高い買取価格」という権利を掲げて登場してきてしまう。 電力中央研究所社会経済研究所の朝野賢司主任研究員によれば、FITの設備認定が14年度、つまりこの3月で終了するという極端な仮定を置いた「FIT廃止ケース(注1)」でも、年間賦課金額のピークは2.6兆円、累計賦課金額は53兆円に及ぶという。これだけの膨大な金額が、すべての国民(電力消費者)から、再エネ事業者や、太陽光パネルを敷き詰めた土地の地主に移転されることに合理性はあるのだろうか。 ではこのままFITを続ければどうなるのか。これについても朝野氏が試算している。 2月3日に開催された、経済産業省の総合資源エネルギー調査会新エネルギー小委員会では、現行の導入ペースが継続する場合、2030年時点の累積導入設備容量は、太陽光が1億4000万kW、風力が1140万kWに達することが示された(これはそれぞれ、14年10月末時点の認定実績の、それぞれ8倍、3倍にあたる)。この「最大ケース(注2)」では、年間賦課金額のピークは4.1兆円、累計賦課金額は84.8兆円にも及ぶ。 朝野賢司氏によれば、「既に太陽光発電の設備認定は莫大であるため、賦課金を抑制する方策は限られるが、上限や入札等の実施などやれることはある。より少ない費用で、出来るだけ多くの再エネ供給を得る、効率性の観点に立ち返ることが重要」だという。私たちはすでに振り出してしまった手形(将来へのツケ)をよく認識すべきであろう。 朝野賢司主任研究員の試算の詳細はこちら> http://www.denken.or.jp/jp/serc/discussion/14009.html(注1)「FIT廃止ケース」詳しくは次のような仮定を置いている。太陽光発電の接続可能量が設定された電力各社では、これを超過した導入は行われない。接続可能量が未設定の東京電力、中部電力、関西電力では、13年度に各社エリアで認定されたのと同じ量が14年度にも認定される。その他の再エネは14年10月末時点の認定実績まで導入。(注2)「最大ケース」は詳しくは次のような仮定を置いている。太陽光発電は2030年時点で累積導入量1億4000万kWに、風力は同1140万kWに到達する。14年度と15年度におけるその他再エネは、13年度実績と同量が導入。買取価格は既認定分については実績値を、15年度以降、住宅用太陽光発電は毎年2円、事業用太陽光発電は同4円切り下げて、その他再エネは14年度と同等とした。関連記事■ 固定価格買取制度は最初から破綻が見えていた■ シェールガスで原発は不要と煽った反原発団体の“まやかし”■ なぜ環境保護派が原子力を支持するのか   

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    再生エネ優遇、ドイツでも曲がり角

     再生可能エネルギー先進国のドイツで、風力や太陽光で発電した電気を高値で買い取る優遇制度が曲がり角を迎えている。昨年、国の電力に占める再生エネの電源構成比が最大となった一方で、電気料金の高止まりなどのひずみも生じている。政府は電気を入札して買い取る制度改革に乗り出し、自然電源の後押しを続ける構えだが、改革には環境保護派からも反発が出る皮肉な状況になっている。高騰する電気料金 ドイツは2000年、再生エネの「固定価格買い取り制度(FIT)」を導入。これが奏功し、再生エネの発電比率は、昨年ついに、これまで最大だった褐炭(かったん)火力を追い抜いた。取材に応じるドイツの経済エネルギー省のバーケ事務次官=10日 「再生エネによる発電比率は26%に達した。いまや最大の電力供給源だ」 経済エネルギー省のライナー・バーケ事務次官は今月上旬、フジサンケイビジネスアイなど日本記者クラブ取材団と会見し、こう述べた。ただ、「技術開発のための助成は終わった」とも話し、「これからは競争原理に基づく助成になる」として、政府が昨年夏に決めた優遇策の改革に意気込みを示した。 昨夏の制度改革では、再生エネ事業者を入札で決める仕組みを採り入れた。FITは高値で電気を買い取る費用を、電気料金に上乗せして徴収する。入札制はできるだけ買い取り額を抑える狙いがある。 改革の背景にあるのは、再生エネの急拡大が、電気代の一段の値上がりを招く恐れがあるためだ。ドイツの電気料金は「フランスの倍」(産業界関係者)。買い取り価格は20年保証されるため、導入量が年々増えれば、それだけ電気代への上乗せ分が増えていく。入札制に中小反発 改革には中小事業者から不満が漏れる。環境保護団体グリーンピース系で再生エネ供給を手がける「グリーンピース・エナジー」の広報担当者は、入札は「体力がある大企業が有利だ。中小事業者は生き残れなくなる」と危惧(きぐ)する。 25年までに45%の再生エネ比率の目標を掲げる政府は、電力需給の「南北問題」にも直面している。ドイツ西部ノイラートにある風力発電所と石炭火力発電所=2014年2月(共同) 海に近い北部は風力の開発が進み、豊富な再生エネ電力を抱える。一方、産業が集積する南部は、原子力発電が主要電源となってきた。22年までに全原発を停止する「脱原発」を掲げる政府としては、北部の電気を南部に送って使いたいが、南北を結ぶ高圧送電線の貧弱さがネックになっている。そのため、送電網整備は「(脱原発と再生エネ拡大の)エネルギー大転換の鍵」(バーケ氏)だ。 ところが、送電網整備ははかどっておらず、16年までの整備計画は4割しか完了しないとの予測もある。高圧線鉄塔の敷地探しが進まないのが大きな要因だ。候補地の住民は「自分の庭先はごめんだ」という反発が強く、地元の環境保護派が同調するケースも多い。 FITは再生エネを一気に普及させるには適しているが、“副作用”への対応も課題とされる。ドイツの改革の行方は、FIT導入国の日本の専門家にも注目されている。(塩原永久)関連記事■ 民主党のエネ政策をリセットしない訳■ 再生エネ買い取り制度 太陽光に集中、電気代上昇■ 原発輸出 本質を歪める「5つの論点」

