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    安倍の悲願を打ち砕く「マイルドリベラル旋風」はこうして生まれた

    治」を批判しているが、独善的な党運営になるのではないか、という懸念が消えない。2017年10月、地域政党「都民ファーストの会」に離党届を提出し、記者会見する音喜多駿都議(左)と上田令子都議 それが「自爆テロ」となって爆発したのが、都知事選から小池氏を支援していた、いわば「譜代の臣」である音喜多駿、上田令子両都議による都民ファーストからの離党劇だ。都民ファースト内部で冷や飯を食わされていることへの不満など、表向きの離党理由以外にもさまざまな要因が取り沙汰されているものの、離党のタイミングといい、「オープンな政治」「情報公開」を掲げる小池氏にとって、そのスローガンとは裏腹の、都民ファーストの独善的な運営のマイナスイメージは計り知れない。希望の党も、都民ファースト同様「小池商店」で、小池氏個人の差配で何でも決まるのでは、果たして国政政党の体をなすのか、ましてや政権政党としてふさわしいのか、という疑問符がつきつつある。リベラルな衣をまとったご都合主義 第五は「二足のわらじへの冷めた目」だ。小池氏は圧倒的な得票で都知事の座に就きながら、わずか1年余で国政政党の代表となった。読売新聞社が10月7~8日に行った全国世論調査では、小池氏が希望の党の代表を務めていることについて、「都知事の仕事に専念すべきだ」が71%と7割を超えた。「今のまま、希望の党の代表と都知事の兼務を続けるべきだ」は19%、「都知事を辞職して、衆議院選挙に立候補すべきだ」は7%にすぎなかった。 都知事辞職、衆院選出馬していれば、総スカンの逆サプライズは必至だった。結局出馬しなかったが、党首討論や街頭演説で映る小池氏をテレビで見ている人たちは「都知事なのになぜ国政?」と思い続け、マイナスは増幅する。希望の党は「小池代表の二足のわらじ」への評価も含めて衆院選を戦わなければならない。 同じ読売新聞社の世論調査で衆院比例選の投票先は、自民党が32%、希望の党が13%。立憲民主党が7%だ。希望の党の失速、立憲民主党の躍進は、その後ますます顕著になりつつある。安倍内閣の支持率は41%、不支持率は46%で、いまだに「安倍嫌い」が根強いなかで、にわかに浮上した「リベラル勢力」。 小池氏は「リベラルを排除します」「リベラルを受け入れる気はさらさらない」などという強い表現でリベラルを排除し、「保守二大政党」を志向することを鮮明にした。それはそれで、一つの考え方ではある。小池氏としては、排除発言の時点では「リベラル潰し」をしたつもりだろう。その「功」といえば、「有権者にとって分かりやすい構図になった」ということだろうか。 1994年に「自社さ連立」の村山富市政権が誕生した際には、55年体制下で政策的にも対立した自民党と社会党が政権奪還のために組んだことで有権者を驚かせた。だが、村山首相も「自衛隊は合憲」とこれまでの主張を覆し、現実政治をリベラルが追っていくことで、有権者にとって、リベラル勢力が目指す政治の姿が見えにくくなった。新内閣組閣後、橋本龍太郎通産相(右)と握手する村山富市首相=1994年6月、首相官邸 その後、民主党が結党され、リベラルから保守勢力まで幅広いウイングが一つの党に同居することで、とりわけ安全保障などで政策の一致ができているのか、有権者には懸念が付きまとった。安保法制でも「反対すれば野党に有利」というような、リベラルな衣をまとったご都合主義が鼻についた。純化されたリベラルが首相の悲願に牙を向く しかし、小池氏がリベラルを排除したことで、共産党のように「護憲」「自衛隊は違憲」「だが憲法に定められた天皇制は否定」というような極端な主張ではなく、「マイルドリベラル」の立憲民主党が誕生し、リベラルな傾向を持つ層にとって、投票しやすくなったといえる。 衆院選の序盤情勢でも、小池氏に排除された同情だけでなく、護憲・自衛隊違憲の「教条主義」にはついていけないマイルドリベラル層が立憲民主党に流れている。リベラル系の有権者は根っからの「安倍嫌い」で、もとより自民党や公明党に投票する層ではない。共産党にも抵抗感がある層にとって、立憲民主党は「投票しやすい」側面があり、リベラル系有権者の票を集めて一定の支持を集めるだろう。しかし、リベラル勢力で衆議院の過半数を制して政権を奪取できるとは考えられない。2017年10月、「立憲民主党」を結党すると表明した記者会見を終え、写真に納まる枝野幸男代表 一方の「罪」は、マイルドリベラル層が支持する政党が誕生したことで、「安倍一強」対「その他」の構図が、「保守」対「リベラル」の構図に単純化されていくリスクだ。失速した希望の党は、いずれ自民党の切り崩しにあい、消滅していくかもしれない。しかし、選挙期間中であるにもかかわらず、早くも参議院の民進党は、政党助成金のことがからんでいるとも取り沙汰されているが、前原代表を解任して民進党に再結集するなどと、有権者不在のあぜんとするようなことを言い始めている。 民進党のリベラル派が参議院も含め、立憲民主党として一定の勢力を占めれば、憲法改正反対で、小池氏ばりの「ポピュリズム」をあおるリスクが高い。衆参で3分の2以上の議席を占めても、国民投票に向けて、純化されたリベラル勢力がマイルドリベラルにアピールして憲法改正反対のポピュリズムをあおれば、2012年の政権奪取以来の悲願だった安倍首相の憲法改正が頓挫することになる。 日本政治の中で、長年表舞台から遠ざかってきた「リベラルの旗」が掲げられた分かりやすさを、マイルドリベラルの有権者は歓迎するだろうが、「憲法改正反対」のポピュリズムに巻き込まれれば、それはまた日本政治停滞のリスクにもなる。 歴史の歯車を回した3人、安倍首相、前原氏、小池氏の誰が新しい歴史を作った「功労者」として後世に名をとどめることになるのか。それとも、日本政治に混乱と停滞をもたらした「戦犯」と名指しされるか。有権者も衆院選後の政治の動きを固唾(かたず)をのんで見守っている。

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    小池百合子の「リベラル潰し」はなぜ失敗したのか

    のポイントを整理すれば、次のようになろう。 (1)民進党が希望の党への合流を決めたことで、リベラル系政党の連携、いわゆる「野党共闘」が打撃を受けた。 (2)希望の党の公認を得るべく、多くの民進党出身者がみずからの姿勢を保守化させ、リベラルから転向した。 (3)希望の党に合流せず、リベラルの姿勢を維持している者は、もはや少数派にすぎず、政権獲得をめざすどころか、改憲発議を阻止する勢力にもなりえない。 (4)民進党が希望の党への合流を決めたのは、「今のままでは選挙を戦えない」という判断の産物であった。 つまりリベラルは国民から愛想をつかされていたのであり、希望の党への合流をめぐる騒動によって、それが決定的に浮き彫りになったというわけなのだ。会見する希望の党代表の小池百合子氏=2017年9月、東京都庁(飯田英男撮影) ここで言う「リベラル(派)」は、「往年の『革新(派)』ほど、左翼的な反政府・反体制志向が顕著ではないものの、ナショナリズムや積極的な安全保障政策の追求には否定的で、経済政策に関しても、平等志向に基づく弱者擁護の姿勢を強調したがる立場の者たち」と定義できる。 希望の党代表である小池百合子東京都知事は、同党からの公認を申請した民進党候補について、平和安全法制や憲法改正を肯定するかどうかで選別を行った。しかもその際、「(選別は)リベラル派大量虐殺なのか?」と質問された小池氏は、これを打ち消すのではなく、次のように返答したと伝えられる。 「排除致します。というか、絞らせていただくということです。それはやはり、安全保障や憲法観という根幹部分で一致していくことが政党の構成員として必要最低限のことではないかと思っています」 くだんの選別、ないし排除によって、選挙の構図は大きく変わる。希望の党と民進党の合流が伝えられた当初は、「自民党VS希望の党」の構図も、「保守とリベラルの競合」としての側面を持っていた。民進党はもともとリベラル色が強く、希望の党はできたばかりの新党だからだ。 しかるに希望の党が公認に関するリベラル排除を打ち出したとたん、この構図は「保守と保守の競合」に変貌した。ハフィントンポストの記事によると、民進党の前議員88人のうち、希望の党の公認を得た者は約60%。あとの40%のうち、リベラル系新党「立憲民主党」に参加した者はさらに約40%で、残りは無所属で出馬したという。 上記の経緯を見るかぎり、リベラル壊滅論は相応の説得力を持つ。しかるに、注目すべきは、公認に関するリベラル排除を打ち出したとたん、希望の党のブームがいきなり失速したことである。 同党の獲得議席については、一時は150を超えるとか、200をうかがうかもしれないとまで言われた。ところが現時点では、良くて公示前の57を多少上回る程度、下手をすれば割り込むと予想されている。選挙の主役は枝野幸男? 逆に立憲民主党は躍進の勢いだ。10月13日に発表された朝日新聞の情勢調査は、獲得議席上限を49と、公示前(15議席)の3倍以上に設定した。同調査における希望の党の獲得議席下限は45なので、希望と立憲民主の勢力逆転すらありうることになる。 はたせるかな、10月16日にJNNが発表した世論調査では、立憲民主党の支持率が希望の党を上回った。10月17日にFNNが発表した調査も、小池氏の支持率が急落する一方、立憲民主党が「希望の党との間で、野党第一党を競り合う勢い」だと報じている。 国民から愛想をつかされていた(はずの)リベラルを排除するや、喝采を浴びるどころか大ヒンシュクを買うとは、一体どういうことだろうか? しかも排除されたリベラルは、総崩れのまま消滅の道をたどるかと思いきや、予想外の健闘を見せている。 これで選挙後、希望の党の民進系議員がこぞってリベラルに再転向、同党を出て立憲民主党に合流するような事態が生じればどうなるか? 共産党や社民党と合わせて、改憲発議を阻止できる勢力となることすらありうるかもしれない。 今回の選挙の主役は、安倍総理でもなければ小池氏でもなく、立憲民主党の枝野幸男代表だという声まで出た。リベラル壊滅論の妥当性も、こうなると再検討する必要が生じよう。その際のキーワードは、ずばり「政局」である。連合の神津里季生会長と会談後、取材に応じる立憲民主党の枝野幸男氏=2017年10月、東京都千代田区(飯田英男撮影) 『広辞苑』は「政局」について、「政治の局面。その時の政界の有様。政界のなりゆき。政権にかかわる動向」と定義する。けれども現在、この言葉は「政界における自分の立場を有利にすることを唯一最大の目標とする行動パターン」の意味で使われる場合が多い。 一寸先は闇という政界の特徴を思えば、これは「自分の立場を有利にするためなら、その時々で主義主張をどんどん変える」ことを意味しよう。政局重視の発想のもとでは、御都合主義的な振る舞いこそ適切なのであり、政策理念に関する一貫性や整合性へのこだわりなど、脇に追いやられるのだ。 今回の総選挙にいたる経緯は、まさしく「政局と政局の化かし合い」とも呼ぶべきものだった。安倍総理が解散に打って出たこと自体、「民進党の内紛が続き、小池氏の新党づくりも十分進んでいない時点で選挙をやるのが最も有利」という判断によるものだったのは否定しえまい。 アベノミクスのさらなる展開(いわゆる「生産性革命」や「人づくり革命」)であれ、消費増税分の使い道の変更であれ、少子高齢化対策であれ、はたまた北朝鮮問題への対処であれ、今ここで選挙を行い、国民の信を問わなければ推進できないなどということがあろうか。これらのうち、何が最大のポイントかさえ、実のところ判然としない。 だからこそ小池氏は、「与党がそこまで御都合主義に走ったのだから、急ごしらえで新党を立ち上げても、大義名分が立つので勝てる」という判断のもと、希望の党を旗揚げしたに違いない。さしずめ「御都合主義と御都合主義の競合」だが、政局重視に徹する姿勢の鮮やかさにおいて、小池氏は明らかに総理より優っていた。 旗揚げ直後、希望の党が圧勝して政権に王手をかけるのではと言われたのも無理からぬことだろう。現に安倍総理は、「誠実に愚直に政策を訴えていきたい」と演説するなど、政局重視の姿勢を撤回するかのような動きまで見せた。リベラル風が吹いたら最後 民進党が希望の党への合流を決めたのも、「政局と政局の化かし合い」という視点に立てば、批判されるべきことではない。政局重視とは「自分の立場を有利にできるなら、無節操に振る舞ってもよい」と構えることなのだ。 「政局の女王」として、寛容の精神、ないし御都合主義を発揮し、公認希望者をことごとく受け入れることこそ、小池氏にふさわしい対応だったはずである。ところが小池氏は、政策理念の一貫性や整合性にこだわり、リベラルの排除に踏み切った。希望の党候補の応援に駆けつけた小池百合子氏(左)と民進党の前原誠司代表=2017年10月、東京都品川区(桐原正道撮影) 御都合主義的な態度を取らずに筋を通した、そう肯定的に評価することもできるのだが、こうなると「希望の党の旗揚げ自体が巨大な御都合主義ではないのか」という点が際立ってしまう。政局重視に徹することでブームをつくりだしておきながら、政策面で筋を通そうとするのは、これまた一つの破綻にほかならない。 安倍総理の「愚直に政策を訴えていきたい」発言も、その意味では破綻しているのだが、小池氏の場合、政局重視の姿勢が鮮やかだっただけに、破綻も鮮烈なものとなってしまう。リベラルの排除が、希望の党ブームの失速や、小池氏の人気失墜を引き起こしたのは、必然の帰結だったのだ。 だとしても、政策面で筋を通そうとすることがヒンシュクを買うというのは、憂慮すべき事態と評さねばならない。それは国民が、政治家、または政党に対して、「主義主張なんかどうでもいい、とにかく世の風向きを敏感に読み取り、相手を痛快に出し抜いてみせろ」と求めていることを意味する。 ならばリベラル壊滅についても、額面通り受け止めることはできない。たとえ現時点では国民の多くから愛想を尽かされていようと、世の風向きがリベラルのほうに吹いたら最後、今度はそちらに走るのが望ましいことになるのだ。リベラル派の前身たる「革新派」は、敗戦直後、まさにそのような風潮のもとで生まれた。 リベラル壊滅の陰には、「筋の通った政策論に対する関心の消滅」という、きわめて厄介な問題がひそんでいる。そのような政局至上主義が横行するもとでは、どの党が政権を担ったところで、国のあり方が良くなるとは信じがたい。平和安全法制や憲法改正に賛成であろうと、今回の事態を喜んではいられないのである。

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    枝野新党にもぐり込んだ「筋を通さない偽リベラル」の正体

    国では1960-70年代の「福祉国家」の時代に、「コンセンサス政治」が行われていた。保守・労働の二大政党制で政権交代が繰り返されながら、どちらが政権を取っても、福祉政策の中身は変わらなかった。貴族や富裕層出身が中心の保守党右派政権は「貧しき者には分け与えよ」という思想から、一方、労働党左派政権は労働者の権利拡大のために福祉政策を拡大した。その結果、保守党左派・自由主義のサッチャー政権が登場するまで、深刻な財政赤字に悩まされ、「英国病」と呼ばれていた。つまり、保守と左翼は真逆の思想信条ながら、実際に行う政策は、どちらも再配分重視という「コンセンサス」があったのだ。2017年9月28日、臨時閣議に臨む安倍晋三首相(左)と麻生太郎副総理兼財務相(斎藤良雄撮影) これを日本に当てはめると、どうなるだろうか。安全保障政策は除外して、経済政策の方向性を検証してみる。保守は、安倍晋三首相、麻生太郎副総理兼財務相など富裕層の世襲議員が多い。経済政策は、金融緩和や公共事業を「異次元」で繰り出す「アベノミクス」であり、「一億総活躍」「働き方改革」「人づくり革命」と、上から目線で国民を導こうとする推進運動の数々である。「貧しき者には分け与えよ」という思想がプンプン匂ってくる。 リベラルに当たるのは、自民党では「軽武装・経済至上主義」を掲げてきた岸田文雄政調会長ら宏池会や、野田聖子総務相らであろう。安全保障ではバリバリの保守のイメージがある石破茂元防衛相も、経済では地方創生に取り組み、単純なバラマキよりも「第3の道」的な志向があり、リベラルといえる。 一方、野党側では、前原誠司民進党代表や、希望の党に移った旧民進党右派、そして安全保障政策では保守だが、内政に目を移せば女性の活躍重視、ダイバーシティ(多様性)重視、環境重視の小池氏がリベラルということになる。  「リベラル守れ!」を合言葉に勢いを強めている立憲民主党・社民党・共産党は、明らかに欧州の文脈ではリベラルではなく、「左派」であろう。実際、フランスのメディアは日本のリベラル派を左派と訳しているのだ。日本の左派がリベラルと名乗るのは、左派ではイメージが悪いからだろう。選挙で票にならないので、必死にリベラルという呼称を確保しようと、アピールしているように見える。左派勢力こそ全く筋が通っていない 要するに、日本ではリベラルではない左派の政治家が、自由民主主義の本家本元である欧州での言葉の意味を無視して、リベラルの呼称を奪って、勝手に使っているのである。 次に、立憲民主党に結集した左派勢力が、踏み絵を踏まずに護憲・安保法制反対を守った姿勢が「筋が通っている」と評価されていることに反論したい。むしろ彼らの言動こそ、全く筋が通っていないのではないだろうか。 そもそも、前原氏が「みんなで希望の党に行きましょう!」と演説し、事実上の解党を決めたとき、みんな拍手喝采していた。左派のほとんどが希望の党の公認を得るつもりだったのである。小池氏が保守色が強い政治家であることは、百も承知であったはずだ。「基本政策の違いなんか、大したことない。とにかく小池氏の人気にあやかって、当選することだ」と、あまり深刻に考えていなかったのは間違いない。街頭演説後、記者の質問に答える辻元清美氏=2017年10月、JR高槻駅前(水島啓輔撮影) 左派は「基本政策の不一致」を理由に、希望の党から公認を得られないことが判明したときに、初めて慌て騒ぎ出したのだ。「筋が通っている」というならば、前原代表が最初に合流案を提案したときに反対すべきだったはずだ。だが、あの辻元清美氏でさえ黙っていたのである。 彼らは、希望の党の公認を得られなかったから新党を作ったのであり、もし公認を得られていたら、そのまま希望の党に入っていたのだ。この過程を時系列的に整理してみれば、左派の行動こそ筋が通っていないのは明らかだ。逆に、希望の党の公認を得た民進党右派の候補者は「当選のために魂を売った」と批判され続けているが、それは正確ではない。彼らは民進党から出ることで「売っていた魂を取り戻した」のだ。 確かに、彼らは2015年の安保法制の審議で徹底的に法案を批判し、採決の際に反対票を投じた。しかし、当時は共産党との共闘関係があり、党議拘束でがんじがらめであった。また、安倍首相が法案審議開始前に米議会で演説し、安保法制の成立を約束してしまったことで、「国会軽視」「野党軽視」だと感情的に首相に反発してしまった経緯があった。 本来、前原氏ら右派が保守的な安全保障観を持っていることは、国民に幅広く知られている。彼らの中には、民主党政権期に外交や安全保障政策に取り組んだ議員が少なくない。米軍普天間基地の移設問題や、尖閣諸島沖の日本領海に侵入した中国漁船と海上保安庁巡視船の衝突事故、尖閣諸島の国有化など、非常に難しい判断を迫られる政治課題に直面した経験を持っている。もちろん、民主党政権の運営の稚拙さは批判されてきた。判断の間違いもあった。だが、少なくとも彼らは、厳しい国際情勢にリアリスティックに対応することの重要性を知ることにはなった。野党「戦後最悪の惨敗」 安保法制の国会審議が始まる前、旧民主党のホームページには「安保法制の対案」が掲載されていた。そこには、安保法制をめぐる国会審議への準備として「安全保障法制に関する民主党の考え方」がまとめられていた。この中で、旧民主党は「憲法の平和主義を貫き、専守防衛に徹することを基本とし、近くは現実的に、遠くは抑制的に、人道支援は積極的に対応する」という安全保障政策の基本方針を示し、「国民の命と平和な暮らしを守るのに必要なのは個別自衛権であり、集団的自衛権は必要ない」と主張を展開していた。野党なので、安倍政権との違いを明確に出そうとしたのは当然のことだ。 一方で、旧民主党は「日本を取り巻く安全保障環境が近年大きく変わりつつある」と、安倍政権と共通する国際情勢認識を持っていることを記していたし、「離島などわが国の領土が武装漁民に占拠される『グレーゾーン事態』への対応は最優先課題」「周辺有事における米軍への後方支援は極めて重要である」としている。要するに、安保法制に関して安倍政権と全て相いれないということはなく、国会審議において政権と是々非々で議論をする準備をしていたということなのだ。 それなのに、安保法制の審議が始まったときには、旧民主党の右派議員たちは感情的になり、まともな審議ができる状態ではなくなった。安倍政権の強引な手法に大激怒してしまい、「安保法制の全てに反対ではないが、安倍にだけはやらせない」と言い放ち、安倍政権の安保法制に全面的反対の姿勢を取ったのだ。 その後、旧民主党は維新の党と合流して民進党となったが、共産党との共闘関係が強固になり、安全保障や消費税で政策の幅の広さ、柔軟性を奪われた。野党共闘は選挙においては一定の有効性があったが、政策面ではリアリティーを失い、無党派層を全て与党側に取られてしまうことになった。安保法制成立後の16年7月の参院選で、野党共闘は、自民党、公明党の連立与党に維新の党などを加えた「改憲勢力」に、改憲の国民投票発議を可能とする衆参両院で3分の2の議席を与えることになった。参院選、開票センターで取材に答える民進党の岡田克也代表。当確者の名前を張るスペースは広く空いたままだった。野党統一候補で一定の成果を挙げるも、党自体は大きく議席を減らした=2016年7月10日(大西史朗撮影) 戦後政治の野党にとって、国会で改憲勢力が3分の2を占めることを阻止することは最低限の目標であった。それを許してしまったことは、まさに「戦後最悪の惨敗」を喫したと断ぜざるを得ない。野党共闘によって、民進党から政権の座は完全に遠ざかり、「万年野党化」が進んでいたといえる。政権交代可能な野党復活へ「急がば回れ」 その後の民進党は、東京都知事選の野党共闘候補の惨敗、都議選での公認候補者の「離党ドミノ」と泡沫(ほうまつ)政党化、蓮舫氏の代表辞任、所属議員のスキャンダルと党勢低迷と混乱が続いた。共産党との共闘が党内の意思決定をゆがめ、党内ガバナンスが失われた結果だということは、離党した右派議員が口々に主張していたことだ。 党に残っていた保守系議員も、野党共闘に対するストレスは頂点に達していた。前原氏は、希望の党への合流を決断した理由に関して、自身のツイッターで「野党共闘に懸念を持っていた」「支持者や関係者から民進党は左傾化し、共産党や社民党との違いが分からなくなった、と指摘される度に悩んでいた」と語っている。また、「民進党が左派化したことで憲法改正の議論や現実的な安全保障政策の議論すらできなかった。そんな状況を打破したい。これが、今回の挑戦の原点です。私は、大きな塊を作る政治のダイナミズムが必要だと思い定めました。小池百合子さんとともに、新たな理念・政策の旗を掲げ、安倍一強の現状を打ち破るために大同団結しようと決意しました」などと主張していた。2017年9月、希望の党代表の小池都知事との会談後、取材に応じる民進党の前原代表 つまり、希望の党に移った民進党右派とは「失っていた信念を取り戻そうとした政治家たち」である。一方、立憲民主党を作った左派は「信念が合わなくても大丈夫と軽く考えたが、拒否されて、慌てて信念を貫くと言い出した政治家たち」だ。どちらが筋が通っているかといえば、信念を取り戻そうとした右派である。 筆者は、野党側が再び「政権交代可能な勢力」に復活するためには「急がば回れ」だと主張してきた。国民の野党に対する根強い不信感は、突き詰めると政策志向がバラバラな政治家が集まっている「寄り合い所帯」にあると思うからだ。 確かに、かつて自民党に数で対抗することで「非自民政権」を作ってきた歴史はある。しかし、細川護熙政権と羽田孜政権は政治改革や安全保障で社会党の造反によって混乱した。民主党政権では、憲法、安全保障、財政・税制など基本政策をめぐって、党内が分裂して足を引っ張り合うような醜態をさらし続けた。寄り合い所帯に対する国民の不信感は頂点に達していて、政策の違いを無視して自民党に数で対抗する戦略は、もはや国民に理解してもらえないのだ。小池氏への厳しい批判は必然だった希望の党の候補者の応援演説を行う小池百合子代表=2017年10月10日、東京都中央区(納冨康撮影) 野党が政権交代可能な勢力になるには、特に安全保障政策という基本政策が一致する政治家で二つくらいに集まる「政策別野党再編」が必要だと考えてきた。それが、野党が国民の信頼を取り戻す第一歩だからだ。その意味で、小池氏が安全保障政策で一致を求めたのは、全く正しい。 小池氏が「排除の論理」を持ち出したことが厳しく批判されているが、全ての民進党出身の候補者を希望の党の公認候補としていたら、どうだっただろうか。おそらく、現在以上の厳しい批判にさらされることになったはずだ。 「保守色」が強い小池氏と、安保法制反対や護憲を訴える左派の議員が無条件で合同したら、寄り合い所帯以外の何物でもない。それ以上に問題なのは、小池氏が民進党を丸ごと受け入れることは、小池氏が民進党代表に就任するのと同じことになるということだ。選挙で敗色濃厚な党が、人気のある大衆政治家を代表にしてなりふり構わず生き残ろうとする「究極的な大衆迎合」だという批判も巻き起こったはずだ。 つまり、今回の総選挙は排除の論理を持ち出そうが、持ち出すまいが、どちらにしても小池氏は厳しい批判にさらされることになっていた。しかし、民進党からの合流がなければ候補者すらそろえることはできなかっただろう。 一方、野党が共闘して統一候補を出せば政権交代できると主張する方がいるが、それも甘い考えだと思う。日本の無党派層の多くは、基本的には自民党支持、時に自民党批判票を投じる「消極的保守支持層」である。共産党に引きずられて改憲も安保も原発も「何でも反対」では無党派層の票は取れない。なにより、アベノミクスはサラリーマン層や就職活動が好調な若者にしっかり支持されている。野党が、これを崩す説得力ある論理を構築できているとは思えない。 要するに、野党にはそもそも一挙に政権交代を実現する実力などないということなのだ。基本政策の一致を軽んじて選挙のためだけに一緒にいた集団が、政策をまじめに考えてきたはずがない。だから、突然選挙になったときに説得力ある対案など出てこないのは当然だ。まずは、政策別に分かれることで、初めて真剣に政策立案に取り組もうという気になるものだ。今回の民進党分裂で、ようやく野党は政権奪取の長い道のりのスタート地点に立ったと考えるべきだ。「急がば回れ」なのである。小池・前原が起こした「創造的破壊」 今回、小池氏と前原氏が起こしたことは、古臭い保守・革新の対立を超えた、新しい政治勢力の誕生という「政界の創造的破壊」ではないだろうか。それは、「安全保障政策を争点にしない」という、欧米の自由民主主義国では当たり前の政治を実現したことである。 例えば、英国では野党は国内のさまざまな政策課題で激しく政府・与党を批判していても、政府・与党が海外への軍隊の派遣を決定するときは、「首相の偉大なる決断」を称賛する演説を行うものだ。このように、欧米の民主主義諸国では、野党は安全保障政策で対立を挑まないし、たとえ政権交代となっても政策の継続性を重視する。国民の生命と安全がかかっている最重要政策を政争の具にはしないということだ。 もちろん、欧米の議会でも安全保障政策をめぐる議論が行われないわけではない。しかし、日本の、15年の安全保障法制をめぐる与野党の激突のような、とにかく法案を潰すためにありとあらゆる方向から反対するようなことはあり得ない。強固な安全保障体制を確立し、抑止力を強化するためにはどうすればいいかという観点で、建設的な議論が行われるのだ。 小池氏と前原氏は故意犯的に「安全保障政策を政争化しない政治」を実現しようとしたと考えられる。前原氏は立憲民主党が立ち上がったとき、「想定の範囲内だ」とコメントしている。最初から小池氏の蛮勇を使って、自ら手を汚さず左派と縁を切るつもりだったのだろう。 一部のメディアや識者が「リベラル勢力の結集」とはしゃいでいるのを見ると、いまだに古臭い東西冷戦期の保革対立という構図のまま、物事を考えているようだ。だから保守色の強い小池氏に左派が排除されることに感情的な反発をしてしまったのだろう。あえていえば、彼らは対立構図を死守したいがために、徹底的な小池バッシングに走ったといえる。2017年10月、麻布十番駅前で街頭演説後、有権者に手を振る立憲民主党の枝野幸男代表(佐藤徳昭撮影) 北朝鮮の核開発や中国の海洋進出、世界で頻発するテロの問題に対して、日本は安全保障政策で最悪の事態に備えなければならない。また、日本は世界で競争力を失ってしまっている。IT産業の発展、人工知能(AI)を使った無人工場や自動運転の開発など、米国、ドイツのみならず、中国の後塵(こうじん)をも拝しているのが現実だ。日本は「何でも反対」で足を引っ張り合っている場合ではない。国会で建設的な議論を行い、「政府の改革は手ぬるい、よりよき政策はこれだ!」と競い合う新しい政治を創るのが急務だ。古臭い対立構図の死守にこだわらず、現在日本政治に起こっている現象の意義を、冷静に評価すべきなのである。

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    比例票はどこへ? 3千人意識調査から見えた「自民圧勝ムード」のワケ

    がうかがえる。ただし、投開票日の天候次第によっては前回よりも下がる可能性も残されている。 ここ数年、政党支持率では自民党が他党を圧倒している。その自民党が2009年総選挙で負けた原因は、自民党を支持しながら約25%が民主党に投票したことと、政党支持を持たない無党派層の取り合いで「民主党60%vs自民党30%」とダブルスコアで負けたことである。それにより、基礎票は多いのにもかかわらず、選挙結果では大敗したのだった。 今回はどうだろうか。調査回答者の内、「すでに期日前投票や不在者投票をした」と「必ず投票に行く」と回答した者に限ってみてみると、自民党支持者の88・8%が小選挙区で自民党に投票すると答え、比例代表でも85・2%が同様に答えている。つまり、今度の総選挙では自民党の歩留まり率がこれまでにないほど高く、支持者の票が他党にこぼれていない。 また、同様に無党派層の投票行動をみると、小選挙区では25・8%が自民党に投票すると答え、希望の党の27・5%と並び、立憲民主党の13・1%を引き離している。ただし、比例代表では、逆に無党派層の28・3%が立憲民主党に投票すると答え、これに希望の党の27・0%が続き、自民党は22・1%である。いずれにしろ、2009年総選挙のように、特定の野党にダブルスコアで引き離される状況ではない。街頭演説する立憲民主党の枝野代表=2017年10月18日、新潟県長岡市(中島悠撮影) 衆院選序盤では人気が高かった希望の党は、メディアが調査をする度に支持を落とし、今回の調査でも、比例代表では立憲民主党と逆転している。その立憲民主党も準備期間が足りなかったことから、小選挙区で十分な候補者を立てることができずにいる。こうして東京では野党の希望の党と立憲民主党、大阪では日本維新の会と立憲民主党が票を取り合って分散することで、与党の自民党が50%に届かなくても小選挙区で当選することができる構図になっている。安倍総理の「ある戦略」が成功した それでは、どうして3カ月前の東京都議会議員選挙時の都民ファーストのようなブームが起きなかったのであろうか。それは、希望の党代表の小池百合子氏が「民進党候補を全部受け入れる気はさらさらない」と言ったことで独断的に見え、自民党支持だが首相の独断は好きではないという一部有権者の票の受け皿にならなくなったからではないか。 また、これまでの国会で安保法案に反対していた民進党議員が、希望の党の公認を得るために安保法制の実施や憲法改正に賛成する協定書に同意したことによって、政策や信念よりも自分が議員でいることの方が大事なのかという思いを持った有権者もいるのではないか。さらに、党の代表自身が立候補しないことも、希望の党の人気が盛り上がりに欠けた一因となったのではないか。 その上、安倍晋三氏が野党の政策を先取りして行う戦略が成功している面も否定できない。安倍氏が小泉純一郎氏の後を継いだときは、「ジェンダー」という言葉の使い方をめぐり、女性に冷たいのではないかと思われて支持率を落としたこともあったが、首相に返り咲いてからは男女共同参画を主張し、国家公務員試験の合格者の3割を女性にするようにしている。 また、「保育園落ちた。日本死ね」と批判されたこともあったが、今回の総選挙では消費税を10%に上げた分を保育園などの幼児教育に使うことを公約に掲げている。つまり、本来、野党が言い出すべき政策を先取りして実行することで、自民党のウイングを広げる戦略が功を奏しているとも言える。街頭演説後、つめかけた人らとハイタッチを交わす安倍晋三・自民党総裁(右)=2017年10月19日、生駒市の近鉄生駒駅前(神田啓晴撮影) その結果、自公連立政権が過半数割れする可能性は低くなり、憲法改正の発議に必要な3分の2の議席をどのような枠組みでとるのかに焦点が移っている。自公+日本のこころ+保守系無所属の追加公認で届くのか、それとも他党の議席も必要となるのか。一方、野党側からみれば、立憲民主党+社民党+共産党で3分の1を確保することはかなりハードルが高いことから、総選挙後の野党再編が再度、話題になるのではないか。 いずれにしろ政治家の都合による勝手な離合集散で、選挙前の公約と選挙後の行動が異なることだけはあってはならない。注:全国の18歳以上の男女を対象に、居住地域と都市規模による層化を行った上で、性別と年齢による割り当てを行い、10月13~16日に実施。有効回答3000を得た。