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    報道ステーションが伝えない再エネの不都合な真実

    政策破綻のスペインから学ぶことは何か山本隆三(常葉大学経営学部教授) 11月28日(金)、報道ステーションは、スペインでの再エネ導入が成功しているニュースを伝えていた。スペインでは風量を予想し、風量が変動した際には直ちにコンバインドサイクルと呼ばれる高能率の天然ガス火力の出力を調整することにより対応していると伝え、この背景には送電線の一体管理があるので、日本でも発送電を分離すれば再エネに対応することが可能になるように伝えた。スペインと日本では、送電網の形状も発電設備の余剰量も全く異なる。スペインで可能なことが日本で可能というのは、あまりに単純化した話だ。 さらに、番組が伝えていないことは、スペインでは負担増を招いた高コストの再エネ導入政策が破綻し、日本でも導入された固定価格買い取り制度(FIT)が13年に廃止になったことだ。14年1月から5月のスペインの再エネ設備の導入実績は、太陽光と太陽熱の発電設備はゼロ、風力にいたっては、6000kW減だ。今後も続く電気料金の上昇という再エネ導入の後遺症にスペインは未だ悩んでいる。 欧州では、スペインのみならずドイツでもイタリアでも再エネ政策の見直しが続いている(「再生可能エネルギーの接続保留問題 高収益保証が招いた投資バブル」)。欧州委員会も電気料金の上昇を招くFITの廃止を14年の4月に各国に勧告した。ドイツでは8月1日に再エネ法が改正され、再エネ導入のスピードを大きく減速することになった。スペインから学ぶことは、送電線管理ではなく、再エネ政策を見直す方法だ。迷走したスペインの再エネ政策 風量と日照量に極めて恵まれているスペインでは、1980年には再エネによる発電を促進する政策が導入された。その後も技術開発を支援する政策、さらに金融支援策など様々な方策が導入され、97年には固定価格買い取り制度の原型が導入された。2004年には、10年の1次エネルギーと電力供給に占める再エネ比率を、それぞれ12%と29%にすることを目標とし、事業者に有利な買い取り制度(固定価格あるいは市場価格に上乗せ)が導入された。07年に買い取り価格が引き上げられたことから、急激に風力と太陽光の導入が進むことになった。 2000年に太陽光は1万kW、風力は221万kWであったが、図-1の通り、08年にはそれぞれ345万kWと1656万kWに急速に拡大する。再エネ導入量増大と送電線整備費などによる電気料金の急激な上昇を懸念したスペイン政府は、本来消費者が負担すべき再エネ導入費用などを電力会社が負担するように求めていた。 このために再エネ支援策導入以降電力会社の負担額は徐々に積み上がっていたが、08年に1年間の負担額が50億ユーロ(7500億円)を超え、電力会社が大きな負債を抱える事態になった。電力会社の負担額軽減のために、スペイン政府は08年から再エネ支援制度の見直し策を相次いで導入する。 08年には、太陽光発電設備を屋根設置型と事業用に分け料率を変え、さらに買い取り価格を3割減額した。09年には、太陽光発電設備の事業者に設備の50%以上について供給契約が締結されていること、投資額の50%以上について資金手当てがなされていることなど様々な条件を付けた。 10年には、太陽光、風力、太陽熱発電設備について、買い取り価格が引き下げられ、買い取り対象時間に上限値が設けられた。さらに、送電網の接続費用の引き上げが行われた。12年1月には新設設備へのFIT制度の適用中止が発表され、全ての販売電力量に対し7%の新税が導入された。 13年2月にはFITよりも事業者に有利とされた市場価格への上乗せ制度が廃止され、消費者物価指数での調整制度が見直された。7月にはFITが遡及し廃止されることが発表された。事業者はFITに代わり、その資産に対しスペイン国債の利率に3%をプラスした税前収益を保証されることになった。収益率は税前7.5%、税引き後5.5%とされたが、遡及での廃止に対し事業者からは訴訟が相次ぐことになった。あまりに大きな再エネ政策の負担額 消費者の負担額を軽減していたにも拘わらず、スペインの家庭用と産業用の電気料金は値上がりを続け、14年前半の時点でそれぞれ1kW時当たり22.5ユーロセント(34円)と15ユーロセント(23円)に達している。図-2の通りだ。消費者が負担すべき額が上乗せされていれば、電気料金はさらに上昇していたはずだ。 スペインの2013年の電源別発電量は図-3の通りであり、風力20.2%、太陽光3.0%、太陽熱1.7%になった。この発電量のために使われた補助金額は年間80億ユーロ(1兆2000億円)を超えており、国内総生産額の約1%に相当する。12年の段階で、再エネ導入のために使われたが、消費者から回収されていない金額は260億ユーロ(3兆9000億円)に達していた。何も対策が取られない場合には、13年だけで、さらに105億ユーロ(1兆5800億円)が積み上がるとみられていた。 スペイン政府は、この金額を縮小するために税の導入、接続費用の増額などの措置をとったが、今後発生する未回収費用と今まで累積している赤字額を解消するために、今後電気料金あるいは税金の形で、消費者の負担が増えていくことになる。再エネ導入が可能だったスペインの特殊事情 スペインの国土の形状は円に近い。送電線網も当然円状になっており、日本列島の送電網とは異なり不安定な再エネの電源を吸収しやすい形だ。それでも、再エネの導入量増加に伴い送配電のコストは上昇しており、05年から13年にかけ1kW時当たり60%増えた。この増えた額の一部も未回収費用になっている。送電線はフランス、ポルトガルに加え、北アフリカにも連携しており、再エネの電気が余った時には輸出も可能だ。 14年上期のスペインの最大電力需要は2月27日に記録された4028万kWだった。一方、スペインの13年末の発電設備量は、その2.5倍の1億228万kWある。予備率は150%だ。日本の今年の冬の予備率は電力会社によっては3%しかない。スペインの発電設備には大きな余剰があり、凪あるいは突然の雨などにより再エネからの発電が止まってもどこからでも直ちに送電することが可能だ。 スペインが大きな余剰設備を持つことになった理由の一つは、電力需要がリーマンショック以降の不況により低迷していることだが、効率の良いコンバインドサイクルの建設に対し政府により出された補助金も設備が大きく増えることを助けた。政府は余剰設備の縮小のために補填を行うことを決め、また余剰設備活用のためにフランスとの連携線を強化し電力輸出量を増やすことでフランス政府と合意した。 送電線の形状と発電設備の余剰の状況から、スペインは再エネの導入が容易な国だ。報道ステーションが伝えるように、送電線の形状も余剰設備量も異なる日本で、発送電を分離すれば再エネ導入量を増やせるという単純な話ではない。送電線の増強には多額の費用が必要だ。地産地消で雇用と産業創出は本当か 再生可能エネルギーを導入することにより地域の電力需要を賄い、地域で雇用を創るともよく主張されている。その実例も報道ステーションでは取り上げていた。スペインのカナリア諸島で、風力と蓄電機能のある揚水発電を組み合わせ再エネだけで島の電力を賄うことができるようになる話だ。 風量が多い時に、余った電気で下池の水を上池に揚げておき、風が吹かないときには上池の水を落とすことにより発電を行うシステムだ。地産地消だが、このシステムの発電コストについては、全く触れられていなかった。高いからだ。 送電線が他と繋がっていない離島では、ディーゼル発電などを行うのが普通だ。燃料消費量が多くないことから、大量輸送が前提になる天然ガスあるいは石炭を利用する発電設備の設置は難しく燃料の選択肢は石油系しかない。石油系の燃料を使い小型の発電機で発電を行えば、そのコストは高くなる。1kW時当たり30円から40円はするだろう。風力と揚水の組み合わせの発電コストも高いが、同レベルだろう。 選択肢のない離島であれば、発電コストが高くても受け入れられる風力と揚水の組み合わせだが、発電の選択肢がある場所ではコスト面から導入は不可能だ。電気料金が周辺地区の2倍となれば、消費者は黙っていない。離島という特殊事情で可能な発電方法を、普遍的な発電方法のように紹介すれば視聴者は誤解する。報道番組であればもっと説明が必要だろう。ちなみに、再エネの組み合わせによる発電方式を導入しても、もともとあった発電機は維持しておく必要がある。暴風雨、保守点検などにより風力発電設備が停止した場合のバックアップ用だ。 地産地消により、雇用は生まれるのだろうか。風力、太陽光発電設備は僅かの雇用を生むだけだ。木片などのバイオマス、生物資源であれば林業、運搬などで雇用が生まれるが、比較的成功しているオーストリアですら、その規模は全雇用の0.5%に過ぎない。また、世界の太陽光パネルの大半を中国が製造している現状をみれば、再エネを導入しても関連産業が育つとは言えない。 固定価格買い取り、補助金などの支援制度がなければ、再エネによる電気料金は高くなる。地産地消の再エネの電気を利用すると、その地域では競争力のある電力を必要とする製造業は育たず、地域は疲弊する。補助金を利用し、電気料金を下げればスペインと同様の問題を抱えることになる。再エネの現状を正しく把握し、政策立案を 欧州諸国がFITを止めているのは、電気料金上昇を懸念しているからだ。電気料金は産業の競争力に大きな影響を与える。最近も、ドイツで地球温暖化対策のために石炭火力を閉鎖しようとする動きが生じたが、これに対し社民党の党首でもあるガブリエル・エネルギー経済大臣が、「産業の競争力に影響が生じるので発電コストが安い石炭火力の閉鎖は行わない。脱原発と脱石炭を同時に行うことは不可能だ」と断言した。 そんな状況下で、日本は相変わらず電気料金の大きな上昇を招くFITを続けている不思議な国だ。デフレから脱却し製造業が復活しないと、今の日本の産業構造では経済成長は難しい。ドイツ、スペインの政策から学び、産業の競争力を考えつつ再エネ導入策を考える時期に来ている。 確かに、温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しない再エネによる電力供給は望ましいに違いない。しかし、経済学でいうところのトレードオフ(何かを達成すれば、別のものが犠牲になる)の関係が、再エネほど明白なものもない。 再エネが温暖化対策あるいはエネルギー自給率向上のために犠牲にするものは、電力の安定供給と競争力のある発電コストだ。この犠牲なくしては現時点で再エネの導入を進めることは不可能だ。ありもしない再エネによる成長路線を伝え、視聴者を欺くような報道番組を真に受けないほうがよい。やまもと・りゅうぞう 常葉大学経営学部教授。京都大学卒業後、住友商事入社。地球環境部長などを経て2008年から10年までプール学院大学国際文化学部教授。近著に「いま「復興」「原発」とどう向き合えばよいのか」(共著PHP研究所)がある。関連記事■ 原発を推す短・中・長期の合理性■ 固定価格買取制度は最初から破綻が見えていた■ 古舘氏はなぜいつも上から目線なのか?   

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    再生エネ買い取り制度 太陽光に集中、電気代上昇

    大手電力会社に義務づけた「固定価格買い取り制度」が1日、導入2年目に入った。この1年間で運転を始めた再生エネルギーの発電施設は国内最大クラスの原発1基分に相当し、制度導入が追い風になった。一方で、買い取り価格が高めに設定された太陽光発電に集中し、電気代への転嫁を通じて国民負担が増える問題点が鮮明になっている。原発1基分相当 経済産業省資源エネルギー庁によると、平成24年度の国内の総発電量に占める再生エネルギー(水力を除く)の割合は、前年度から0・2ポイント増え、1・6%になった。水力も含めると、10・0%となり、買い取り制度を先行導入したスペイン(33・5%)やドイツ(19・0%)を下回るものの、米国(10・9%)と肩を並べる水準だ。 経産省の総合資源エネルギー調査会では、委員から「買い取り制度の効果が非常にはっきり出ている」など、評価の声が上がる。 買い取り制度導入後、今年2月末までに運転を始めた再生エネルギーの発電施設は出力計135・2万キロワットで、このうち93%が太陽光だ。他の再生エネルギーに比べ、施設の設置が容易なうえに、買い取り価格が割高で十分な利益を確保できることから、大規模太陽光発電所(メガソーラー)が急増した。 太陽光の買い取り価格は、25年度に出力10キロワット以上の太陽光で1キロワット時当たり37・8円と前年度から1割引き下げられた。それでも風力の約2倍の高値とあって、太陽光は今後も拡大する見通しだ。独では見直しも ただ、太陽光が増えることに伴う弊害もある。電力会社が再生エネルギーによる電力を買い取る費用は、家計や企業が支払う毎月の電気代に上乗せされる。標準的な電力使用量の家庭で、25年度の上乗せ額は全国平均120円と前年度比4割弱増えた。割安な風力の普及が遅れれば、電力会社の買い取り額の増額を通じて国民負担が増大する可能性もある。 普及に伴い、家庭向け販売などのトラブルも増えている。国民生活センターによると、22年度の相談件数は2690件だったが、東京電力福島第1原発事故などで再生エネルギーへの関心が高まった23年度は3934件に急増。固定価格買い取り制度が導入された24年度はさらに増え4407件となった。 一方、買い取り制度の導入から10年以上経過したドイツでは、電気代が導入当時の約2倍となり制度の見直しを迫られている。今年に入って、電気代の上乗せ額の引き上げを2年間凍結する方針を発表した。東京工業大の柏木孝夫特命教授は「太陽光以外の再生エネルギーを伸ばすなど、国民負担を抑える工夫が必要だ」と指摘している。

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    再生可能エネルギー接続保留は誰のせい? 国会の責任を問う