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    「殿の気まぐれ」と重なる小池百合子の裏切り

    直接的な関与を明らかにしたのである。 そうなると、日本最大都市である東京都の知事と政権交代を狙う国政政党の代表が務まるのかという疑問がわいてくる。小池知事は「可能である」と繰り返すが、現実に都政の日程をキャンセルしているようであるし、真剣に政権交代を目指す政党を立ち上げようとするのであれば、首班指名に誰を考えているかを明確にしたほうがわかりやすい。戦略なのかもしれないが、政党の代表について、小池知事の考え方には不可解な点が多くみられるのである。まずは、小池知事が立ち上げた都民ファーストの例を考えてみよう。 都民ファーストは当初、知事特別秘書の野田数(かずさ)氏を代表に立てていた。都議選が近づくと、小池知事自ら代表に収まり、「小池人気」にあやかる姿勢を明らかにしたものの、選挙に大勝すると野田氏に戻すことになった。選挙だけの小池代表だったのである。しかも、戻したところで、政党の代表とはいえ都議選は出馬しなかった野田氏には安定した収入は見込めない。さらには情報公開請求で明らかになった、野田氏が掛け持ちする特別秘書の給与額に批判が集まると、今度は初当選した元秘書の荒木千陽(ちはる)都議を代表に据えたのである。そもそも、知事が自らの特別秘書を都議会最大会派の代表にしていたこと自体が二元代表制の否定につながる行為である。これでは「都政改革を進める」と言えるかも難しい。やはり総理大臣が目的か また、このように代表がころころ変わるのは、政党組織として正常、安定しているとはとても言い難い。しかも、情報公開を旨とする割には、代表の交代を所属議員へ十分な説明もなされていなかったことが報道され、結局離党者まで出している。こうしてみると、小池知事には「政党および代表とは何であるか」という考えがやや希薄にさえ感じてしまうのである。まして、希望の党でもそれまで議論を積み重ねてきた側近と思われる若狭氏や細野豪志元環境相の議論をリセットするとまで言い放つのは、あまりにも国会議員軽視であり、あたかも使用人を使うような物言いとしかみえない。 このようにして考えると、小池知事の目的は国政進出であり、巷間(こうかん)噂されるように、女性初の総理大臣を目指した行動の一環であることは間違いないように思われる。特に年齢など時間的な問題を考えれば、今回の衆院選に出馬することが肝要であり、何度否定しても出馬の噂が依然消えない理由でもある。出馬しなければ首相には近づけない一方で、出馬すれば都政をないがしろにしているといった批判が沸き上がり、小池人気に水を差すことは疑いないところである。 こうした悩みから、国政への進出に関しては慎重な物言いになっているのであろう。選挙に勝てるようであれば出馬するだろうとの憶測や、「ただの国会議員はもういい」と言ったなどの報道はその目的を表しているといっていいだろう。政権交代を目指すために、松井一郎大阪府知事や大村秀章愛知県知事と連携しているのも、そうした戦略の一環とすれば納得できる。やはり、首相になることが目的といっていいだろう。 小池知事は、都知事を足掛かりとしていないのに、この時期に国政へ進出せざるを得ない理由も明確ではない。地方から立ち上げていくと限界があるので、国政進出を余儀なくされるというのであれば、理解はできる。橋下徹前大阪市長がその典型である。しかしながら小池知事は、一昨年までは国会議員の職にあっただけでなく、自民党政権で大臣まで務め上げていた。そうした国政の関与を承知の上で都政に進出したのであるから、国政の改革が進まないのであれば、国会議員にとどまるべきであったのではなかろうか。これならば、いいか悪いかは別として、首相を目指すためであれば納得はできる。少数党でありながら、国民人気を背景にして連立政権を樹立した細川護熙元首相をイメージしているのではなかろうか。となれば、自民党との連立も考えられる。安保法制、憲法改正への対応を公認の条件にするあたりに、そうした余地を残しているように思える。「都民ファーストの会」の新代表に就任し、記者会見する荒木千陽氏(右)=9月13日、東京都庁 次は、小池知事の政党観について考えてみよう。都民ファーストは自分に従う人だけを集めた政党であり、希望の党もそうした形にしようとしているのが透けてみえる。その意味で「お友達」を優先するなど、おごりが見えるようになって支持率を大きく落とした安倍晋三首相と似た部分がある。前述のように都民ファーストの代表を特別秘書にして安定した収入を確保しようとしたり、1回生議員であるにもかかわらず元秘書を代表に据えたりしているのも、身内優先の表れといえる。都知事の実績はメディア政治そのもの 都知事になってから大きな話題になったのは、豊洲市場移転問題、東京五輪・パラリンピックの会場移転問題、石原慎太郎元都知事に対する税の無駄遣いに対する住民訴訟の見直しなどである。実はこれらがどのようにして決定されたのか明確にされていない。自らの諮問機関で議論したと称するだけである。この本質は、内田茂元都議、森喜朗五輪・パラリンピック組織委員長、石原氏を悪とし、自らを善とすることでマスコミの関心を引き付ける、メディア政治の手法そのものであった。3月3日、豊洲市場移転問題で記者会見する石原慎太郎元東京都知事(左)と都庁を退庁時取材に応じる小池百合子東京都知事 結果としては、豊洲移転は築地も残すという敵を作らない結論となったが、いまだに具体策は見えていない。五輪会場移転は現行の通りだが、予算を削減させた効果を宣伝した。 訴訟問題は従来通りに、東京都としては訴えないという結論になったようである。この問題は、豊洲移転にかかる経費は高すぎることや土壌汚染にかかる費用が掛かりすぎたことに対して、石原氏に賠償責任を追及するように東京都が訴えなさいという住民の要望である。これを今までは責任がないので訴えは起こさないとしていたことを見直すというものであった。ところが移転延期で掛かった費用を小池知事に賠償するように、石原氏と同様の住民訴訟が起こされた。結果として、石原氏を訴えることはしないという結論になったのである。この辺も理由は、少なくとも都民には明確にはされていない。豊洲、五輪・パラリンピックの運営費用の問題も解決してはいない。しかもこれらは時間的な制約のあるものである。やはり都政に専念すべきであるように思える。 このように、人気を権力の背景としてステップ・アップを目指すのは構わないが、少なくとも日本の政党政治を崩壊させるようなことは、未来の日本政治にとって大きな問題である。都民ファースト、希望の党ともに具体的な政策は乏しい。希望の党は、「寛容な保守改革政党」を標榜(ひょうぼう)し、「しがらみのない政治」を目標とすることで、自民党との一線を画しているように思える。だが、寛容な保守とはどのような政治理念を指しているのであろうか。保守中道を言い換えていると思われるが、具体的には全く意味不明である。 民進党議員の合流条件とした安保法制、憲法改正に賛成することは自民党と同じである。「原発ゼロ」も期限を示さない限りほとんどの政党と変わりはない。とすれば、保守政党でしかないのではないか。どの部分をもって寛容とするかの説明が不足している。その改革の象徴が「しがらみ」を断つことのようだが、何のしがらみかは不明である。例えば、政策協定書では政党支部に対する企業献金は禁止されているが、政党本部や個人については今のところ不明確である。国会議員時代の小池知事は、もちろん企業献金に賛成してきた。どこで考えが変わったかの説明も必要になる。日本新党の再来? 思えば、政党そのものに対する考えが不透明な点や、小池人気だけで政党を維持しようとする点に、日本新党の再来を見るような気がしてならない。1993年の都議選でデビューしたものの、4年後には立候補すら少数になり、都政を国政の足掛かりにしたとの批判を受けた。その際の都議選は過去最低の投票率に終わった。政治献金問題といわれるが、細川首相自身も突然に辞任して「殿の気まぐれ」とやゆされた。新党に対する国民の期待が裏切られた原因の一つであったことは疑いのないところである。1992年7月の参院選で当選が決まり、日本新党の細川護熙代表(左)と握手をする小池百合子氏=東京都港区の選挙事務所 こうしたことを繰り返しては、政治不信につながるだろう。小池知事には都民の期待にかなうように都政に専念していただくことが肝要である。国政に進出したことで、都民ファーストは公明党との連携が崩れ、最大会派であっても過半数を失う結果となるだろう。1回生議員が大半を占める都民ファーストは順風とはいかない展開になることも予想される。優先課題とした都政改革も順調にいかない可能性も出てきたのである。 こうした政局の話に報道が終始することで、大義のない解散・総選挙に関する報道は鳴りを潜め、重要な政治課題がないがしろにされることにつながった。もちろんメディアにも責任があると思う。とりわけテレビの情報番組は、こうした視聴者の関心を引きやすい話題を優先する傾向にある。無関係とは言わないが、選挙そのものや公約などの政策課題も丁寧に報道してもらいたい。選挙報道はこれからであるが、政策論議になることを期待したい。党首人気の報道だけでは、必ずしも政治の信頼にはつながらない。 同様に前原誠司氏は何のために民進党代表になったのであろうか。小池知事と交渉するのであれば、すべての議員を希望の党公認にすることを確約してから希望の党と事実上の合流に踏み切るべきではなかったか。民主党政権時の首相やリベラル派を公認しないのでは、民進党そのものがバラバラにされることになる。それが党代表のすることであろうか。 こうした一連の動きは、日本政治にとって、国民にとって有意義なものなのだろうか。こうした事態は、与野党ともに信頼を低下させる要因になりはしないだろうか。投票率の低下が心配である。必ずしも投票したい候補者がいない場合に、投票を促すために「選挙はよりマシな人を選ぶ」という考え方がある。投票が民主主義の根幹にかかわる有権者の権利であることを表している。その意味で今回の選挙は、国会議員と、それを選ぶ有権者の矜持(きょうじ)が問われているのではないか。これを機に、日本政治が未来に向けて国民の信頼感を得るようになってほしいものである。

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    「総理になれないなら出馬しない」小池劇場はこうして大コケした

    小笠原誠治(コラムニスト) 結局、小池百合子東京都知事は「不出馬」。政界の混乱、ここに極まれり。まさにそのような言葉がふさわしい政界の混乱ぶりです。 まず、この混乱は、安倍晋三総理の大義なき解散決定からスタートしたと言っていいでしょう。なぜこの時期、安倍政権が解散を選んだかといえば、今なら与党が勝つチャンスが大きいと踏んだからです。 森友・加計疑惑の関心が少しずつ薄らいでいく中、北朝鮮によるミサイル発射などの挑発行為が続き、内閣支持率が幾分回復しているかにも見えたことと、それに小池氏の新党設立も間に合わないであろうという見方が影響していたと思われます。  しかし、その安倍総理の予想は少し甘かった。なぜならば、小池氏がいきなり新党・希望の党を立ち上げたからです。しかも、その新党に対して前原誠司民進党代表が合流を決断し、一気に新党ムードを高めたからです。JR氏家駅前で行われた街頭演説で、気勢を上げる安倍晋三首相=3日、栃木県(福島範和撮影)  ただし、その新党への合流という動きも、小池氏が民進党の全員を受け入れる気持ちはさらさらないと発言したことでさらなる波乱を巻き起こしました。小池氏から公認を拒否された民進党の議員たちは、自分たちの身の振り方を決断する必要があり、立憲民主党を誕生させることになってしまったからです。 いずれにしても今、都知事選、都議選に続いて、3度目の小池劇場の上演となっているのです。小池氏は、衆議院選に出馬するのか、と。小池氏の総理を目指す野望が今回実現されるのか、と。ただ、前原代表を希望の党にすり寄せる作戦は成功したものの、いわゆる「リベラル派切り」を決定したことによって風の向きが変わってきています。 何よりもテレビ映りとイメージを大切にする小池氏。今までは「悪者」を仕立てあげ、自分はそれに立ち向かう「正義の味方」を演じていたわけですが、今回は民進党のリベラル派切りを断行したことによって自分が何やら悪者、いや悪者と言っては言い過ぎかもしれませんが、権力者の如く国民の目に映りはじめているからです。  判官びいきが日本人の常。右派か左派かという違いはあるにしても、自分の信念にどれだけ忠実であるか、何のために政治家を目指すのかということに有権者は敏感に反応するものであり、弱い者には味方したい、と。政界の渡り鳥と呼ばれた小池氏 いや、そんなことはないと評する向きもあるでしょうが、しかし、有権者は見るべきことは見ているのです。今回、小池氏は何のために新党「希望の党」を立ち上げたのか。そして、枝野幸男氏は何のために新党「立憲民主党」を立ち上げたのか、と。 小池氏の新党立ち上げが、安倍政権と外交や安全保障などに関して考え方が大きく異なるということによるものであれば、このタイミングで安倍政権を倒す動きに出たことも理解できます。 しかし、外交や安全保障のみならず右翼的な性格まで安倍総理とはうり二つ。それに、都議会自民党とは闘う姿勢を見せていた小池氏も、安倍総理とは良好な関係を維持する風を装っていたではありませんか。胸に東京五輪のバッジをつけてあげたり、あるいは「銀座の恋の物語」は私の十八番だから一緒にデュエットしたいと言ったり…。 何だったのでしょうね、あれは。小池氏の性格をよく承知していた人々は、いかにも小池氏らしいと感じていたと思われます。そして、今回の動きも十分予想されたことだ、と。 よく言えば、機を見るに敏、悪く言えば風見鶏。「政界渡り鳥」と言われながらも政治の世界で名を挙げることに邁進(まいしん)してきただけなのです。つまり、小池氏の新党立ち上げに大義などないのです。今なら選挙に勝てると思って衆議院を解散した安倍総理と、今なら新党ブームの風に乗って総理になれるかもしれないと考えた小池氏。 その一方で、やむにやまれず新党の立ち上げを余儀なくされた枝野氏。党名はどうであれ、新党を立ち上げ、志を同じくする者たちとこれまでどおり自分たちの理想を実現するために立ち向かうしかないのです。中野駅前で立憲民主党の街頭演説を行う枝野幸男代表=4日、東京都(納冨康撮影 もちろん、立憲民主党がリベラル派の集団であれば、当然のことながら右寄りの有権者には敬遠されるかもしれませんが、しかし、自分たちの思想に忠実である面は理解されるでしょう。つまり、純粋さにおいては小池氏よりも枝野氏の方がはるかにまさる、と。 ただし、リベラル派にもいろいろな人がいることは指摘しておかなければなりません。全員が純粋というわけでもないでしょう。というのも、菅直人元総理などは、小池氏の希望の党に民進党が合流するとのニュースが流れたときに、小池氏は「日本のメルケル」になってほしいとエールを送ったほどなのですから。小池総理になってしたいこと? その一方で、民進党の逢坂誠二氏などは、立憲民主党設立が決定される前から、自分は無所属で出馬すると宣言していました。なんという爽やかさ。選挙は水物で実際に勝つかどうかは分かりませんが、自分の信念に忠実であることは十分証明されたと言っていいでしょう。 枝野氏は、希望の党から立憲民主党へ移行したいという候補者がいたら移行を拒まないと言っています。いち早く希望の党へ移り、議員であり続けることを優先していた者たちは、今複雑な思いでいることでしょう。 風向きが変わり、小池人気に陰りが出だしているのではないか、と。それに、肝心の連合が希望の党を支持することはしないことを決め、小池氏の思惑どおりに事が運ばなくなってきているからです。 いずれにしても、仮に小池氏の希望でなく野望がかなって将来、総理の座に就くことができたとして彼女は何をやりたいのでしょうか。それが私には分かりません。 彼女は、過去、環境大臣や防衛大臣を務めていますが、どんな実績があると言うのでしょうか。環境大臣の時にはクールビズを推進させたことくらいしか記憶にありません。環境大臣でありながら水俣を訪れようとは少しもしなかったとも言われています。都議会本会議に臨む小池百合子都知事=5日午後、都庁(宮川浩和撮影) 全国津々浦々にある電柱を地中化することをかねてから提唱していることは知られていますが、彼女はその莫大(ばくだい)な財源をどうやって捻出するかについては一言も言っていません。仮にそのような事業を優先させるとしたら、それは彼女の言うワイズ・スペンディング(税金の有効活用)に該当するのでしょうか。  築地市場の豊洲移転問題に関する彼女の発言も一貫性があるとは思われません。もともと豊洲移転は仕方のないものだと認識しながらも、取りあえずは慎重な姿勢を見せ、それによって人気を高めようと考えただけなのではないでしょうか。 小池氏は、自らの衆院選出馬に関してしつこく聞かれ、これまで「ない。最初から言っている」「日本の国政は改革のスピード感があまりに遅い。国会議員の一人になっても意味がない」と言っていましたが、それって「総理になる可能性があるのなら出馬しますけど…」と言っているのと同じですよね。

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    小池新党と民進党の「ドタバタ野合」に政治の倫理的腐敗を見た

    田中秀臣(上武大ビジネス情報学部教授) 10月10日公示、22日投開票が行われる衆議院選挙をめぐる政治情勢が混沌(こんとん)としている。特に民進党の前原誠司代表が提案した、小池百合子東京都知事が率いる希望の党との事実上の「合併」をめぐる問題は、国民の多くに分かりにくい政治劇として映っているに違いない。全国幹事会・選挙対策者会議であいさつするため演壇に向かう、民進党の前原誠司代表=9月30日、東京・永田町の民進党本部(古厩正樹撮影) 簡単に整理すると、小池知事の抜群の知名度と国民の高い支持を民進党の全国的組織、資金力と交換することで、双方が選挙で実利を得るという作戦だった。そこには両党の「理念」や「政策」の一致を真剣に議論した痕跡は皆無であり、単なる選挙対策のための、まさに正真正銘の「野合」である。 そのためか、あれだけマスコミを中心にして行われていた「大義なき解散」という批判はどこかに吹き飛んでしまった。むしろ今の国民の焦点は、この理念も政策も全くない両党の野合と、そして対する安倍政権(自民・公明連立政権)が続くか否かの二つに向けられている。どちらかというと、前者の方がこの原稿を書いている段階で注目度が高い。 希望の党と民進党の野合は、前者が後者を事実上吸収する形をとった。その際に、選挙での立候補者を「選別」することが前提条件だったようである。おそらく筆者が指摘したような野合批判をかわすためのものだろう。 この「選別」をする過程で興味深いことが起こった。ひとつは、希望の党は、政策方針として憲法改正と安全保障法制賛成の立場を鮮明にしていた。改憲は、安倍晋三首相が提案した憲法9条第3項(自衛隊の明記)ではなく、より広範囲に及ぶものにするという積極的なスタンスだ。もちろん民進党の中にも改憲派が多くいたが、それでも党内の分裂を避けるために大っぴらには議論されてこなかった。また安全保障法制については、同党は全面否定の立場で国論をリードしてきた。その基本方針に賛同してきた議員は多数に上る。その過去を一切捨てて、今や積極的に賛成する側にまわっている。安全保障法制の委員会採決のときに、体を張って阻止しようと「蛮行」に及んだ議員が、いまでは「親類に自衛隊員がいて賛成している」とにこやかに語る始末である。まさに政治の倫理的腐敗のオンパレードを見る思いである。希望も民進も経済再生に本気なのか 憲法観や安全保障の在り方をどう考えるかは、政治家としてのアイデンティティーにかかわる問題だと思うが、どうもそんな意識はいかようにも変化するのだろう。そうなると、ただ単に生活のためか、権威欲のために政治家になっている連中がこれほど多かったということになるのだろう。 民進党の希望の党への合流について、ある有名政治家はギリシャ神話の「トロイの木馬」と称したり、ある大学教授は「安倍政権を倒すために反対の立場でもともかく糾合するのだ」と発言したりしている。仮にこの「トロイの木馬」戦略を採用して政治的に主導権を握っても、立場の違いから党の中は四分五裂してしまい、この北朝鮮リスクが顕在化する状況で、国内政治の混乱がもたらされるという最悪の結果になるだろう。まさに愚か者を超えて、悪質な政治ゲームに国民を巻き込む者たちである。 「選別」の過程で起きたもうひとつのことは、いわゆる「日本型リベラル・左派」勢力が少数ながら結集したことである。現段階の報道では、民進党の枝野幸男代表代行ら希望の党から「排除」される議員を中心に新党を立ち上げるという。この日本型リベラル勢力は第三極的な立ち位置で、共産党や社民党などとの連携を強めるのかもしれない。 ちなみに、なぜ「日本型」リベラルというと、この政治集団の多くは再分配政策には意欲的でも、積極的なマクロ経済政策には消極的だからである。現在の日本のように完全雇用に達していない経済で、積極的なマクロ経済政策に消極的であることは、経済格差、貧困、そして雇用の不安定化に寄与するだろう。それは社会的弱者を保護するリベラル的な発想から最も遠い。もちろん枝野氏も、最近では消費税凍結や現状の金融政策の維持を唱えるが、いずれも消極的な採用でしかない。リベラルであれば、例えば前者の財政政策ならば増税ストップではなく積極財政を採り、後者であればより一層の金融緩和政策を唱えるのが常とう手段であろう。しかし、これは希望の党でもいえるのだが、消費増税凍結を持ち出せば国民の関心を引きつけると思って言っているだけではなかろうか。連合の神津里季生会長との会談を終え、記者の囲み取材に応じる民進党の枝野幸男代表代行=10月2日、東京都千代田区(川口良介撮影) そもそも希望の党も民進党も経済停滞を脱する意識に乏しい。これでは過去の民主党政権がそうだったように、消費増税をしないといいながら、やがて最悪のタイミングでその法案化を決めたやり口をまた採用するのではないか。希望の党も、民進党の希望移籍組も新党合流組も、行政改革など政府支出を絞るという緊縮主義、財政再建主義だけがかなり明瞭だ。他方で、マクロ経済政策、特に金融政策についてはまったく評価が低いままである。このような政治集団が政治的に力を得れば、即時に為替市場や株式市場に悪影響をもたらし、消費や投資を抑圧して再び経済停滞に戻してしまうだろう。首相会見で重要な発言は消費税ではない 自民党と公明党の政策に対する批判もある。その代表的なものは、衆院解散の意図が分からないというものだ。冒頭の「大義なき解散」の言い換えである。安倍首相がこの時期に解散を決めた要因は、大きく三つあるだろう。ひとつは、北朝鮮リスクが11月の米中首脳会談後に高まる可能性があることだ。そしてこの北朝鮮リスクはそれ以降、短期的には収束することなく、むしろ高止まりしたままになる可能性がある、という判断からだろう。 残りの二つはいずれも選挙対策的なものだ。内閣支持率の改善がみられたこと、そして小池知事の新党の選挙準備が不十分なこの段階を狙ったというものである。ただこれらふたつの要因は、マスコミの報道の仕方や、新党の行方に大きく依存するので、首相側からすれば確たる解散の理由にはなりにくい。いずれにせよ、どんなに遅くとも来年末には任期満了を迎えるので、北朝鮮リスクが相対的に低い現時点での解散に踏み切ったということではないか。 また経済政策については、安倍首相の2019年の消費増税を前提にして、その消費税の使途変更が注目されている。簡単に言うと、国債償却から教育の無償化などへの使途変更である。これについて、あたかも2019年10月の消費増税が確実に行われるとする皮相な見方がある。過去の消費増税の見送りもそうだったが、増税自体はその時々の経済状況をみて政治的に判断されてきた。使途の変更と増税「確定」は分けて判断すべきだろう。 むしろ首相の記者会見では、日本の財政再建の旗印であった基礎的財政収支(プライマリーバランス)の2020年までの黒字化達成を断念したことの方が筆者からすれば重要である。これによって中長期的な財政支出への重しがとれたことになる。経済低迷や北朝鮮リスクによる意図しない政府支出にも十分対応可能になるだろう。一方で、経済面で残念なこともある。それはインフレ目標の早期達成をはかるためには、日本銀行との協調を再強化しなければならないのに、その点への認識が甘いように感じられる。選挙のためには、現在の経済状況の良さを強調するという戦略だろうが、まだまだ日本経済は不完全雇用の状態である。それに立ち向かえるだけの政策の装備をしなくてはいけない。報道陣の取材に応じる希望の党の小池百合子代表=10月1日、東京都中央区 このままいけば、今度の選挙の論点はワイドショー的な「安倍自民vs小池希望」という構図で騒がれてしまうだろう。または小池新党をめぐる政治的混乱に注目が集まってしまう。今の政治状況では、ワイドショー的なものがかなり政治的なパワーを持っている。もし、また安易にテレビなどの報道にあおられて、「一度チャンスを与えよう」とか「新しいものがいい」などという安易で空疎な態度で、選挙に挑まないことを筆者としては祈るばかりである。

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    山尾志桜里は不倫スキャンダルで政治家の価値を高めるかもしれない

    体に波及する。経済学的には一種の外部効果だが、いまのワイドショーなど報道の在り方をみてみると、特定の政党を「悪魔」のように仕立て上げて批判することで、視聴率獲得などの歓心を得ようとしている。そのため政党に影響があればあるほど、一議員の問題の価値もまた高まるというフィードバック現象がみられる。この負の連鎖をとめるには、議員辞職が最善の選択になる。議員であるがゆえに、「不倫」というよくある出来事も報道の市場価値を持つからである。宮崎謙介元衆院議員のケースはこの対処法であった。政治家はなかなか食えない「生き物」8月21日、民進党代表選の出陣式で、山尾志桜里元政調会長(左)とあいさつを交わす前原誠司元外相(斎藤良雄撮影) 山尾氏は、議員辞職ではなく民進党の党籍を離れたので、いわば「次善の策」だ。一説には、10月に行われる衆院の三つの補欠選挙に絡んでいるともいわれている。いまの段階で議員辞職してしまうと、山尾氏の選挙区でも同日に補選を行うことになるため、候補者探しなどのコストを民進党が避けたという解釈だ。山尾氏個人は、議員であるかぎり当分の間、スキャンダルを引きずるというコストが発生する。他方で、民進党を離れたことで先の負のフィードバックから免れるという便益を得ることができる。この便益とコストの比較での民進党からの離脱だろう。 短期的には、民進党を離れたことにより党からの金銭的な支援なども受けられなくなり、その意味でのコストも発生している。他方で、長期的にみると必ずしも損ばかりとは言い切れない。議席を維持しているので、次の国政選挙のときに民進党に復帰し闘うことも可能である。その意味では、パリス・ヒルトンが一時期刑務所に入っていても「箔」がつきセレブ価値を長期的に高めたように、政治家というセレブとしての価値も長期的には高まる可能性がある。要するに、政治家はなかなか食えない生き物だということだ。 山尾氏の問題については、一部の識者たちのダブルスタンダードともいえる発言も目立っている。自民党議員に同種の問題があれば苛烈な批判をしていたのに、山尾氏には弁護的だ、というものだ。これは認知バイアス(政治的偏見)の問題だろう。 ただ、政治家の私的スキャンダルで、政党の評価を決めるような社会的風潮はやはり問題なのだ。政党の評価でいうなら、前原代表の経済政策観には深刻な問題がある。例えば、消費税を引き上げることで、社会のすべての人の幸福を実現し、分断社会にも歯止めがかかるという。 社会の分断が防げるのならそれは大いに賛成だ。だが、引き上げる消費税率だけがやたら具体的で、他方でその税金でどのくらい私たちの生活水準が向上するのか(1人当たりの所得)、また、ジニ係数などを用いて経済格差がどのくらいの数値で低下するのか、といった具体的な政策目標の値は明示されていない。ただ、単にやたらはっきりとした税率の数字と、「all for all」というスローガンが先行しているだけである。ひょっとしたら、1人当たりの生活水準の向上を断念しているのではないかとさえ思える。それこそ「反成長主義」「成長断念」というトンデモ経済思想ではないだろうか。 「山尾スキャンダル」よりも、やはり前原氏の経済政策の方が個人的にはよほどスキャンダルである。

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    民進党が安倍政権と張り合うには「金子ノミクス」の採用しかない

    権の誕生から今日まで、日本では野党第一党の勢力(民主党、民進党)が、与党に比べて議会の勢力でも、また政党支持率の推移でも一貫して弱体化している。 最近の世論調査でも、さまざまなスキャンダル報道禍の中で、安倍内閣の支持率が揺らいでも、民進党など野党への支持率は総じて弱いままだ。産経・FNNの最新の合同調査でも、安倍政権への支持率が43・8%(前回調査より9・1ポイント上昇)、不支持率は49・0%(同7・1ポイント下落)で、依然として不支持率が支持率を上回り、国民の安倍政権に対する視線は厳しい。 この安倍政権への不支持率が支持率を上回る契機になったと思われる、森友学園問題や加計学園問題などについては、筆者はマスコミ報道や一部識者たちの姿勢に批判的であり、安倍政権の過誤よりもむしろマスコミの「ワイドショー効果」とでもいうべき負の影響の結果だと思っている。この点については別の論説で書いたので参照してほしい。衆院予算委員会の集中審議で答弁する安倍晋三首相。右は麻生太郎副総理兼財務相=2017年7月(斎藤良雄撮影) いずれにせよ、この数年にわたり「一強」といわれた安倍政権の政治的弱体化は、内閣改造後で小休止しているものの、まだ継続していることは明白だ。だが、この政治的好機にまったく民進党は乗れていない。先の世論調査でも民進党への支持率は、6・9%で0・1ポイント微減していて、低迷したままである。なお、自民党の支持率は、33%で3・9ポイントの上昇であり、民進党の約5倍近い。 このような野党第一党である民進党の不人気の理由はなんだろうか。端的にいえば、やはり民主党政権時代の政策の失敗について、国民が依然として厳しい視線を(党名が変わったとしても、中身は同じものだとして)民進党に注いでいるからであろう。この不人気を党の再建によって回復することができるのか。蓮舫代表の辞任表明を受けた今回の代表選は、マスコミの報道回数も増えて国民の注目も増し、同党にとってはまたとないチャンスである。それを生かせるのか。 最近では、マスコミ、特にテレビ(ワイドショーなど)での露出のあり方が、政治の人気・不人気をかなり左右するので、その効果は、無視はできない。しかし、こと政策ベースでとらえると、前原氏、枝野氏双方とも民進党の不人気の根源である、民主党時代の政策の失敗から教訓を得ているようには思えない。民主党政権時代の政策の失敗の筆頭は、なによりも国民の生活を困窮化させたことだ。その主因は、旧民主党の「緊縮病」的体質にある。この点については、前々回のこの連載でとりあげたが、重要なのでもう一度書いておく。「緊縮ゾンビ」という旧民主党時代の過ち 旧民主党の経済政策を総称して、筆者は「緊縮ゾンビ」と名付けた。「緊縮ゾンビ」とは、日本のような長期停滞からまだ完全に脱出していない経済状況にあって、財政再建などを名目にして増税することで、経済をさらに低迷させてしまう誤った経済思想をいう。ブラウン大学教授のマーク・ブライス氏は、「緊縮はゾンビ経済思想である。なぜならば、繰り返し論駁(ろんばく)されているのに、ひっきりなしに現れてくるからだ」(『緊縮策という病』NTT出版、若田部昌澄監訳、田村勝省訳)とも書いている。 この民主党政権時代の「緊縮ゾンビ」の典型的な政策は、消費増税の法案化である。それと同時に、積極的な金融政策を核にし、積極的な財政政策で補うという、不況脱出の常套手段を放棄したことが最も深刻な過ちである。 そしてこの「緊縮ゾンビ」から今回の二候補は脱却できたであろうか。前原氏は「中福祉・中負担」を目指して、教育の実質的な無償化や職業教育の充実などを掲げている。消費増税については、「中福祉・中負担」の核心部分であり、積極的に引き上げるべきだとしている。対する、枝野氏は、消費増税については現段階では引き上げるべきではないと述べている。そして、公共事業費などを削減し、他方で保育士などの賃金を引き上げて、雇用や消費の拡大を狙うという。民進党代表選の公開討論会に臨む前原誠司氏(左)と枝野幸男氏=2017年8月 前原氏の経済政策のスタンスは、伝統的(?)な同党の緊縮ゾンビそのものである。その意味では、まったく過去の政策の過ちを反省してはいない。消費増税をする一方で、教育や福祉を充実させて、それで国民の生活は豊かになるだろうか。また経済格差などを解消できるだろうか。 答えはノーである。消費増税政策は、むしろ国民の生活を窮乏化し、また経済格差などのデメリットを増加するだろう。「消費増税しても社会保障を拡充すれば経済格差や生活の困窮を防げる」というのは、緊縮ゾンビの主張の核心だ。前原氏のあげている「中福祉」はここでの「社会保障」に該当する。この消費増税政策は同時に、所得税から消費税への「消費税シフト」という税制の変更の一環であることに注意が必要だ。この「消費税シフト」は、財務省(旧大蔵省)が1980年代から本格的に推進している税制改革の主軸である。実際に消費税率が引き上げられる一方で、所得税の最高税率は引き下げ基調が続いた。 例えば、1986年の所得税の最高税率は、約70%だったが、「消費税シフト」に伴い引き下げられていき、1999年には37%に低下した。2015年には45%に戻しているが、所得税の累進課税としての機能はかなり低下した。つまり、より多く所得を稼ぐ人から税金をとることがなくなったために、再分配機能(経済格差の是正効果)は低下したということだ。 また、税金を多くとれるところから取らなくなったために、財政状況はもちろん悪化する。さらに経済自体も長引くデフレ不況によって税収が伸び悩むことで、さらに二重に悪化した。もちろんデフレ不況を深める上で、1997年の消費増税の負の衝撃は大きな役割を果たしてもいる。アベノミクスに代わる政策提言 そして世代にわたる資産の格差をふせぐ相続税の最高税率も1970年代では70%台だったが、今日では50%台に引き下げられている。すなわち「消費税シフト」は、人々の経済的平等を妨げてきたといえる。実は、このような「消費税シフト」が、世界的にも経済格差を深刻化させ、将来的にも無視しがたい要因になっていることは、トマ・ピケティの『21世紀の資本』などの議論で明瞭だった。 だが、消費増税への反対や不況期に行う積極的なマクロ経済政策(金融政策中心で、財政政策でそれを補う)を採用する政治家は、民進党では絶対的少数派であり、また同党の中で政治的な勢力にはまったくなっていない。筆者の見るところでは、馬淵澄夫衆議院議員が現職としてただ一人である。 さらに、同党員では、金子洋一前参議院議員が、積極的なリフレ政策の主張者であり、また消費増税反対論者としても知られていた。残念ながら、これらの筆者からすると長期不況に抗する政策を唱えることができる人たちが、野党の中で政治的な中核にならないことが、日本の経済政策論争を貧しいものにしていることは疑いない。『デフレ脱却戦記 消費増税をとめろ編』の著者で前参議院議員の金子洋一氏 例えば、金子氏は、最近意欲的に政策発信をしている。ユニークな試みであると思うが、自著『デフレ脱却戦記 消費増税をとめろ編』(金子洋一コミケ事務所発行)を出して評判になっている。その中で、金子氏は次のような、アベノミクスに代わる政策提言を行っている。 「政権との対立軸が必要なら、手垢のついたイデオロギーに囚われるのではなく、『緊縮財政をやめて金融緩和+教育子育て予算を純増』、『すでに欧州で法定化されている11時間インターバル制導入など労働時間短縮』などにしてはどうでしょうか」 この金子氏の提言は筆者も賛成である。だが、前原氏も枝野氏もともに緊縮財政、金融緩和反対である。前原氏の場合は、教育子育て予算は「純増」ではなく、増税して増やすので、金子氏のいう「純増」ではなくプラスマイナスゼロの発想だ。このプラスマイナスゼロの発想は、枝野氏も同様で、先に書いたように、公共事業を削り、その一方で保育士の賃金などをあげるものだ。 金子氏のような発想であれば、必要ならば長期的な観点でインフラ投資を増やし、また同時に保育士の賃上げも行い、また教育投資も増やすだろう。その財源は、消費増税ではない。国債の新規発行や、また所得税や相続税の税率の見直しも含めて、経済成長の安定化による税収増がその財源調達として中心になるだろう。 枝野氏は、消費増税の現状での引上げに否定的なので、あたかも「緊縮ゾンビ」ではないかのようだ。だが、枝野氏の引き上げ否定は、経済論には立脚していない。前々回の論説で指摘したように、枝野氏の消費税に対する見解は「消費税シフト」を目指すものである。 もし、その考えを訂正するならば、従来の見解を否定して、金子氏のような反緊縮政策の姿勢を明瞭にすべきだろう。それができないならば、単に経済論なき政治的な身振りと評価しても差し支えないものである。いま、アベノミクスに対抗するために求められるのは、枝野ノミクスや前原ノミクスの類いではない。先に紹介した「金子(勝ではなく、洋一)ノミクス」ではないだろうか。

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    民進党の処方箋は自民党の「政治的したたかさ」を学ぶことにある