     朝野賢司 (電力中央研究所社会経済研究所主任研究員)  電力5社(北海道、東北、四国、九州、沖縄)が再生可能エネルギー発電設備の電力系統への接続申込みに対する回答を保留したことで波紋が広がっている。回答保留を受けて、政府が掲げる再エネ最大限導入に反するといった意見があるようだ。本当の責任者を問う しかし、そもそも我が国のFITの破綻が不可避であることは、2012年7月の実施前からわかっていた。この直接的な原因は、FITの買取価格が高すぎたこと、そして買取価格の適用時期が設備認定の時点にあったことにつきる。つまり、制度設計の問題である。 こうした制度設計がされた責任は、買取価格の査定能力が欠如した調達価格等算定委員会(以下、調達委)、投資環境整備に偏った政省令を作成してきた資源エネルギー庁(以下、エネ庁)、そしてFIT法の原案にはあった上限規定等の効率性の観点を修正案でそぎ落とした立法の不備(国会)にある。 このように書くと、制度設計の問題なのだから、FITを修正し、改善を図っていけば良いのではないかという意見もあるだろう。しかし、査定能力に信頼が置けないままFITを続けることは難しいし、既に余りにも高くつく過ちを犯している。 我が国FITでは直近(今年6月末)の認定分7178万kWが全て運開した場合の年間賦課金額は2.7兆円、買取期間は20年間等の長期に渡るためその総額は50兆円を超える(図1)。加えて認定分に遡及した買取価格の変更等の制度修正は極めて困難である。かつてドイツ・シュピーゲル誌は「太陽光発電は、ドイツ環境政策の歴史で最も高価な誤りになりうる」と批判したが、遡及措置が困難であることを考えると、ドイツを超えて、「世界の環境政策の歴史で最も高価な誤り」となることが不可避にあると言えよう。 政府が掲げる「再エネの最大限導入」は、いくら高くても何でも買い取ることではない。改めて、出来るだけ少ない費用負担で、出来るだけ多くの再エネ供給を得る、効率性の観点に立ち返ることが必要である。具体的には、FITを廃止し、入札等の競争原理を用いた制度による仕切り直しが求められている。査定能力がない調達委員会 FIT実施に当たり、その最大の論点の一つは買取価格の設定である。我が国では、国会同意人事に基づく有識者5名による調達委が、再エネの種別・規模別等で16種類に分けて、「効率的な供給を行う場合に通常要する費用」に「適正な利潤」を加えて算出した(FIT法3条2項)。買取価格は最終的に経済産業大臣が決定するが、その際に調達委の意見書を尊重することが規定されている(同3条5項)。 しかし、調達委の査定能力に大いに疑問がある。第1の問題として、業界団体のほぼ「言い値」で買取価格を算定した上に、基本的な計算諸元も不明で再現が不可能なことが挙げられる。例えば2012年度は、16種類の買取価格を設定した中で、事業者や業界団体が希望した買取価格がそのまま採用されたのが10種類、業界側希望価格から上乗せした価格は2種類に対して、縮小側見直しは3種類に過ぎない。 加えて、調達委は業界提出の建設単価(万円/kW)を6種類について切り下げたが、最終決定した買取価格は業界希望のままだったことは特に不可解である(拙稿「日本における再生可能エネルギー普及制度による追加費用及び買取総額の推計」、p.32参照)。なぜそうなったのか、稼働率等の計算諸元が示されておらず、再現することは困難である。また、稼働率等の価格算定に必要不可欠な算定根拠が示されていない再エネも多く、買取価格がどのような試算によって算出されたのか不透明である。 第2の問題として、再エネ事業者はコストデータの提出の際に、何らエビデンスを提出する必要が無いことだ。とりわけ、木質バイオマスと非住宅用太陽光発電の買取価格の設定が不可解だが(前者については拙稿「未利用材バイオマス発電 補助金4重取り」をご参照頂きたい)、エビデンスがないことの問題について後者の非住宅用太陽光を事例に示す。 我が国のFIT買取価格は、運転開始時にエネ庁に提出する「発電設備設置・運転費用年報(年報)」に基づくコストデータに、適正な利潤を加えて算定される。非住宅用太陽光の買取価格は、12年度はシステム価格32.5万円/kWを基に40円/kWhと定められ、12年10~12月に提出された年報では同28万円に下がったことから13年度は36円/kWhとなった。 しかし、13年10~12月、同価格は30.5万円と2.5万円上昇していた。そこで、(1)設備認定後の意図的な着工遅延を調査した報告徴収に基づいて収集したデータ(つまり運開前の設備発注段階)により、同価格が27.5万円に下がっていること、(2)非住宅用太陽光発電の設備利用率が13%と従来に比べ1%向上していること――から、14年度買取価格を32円/kWhに切り下げることを調達委で決めたのである。 32円という買取価格は、依然、欧州FIT先行国と比べて2倍以上の水準にある。米国でも、モジュール価格の低下により、太陽光発電コストは昨年1年間で約3円下がり11円/kWhである。しかし、世界中で日本だけがコストが下がらないどころか、上昇している。普及によってコストダウンを促すFITの政策目的は根底から問い直されている。  なぜ高止まりしているのか。よく円安が理由に挙げられるが、国内のモジュール出荷価格は国際的な相場に近づいており、円安の寄与度は小さい。考えられるのは、(1)太陽光発電の施工需要が急増しても、同じ地域内の工事・電気設備業者数はそれほど増えないので、工事費等が高騰している、(2)買取価格が高すぎるので、コスト削減意欲が大きくない企業も参入している――ことだ。つまり、よく「日本はコストが高いから買取価格が下げられない」と言われるが、反対に「買取価格が高いからコストが下がらない」可能性がある。 コストダウンを促すためには入札等の制度変更が必要だが、すぐにでもできることは、第三者へのコストデータの公開である。非住宅用太陽光発電だけで約12万件の年報が提出されているが、領収証等の提出は不要。虚偽報告は認定取り消しになるので、必ずしも多くはないだろうが、単純な記載ミスはありうる。したがって、年報にコストのエビデンスを求めるとともに、コストデータを研究機関などに公開することで、コストダウンを妨げる要因の定量的検証を進めるべきだろう。確信犯的に再エネ事業者を優遇したエネ庁 エネ庁の新エネルギー小委員会(以下、新エネ小委)の山地憲治委員長は、「(制度の問題点について)警告が出されていたにもかかわらず、(政府は)今日に至る事態を招いた。予見されていたことなのだから、当然、手を打つべきだった」と批判したとされる(2014/10/01 読売新聞朝刊)。審議会の座長がこうした批判をわざわざ言及することは異例だが、この指摘で念頭にある一つは、買取価格の適用時期を認定時点としたまま放置し続けたことだろう。 そもそも買取価格の適用時期には、我が国の設備認定時点、電力会社との系統接続の契約時点、そしてドイツ等の主要なFIT導入国のように設備の運転開始時点の3つの段階がある(参考記事「なぜ再エネは接続保留に至ったのか」)。我が国ではこの中で一番早い適用時期を設備認定時点とした。その結果、毎年年度末に駆け込み認定が発生し、設備認定量の1割程度しか運転開始に至っていないことや、空枠取り等の問題が生じていることは、拙稿で繰り返し指摘してきた(「バブルが始まった太陽光発電」、「太陽光のFIT認定は一時的に停止を」)。 空枠取りとは、買取価格の権利を先に獲得し、太陽光パネルの価格が安くなるまで意図的に運開を遅らせる、あるいは当初から発電事業は念頭になく買取価格の権利転売だけを目的としたブローカーを指す。空枠取りの横行は、健全な事業者の排除につながる。電力会社の電力系統への接続は申込順であるため、空枠取りは認定を受けると、買取価格だけでなく、系統接続の権利も獲得している。プロジェクトの熟度が全く考慮されず、運開時点が早いか遅いかという書類申請の申込順だけで、系統接続の優先順位が確定される。 実は、なぜ適用時期が認定時点になったのか、あまり知られていない事実が2つある。第1は、FIT実施前のパブリックコメント募集の段階では価格適用時期は契約時点だったが、事業者からの「ファイナンスを組むためにも極力早い段階での価格の確定を期待する」等の要望を受け、パブコメの回答として、投資環境整備を重視するという理由で設備認定時点に早めていることだ。 (要望は「調達価格及び調達期間等、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法の施行関係事項に関するパブリックコメントの実施」(p.42~43)、回答は「再生可能エネルギーの固定価格買取制度パブリックコメントに関する意見概要及び回答」(p.28、番号25と28)) 第2に、価格適用を認定時点にすることで、いわゆる「空枠取り」問題が起こることは、FIT制度開始前にエネ庁が認識していたことである。第2回調達委(2012年3月15日)の議事録によれば、調達委の山地憲治委員から適用時期が論点となるとの指摘を受けて、「枠取りというか初年度の価格を受けようとするためだけに、蓋然性がきちんと決まっていないのに設備認定等の申請が出てくる」として、たたき台を示して、調達委だけでなく、世の中に示し意見を聞くとしていた。また、パブコメ募集段階では、「事業計画が固まっていないにも関わらず有利な調達価格等をとりあえず確保するため、事業計画策定途上で調達価格等だけ確定させようとする不正事案が生じることも懸念される」ことから、「当該事業に要する費用が相当程度確定した段階でなければ、適用すべき調達価格等を確定させることはできない」として、「電気事業者との特定契約の締結時の年度の調達価格等を適用すること」としていた。 したがって、エネ庁は、空枠取りの問題を導入前から把握していたにもかかわらず、確信犯的に買取価格の適用時期の設定によって再エネ事業者を優遇したと言えるのだ。 最大の問題は、適用時期問題が、審議会等のオープンな場で全く議論されなかったことである。パブコメで適用時期の違いを踏まえてエネ庁が自身の考え方を示しているのは良いことだが(結果としてたとえ間違っていたとしても、何を根拠に判断をしたのか辿ることができる)、当初から問題点が認識されていたのであれば、少なくとも調達委で議論することで意思決定の透明性を確保すべきだっただろう。総額50兆円を超える国民負担を推進した国会 接続保留に関して、この間の国会での議論を聞いて首をかしげるのは、「政府は再エネ最大限導入と掲げている」とし、いくら高くても何でも買い取るかのような主張が幅を効かせていることだ。しかし、費用負担の上限等、効率性の観点をそぎ落とした法案を成立させた「立法の不備」は、前述した三者の責任の中で最も重いのではないか。再エネ特措法が成立した経緯を振り返ってみよう。 そもそも、再エネ特措法の原案は2011年3月11日に閣議決定され、同年8月11日に自民党の修正案をほぼ全て取り入れる形で、民自公3党の修正合意によって、現行の再エネ特措法が成立した(図2年表参照)。2012年、メガソーラーの運転開始セレモニーで、自信たっぷりに発電計画を説明した孫正義社長 この国会審議による修正によって、FITの内容は、エネ庁の審議会における検討内容(再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチームによる「再生可能エネルギーの全量買取制度の大枠について」、買取制度小委委員会報告書 )、それに基づく3月11日に閣議決定された原案と大きく異なったものとなった。 とりわけ、費用負担の上限という考え方がなくなり、電源別規模別の買取価格が設定されることになったことが大きい。効率性の観点を弱めたのは、国会である。 費用負担の上限については、当初、賦課金単価は、「1kWhあたり0.5円を超えない範囲内の負担額(一般家庭150円/月)」と海江田万里経産大臣(当時)が明言していた(衆議院本会議における法案趣旨説明答弁、2011年7月14日)。しかし、衆議院で修正案が可決された(8/23)翌日、「政府提出法案では0.5円/kWhを超えない範囲内の負担額と考えていたが、衆議院での修正の趣旨を踏まえる必要がある」「衆議院における法案修正を踏まえ、150円としていた負担額は上昇する可能性がある」(海江田大臣による8/24参院本会議における法案趣旨説明答弁)としている。つまり、この上限に関して政治的な逃げ道が確保されたのだ。ちなみに、14年度の賦課金単価は「0.75円/kWh」であり(図1)、既に当時議論していた上限を超えている。 電源別買取価格については、原案では、買取価格は1kWh当たり15~20円、買い取り期間は15~20年間で、太陽光発電とそれ以外の再エネ電源の2種類に分けるだけで、太陽光発電以外には電源別の区別がなかった。しかし、修正案では、太陽光発電以外についても再エネの種類ごとの設置費用に適正利潤を上乗せした価格設定を行うことになった。特に、法律の施行後3年間を利用拡大の期間として、「調達価格を定めるに当たり、特定供給者が受けるべき利潤に特に配慮する(附則7条)」という修正を加えたことによって、高めの買取価格が設定されることとなった。 以上のように、費用負担の上限もなく、導入実績に基づいた制度改廃もできない法律になっているため、結果として費用負担が急増し、根本的な対処が打てない状況が続いている。 2012年7月から今年6月末までにエネ庁に認定された再エネ設備は7178万kWに達している。このすべてが運転開始(運開)すれば総発電量に占める再エネ割合は、現状の約12%から約20%に達する。また認定量の内訳をみると、10kW以上の非住宅用の太陽光発電がその9割を占めている。 今後の賦課金水準は、これら認定設備のうち実際に運開する設備量に依存するが、仮にこのすべてが運開した場合、賦課金単価は3.12円/kWh、年間2.7兆円、これは標準家庭1カ月の負担額で935円に相当する(図1)。非住宅用太陽光発電が年間800万kW程度ずつ運開すれば、21年度頃にこの水準に達する。これは14年度の実績値の4.2倍、エネ庁による20年度推計の約3倍に達する水準である。 また、買取期間は10~20年間続くため総額50兆円を超える国民負担による売電収入を再エネ発電事業者に既に保証してしまったことを意味する。もちろん認定取り消し等の理由により、認定のすべてが運開するとは考えにくいが、仮にその半分が運開するとしても、エネ庁推計を1.5倍も上回ることになる。 以上のFITによる導入効果と費用はどのように評価できるだろうか。結論としては公共政策としての費用対効果は極めて悪い。FIT導入以前に実施されていたRPS制度における再エネ1kWhあたりの補助単価は5.8円(10年度)だったが、FITでは同27円となっており、4倍以上も悪化している。また1トンのCO2を減らすのに約5万~8万円(13年度実績値)もかかる非常に高価な温暖化対策である。我が国のFITがこのように費用対効果が悪い理由は、修正法案に効率性の観点が欠落し、他の再エネ電源と比べてももっとも割高な太陽光に認定と導入が集中していることにある。現状は大けが 早急に止血せよ 今や他国の経験から学ぶという段階ではなく、我が国独自の制度欠陥を早急に是正することが必要である。まずは、この異常事態を止めるため、太陽光に対するFITの認定を一時的に停止すべきである。さもなければ、今後も認定が急増し、今年度末までにはさらに数十兆円の国民負担が上乗せされかねない。これは到底看過できない。現状は大けがをした状態であり、まずは血を止めなければならない。その上で、制度の欠陥をよく点検し、修正を施した上で再開すべきである。 具体的には、既に認定された設備に対して、より一層の厳格な認定審査と取消の実施が不可欠である。 同時に、非住宅用太陽光の買取価格を大幅に切り下げるか、導入量に上限を設定し、買取価格の適用時期を現行の認定時点から、ドイツ等と同様に運転開始時点に変更すべきだ。 我が国の見直しに向けた第1の改善点は、導入上限を設定し、費用負担をコントロールすることだ。そもそも、FITの買取価格は、再エネ電源別にコストを評価し、そこに利潤を加えて算出するため、上限を設定しない。しかし、急激な太陽光のコスト低下を反映できずに、高すぎる買取価格が設定されたため、費用負担が膨らんだ。そこで、年間導入量あるいは買取総額を上限とし、費用負担の抑制を試みている。 第2は、上限の設定基準として、導入目標を用いることだ。短期的な導入急増は費用負担だけでなく、系統整備が間に合わない等のデメリットが生ずる。例えば、日本の太陽光発電導入目標は20年度累積2800万kWに対して、3月末までに1431万kWが導入されている。つまり、今年度以降、毎年約200万kWの導入で目標が達成できる。毎年200万kWを上限として、入札により買取価格を定める等の費用負担抑制策もある。 政府が掲げる「再エネ最大限導入」とは、いくら高くても何でも買い取るという意味ではないはずだ。出来るだけ少ない費用負担で、出来るだけ多くの再エネ供給を得る、効率性の観点に立ち返ることが肝要である。   