    どによる安倍内閣支持率の急落にもかかわらず、民進党の支持率は上がるどころか下がり、政権交代可能な二大政党の一方の雄を占める、という結党の目標とは程遠い現状があったことは言うまでもありません。前川きよしげ氏の応援のため来県した江田憲司民進党代表代行=2016年6月15日、奈良市(神田啓晴撮影) しかし、それは一人、蓮舫代表だけに責めを帰すべきことではありません。昨年、民進党という新党を結成したにもかかわらず、旧民主党政権の負のイメージから脱却できず、それどころか、国民は「民進党は旧民主党と変わらない」と思っています。民進党が政権与党・自民党に代わる「受け皿」として足り得ていない理由はそこにあります。それほど、あの民主党政権時の体たらくが国民の脳裏に焼き付いているということです。 ですから、民進党浮上のための処方箋は、まず何よりも旧民主党時代からの「たらい回し人事」を一新し、「民進党は確かに改革政党として生まれ変わった」と国民に振り向いてもらうことから始めなければなりません。 その意味では、代表選においても、旧民主党時代の「顔」だけでなく、清新な若手や旧民主ではない人間が立候補し、大いに政党の理念や立ち位置、政策の論争をすべきではないでしょうか。それがかなわないのであれば、残念ながらこの党にはまだまだそれだけの危機意識が醸成されていないと言わざるを得ません。 また、私が地方組織担当の代表代行として全国を回っていると、「民進党が何をやる政党かわからない」「自民党との違いは何なのか」という問いかけをよくされました。そもそも、こうした政党の基本中の基本のことですら、国民にまだ理解されていないことを痛感したのです。 そこでまず、その政党の基本、すなわち「立ち位置」や「理念」について説明したいと思います。それは、米国に「共和党」と「民主党」、英国に「保守党」と「労働党」があるように、私は日本に自民党と民進党があるのだと考えています。 自民党は「共和党」「保守党」にあたり、すなわちどちらかと言うと、「業界」や「企業」「経営者」の側(「供給者側=「サプライサイド」)に立つ政党です。これに対し、民進党は「民主党」「労働党」に匹敵する、すなわち「生活者」や「消費者」「働く者」の側(「需要者側=「デマンドサイド」)に立つ政党)なのです。自民党との2つの対立軸 私はいまどき、イデオロギーで政策の是非を演繹(えんえき)的に決めるべきではないと思っているので、「保守」「リベラル」といった区分け、二項対立の図式を好みません。自身を保守政治家ともリベラル政治家とも称したことはありません。そういう考えで、維新の党の結党にあたっても、その綱領に「保守vsリベラルを超えた政治を目標」とし、「内政、外交ともに、政策ごとにイデオロギーではなく国益と国民本位に合理的に判断する」と明記しました。 ただ、その上であえて分かりやすくするために、この用語を使って表現するなら、「保守政党」を自認している自民党は基本的に日本古来の「伝統的な価値観や生き方」を重視する政党です。これに対し、民進党はそれを否定はしないものの、最近出てきた「多様な価値観や生き方」を認める政党です。その意味では「リベラル(自由・寛容)」な政党と言っても良いでしょう。民進党の綱領にも「多様な価値観や生き方、人権が尊重される自由な社会を実現する」と書いてあります。 以上のような基本的な「立ち位置」や「理念」の違いを前提として個別の政策を論じていかないと、なかなか国民から先ほどの「民進党って何をする党?」「自民党との違いは何?」といった素朴な疑問を拭い去ることはできないと思います。 それでは、以上のことを前提に、具体的な政策で「自民党との違い」を浮き彫りにしていきましょう。南スーダンに到着した陸上自衛隊=2016年11月21日(共同) まず、第一に「外交・安全保障」面での違いです。焦点は「海外での武力行使」を認めるか否か。その道を安倍政権下で策定した「安保法制」で切り開こうとするのが自民党、これまで通り認めないのが民進党です。すなわち、「専守防衛」に徹し戦後営々と築き上げてきた「平和国家日本」を守り抜く。ただし、北朝鮮の核・ミサイルや中国の海洋進出の脅威などからは徹底的に日本を防衛するという立場です。具体的には、領域警備法案の策定(海上保安庁と自衛隊の有機的連携の強化)や「周辺事態概念(編集注:日本の周辺地域において、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態)」の維持を前提とした周辺事態法の改正強化などでしっかり対応していきます。標語的に言えば「近くは現実的に、遠くは抑制的に」です。この点、安倍政権は「領域警備」には新たな法対応はせず、緊急時に閣議を電話で行う程度の運用改善しかしていません。もう一つの対立軸とは? 次に「原発・エネルギー政策」の違いです。これも明らかな対立軸です。原発を「基幹(中心的)電源」として推進する、原発を「安全規制基準に適合」さえすれば、どんどん再稼働させるのが自民党であり、原発を近い将来ゼロにし、再稼働についても「安全基準に適合」しているだけでなく、国が責任を持つ避難計画などがなければ反対する、そして「再生・新エネルギー立国」を目指すのが民進党です。再稼働した関西電力高浜原発3号機(左)と4号機=2017年5月17日、福井県高浜町(奥清博撮影) そして「経済政策」にも違いがあります。アベノミクスは大企業や業界を元気にすれば「トリクルダウン」(その効果が下流にしたたり落ちて)で人や暮らしが豊かになるという政策です。民進党は、経済成長も大事ですが、「所得再配分(税金の配分)」で直接「人や暮らし」に投資する。具体的には、医療や介護、年金・子育て支援などで「懐(家計)を温かく」し、国内総生産(GDP)の6割を占める消費を喚起していくことを目指します。その目玉として「教育無償化」や「介護士や保育士の処遇改善」などがあります。 「働き方改革」を典型に、最近は安倍首相の「抱きつき戦術」による「争点つぶし」で、政策面でなかなか違いが国民に見えにくくなっていますが、上記の基本政策において今後、安倍自民党との違いを鮮明に出し、国民に強くそれを訴えていくことが必要不可欠でしょう。 最後に、以前から「バラバラ」と批判されてきた党のガバナンスを確立することです。私は昔、自民党政権を官邸で支えていたことがあるのですが、自民党も結構、右から左、考え方に幅のある政党なのです。しかし、党内でいろいろ異論が出ても、自民党の場合はそれがむしろ「党の活力」と評価され、一方で民進党、いや旧民主党は、同じことをしても「バラバラ」と批判される。この違いは「『人徳』ならぬ『党徳』の差?」としか言いようのないものなのですが、私もこの党に代表代行として携わってみて、やっとその真因のようなものが分かってきました。 どの政党だって、党の方針決定までは侃々諤々(かんかんがくがく)大いに議論があって良い。しかし、いったん機関決定したらその党の方針に一致結束して従う。こうした当たり前のことを当たり前に行う「文化」を作り上げなくてはならないのです。 そのためには、その決定までのプロセスが大事なのです。一言でいえば「気配り」と「配慮」です。役員や幹部だけでなく、その政策や問題で異論のある人、要路にある人には、必ず事前に話を通す。簡単にいえば「根回し」なのですが、こうした民間でも役所でも当たり前のようにやっていることができていないのです。だから、単に「平場(会議)で議論しました」だけでは「決定」に納得感がない。人間誰しも、たとえ反対の考えであっても、事前に話を聞き、根回しされれば多少不満でも矛を収める。そういうものではないでしょうか。バラバラ感が生まれた理由 しかし、この党では、これまで10人や20人の部下さえ使ったことがない人が多い、組織にいてそうした経験を積んだ人が少ないために、そうした「気配り」や「配慮」ができない。その結果、たとえ党方針を決定しても、いつまでたっても不満が充満し続けてしまうのです。こうした繰り返しが、この党の「バラバラ感」「ガバナンスのなさ」を露呈してきたのではないでしょうか。 この点、自民党には中小企業の経営者や役所の幹部を務めた元官僚など、「組織」にいた人が多くいます。また、象徴的な慣行として、自民党の最高意思決定機関である総務会の決定に反対の人は「トイレに立つふりをして席を外す」といった政治の知恵を働かせて、組織統一を図ってきたのです。こうした「懐の深さ」「したたかさ」を民進党はもっと学ばなければなりません。 そして、最後に「連合(日本労働組合総連合会)」との関係です。もちろん、民進党最大の支援組織である連合の提案や意見は最大限尊重しなければなりません。ただ、お互い別組織である以上、違いがあるのも当然で、それを前提とした(お互いの違いを認めた)うえで、もっと「大人の関係」にしていかなればならないと考えています。 「大人の関係」とはこういうことです。それぞれの核心的利益(こだわる政策など)はお互いに尊重する。それ以外の政策などについてはたとえ違いがあっても、それはそれで認める、そして互いの友好関係には影響させない。こうした連合との関係は、まずトップ同士で議論し整理する。そして明確な方針を決める。そして、それを都道府県連や地域に落としていく。そうしたたゆまぬ努力が不可欠でしょう。自民党と経団連、業界団体との関係は、ある程度こうした「大人の関係」ができていると思います。握手を交わす民進党の岡田克也代表(右)と連合の神津里季生会長=2016年6月2日、東京都墨田区(松本学撮影) いろいろ申し述べました。このように、今の民進党には難問山積、低迷からの脱出には容易ならざるものがあります。しかし、自民党、民進党という政党形態が、上述したようにある意味、国際的に普遍的な二大政党の形態であることも事実ですから、少し時間がかかるかもしれませんが、一歩一歩地道に、一つ一つ課題を解決しながら、「政権交代可能な政党」と国民に認知していただけるよう、日夜努力していくしかないのではないでしょうか。

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    所属議員に聞いた「民進党がダメな理由」

    民進党の代表選が告示され、前原誠司元外相と枝野幸男元官房長官の一騎打ちの構図が確定した。野党第一党として、党勢回復への道筋や自民党に代わる政権担当能力が問われるが、蓮舫氏の辞任表明後は離党ドミノによる求心力低下も叫ばれる。民進党はなぜダメなのか。所属議員3人の独占寄稿でその問いに迫りたい。

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    「蓮舫降ろしの密約」内部崩壊した民進党が政権復帰するために

    原発問題)でも、調査会や議員懇談会で議論があっても、いつも「執行部に一任」か「拍手で承認」される。 政党の最も重要な綱領(その党がめざす社会像や理念を示す基本文書)でも、そうした手続きで「承認」されてきた。無理からぬものがあるとは思う。民進党は旧民主党時代からずっと「雑炊」政党であるからだ。原発を維持、推進する労働組合の代表として議員に選出された者もいれば、「原発ゼロ」を方針とする労働組合を支持母体とする議員もいるからだ。「分党」すらできない民進党 この現実を融和的に解決するには、仕方がない組織論理なのだとも理解できる。しかし、それではいつまでも矛盾を抱えた政党であり続けるだろう。折しも民進党新代表を選ぶ選挙が9月1日に行われる。その具体例で課題を示したい。 安倍政権を終わらせ、もう一度政権交代を実現するのが野党第一党の至上命題である。民主党政権の失敗に対する批判はいまだ払拭できていないが、そこから脱する試行錯誤は続いてきた。その一つが蓮舫代表時代に設置された、いわゆる「前原調査会」だった。 前原誠司議員が昨年の代表選で提唱した提言で、慶応大の井手英策教授の研究成果を政策化する取り組みであった。「All for All」という言葉に表されているように、「すべてのひと」のために「すべてのひと」が貢献する。魅力的な政策だ。蓮舫氏が代表になってから定期的に会議が開かれてきた。この社会保障政策は党内でさしたる異論もなく一致することだろう。新しい社会像の提示は重要な政策的成果である。ただ、問題は「憲法」と「原発」だ。 安倍首相が9条の3項に自衛隊の存在を明記する改憲を提案した。これは集団的自衛権についての憲法解釈を変更して以降、その役割を世界に拡大する危険な内容をはらんでいる。そうした動向にどう対峙するのか。原発問題もしかりである。「原発ゼロ」への方針もすっきりした形で解決できていない。こうした政策的対立を内包したままでは自民党政権に「歯切れよい」対抗勢力にはなり得ないだろう。それを自覚しているからこそ、菅直人元首相は「分党」を提唱している。 だが、現実的に判断して、今の民進党に「分党」するだけのエネルギーはないように思える。菅提案に賛同して動く勢力は見当たらない。ならばどこに状況を打開する活路はあるのだろうか。それはいずれやってくる解散総選挙をどのような布陣で迎え撃つかという戦略的な構想にある。そこでカギになるのが、小沢一郎議員が一貫して主張している日本版「オリーブの木」構想だ。「オリーブの木」とは、イタリアですでに実践された政治手法で、異なる政党が選挙時に統一名簿を掲げて闘うことを意味する。記念パーティーで握手する、共産党の穀田恵二氏(右)と自由党の小沢一郎代表=2017年7月、京都市(門井聡撮影) これを日本で具体化すれば、野党第一党の民進党と自由党、社民党が衆議院比例区で統一名簿を提示して選挙戦に臨む。さらに共産党とは個別の小選挙区で選挙協力を行うのだ。この構図ができれば自民党政権は相当に追い込まれていくだろう。もしかしたら「ドミノ倒し」のような結果が生まれることも有り得る。問題は民進党がそうした戦略を取ることができるかどうかである。労組依存の弊害 そこに9月の代表選挙の争点がある。政策的な矛盾も選挙に勝つことで、最適解に向けて徐々に進むかもしれない。最後に追伸のように触れれば、この原稿の締め切りが延びる間にもいくつかの変化があった。 枝野幸男氏に続き代表選挙に前原氏が立候補することを表明した。本来なら30代、40代の世代が名乗りをあげるような代表選挙が望ましい。かつてのイギリスのブレア、最近ではフランスのマクロンのように、30代から将来を見越して育てられた人材がなかなか見当たらないことも民進党の問題だろう。基本政策を発表する枝野幸男元官房長官=2017年8月8日、国会内(斎藤良雄撮影) その世代の候補者が出てこれないのは「年功序列の労組」に大きく依存しているからである。共産党が不破哲三氏を40歳で、志位和夫氏を35歳で書記局長に抜擢したような驚くような人事ができない組織体質を改善しなければならない。 さらにいえば、「離党を検討している」という捨てゼリフをいとも軽々しく口にする議員が散見されることにも問題がある。これは議員の人間的資質に帰せられることではあるが、あまりにも軽い。「離脱の精神」(藤田省三)は貴いものである。 離脱の自由があるからこそ結束の絆も強まる。執行部への圧力になるかのように容易に離党を言うのは「狼が来るぞ」と繰り返す少年のようだ。ともあれ「安倍一強」政治に綻びが生じた今、野党第一党の責任は重い。地道な改革を積み重ねていくことしかないだろう。「活路のない危機はない」のである。

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    政権返上で使命を見失った民進党は一度解党して出直すしかない

    ました。その陰で民進党は、選挙前から優秀な人材が都民ファーストに流れた結果、わずかに5議席に終わり、政党の意義を失いました。選挙中、稲田朋美前防衛相の失言や自民党国会議員のスキャンダルが相次いだ安倍内閣の支持率が下がり「自民党はダメだが、民進党はもっとダメ」という結果を突きつけられたわけです。 一方、都民ファーストは一昔前の「新進党モデル」で勝ちました。つまり、労働組合の連合と公明党に、保守政治家が加わる図式です。新進党では小沢一郎氏が、都民ファーストは小池知事が中心となりました。そういえば小池知事は新進党の出身でもあります。 フランス大統領選では、社会党、共和党と左右の既成政党が人気を失い、中道のマクロン氏が圧勝しました。米大統領選もトランプ氏という政治の素人が勝利しました。既成の政党や政治家に代わる受け皿があれば、大きな政治的変化が起きているのは洋の東西を問わない状況です。 今、安倍内閣はさまざまな疑惑に対し「記憶にない」「記録にない」を連発するごまかしの姿勢と、国民を「こんな人たち」と呼ぶ安倍首相の「上から目線」で自滅しています。本来なら野党に絶好のチャンスが来るはずですが、第1党の民進党はお家芸の「内輪もめ」で、蓮舫代表も野田佳彦幹事長も辞任して総崩れ状態です。民進党代表選で記者会見に臨んだ枝野幸男氏(左)と前原誠司氏=2017年8月21日 旧民主党は選挙による政権交代という歴史的な使命を果たしました。二大政党政治の下、国民の政治的な関心も高め、大きな成果があったと思います。しかし、その後、新たな使命を見いだせなかったことが最大の問題です。野党時代が長く、経験不足のまま政権運営に失敗した「負のイメージ」をいまだに引きずっているのです。 どの政党でも、政策の幅はあるものです。それでも、侃々諤々(かんかんがくがく)議論した後でも一致団結するのが政党というものです。でも、党内での徹底した議論の末、決まったことには全員で従うというガバナンスが確立できなかったことも、歴史的使命を終えた以上しかたないのかもしれません。 もちろん旧民主党時代には、子供たちへの施策を最優先する「チルドレン・ファースト」の哲学に基づく子ども手当や、高校授業料無償化、国際的スタンダードの農業への戸別所得補償といった評価される政策も進めました。この時は「政権交代」という大目標のために、党内も一致団結できていました。その後は、なぜか遠心力が働くことばかり続きました。利権集団である自民党と決定的に違い、「利権政治」を否定していたがために、権力を維持するという執念が薄かったのかもしれません。野党再編の核を目指すべき 政権を失った後、2014年7月25日に、旧民主党の「民主党改革創生会議報告書」が発表されました。報告書には「安倍政権が戦後日本の生き方そのものを変え、国権主義に傾斜する今、何よりも必要なのは憲政と民主主義を守る強力な野党である」「今、政府与党の政治家から、全体主義を肯定し、女性の人間性を無視し、あるいは震災被災者の尊厳を軽んじるような発言が続いている。政治を担うものが常識と品位を取り戻すことが今までになく求められている。民主党は、人間の尊厳を何よりも大切にする政党でありたい。国民の常識を反映し、国民と常識を共有する政党でありたい」「日本の政治から穏健中道のフェアウエーが姿を消しつつある。民主党はこの穏健中道のフェアウエーのど真ん中を捉えなければならない」と書かれています。衆院本会議で質問に立つ民主党時代の岸本周平氏  この報告には、代表選挙への予備選の導入、党員・サポーターのあり方や党の意思決定システムに関する提案や、内外学識経験者とのネットワーク型「シンクタンク」の創設などの具体的な提言が盛り込まれました。 民主党改革創生会議の事務局として議論を重ねてきた私としては、これまで、党改革のために提言の実現に向けて努力も重ねてきました。民進党の結成後も、当選3回以下の仲間たちと共に改革提言を続けてきましたが、ここにきてついに刀折れ、矢尽きた感があります。  今こそ「解党的な出直し」ではなく、まさに解党して一からリセットし、野党再編の核になることを目指すべきです。 米仏だけではなく、日本でも既成政党以外の受け皿が求められている状況です。日本銀行や国の年金基金に株を買わせて、無理やり高成長の夢を追いかけるアベノミクスとは正反対の、地に足の着いた経済政策で、貧富の格差を少なくしていくことも必要です。 「民主党改革創生会議報告書」にもある通り、穏健中道の政治とは「国民の生活を第一に考える、普通の人々の生活を支える、自由と多様性の中に共生を図る、そのような政治参画への積極的コミットメント」です。そして、その政策理念は「憲法の枠内での自衛力と日米同盟に裏付けられた対話と抑止により平和を構築し、安全保障を維持する基本姿勢を明確にすること」により、「開かれた国益(2005年旧民主党マニフェスト)」を追求することです。 穏健で、日本の文化や伝統を守る「ハト派」による落ち着いた中道の政治が新しい流れになって、日本の政治を変えていくようがんばります。

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    小泉進次郎氏「労組は民進、農協は自民に入れる時代じゃない」

    代です」 彼にその真意を問うた。「僕はあの枠組みが変わると思っているし、変わってほしいと思っている。政党と支援組織の結びつきのあり方がねじれているんですよ。 労組には会社員の6人に1人しか入っていない。連合はその7割ですよ。だから、組織的には弱っている。しかも、労組が本来求めるような賃金の引き上げに積極的に今取り組んでいるのは自民党でしょう。だから、連合はなぜ民進党を支え続けるのか、組合員は疑問を持っていると思う」会議で発言する自民党の小泉進次郎衆院議員=7月23日、東京(古厩正樹撮影) 小泉は共産党との共闘に疑問を抱く民進党の保守系を取り込む考えも語った。小選挙区制下では難しいが、長い目で「連立」も視野に入れたら「平成の保守合同」につながるかもしれない。「民進党を離脱した人は、ゆくゆくは自民党に流れる。それが一番すっきりする」 思えば父・純一郎は古い自民党をぶっ壊す組織改革に着手した。その指揮を任せたのが、閣僚未経験の安倍だった。 40代の彼はベテランが反発する衆院比例区の73歳定年制や候補者の全国公募を断行し、先人がアプローチできなかった熱狂的な若き保守層を新たに取り込むことで「自民党ではない自民党」に一新した。「時代は組織よりも個人。『この人』となれば政党の枠組みも凌駕しちゃう」 小池ブームを見ながら、潮目の変化をそう読む小泉は、当時の安倍と同じ当選3回生。父が育てた安倍を越える強かな改革者になれるのか。人気者の真価がいよいよ問われる。(敬称略)●とこい・けんいち/1979年、茨城県笠間市生まれ。ネット企業、出版社勤務を経て、2017年、「小泉純一郎独白録」(月刊文藝春秋)で第23回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞受賞。著書に『保守の肖像 自民党総裁六十年史』『誰も書かなかった自民党 総理の登竜門「青年局」の研究』など。関連記事■ 伊吹も石破も公明党も「安倍の泥船」から逃げる、逃げる■ 小泉進次郎氏の自民党再建策に「トランプ型党広報」■ 小泉進次郎氏 「政治参加は18歳ではなく0歳からでいい」■ 籠池夫妻の通名使用が判明 ことあるごとに改名する家訓あり■ 野田聖子・総務相 8000万円父親献金に贈与税逃れ疑惑

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    安倍政権の“延命装置”の民進党 解党しか選択肢ないとOB

     安倍政権を追及すべき野党第1党で先に内紛が始まるのだから、とことん救いようがない。閉会中審査直後の7月25日に開かれた民進党両院議員懇談会では都議選惨敗の責任を取って、野田佳彦幹事長が辞任を表明。さらには、27日になって蓮舫代表が記者会見で代表辞任を表明。「いったん(身を)退いて、民進党を新たな執行部に率いてもらうことが最大の策だ」と説明した。 だが、その間の経緯は相変わらず“コップの中の争い”と“保身が第一”という民進党らしさばかりだった。 蓮舫氏は岡田克也前代表に後任幹事長就任を打診するもアッサリ断わられた。その理由は「岡田氏はここで泥船に乗る必要はないと判断した」(同党関係者)と囁かれるほど団結にはほど遠い。 蓮舫氏は懇談会終了後のあいさつで「新世代の民進党を目指す」と語ったが、それも「逃げた岡田氏へのあてこすり」(民進党中堅)と見る向きさえあった。さらにその日の午前中の閉会中審査で安倍首相を厳しく追及して名を上げた桜井充・参院議員まで離党を示唆し、挙げ句は蓮舫氏自身が新体制の船出前に辞任である。記者会見で「台湾籍離脱」の書類を18日に開示する考えを示した民進党の蓮舫代表=7月13日、東京(春名中撮影) 次の代表に名前が挙がる前原誠司・元代表は、総会に先立つ7月17日の講演で「民進党という名前はなくてもいい」と発言するなど、政界再編に前のめりな姿勢を隠さない。党内がバラバラになっている背景には、最大の支持基盤である連合の離反がある。 「連合の次期会長候補である事務局長が安倍首相と官邸で極秘会談し、残業代ゼロ法案(労働基準法改正案)に条件付きで賛成する動きが明るみに出た。結局、連合内で意見がまとまらず法案賛成は見送られたが、民進党という看板のままなら、連合は支持を打ち切る姿勢だ。むしろ、安倍政権の支持率が急落している今だからこそ、早く解党して新たな政治勢力をつくるべき」(民進党右派議員) 安倍政権を追及するために新代表のもとで解党が必要―何とも奇妙な理屈が成り立つことになる。民主党OBの平野貞夫氏はこういう。「今の民進党は自民に近い保守的なスタンスの連中と、連合依存の連中が同居したまま。党の政策や理念が曖昧な上に、お互いにすぐに排除の論理を持ち出す。野田氏は辞任に際して、『解党的出直しが必要』といったが、“的”が余計。本当に解党しか選択肢はない」 確かに民進党の存在が、青息吐息の安倍政権の“延命装置”になっていることは間違いない。関連記事■ 吉岡里帆 「スッピン濡れ髪」で会いに行った佐藤健宅■ 稲田朋美氏 保守系メディアからも出ていけと見捨てられた■ 高須院長、公判後の民進党コメントに激怒「徹底的に戦う」■ 安倍首相を悩ます「持病悪化説」と「昭恵さんの神頼み」■ TENGA芸人ケンコバ「夢中になってしまうのが正直怖いです」

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    「利上げして景気回復」枝野幸男の経済理論が凄すぎてついていけない

    田中秀臣(上武大ビジネス情報学部教授) 民進党の蓮舫代表と野田佳彦幹事長がともに辞任する。これを受けて次期代表をめぐる戦いが注目されている。今のところ本命視されているのは、「リベラル」寄りの枝野幸男前幹事長、「保守」寄りの前原誠司元外相の二強対決らしい。7月27日、会見で辞任する旨を表明する民進党の蓮舫代表(春名中撮影) もちろんこのリベラルと保守という対決図式は、筆者にはどうでもいい。民進党がなぜ民主党時代に政権を追われ、そしてそれ以後も党勢が回復しないか。そして蓮舫代表が野田幹事長を選んだ以降、なぜ急速にその党内外の支持を失ったのか。そこを考えれば、同党の経済政策のあり方こそが、国民的な関心事ではないか、と思う。だが、どうもマスコミや同党の支持者だけではなく、民進党自身にもその意識はないようだ。 簡単に言うと、前原氏も枝野氏も経済政策のスタンスは変わらない。相変わらずの「消費増税ありき」の緊縮主義である。民進党の経済政策を総称して、筆者は「緊縮ゾンビ」と呼んできた。そして、今回の代表選もどうやら「緊縮ゾンビ」たちの顔ぶれしか拝めなさそうである。 「緊縮ゾンビ」とは、日本のような長期停滞からまだ完全に脱出していない経済状況にあって、財政再建などを名目にして増税することで、経済をさらに低迷させてしまう誤った経済思想を持った人々のことを指す。日本はこの「緊縮ゾンビ」が政界を中心にして大流行していて、なかなか退治できないでいるのが現状だ。ブラウン大学教授のマーク・ブライス氏は、「緊縮はゾンビ経済思想である。なぜならば、繰り返し論駁(ろんばく)されているのに、ひっきりなしに現れてくるからだ」(『緊縮策という病』NTT出版、若田部昌澄監訳、田村勝省訳)とも書いている。 ただ、民進党首脳の過去の発言を見る限り、消費税の引き上げに反対したこともある。直近では2016年の再凍結のときだ。だが、反対の理由として挙げたのは、経済への悪影響ではない。軽減税率の導入への反対や、衆議院の定数是正などに絡めたものであった。要するに、その都度その都度の政治情勢で、まともな理由にならないものを列挙し、消費税についての立場を変更しているともいえる。だが、その基本的なスタンスは、消費増税への賛同であることは間違いない。消費増税は低所得者層に有利? 今回の有力候補といわれる二人の消費税に対するスタンスを見ておこう。前原氏は、昨年の代表選で出した「まず身を切る改革・行政改革。その上で希望と安心のALL for ALL 『尊厳ある生活保障』」と題された資料を見てみると、消費税を10%に引き上げ、教育や保育の充実を目指すと述べていた。積極的な金融緩和など、今日の日本経済で効果を上げている政策についてはほぼ無視している。前原氏については今回も大差ないのではないか。つまり、前原氏の経済政策観は、民進党のスタンダードなものである(参照:「反省なんてまるでない! 「緊縮ゾンビ」だらけの民進党代表選」)。いままでこの連載でも多くを書いてきたので、今回は枝野氏について特に紙数を割きたい。地元の祭りに参加し、住民と言葉を交わす民進党の前原誠司元外相=7月30日、京都市左京区 枝野氏については、2012年に出された著作『叩かれても言わねばならないこと。』(東洋経済新報社)が参考になる。同著では、所得税よりも消費税がむしろ現在の生活水準が高くない層には有利だと説明されている。消費税が、低所得者層に負担が重いという「逆進性」の指摘を否定している。そして消費が多く生活水準の高い「引退世代」に負担してもらうという主張であった。 しかし、この枝野氏の主張ほど実際の消費税の負担について間違ったものはない。消費税の「負担額」は確かに高所得者の方が大きいが、やはり「逆進性」の懸念通りに、低所得者層の方が消費税の「負担率」が高くなっている。 消費増税が直近で行われた2014年4月から8月にかけての統計データを見て、現在の日本銀行審議委員である片岡剛士氏は、『日本経済はなぜ浮上しないのか』(幻冬舎)の中で以下のように指摘していた。「消費税増税が始まった2014年4月から8月にかけて悪化が深刻であるのは、世帯所得が最も低い第一分位及び第二分位といった低所得層の家計消費であり、かつ勤労者世帯の中でも非正規労働者の比重が高い低所得者層の悪化度合いが深刻であることがわかります。消費税増税の逆進性に伴う負担率の高まりが低所得者層を中心に生活防衛意識を高めて支出を抑制しており、家計消費の回復にブレーキをかける一因となっているのです」(同書、180ページ)。 この状況は2014年から16年までほとんど変わらず、低所得層の消費の動きは低迷したままである。枝野氏の主張は現実の動きの前では否定されたといっていい。信じられない枝野氏の「トンデモ経済論」 さらに枝野氏には興味深い主張がある。それは以前から「利上げして景気回復」という主張である。これは端的にトンデモ経済論の域だと思われる。筆者の知る限り、08年9月下旬のテレビ朝日系列の「朝まで生テレビ」の番組中に表明している。当時はもちろんリーマン・ショックが顕在化したころであり、深刻な経済危機に世界が直面していた。その中での発言である(当時の記録が筆者のブログにある)。 通常は、経済危機や深刻な不況のときは、金利を引き下げることが重要だ。もし金利を引き下げる余地がないときは、今度は中央銀行が供給するマネー自体を増やしていく、さらには物価安定目標(インフレ目標)の導入で人々の予想をコントロールしたりすることが重要だ。なぜ金利を引き下げるかといえば、経済が落ち込んでいるときは、民間の消費や投資が振るわないときだ。例えば、住宅ローンでも車のローンでも金利を安くした方が借りやすくなるだろう。もちろん金利が変動型であればそれだけ返済負担も少なくなる。消費だけではなく、企業の設備投資のための金利負担も軽くなる。 だが、どんな教科書にも経済危機や不況に、金利を引き上げて景気回復が行われるとは書かれていない。当たり前だが、そんなことを経済危機に行えば、経済は壊滅的な打撃を受けるだろう。それをリーマン・ショックの時期に行えというのは、かなり経済政策のセンスを根本的に疑う事態だろう。「朝まで生テレビ」で同席していた嘉悦大学の高橋洋一教授も同様に、枝野氏の経済政策観を批判している。 やはり、枝野氏の経済政策観は、緊縮主義、その一種である「清算主義」に立脚しているかもしれない。不況や経済危機のときに、積極的な金融緩和や財政拡大で介入することは、かえって非効率的な企業や非効率な人々の経済活動(一例で余剰人員など)を温存させてしまう。だから不況や経済危機は市場に任せて放置した方がいいという経済思想である。そしてこの清算主義もまた間違っているにもかかわらず、何度も政策議論の場でよみがえってくるゾンビでもあるのだ。講演後に記者団の取材に応じる民進党の枝野幸男元官房長官=7月29日、さいたま市 ただ枝野氏は「利上げ」という形で積極的に市場に介入して、さらに不況を深めるかもしれないので、積極的清算主義という新種の可能性がある。このような「介入」が、彼が市場に任さないで、政府の活動を重視する「リベラル」という評価の源泉なのかもしれない。ただあまりに「自由すぎる」発想で、筆者はついていけないのだが。 まじめに話を戻せば、前原氏も枝野氏もともに緊縮主義であることに大差なく、蓮舫-野田体制とこの点で変化はみじんも期待できないのではないか。ここに民進党の低迷の真因がある。

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    運と勢いだけの「小池チルドレン」に都政の課題が解決できるのか

    腱も、自民党の「オウンゴール」で断裂を免れた。 第三のアキレス腱は、「都民ファーストの会」という地域政党の存在そのものにある。都議会自民党は「二元代表制の中で、小池知事の意向を一方的に実現する勢力を都議会で作るのは健全ではない」と攻め立てた。けだし正論ではある。 世論調査の結果を見ても、小池知事への支持は、一時期の8割超から漸減し、都議選の告示後は60%台半ばくらいにはなっていたが、それでも高い支持率を誇っていた。一方、都民ファーストへの支持は、小池知事への支持よりはるかに低かった。都政の課題への見識に早くも疑問符 いくつかの地域で、都民ファーストの候補者演説を聞いた範囲では、都政のさまざまな課題についての詳しい見識を持っているわけではなく、「小池知事と一緒に東京大改革を実現する都民ファーストの会です」というような、抽象的な内容しか話していない候補もいた。 豊洲市場の移転問題にしても「小池知事の意向を尊重する」というようなスタンスでは、地域政党とはいえ「小池知事のお抱え議員集団」というそしりは免れまい。 その二元代表制の本旨からいえば疑問とされるような都民ファーストが、都議会第1党となった。今後は、都議会第1党として知事へのチェック機能も果たしていかなければならないが、果たしてそれができるのだろうか。 過去の選挙を振り返ってみても、「ブーム」は何度もあった。1993年6月27日に行われた都議選では、「日本新党ブーム」で日本新党が公認だけで20議席を獲得、自民党、公明党に次ぐ都議会第3党となった。その立役者となったのが当時、日本新党の参院議員だった小池氏だが、その後の衆院選での「新党ブーム」の先駆けとなった。 2009年7月12日に行われた都議選では、民主党が54議席を獲得して都議会第1党となり、自民党38議席、公明党23議席を合わせても61議席と過半数割れにまで追い込み、その後の「政権交代」の序曲となった。 だが、こういった「ブーム」がもたらすものは、経験不足の新人議員の大量生産だ。日本新党も民主党も、新人議員が大量に誕生したものの、その4年後の都議選では惨敗している。 小池知事の支持率はいまだに高いものの、都議会自民党はこれからも豊洲と築地の併用案に「都民の税金を無駄遣いするのか」と厳しい姿勢で臨む可能性がある。小池知事の意向を実現するための都民ファーストだが、もし小池知事への支持が失われたら、それでも都民ファーストに存在意義があると言えるのか。 「小池チルドレン」と言われる新人議員が多くを占める中で、次の選挙を戦う足腰を鍛えることはできるのか。既成政党のように、政策を学び、都庁と渡り合いながら政策を実現していく教育機能を都民ファーストは担うことができるのか。小池知事の意向に従うだけなら、単なる頭数だという批判も浴びることになる。「都民ファーストの会」総決起大会で公認候補者とフォトセッションに臨む、小池百合子都知事=6月1日、東京都目黒区(川口良介撮影) 小池知事の第三のアキレス腱、都民ファーストは断裂の危険性を抱えながら小池知事と二人三脚で歩みを進めていくことになる。 運とメディア戦略で都議選までを乗り切った小池知事。1年間は選挙キャンペーンを上手に展開したが、このまま順調に進んでいることはできるか。4年間の任期をこれまでのような選挙キャンペーンのノリで乗り切ることはできまい。都知事としてのかじ取りが、これからさらに厳しく問われることになる。

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    都民ファースト鞍替え元自民区議が失神パワハラ疑惑に反論

     小池百合子・都知事の自民党離党と代表就任で「都民ファーストの会」はいよいよ東京都議選(7月2日投開票)に向けた戦闘態勢を整えた。都議選は「スキャンダル合戦」もヒートアップしている。とくに標的になっているのが、造反組候補だ。渦中の都民ファーストの目玉候補に反論を聞いた。 まずは小池氏の地盤・豊島区から出馬する本橋弘隆・区議(55)。自民党の方針に造反して都知事選で小池氏を応援した「7人の侍」の1人で、自民党から除名処分を受けると、都議選を前に「パワハラ疑惑」が流れ出した。新会派「都民ファーストの会」結成記者会見で、東京都議選の第1次公認候補を受けた本橋弘隆豊島区議(右)=1月23日、東京都庁(納冨康撮影) 今年2月17日、豊島区議会で本橋氏が議場の席替えに関して議会事務局長に抗議し、その10分後、同席した部下の職員が失神、救急搬送された。そのことが、「職員は本橋氏の怒鳴り声にショックを受けた」とパワハラ疑惑になったのだ。 本誌は議会事務局がその場に居合わせた一般職員6人に行なった調査資料を入手した。『本橋議員が事務所内で大声を出した件に関するアンケート調査結果』という仰々しい表題の文書によると、複数回答可で、「恐怖を感じた」(3人)、「恫喝だと感じた」(3人)、「大人げないと思った」(2人)とあり、さらに2人の職員がこの件を目撃した後、「体調に異変があった」と答えている。 本橋氏が大声で怒鳴ったとすれば問題はあるが、さすがに議会事務局のアンケートの内容も大人げない。 失神した職員にはもともと持病があったという情報もある。本橋氏には他にも盆踊り会場でのパワハラ、地元の書店での大声トラブル情報などがあった。本橋氏が言う。「こういう状況だから出る杭は打たれるんじゃないですか。仕組まれてますよね。身に覚えがありません」関連記事■ 都民ファースト幹事長 野田ゴレンジャーとショーパブ会合■ 「SOD女子社員」シリーズ 本当に社員なのか?■ 「小池新党」を牛耳る最側近の「六本木ハレンチ豪遊」撮■ 「9頭身」女優・田中道子が魅せた大人のセクシー■ 元テレ朝・龍円愛梨氏 資金不足で選挙事務所借りられず

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    小池新党候補に「高学歴女の幸せ請負人」20年学んだ知見聞いた

     小池百合子・都知事の自民党離党と代表就任で「都民ファーストの会」はいよいよ東京都議選(7月2日投開票)に向けた戦闘態勢を整えた。「女性を都議会に送らなければ都政は変わらない」──小池都知事はそう宣言して都民ファーストの会に「女性活躍推進本部」を立ちあげた。メンバーはいずれも知事のメガネにかなった17人の女性候補たちだ。 小池知事の政敵、石原伸晃・前自民党都連会長の地元・杉並区に殴りこみをかけるのは茜ヶ久保嘉代子氏(41)だ。東大卒のキャリアウーマンで1児の母、日本IBMや外資系経営コンサル会社、アマゾン・ジャパンを経てキャリア・アドバイザーとして独立した。 調査票では、「女性のキャリアと起業の支援」などを公約にあげ、政治家を志望した動機をこう書いている。〈家庭と仕事の両立についてアドバイザーとして活動する中で、より公共・公益に直接貢献したいという想いが強くなったため〉都議選に向けての高円寺駅南口での演説後、自身の政策について記者に語る杉並区から都民ファーストの会公認で出馬する茜ヶ久保嘉代子氏=6月12日、東京都杉並区 まさに「女性活躍推進本部」の“伝道師”にふさわしい意気込みではないか。もっとも、彼女は3年ほど前、〈高学歴女の「女の幸せ」請負います〉を合い言葉に、「高嶺の花-倶楽部」というサロンを立ちあげたことがある。公式ブログは現在更新されていないが、こんなことが書かれていた。〈高学歴女性のあなたは、そんじょそこらの凡人にはちょっと近寄りにくい存在かもしれないけれど、「本当に実力のある賢い男性」や「知性と品のあるチャーミングな女友達」に囲まれた、上質で刺激的なライフスタイルを目指すことができる可能性を十分に秘めているのですよ〉〈筋金入りの「高学歴女子」がその道のプロから必死で学んできた「いい女への道」を同じ想いを持つあなたには、特別に伝授いたします。20年の歳月をかけて学んだ、血と涙と汗の結晶である数々のノウハウであなたも、あなたの望む形で「女の幸せ」を手に入れて下さい〉 茜ヶ久保氏は20年の歳月をかけて、どんなノウハウを学んだのか。質問書を送ると、秘書を務める茜ヶ久保氏の夫が、こう回答した。「(サロンは)実質活動はしていません。ブログは初期設定をしましたが、実質的に利用していない。私的に開設したブログを、ネタとして取り上げられること自体が不本意です」 どうやら消したい過去のようだ。関連記事■ 都知事は戦後わずか6人 都知事の権力や仕事を分析した本■ 高学歴女 学歴コンプレックスないガテン系男に魅力を感じる■ 大卒女性の24%が“肛門性交”の経験アリ 高卒女性は17%■ 小泉純一郎氏 11月の福島県知事選に進次郎担ぎ出すプランも■ 新党結成の石原慎太郎氏 知事辞任は側近にも伏せられていた

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    首都東京は大丈夫か? 都議選公約に隠された3つの問題点