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    なぜ再エネは接続保留に至ったのか

    (c)Thinkstock Wedge編集部 九州電力が9月24日に再生可能エネルギー発電設備の電力系統への接続申込に対する回答を保留したことを皮切りに、最終的に電力5社(北海道、東北、四国、九州、沖縄)に同様の措置がとられていることに波紋が広がっている。「もっと早く受付を保留にすべきだった」、「接続申込量よりも実際に運転開始する設備の容量は小さいから、接続はまだ受け入れられる」との批判がある。 しかし、これは日本の固定価格買取制度(FIT)で設備認定から運転開始に至る実際の手続きをよく理解していない、的外れな指摘である。 後述するが、日本のFITでは買取価格の確定が「設備認定時点」となっており、諸外国が「運転開始時点」となっているのに比べ、時期が早い。この制度を悪用して、先に設備認定を国に申請して、高い買取価格を確保しておき、その後太陽光パネルなどの価格が下落していくのを待って運転開始させるという、通称「空枠取り」が多数発生している。さらに、「空枠取り」で買取価格の権利等を先に押さえ、他者に転売するブローカーが横行し、転売のたびにつみあがった手数料でコストがかさみ、結局事業断念に至る事例も多い。 問題の本質は、実際にどれだけ運転開始に至るのか誰にも分からない制度設計にある。こうした中で、申し込みが急増したいま、電力会社が接続申込を受け入れる「供給承諾」を保留したのは現実的な判断だったと言える。買取価格確定と系統接続確定が別タイミング ややテクニカルになるが、再エネ設備が設備認定を経て運転開始に至るまでの手続きは次のようになっている。固定価格買取制度における運転開始までの流れ (出所)経済産業省 エネ庁の資料(新エネ小委員会 系統ワーキンググループ第1回配付資料3、p.10)に示されているように、手続きは、[1]任意の事前検討、[2]設備認定・系統アクセス検討依頼・接続の本申込、[3]電力会社による供給検討と回答(供給承諾)、[4]契約締結と運転開始の4段階である。 日本のFITで買取価格が確定するのは、[2]設備認定等の段階である。ここでは、エネ庁が設備認定を、電力会社が接続可能性を並行して審査・検討する。エネ庁の設備認定を経て、電力会社に正式な接続契約(接続の本申込)を申し込んだ時点で適用される買取価格が確定する。なお、設備容量50kW未満の低圧接続に関しては、電力会社への接続検討自体が不要とされており、国の設備認定のみで買取価格が確定する。 しかし、電力系統の接続費用が最終的に確定し、接続できるか否かは、[3]電力会社による供給検討と回答(供給承諾)を経た契約締結によって確定する。つまり、[2]の接続検討では系統連系工事の概要や工事費の概算を示すに留まり、その後事業者の本申込が行われた後の[3]のステップで系統接続の優先順位が確定することで、詳細工事の設計・費用が確定する。今回の接続保留は、[2]の接続検討の回答、あるいは[3]の本申込に対する回答(供給承諾)を保留しているという状態を指している。空枠取りを見極めるために設備保留判断が遅れる 冒頭の「もっと早く保留にすべきだった」という問いについて考えてみよう。九州電力を事例に接続保留に至った経緯を振り返ってみる。 確かに、[2]段階の設備認定量だけで判断すれば、6月末にはこうした事態に至ることは予見できた。6月18日にエネ庁から公表された資料で今年3月末までの九州電力管内の設備認定容量は1755万kWにも達していることが明らかになる一方で、これは5月16日にエネ庁の需給検証で示されていた九電の夏の最大電力需要を上回っていた(電力需給に関する検討会合「2014年度夏季の電力需給対策について」)。その意味で、この設備認定全てが受け入れられないことは自明だったが、どちらも公知情報をつきあわせれば分かることで、6月下旬の時点で関係者や研究者で知らぬ者はいなかったようだ。 しかし、この段階で接続保留を行えば、それこそ「まだ認定段階なので、事業断念があるから接続は可能だ」とする反論があっただろう。また、制度上、3月末までの認定容量1755万kWの中で低圧接続される50kW未満の設備については、電力会社への系統アクセス検討(前述の[2])が行われない。また、50kW以上についても、接続本申込を経た上では事業断念する案件は少ないと思われることから、実際の接続申込量を見極めようとしていたと考えられる。 実際、九州電力の資料をよく読めば、認定量だけでなく、接続本申込量を示し、「2014年7月末時点の太陽光発電の接続契約申込み量が全て系統に接続された場合、太陽光と風力の接続量は約1260万kWに達し、これら全てが発電すると、電力需要が小さいゴールデンウィーク等の昼間の消費電力(約800万kW)を太陽光・風力による発電電力が上回るため、電力の安定供給が困難となる」として接続保留を発表している(「九州本土の再生可能エネルギー発電設備に対する接続申込みの回答保留について【詳細説明資料】」、p.5 )。問題は設備認定時点で買取価格が確定する制度設計 したがって、本質的な問題は、設備認定量あるいは接続申込量のいずれの段階でも、実際にどれだけ運転開始に至るのか誰にも分からない制度設計にある。換言すれば、我が国FITでの買取価格の適用時期が、ドイツ等の主要なFIT導入国のように設備の運転開始時点や、少なくとも電力会社との契約時点であれば、今回の接続保留を巡る「既に投資しており損害が発生している」といった批判は避けることができただろう。 前述のエネ庁資料で記されているように、本来、再エネ発電事業者による自己資金や融資等の実施は、契約の締結時点を経てから実行することになる。これは系統アクセスの接続費用が最終的に確定していない、あるいは接続できないリスクがあるからだ。ただ、小規模事業者や個人投資家等の間には、「設備認定を受けて買取価格が確定したと思ったので、投資を既に行った」、あるいは「そもそも設備容量50kW未満の低圧接続であれば、電力会社による系統アクセス検討は不要だったので、当然接続できると考えていた」といった不満があるようだ。 これはあまりに事業者のFIT関連法規に対するリテラシー不足と言えないだろうか。また、今年度の認定から50kW以上の太陽光発電はエネ庁の認定後180日以内に場所及び設備を確保できない場合は認定が失効する解除条件を定めており、設備発注等の手続きを契約締結から早めるように促していた。いずれにせよ、そもそも、買取価格の確定が契約時点であれば、上記の混乱は生まれなかったはずである。 買取価格の適用時期が認定時点であることによって、多くの問題が引き起こされてきた。弊誌は他のメディアに先駆けてこのテーマを取り上げてきたのでご覧いただきたい(記事「バブルが始まった太陽光発電」など)。   

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    太陽光導入 破綻の真犯人

    再生可能エネルギー接続停止の話題が盛り上がっている。巷の報道では、原子力再稼働のためとか、電力会社の嫌がらせといった分析が散見されるが、これはまったくの筋違いだ。固定価格買取制度(FIT)が破たんしていることは、導入当初からわかっていた。初期段階から追及してきた月刊Wedgeが問題の真相を整理する。