    に寄り添った政策を掲げている。 それぞれの「らしさ」全開のメニューだ。その順番や書き方、まとめ方にも政党の個性が表れており比較すると面白い。こうした各党の努力については敬意を示したい。前提となる知識を持っていない人にとっては理解しやすい言葉が並び、その意味では素晴らしいものも多い。 しかし、厳しい言い方をすると、専門家の見地から見て「政策」でも何でもないものも多い。主に3つの問題がある。具体例を示しながら見ていこう。 問題1 イメージ先行の抽象的な言葉のオンパレード「教育カリキュラムの充実、多様な教育の展開」(都議会自民党)「学童クラブの充実」(都民ファーストの会) 上記の文言から何を言っているのか理解できるだろうか? 「どのように」充実・展開するのか示されていない。実際すでに行われていることをただそのまま書いているだけともいえる。東京都の各種計画を見れば近い内容は書かれている。つまり、これは方針・指針のようなもので、進め方や度合いの違いにしかすぎない。 抽象度が上がれば上がるほど公約の責任追及からは逃れられるわけで、具体性を隠す政治的な高等技術ともいえる。無用な対立を避ける必要性があった時代ならまだしも、地方自治体が指標やKPI(Key Performance Indicator 編集部注:重要業績評価指標)を掲げ、数値目標の達成度を追及される時代にこれでは困る。第2、第3の問題点とは?問題2 明確な目的が存在しない「被災地と東京の子どもたちの絆を深めていくために、スポーツを通した交流事業をさらに展開」(公明党)「議会基本条例の制定に取り組みます」(民進党)「中小企業がとりくむ職業訓練への東京都の助成制度を充実させる」(共産党) 現実問題として何のためにその政策を行うのか、どのような問題解決につながるのかということが明示されていない。このような目的がよく分からない政策や公約が存在する。空気のようにはっきりしない理念にもかかわらず、もはやそれを実施すること自体が目的になっているようにも見える。運用できない、機能しない条例や自立を促さない助成事業ほど、行政職員の時間を奪い、やる気を損ねる事業はない。問題3 行政の役割範囲を超える「『おもてなしの心』で世界中から訪れる人々を歓迎するまちを実現」(都議会自民党)「金融とITを融合した「フィンテック」を推進」(都民ファーストの会) 上記のような政策に対しては、「行政の行うべき範囲を超えているのではないか」「民間が行うことではないか」との疑問を呈さざるを得ない。都政の予算には限界がある。行政でやってほしいという要望に取り組めば取り組むほど肥大化してしまう。 政治が率先してアピールすればするほど、「時代を先行する」人気取り事業に走りがちになる。そういった事業は人目を引きやすく、体の良い宣伝材料とニュースになるからである。そうなると見た目の良い「新規事業」に予算が確保されることによって本当に必要な事業の予算が削られる。もちろん事業の見直しとセットであれば良いが実際にはそういうわけにもいかない。これらは筆者がよく見てきた光景だ。 上記の3つの問題を改めて考えると残念だと思わざるをえない。都政の基本が分かっていないのではないかという疑問を覚えるし、このレベルでは優秀な都職員をバックにする都知事に対峙(たいじ)できるとは思えない。本来の役割である都政をチェックできるのだろうか。われわれは何を求めるべきかという点を考察したい。(1)前回の都議選の公約を示した上での説明(与党)達成できた成果を具体的な数値(KPI)で示す(野党)未達成であることの理由、シナリオを提示(2)今回の公約に対しての説明 政策をなぜ実施するのかを明らかにする 政策の目標、実現のための前提条件やシナリオを明示 ということが求められるのではないだろうか。自民、公明、民進は実績を示しているので、あともう少しがんばってほしいところである。首都東京の現実を前に責任政党の今後の取り組みに期待したい。

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    田中眞紀子の秘書暴行をスッパ抜いた上杉隆「17年目の反省文」

    上杉隆(メディアアナリスト) 豊田真由子議員の秘書に対する暴行を報じた『週刊新潮』の記事を読んで思い出したのは2000年、田中眞紀子議員の取材をしていたときのことだ。2001年8月、外務省講堂に職員を集め、人事問題などについて訓示する田中真紀子外相(早坂洋祐撮影) 鳩山邦夫事務所を退職したばかりの私は、毎週末、新潟に通い詰め、約6カ月間、永田町で噂になっていた同議員の秘書への「暴行」を取材していた。 取材結果は想像を超えるものだった。朝から晩まで議員に罵倒され続け、退職に追い込まれた者。買い物のおつりをくすねたと誤解され肉体的な被害を受けた者。失敗の反省を紙に書かせて、正座しながら大きな声で繰り返し朗読させられた者。 どの元秘書に取材しても、予想を超える「暴行」の証言ばかりで、取材する側の私の方がすっかり気分を悪くしてしまった。 記事は、2001年の『週刊文春』新年合併号に8ページにわたって掲載された。直後から私自身への猛烈な批判が待っていた。いわく「作り話だ」「陥れるための記事だ」 時はちょうど眞紀子ブームの全盛期。アンケートでは総理大臣にしたい政治家ナンバーワンの人気を誇る政治家への批判ということもあって、当初、すべてのメディアが「そんなバカな話があるはずがない」と決めつけ、後追い取材をするメディアもなかった。 ところが、その4カ月後、小泉政権で田中眞紀子氏が外務大臣に就任すると、外務省内で同様の騒動が起き続け、メディアの状況も一変、産経新聞が一面で私の記事を紹介する形で報じたのを皮切りに、議員秘書への「暴行」がようやく世に問われることになったのだ。 いま思えば、当時の永田町では、議員による秘書への「暴行」「虐待」などは決して珍しい話ではなく、テレビや新聞などでは報じられない「闇の世界」が日常化していた。 多くの政治記者たちも議員による秘書への暴行話を見たり聞いたりしながらも、それがあまり問題視される時代ではなかったのだろう。 実際、他の議員事務所を取材した当時の私自身も、軽度の「暴行」は容認していた気がする。 私が議員秘書として鳩山邦夫事務所に入った1994年は、まだ国会議員の秘書稼業は丁稚奉公(でっちぼうこう)的な色合いを深く残しており、忠誠心を持って議員に仕え、ときに身代わりとして自己犠牲すら厭(いと)わない秘書こそが優秀な秘書とされている時代だった。 たとえば、「経世会」(旧田中派)の秘書会の大先輩が、議員のスキャンダルが報じられた後、自ら命を絶ったという話も「秘書の鏡」として美談になって語られていた時代だった。鳩山邦夫の秘書時代 当時の国会議員は、主に「官僚派」と「党人派」に別れ、とくに後者は自らも議員秘書時代に鍛えられた経験から、同じ厳しさを秘書に求める傾向にあったように思う。 私のボスである鳩山邦夫議員も、田中角栄首相の秘書を務めた「党人派」であり、その例に漏れず、厳しいルールを自らの秘書たちに強いていた。2009年8月、総選挙の決起集会で演説する,、福岡8区から出馬した鳩山邦夫元総務相=福岡県久留米市内のホテル 私自身も入所して3カ月間は一切、家に帰ることはなかった。というのも、勤務時間は午前7時から深夜23時が定時で、土・日、祝日は一切なく、新人は誰よりも早く出勤し、誰よりも遅く帰らなければならないというルールが徹底されていた。 それ以上に、私たち若手秘書は、鳩山代議士の自宅に寝泊まりして、朝は掃除やゴミ捨て、夜は家族が寝るまで夜回りの記者などの対応を担当し、結局、鳩山家のお手伝いさんの部屋か、事務所に寝泊まりするのを余儀なくされていたのだ。 入所1年後、運転随行秘書になった私はより厳しい労働環境に置かれた。盆も暮れもない。軽井沢の別荘で鳩山代議士と二人っきりで過ごす2週間は、私にとっては逃げ場のない苦役だった。 初めて休みをもらったのは秘書になって1年半がたったある夏の日、父が急逝した翌日のことだった。それまで本当に1日たりとも、休みがなかった。 そうした厳しい世界を経験した秘書仲間、同僚や先輩や後輩たちがいまバッジを付けている。自民党の2回生が問題となっているが、その中にもかつての秘書仲間はいる。当時永田町で育った議員や秘書の多くは、いまだに古い永田町文化をひきずっているように思う。 もちろん、それで免罪されるわけではない。だが、時代の変化に対応できない議員が「自民党2回生」に集中していると断じるのは、早計にすぎるのではないかと思う。 問題を起こした議員が「自民党2回生」に多いというのはたまたまだろう。3回生にも、4回生にもその種の問題議員はいるし、また自民党だけではなく、野党にも間違いなくそうした議員は存在する。 すなわち、安倍チルドレンだけの問題ではなく、永田町全体の問題であり、その一端は、それを知っていて見て見ぬふりをしてきたメディアの報道姿勢にもあると私は思う。 実際、罵倒を繰り返して、言葉の「暴行」を繰り返す議員を、日頃、永田町で取材している政治記者たちが知らないはずはない。 仮に知らないとしたら、よほど愚鈍か、あるいはスタジオでご高説を垂れる取材をしないテレビコメンテーターや政治評論家の一団に違いない。いまの秘書は恵まれている さて、こうした関係は議員と秘書の間だけではないだろう。私が知っているだけでも、役人に向かって「絶叫暴行」を繰り返す議員や秘書は少なからずいたし、制作子会社のスタッフに「暴行」を続けるテレビ局の社員も複数知っている。 つまり、日本社会全体に存在している相対的弱者に対する「イジメ」が、より目立つ形で、永田町で噴出したのが今回の「絶叫暴行」事案だと言った方が正確なのかもしれない。 元国会議員秘書経験者からすれば、いまの秘書は恵まれていると思う。定時には帰宅することができるし、休日も保証されている。思えば、それは当然のことだが、わずか20年前とはいえ、どうしても自分自身の経験を基準とし、厳しい目を持ってしまう。 人はそうやって自分の経験からしか物事を見られないのだろう。おそらく、私の先輩秘書も、私たち後輩に対して同様の気持ちを抱いていたに違いない。 秘書稼業の厳しさは、生きてきた時代が規定する。そう考えると、時代によって議員と秘書の関係も変わるに違いない。 鳩山事務所を退所した1999年から3年間、私は米国の新聞社(ニューヨーク・タイムズ)に働いた。その際、米国の議員と秘書の関係も知ることになる。米国のように、公費で20人も秘書を雇える制度ならば、秘書は秘書、本来の秘書業務に専念させることも可能だろうと実感した。2月19日、地元の埼玉県朝霞市長選で万歳三唱する豊田真由子衆院議員(菅野真沙美撮影) しかし、公設秘書を3人しか置けない日本の現行制度では、選挙というものがある以上、とりわけ衆議院では、議員と秘書の雇用関係に、法律や常識の枠では収まらない厳しい現状が発生するのも無理もないという考えに至ってしまう。 豊田議員をかばうつもりはない。だが、彼女の事務所以上に、ひどい扱いを受けている秘書が存在するのは紛れもない事実だし、そうした状況を許してきた永田町の慣習を無視して、いまの私には、ひとり彼女だけを追及する気にはなれない。 あの田中眞紀子議員を追及して、議員辞職まで追いつめたジャーナリストの反省として、誰かひとりをスケープゴートにしてつるし上げても何も変わらないと知っている。そうした報道は、社会に進歩も発展ももたらさないことを、私たちはこの20年間の報道で学んだはずだ。 政治部を中心とするテレビ・新聞は、自分たちの不都合も含めて、今回のことを俯瞰的に調査・報道してもらいたい。大局を持って今回の「暴行」事件を報道・分析すれば、きっとその先に、議員と秘書の健全な関係が待っているに違いない。

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    「安倍チルドレン」はモンスターばかり?

    出るわ出るわの醜聞で「安倍チルドレン」の評判が今や駄々下がりである。秘書へのパワハラが週刊誌でスッパ抜かれた豊田真由子議員をはじめ、カネや不倫、失言といった問題行動が次から次へと明るみになり、身内からも追い詰められる安倍政権。「モンスター議員」は他にもいるのか。

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    安倍政権に朗報! こうすれば「モンスター議員」はいなくなる

    いとし、小選挙区制には欠陥があるという。たしかに、小選挙区制導入以後、選挙が「風向き」によって、対立政党のどちらかの圧勝で終わるようになったのは確かである。 実際、過去4回の衆議院議員選挙のうち、05年の「郵政選挙」、09年の「政権交代選挙」、そして12年の「民主党自滅選挙」では「風向き」が偏いたため、新人が大量に当選した。チルドレンが量産されたのである。前記したように、「魔の2回生」は、12年の衆院選で大量に誕生した。 そのため、議員不祥事を防ぐためには、「新人を大量当選させる小選挙区制というシステムを変更する」「中選挙区制に戻したらどうか」という論調が幅を利かすようになった。 しかし、これは誤りである。なぜなら、前記したように、不祥事確率はどの集団でも同じようなものだからだ。つまり、新人を減らしたところで、不祥事は減らない。もし、減ると言うなら、これをデータで実証しなければならない。 では、不祥事議員を減らすのにはどうしたらいいのだろうか。それは、単純に議員数そのものを減らせばいい。日本の国会議員の数が多いか少ないかは、いろいろな議論がある。各国によって政治制度が違うので、単純に数の比較だけでは議論は成り立たない。ただし、現在の日本の状況、つまり財政は毎年赤字で破綻も視野に入っていること、すでに人口減社会に突入し、有権者数も減少していくことを考えれば、現行の国会議員数「衆議院議員475人・参議院議員242人、合わせて717人」は多すぎるのではないだろうか。公選法改正案を可決した衆院本会議=6月8日 国会議員に支払われる「歳費」(給与)は月額約130万円、期末手当が約630万円で年間約2200万円。これに、文書通信交通費として毎月100万円、立法事務費として毎月65万円、政党交付金として毎年4000万円、秘書の給与(政策秘書、第1・第2公設秘書の3人)約2500万円などが加わり、議員1人辺りに税金が約1億円も注ぎ込まれている。つまり、議員数を減らせばおのずと税金が浮くわけで、減らすにこしたことはないだろう。新人大量当選にも意義がある これまで、どの政党も口をそろえて「議員数削減」を叫んできた。たとえば、民主党は、2009年のマニフェストに議員定数を80人削減すると明記して政権を取ったにもかかわらず、たった5人しか削減(0増5減)できなかった。 自民党も、昨年2月に安倍晋三首相が「議員定数10削減」の実施時期を、自民党案が示した「2020年以降」から前倒しすると明言したら、反対が続出する結果を招いた。かつて、2012年に衛藤征士郎衆議院議員が会長を務める超党派議連が、「衆参対等統合一院制国会創設案」を提出したことがある。その案によると、衆議院と参議院を統合して一院としたたうえで、「国会議員の定数は、現行722人を3割(222人)削減し、500人以内として別に法律で定める」(編集部注:2012年当時の定数)と明記されている。この議連の顧問には安倍首相も名を連ねていた。国会議員数を500人まで削減すれば、計算上、年間約230億円もの税金が浮くことになる。 最後に、小選挙区制によって、選挙が「風向き」に左右され新人が大量に当選するので、これを廃止すべきだという意見に反論しておきたい。 この意見は、新人が未熟である、議員としての質が低い、つまり「チルドレン」ということからきているので、本来の改善策は質を向上させることで、システムの変更ではない。つまり、そのためにはどうすべきかを議論すべきだ。 実は、新人大量当選にも意義がある。それは、当選の反動で、たとえば「老害議員」が落選することが多くなったことだ。国会を昼寝の場とするような高齢議員がいつまでも実権を握り、当選回数によって大臣になるというような年功序列システムが残っているようでは、この国の未来は暗い。 もともと、「衆議院議員で5回以上、参議院議員で3回以上」が大臣の条件というのは、田中角栄内閣以降に確立されたものだ。それが、小選挙区制になり、小泉、安倍内閣などにより、現在はある程度崩壊してきている。もともと政党は、当選回数よりも見識、実力、知恵を重視する「メリットクラシー」(能力本位)でなければならない。そうでなければ選挙をやる意味がない。参院法務委で、「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案について、民進党議員の質問に対応する金田勝年法相(中央)=6月13日(斎藤良雄撮影) 本来、議員にもっとも求められるのは、国民の側に立った政策立案能力だ。だから、英語では議員は「ローメーカー」(立法者)と呼ばれるように、多くの法律が議員立法でできている。じつは戦後の日本も、人身保護法、優生保護法(現在は母体保護法)などの重要法案は議員立法で制定されている。しかし、保守合同と社会党の統一によって、与野党の勢力が固定したいわゆる「55年体制」が実現すると、議員立法は減少してしまった。 こうして、日本の国会議員の多くはローメーカーではなく「トラブルメーカー」になってしまった。それなら、議員数を思い切って削減したほうが、どれほど国民のためになるか、真剣に議論すべきときだ。

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    「秘書イジメ」豊田真由子議員だけが悪いのか

    岩田温(政治学者) この数日間の日本列島では、偶然、テレビから耳に入ってきた罵声に震撼(しんかん)させられた人が多かったのではないだろうか。言うまでもなく、豊田真由子代議士の罵声だ。「このハゲ~~~」という悪罵(あくば)から始まる「違うだろ!」「違うだろ!」等々のヒステリックじみた、いや、狂気すら感じさせるような、秘書に対する一連の漫罵(まんば)である。 私自身ハゲているわけでもないし、この代議士と一度も顔も会わせたことすらないのだが、何か自分が罵(ののし)るられているようで、非常に不愉快な気分に陥った。よく聞いていると、ところどころで暴力を振るったと思われる鈍い音もあり、まことに恐ろしい音声といわざるを得ない。そもそも、他人を批判する際の言葉が、「ハゲ」などという能力と無関係な身体的特徴であるという時点で、あまりに低俗に過ぎる発言だろう。よく考えれば「ハゲ」ていることは罪でも何でもないのだから、そもそも、非難の言葉だと捉えること自体が差別主義的なのだ。 ところで、豊田真由子代議士といって、多くの人が思い出したのが、園遊会の際の乱暴な言動ではないだろうか。園遊会では、招待された方の配偶者しか入場が認められていないが、豊田代議士は自身の母親を強引に入場させてしまったという事件が関係者の間ではかなり評判になっていた。私も話を聞いた際に、随分強引で、我の強い性格だと思っていたのだが、その凶暴さは想像以上のものであった。多くの国民があきれ返ったのは間違いないだろう。豊田真由子氏 だが、この豊田代議士の発言に対する自民党の重鎮たちの発言も、かなり、不適切な発言が多かった。すぐに撤回することになったが、河村建夫元官房長官は「ちょっとかわいそうだ。あんな男の代議士はいっぱいいる」と述べ、麻生太郎副総理も「あれ女性ですよ女性。男と書き間違えているんじゃないか」と述べている。 河村元官房長官の発言が事実だとすれば、自民党の男性代議士の中には、豊田代議士のような暴言、暴行が日常茶飯事になっている代議士が多いということになってしまうだろう。また、麻生副総理の発言は、豊田代議士が「女性」であるから、そのような暴言、暴行に及ぶことが信じがたいという意味に取れるので、結果として、男性代議士であれば、そのような暴言、暴行があっても仕方ないと受け止められてしまいかねないだろう。どちらも軽率な発言だといってよい。 そもそも社会的弱者を守る使命を帯びた政治家が、自身より弱者である秘書に対して、暴言、暴行の限りを尽くしたという時点で、豊田代議士の責任は重く、決して擁護できるものではない。 ただ、一点だけ豊田代議士に同情できる点があるとするならば、恐らく、彼女自身は、非常に優秀な人物で、ミスを仕出かす人々の気持ちが本当に理解できないのではないだろうか。彼女の経歴をみると、東大法学部卒業、厚生労働省入省、ハーバード大大学院修了、そして衆議院議員に当選している。およそ非の打ち所のないほど華麗な経歴で、彼女自身が相当な努力家で優秀な人間であったことがうかがえよう。こうした優秀な人間にありがちな欠点は、他者が自分と同様に優秀であるという錯覚を抱いてしまう点にある。自身が優秀だからこそ陥る欠点 要するに、本来であればできるはずなのに、意図的に努力を怠っているから、仕事ができないという風に思い込んでしまうのだ。自身が優秀であればあるほど陥りがちな欠点といってよいだろう。この罵声を浴びせられた秘書のミスを許すことができなかったのだろう。 だが、人間は皆、豊田代議士ほど努力家でも優秀でもない。別に彼女の才能を持ち上げるわけではないが、誰もが豊田代議士ほど優秀ではないというのが、世の中の常である。確かに豊田氏は優秀な官僚ではあったかもしれないが、一人一人の庶民の心をおもんばかることができないという意味において、政治家には絶対に不適格な人物であった。このような人物を公認候補として選出してしまった自民党関係者も猛省すべきであろう。支援者とともに満面の笑みで万歳三唱する豊田真由子氏(中央)=平成26年12月、埼玉県新座市 もう一点、別の観点から、この事件について一つだけ指摘しておきたいことがある。それはこの男性秘書の身の処し方についてだ。 恐らく、何度も信じられないほどの暴言を浴びせられ、嫌気が差したことは理解できる。だが、本来、彼がなすべきだったのは、ミスをした点に関しては、豊田代議士に対する心からの謝罪であり、その後になすべきは、豊田氏の異常な言動に対する「諫言」ではなかっただろうか。 失敗した点は謝罪すべきだが、本来、非難されるべき点ではない身体的特徴を揶揄(やゆ)され、人格を否定されるような発言がなされた点に対しては、いさめるべき立場にあったのではないだろうか。いさめて聞き入れないというのならば、断固として、その点は認めがたいと面を冒してでも堂々と主張すべきではなかったのか。 こうした低俗な議論に持ち出すにはいささか気が引けるが、『孫子』には「将、軍に在りては君命も受けざるところあり」との言葉がある。例え、上司から命令されようとも、引き受けてはならぬことがあるという意味だ。この場合、命令が下されているわけではない。自分自身の人格、名誉が否定されているのだ。その場で曖昧な態度を取るのではなく、毅然(きぜん)とした反論をなすのが秘書という職務というものだろう。 代議士もひどければ、秘書もひどい。日本の政治は一体どうなってしまうのかと思わざるを得ない低俗な事件だった。

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    「超傲慢エリート」元官僚議員はなぜ量産されるのか

    小笠原誠治(経済コラムニスト) 「このハゲー、違うだろう!違うだろう!違うだろう!」。豊田真由子衆院議員の元秘書に対する暴言、暴行問題は、こんなにひどいというか、面白いというか、視聴率の取れそうなネタに接するのは元兵庫県議、野々村竜太郎氏の号泣会見以来だろうか。 豊田氏らは、魔の2回生などと言われる。自民党の当選2回の議員たちの不祥事が後を絶たないからだ。武藤貴也氏(金銭トラブル)、宮崎謙介氏(不倫)、務台俊介氏(長靴業界発言)、中川俊直氏(二重婚疑惑)らも記憶に新しい。2016年9月、台風10号の豪雨被害に遭った岩手県岩泉町を訪れた務台俊介内閣府政務官(当時) この人たち、最初に当選したのは2012年の総選挙だ。民主党(当時)から政権を奪回したあの選挙。民主党の人気が落ちるだけ落ちていた時で、政権を失うのも当たり前と言えば当たり前なのだが、それ以来、安倍一強体制が続いているわけだからどうしても驕(おご)りが生じてしまうのだろう。 また、この2回生議員たちは安倍チルドレンとも呼ばれる。安倍政権の下で初当選した議員をそのように呼ぶが、チルドレンと言えば、小泉チルドレンや小沢チルドレンと呼ばれた議員たちもいた。 ただ、チルドレンと言えば、どうしても質の劣る議員たちばかりを思い出してしまうが、なぜなのだろうか。チルドレンとは、そもそも子供たちを意味するが、政治の世界などでは特定の人物の影響を受けた人たちの意味もある。 小泉純一郎総理や小沢一郎氏(幹事長、党首)、あるいは安倍総理の影響を強く受けた議員という意味があるわけだが、これらの新人議員の誕生に関して共通して言えることは、特定の政治家の思想などに強く感銘を受けて政治家を志したというよりも、むしろ特定の政治家が自分や所属する党の勢力を拡大するために大量に新人を立候補させる必要があったということである。 要は粗製乱造。その典型例は杉村太蔵元議員。最近の杉村氏は社会的な常識が身に付いたように見受けられるが、当選直後には「早く料亭に行ってみたい」だとか、あまりにも軽い発言を連発して顰蹙(ひんしゅく)をかったものだ。新人議員を多数誕生させる必要があるときには、じっくりと人物を見極める暇などなく、粗製乱造がどうしても避けられないのであろう。 事実、麻生太郎副総理は、先日、次のようなことを言っていた。「(自民党の衆院当選2回生は)全国に数多くおります。(2012年衆院選で)119人もの新人が通りましたから、こりゃいろいろいるのです」。とはいえ、自民党としては公募の手続きをとり、ちゃんと審査をして決めたわけで、少しは責任を感じてもらわなければいけない。ただ、そうは言っても、時間も限られているし、数をそろえることが優先されるので致し方ない面もあるのだろう。 つまり、学歴や職歴、そして、話しぶりやルックスがまあまあであれば決定するか、と。まして、豊田氏については学歴や職歴が抜群であり、実際の人柄について詮索するまでもなく決定されたことが容易に想像できる。 我々も東大卒、中央省庁採用、海外留学などという経歴をみると、それだけですごいなと思ってしまうわけなのだから。それに、選挙では当選することが一番大事なことで、後々明らかになる人柄の問題はどうしても軽視されがちになると言っていい。 そして安倍チルドレンの質が劣る理由は他にも考えられる。繰り返しになるが、チルドレンとは特定の人の影響を受けた人たちを意味する。そして安倍総理は、森友学園事件や加計学園疑惑が判明する以前から約束を破るというか、自分の言った言葉に対する信頼度が低い政治家と少なくても一部では見られている。だから、そうした総理の影響を受けた新人議員たちがどのような立ち居振る舞いをしがちになるのかは容易に想像がつくであろう。問題になりにくいキャリア官僚の暴言 ただ、以上のような事情からだけでは豊田氏の異常な言動を説明することはできない。つまり、新人議員粗製乱造システムによって適正のある議員が選ばれることの方が難しいからだ。また、安倍総理の個人的な資質が多くの新人議員の言動に相当な影響を及ぼしていることが事実であったとしても、豊田氏の言動は、そもそも議員になる以前から相当に常識はずれであったことがかつての同僚や部下たちの発言から明らかになっている。 豊田氏は少なくとも厚生労働省にいたときから部下を怒鳴り散らすなどの言動が頻繁に見られていたのだ。では、そうしたパワハラまがいの言動をどうしてするようになったのか。 豊田氏のケースに限定せず一般論を言わせてもらえば、本省採用のキャリア官僚は、自分たちは一般職員とは全く違うというエリート意識を持っている者がほとんどであり、また、そうしたキャリア官僚の中には、一部とは言え、自分たちは他の人間とは違うと、あからさまに見下すような態度をとる人間がいるということだ。実際に私は、こうした一部のキャリア官僚が、他人の人間性を全く否定するかのような言葉で部下を罵倒する現場に何度も遭遇したことがあるのでわかるのだ。 では、そのような傍若無人の態度を取って、職場で問題にならないのか。通常、このような暴言が問題になるのは、極めて稀(まれ)だと言っていい。というのも、そのような鼻持ちならない一部のキャリア官僚は、普通、上司には精一杯ゴマをすり、気づかれずに済むことが多いので、職場内で問題になることはまずないからだ。つまり、上司や組織からそうした暴言が注意されることは一切ない。その代わり、常に部下たちのアフターファイブで愚痴の対象にはなる。どれだけノンキャリたちの酒の席での話題になっていることか!霞が関の官庁街 まあ、役所は2年程度で人事異動が行われるのが普通だから、1年もすれば自分が異動するか、問題の上司が異動するかと思い、我慢することが普通だ。最悪2年たてば、どちらかが少なくとも変われるであろう、と。 しかし、事実は小説よりも奇なり。私の場合、福岡にある出先機関のある課に2年間勤めた後、東京にある出先機関に異動になったことがあるが、なんという偶然か、私の上司である部長も同時に東京の出先機関に異動になり、再び私の上司になったことがあったのだ。まあ、そのときの上司は格別暴言を吐くタイプではなかったので、問題はなかったが。 ところで多くの人は、豊田氏の東大卒、厚労省入省、そして、ハーバード大大学院留学という経歴をみて、なんと華麗な経歴で、超エリートなのだと思ってしまうに違いない。これまでトントン拍子で人生を歩んできて、挫折など経験したことがないと勝手に思い込んでいるのではないだろうか。 彼女が実際に挫折を経験したことがあるかどうかは知らないが、一般論として言えば、財務官僚(大蔵官僚)といえども、全く挫折を経験したことのないという人がどれだけいるのだろうか。本当の意味での超エリートというのはほんの一握りではないかと思う。 私はかつて環境庁に課長補佐として出向していたことがあったが、そのときに、私と同じように大蔵省から課長が出向してきたことがあった。その課長に、勝手な想像で「課長は今まで挫折など経験されたことがないのでしょうね」と言ったことがあるが、そのとき「いや、高校受験で志望校に落ちた経験がある」と言われて驚いたことがある。 ただし、その後、東大法学部を卒業し、大蔵省に入省した訳であるから、世間の尺度からすれば超エリートなのだが、それでも途中で挫折を経験したことは事実なのだ。元官僚議員は「挫折組」 それ以外にも、財務省OBで有名な方にもいろんな経験をした人がいる。例えば、かつて通貨マフィア(財務官)として名を馳せた行天豊雄氏(東京銀行会長、国際通貨研究所理事長を歴任)も、最初は東大の入試に失敗して早稲田にいったん入学した。その後、再び東大に入り直しているし、政治家の中山恭子氏(日本のこころ代表)は、東大文学部を卒業後、外務省勤務(外務省キャリアではない)を経て大蔵省に入省している。 また、たとえ中央省庁にキャリアとして採用されても、多くは事務次官や局長になるコースを外れた道を歩んでいることが年を経るにつれ明らかになるので、ある種の挫折感というか諦めを感じるのである。そして、事務次官や局長になる可能性が小さいなと自覚するようになると、中には国会議員になる道を目指す者も出てくる。 中央省庁勤務を経て国会議員になるといかにも華麗な道を歩んできたかの印象を抱く人が多いと思うが、今述べたように、次官や局長になる可能性がないと気が付いたから国会議員になったという人も多いのだ。だから、役所ではかつて、事務次官になる方が大臣、ましてや政務次官になるよりも難しいなんて言われたものなのである。このように一般の人々の高級官僚を見る目と、彼ら自身がどう感じているかには相当のギャップがあるのが現実なのである。 そういえば、今回の豊田氏の不祥事の報道を聞いて、ひどい上司は役所だけでなく民間にもいる、なんて話をかつて役所に出向していた人から聞いたことを思い出した。ある都市銀行の支店での話であったが、ノルマを達成できなかった行員さんたちが机の上に正座させられることがあった、と。今から28年ほど前の話なのだが、日本社会が未だに似たような状況にあることを再認識してびっくりした次第だ。 こんなことを言ってはやや言い過ぎになるかもしれないが、安倍総理の財務省いじめも似たような性格を有するのではないのか?如何に財務省が官邸からいじめられていたかは元財務官僚の山口真由氏が証言している。東京・霞が関の財務省 私の経験からすれば、日本にはそういった職場のいじめっ子である上司には逆らわないという文化があるように思われる。逆らっても逆に問題をこじらすだけだからじっと耐えているしかないのだ、と。私は、かつてそのような類の上司に遭遇したことがあるが、そんな輩(やから)は、こちらが下手に出るから益々恫喝的な態度に出るのだ。だから、偶には毅然として反抗することも必要なのだ。 超エリートたちは、まさか部下が反抗するなんて思ってもいないので、実際に反抗的な態度を取られると対応に困るのだ。もちろん、そうして反抗するからには辞職も辞さない覚悟が必要だが、その代わり相手が態度を変えるかもしれないのだ。 ひと悶着が起きる可能性があるが、いじめられて精神的にダメージを受けるくらいなら、その方が、自分のため、そして職場のためにもなり、多いにプラスになると今でも信じている。 今回、音声データを公表した元秘書を悪く言う向きもあるが、そのような意味で私は決して悪い行為だとは思わない。豊田氏にとっても、それをきっかけにして反省することになるならば、本当に良い薬であろう。

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    鎌田實医師 大西英男議員の失言に対して言いたい2つのこと

     受動喫煙対策強化の法案提出は先送りされたが、議論百出の状態だ。もっとも大きな話題となったのは、5月15日に開かれた自民党厚生労働部会で、大西英男・衆議院議員が、「がん患者は働かなくていい」、とヤジを飛ばしたことだろう。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、大西議員の言動に対して、2つの言いたいことを述べる。* * * 受動喫煙の防止策を検討していた自民党厚生労働部会で、失言の多い議員がまた失言した。「(がん患者は)働かなくていい」 多くの食堂や居酒屋では、受動喫煙の対策がすすんでいない。受動喫煙の健康に対する害はよく知られているが、その害にさらされながら働くがん患者の実情を訴える三原じゅん子議員に対し、大西英男議員がヤジを飛ばしたのだ。自らの発言が、がん患者や元患者の気持ちを傷つけたとして謝罪する自民党の大西英男衆院議員=5月22日、東京・永田町の党本部 全国がん患者団体連合会は、がん患者の尊厳を否定しかねない、と抗議文を出した。大西議員は、「がん患者らの気持ちを傷つけた」として謝罪。しかし、発言は撤回しなかった。喫煙可能の店で、無理して働かなくていいのではないかという趣旨だったと言い訳した。この大西議員の言動に対して、2つ言いたいことがある。 一つは、働かなければならないがん患者の実情をまったく理解していないということだ。がん患者は「患者」であると同時に、自分や家族を支えていく「生活者」である。最近は、親になる年齢が高齢化していることに伴って、小さな子どもを育てながら、治療を受けている人も多い。生きるためには治療が必要であるが、生きれば生きるほど治療費がかかり、子どもや家族の生活を圧迫していくという状況に苦しむ人もいる。そんな厳しい状況で、働いているがん患者がいることを想像してほしい。 二つ目は、喫煙の害を甘く考えていることだ。これは医師としてどうしても言っておきたい。 タバコは、がん患者だけでなく、すべての人の健康によくない。たとえば、タバコを吸う男性は、吸わない人に比べて、すべてのがんでリスクが2倍高い。食道がんは3.3倍超、肺がんは4.8倍、膀胱がんや尿路がんは5.4倍にも跳ね上がる。 がんだけではない。脳卒中や心筋梗塞は1.7倍、肺気腫や高血圧も喫煙が影響しているといわれている。大西議員よ、額に汗して働け さらに問題なのは、受動喫煙だ。タバコの副流煙には、健康を害する物質がたくさん含まれているといわれ、喫煙者の周りの人たちに対する健康被害が明らかになってきた。 厚生労働省の研究班は、受動喫煙により年間1万5000人が死亡していると発表している。また、肺がんでは、夫がタバコを吸っているだけで1.3倍、脳卒中も1.3倍高まる。 医療費を抑制するためには、喫煙率の低下や、受動喫煙防止はとても重要なカギとなるはずだ。だが、憲法で保障する「幸福を追求する権利」などを持ち出して、どこでもタバコを吸えるようにしたほうがいいという愛煙家や、タバコ産業のロビー活動がおそらくあり、なかなか実現しないのだろう。 小規模の飲食店では受動喫煙の防止策を徹底すると、客が減って収入が落ちるのではないかと心配しているようだが、WHOの調査では、逆の結果が出ている。完全禁煙を実施したら、むしろタバコを吸わない人たちや家族づれが安心して来るようになり、利用者が増えたという調査も出ている。 日本は、WHOの「たばこ規制枠組条約」の締約国となっている。アメリカの半数以上の州や、カナダ、ロシア、オーストラリア、南米諸国、韓国などが、第8条の「飲食店等を含む屋内施設を完全禁煙化することによる受動喫煙の防止」をすでに実現している。日本は、世界でも遅れているのである。 改正がん対策基本法では、患者が仕事を続けられるように、企業に配慮を求める施策がつくられた。当然、がん患者が安心して働けるように、きちんと受動喫煙を防止することは必須である。 本当は「あなたこそ働かなくていい」とヤジりたい気持ちを抑え、大西議員が額に汗して働くべきことは、自民党の先頭を走って、病気のために仕事を続けられなくなったがん患者が安心して働けるような社会にすることである。それが、国民全体のためにも働いたことになるはずだ。関連記事■ 「メンソールを吸うとEDになる」説 科学的根拠ナシ■ 習近平喫煙写真出回る 中国禁煙キャンペーンに反発との説も■ たばこ値上げで吸わなくなる人急増し税収500億円落ち込むか■ たばこ副流煙で肺がんになる人「4万人に1人」と武田邦彦氏■ 50歳以上の男性喫煙者が血尿になったら膀胱がんの疑いもあり

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    自民若手の連続不祥事 選挙が楽でカネと暇ある環境が一因

     ゲス不倫の宮崎謙介前代議士、路チューの中川郁子氏、金銭トラブルの武藤貴也氏……。不祥事続出が問題視されている自民党の2012年当選組の新人議員(武藤氏は離党)。自民党が大敗した2009年当選組(小泉進次郎氏など4人)と比べると、国会質問の数でも大きく劣り、政治キャリア、政務能力の“劣化”が問題視されている。 宮崎氏が国会で質問をした回数は1年間でわずか2回。下積みの努力がない分、宮崎氏は「育休宣言」のパフォーマンスで手っ取り早い知名度アップを図ろうとした。政治家として拙劣すぎる。村上正邦・元自民党参議院議員会長はこう憤る。 「今の2回生はどうしようもない奴らばかりだし、それを厳しく指導する先輩もいない。かつても自民党の議席が多い時代はあったが、新人なりに質問させてくれと頼んで先輩から『10年早い!』と怒鳴られ、それでも食い下がってチャンスを掴んで、その1回の国会質問に思いを込めていた。本当に情けない」2015年8月、未公開株をめぐる金銭トラブルで自民党を離党、記者会見に臨む武藤貴也衆院議員(斎藤良雄撮影) そんな危機感も当人たちには届いていない。2012年組の大半は2014年の前回総選挙も楽々当選で2回生になった。そうなると、地元活動のための「金帰火来」(金曜に地元に戻り火曜に上京)を次第に怠り、「土帰日来」で地元後援者の目が届かない東京に長く滞在し、「ハナ月~ハナ金」を楽しみたくなる。 その舞台の一つが「議員宿舎」だ。臨時国会召集が見送られ、若手議員にはますます仕事のない“バカンス”となっていた昨年秋から年末にかけて、東京・青山の衆議院議員宿舎の一室では夜な夜な嬌声が上がっていた。青山宿舎は繁華街の六本木から目と鼻の先。部屋の主は六本木で飲み歩くことから「ポンギ組」と呼ばれる2012年組の議員だった。「部屋に呼ばれた人によると、中には数人の水商売風の女性と同期の議員たちがいて『相席居酒屋かよ』という状態。一緒に飲まないかと誘われた議員もいた。同じ部屋で何日も続いたのでたまりかねた近隣の議員から苦情が出ていた」 そうした苦情もあって騒音は止んだというが、「外で同じようなことをやっているのでは」(同前)といわれている。議員合コンの成果は上々? 2012年組は独身議員が多く、議員秘書や衆院事務局の若い女性、政治部の女性記者などに声をかけた合コンが頻繁にあるとの情報も多い。 議員合コンに出席したことのある女性秘書は、「中には感じのいい方もいましたが、官僚出身のあるセンセイは『僕はこれまで女性にフラれたことがないんだよね』とかいいながら、自分では連絡をせず一緒にいた男性を通じて『後で会いたい』と誘ってくるんです。何か男らしくないなとヒキましたね」と打ち明ける。 ただ、政治とは違って、こちらの2012年組の成果は上々のようだ。「ある30代の2回生は美人で評判の先輩議員の秘書と噂になり、“手が早い”と周りの同僚にやっかまれていた」(大手紙政治部記者) 女子アナを射止めた議員も少なくない。辻清人・代議士はNHKの出田奈々アナウンサー、日銀出身の小倉将信・代議士は2013年にテレビ朝日の島本真衣アナウンサーとゴールインした(2015年に離婚)。「スポーツ選手や芸能人ならともかく、国会議員が女子アナと結婚なんて私らの世代には考えられなかった。全員がダメだとは言わないが、今の若手は自分がタレントか何かと勘違いしている」 とは自民党ベテラン議員の述懐だ。小人閑居して不善を為す──安倍自民党の若手の不祥事が止まらないのは、「国会で仕事はなく、選挙は楽、そしてカネと暇はふんだんにある」という恵まれすぎた環境にある。それが安倍一強政権の力の源泉なのだから空恐ろしくなる。関連記事■ 自民若手 役人が作った法案通す委員会数合わせの採決要員に■ 細川氏出馬宣言に自民党色の緑ネクタイで臨んだ小泉氏の真意■ ベレー帽の元女性議員長谷百合子氏 ゴールデン街でバー経営■ 石破茂氏 解散決定時に国会内で使用制限の携帯メールしてた■ 丸川珠代 三原じゅん子の自民党内での台頭に愚痴をこぼす

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    「豊洲はダメ、ダメ」都民ファーストが苦しむ小池劇場第二幕の呪縛

    都知事、小池百合子氏をテレビで見ている人はそう感じているらしい。実は「都民ファーストの会」という地域政党も小池氏そのものではないか。飾り方も上手いし言い回しもなかなかだ。ただ、中身は何なのか分からない。都民ファースト=小池百合子、この図式で始まった小池劇場の第二幕、それが都議選だが、いったいどうなるのか。 加計学園問題が都議選に影を落としている。都政で小池百合子氏が進める「見える化」改革が国政の隠ぺい体質を浮き彫りにしている形だ。「そんな資料はない」「首相の指示はない」と総理、官房長官が答弁する傍らで、官僚の前文科次官が「資料はある」「天の声もあった」と場外メディアで真っ向から反対のことを言う。事実はひとつのはず、いずれかが嘘をついている。ただ、政権側が再調査も証人喚問もことごとく拒否し続けていたら、国民に隠ぺい体質と映ったのか、安倍政権の支持率が急落した。そこで、あわてて再調査すると発表する顛末だ。 この動きを逆手に、「オッサン政治」「忖度政治」と小池氏は街頭でボルテージを上げている。「いつ、どこで、誰が」の犯人探しで「都政の見える化」を図ってきた自信からか、国の「閉じた体質」を徹底的に批判、自民政治の闇を際立たせる戦略だ。都民ファーストと言いながらメディアファースト、選挙ファーストへ傾いているが、そこは横に置いといて、都政の見える化に対し国政の隠ぺい体質を際立て自民を責め立てるのが小池氏だ。 もとより、自民も黙っていない。この約1年に及ぶ小池都政、「問題提起はよいが、問題解決ができない」、「決められない知事」批判を強める。この両者、どちらの主張も一面の真理だが、いずれこの都議選は「攻める小池」VS「守る自民」の攻防の様相にある。「希望の塾」の第1回都議選対策講座で、あいさつする小池百合子知事=2017年1月、東京都千代田区 ふつうの地方選と違い、首都東京の都議選には必ず売り物が出る。今回は「都民ファーストの会」という売り物。昨年夏の都知事就任後、小池ブームのなか小池塾ができ、小池新党ができた。今回、その小池新党から48名(6月1日時点)もの大人数が立つ。自民60名、共産38名、民進24名と真っ向勝負の形だが、本当に中身のある政党なのか。 包装紙に包んだままだと、中身がどんなものか分からない。お中元だとうれしく受け取るが、果たしてどんな代物か、味はどうか、もらう時ドキドキする。今の段階で、“都民ファースト”という小池新党は、包装紙に包まれたお中元のようなものではないか。この地域政党は何をやりたいか、どんなメンバーか、誰も食べたことがないから分からない。ただ、小池さんが「おいしいですよ!おいしいですよ!」と毎日セールスに回っているから、そうかなと思う人も結構いるようだ。メディア戦術に長けた小池氏らしい戦略だ。 もっとも政治とカネで都知事が相次ぎ辞職した後だけに、「何かを変えて欲しい」という空気が充満していることは事実。その空気(風)を満帆に受けて小池丸は航行中だ。世論調査で「都議会第1党をも伺う勢い!」という見出も散見するが、果たしてホントなのか。 公約の「東京大改革」という大仰な表現とは裏腹に、やっていることは意外に細かい。豊洲移転、五輪施設の見直しなど「負の遺産」とされるこれまでの事案を掘り起こし、そこでのムダ遣い、隠し事、不透明さを事細かく指摘する。「いつ、どこで、誰が決めたか」式の犯人探しがメイン。自民党都連をブラックボックス、自民長老を都議会のドン、石原都政を無責任体制と呼んできた。政治ショーに明け暮れる小池都政 敵をつくって守旧派、抵抗勢力、悪玉に仕立て、一方の自分は正義、改革派、善玉、都民ファーストだと主張する。このやり方を政治マーケティングというが、15年前そして2年前に小泉純一郎の郵政解散、橋下徹の大阪都構想に使われた手法と類似している。 ここまで小池氏に敵と指名されたのは森喜朗(五輪組織委会長)、内田茂(元自民都連幹事長)、石原慎太郎(元都知事)の3氏だ。次は誰かいるか。もう誰もいないかも。そこで今度は「古い都議会(守旧派)」を敵にすえ、新しい都議会に変えよう!(改革派)と訴える。この間、全ての議案に賛成し何の抵抗もなかった自民を敵だという。論理に矛盾があるが何が何でも敵がいないとこの手法は成り立たず。この手法はそのうち破綻する。百条委員会で宣誓書に拇印を押す石原慎太郎元都知事=2017年3月 旧自公体制を切り崩し、公明を自陣に引き込み、都民ファーストと合わせて127議席の過半数(64以上)を制する、これが小池氏の戦略だ。あたかも都議選の勝利を都政改革のメインのように仕立て、豊洲移転も五輪施設見直しもすべて政局化しワイドショーに仕立てるこのやり方。果たして、このやり方が都民のためになっているか。誰もが認める点は小池改革が都政への関心を高めたことだろう。 だが一方で、五輪準備は1年も遅れこの先の展望も危うく、豊洲移転の延期で都民はすでに100億円近いカネを新たに費消させられ、本来業務の都民向けの仕事は総じて停滞気味、組織全体及び都庁官僚に活気が出ていない。「ただ騒がしく他人を叩くだけのワイドショー政治」「空疎なスタンドプレーだけを繰り広げる『小池劇場』」(有本香『小池劇場が日本を滅ぼす』)といった痛烈な批判もある。 2020五輪を含め、いま大都市東京が置かれている状況は、そんな政治ショーに明け暮れている暇があるのか、冷静にみると大いなる不安を感ずる。もとより、政治とカネで失墜・混乱した都政を収拾し、「閉じた都政」を「開いた都政」に変えようとする、この1点でみる限り、小池改革は高く評価してよい。筆者も「60点」の及第点をつけている。 では、都民ファーストという政党をどうみるか。その点、筆者はどうしても触れておきたいことがある。少し古い話だが、竹下内閣のころ、ふるさと創生がブームだった。過疎からの脱却!を合言葉に当時の3300市町村へ一律に1億円ずつ配った。地方創生の奔(はし)りだが、各地では金塊を買ったり、花嫁探しに渡航したり、委託でふるさと創生計画をつくったりと忙しかった。そんな中、小さな町村で流行ったのが観光農園づくりだった。 ただ、「観光農園」というネーミングでは何の目新しさもなく、客も来ない。そこで受託シンクタンクは考え抜いた。そうだ!カタカナで攻めよう、「フルーツパーク!」と呼び勝負に出ようと提案。すると、町村長の多くがワッと飛びついた。この話を噂で聞いた町の人々は、わが町にフルーツパークができる!あたかもニューヨークのセントラルパークでもできるのかのように浮足立った。その後がどうなったか、誰も検証していない。耳触りのいい「都民ファースト」 政治でもこの種の話は何度もあった。「都民が主役」「都民参加」「国民生活が第1」。このフレーズは理念としては正しい。だが、もうこれでは売れない。有権者は“ウッカリ1票、ガッカリ4年”を嫌というほど味わったから、もう騙されない。そこで目くらまし。日本人はカタカナに弱い!そこを攻める。「都民が第1」を「都民ファースト」と呼ぶ、するとワッ~と売れる。苺狩り園をフルーツパークと呼び代えただけで客がどっと来るのと同じロジックだ。「都民ファースト」といえば耳触りもよく、何か新しいコトが始まるように期待する。そんな印象を持つが、どうだろうか。 私たち庶民の悲しい性。世にあふれる新商品、新サービスもこの種の罠が多い。商品名はマーケティングの肝、ネーミングは大事だ。ただ中身がないとすぐ飽きられる。もちろん「都政に既定路線はない」と断言、都政の継続性を否定し、全てを自分の色に塗り染めようとする小池氏だから、何かが始まるかもしれない。豊洲移転も五輪施設の見直しも、既定路線化した「決定」をことごとく覆してきた人だから…。 ただ、包装紙に包まれた都民ファーストという新党も少し中身を覗くと、そのメンバーにガッカリする。同党の売りは新人の小池塾出身者らしいが、立候補メンバーの半数以上は移籍組、落選可能性が高いと言われた既成政党の面々。元民進系15名、元自民系10名、みんな系3名といった議員ら移籍組がズラリ並ぶ。移籍の理由はいろいろ飾って言うが、ホンネは小池ブーム(風)に乗って議員であり続けることが主たる理由ではないのか。 新味があるとすれば、小池氏が好き、小池氏と一緒に仕事をしてみたいと集まった小池政治塾から選んだ20名だろう。小池氏もここを売りに「素晴らしい人達」と宣伝する。ここは額面通り受け止めよう。ただ小池氏同様、メディアファースト志向が強い点がどうか。都政に役立つ仕事ができるのか。ここが試されるが選挙戦を通じて見えるかどうか。ともかく、こうした移籍組と素人組という異物混合集団が都民ファーストの会。どんな音色を奏でるのか、混声合唱団まがいの地域政党・都民ファーストの動きを注視しよう。都民ファーストの会の政策発表会見に出席した斎藤礼伊奈氏(左端)。中央は小池百合子代表=2017年5月 公約はどうか。「豊洲移転は知事(党首)の判断に委ねる」が一丁目一番地。それぞれの候補の自己主張は封印しろ、街頭演説の中身は党の了解を得ろ!と厳命が飛ぶとか。これって何なの。小池氏が都議会に絶対賛成の仲間が多く欲しい、議員は数だ、票だというならそれもありだ。しかし、少し減額したとはいえ待遇(報酬+政務活動費)は1議員年俸2千万円。これを払わされるのは都民だ。都議って議会の採決要員?そんな存在か。昔から選挙目当てで寄ってくる集団を「選挙互助会」と呼ぶ。これに当てはまらないか。 東京大改革!東京大改革!とオウム返しのように繰り返す小池氏。確かに世論調査で小池氏の支持率は60%近い。一方、地域政党「都民ファースト」は、得体が知れないのか20%レベル。このギャップを埋めようと党代表に乗り出し露出度を高めているのが最近の小池氏だ。シャカリキに街頭で「都議選で勝たせて下さい!」と絶叫している。 この地域政党モデルは大阪維新かもしれない。就任当初の口ぶりもそうだった。しかし、大阪府議会、市議会の自民系を真2つに割り改革派が脱藩し大阪維新の会という新党を創設。その志士軍団(議員集団)がめざすのは、大阪都構想(府市合体、司令塔一本化で強い大阪づくり)という大機構改革だ。国政まで乗り込み法改正にまで挑む。これと都民ファーストの会は全く違うのではないか。「犯人探し」の刑事都政 端的にいうと、小池人気を頼りに集まった政治の小池ファンクラブに近い。「改革」「改革」というが何をどうしたいのか、パッとしない。ただ党首と同じように、外向けの顔はよく、化粧もうまい。 冒頭、筆者は都民ファーストの会=小池百合子と定義した。その都知事としての小池氏を支持する理由は①改革の姿勢や手法(42%)、②これまでの知事よりもよい(40%)、③人柄や言動(12%)がよいという(世論調査、朝日新聞6月6日)。ただ、政策となると支持率は5%程度(同)。これは非常に分かりやすい数値だ。小池都政の性格をハッキリ見抜いている。都民ファーストの会の公認候補者とフォトセッションに臨む小池百合子都知事=2017年6月 小池氏に対する期待は都庁大改革であって政策大転換ではないということ。いまや得意技になった小池氏の改革手法。「いつ、どこで、誰が決めたか」、その犯人を突き止めること。懲戒処分、証人喚問まで仕掛ける小池氏の都庁大改革、これを筆者は「刑事都政」と呼んでいる。 知らされない豊洲市場の地下空間、膨れた五輪施設経費、汚染された豊洲用地の法外な買収交渉、これを「誰が決めたか」執拗なまで犯人探しをする。それをワイドショー化し、メディアにさらす。これが「都政の見える化」の神髄。正確にいうと、見える化ではなく「見せる化」だが。世の中、『刑事コロンボ』や『相棒』など刑事ドラマの視聴率は高い。それと小池の刑事都政も同じ。なぜなら犯人探しが面白いからだ。 しかし、豊洲市場に地下空間をつくった例でいえば、「なぜ、そうしたか」という本質を説明していない。「誰がそうしたか」という犯人探し以外、何も語られていない。意図的かどうか知らないが、これは本質を外している。責任の所在を明確にすることは大事だが、それ以上に盛り土をせず地下空間をつくったのは建築工作物の耐震性、強度を重視したからではないか。建築学会、土木学会では常識とされる。それが仮設ではなく、安全を基本に50年以上使う常設の永久構築物をつくる建設態度ではないのか。なぜ、説明しない。 都民ファースト、小池氏の大看板は「東京大改革」だが中身は何か。氏が都知事就任後初の都議会(昨年9月)で「都政を透明化し、情報を公開し、都民と共に進める都政の実現」と説明している。たぶん、これだろう。とするなら、この約1年の都政は正確には東京大改革ではなく、「都庁大改革」というのが正しい。地域政党の公約もその点を正せ。 筆者などの都政経験者からすると、真の東京大改革なら大いに期待したいもの。当初、大仰なこの「東京大改革」という言い方から直観的に思ったのは、この先の「老いる東京」「劣化する東京」をどうするか、首都直下地震への防災・減災対策をどうするか、などの政策問題の大転換かと思った。 しかし、ふたを開けてみたら違って、過去の「負の遺産」をほじくり返しての真相解明だった。東京大改革という表現で、東京を大きく変えそうな期待感を持たせるマジックなら、その罪は重い。期待が落胆に変わる日は必ずやって来る。公約は舛添都政の焼き直し 都民ファーストの公約は、舛添前都知事がつくった長期計画の焼き直しに近い。ただ上手にカタカナで化粧直しをしている(以下、同党PRESSから引用)。 東京大改革は①ワイズスペンディング(賢い支出)で都民ファーストを徹底②開かれた都政・都議会を実現③ダイバーシティを実現する福祉支援④スマートシティ東京で都市間競争に勝ち続ける⑤セーフシティをめざし都市環境を整備、⑥万全の体制でオリンピック・パラリンピックを成功に導く⑦多摩・島嶼を魅力ある地域にしていくが柱。個別事業で目新しいものは無電柱化ぐらい。あとは既存事業の羅列だが、ここでもやたらカタカナでライフワークバランス、バリアフリー、イノベーション、ベンチャー、レガシープラン、クリーンエネルギー、などと化粧直しをしている。 党の公約だから、これをどうこういうつもりはないが、このにわか仕立ての公約を各候補者はどれだけ消化して語れるのかだ。42選挙区ごとに選ばれる都議は都政全体に加え、地元の個別具体の問題解決も迫られる。党の統率が取れなくなるから余計な事は言うな!と厳命されるというが、それは間違いだ。率直に候補者本人の言葉で語る公約が聞きたい。そこの力量を推し量って当落を決めていく。「全て小池さんの言う通り」では話にならない。 「豊洲移転は都知事(党首)の判断に委ねる」、これが都民ファーストの公約だ。こんな主体性なき、政策判断のできない政党が都議会の多くを占めたらどうなるか。マスコミなども豊洲移転を争点にすべきだと囃し立てるが、いったい何を争点とイメージするのか。 というのも、豊洲か築地かの議論はこの20年余、都議選のたびに争点化してきたが、しかし、移転先はもう決着している。市場も完成している。それ以外、何を争点化するのか?東京都(自治体)は昨春「豊洲市場移転条例」を制定し、豊洲移転を公式決定している。豊洲市場=2017年2月、東京都江東区(本社チャーターヘリから) ただ、小池氏の都知事就任で昨秋11月7日の移転日を執行上の都合で延期している状態。この3月まで豊洲移転の是非を都議選で争点化すると公言していた小池氏だが、世論調査で「豊洲移転をめざすべき」が55%と、「やめるべき」(29%)(4月5日朝日新聞)を大きく上回るなど潮目が変わると、突如、争点から外すと言い出した。小池寄りの都議会公明までが移転派に転向。これなどメディアファーストの一面をよく表している。 筆者はこれまで6千億円も投じて作り上げた近代装備を具備したこの豊洲市場は、追加の汚染対策工事を速やかに施したうえで有効に使うべきだと述べてきた。しかし、事態は膠着へ。専門家会議、市場問題PT、市場のあり方戦略本部と幾つも検討チームをつくり、「総合的な判断」をいつも口にしながら延々と伸ばしてきた。これは一体何なのか。  この種のプロジェクトを政争の具、選挙に有利か不利かで判断してはならない。もう市場はスイッチオンを待つばかり。行政には継続性もある。巷間もっともらしく伝えられる小池氏のブレーンらが主導する「築地市場再整備案」。これを取り上げるなら豊洲移転条例の廃止を都議会で決めてから始めるのが筋ではないか。手続きに従って粛々と進めていると小池氏は言うが、それは自ら設定した政治プログラムに沿って進めているだけだ。都という法人機関の決定を無視し、あたかも都知事がフリーハンドを持つ独裁者であるかのように振舞う、これでは行政は混乱し信用を失う。機関決定を逸脱する行為には、当然、不作為の行政責任が問われよう。都議会改革にこだわり過ぎの小池氏 昨秋以降、都知事が先頭に立って「豊洲はダメ、ダメ」と風評被害を全国にまき散らしてきた責任をどう取るか、どう事態を収めるか、争点というならそこではないのか。この種の独断専行の都政運営はこの先、小池都政のアキレス腱になる可能性がある。 都議選が近づき「決められない小池」批判が高まると、都議選に不利とみたか、告示前に豊洲移転にケリをつけるかのような言いぶりに変わってきた。「安全」「安心」「採算」の3つをクリアする対策を示し、移転延期を「解除する」ともいう。築地も併せて再利用するとも(本稿執筆時点では不明)。 しかし、元々このような豊洲移転問題を政争の具にする発想がおかしい。行政の最高責任者としての都知事は、基本的には豊洲市場に追加の汚染対策工事を速やかに施したうえで有効に活かす方向を考えるのが自然ではないか。設計規模が大きすぎるなら、他の市場の再編整備の拠点として寄せ集めて使うのもよい。 もっとも今、何もしないで豊洲を開場するのは芸がない。いろいろアイディアを尽くせ!例えば市場の新たな名称をつけるべくネーミングライツ(命名権)を民間に売り、もっと魅力的な広告塔に仕立て収入を上げる。役人任せの市場経営から民間企業を指名できる「指定管理者制度」に代え、大手の水産業者を市場長に選ぶなど市場経営全体の民営化を図るなど。いずれ、スピード感を持ってこの問題にケリをつけ、都市経営の視点からオリンピック時の大渋滞・混乱を避けるためにも環状2号線の道路建設を大車輪で進めたらどうか。 小池氏は執拗に都議会改革にこだわる。都議会のドンとか、ブラックボックスと敵視する。こうした見方を事前に刷り込んだ側近がいるようだが、それにこだわり過ぎていないか。都知事選の公約は「議会冒頭解散」だった。制度上できもしない公約をなぜ?それだけ都議会は怖いと見たか憎いとみたか、よく分からない。都議会の百条委員会で行われた証人喚問 今回、都民ファーストの公約は①議員の公用車利用の廃止(議長、副議長除く)②議員の条例提案を増やす、③議会基本条例をつくる、の3つだがこの程度が議会改革の切り札なのか。各地はすでに取り組んでいる。 もとより、この程度の改革すらもやってこなかったこれまでの都議会は怠慢だ。もともと都議会は大きすぎ動きが取れない。しかも自公体制のもと「動かぬこと、山のごとし」で、改革らしいことをしなかった。その点、現在の都議会は改革度でいうなら2周遅れ、全国ワーストワンに近い。そこにメスを入れようという点は評価できる。 ただ、公用車使用でいえば、知事、副知事、特別秘書、条例局長らの公用車使用には何も触れず、議員の公用車使用のみを廃止するという。この目線は何か。議会憎しなのか。都庁大改革で公用車使用を見直すなら、都議会と併せ知事部局の特別秘書、局長らの公用車も原則廃止したらよい。黒塗り車で朝晩遠方まで送迎する姿を都民が知ったら怒るはず。 議員提案を増やすというが希望だけでは増えない。各地でさんざん試みているが増えない。都民ファーストの公約もこのままだと都議選向けのお題目に終わる可能性が高い。どうするか。問題の本質は議員立法を支える仕組みがないということだ。都議会に「法制局」がないということ、これが致命傷ではないか。国は内閣法制局、衆院法制局、参院法制局と3つも法制局があり、立法活動を支えている。 そこで、こうしたらどうか。使途の評判が悪い政務活動費の半分を「法制局の設置・維持」費に充当して法制局を創設する。議員立法をサポートする費用に使ったらどうか。法制局に法科大院卒(専門家)の若者たちを専門委員(非常勤)として雇い、各会派が積極的に活用する。ふだん都議は条例提案の「問題意識をレポート」すればよい。それを他の法令や条例との整合性も見ながら専門家の視点で条文化するのが法制局の役割だ。政策の振り子が働いている都政 もちろん議員立法だけでなく、執行部の提案する条例の審査や予算の審議についても専門知識を生かして一定のサポートをしてもらえる可能性が高い。そうした中から将来、法曹資格を持った専門性の高い都議が続々誕生してくるかもしれない。これは日本の地方議会で初の試みになり、全国に与えるインパクトが大きい。こうした仕掛けをつくって議員立法を増やすというなら、都民ファーストの提案は評価されてよい。 もう1つ。議会基本条例の制定だが、もう地方議会の半分近くが制定済みだ。この制定自体を議論してこなかった都議会は改革が2周遅れ。都民ファーストがその制定を提案しているのは評価できる。ただ、どんなメンバーで、いつまでに、どんな中身にするのか不明だ。しかも、何のためにつくるのか。ヨソにあるからつくるという発想なら無意味。また議会基本条例をつくったからといって、それ自体が改革ではない。要はどう使うかだ。各地には制定後、一度も使われていない議会基本条例が山ほどある。 ただ制定過程こそが大事。各議員が議会のあり方、首長との関係、都民との関係、ガバナンスの役割を侃々諤々と議論し、そのうえで独自の議会基本条例に仕立てていかないと、仏つくって魂入らずになる。都民ファーストの提案はまだヨソの物まねのような印象が強い。 公約の議論とは別に、都議会の抜本改革案を示そう。この先、都議会を変えるなら年4回の定例会を廃止し、「通年議会」としたらどうか。すでにいくつかの議会で実施済み。年間100日に満たない登院日数。しかも、会期制では会期終了ごとに議会が開けなくなる。年4回の定例会を首尾よくこなせば、あとは議会活動をしなくてよい、こうした儀式型議会の時代は終わっている。例えば毎月第1週を定例会日とし本会議、各種委員会を開く。 それ以外の週に議員立法や会派の研究会を入れ闊達に議論する。決算委員会は事業仕分け、政策評価の絶好の機会。結果、登院日数が200日に及ぶかも知れない。それだけ「働く議会」に変えたら、都民のみる目も期待感も変わってくる。通年議会は事実上、知事の議会招集権を議長に移す改革にもなる。都議会改革の本丸は「法制局」をつくって、「通年議会化」し、「議員立法」活動の量と質を高めること、それが核心だ。 大きい都政の流れは、経済重視か生活重視か、ハード政策重視かソフト政策重視か、で政策の振り子が働いてきている。そうした歴史のうえに今の都政がある(下図参照)。 図:都政振り子の論理 小池都政で重要な点として「子育て支援・女性活躍」があるが、世論調査をみると、それ以上に「医療・健康・福祉・介護」、「防災・減災」が上位に並ぶ。どうもここを小池都政ではあまり重要視されていないのか、都民ファーストの都議選の公約にも前面に出ていない。この点が気になる。 この先、都政の透明化、行革などを打ち出し続けても、都民に役立つ都政になっているか、疑問符が付くかも知れない。現場を抱える市区町村長は揃ってそう見ている(日経調査、6月13日)。都政本来の仕事、それに応える戦略が見えないと都政は必ず行き詰まる。 現在の都政は、4期13年余続いた「石原都政」の残影を引きずったままだ。不良債権処理などから経済重視、ハード重視の都政に振り子が向いたまま、いま止まっている。 小池都政がこの状況に終止符を打てるか。都民ファーストという言葉を使う以上、都民が第1、生活者重視、ソフト重視の都政展開がイメージされる。図のような歴史の流れ、都政の課題からして、小池都政がやるべき政策は生活重視、ソフト重視ではないのか。特に「東京は豊かだ!」と皆が確信している間に、マンモス大東京の内部構造には大きな変化が起きている。人とインフラが老いる「老いる東京」問題だ。  少子化対策の待機児童問題と並び、高齢化対策の待機老人問題の解決は待ったなし。中長期には子供は減るから待機児童は減ろうが、待機老人は増え問題はより深刻になる。これへの対応を誤ると「東京崩壊」すら、危惧される。人口絶対減少と高齢者の急増する時代に入った東京の大都市経営、それは「老いる東京」問題の解決は待ったなしである。それは医療、福祉、介護、文化、教育、子育て支援などソフトな領域に止まらず、建設から50年以上経つ首都高、一般道、橋、上下水、地下鉄、地下道、公共施設などハードな都市インフラの劣化領域まで広範に及ぶ。これに正面から立ち向かうのが都政本来の仕事だ。「数」よりも「理」によって都政を制する 政策問題への期待感が低い小池都政とはいえ、2021年までの都議になる127名はこれを語らずにはその資格はない。空気のような「東京大改革」論、骨太の政策がないまま「東京大改革」という言葉のみが一人歩きし、中身が見えない。そこに中身を詰め込むような密度の濃い政策論争が展開できるかどうか。多くの都民はそこを見ている。都議になることが目的では困る、都議になって何をやるかだ。単なる小池支持か不支持か論争ではなく、「東京をどうするか」という中身の濃い政策論争を期待したい。都民ファーストの会の公認候補者とフォトセッションに臨む代表の小池都知事 終わりに都知事と都議会の関係について触れたい。小池都知事はこの都議選で議会に過半数の支持勢力をえて改革のエンジンを確保したいと再三述べている。 しかし、よく考えてほしい。というのも、自治体である東京都のしくみは国のような一元代表制(議院内閣制)ではないという点だ。都政は、議員と知事を別々に選び、双方が抑制均衡係を保つよう求めたのが二元代表制(大統領制)の骨格だ。政権与党の党首が首相になり、内閣を率いる国の制度とは全く違う。都知事は行政の最高責任者だから、本来は立法機関である議会とは離れた立場、公正中立の立場での都政運営を行う立場だ。 だが、いま都知事は、地域政党の党首になり、都知事(党首)が都議会で多数派を形成し、都議会を差配する。それが「よい都政」を実現する道だと主張する。果たしてそれは正しい方向か。単なる権力者、支配者の発想ではないのか。ひとつ間違うと、「会派あって議会なし」、小池派と非小池派という分断された都議会が誕生し、翼賛議会以外の何物でもなくなる可能性が大きい。知事傘下の小池塾生が多数派の都議会って何だろう。本来地方自治は政党制を前提には成り立っていない。何党が何議席取るか椅子取りゲームの選挙報道が続くが、それに乗じて「行き過ぎた政党政治」を都政に持ち込むと行政は大きく歪む。 都知事がこれだけ都議選に深入りした都政の歴史はない。都政を政党政治によって牛耳ろうという考え方もなかった。都議は会派云々の前に1人の議員として独立した存在だ。むしろ都議は、無所属を含め、様々な階層、地域、職業、性別から選ばれることが望ましい。 考えを統一された子飼いの知事分身のような議員集団が多くを占めるより、知事と独立した政治機関の都議会には、いろいろな考え方を持つ多様な127名の議員が議席を有し、それぞれの経験と見識をもって都知事と真っ向から真剣勝負をする。政党のしがらみなどなく、都民目線で修正すべきところは修正する、そうした正に「都民ファースト」の都議会が誕生することが望ましい。都議会は民意を鏡のように反映する政治機関である。 ほっておいても首長(知事ら)が2期、3期と続くにつれ議会もオール与党化しがち。小池氏は最初からそんな方向を志向すべきではない。むしろ、小池都知事は都議会としのぎを削るような論争を通じで政策を磨いたらどうか。その資質は十分備えている。「数」よりも「理」によって都政を制する、それが都民主役の都政運営への王道ではないか。

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    【若狭勝緊急寄稿】小池百合子に政治生命を賭けた我が真意

    若狭勝(衆院議員) 昨年の都知事選において、私が自民党東京都連の指示に反し、小池さんを応援したのは、東京都政を含めた政治全般の今後のあり方を考察するに、小池都知事の誕生が極めて重要であると思ったからです。 これまで日本の政治は、いわゆる「しがらみ政治」が脈々と続いてきています。 もともと、日本社会では、「黒白の決着をあえて付けないとか、互譲・妥協・忖度(そんたく)・根回しで物事を動かす」などの曖昧な文化が受け入れられてきた面があるため、「しがらみ政治」がそれほど糾弾されずに続けられてきました。 ここにきて、法律の分野では、明治時代に制定された、民法の一部(債権部分)が120年ぶり、刑法の一部(性犯罪部分)が110年ぶりに改正されることになりました。時代の変化で、明治時代の価値観が法律面では一部修正されたのです。 にもかかわらず、政治分野では依然として「しがらみ政治」が続き、国政においても「しがらみ政治」を背景に、いろいろな問題が次から次へと噴出しています。 そもそも、「しがらみ政治」というのは、(1)利権構造になじみ、特定の人・団体の利益の便宜供与に結びつきやすい(2)決定過程のいわゆる「見える化」に乏しく、透明性を遠ざけ情報公開に消極である(3)税金の使途についても、都民・国民目線に立たず、無駄が多く、コスト意識が少ない(4)議会が活性化せず、議員がなれ合い・ぬるま湯政治につかっている(5)旧来体制の維持に強い価値観を置き、新しいシステム等の提言には耳を傾けない傾向 などの特徴を有し、悪弊・弊害をもたらすことになる政治の総称です。  私は、特捜部検事などとして、これまで長きにわたり政治家の不正・汚職を追及する中で、まさに「しがらみ政治」がその原因であると思い続けてきました。 「しがらみ政治」のもとでは、素朴な正義感が後退し、「良いものを良い」、「悪いものを悪い」と言えない雰囲気が作り出されていきます。 例えば談合です。税金の不要な出費につながるものの、かつては「必要悪」と言って是認され続けてきました。私も含め、談合の刑事責任を追及し続けたこともあり、今では、税金の無駄遣いとの考え方が共有されるようになりました。東京都知事選で小池百合子氏(左)の応援に駆けつけた若狭勝衆院議員=2016年7月25日、東京都三鷹市(荻窪佳撮影) こうした「しがらみ政治」から脱却し、それに終止符を打つ。利権構造を絶ち切り、公正でクリーンな政治、清濁併せのむ政治からの脱却、透明性を確保し、情報公開を格段に進める政治、都民・国民目線に立って税金を使うことを第一に考える、などの政治指針の確立が今、求められています。 特に価値観が多様化し、各人の価値基準も異なるようになった今こそ、多くの人が共有できる、そうした政治指針が必要とされるのです。そうした新たな枠組みを構築できるのは、「しがらみ政治」からの脱却を目指す小池都知事です。 また、日本は国連から、毎年のように「女性差別の撤廃が進んでいない」という不名誉な勧告を受けています。小池都知事が、女性として、東京オリンピック・パラリンピックを華々しく開催することによって、日本の女性の役割・活躍が相当進んでいるということを国際社会にアピールする絶好の機会になると思っています。 上述の理由等から、小池都知事を応援しているのです。女性の象徴的リーダーとして 外国の予算規模と比較しても、東京は一つの国のようなものです。してみると、都知事は、一つの国の大統領のようなものです。 そうした枠組みの中で、小池都知事には、持ち前の創造力、洞察力、即断力、実行力を発揮してもらい、強いリーダーシップで日本社会の在り方を変革してもらいたい。ちなみに、創造力と実行力を有する小池環境大臣がいなければ、クールビスがこれほど夏の男性の服装を変えることはなかった。また、洞察力・即断力を有する小池防衛大臣がいなければ、防衛省の天皇と言われた事務次官を退官に追い込み、逮捕起訴されることもありませんでした。 上述の「しがらみ政治」に終止符を打ち、利権構造に鋭くメスを入れ、透明性・情報公開を強力に推進し、都民目線に立って税金の使途を考えるなどを実践していただくことはもとより、積極的な施策として、東京都を世界の中で輝き、そして「わくわく」させ、東京ブランドをさまざまな分野で作り出していく。さらに、女性の象徴的リーダーとして、今後日本社会の活力となり、女性にかかわる諸問題を確実に解消していただきたいです。 今回の都民ファースト公認候補者は、年齢層・世代が異なり幅広い意見が集約できるだけではなく、何よりも、その保有資格、スキル、経験、専門性にそれぞれ秀でている人が多いのです。 実は、これまでの都議会では、議員自らが条例案を作成し、議会に提出する形での条例制定が極めて少なかったです。自民党所属議員が数多くいながらも、全くお寒い限りでした。都民ファーストの会の政策発表会見に出席した斎藤礼伊奈氏(左端)。中央は小池百合子代表=5月23日、東京都新宿区の都庁(佐藤徳昭撮影) 議員自らが作成した条例案を議会に提出し条例を制定するには、当該議員が、都民のさまざまな声を聞き取り、行政側では気付かない視点のもと、調査と各種法令の研究を重ねるなどのきめ細かさが必要となります。その結果、一人一人の議員活動が実り多くなり、議会における審議も活発化します。してみると、自民党所属の都議会議員が多くいる中で、長きにわたりそうした議員提出に係る条例制定がほとんどなかったというのは、驚きのほか何ものでもなく、そもそも自民党の都議会議員に条例案作成能力があるのかについて疑問符が付きます。また、まさにこの実態こそが「しがらみ政治」「ぬるま湯政治」の象徴と言えます。 都民ファーストでは、議員自らが作成した条例案を議会へ提出することによって、古い議会体質を変革していくことを目指しております。実際に公認候補(予定)者の各専門性に照らし、これが可能と思われ、今後は、東京都議会は都民のために見違えるように活性化すると思われます。 一般的には、男性よりも女性の方が「しがらみ社会」に染まっておらず、そのため、政治分野においても、女性の方が「しがらみ政治」の脱却に力を尽くせると思われます。 都民ファーストの公認候補(予定)者の女性の割合は約3割超であって比較的多いことも、「しがらみ政治」の脱却に向けた勢いが一層高まるものと期待できます。「東京が変われば国が変わる」 なお、二元代表制のもとでは、小池知事が代表を務める都民ファースト側の議員が増えれば、知事のいいなりになる議員が多くなり、議会が都政をチェックできないという批判をする向きがあります。 しかし、上述のとおり、なんと言っても、専門性・資格を有している者であれば、条例案を議会に提出し、制定するようになって議会を活性化するとともに、知事とは別の自らの視点・観点で行政をチェックする(例えば公認会計士の観点で都の予算・決算をチェックする等)ことが十分期待できます。 「東京が変われば国が変わる」。東京都は国の縮図です。東京都には過疎・人口減少が進んでいる地区や島もあります。同じ23区でも人口増と人口減の区があります。木造密集地区がある一方、タワーマンション建築地区もあります。 要は、全国各地域のそれぞれの特殊事情が東京都の中においても同じように併存しています。東京都がさまざまな工夫や特区制度を利用して、さまざまな問題・課題にモデルケースとして取り組み、それが効果的であれば、そのノウハウを全国の同じ特殊事情を抱える地域に伝えることができます。 昨今、地方創生・地方活性化の動向が強まっています。それ自体大切なことですが、地方と東京がいわば「VS」になってはいけません。財政が現時点において比較的豊かな東京都が率先し新たな試みを続け、その成功事例のノウハウを地方に伝授すれば、東京都と地方はWin-Winの関係になることができます。 安心安全のまちづくりも同じことが言えます。まさしく東京都は人口も多く犯罪発生件数も多いですが、これも23区の例をとれば、区によってその犯罪情勢や犯罪件数の推移も異なります。その理由と傾向を探ることで、その結果を区と同じ環境化にある全国の地区に情報提供することで、新たな安心安全まちづくりの指針となり得ます。東京都知事選。街頭演説する小池百合子氏(左)と若狭勝氏=東京都品川区(伴龍二撮影)  東京都選出の国会議員である本職としては、東京都の問題、それは、ひいては国の問題と考え、東京都の問題に係る解決策を探ることで、国全体にも良い影響を及ぼす、それに関わることで、本職の役割も一つ果たせると思っています。  今回の都議選は、重要な選挙と位置付けております。まさに上述のとおり、「しがらみ政治」をこのまま続けてしまうのか、あるいは「しがらみ政治」から脱却し、それに終止符を打てるかの選択の選挙です。 「しがらみ政治」に染まっていない「都民ファースト側の立候補(予定)者」に「しがらみ政治からの脱却力」を発揮してもらいたいと考えております。