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    固定価格買取制度は最初から破綻が見えていた

    朝野賢司 (電力中央研究所社会経済研究所主任研究員)  再生可能エネルギーの接続保留が発生し、唐突、不透明と批判が相次いでいる。しかし、再生可能エネルギー固定買取制度(FIT)はもともと持続性がない制度なのだ。再エネ特措法は、2011年8月、菅直人首相(当時)の退陣と引き換えに急ぎ立法されたが、モデルとなったドイツではFITが既に大問題になっていた。12年7月の制度開始時点で、FITに内在する課題を強く警鐘を鳴らしていた本稿を再掲する。(Wedge編集部)孫正義氏 固定価格買取制度(Feed-in Tariff、以下FIT)とは、再生可能エネルギーによる電力供給を、20年間等の長期に「固定」した価格で、電力会社に買い取ることを政府が義務づけるものだ。その費用は賦課金として電気料金に上乗せされ、一般家庭を含めた電力需要家が負担する。 買取価格は、「効率的な供給を行う場合に通常要する費用」に「適正な利潤」を加えて算出される(再生可能エネルギー特別措置法〔以下、FIT法〕3条2項)。買取価格は1年ごと(必要があれば半年ごと)に見直すことができるが(同3条1項)、翌年から価格を引き下げても、その価格が適用されるのは翌年以降に設置される設備で、過去の分は長期間固定される。 FITは、再エネ事業をリスクのない投資に仕立てるため、普及拡大につながる。他方で、努力してコスト削減を行うと翌朝の買取価格切り下げに反映されてしまうため、事業者にコスト削減のインセンティブが働きにくい側面がある。換言すれば、国民負担を最小化することが難しい制度なのである。 FITの先駆者であるドイツは、国民負担が想定以上に膨らみ、その運用に苦心している。太陽光発電の導入実績が目標を大幅に超過するバブルともいうべき導入ラッシュが発生し続けたからだ。導入ラッシュにドイツが投じた費用は驚くべき額で、FITの負担額は、11年だけで総額136億ユーロ(約1兆3600億円 ※原稿執筆時点2012年6月時点の為替1ユーロ=100円で計算、以下同)、1世帯あたりの月額負担額は10.3ユーロ(約1000円)と推計され、これは電気料金の2割近い。この負担額の半分以上が太陽光発電に費やされてきたが、その発電量は総発電量比3%に過ぎない。独シュピーゲル誌も「太陽光発電は、ドイツ環境政策の歴史で最も高価な誤りになりうる」と批判している。 日本はドイツの教訓を真摯に学び、できるだけ少ない国民負担で、より多くの電力供給を得る、より効率的な再エネ供給のあり方について急ぎ検討を始めるべきだ。結論を先に言えば、FIT法の改正が必要である。独の導入ラッシュ 2つの教訓 ドイツは1991年にFITを導入し、2011年末において電力消費量の20%が再エネでまかなわれている。特に大きく普及したのが、風力発電と太陽光発電である。2011年末における累積導入量は、風力発電が約2900万kW(世界3位、全世界導入量の12%)、太陽光発電が約2500万kW(同1位、36%)である。 ドイツFITの第1の教訓は、国内で市場が拡大しても、国内メーカーがその市場を獲得できるとは限らないことだ。欧州諸国のFITにより、全世界の累積生産量は2008年の約1900万kWから2011年の9200万kW以上へ4倍以上増加している。中国と台湾の世界生産シェアは、2008年約30%から、2011年は約74%に達している。 この生産増加によって生じた大量の在庫により、太陽光発電価格は急落した。ドイツの太陽光発電システムの価格は、2009年の1kWあたり約4500ユーロから、2012年初めには同2000ユーロ以下と3年間で3分の1にまで下落した。日本では1kWあたり35万~50万円なので、その内外価格差は2倍である。 ただしドイツメーカーの破綻は相次いでいる。2008年に生産量が世界一だったQセルズ社は、中国メーカーとの価格競争に敗れ、2012年4月に経営破綻した。 第2の教訓は、買取価格の改定頻度を上げて費用抑制を目指したが、それでも導入ラッシュを防げていないことだ。2010年と2011年のドイツの年間導入量(各738万kWと749万kW)は、2020年までの導入目標から逆算した年間目標量の約2倍に至った。 興味深いのは、買取価格を切り下げる直前の1カ月間だけ、毎回約110万~300万kWの極端な駆け込み導入が発生していることである(図表1)。 ドイツのFITでは、コストデータを集め、事業者にとって過大な利潤が発生しないように、電源別・規模別に細かく買取価格を設定してきた。特にコスト低下が著しい太陽光発電については規模別に6区分に分けて、2009年1月以降、2012年1月の更新まで、半年~1年ごとに繰り返し買取価格を切り下げてきた。他方で、前述したようにドイツでの太陽光発電システム価格が同時期約3分の1に低下した。したがって、この駆け込み導入は、急激な太陽光発電のコスト低下によって事業者の利益が増加する一方、それを反映した買取価格の改定ができなかったことを意味する。 そこで2012年になって提案された買取価格案では、2012年5月以降は毎月1%価格を切り下げ、11月以降は、至近の導入実績に応じて、年間導入目標(250万~350万kW)を超える場合に引き下げ幅を0.75~1.5%で調整するとしている(ただし、この法案は本稿執筆の6月初め時点で成立していない)。世界初となる1カ月ごとの価格改定は、価格調整に苦心したドイツがたどりついた結論である。その成否はこれから問われることになる。価格更新の短縮と導入量からの設定を 日本のFITへの提案は、まず太陽光発電買取価格の更新頻度をドイツに倣い1~2カ月程度にすることだ。実はドイツの太陽光発電は、約8割が屋根設置型で、その大半が非住宅用、つまり商業施設・集合住宅・工場等の屋根に設置されている。屋根設置型のリードタイムは2カ月程度と、メガソーラーの約1年と比べて短いため、導入ラッシュの最大の原因になっている。しかし、日本のFIT法では太陽光発電の買取区分が住宅用(10kW未満)と主にメガソーラーを念頭においた非住宅用(10kW以上)のみであり、非住宅用屋根型(10kW以上)という新しい区分が必要だ。注)非住宅用屋根設置の太陽光発電に対する買取価格。括弧内の幅は、供給曲線の弾性に関するパラメーターを±50%変動させたときの値。 (出所)杉山昌・朝野(2012)「FITにおける太陽光発電の機動的な買い取り価格改定の必要性」電中研ディスカッションペーパー(SERC 12004) 筆者らは、非住宅用屋根設置型太陽光発電について、2013年度の1年間でコストがドイツ並みにまで低減すると想定した上で、現行法に基づいて1年間は1kW時あたり40円で価格改定を行わないケースと、2カ月ごとの価格改定で、1kW時あたり40円から23円に切り下げるケースを比較した(図表2)。 導入量を比較すると、前者は約116万kWと、後者の約30万kWより大きい。しかし、導入量あたりの支払額をみると、前者が1kWhあたり40円であるのに対して、後者は31.5円と費用対効果に優れていることが分かる。また、住宅用とメガソーラーの導入量は確保されるので、非住宅用屋根設置型が30万kWでも20年段階での導入目標(2800万kW)は達成可能である。 ただし、1~2カ月ごとの価格改定のために買取価格を検討する経産省・調達価格等算定委員会を招集するのは行政コストがかさむ。そこで、ドイツのように至近の導入実績と年間導入目標を比較して自動的に買取価格の増減を設定することが考えられるだろう。 日本のFITは、繰り返しになるが、費用に適正な利潤を加えて買取価格を設定するよう法に規定されている。しかし、本来、導入目標から価格設定を考えた方が合理的だ。 例えば、2012年5月末に総合資源エネルギー調査会基本問題委員会が示した2030年時点の電源構成の選択肢(図表3)に基づいて、買取価格を設定する方法もあるだろう。ここでは再エネの発電比率はそれぞれ35%、30%、25~30%であり、2010年実績値の11%と比べると、2.5倍以上の増加を想定している。(注)GDPの増減は全て、省エネ対策等しない参照ケース(電源構成は2010年ほぼ横ばい)における2030年時点の試算値との比較 (出所)経済産業省・総合エネルギー調査会基本問題委員会資料をもとに筆者作成 これは簡単な目標ではなく、後述するように経済への悪影響を真剣に検討すべきだが、仮にこの数値を用いて、入札制度に近い形式で安価な再エネから順番に導入することを想定する(ポテンシャル試算をもとにした再エネ供給曲線を用いてもよい)。複数の買取価格や30年までの導入想定を示し、費用負担と導入量の関係を示すことで、費用対効果に基づく経済性の視点から、冷静な議論ができるだろう。 FITの価格更新を1~2カ月程度に短縮することも、導入目標から買取価格を設定することも、FIT法の改正を要する。もちろん現行法の枠内でも、買取価格の客観性と透明性を高める工夫によって、ある程度効率化につなげることはできる。例えば買取価格の設定で、トップランナーの設備を基準とする、あるいはコストデータの中で非効率(高コスト)なプロジェクトを上から2割を除外するといった手法だ。しかし、これでは不合理な導入ラッシュを防ぐのに十分ではない。再エネの拡大は経済にプラスか? 最後に、今後の論点として、FITによる再エネの普及と関連産業の拡大が、本当に日本経済の成長に寄与するのか再検証すべきだ。日本のFITの目的は、同法1条にあるように、健全な国民経済の発展である。確かにFITは現時点の再エネへの投資を喚起するので、関連企業の収益改善と雇用創出をもたらすと期待されている。 しかし、再エネの普及拡大によってGDPは参照ケースに比べてマイナスになることが、基本問題検討会における全てのモデルによって示されている (図表3)。これは、再エネは従来型電源と比べて現時点で割高であるので、その投資には当面、追加的なコストがかかるからだ。FITは割高な電源を長期に固定して買わせるので、その分、買いたかったモノが買えなくなるからGDPは下がるのである。 実際にドイツでも「導入されすぎ」「費用負担の拡大」に困り、買取価格の低減を急いでいる。換言すれば、導入を抑えれば、費用負担、ひいては経済への悪影響を止められる。日本でFITによる追加的なコストが長期的に回収されるためには、日本企業が付加価値を生み、それを内部化することで、経済成長を促すことが不可欠である。しかし、結晶シリコン系の製造技術の汎用化によって中国勢が圧倒的な競争力を持つ太陽光パネルに代表されるように、それは相当に険しい道のりだ。いかにして健全な国民経済の発展を達成するのか、という観点から社会的に適正な利潤を示すことは喫緊の政策課題である。 また、FITの買取価格は、高めれば導入が拡大し、低ければ導入量は小さくなるトレードオフの関係にある。したがって、導入量ばかりを優先するのではなく、できるだけ少ない国民負担で、より多くの電力供給を得るという効率化の観点から、買取価格を設定すべきである。 現行法では、事業者に適正な利潤を保障する3条2項、そして施行後3年間は特に利潤に配慮する附則7条によって買取価格が設定されているが、ここに効率化の観点はない。日本が手本としたドイツでも、買取価格の調整を通じて、導入量(その裏返しとしての費用負担)をコントロールしている点を忘れるべきではない。   