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    失速する小池新党、「決められない都知事」の汚名を晴らせるか

    ことをどれだけの都民が認識していたであろうか。代表になろうがなるまいが、都民ファーストの会は小池氏の政党であることは自明の理であり、このことのインパクトはあまり大きくはないと思われる。小池人気に頼りきりなら独裁の危険も ともあれ、小池氏が政党を率いて都議選に臨むことが明確になった。このように知事が自ら政党を結成して、議会を支配しようとすることはあまり例がない。ただ、人気のある首長に特有の現象であるといってもよいかもしれない。橋下徹前大阪市長や、河村たかし名古屋市長などの例が記憶に新しい。他の首長は、政党の支持は受けているものの、あえて無所属として立候補し、議会との関係に一線を画すような配慮をしていることのほうが通例のように感じる。こうした理由をあわせて考えてみよう。 地方政治は、国政と違って「二元代表制」を採用している。すなわち首長と議会の二つの代表を住民が直接選挙によって選ぶことで、両者が互いにチェックすることで住民に寄り添った、よりよい政治を実現しようとするのである。議院内閣制を採用している国政では、衆議院と参議院の「二院制」によって、独裁的な政治にならないように互いにチェックすることでより民主的な政治の実現を目指している。二院制を採用する余裕のない地方自治では、二元代表制によってチェックしているといっても過言ではないだろう。 首長が政党を率いて議会の第一党を目指すことは、この二元代表制を否定することに他ならない。確かに、首長が自らの政策を実現するために、議会でも応援勢力を増やそうとすることは理解できなくもない。「決める政治」を実現するためには、もっとも合理的で確実な方法だからである。 しかし、一方で独裁に陥る危険性もある。小池氏は、今までの都政が、都議会自民党と自民党の応援する知事によって運営されてきたために、「頭の黒いネズミ」が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)してきたと批判することで、都知事選に立候補して都民の信託を得たのではなかったか。そうならば、都議会を自らの政党によって多数派を占めようとするのは、同じ轍(てつ)を踏むことにならないのだろうか。「都民ファーストの会」の東京都議選公認候補者向け研修会で講演する小池百合子知事=5月3日、東京都新宿区 知事は自らの政策を議会に説明して理解を求める。議会は、住民の利益を考えてより良い政策になるように議論する。こうしたプロセスが住民のための政策を策定し、実行することになる。自らの政党が議会の多数派を占めるようになれば、まして首長の人気に頼りきりの政党であればなおさらのこと、独裁のような体制になってしまうのではないか。本来の制度が持つチェック機能が、働かなくなる恐れがあるからだ。これでは「住民ファースト」ではなくなってしまうかもしれない。「豊洲」も判断しない都民ファースト 気になる点はほかにもある。これまでの小池都政で議会軽視の兆候が見て取れる。豊洲移転の延期や、東京五輪・パラリンピックの会場変更、組織委員会や近隣自治体との会場費などの問題を、議会に諮(はか)らず報告もせずに、決めてきたように思える。もちろん、すべてが悪いわけではなく、素早い決定が有意義であったものがないとは言わないが、こうした決定の際にも、二元代表制の認識が足りないと感じるものも少なくない。現行制度の利点を十分に生かしながら都政運営をしていただきたい。 また、これまでも述べてきたように、都政には解決しなくてはならない喫緊(きっきん)の課題が少なくない。二元代表制のもう一つの利点は、都議選が行われている間も知事は都政に専念できることにある。しかしながら、都議選にもコミットする、ましては代表として会を率いるということになれば、選挙運動に割かれる時間も少なくないであろう。もちろん、休日に行うことになるのであろうが、政治家の場合には休日の定義も難しい。議会が開かれていない期間は休日であるとすれば、なんと休みの多い仕事になろうか。とりわけ豊洲と五輪の問題は、財政的や政治的だけでなく、対外的にも早く決定することのメリットは計り知れない。にもかかわらず、小池氏は都政専念という二元代表制のよさを自ら手放そうとしている。 これらの点からも、地方政治において首長が政党を率いて議会選挙に臨むことには疑問がある。また、今回の選挙では、多数の候補者が小池人気だけを目当てに、さまざまなアプローチで都民ファーストの会から公認や支援を受けている。政党をくら替えする議員も少なくない。彼らは今までの政党や自らが訴えてきたこととの整合性は保たれるのであろうか。小池氏は「古い都議会」と「新しい都議会」という抽象的な文言で説明しているが、選挙が行われれば都議会は当然リセットされることになる。いわば必ず「新しい都議会」となるのは自明の理であろう。しかも都民ファーストの会の新しい改革案は抽象的で、具体策がはっきりしないままだ。 こうした点からも、今回の都議選で争点らしい争点は見えてこない。豊洲移転問題について各党の主張は、豊洲移転と築地残留で分かれているが、都民ファーストの会は小池知事の判断を尊重するとして、政党としての政策判断をしていない。見るからに、小池人気頼りということを示しているといってよい。東京五輪・パラリンピックなどがメディアなどで注目される争点になるのであろうが、争点といえるまでの各党の明白な違いが見えているわけではない。都民ファーストの会の街頭演説を行う小池百合子東京都知事=5月20日、東京都中野区(春名中撮影) 小池氏の人気によって、盛り上がる選挙になる可能性を秘めているだけに、各党が自らの主張をはっきりと打ち出した、争点中心の選挙になることを期待したい。また、投票率も最近では民主党政権誕生前の55%が高いものである。これを上回るような高い投票率になることも期待したい。それを可能にするのは、政治家であり、メディアであり、有権者である。

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    小池知事 安倍官邸の「空気支配力」の怖さを熟知

     東京都議選では一時は自民党を駆逐するかに見えた小池新党「都民ファーストの会」の勢いが止まりつつある。実は、安倍官邸の「空気支配力」の効果と怖さを最も良く知るのが自民党広報本部長時代に情報戦略立案にかかわった小池百合子・知事なのだ。都民ファーストの会が「選挙対策本部」を設置に伴い、看板掛けを行った。記念撮影に応じる小池百合子都知事と都民ファーストの会の広報部メンバーら=5月16日午後、東京都新宿区(代表撮影) 安倍首相は、2013年参院選でネット選挙が解禁されると、「情報分析会議」で培ったノウハウをフルに発揮させる。とくに重視したのが不利な情報やネガティブ情報への反撃作戦。 ネット戦略の実働部隊として小池百合子・自民党広報本部長(当時)の下に議員、選挙スタッフ、ネット企業の専門家、弁護士からなる「Truth Team(T2)」を発足させ、24時間態勢でネットを常時監視、ブログやSNS、2ちゃんねるなどに候補者への誹謗中傷の書き込みがあれば直ちに削除要請する仕組みをつくりあげた。ジャーナリスト・角谷浩一氏が語る。「小池氏は自民党東京都連を『ブラックボックス』と批判して都知事選に出馬したが、これまで安倍総理に弓を引いたことはない。都知事選の公約も『アベノミクスを東京から』でした。メディア出身の彼女は、小池都政に80%近い支持があっても、安倍首相はなにやら得体の知れない世論の空気を味方に付けていて、正面切って戦うのは不利と感じ取っているからではないか」 そんな小池氏の足元を見て自民党が「ご自身の立ち位置さえも決められない知事」(萩生田光一・官房副長官)と“二重党籍”批判で反転攻勢をかけると、小池氏も決断を迫られた。 懸案の五輪費用分担問題で国が1500億円負担することが決まった翌日(6月1日)、小池氏は自民党に離党届を出して正式に都民ファーストの会代表に就任、全面対決の姿勢を鮮明にした。「小池さんは、基本は“都政と国政は別”という考え方だが、売られたケンカから逃げる人ではない。離党でケジメをつけた。彼女の戦いが都議選での自民党の不満の“ガス抜き”にとどまるのか、それとも安倍支持の国民の空気そのものを変えようと挑むのか、これから非常に難しくなっていくでしょう」(同前)『「空気」の研究』(山本七平著)の愛読者である小池氏は「空気」の微妙な変化を感じ取っているのかもしれない。関連記事■ 小池百合子知事、五輪成功に導き自民党総裁選目指す青写真■ 都議選 自民党婦人部が「自民党ハンターイ」の声あげるか■ 小池百合子氏、ケンカのうまさは小泉純一郎氏を超えた■ 森友学園疑惑で得をしたのは小池百合子氏、神風吹いた■ 森喜朗氏 4年後の都知事選で「小池vs丸川」狙いか

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    7月都議選 小池vs自民のスキャンダル泥仕合開始

     7月都議選まで2か月を切り、小池百合子・都知事率いる新党「都民ファーストの会」と自民党のバトルが本格化しつつある。ただ、ヒートアップしているのは政策論ではない──。都議選で劣勢が伝えられる自民党がなりふり構わぬ猛攻勢をかけている。「エッ、寝返ったのか」 都民ファーストの会に衝撃を与えたのが“看板候補”となるはずだった中村彩氏(27)の引き抜きだ。 慶応大学大学院から日本取引所グループ(JPX)に進んだキャリアウーマン。小池百合子政経塾「希望の塾」に参加して都議選候補者養成コースに選抜され、「小池アマゾネス軍団の1人」としてメディアで注目されていた人物だ。都議選に向けて麹町郵便局向かいで有権者にあいさつする自民党公認で千代田区から出馬する中村彩氏=6月8日午後、東京都千代田区 そんな彼女が、あろうことか小池氏の宿敵である“都議会のドン”内田茂・都議の後継者として自民党の公認を受けたのだ。「都民ファーストの会は最初は私利私欲の部分がなかったはずなのに、どんどん候補者が決まるたびにそういう人たちが集まっている現状にすごくがっかりした」 中村氏はTBSニュース『Nスタ』に登場して小池新党批判を展開し、内田氏を「思っているよりもすごくいい人」と持ち上げるなど、いまや“自民党の秘密兵器”といわれる。8日には、自民党本部で中村氏と安倍首相との選挙ポスター用“2ショット写真”も撮影された。あまりの手際のよさに、「最初から自民党が政治塾に送り込んだトロイの木馬だったんじゃないか」と小池側近は歯ぎしりしている。 もっとも、自民党都議にいわせると「引き抜きは小池新党の方が先じゃないか」らしい。 自民党東京都連会長の下村博文・代議士の元公設秘書、平慶翔氏(29)が都民ファーストから出馬するからだ。サッカー日本代表・長友佑都氏と結婚した「アモーレ」こと女優・平愛梨の実弟でもある。 その平氏には“スキャンダル爆弾”が炸裂。『週刊新潮』(4月13日号)で下村氏の秘書時代に「カネがらみの不祥事」で事務所を解雇された疑惑が報じられたのだ(本人は否定)。 爆弾はこれだけではない。自民党は小池氏の周辺にターゲットを絞っている。「小池知事にもっと近い人物にも、カネがらみの不祥事が取りざたされており、マスコミが取材に動いている。都議選前に記事が出るんじゃないか」と都連関係者は不敵な笑みを浮かべる。 都議選最大の争点である築地市場の豊洲移転問題では文字通りの「泥仕合」が演じられている。豊洲の土壌汚染で移転に慎重姿勢を取る小池知事に対し、自民党は逆に「築地の汚染」を追及。都議会で築地市場に出没するネズミの写真をパネルに掲げて衛生状態を問題にしたり、築地には戦後、進駐軍のクリーニング工場が置かれて敷地内で大量の有機溶剤「ソルベント」が使われていた可能性が強いとも指摘した。その後都は大型連休中に土壌調査を始めた。「都民の台所」の場所を決めるのに、築地と豊洲の“どっちが汚いか”を争っているのだから、聞かされる方はげんなりである。関連記事■ 都議選 小池新党から70人擁立なら民進党は壊滅的危機に■ 自民現職都議 小池新党の女性候補は強いと悲観■ 都議選 自民党婦人部が「自民党ハンターイ」の声あげるか■ 小池百合子知事、五輪成功に導き自民党総裁選目指す青写真■ 都議選予測 大田区・怨念戦争の結末と世田谷区・自民全滅

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    籠池泰典氏の証人喚問から学んでおきたい「3つの教訓」

     日本中がテレビの前に釘付けになった「籠池証人喚問」。大人力コラムニストの石原壮一郎氏は、「大人として気をつけたい3つの教訓があった」と語る。* * * 安倍首相や昭恵夫人を応援している人も毛嫌いしている人も、どちらにとっても「何を言い出すのだろう」と手に汗握る展開でした。3月23日に参議院と衆議院の両方で行なわれた、森友学園理事長・籠池泰典氏の国会証人喚問。いろいろな争点について、与野党それぞれの議員がそれぞれの立場から質問をぶつけました。 昭恵夫人からの寄付があったのか、稲田防衛大臣とは仲良しなのか、国有地の払い下げや学校設立の認可の過程で、誰がどう関わったのか。真相はよくわからないし、おそらくずっとうやむやのままでしょう。結局は、けっして清廉潔白じゃない同士が、泥をなすり合っている構図に見えます。どっちの泥のほうが汚くなくて、どっちの味方をしたほうが賢そうに見えるかという虚しい議論に、ドヤ顔で参戦しても仕方ありません。 やじ馬はやじ馬らしく、せっかくの面白い見世物から何を学べるかを考えることにしましょう。人生や政治生命を賭けて必死で戦っている当事者にしてみたら、何をノンキなことをと怒られそうですけど、関係ない人たちがネットなどで目を吊り上げて議論するのも、しょせんはノンキな行為という点では似たようなものです。籠池泰典氏の証人喚問が行われた参院予算委員会=3月23日(魚眼レンズ使用) どっちの味方でもないと前置きしつつ、今回の「籠池証人喚問騒動」から、大人として覚えておきたい教訓を見い出してみました。この3つです。1.人は同じものを見ていても、望む方向で受け止め方が180度変わる2.発言にことわざを織り交ぜると、余裕や自信があるように見える3.どんな場合も「失うものは何もない状態」に追いつめてはいけない1.人は同じものを見ていても、望む方向で受け止め方が180度変わる 証人喚問のテレビ中継を見ながらツイッターなどのSNSをのぞいていたところ、同じ質問者に対して「こいつ、グダグダだな」という声もあれば「さすが、鋭く切り込んでるな」という正反対の声もありました。全体の印象も「安倍首相側がいよいよ追いつめられた」と言っている人もいれば、「籠池のおっさんのうさん臭さが浮き彫りになった」と言っている人もいます。 同じものを見ても、人によって受け止め方がまったく違うんだなと、あらためて思い知らされました。人間が抱く印象なんて、しょせんその程度のもの。身近な人に対する評価やトラブルに対するジャッジも、別の角度から見たらまったく逆の結論になるかもしれません。「自分の考えや気持ちなんてアテにならない」という謙虚さを常に忘れないようにしましょう。発言にことわざを織り交ぜると…2.発言にことわざを織り交ぜると、余裕や自信があるように見える 昨日の証人喚問で、聞いたときは思わず吹き出してひときわ印象に残ったのが、籠池氏の「事実は小説よりも奇なりであります」という発言。民進党の枝野幸男議員が「昭恵夫人がわたしたという100万円は、籠池氏側が講演料として用意していたものだろう」と言っている評論家がいるが、どうなのかと尋ねたところ、こう前置きして「私が申し上げていることが正(ただ)しゅうございます」と答えました。国会での証人喚問を終え、記者会見に向かう籠池泰典氏(奥)=3月23日、東京都千代田区 籠池氏の言うことが真実かどうかは、まだわかりません。それはさておき、証人喚問という緊迫した状況で、発言にことわざを織り交ぜてきたのはビックリでした。そうすることで余裕や自信があるように見える効果は、少なからずあったと言えるでしょう。 このノウハウは、会社生活でも活用できそうです。大事な仕事が予定通りに進んでいなくて、しびれを切らした上司に「あの件、どうなってるんだ!」と詰め気味に尋ねられたら、まずは落ち着いた口調で「事実は小説より奇なりであります」とひと言。続けて「なんと、まだ完成のめどが立っていません」と言えば……余計に怒られますね。3.どんな場合も「失うものは何もない状態」に追いつめてはいけない 籠池氏の証人喚問が、立場や考え方の枠を超えて興味深いものになったのは、彼がとことん追いつめられていて、もはや「失うものは何もない状態」にあるから。保身を考える必要はないので、どんな内緒の話でも洗いざらい話せるし、誰かをかばう必要もありません。逆に、嘘八百で誰かを陥れることだってできます。 こういう人間ほど怖い存在はありません。私たちは国会に証人や参考人として呼ばれる可能性はまずありませんが、日常生活でも相手を追い詰めすぎないように気を付けたいところ。それこそ「窮鼠猫を噛む」ということわざもあります。ミスをした後輩や部下を叱るときも、逃げ道を残しておいてやらないと、破れかぶれになってこっちの悪行やこっそり言った社長の悪口を大勢の前で披露してしまうかもしれません。 籠池氏は、緊迫したショーで楽しませてくれた上に、大人として大切な教訓まで与えてくれました。さすが「教育者」を名乗ってらっしゃるだけのことはあります。この先も、反面教師としての役割も含めて、さまざまな形でさまざまな教訓を与えてくれるでしょう。ただまあ、幼稚園児や小学生に伝えたい教訓は出てこなさそうですが。関連記事■ 籠池氏「首相夫人から百万円」、政府側は否定■ 籠池氏「清廉潔白の人間は相手が清廉潔白とわかるんですよ」■ 鴻池祥肇氏が爆弾告発「なぜ私を証人喚問に呼ばんのか」■ 籠池氏証人喚問 左上に目線がいく証言の意味するところ■ 籠池夫人が明かす稲田朋美大臣の「大変失礼なこと」の真相

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    「しんぶん赤旗」をひたすら読んでみた

    113万部。先ごろ開かれた日本共産党大会で公表された機関紙「しんぶん赤旗」の発行部数である。最盛期には発行部数350万を超えていたというから、その影響力の大きさは決して侮れない。いったい赤旗とはどんな新聞なのか。このテーマを読めば、知られざる真実がよく分かる、かも?

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    43年間購読する私が「しんぶん赤旗」に感じた戸惑い

    首会談で握手を交わす、共産党の志位和夫委員長(斎藤良雄撮影) モノトーンの考え方だと見られることは、政党にとっては不利なことである。今度の大会決議で、共産党は自民党を次のように批判している。 「安倍政権のもとで自民党は、かつての自民党が持っていた保守政党としてのある種の寛容さ、多様性、自己抑制、党内外の批判を吸収・調整する力を失い、灰色のモノクロ政党=単色政党へと変質した」 多様性がない単色政党は批判されるべき対象なのだ。だったら共産党も多様性を見せることに力を入れるべきだろう。 私が「赤旗」に期待するのは、1ページでいいから自由投稿欄を設けることである。その他のページは共産党の公式見解を述べるものであっていいから、自由投稿欄だけは公式見解に左右されないものを掲載することである。 そのことによって、多くの人は、共産党のなかにも多様な見解が存在していること、共産党がモノクロ政党でないことを知ることになるだろう。同時に、そういう多様性にもかかわらず、幹部がばらばらに行動するような無責任な政党ではなく、政党としてまとまった見解を持ち、一致して行動をしていることも理解するだろう。 それは共産党への支持を広げることになると感じる。共闘相手の他の野党にとっても、「自衛隊を認める党員もいるのだ」とか、「いまだに天皇制廃止論者がいるんだ」などが伝わることは、共産党も自分と同じような多様性を持つ党だという理解につながり、日常の付き合いにもいい影響を与えるはずだ。不破氏のように個人の著作を出せない共産党員にとっても、同じ意見を持つものの派閥(分派)をつくらないで意見を表明できるようになるわけで、党の活性化につながると思う。 志位和夫委員長は、1月の党大会における報告で、「『多様性』は『弱み』ではなく、『強み』とすることができる」と述べた。これは多様な考え方を持つ野党の共闘に関してのものだが、共産党自身も多様性を「赤旗」で見せることによって、自らを強くすることができるのではないだろうか。

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    しんぶん赤旗は「ニュース女子騒動」をどう伝えたのか

    杉田水脈(前衆議院議員) TOKYO MX放送の情報番組『ニュース女子』が1月2日に報じた沖縄基地問題に関する報道が話題になっています。ことの発端は出演者の軍事ジャーナリスト・井上和彦氏が、実際に沖縄の反基地運動が行われている高江付近に取材に行き、その異常な暴力性を指摘したものです。米軍北部訓練場の非返還区域前で、ヘリパッド建設などに抗議して気勢を上げる反対派 =2016年12月21日、沖縄県東村高江 実際に井上氏は、高江の現場に行くことを断念しています。私自身、何度も沖縄の辺野古周辺の反対運動の現場に足を運んでいますが、年々緊張感が増しています。以前は、我々の判断で行けたのですが、最近では、機動隊や警察と密に連絡を取りながら、その指示に従って行動しなければなりません。辺野古でこの状態ですから、高江はもっとすごいのでしょう。これに対し番組を制作したDHCシアターは下記の公式見解を発表しています。 高江ヘリパッド周辺はご存知のように反対派の暴力行為や器物破損、不法侵入などによって逮捕者も出るほど過激化しておりますが、こうした事実だけでなく、地元の方々からは二見杉田トンネル以降にもいくつかの危険があると助言されております。証言によれば、二見杉田トンネルは高江までは距離がありますが、以前同トンネルから4、5キロほど離れた汀間漁港で反対派の方と高江の作業員の方との交通事故があり、これは高江の作業現場から汀間漁港まで、反対派の方が作業車を追い回した結果起きてしまった悪質な事故であったこと。またトンネルから高江ヘリパッドの間では基地反対派によって車両のナンバープレートが記録され、基地ゲート前に到着する前に暴力的に阻止された、等々の証言。  これらの情報の中には裏取りができないものもあり、番組では一切使用しておりませんが、番組制作者としては事前調査の段階で、こうしたリスクも踏まえ、現場取材者や協力者、撮影スタッフの安全に配慮するのは当然のことと考えます。 この地域が反対派の暴力に支配されていることは事実ではあります。現場に足を運べば誰でもわかることですが、正しく情報が伝わっていませんでした。それを地上波で報道できたことは、画期的なことであり、暴力にさらされている地元住民の方々にとっては大きな光となりました。 また、この報道で特に話題になったのは、井上氏がインタビューした手登根安則氏(沖縄県民)が示したビラです。このビラは上野千鶴子東京大学教授や前日弁連会長の宇都宮健児氏、評論家の佐高信氏らが共同代表に名を連ねる反ヘイトスピーチの活動団体「のりこえねっと」によって配られたものです。「往復の飛行機代5万円を支援します」 私もこのビラのコピーを公安の方からいただきました。それには確かに「往復の飛行機代5万円を支援します。あとは自力で頑張ってください。」と書かれています。また、番組内では普天間基地の周辺で見つかった2万円の金額が書かれた茶封筒を提示し、日当を受け取っているのではないかと疑問を呈しています。米軍北部訓練場の非返還区域前でヘリパッド建設などに 抗議して座り込む反対派 =12月21日、沖縄県東村高江 反基地運動を支援する団体などからこれを「虚偽だ」との猛反発があり、ネットなどでは大混乱。BPOにも提訴される事態となっています。これに対してもDHCシアターは下記の内容を公式見解としています。 当該VTRではのりこえねっとのチラシを元に5万円の交通費が支払われていると紹介しましたが、これはその是非を問うものではなく、事実のみを紹介したものです。  また、日当2万円の根拠についても、貰ったと証言されている方がおり、その茶封筒は反対派で占拠されている状態の基地ゲート前で拾われ、証言と茶封筒の金額が一致しているところからも合理的な疑いを持たざるをえません。  さらにVTRでは「可能性を指摘する」ものとし「2万円の日当」を断定するものではなく、疑問として投げかけております。以上のことから、表現上問題のあったものだとは考えておりません。  このように客観的に事実を放映しただけの当番組に対し、赤旗新聞は1月20日の日刊版の紙面で「デマ・差別放送を流した東京MX」というタイトルで、大きく紙面を割いて記事にしています。 化粧品製造販売会社のDHCが番組の最大スポンサーであること。 DHCシアターは極右論客が登場する番組を作り続けていること。 東京MX本社前で訂正・謝罪を求める抗議デモを行ったこと。 以上が記事の主な内容です。不思議なことに番組については批判していますが、出演した沖縄県民の方々に対しては一言も触れていません。 極右論客ばかりを登場させると言いながら、赤旗新聞自体は極左論客ばかりを起用しています。今回の記事でもアワプラネットTV代表の白石草氏の意見が掲載されています。彼女は「インターネットの情報は玉石混交で、信頼に値しないと見下げる傾向があった」とし、「今回の件で、地上波もまた同レベルであることを露呈した」と続けています。その原因を作ったのが、今回のニュース女子に代表されるスポンサーの「持ち込み番組」であると結論付けています。赤旗に登場する「極左論客」の正体 この白石草氏は、反原発運動で有名な活動家。毎週金曜日に国会周辺で行われる金曜デモを取材するために国会記者会館の屋上を使わせろと要求し、それが認められないと今度は裁判所に訴えるという暴挙に出ました。もっとも、赤旗新聞や週刊金曜日といった左翼御用達のメディアでのみ名前が売れている方なので、一般人には広く知られていない方です。米軍北部訓練場の非返還区域前で、ヘリパッド建設などに抗議して気勢を上げる 反対派=12月21日、沖縄県東村高江 しかし、事実を客観的に報道しただけの当番組に対し、「単なる人権侵害や誤報という範囲を超えて、テレビの公共性を問う重大な問題」と切り捨て、持論を展開する氏は本当にこの番組をご覧になったのかと疑問に思います。ご覧になってこの記事を書かれたのであれば、真実を見る目が曇っているとしか思えません。氏は現在、一橋大学大学院地球社会研究科客員准教授であり、早稲田大学大学院ジャーナリズムコース講師も務めていらっしゃるようですが、メディアの左傾化はこういう方に教わった生徒が携わることにあるのではないかと思います。 また、東京MX前のデモの呼びかけ人であるフリーの編集者川名真理氏が「ウソの放送内容の訂正と謝罪を放送で行うこと」「沖縄の基地建設に反対する人への偏見をあおったことへの謝罪を行うこと」の申し入れをしたと記事の最後にあります。事実を報道したテレビ局に対し、デマというレッテル張りをし、デモなどで圧力をかける…。いつもの左翼活動家の手法です。この川名真理氏も沖縄基地反対問題の活動家であると公安の方に教えていただきました。 この報道がデマであるというのであれば、その証拠を見せていただきたいと思うのですが、それは全く提示せず、ただただ左翼活動家の意見を垂れ流しにする、これが赤旗新聞の正体です。この記事一つとって検証してみてもその傾向がよくわかります。調査もせず、事実を曲げ、証拠も示さず報道する新聞を「新聞」と呼ぶことができるのでしょうか?

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    赤旗が購読料値上げ、共産党が政党助成金をもらう可能性

    しましたが、これ以上の値上げは無理ですね。筆坂:だろうね。上杉:となると、切羽詰まった共産党はついに政党助成金をもらうかも。筆坂:そういう時期が来るかもしれません。少なくとも日刊紙は出せば出すほど赤字だろうから、いずれ廃止して日曜版だけになる可能性が高いでしょう。上杉:財政面だけではなく、機関紙である赤旗には当然、党の広報・宣伝機関という面もありますね。筆坂:そうです。党大会前には大会決議案が赤旗紙面を通じて全党員に示される。昔は細かい字でビッシリと10頁ほど書かれていて、読むのが実に大変でした。上杉:まさに「ザ・機関紙」。でも最近はそんな見かけませんよ。(赤旗を開いて)本当、普通にいい新聞じゃない。購読しようかな(笑)。筆坂:ただ、党員たちにとって赤旗はまだまだ特別。赤旗は読者への情報発信とは異なる裏の顔を持つ。 たとえば、この夏の参院選の結果について、赤旗(7月12日)に中央委員会常任幹部会の論評が掲載されました。地区委員は「どこがポイントか」を考えながら読んでボールペンで記事に赤線を引き、理解した内容を一般党員に伝える。この作業を通して、党の公式見解を浸透させるんです。だから、党員たちに聞くと、「このあいだの参院選は大成功を収めた」といった答えが一様に返ってくる。●うえすぎ・たかし/1968年東京都出身。鳩山邦夫氏の衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者を経て、2002年よりフリージャーナリストとして活動。政界、メディア問題、原発問題など、多岐に亘るテーマで執筆。2016年、東京都知事選出馬(4位)。●ふでさか・ひでよ/1948年兵庫県生まれ。高校卒業後、三和銀行へ就職。18歳で日本共産党入党。25歳で銀行を退職し、専従活動家へ。国会議員秘書を経て参院議員。共産党ナンバー4の政策委員長となるも不祥事を契機に議員辞職。2005年7月離党。主な著書に『日本共産党』。関連記事■ 「しんぶん赤旗」 政権に不都合な情報も調査する諜報機関■ 赤旗独自の情報網、内部告発は大企業や官公庁勤務の党員から■ 自民党関係者が政敵蹴落とすため赤旗に情報流すこともある■ 赤旗が「鳥越氏大健闘」評価で僕も大健闘にしてと上杉隆氏■ 赤旗記者が国会議員秘書に早変わりしスムーズに取材進められる

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    しんぶん赤旗 194億円の収入で利益率3割超の秘密

    のか。その配達と集金、勧誘の仕組みをジャーナリストの竹中英司が解剖する。* * * 日本共産党は主要政党で唯一、国から政党交付金を1円も受け取っていない。1995年の制度創設以来、共産党がもらわなかった政党交付金の総額は200億円を超えるという試算がある。「政党交付金は国民が納めた税金を支持していない政党に回される憲法違反の強制献金制度だ」(宮本顕治・元名誉議長) と主張してきたからだが、“やせ我慢”には別の理由もあるようだ。 共産党は現在も破壊活動防止法の調査対象団体に指定され、公安調査庁に活動を監視されている。古参党員はこう語る。2016年7月、参院選候補者への街頭応援演説を行う共産党、志位和夫委員長(春名中撮影)「政党助成法では、総務大臣に交付金を受け取った政党への調査権(説明聴取)や返還命令権などの強い権限が与えられている。交付金をもらえば活動資金を国家に依存するようになり、国家権力から党財務に介入される余地が生まれる」 だから他の政党と違って、財政面で国に依存しない独立採算路線を採ってきた。 そんな共産党の屋台骨を支えているのが機関紙「しんぶん赤旗」の購読料(日刊紙・月額3497円、日曜版・月額823円)だ。 政治資金収支報告書によれば、共産党の2014年の収入は約225億円。内訳を見ると、党員からの党費約7億円、寄付約5億円に対し、機関紙の事業収入は約194億円でなんと収入の8割以上を「赤旗」が稼ぎ出し、同事業の支出と差し引きすると約62億円が粗利とみることができる。粗利益率は3割以上だ。党の人件費をはじめ、光熱費や事務所費などの経常経費・約38億円は赤旗の購読料でまかなっているとみていい。 不思議なのはその利益率の高さである。赤旗の日曜版は約100万部の発行とはいえ、日刊紙の発行部数は約20万部とされる。これは小規模な県の地方紙のレベルの部数だが、地方紙と違って赤旗は全国に宅配網をめぐらせなければならず採算が見込めない。しかし、そこに赤旗独自の配達と勧誘の仕組みがある。党関係者が自ら配っているのだ。「地方議員や(党から給料をもらっている)専従の党員も配達するが、現在の主力は支部長OBや会社をリタイアした一般党員たちです。一般党員には完全なボランティアと有償で配達する場合の2種類があるが、報酬をもらっても多くを党に寄付するから実質的にはボランティアです」(20年近く赤旗を配達しているベテラン党員) 赤旗は同紙印刷のために設立されたあかつき印刷など全国6か所で印刷され、各都道府県の党支部など配達拠点に配送される。さらに「配達ポスト」と呼ばれる市町村の党議員事務所などに届けられ、配達員の手で各戸に配られる。この宅配の人件費はほとんどタダというわけである。利益率が高くなるのもわかる。 たいへんなのは日刊紙の5倍近い部数がある日曜版だ。毎週木曜日に刷り上がって集配所に届けられ、宅配ボランティアの人員も10数万人に増員される。また、選挙が近づくとこうした赤旗配達員の党員たちが、新聞を配達する際、購読者以外の住民のポストにも共産党系団体の政策チラシなどを投函していく。こうした組織力は他党を圧倒している。 ボランティア配達員の党員にとって一番重要な活動は集金である。現場では、購読料は振り込みや年間一括払いではなく毎月の現金払いを奨励している。「党勢拡大のためにいきなり党員獲得といっても現実的には難しいから、まず赤旗を取ってもらう。購読者になってくれた方は共産党の政策に関心がある人です。毎月の集金時はそうした購読者と直接、話ができる貴重な機会だから、政治への不満や生活の不安などできるだけ話を聞いて、具体的に困っていることがあれば地域の党の出張所などに来てもらって改めて相談に乗る」(同前) 配達・集金は「機関紙活動」と呼ばれ、党員の中で重視されている。ただし、近年では配達員となる党員不足や高齢化などから赤旗の遅配・欠配も増えてきたという。とくに僻地での配達は配達員にとっても負担が大きいようだ。関連記事■ 「しんぶん赤旗」 政権に不都合な情報も調査する諜報機関■ 中国の警察 汚職の摘発は前年比12.5%増でその優秀さを証明■ 地上11階地下2階・総工費85億円の共産党本部ビルに潜入した■ 中国共産党員8800万人 大卒増え若年化進み4人に1人が女性■ 赤旗が「鳥越氏大健闘」評価で僕も大健闘にしてと上杉隆氏

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    なぜ赤旗では「巨人軍」「夫人」という言葉がタブーなのか