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    再エネ6900万kWの負担は38兆円!太陽光のFIT認定は一時的に停止を

    朝野賢司 (電力中央研究所社会経済研究所主任研究員)   固定価格買取制度(FIT)の見直し等を議論する総合資源エネルギー調査会・新エネルギー小委員会(以下、新エネ小委)が6月17日から始まった。最も重要な論点の一つは、どのように太陽光発電(PV)の急増による賦課金の高騰を抑えるのか、である。PVによる賦課金急増に苦しんだドイツ等の欧州FIT先行国では、年間導入量もしくは買取総額に上限を設定しており、日本は前轍を避けるべきだとこれまで繰り返し筆者は指摘してきた(本誌2012年7月号、2013年4月号、2014年3月号)。国民一人当たり38万円の負担 しかし、もはや手遅れなのかもしれない。新エネ小委で示された資料によれば、3月末までに資源エネルギー庁に認定された再エネの設備は既に6900万kWに達している。今後の賦課金水準は、これら認定設備のうち実際に運転開始(運開)する設備量に依存するが、仮にこれが全て運転開始(運開)すると年間賦課金総額は1.9兆円である。買取期間は10~20年間続くため総額38兆円の国民負担による売電収入を再エネ発電事業者に既に保証してしまったことを意味する(図1)。これは国民一人当たり38万円の負担である。非現実的な6900万kW 6900万kWという規模になると、送配電線に接続したとしても、出力を抑制しなければならないかもしれない。このようなリスクは、FITのもとでは、再エネ発電事業者ではなく、国民が負うことになる。国が設備認定をしているため、再エネ発電事業者には、電気を売る権利が発生している。仮に送配電網に接続できず誰も電気を使えなくても、電力会社は再エネの電気を買い取りつづけるか、あるいは、そうでなければ、国と電力会社が損害賠償をしなければなくなるだろう。 また、認定量の内訳をみると、10kW以上の非住宅用PVが92%を占めている。もちろんPVは温暖化対策にはなるが、日本のCO2を1%減らすために毎年1兆円を費やす計算になる。これは1トンのCO2を減らすのに10万円もかかる高価な対策である。なぜ非住宅用PVだけでバブル発生? 非住宅用PVのみバブル的な状況にあるのは、我が国の買取価格が高すぎることと、我が国独自の制度欠陥として、買取価格の適用時期がドイツ等のように運開時点ではなく、設備認定時点であることによる。前者の買取価格については、政府は、今年度の買取価格を32円/kWhまで下げているが、欧州のFIT先行国の買取価格に比べて、その高さは2倍以上となおも突出している。これでも事業者には十分な儲けがあり、認定設備容量はなおも増え続けるだろう。 また、後者の制度欠陥の状況を示しているのが、繰り返される年度末の駆け込み認定である(図2)。我が国ではFIT買取価格が適用される条件が、エネ庁による設備認定を当該年度中に終えることにあるため、12年2月と3月は各1ヶ月間で530万kWと770万kW、13年の2月と3月は770万kWと2650万kWの認定ラッシュが発生している。これはドイツなどFIT先行国でも前例をみない未曾有の規模の駆け込みである。問われる効率性の観点に立ち返った政治判断 懸念されるのが、空枠取りの横行による健全な事業者の締め出しである。空枠取りとは、買取価格の権利を先に獲得し、PVパネルの価格が安くなるまで意図的に運開を遅らせる、あるいは当初から発電事業は念頭になく買取価格の権利転売だけを目的としたブローカーを指す。空枠取りの横行は、健全な事業者の排除につながる。電力会社の電力系統への接続は申込順であるため、空枠取りは認定を受けると、買取価格だけでなく、系統接続の権利も獲得している。この結果、運開時点が早いか遅いかというプロジェクトの熟度が全く考慮されず、書類申請の申し込み順だけで、系統接続の優先順位が確定される。 こうした事態を受けて、エネ庁は、12年度に非住宅用PVとして認定された約5000件について、「空枠取り」等の不正がないか報告徴収(実態調査)を実施し、先日144件を取り消した。今後は、土地取得と設備発注の2点について書類提出が無ければ認定取消とする方針を打ち出したが、未だに認定後の運開期限は設定されていない。3月の2650万kWもの認定量は、これら2点の書類提出への対応は事業者にとって何ら制約にはなっていないことを示している。太陽光のFIT認定の一時的な緊急停止が必要  今や他国の経験から学ぶという段階ではなく、我が国独自の制度欠陥を早急に是正することが必要である。まずは、この異常事態を止めるため、PVに対するFITの認定を一時的に停止すべきである。さもなければ、今後も認定が急増し、今年度末までにはさらに数十兆円の国民負担が上乗せされかねない。これは到底看過できない。現状は大けがをした状態であり、まずは血を止めなければならない。その上で、制度の欠陥をよく点検し、修正を施した上で再開すべきである。 具体的には、既に認定された設備に対して、より一層の厳格な認定審査と取消の実施が不可欠である。同時に、PVの買取価格を大幅に切り下げるか、導入量に上限を設定し、買取価格の適用時期を現行の認定時点から、ドイツ等と同様に運転開始時点に変更すべきだ。 FITを規定する再エネ特措法(表1)にも、経産大臣は必要があれば半年に1度の価格改定(3条1項)がうたわれており、10月から買取価格を見直すことは可能である。また、賦課金の負担が需要家にとって過重とならないこと(3条4項)、そして、経済事情に著しい変動が生じるおそれがある場合は買取価格を改定できることが規定されている(3条8項)。 新エネ小委のオープニングにおいて、上田隆之・資源エネルギー庁長官は、「最小の国民負担による、最大限の再生可能エネルギーの導入」を明言された。FITは導入量と費用負担のバランスが重要である。出来るだけ少ない費用負担で、出来るだけ多くの再エネ供給を得る、効率性の観点に立ち返った政治判断が問われている。   

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    発電開始、わずか1割 再生エネ「買い取り制度」認定の設備

    業者、値下がり待ちも 太陽光など再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が2012年7月に導入されてから13年5月までに同制度の認定を受けた発電設備のうち、5月末までに実際に運転を開始したものが約1割にとどまることが20日、経済産業省の調査で分かった。太陽光パネルなど発電設備の値下がりを待つために意図的に建設を遅らせる“塩漬け”の案件が一部にあるとみられ、同省は悪質な事例については認定取り消しも視野に入れ、実態調査に乗り出す方針を表明した。 制度開始から今年5月末までに認定を受けた発電設備の容量は全体で2237万2千キロワットで、そのうち同期間に運転を開始したのは304万9千キロワットと13・6%にとどまる。 認定を受けた発電設備と運転を開始した設備のいずれも約9割は、買い取り価格が高めに設定されている太陽光発電に集中している。 買い取り価格は毎年度改定され、量産効果による発電設備の価格下落を織り込んで価格が引き下げられる仕組みがとられている。太陽光発電の場合、非住宅用(出力10キロワット以上)の買い取り期間は20年間で、価格は24年度が1キロワット時当たり42円だったが、25年度は37・8円に引き下げられている。 運転開始の遅れは、太陽光パネルが品薄状態で発注から引き渡しまで1年程度かかっていることが主因と経産省はみている。ただ、買い取り価格は設備認定を取得した時点で決まるため、価格が高めなときに認定を受けておき、発電設備が値下がりするのを待ってから建設を始めることで、より高い利益を狙う業者の存在も指摘される。 経産省の実態調査は、一定規模以上の非住宅用の太陽光発電が対象となる見通し。着工が遅れている場合、発電設備の発注の有無などを調べ、運転開始が遅れている原因を把握する考え。