     共産党の機関紙である「しんぶん赤旗」は、日刊紙約20万部、日曜版100万部の発行部数を誇り、売り上げは約194億円もある。 赤旗の特殊性が顕著に表れるのが「用語」だ。一般紙で当たり前に使われている言葉が使われていなかったり、見慣れない表現が使われていたりする。2016年5月、広島市・平和記念公園の原爆死没者慰霊碑に献花したオバマ米大統領(右)と安倍首相。左後方は原爆ドーム 先月、終戦記念日の前後に一般紙の紙面に頻繁に登場した「慰霊碑」という言葉は赤旗では使わない。広島の平和記念公園にある「原爆死没者慰霊碑」(正式名称・広島平和都市記念碑)は「原爆碑」「原爆記念碑」と書く。 しんぶん赤旗校閲部の河邑哲也氏が上梓した『「赤旗」は、言葉をどう練り上げているか』によれば、《そもそも「霊魂」が浮遊するというのは神道特有の概念》だからということらしい。宗教に対して否定的であり、国家神道への警戒心もある共産党の機関紙らしい理由だ。同様に「慰霊」も「追悼」などに言い換えられる。 先の大戦への苦い記憶はどの新聞よりも強く持っているようだ。スポーツ記事でも戦争用語は御法度だ。 たとえば「軍」は使わない。「巨人軍」は「巨人」または「ジャイアンツ」と表現される。ただし、他紙でも「巨人軍」は使用頻度が低い。「赤ヘル軍団」もNG。「弾丸ライナー」も「するどいライナー」などに言い換える。サッカーなどでは「敵陣」と書かず「相手陣地内」と書く。 赤旗を手にとって真っ先に目に付くのが「です・ます」調の文体だ。初めて「です・ます」調にしたのは1962年5月1日付の「主張」から。1965年の元日付からスポーツ面を除いて原則「です・ます」に移行した。《「アカハタの文章は堅い」という読者の声をうけて》(前掲書より)採用したという。 皇室に対する姿勢も言葉によく表れている。一般紙で「天皇陛下」と表現するところは「天皇」とし、敬語も原則使わない。先月、話題となった天皇陛下のお気持ち表明も、《天皇は8日、「象徴としてのお務めについて」とする発言を、ビデオメッセージの形で発表しました》(8月9日付)といった文章になる。 一般の刑事事件報道では加害者でも匿名となる。「建設業の男性」「21歳女性」といった表現が用いられる。被害者、加害者のプライバシー、人権に配慮しているのだ。 しかし一般紙の場合、多くの場合で警察発表に基づいて実名、匿名を使い分ける傾向が強い。つまり、「警察の判断」でやっている。それへのアンチテーゼとして実名・匿名を判断していると言える。この点、一般紙よりも筋が通っている。 ただし、公人の刑事事件は実名で報じる。汚職など公人の刑事事件は地位を利用したものであり、公権力のチェック・監視という観点から、当然、実名になる。公人であれば、一般刑事事件でも(たとえば痴漢など)実名報道になる可能性が高い。 また、詐欺事件の場合は、公人でなくても実名報道となる。二次被害の可能性があり、容疑者を特定する必要があるとの考えからだ。 このように一定の基準があるが、明文化されたルールではなく、ケース・バイ・ケースで判断される。 赤旗・共産党の女性、子供に対する考え方がわかる表現もある。赤旗では「子供」「子ども」「こども」のうち、「子ども」を使用する。《子どもは、戦前のように、おとなの「お供」でも、神仏の「お供え」でもない、人権をもった人間だ》(同前)という考えによる。 また、「夫人」は使わず「妻」を使う。夫婦はそれぞれ別個の人格だからだ。関連記事■ 労働問題に強い赤旗 労組ネットワークがあるからこそ■ 赤旗 優秀な記者は自分で記事を書かないから信用される■ しんぶん赤旗を読み解く9つのキーワード■ 赤旗記者が国会議員秘書に早変わりしスムーズに取材進められる■ 「しんぶん赤旗」 政権に不都合な情報も調査する諜報機関

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    赤旗 優秀な記者は自分で記事を書かないから信用される

    入党後は「党勢拡大のため、新聞を増やせ」と命じられ、ひたすら赤旗の拡大に奔走しました。意気込んで革命政党に入ったはずが、新聞の拡張員になったようでしたね(苦笑)。上杉:わかります。長崎の電電公社に勤めていた僕のおじも共産党員で、多額の寄付の他に拡販のため赤旗をひとりで10部購読していましたから。筆坂:レーニン以来、世界中の共産党は機関紙活動を重視しています。日本共産党も赤旗の普及が国会議員を増やし、やがて与党として政権参加する基盤になるという考えに固執しています。 その一方で赤旗は、「調査の共産党」を支えています。田中金脈事件をはじめ、独自の調査で次々と疑惑を暴露してきました。上杉:僕もジャーナリスト時代、赤旗の記事から取材のヒントを得ることは多々ありました。赤旗は、大手紙のように「関係者によると」とごまかすことなく取材源を実名で書く。報道をトレースしやすいから、後のスクープに繋がることもあった。元共産党参議院議員で政治評論家の筆坂秀世氏筆坂:大事件が発生すると、党内に議員や赤旗記者、党職員が集まってプロジェクトチームを作ります。私は長年その責任者を務めましたが、大いに役立ったのが赤旗記者でした。一般紙に比べると陣容は少ないものの、日本各地に支局があり、優秀な記者は情報源をたくさん持っていた。上杉:赤旗は官邸や政党の記者クラブには加盟していない。でもそこらの番記者より情報を持っている記者もいる。たとえば内閣情報調査室の職員と通じていて、お互いに情報を流し合っている記者を知っています。いわば情報屋に近い。筆坂:敵方である自民党の幹事長クラスにまで食い込んで、情報を取ってくる記者もいますよ。自共が競合する選挙区で、自民党の現状分析を入手して、共産党の常任幹部会に報告する。その情報を元に選挙活動のテコ入れをして逆転勝利したこともありました。 面白いことに、優秀な記者は自分で記事を書かないから情報流出が表沙汰になりません。だから相手に信用される。その情報がすべて不破さんに集中するんです。赤旗記者の情報をものすごく信用していましたね(苦笑)。●うえすぎ・たかし/1968年東京都出身。鳩山邦夫氏の衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者を経て、2002年よりフリージャーナリストとして活動。政界、メディア問題、原発問題など、多岐に亘るテーマで執筆。2016年、東京都知事選出馬(4位)。●ふでさか・ひでよ/1948年兵庫県生まれ。高校卒業後、三和銀行へ就職。18歳で日本共産党入党。25歳で銀行を退職し、専従活動家へ。国会議員秘書を経て参院議員。共産党ナンバー4の政策委員長となるも不祥事を契機に議員辞職。2005年7月離党。主な著書に『日本共産党』。関連記事■ 「しんぶん赤旗」 政権に不都合な情報も調査する諜報機関■ 赤旗が「鳥越氏大健闘」評価で僕も大健闘にしてと上杉隆氏■ 中国で抗日戦争を戦ったのは国民党軍 共産党は成果を横取り■ SAPIO連載・業田良家4コマ漫画【2/2】 「沖縄の未来」■ 追及能力持つ共産党の10議席 他野党の数十議席と破壊力違う

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    安倍政権にコントロールされる日本メディアの「不都合な真実」

    奥村信幸(武蔵大学社会学部教授)高市早苗総務相が放送局に電波停止を命じる可能性に言及。安倍政権による“圧力”は強まる一方だ。しかし、メディアから強い反発の声は聞こえてこない。「質問は記者クラブに限る」 2015年9月、自民党の安倍晋三総裁が無投票で再選され、記者会見が東京・千代田区の党本部で開かれた。司会の萩生田光一筆頭副幹事長(当時)はこのようにアナウンスした。「冒頭、総裁から『ごあいさつ』を申し上げ、その後平河クラブ(自民党の記者クラブ)幹事社から代表質問、その後、時間の許す限り質問を受け付ける」。安倍総裁は「ごあいさつ」として、政策の成果や目標などを、30分のうち15分も語り続けた。幹事社2社の質疑が済んだ後、萩生田氏は「平河クラブに限り、質問を受け付ける」と通告した。会見で記者を指名する安倍晋三首相=2015年9月24日、東京・永田町の自民党本部(酒巻俊介撮影) ここで起きたことは、不自然なことだらけだ。党総裁でもある安倍首相に直接質問できる機会はそんなに多くあるわけではない。その貴重な30分足らずの時間のうち15分も質問の機会が奪われているのに、抗議の声も上がらない。テレビも発言内容をニュース速報で粛々と伝えただけだった。なりふり構わぬコントロール 萩生田氏の2回目のアナウンスは常軌を逸している。質問を「平河クラブの記者に限る」と明言したからだ。2012年12月まで3年余り続いた民主党政権が記者会見のオープン化を推進し、ネットや外国のメディア、フリーランスらにも門戸が開かれた。続く安倍政権も表向きは、その流れを踏襲してきた。記者クラブだけを優遇して、「表現の自由」を後退させていると見なされることは避けようと、「良識ある政権に見えるように」意識していたということだ。ただネットメディアは、首相会見でいくら手を挙げても、最近は指名されることはほとんどなく、「運用で」メディアの差別を「判然としないように」行ってきたのが実態だった。 そのようなギリギリのラインを破り、「好き勝手にえこひいきをするぞ」と宣言したに等しい。日本では数少ない広告収入に一切依存しないネットメディア「ビデオニュース・ドットコム」の神保哲生氏は「症状が一歩進んだ」と評した。 「国境なき記者団」が毎年発表する報道の自由度ランキングで、日本の順位は2002年から2008年まで、26位から51位の間を行ったり来たりしていた。低迷の原因は記者クラブの閉鎖性にあると言われていた。2009年に誕生した民主党政権が記者会見のオープン化をいくらか進め、順位は2010年に11位まで上昇したものの、2012年には53位、2015年には61位と急落した。 東日本大震災に伴う福島第1原発の事故に関する情報公開が不十分だと見なされたことや、安倍政権が推進した、いわゆる特定秘密保護法が問題とされた。安倍政権のメディアコントロールの姿勢は、国際的な評判がさらに下がるのもお構いなしということのようだ。反論しないテレビ反論しないテレビ 萩生田氏は2014年11月、衆議院選挙を前に在京キー局の編成・報道幹部宛てに「選挙報道の公平中立と公正を確保するよう」要請する文書を個別に渡している。文面は一見低姿勢に見えるが、恫喝に等しいものだ。放送が公正中立だと思っていれば、このような文書は出ない。「過去においては、あるテレビ局が政権交代を画策して偏向報道を行い、それを事実と認めて誇り、大きな社会問題となった事例もあった」と、1993年にテレビ朝日の椿貞良報道局長が「非自民党政権を誕生させるような報道をするよう指示した」という事実とは反する発言を暴露され、国会に証人喚問された事件まで持ち出している。そしてゲスト出演者の選び方や発言回数、発言時間を公平にするよう指示している。 放送業界を監督するのは総務省であり、自民党から指導を受けるいわれは全くない。しかし、あの時放送業界は、表だって反論をしなかった。それどころか、そのような文書を受け取っていたと積極的に公表すらしなかった。呼び出しに無批判に応じるテレビ局 テレビに対する圧力は続く。2015年4月17日には自民党の情報通信戦略調査会が、NHKとテレビ朝日の幹部を招いて事情を聞いている。NHKは夜のニュース番組「クローズアップ現代」が出家詐欺問題を取り上げた際、関係者のインタビューが記者の指示による「やらせ」ではないのか疑惑が持ち上がっていた。また、テレビ朝日は「報道ステーション」というニュース番組のコメンテーターが辞める際に「菅官房長官から圧力を受けていた」と発言したことが問題となり、2つの番組は「放送法違反の疑いがある」というものだ。 自民党からの呼び出しには、やはり何の法的根拠もないが、2つの局は何の反論もすることもなく、この非公開の会合に出向いた。他局からも強い批判は聞かれなかった。 その10日後、問題となった番組について、NHKは内部調査の結果を公表したが、インタビューの際に「やらせ」があったことは認めなかった。同日、高市早苗総務相は、その調査の結果を吟味することもなく、NHKに対し「厳重注意」の文書を出した。番組の内容をめぐって総務省が文書で厳重注意を出すのは2009年以来、総務大臣名では2007年以来という異例のことである。しかしテレビは単に厳重注意の事実を報じただけだった。 批判の声を上げたのはBPO(放送倫理・番組向上機構)だった。放送業界が自主的なチェック機関として設立した団体で、扱う問題によって3つに分かれた委員会のメンバーに放送局の役員や社員は含まれていない。2015年11月、その中の1つ放送倫理検証委員会が「クローズアップ現代」について意見を発表した。NHKの内部調査に反して、安易な取材で報道番組で許される範囲を逸脱した表現があったなどとして、「重大な放送倫理違反があった」との見解を示した。その一方で、同委員会は総務相の厳重注意について「歴史的経緯を尊重していない」、自民党が放送局を呼び出したことについては「放送の自由に対する圧力」と非難した。放送の当事者でなく、周辺の人たちが声を上げるという異様な状況だ。法解釈の変更も目指す? 2016年2月、高市総務相は衆議院予算委員会で答弁し、放送法第4条に定められている「政治的公平」などの原則に沿って番組が放送されているかの判断は「総務大臣が行う」、放送局が放送法を守らないことが何度も続けば、「総務大臣の権限として」電波法に基づく「停波(放送を止める)の可能性がないわけではない」と述べた。 政府が放送の内容を判断し、停波の是非まで判断する「基準」として放送法の第4条を用いるというこの見解は、この条文が「放送局側が自律的に番組を編集する『倫理規範』」だとしてきた憲法学界の伝統的な解釈を逸脱したものだ。しかし、菅官房長官は「当たり前のこと」と発言し、安倍首相も「従来通りの一般論」だと国会答弁した。 彼らは確信犯なのか、単なる無知なのかはわからない。しかし、メディア業界が団結して反論する動きにはつながらなかった。2月末にはテレビのアンカーパーソンらがこの発言に抗議する記者会見を開いたが、参加したのはわずか6人だった。メディアが隠したい「特権」メディアが隠したい「特権」 なぜ日本のメディアはこんなに萎縮しているのか。テレビ局については単純な理由だ。監督官庁である総務省と、そこに影響力を持つ自民党への気兼ねだ。日本の放送制度には根本的な欠陥がある。1950年に米軍占領下で制定された放送関連の法律では、放送局を監督するのは「電波監理委員会」という政府から独立した機関とされた。しかし、吉田茂首相が2年余りでそれを廃止し、政府が直接監督する制度に変えてしまった。 ジャーナリズムの主たる任務は「権力の監視」だが、放送局は監視対象である政府から逆に監督されている。自民党が政権を独占してきたため、放送や電波に影響力を持つ議員集団が存在し、その力は弱まっているものの、テレビ局は無視できない。また、良識ある欧米のニュースメディアが株式を公開していないのと対照的に、日本のキー局などは株式を上場している。経営陣は政府の干渉や、それによる利益減少のリスクを恐れて、ジャーナリズムを優先した決断を下すことができない。 また、5つの全国紙は系列の民放局と株式の持ち合いをしている。系列のローカル放送局の認可を急ぐために、新聞社の記者が政府・自民党に働きかけをしてきた過去もある。 さらに、新聞は業界を挙げて安倍政権や自民党に働きかけ、2017年4月に予定されている消費税アップの際、新聞の税率を例外扱いにすることを勝ち取った。このような直接の借りを作っては、腹の据わった政権批判など根本的に不可能だ。 長年にわたる記者クラブ制度の下で確立された取材の慣例は、伝統的なメディアにとって手放し難い「特権」になっている。これを維持したいという思いも、メディアが政権に弱腰な一因と思われる。民主党は「記者会見」はオープンにしたが、「記者クラブ」はオープンにできなかった。記者クラブの真の「うまみ」は記者会見ではない。オフレコで行われる「懇談」ができることなのだ。 そこでは政治日程の読み、事件などに関しての要人の評価や本音のリアクションなどが伝えられる。記事のニュアンスや、今後の取材方針に直結する情報だ。重要な国際会議などの前には、関係する官庁による記者クラブだけに対する非公式のブリーフィングなどもある。政権を本気で批判することは、そのインナーサークルで情報を得る特権を手放すか、少なくとも中断させることを意味する。 こういった事情もあって、日本のニュースメディアは政権と距離を置くことがなかなかできない。それどころか、大手メディアの幹部と安倍首相の会食の頻度は、他の歴代のどの首相よりも高いのが今のメディアの実情だ。 前述の抗議の記者会見を開いたニュースアンカーらのうち5人は3月24日、日本外国人特派員協会で再び抗議の記者会見を行った。しかし、外国人記者からは日本のメディアに対する厳しい質問が続出した。「あの程度の発言で、なぜそこまで萎縮しなければならないのか」というわけだ。5人は結局、外国人記者を納得させる説明ができなかった。 日本のメディアは「隠れた特権」のため、「独立」できておらず、真の権力の監視ができていないのだ。おくむら・のぶゆき 武蔵大学社会学部教授。上智大学大学院外国語学研究科国際関係論専攻博士前期課程修了(国際関係学修士)。1989年、テレビ朝日入社(報道局「ニュースステーション」、政治部、編成部などで勤務)。米ジョンズホプキンス大学国際関係高等大学院(SAIS)ライシャワーセンター客員研究員 、立命館大学産業社会学部教授などを経て、2014年より現職。

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    TV局トップが安倍氏と会食の理由 面倒臭いから付き合うだけ

     安倍政権はテレビを屈服させている──そんな言説もあるが、ジャーナリストとして数々のニュース・情報番組に出演してきた大谷昭宏氏は、「テレビの萎縮は政治の圧力による」という一面的見方に与しない。むしろ問題の根底には、テレビと政治双方の、打算的な考えがあるという。大谷氏が分析する。 * * * テレビと政治の劣化が著しい。そのことをまざまざと見せつけられたのが、東日本大震災から4年という節目を翌日に控えた3月10日、夕方6時から開かれた安倍晋三首相の緊急記者会見だった。東日本大震災発生から11日で4年を迎えるに当たり記者会見する安倍晋三首相=2015年3月10日、東京・首相官邸(代表撮影) その時間帯はNHK、民放ともにニュース番組を流しており、これまでなら各局横並びで報じて当然のはずだった。ところが、会見を生中継したのはNHKのみ。他の民放各局はニュース番組の放送中であったにもかかわらず、会見から10分余りが過ぎた時間帯にわずか1分前後の録画映像を流しただけだった。 それは「安倍首相の会見は視聴率を限りなくゼロに近づける」と在京キー局幹部がこぼすように、ひとえに首相という“素材”が視聴者に支持されていないからである。 視聴率競争に晒されるテレビ局にとって、数字を下げるだけの首相会見はできれば使いたくない。だから生中継はしなかったのだが、かといって何も報道しなければまた政権サイドからうるさく言われるかもしれないので、仕方なく報じた。それが本音である。 先の衆院選を巡る報道をはじめ、安倍政権はことごとくテレビに圧力をかけてきたつもりかもしれないが、実際には疎まれていると言った方がいい。そして、首相自身もそのことをわかっているから、なおさらムキになっているように映る。テレビ界はうんざり そんな視聴率も稼げない首相にNHKだけが付き合わされているのは、籾井勝人会長がいるからにほかならない。確かに、フジテレビの日枝久会長などは首相就任以来、安倍氏と何回もゴルフや会食をともにする昵懇の間柄といえるし、他の民放トップも1回や2回は首相と会食している。しかし、それは必ずしも権力者にすり寄っているわけではないことも事実だ。 たとえばある在京キー局のトップは、社員との会合で「なぜ首相と会食する必要があるのか」などと問われると、一言「お前らのためだ」と説き伏せたという。要は「報道の現場に余計な圧力がかからないように、一度くらいはメシを食っておこう」ということらしい。 テレビが政権に萎縮して自主規制しているのも事実だろう。しかし、それは圧力に屈したとか大仰なものではなく、政権サイドがうるさくて面倒臭いからとりあえず付き合っておこう、というのが本音なのだ。 振り返れば、田中角栄や中曽根康弘、あるいは竹下登をはじめ歴代総理は、メディアからことあるごとに叩かれてきた。それでも名誉棄損などで訴えようとはしなかったし、いわば胆力を見せてきた。それに引き換え、安倍首相はテレビのインタビューに答える国民の声にすら異を唱えている。そんな首相の狭量さにテレビ界はうんざりしている。それが実態だろう。 関連記事■ 安部首相ウェブマガジンから44本の記事を厳選・再録した本■ 官邸テレビ支配進行 首相の甥がフジ入社、麻生氏甥はTBS在籍■ 新聞記者 会食で民主党はケチで割り勘だが自民は個室で無料■ 鳥越俊太郎氏 今のテレビでは政権を真っ向から批判できない■ 総選挙 2009年の政権選択選挙と比べると棄権は1700

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    自衛隊讃える拍手が悪い? 朝日とTBSサンデーモーニング

    【メディア裏通信簿】 女史 あのさあ、国会で安倍晋三首相の所信表明演説のとき、自民党議員が拍手したことを朝日新聞や野党が批判していたよね。でも、民主党政権のときは鳩山由紀夫首相の演説終了間際に民主党議員が拍手して、朝日新聞も批判どころか、むしろ好意的に書いてたじゃん。ダブルスタンダードだよね。  先生 あいつら何を批判したいんだ? 拍手は領土、領海、領空を守る海保と警察、自衛隊に「敬意を」と安倍首相が呼びかけたんだろ。朝日は9月28日付の天声人語で「多くの職業のなか、なぜこの人たちだけをたたえるのか」と書いたが、実際、がんばっているのは海保と警察、自衛隊だぜ。 教授 命を危険にさらして、国に尽くす人を讃えるのは当たり前のことだと思いますけどね。 先生 しかも、軍人は海外では名誉ある仕事なんだぞ。英国王室の王子も軍人になるだろ。よく「士農工商」なんていうけど、昔なら自衛官は「士」だよ。でも、この頃、日本で豊かな暮らしをし、威張っているのは経済人、特に外資の人ばかりで、現場の自衛官や警察官、海上保安官は辛い思いをしても安月給で働いている。今の日本は「商工農士」だよ。(笑) 女史 批判した人たちは安倍政権が全体主義的だといいたいんでしょ。インターネット上の批判は、もともとナチスのヒトラーを思い浮かべるとか、そういう発想だったけど、さすがに、朝日がそう書いたら、ヤクザのインネンになっちゃうから、わけの分からない書き方をしたんじゃない。 先生 ま、自民党も拍手するだけじゃなく、国会議員なんだから領海・領空を守るための法整備、もっといえば憲法改正発議をしっかりやってほしいけどね。しかし、10月2日放送のTBS系サンデーモーニングもひどくて、自衛隊を賞賛することに疑問を投げかけ、青木理が「一歩コントロールを政治が誤ると、非常に危険な組織」だといって、「政治の劣化」「気持ちが悪い」と批判していたな。番組は最後に障害者や高齢者への事件などで「また弱者が標的に」というテーマで議論したんだが、東大教授の西崎文子が「歴史の中で繰り返されている。19世紀末ぐらいに社会進化主義があって、適者生存の思想が広まって…」と言うと、青木は「ヘイトスピーチもそう」、ヒゲの岸井成格は「不機嫌の時代、不寛容の時代になった」と言っていた。しかし、本当にそんな時代になったかね。陸陸上自衛隊による国内最大の実弾演習「富士総合火力演習」 「74式戦車」=8月27日、静岡県・東富士演習場(尾崎修二撮影) 編集者 障害者や高齢者を傷つけるのと、ヘイトスピーチは関係ありますかね。共通点はどっちもダメということだけでしょう。そこに「適者生存」「不寛容の時代」なんて大袈裟じゃないですか。 先生 「弱者」「弱者」というが、適者生存でいうと、いま人間に「弱者」と見える人だって、実は「強者」かもしれない。 編集者 どういう意味ですか?  先生 適者生存は種の単位で起こることで、恐竜のような時代・環境の変化に適応できない種が滅びていくことだよな。種が生存するには、それぞれの種の中には多様性がないといけない。時代・環境が変わったら、例えば人類のように弱者とみられていた者が強者となって、それが種をつなぐのかもしれないからだ。しかしそれは今、分からないんだ。そういう意味で真の「弱者」「強者」は神にしか分からないのに、それを「弱者」と決めつけ、「適者生存」をいうのは人間の傲慢だろ。 それはともかく、いまだに日本では相変わらず軍事アレルギーが強すぎる。9月28日のNHKクローズアップ現代は「“軍事”と大学」について取り上げて、日本の科学者達が基本的に軍事目的の研究は行わないという現状の是非を論じていたんだが、基本的に軍事はダメだという視点だった。番組で、ノーベル物理学賞の益川敏英が批判的に説教していたし。 女史 外国では科学者の軍事関連の研究は当たり前なのにね。青色発光ダイオードで、同じノーベル物理学賞を取った米国の中村修二さんは「こちらの大学で研究する上では、米国籍がないと軍の予算がもらえないし、軍に関係する研究もできない。それで市民権を取得した」って、日経新聞に答えてたんだよ。  先生 SAPIO11月号で韓国人の在日差別を特集していたが、差別の原因の一つに、在日が韓国本国で兵役が免除されてきて、それが「不満の種となってきた」とあった。差別の是非はともかく、韓国人も自国のために命をかけることに価値を認めているんだ。  女史 スウェーデンでは徴兵制復活が決まったよね。今度はノルウェーは女も徴兵の対象になるんだって。 教授 ちょっと前に、スイスでは徴兵制の是非をめぐって国民投票をやったら、徴兵制維持派が圧勝しましたね。 女史 なのに、何なんだろうね、日本人は。国民が自国を守ることは立派なことなのにね。官僚は待たせればいい? 官僚は待たせればいい?  教授 しかし、人気映画シン・ゴジラで自衛隊がよく描かれていることを、朝日新聞が10月6日付朝刊で「自衛隊像、銀幕で変化」と取り上げたときは、そう悪意は感じられませんでしたね。 編集者 防衛省の協力で撮影された映画だから、反軍事で批判しているんじゃないんですか。 教授 いえいえ、どっちかというと自衛隊に好意的なんですね。国民の自衛隊の評価も定着して、朝日新聞も変わってきたのはいいことなんでしょうが、とんがっていない朝日を読むのは、なんか寂しい気もしますね。(笑)「シン・ゴジラ」のワンシーン 女史 教授、それじゃあ本末転倒じゃん(笑)。そういう朝日新聞に、物足りなさを感じている昔ながらの過激な左翼の人たちは、ネットで逆に怒っているけどね。 教授 これから朝日新聞がどんどん論調を変化させて、産経新聞と変わらなくなったら、産経の方が存在意義を問われますよ。 編集者 え! それも困る…。 教授 (笑)まあ、社説では、相変わらずでしたけどね。稲田朋美防衛相が月刊正論の平成23年3月号で「子ども手当分を防衛費に回せば、軍事費の国際水準に近づく」「長期的には日本独自の核保有を、国家戦略として検討すべきではないか」と発言していたことを批判したうえに、国会での発言の軌道修正を取り上げて「なぜ持論を一変させたのか、その説明が足りない」と叩いていましたね。  先生 反政権としてはツッコミ甘いんじゃないか(笑)。俺が朝日新聞なら、もっと厳しく突っ込むけどね。8月15日にアフリカのジブチに視察に行って、全国戦没者追悼式にも出ず、靖国神社参拝もしなかったことを民進党の辻元清美に追及されて泣いていたが、自衛隊を率いる者として、部下の自衛官が見たら、どう思う。 編集者 しかし、あの涙は過去の戦争で命を落とした人たちのことを思ってのものでは?  先生 だったら、稲田は靖国に行けば良かったじゃないか。 編集者 現実の国際政治に配慮せざるを得なかったから、行きたくても行けなかったんじゃないですか。 先生 俺は、大臣として首をかけても行くべき価値があったと思うぞ。それから、稲田は弁護士出身で法律の専門家なんだから、国会答弁もしっかりしなきゃダメだろ。防衛行政のトップとして「防衛費」というべきところを「軍事費」と言い間違えていたぞ。 編集者 間違いはあったかもしれませんが、稲田先生は保守にとって大事な政治家ですし、弊誌にも何度も登場してくださって…。 女史 まあ、まあ。編集者が正論常連さんを擁護したい気持ちはは分かるけど、興奮しない。 編集者 す、すみません…。  女史 でも、左翼の人たちの中にも、防災訓練で東京・銀座に装甲車が走ったとき、「銀座に戦車を走らせた」って、混同して批判していた人もいたからね。(笑)   先生 国会で思い出したんだが、民進党の階猛が、翌日の衆院予算委員会で審議をめぐって、役所への質問通告を午前0時過ぎまでしなかったそうだ。「しかも、『全省待機』をかけたので、全省の多数の官僚が0時過ぎまで待機させられた。この官僚たちは、200台のタクシーで分乗帰宅、と政府筋から聞いた。民進党に働き方改革や行革を語る資格はない」と、公明党衆院議員の遠山清彦がネットのツイッターで怒っていた。  女史 公務員だからって、いくらでも待たせればいいという発想は、ひどい労働条件を押しつけるブラック企業の経営者と同じだとみられたんだろうね。ネットでも評判良くなかった。   教授 民進党は「ワークライフバランス」なんて調子の良いこと言ってますが、やっていることは全く違いますね。  編集者 ただ、読売新聞によると、階氏は「質問通告は、午後10時台に秘書に渡した。意図的に通告を遅らせたわけではない」と釈明したそうです。   先生 そもそも、官僚が国会議員の質問取りに過剰な労力をさく永田町の悪しき慣習は国益とは何の関係もないと思うぜ。今後は国会質問の事前通告の時間と内容を「◯◯議員から◯◯大臣に、何時何分に、こういう質問の通告が来ました」とネットで公開して、議員が政府に嫌がらせをしているのか、政府が都合の悪い質問を誤魔化そうとしているのか、有権者の国民に判断してもらえばいい。ただ、そうしたら、その質問に自動的に回答するパソコンのアプリができて、国会で質問する必要もなくなってしまうけど。(笑) 女史 ネットの「ヤフー知恵袋」で、一般人の誰かが質問に答えてくれるかもよ。(笑)  教授 人工知能、つまりAIが答えてくれる時代になるかもしれませんね。   先生 そうなると、国会審議自体がいらなくなる(笑)。議会制民主主義のために国会は重要なんだが、これからは人間が考え、人間が議論するだけの意味がある審議でなければ、必要なくなるということさ。この頃は法令作成も人工知能でできるらしいぞ。過去の判例も全部入れれば、人間より人工知能の方が早いし正確らしい。   教授 となると、集団的自衛権を認めるか認めないかで大もめにもめた内閣法制局も、そのうちいらなくなりますね。(笑) 文藝春秋をやめた大物?文藝春秋をやめた大物? 先生 文藝春秋の編集後記みたいな「社中日記」があるだろ。11月号のを読んだか? 正論のライバルだった保守系オピニオン誌諸君の編集長だった仙頭寿顕のことが出ていたぞ。   編集者 文藝春秋の編集者で、保守論壇では有名な方ですよね。 先生 社中日記にはこう書いている。「仙頭寿顕が社を去ることに。…『会社を辞めた後は?』との質問に『しばらく古本屋巡りでもするかな』と煙に巻き、靖国方面へと立ち去った…」とね。仙頭がその後、どこへ行ったか知っているか? 編集者 弊誌のライバルWiLLを出しているワック社に行ったらしいですね。 先生 そう、そこで雑誌歴史通の編集長になったそうだ。仙頭が元諸君編集長なら、WiLLの編集長、立林昭彦も元諸君編集長。正論のライバルはいまも、諸君なのかもしれないな。(笑)  編集者 「諸君」は実はまだ生きていたというわけですか? 今は月刊Hanadaという売れている保守系雑誌あるし、競争が激しくて勘弁してほしいな…。 女史 (笑)弱音を吐くな、編集者?  GHQの押しつけじゃない? 先生 インターネット版の朝日新聞の9月25日06時00分に「憲法9条の理念と現実 専門家2氏に聞く」という記事が出ていたが、9条大好き朝日新聞らしい、いい記事だったぜ(笑)。「2氏」のうち、一人は政治学者の山口二郎だが、果たして憲法9条の専門家かね? もう一人の古関彰一という独協大学名誉教授は「憲法は単純にGHQが押しつけたものではありません」と独自の説を主張していたが、GHQに強いられたことは、みんな知っている史実だぜ。それで、「憲法史」が専門だと言うんだから、ビックリだね。  編集者 「GHQが押しつけたものではありません」の前に、「単純に」と言っているところがミソでしょう。押しつけられたことを否定するものではないけど、日本側も自主的に改正した一面もあるから、「単純に」押しつけられたものではない、と言っている。 教授 巧妙ですね。文章の言い回しを利用して、結局「押しつけ」を否定しているわけでしょう。ネット版ではなく、新聞紙面には慶応大教授の添谷芳秀氏が改憲について書いているのですが、「戦後憲法と表裏一体をなす、侵略や植民地支配といった過去に向き合わなければ、国際社会に理解される改憲の展望は開けようがない」と朝日的な史観を引きずっていましたね。改憲論議をするためには、まず反省しろというんですね。そういえば、毎日新聞10月6日付朝刊に出ていましたが、九条の会の呼びかけ人が高齢化したり、亡くなったりしたので、12人の世話人を補強したそうですね。 先生 あ、この記事かな。「護憲の担い手、高齢化の一途」。ある意味、当然だろ。あんなのにしがみついているのは、安保闘争大好きの左翼じいさん、左翼ばあさんばかりだしな。 女史 9条のノーベル賞を狙っているみたいだけど、今年も残念だったね。(笑) 寂聴さん、死刑賛成はバカ? 女史 僧侶の瀬戸内寂聴さんは日弁連の死刑制度に関するシンポジウムにビデオメッセージで出演したんだけど、死刑制度を批判しただけじゃなくて、「殺したがるバカどもと戦ってください」と発言したんだって。犯罪被害者もいるのに、「バカども」ってヒドくない? さすがに日弁連もお詫びしたって。あの人って結構、放言するよね。東京都知事選のときも鳥越俊太郎さんを応援するのに、「あの厚化粧の人に都知事になんかなって欲しくない」と、小池百合子さんに対する悪口メッセージを出してた。 瀬戸内寂聴さん 先生 その鳥越を10月7日にフジテレビ系バイキングが出演させて、「鳥越俊太郎氏生出演!小池都政を斬る」とやっていたが、小池も、都知事選であんなショボい選挙戦をし、女性問題も報じられた鳥越なんかに都政を斬られたくないだろうな。前にTBSも出演させていたが、鳥越なんか出さなきゃいいのに。先月号でも言ったが、よくテレビ局が都政の問題で猪瀬直樹を出演させているが、あれもおかしいだろ。猪瀬は、公民権停止なんじゃないか。 編集者 弊誌10月号でも猪瀬さんには登場いただきまして…。内容があれば、面白いし、ダメなんでしょうか。 先生 まあ、新聞や雑誌はともかく、テレビは政治的な公平中立を求める放送法が規制する公共の電波だろ。一票の行使も認められない人物に政治を語らせるのは納得がいかないね。神社陰謀論がSAPIOに神社陰謀論がSAPIOに 先生 SAPIO11月号は「安倍政権を動かす『神社本庁』の密事」という特集をやっていたな。   女史 また出た! 安倍政権を動かす組織の陰謀シリーズだね。   教授 日本会議のときと全く同じやり方ですね。神社本庁が、安倍政権を操っているわけがないし、そこまで政治的影響力はありませんよ。「7万9000の神社から10億円の収入」と大袈裟に書いていますが、たった10億円で、政権を動かせるわけないでしょう。「大臣20人中19人が『神道政治連盟メンバー』」とも書いていますが、自民党の国会議員は選挙対策もあってほとんど入っているんだから、当たり前ですよ。1人だけ入っていない大臣は公明党ですよ。これも、当然ですよね。(笑)   先生 こんなのが許されるなら、自民党支持の大きめの政治連盟なら、なんでも「政権を動かしている」と攻撃できるぜ。  教授 北朝鮮の拉致問題に取り組む拉致議連にもみんな入っていますが、じゃあ、「安倍政権を動かす『救う会』」と書くんですか。それは決して、やらないわけでしょう。  女史 解散したSEALDsのメンバーは、いろんな左派リベララル的な運動に関わっているから、「左翼を動かすSEALDs」っていう陰謀論もできるよ。(笑) 解散にあたり記者会見する、若者グループ「SEALDs」の奥田愛基さん(左端)ら=8月6日、国会 編集者 しかし、SAPIOはどっちかというと右派系なのに、なんでこんな特集を組んだんでしょうね。 教授 雑誌が売れると思ったからでしょう。日本会議の批判本も売れたので、二匹目の泥鰌を狙ったんじゃないですか。「べっぴんさん」はまた… 先生 NHKの朝ドラ「べっぴんさん」は、子供服メーカー「ファミリア」の創業者をモデルにしているらしいが、最近、そういうの多いな。その前は「暮らしの手帖」のとと姉ちゃんだし、ニッカウヰスキーの創業者をモデルにしたマッサンもあった。 編集者 そろそろウイスキー飲みたいですね。ノドが鳴ります。 先生 そういう問題ではないんだよ。これ、結局、名前は出していないけど企業のCMになってんだろ。そのくせ、公共放送を気取って、ドリンクがどこのメーカーか分からないように缶にモザイクみたいなのかけたりなんかしてんだぜ。   教授 確かに、マッサンのせいか、飲み屋でニッカのウイスキーの値段も上がりましたね。けしからんことに。  女史 教授も結構、ウイスキー好きだよね。(笑)  先生 NHKは本や雑誌は堂々と番組で取り上げているけど、よく考えたら、あれだって出版社という私企業が出している商品だよな。NHKで紹介された本は売れるだろうから、著者と出版社はラッキーだろう。それなのに、月刊正論の執筆者のような人の本は、まず、取り上げられないもんなー。  編集者 (笑)   教授 笑い事ではないんです。切実な問題なんです。  先生 それで公共放送だといって、パソコンやスマホも受信料の対象として検討されるそうじゃないか。ワンセグ付きの携帯電話も受信料をとろうとして、さいたま地裁で敗訴したけど、控訴したらしいじゃないか。どれだけカネとろうというんだよ。朝日のご譲位報道は意外に…朝日のご譲位報道は意外に… 教授 天皇陛下の譲位の「ご意向」をめぐる議論では、民進党の野田佳彦幹事長が党独自で皇室典範改正案を出す方針を示しましたが、こんな問題で政治的なパフォーマンスをして、国民の対立を煽るのは得策ではないでしょう。自らのタイミングの悪い解散で首相を首になった野田氏は、民進党幹事長に返り咲いて、ハイになっているんですかね。上から目線で安倍総理の消費増税延期の批判をしていましたが、週刊文春10月13日号で宮崎哲弥氏が「財政右翼」とからかっていましたよ。 先生 SAPIO11月号では小林よしのりがゴーマニズム宣言で男系維持派の渡部昇一や八木秀次たち保守論客をバカみたいな絵で描いていたな。これ、これ。 教授 ひどい描き方ですね。しかも名前を書いていない。文句を付けられないように、わざと書いていないんでしょうね。彼は、天皇陛下のお言葉があったのだから生前退位の法改正を進めるべきだという意見です。ゴー宣でも「承詔必謹の本を出す」と書いていますが、陛下のお言葉で法制度を改正したら、陛下が政治関与されたことになるんですよ。それが分かってないとしたら浅薄ですよ。この問題で意外にいいのは、朝日新聞なんです。盛んに、ご譲位に慎重な保守派の知識人を引っ張り出していますね。9月10日付朝刊では「男系維持派 困惑」という見出しで、大原康男氏、加瀬英明氏、八木氏らのコメントを並べて載せていました。皇室を大切に思っている保守派が「生前退位」で困っているという記事なんですね。正論に掲載された渡部氏やWiLLの加地伸行氏らの論考3本も紹介していましたよ。翌11日付の朝刊では、やはり男系維持派で、慎重な議論を求める櫻井よしこ氏、明確な反対派の八木氏のインタビューを、写真付きでかなり長く載せていました。 先生 いずれも二階堂友紀という記者の記事なんだが、朝日にしては、彼女の記事はいいよな。   編集者 たしかに朝日がこれだけ保守系の論客の意見を、なんの悪意も感じさせずに載せているというのは、画期的ですね。  教授 しかし、後から加地氏を「男系維持派」としたのは誤りだったという趣旨の訂正が出たのは面白かったですね。「掲載した識者のうち、加地伸行・阪大名誉教授には男系維持の工夫に関する論考はありますが、加地氏から、男系・女系天皇をめぐる問題については慎重な態度をとっている、との指摘がありました」とね。 編集者 よく意味が分かりませんが。 教授 この訂正文をみる限り、加地氏に「男系維持の工夫に関する論考」があるから男系維持派として並べたのに、本人からクレームを受けたと読めますね。  女史 (笑)  先生 問題は、このように反対論、慎重論の論理を詳しく説明している記事が、保守派を自認する産経新聞でもなく、いわんや読売新聞でもなく、朝日新聞によく出ているということだろ。産経も読売も、ダメじゃないか。 編集者 ただ、産経も読売も、自分たち自身が本音では「困惑」している当事者でもあるから、はっきりものが言えなくて、当事者じゃない朝日だから、冷静にものが言えるのでは…。 先生 少なくとも、月刊正論ではもっと反対・慎重論を明確にして、議論を喚起すべきじゃないか。一向にそんな気配はないが。 編集者 また、そんな厳しいことを…。9月号でも10月号でも、渡部先生や八木先生の反対論を載せていますよ。しかし、天皇陛下のお考え、ご意向は、尊重申し上げなければならないということもありますし、かといって、陛下が政治的発言をしたことになってはいけないし、いろいろ考えると、なかなか…。竹田恒泰先生の連載を読んでも、そこのところを悩んでいるのが、分かるじゃないですか。勘弁してください。 女史 しかし、その結果、重要かつオイシイ論点は、君らが日頃から散々、批判している朝日新聞にもっていかれているじゃないか。それでいいのか。確かに正論には鋭い反対論も載っているが、編集部がつける見出しは、そこをはっきりさせないような見出しになっている。いろんなところに“配慮”しすぎて、よく分からない。  編集者 しかし慎重に…。  先生 そういう弱気な性格が、先月号の編集後記操舵室からにもよく出ている。 編集者 え?  先生 編集長が執筆者に叱られたり、社内や編集部員や読者にも気を使ったり、しまいにはせっかく女房と飲んでいるところに、「某先生」に呼び出されて、嫌々、飲み屋に行くという話が書いてあっただろ。まさか、あの「某先生」は、俺のことじゃないだろうな。嫌なら、飲みにこなくてもいいんだぞ。(笑)  編集者 いやいや、そんな意地悪を言わないで下さいよー。       (文中一部敬称略)※この記事は、月刊「正論12月号」から転載しました。

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    自民党関係者が政敵蹴落とすため赤旗に情報流すこともある

     2009年6月に野中広務氏、2013年1月に加藤紘一氏、2013年6月に古賀誠氏と、自民党重鎮が日本共産党の機関紙である「しんぶん赤旗」に次々と登場し話題を集めた。2005年の離党まで共産党No.4として辣腕をふるった筆坂秀世氏(元参議院議員)と、ジャーナリストとして赤旗と関わり、先般の都知事選では共産党と対峙した上杉隆氏が、なぜ彼らが赤旗に登場したのかについて語った。上杉:敵対関係に見える自民党と共産党は、実はつながりが深い。自民党にとって赤旗は党内派閥や大手メディアと違い、「永遠の敵」で利権が重なりません。自民党関係者が、党内の政敵を蹴落とすため、赤旗に情報を流すこともある。 自共で言えば、近年は野中広務氏ら自民党重鎮が次々と赤旗に登場しました。政治の本質は権力闘争であり、政権を取ることが最大の目的ですが、共産党は現状では絶対に政権を取れないので、真の脅威ではない。だから彼らが赤旗に出て、ガス抜き的に政権批判をしても全然問題にならないんです。記者会見する共産党の志位委員長=東京都渋谷区の党本部筆坂:自民党の重鎮が登場すると赤旗は妙にはしゃぎますね。でも、もし僕が自民党機関紙に登場したら、赤旗は「裏切り者!」って激しく批判するだろうね(笑)。上杉:情報網で言えば、組合関係からの内部告発的な情報提供もあるんですか?筆坂:昔は大企業に勤める党員から情報が流れることもあったけど、今は企業に党員が少なくなったから情報収集能力は落ちています。上杉:ただし官公庁には、情報網が未だに残っています。都庁なんか共産党の牙城ですから、赤旗でも都知事選を大きく扱っていました。筆坂:組合の他に赤旗には通信員という制度があり、地方の党員が定期的に記事を送ります。少なくなったとはいえ、30万人を超える共産党員が全国津々浦々に組織を張り巡らせる。これが赤旗の強みでしょうね。上杉:かつて田中角栄の金脈問題を最初に追及したのも、長岡市議会の古参の共産党議員でした。僕は何度もこの地方議員を取材したけど、彼は市の財産を角栄さんと越後交通が私物化することに腹を立て、ひとりでコツコツ調べたんです。 余談ですが、後にこの議員の自宅が火事で全焼したとき、角栄さんが駆けつけて100万円をポンと出した。議員が何度拒んでも、「困ったときはお互い様だ。同じ新潟県民じゃないか」と譲らない。それでも断る議員に対し、「借りたと思え。いつか返しにくればよい」と半ば強引に金を手渡した。天敵をも呑み込む角栄さんは、さすがですよね。うえすぎ・たかし 1968年東京都出身。鳩山邦夫氏の衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者を経て、2002年よりフリージャーナリストとして活動。政界、メディア問題、原発問題など、多岐に亘るテーマで執筆。2016年、東京都知事選出馬(4位)。ふでさか・ひでよ 1948年兵庫県生まれ。高校卒業後、三和銀行へ就職。18歳で日本共産党入党。25歳で銀行を退職し、専従活動家へ。国会議員秘書を経て参院議員。共産党ナンバー4の政策委員長となるも不祥事を契機に議員辞職。2005年7月離党。主な著書に『日本共産党』。関連記事■ 赤旗独自の情報網、内部告発は大企業や官公庁勤務の党員から■ しんぶん赤旗を読み解く9つのキーワード■ 「しんぶん赤旗」 政権に不都合な情報も調査する諜報機関■ 丸川珠代 三原じゅん子の自民党内での台頭に愚痴をこぼす■ 赤旗 優秀な記者は自分で記事を書かないから信用される

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    「秘密党員」は実在する! 元日本共産党員が20の疑問に答えます

    て自主的な防衛力を持つ」立場だったのです。これが1970年代に公明党から「共産党は仮面をかぶった改憲政党だ」と非難され、その反動からか80年代には護憲色を強めます。最近、志位和夫委員長は自衛隊を「憲法違反の存在」としつつ、「急迫不正の侵略を受けたら、自衛隊を活用するのは当たり前」と述べています。さらに「戦争(安保)法制反対・廃止」の野党共闘の旗を振るようになると「当面、現行の日米安保体制を容認」とまで表明したのです。志位委員長が失脚でもしない限り、この方向は変わらないでしょう。南スーダン国連平和維持活動(PKO)参加のため首都ジュバの空港に到着した陸上自衛隊11次隊の先発隊 Q3 共産党は暴力革命を目指しているのですか  A3 たしかに戦前の日本共産党は「絶対主義的天皇制」を打倒するために「対外戦争を内戦へ」と主張する暴力革命路線でした。戦後も朝鮮戦争期に日米当局側が強行したレッドパージで非合法化された時、ソ連や中国からの指示に従って党主流派は「武力闘争」を準備。中国革命ばりに農村部に根拠地を作るとする「山村工作隊」の活動やお粗末な火炎ビン闘争を展開しました。 しかし今日では党員の高齢化、「平和運動」に長年傾倒してきたことによる党内の「戦争ぎらい」蔓延で、暴力革命党なんて全く受け入れられない素地ができています。共産党がかつて掲げた「敵の出方論」とは、「情勢によっては権力(政府)側が暴力的に革新勢力に対抗してくることもある」という警戒心喚起で、「党の事務所に武器を隠しておけ」なんて方針ではないですよ。選挙と「赤旗」拡張中心の党活動にどっぷり浸かった上、お年寄りが圧倒的に多い共産党が暴力革命なんて、心理的にも物理的にも不可能です。役員に任期はないのか Q4 志位和夫さんは長く委員長をしていますが、役員に任期はないのですか A4 党規約では、党員は大会の代議員や指導部たる役員を「民主的に選挙」するとされています。しかし、実際は所属する党組織(末端は党員3人以上の党支部)の一級上の党機関に関する代議員や役員しか選挙できません。「立候補」も認められていますが、代議員や役員の候補は党機関執行部があらかじめリスト化し、選挙ではこのリストに◯付けする信任投票がされます。事実上、指導部主導の根回しで決まるということですね。共産党の志位和夫委員長=11月16日、東京都渋谷区の党本部 こうした形を何段階か繰り返して選ばれた代議員たちが2~4年に一度開催される全国的な党大会で中央委員会の役員を選出します。支部、地区党会議、都道府県党会議で各執行部によるリスト化でふるいにかけられてきた代議員に、党中央へ批判的な者が入っている可能性は、ほぼゼロです。 党大会に提出される中央委員会の候補者リストも最高指導者たち(志位委員長や副委員長たち、小池晃書記局長、なぜか不破哲三社会科学研究所長)が決め、代議員は◯付けの信任投票をするだけ。全国レベルの会議では代議員はリストの役員候補者を個々には知りませんから、執行部への信頼を根拠に機械的に◯付け投票し、晴れて全員信任となるわけです。 更に最高指導者たちの意のまま選ばれた中央委員の最初の会議でこれもあらかじめ根回しされたメンバーがその上の幹部会委員として口頭で推薦され、拍手で承認。次の幹部会委員の最初の会議でも同じ繰り返しで最高指導者の最側近集団である常任幹部会委員(21名前後)を選出…。 結局、すべてがトップとわずかな側近たちで決められているのです。健康を壊したり、上級の不興を買わない限り、党役員に再選を妨げる規定はありません。党のトップは自分を含め、お気に入りの役員を事情が許せばいつまでも再任させることができます。 幹部の退任や降格は、何らかのトラブルや「抗争」があってのことです。故宮本顕治氏の議長からの退任も「知的後退が見られる(ボケた)」とつぶやいた不破氏によるクーデター的な強硬措置で行われたことが元党ナンバー4の筆坂秀世氏の著書「日本共産党」(新潮新書)で明らかにされています。 Q5 共産党職員の給与は平等じゃないんですか。不破さんはなぜ豪邸に住んでいられるのですか A5 「日本共産党の謎」の筆頭が最大のカリスマ=前議長の不破哲三氏の、神奈川・津久井湖近くにある敷地千坪の豪華山荘暮らしですね。不破氏も党本部職員になる前の新婚時代(半世紀以上前)は、都営団地に住んでいた薄給のプロレタリアート(無産階級)状態で、どうやって蓄財したのか想像もつかないでしょう。 秘密は二つ。一つは、党の一般職員と幹部の給与格差です。党中央の頂点に近い常任幹部会委員になると年収で最低1000万円以上が保証され、中央委員以上の医療費自己負担分は「党幹部の保全のため」との趣旨で党中央財政部が支払ってくれます。若い職員が「ワーキングプア」並みの薄給、地方の党職員は遅配欠配がザラであることを考えると破格の待遇です。 もう一つは著書の印税。「実績と能力がある」中央幹部は著作を出版し、印税は個人で受け取れます。党内には「幹部の印税は中央財政に繰り入れられる」と説明していますが、ウソ。不破氏の著書は党機関紙「赤旗」でどんどんタダで宣伝し、党員に購買を煽る一方、少ない一刷分の印税を党に寄付したら、二刷分以降の印税はすべて著者の懐に入ります。筆者の調べでは現職衆議院議員時の不破氏の印税収入は年間900~1500万円(資産報告書の閲覧による)。 最近も著書刊行は盛んですから、かなりあるでしょう。日常生活のために党職員が常時5名、不破家に宿泊体制で配置され、運転手付き乗用車や洗濯・炊事まで不破夫妻の暮らしは党丸抱えです。この上、高額給与と印税を手にすれば、暮らしは富裕層並み。もっとも不破氏のカリスマ性あってのことで、志位委員長のお宅は公団分譲マンションですよ。どうやって若い党員を集めるのか Q6 共産党の「民主集中制」って、本当に民主的なんですか A6 正式には民主主義的中央集権制といって「ソ連の国父」レーニンが革命党の規律として導入したものです。全体方針は党員が民主的に討議して決定し、多数決で決めたことには意見の違いを保留して全党員が従うこと、上級機関の指導に下級組織や党員は従うことなどが厳密に決められ、党員同士が横の連携をとってはならないことが「分派の禁止」として強調されています。派閥やグループが競い合う自民党や民進党の総裁選、代表選なんて共産党にはあり得ないですね。 民主集中制の最大の効果は、上級に君臨する指導者に対する下部からのチェック力が落ち、上から下への支配がやり易くなること。「集中」という言葉は、情報と権力の上部への集中を象徴します。これで上位に立つ者が権力抗争で絶対優位を確保できます。過去、各国の共産党で不正常な形で追放(共産党政権では最悪の場合、逮捕・処刑)される幹部が相次ぐ原因になりました。 日本共産党は「組織と国家のルールは別」として、民主集中制を国の仕組みにしないと説明しています。しかし、現実にソ連や中国などの社会主義国では形だけの議会を含む国家システムに公然と民主集中制を採り入れていましたから、説得力ないですよね。 日本共産党が単独政権を獲得し「共産党独裁?」なんてまずないですが、透明性を増して開かれた党になるため民主集中制はやめるべきですね。 Q7 最近はどうやって若い党員を集めているのですか  A7 党機関紙「しんぶん赤旗」で「共産党への期待が高まり、若い人が最近の入党者の2割もいる」なんて書かれています。裏を返せば八割は「若くない人」ということですね(笑)。実際、筆者が党職員の頃も「20代、30代の青年党員獲得に党の浮沈がかかっている」なんて話し合われていましたが、一向に若い党員は増えませんでした。共産党の指導下の青年団体、日本民主青年同盟(民青)もどこにあるのかわからないくらい、存在感がありません。 結局、どうしたかというと全国レベルで党員のお子さんたちをターゲットにさかんに働きかけました。20年以上前からこんな苦し紛れなことをやったせいか、ここ数年、国会議員の当選者にも「二世議員」が現れていますね。参議院議員の辰巳孝太郎さんや吉良佳子さんなんかがそうです。 しかし、こんな苦肉の策では党員若返りは進まず、街頭宣伝でビラ撒きをする党員たちはお年寄りばかり。 え? シールズですか?あれは共産党や民青の方からすり寄っていましたが相手にされていませんでしたよ。一部の党活動家が「シールズ」を僭称して、嫌われていましたが(笑)。シールズの中心にいた学生さんたちは特定の政治勢力に取り込まれないよう巧みに振る舞っていましたね。共産党の不破哲三前議長(右)と「SEALDs(シールズ)」の奥田愛基氏 Q8 専従職員の給与レベルは… A8 筆者が党から除籍される前の数年間、党中央委員会職員の平均的な年間給与は税込で400万円くらい。30歳未満は200~250万円前後で生活的に楽じゃなかったです。しかし、地方の党機関は低い給与すら遅配、欠配が多く、家族の収入をあてにしなくては自活すらできないのが実態でした。党地方機関は独立採算制で、数は少ないのですが財政状況のよい党機関の職員給与が他よりよいこともあります。例えば「赤旗」部数が多く、公務員や大企業サラリーマンの党員がいて党費収入が多い東京都委員会の職員給与は、中央委員会より月当たりで数万円くらい高いのですよ。まあ、「赤い貴族」の不破さんの破格の収入と比べたらお話にもならないですが…。国会議員は報酬を自分で使えるか Q9 党財政は赤旗の売り上げと党費で足りているのですか A9 1980年代半ば、「赤旗」の部数が300万部以上、党員数が40数万もあった当時の宮本顕治委員長が「人は石垣、人は城」と武田信玄公の言葉を引き「50万人の党員、400万の読者を実現する暁には、全国一律に党専従(職員)の給与を地方公務員並みに引き上げる」と打ち出したことがありました。薄給に苦しみ続ける党職員や家族は、もうじき届きそうな党勢目標を示したこの言葉に希望を持ったものです。 しかし、それから30年以上たっても、目標が達成されるどころかジリジリ後退をして今日、党員約30万人、「赤旗」読者120万前後の大後退。「企業献金、政党助成金は受け取らない」と胸を張り、党員が納める党費(実収入の1%)と「赤旗」代、個人寄付が収入のほとんどなので、財政状況は相当に厳しくなっています。党中央委員会の収入もここ10年で百億円くらい減っていますね。 Q10 国会議員は報酬を自分で使えるんですか  A10 共産党の国会議員については、歳費を党国会議員団の財政部が衆参両院から一括して受け取り、「寄付分」や社会保険や税分を引いて各議員に手取を支給します。国会議員1人あたりの寄付額は年間650~700万円前後です。基本的に、差し引かれた後の収入が党中央常任幹部会委員と同等にする考えです。 公設秘書の給与も「寄付」の形で党財政部が徴収していますが、あくまで「秘書個々人が自発的にやっている」というタテマエです。公設秘書になる党員には「君たちは中央委員会の職員の扱いだから、本来中央委員会の職員給与として支給する分の差額は党に納めてもらう」と説明され、同意しなければ公設秘書に採用されません。法律に照らすと、かなりグレーですよ、これは(笑)。秘書給与問題は共産党国会議員団のアキレス腱です。国の支出に関する問題であり、しかるべく丁寧に究明・追及がされるべきですね。 Q11 党員の負担は重いのですか A11 党規約では、党員は実収入の1%を党費として納めなければなならいとされています。専業主婦や生活困窮者は、会費的に月500円程度納めてもらう、なんてことが多いです。ただ、公務員や大企業サラリーマンなどは相当に収入があって、党費が月に数1000円以上の人もいるわけです。 金銭負担ではむしろ、「赤旗」や共産党傘下団体の機関紙(「新婦人しんぶん」「全国商工新聞」「民青新聞」など)の購読費や、選挙の都度と夏、冬に展開される活動資金や党専従の一時金支給のための「募金キャンペーン」が大きい。「党員一人あたりいくら」と募金目標を設定してはならないルールですが、党役員や地方議員になると1人あたり数万~100万円単位で募金目標を持たされ、周囲に頭を下げて集めたり、泣く泣く身銭を切ることになります。記者会見する共産党の志位委員長(左)と小池書記局長=10月16日夜、東京都渋谷区 さらなる負担は「赤旗」の配達・集金です。居住地で活動する党員は数十~100部前後の「赤旗」日曜版(週刊紙)や日刊「赤旗」の配達・集金をボランティアでやります。もちろん、体調の悪いお年寄り(党内多数派)には出来ませんから、下部の幹部(支部長、地区役員)や地方議員が過重な負担として引き受けなければならない。その上、上級からは「赤旗」や党員を増やせ、増やせと矢の催促…。共産党員の生活は「赤旗」の配達・集金と拡張に振り回されることとイコールで、あまりおすすめできません(笑)。 Q12 党員になるための要件は  A12 党規約では、「18歳以上の日本国民」で「党員2人の推薦」があれば入党申し込みができ、党機関、党支部で承認されれば党員になります。「反社会団体」(暴力団)の構成員は入党を認めませんし、他党の党員もダメです。警察や公安調査庁など破防法で共産党員を監視する側の人や自衛隊関係者も「権力側」として入党は認めませんし、党への接近を警戒しています。 日本以外の各国共産党は、国籍を入党の要件にしない場合が多いです。「プロレタリアート(労働者階級)に国境はない」というマルクス以来の国際連帯の精神が根拠で、フランス共産党、中国共産党には外国籍党員がいます。100歳で日本共産党を追放された故野坂参三氏はイギリス共産党に入っていますし、ベトナム建国の父ホーチミンや中国の周恩来首相もフランス共産党員でした。  秘密党員はいるのか Q13 秘密党員は、いるんですか A13 大企業の社員や官庁のキャリア官僚になった党員は「秘密党員」として扱われることがあります。雇用側が共産党員として気づかずに雇い入れた人や、学校の成績が特別に優れていて国家公務員上級試験への合格や大企業への就職が十分に期待できる学生党員から選ばれますね。将来、党が政権入りした際に「権力側に足場をつくる」という立場から、日常の党活動には参加させないで、いざという時に備える要員(スパイ用語では「スリーパー」)との位置付けです。日常の指導は中央委員会や都道府県委員会の役員が個別に担当していました。しかし党の仲間がいない中で長年過ごすと党員としての自覚が失われていき、離党したり連絡を絶ったりという人が大多数ですね。ただ、今も「秘密党員」は官庁や大企業にいるとは思います。 Q14 「赤旗」は赤字ですか  A14 「赤旗」日曜版は発行数が100万部前後で、今でも日本で最大部数の週刊紙です。ところが、日刊「赤旗」は20万部くらい。全国紙としては採算割れで、月々数千万円以上の赤字が出ています。それを日曜版の収益でカバーして、帳尻を合わせていますが、「赤旗」全体の収益は長期的にガタ落ちです。立て直し策として考えられるのは、日刊「赤旗」の休刊ですね。全国いくつかの印刷所で作られ、毎朝、宅配体制を維持するためにトラック輸送網が敷かれていて、そのために党傘下の輸送会社や用紙会社まで運営されているほど。とてつもない人員資材が投入されても、20万前後の部数の収入では賄いきれません。「赤旗」日曜版 Q15 「赤旗」を読んでいない党員もいるのですか  A15 党員は毎日の「赤旗」を読んで党の方針を知るタテマエですが、公称30万人の党員数より日刊「赤旗」の部数がかなり下回っています。もちろん、読まない党員がいるからです。これは、党員の高齢化(それに伴う貧困化)と入党のハードルを下げたことの二つがマイナス要因になってますね。「もう視力が追いつかないから、日刊の方は勘弁して」と党専従の時に高齢者党員からよく言われましたよ。少ない年金やアルバイト暮らしですから、月数千円以上の購読費用はつらいでしょう。後は「ともかく党員を増やせ」と上級から尻を叩かれて、地方議員が苦し紛れで自分がお世話した人を入党させる。入った方は議員さんの後援会員になったくらいにしか感じていない。だから、「支持してるんだから、そんなに高くて難しい新聞、読まなくてもいいじゃないか」となってしまう…。 まあ「活字離れ」で一般の新聞も部数が低迷している折、「赤旗」の部数が減るのは世の流れとして仕方ないと思いますけどね。 Q16 「赤旗」には独特の自粛表現があるそうですね  A16 最近の「赤旗禁止用語」の事情はわからないですねえ…。ただ、昔の面白い事例でいくと、1990年代まで韓国のことをずっと「南朝鮮」と表記しましたね。「アメリカかいらい政権には正統性がない」という含意があってのことです。逆に北朝鮮のことは「朝鮮民主主義人民共和国」です。その時々の政治的スタンスで「赤旗」紙面や演説などで使う言葉が変わるのも共産党員らしい「言語文化」といえそうですね。党内に派閥はあるのか Q17 党内に派閥はありますか  A17 「民主集中制の規約で共産党には分派や派閥はない」と、党幹部たちはしばしば胸を張って言います。でも、派閥やグループって、政党に限らず会社にも地域社会にもありますよね?特に「同窓生」なんてのは、絆が強く仕事や社会生活で相互に融通を利かすなんてよく聞きます。タテマエは別にして最近の党中央委員会には、立命館大学出身者による「派閥」があります。頂点はかつて書記局長もやった市田忠義副委員長・参議院議員です。その下に穀田恵二常任幹部会委員・衆議院議員などが続き、書記局機構やこれらの議員の下につく秘書には立命館大学出身者が驚くほど大勢います。 穀田議員は、かつて「ラブラブメール事件」と呼ばれる不倫疑惑が週刊誌で騒がれましたね。大学後輩の党員を秘書に据えて個人的な上下関係をつくり、相手女性との密会場所の手配や送迎までさせていた話です。当該秘書だった方がこれを嫌がってクビになり、週刊誌で暴露されたのですが、穀田議員はなんら党内で咎められませんでした。立命館大学出身者の誰かが庇ったおかげかどうかは分かりませんが(笑)。 Q18 では東大閥は…  A18 歴代の党トップが東大卒だったため「東大閥がある」なんて言われたりしますが、中央委員会は立命館大学出身者に比べると東大卒は少ない上、だいたい、お互い同士が仲良くありません。ここ三代の東大出身のトップたちでは、宮本顕治氏と不破哲三氏の関係も、不破氏と志位和夫氏の関係にしても、私が見聞した限りではとうてい円満といえるものではなかったですね。東大卒だからといって互いに助け合うわけでもないし、何か得をしているようにも見えませんでした。とてもじゃないけど、「東大閥」なんてあるといえませんねえ(笑)。 Q19 査問って今もありますか  A19 査問はもともと軍法会議の用語で、事実調査のために被疑者に行う尋問のことですが、共産党では党規律を破った疑いのある者に行います。「共産党に査問はない」なんて言っていますが、私がこの用語を知ったのは共産党でです(笑)。査問は、突然呼び出されて虚をついたように始まります。自分自身がそうでしたし他の人の「査問」も見聞しましたが、他からの密告を根拠にして行われるのが常で、金銭問題、男女間の問題などが嫌疑のほとんどです。 規律違反(配偶者以外との浮気も入る)に対する調査は「事実に基づき慎重に」なんて規約にありますが、査問では「最初から結論ありき」。除籍とか、除名で党から放逐するための理由をこじつけることだけが目的なんですね。 数十年前は密室に長期間、閉じ込められたなんて話があります。戦前は「スパイ」嫌疑の査問で殺人まで起きました。今はそれほどでなくて、幸いですが。 Q20 共産党お抱えの興信所もあるそうですが… A20 査問の根拠を調べるため、党中央委員会は外部法人として作った興信所も使って身元調査をします。筆者の査問の時、査問を担当した幹部が誤ってこちらに興信所が作った資料を「突きつけて」くれてわかりました(笑)。後で自分に関する調査報告書に記された興信所名と住所を基に登記簿謄本でそこが党員経営の法人と確認し、査問する側を「党内問題(筆者の査問)を党外(外部法人)に持ち出したあんたたちは規約違反だ!」ととっちめました。結果、除籍されましたが、その後も何年かは、しばしば尾行されましたね。尾行する者にかつての同僚の姿もチラホラ見かけましたが(笑)。身内の党員の素行調査のために興信所を作り、尾行や調査を行うという共産国家の秘密警察ごっこをやる体質がなくならない限り、日本共産党が民主主義社会でのまともな政党とはいえないと思います。 ■篠原常一郎 昭和35年生まれ。立教大文学部卒。日本共産党で筆坂秀世氏の公設秘書などを務めるが、平成16年に党を除籍される。著書に『いますぐ読みたい日本共産党の謎』。

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    民進党代表、蓮舫さんでいいんですか?

    民進党は臨時党大会で蓮舫代表代行を新代表に選出した。選挙戦は盛り上がりに欠けたが、それでも唯一関心を集めたのが蓮舫氏の「二重国籍問題」だった。本人の発言は変遷し、党内外から選挙のやり直しを求める声が上がるなど、新体制の船出は早くも暗礁の気配が漂う。本当にこれで良かったのか。

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    「あなたは本当に日本人ですか?」蓮舫氏は代表選を辞退すべきだった

    山田順(ジャーナリスト) はっきり言って、蓮舫氏は現状ではアウトだ。今回の民進党代表選挙からは降りるべきだった。これは二重国籍でも手続きをすれば法的問題をクリアできるからという以前に、このことに対する認識が甘すぎたからだ。 それに、「日本人」であることには変わりないのだから、今後、チャンスはまだいくらでもあっただろう。 民主党は代表選挙をやり直すべきである。民進党代表決定の名前を呼ばれる直前にハンカチで目頭を押さえる蓮舫新代表=9月15日、東京都港区(納冨康撮影) 蓮舫氏は9月13日に開いた記者会見で、初めて台湾との二重国籍が継続中だったことを明らかにし、この問題で混乱を招いたことを謝罪した。これは、前日に台湾側から回答があったためと言うが、ではもし回答が遅れていたらどうしたのであろうか? 曖昧な状態のままで、代表戦を終えたのだろうか?  蓮舫氏は、9月6日の時点で、台湾側に国籍離脱の確認をするとともに、国籍を放棄する書類を提出したことを明らかにした。ただ、その手続きがいつ完了するのかには触れなかった。とすると、その間、彼女は国会議員として二重国籍者のままでいることになるが、この点はどうするのだろうか? それにしてもなぜ、蓮舫氏は、この問題を評論家の八幡和郎氏に指摘されたとき、ご自身の記憶だけで答えたのだろう。   蓮舫氏は「17歳だった1985年に大使館にあたる亜東関係協会(現・駐日経済文化代表処)に父親とともに出向いて台湾国籍を放棄する手続きを取った」という主旨のことを述べた。そして、「私は日本人です」と強調した。このことからして、そもそもおかしい。なぜなら、この時点では誰も彼女が日本人であるかどうかなど問題にしていなかったからだ。すでに日本国籍を収得しているのだから、日本人であることは明白だ。 蓮舫氏が問われていたのは、どの時点で台湾の国籍を放棄したのかということだけだった。 したがって彼女がすべきことは、勘違いもあるとして、二度手間になろうともこの時点で台湾側に国籍離脱の申請をすることだった。 なにしろ、蓮舫氏は「台湾語がわからなかったので―」とも言っている。それなら、なおさら早急にそうすべきだったと思う。それがなぜ、ここまで遅れたのか? つまり、これは二重国籍問題というより、この問題の背後にある人間としてのアイデンティティの問題であり、政治家としての認識が甘いという問題だ。 ここからは一般論だが、二重国籍者というのは、このグローバル時代、世界中にいくらでもいる。日本でも、どんどん増加している。しかも、世界の多くの国、たとえばアメリカ、イギリス、フランスからロシアやブラジルなどの国まで「多重国籍」を認めている。だから、多くの二重国籍者が国籍をそのままの状態にしている。なぜなら、そのほうがメリットが大きいからだ。 じつは、私の周囲にはそういう人間がいっぱいいる。知人の子供はアメリカで生まれたため自動的にアメリカ国籍を与えられ、大人になったいまもアメリカと日本のパスポートの両方を持って日米を行き来している。台湾パスポート、英国パスポートを持っている人間もいる。 日本で国籍法が改正されたのは1984年で、それからは22歳になった時点で国籍を選ぶこととなったが、これは申告制だ。また、罰則もないので、わざわざ申告する人間はいない。さらに、たとえ日本国籍を選んだとしても、放棄する国の国籍に関しては、日本の当局はなにも関知しない。糾弾の根底にある醜い「嫉妬」 日本の当局が「この人はあなたの国の国籍を放棄しました」と相手国に通告する義務はない。手続きは、あくまで本人の問題だ。 ただし、これまで明らかになった蓮舫氏のインタビュー記事などを読むと、蓮舫氏は台湾国籍を放棄したくなかったようだ。平成4年6月25日付朝日新聞夕刊の記事には、《父が台湾人、母が日本人。十九歳のとき、兄弟の就職もあって日本に帰化した。東京で生まれ育った身にとって暮らしに変化がなかったけれど、「赤いパスポートになるのがいやで、寂しかった」 》とある。 つまり、彼女は記憶が曖昧なのではなく、台湾国籍を放棄したくなかったのだ。だから、“記憶上”で放棄しただけで、ずっと台湾のパスポートを持ち続けたはずだ。蓮舫氏は手続きを父親任せにしたと言った。とすれば、なおさら父親が自分の娘の台湾国籍を放棄させるはずがない。私は台湾出身の日本国籍収得者を何人も知っているが、台湾国籍を自ら放棄したなどという話を聞いたことがない。 ましてアメリカとの二重国籍者で、なんらかの事情がなく、自らアメリカ国籍を放棄したなどという人間には会ったことがない。 日本人のほとんどが日本人の両親から生まれ、自動的に日本国籍者となっているから、二重国籍者の心理など知らない。また、それがどういうメリットとデメリットがあるかなど考えたこともないだろう。 だから、蓮舫氏の問題が発覚したとき、多くの人間が“彼女はホンモノの日本人ではない”ということで感情的に反発した。とくにネット民の反応と、その糾弾ぶりはすさまじかった。 しかし、彼らの根底にあるのは、蓮舫氏のような外国人とのハーフ、二つのアイデンティティーを持つ人間に対する嫉妬である。この嫉妬心は非常に醜い。 二重国籍者というのは、意図してそうなったとしても、そうでなかったとしても、自己のアイデンティティーには悩むものだ。ましてハーフとなれば、両親の祖国のどちらに自分を位置づければいいのか、文化、伝統、言語など、すべての面で悩む。したがって、どちらかを選ぶということは、その国を選択して、その国の人間になるということだから、かなりの決断が要求される。 とすれば、蓮舫氏の場合、彼女を糾弾する「自分こそはホンモノの日本人」と信じているネット民より、はるかに愛国心があり、この国のために尽くす可能性がある。 したがって、どんなに遅くとも、政治家となり公人となろうとした時点で、台湾国籍を放棄すべきだった。「日本人とはなにか?」という根本を問いかけた蓮舫氏の問題 国籍問題に関して大論争になったのが、オバマ大統領である。アメリカは国籍に関しては出生地法を採用していて、アメリカ国内で生まれた子供はすべてアメリカ国籍が与えられる。しかし、オバマ大統領は父親がケニア人だったから、アフリカ生まれだろうと疑われ、「出生証明書を出せ」と糾弾された。そのため、オバマ大統領は2008年に出生証明書のショートフォームを出し、2011年にはロングフォームをホワイトハウスのHPにアップした。  だから、蓮舫氏も国籍離脱証明書を入手したらすぐにアップしてほしい。民進党の新代表を選出する臨時党大会で演説後、自席に戻る蓮舫代表代行=15日午後、東京都内のホテル 日本はアメリカと違い、血統主義を採用しているので、オバマ大統領のような出生地問題は起こらない。出生場所に関係なく、両親のどちらかが日本人ならば日本国籍となるからだ。したがって、蓮舫氏の問題を考えると、国籍そのものの問題というより、国家の重要な地位に就く人間を、国籍などを含めどのように規定するかということのほうに重点を置かねばならない。 アメリカの憲法は、大統領の資格を、「生まれながらのアメリカ市民権保持者(アメリカ国籍)」、「年齢が35歳以上」「アメリカに14年以上在住していること」と規定している。このことから言えば、日本はまず二重国籍者が国会議員になることを明確に禁止すべきだ。外国籍離脱を明確に規定しなければならない。日本の総理大臣は国会議員でなければないのだから、これは当然だ。それから各大臣もそうすべきだろう。 さらに、日本国籍保持者でも「日本に15年間は居住していなければならない」という規定もつくるべきだ。2007年、ペルーと日本の二重国籍を持ったアルベルト・フジモリ元ペルー大統領が参院選に国民新党から立候補したが、こんなことはあってはならない。 現行法では、日本国籍を有しない外国人の選挙権・被選挙権は認められていない。ところが、現在、外国人居住者に参政権を与えようという動きが拡大している。旧民主党や共産党などが政策として推し進めてきたわけだが、彼らはどうかしていないだろうか? アメリカでは「永住権」(グリーンカード)を持っていても選挙権も被選挙権も与えられない。「市民権」を得ないかぎり、それらは得られない。 しかも、市民権を獲得するには、厳しい審査がある。この審査では、アメリカ合衆国憲法へ忠誠を示し、以前保持していたすべての外国への忠誠を放棄することを誓わねばならない。また、国家の大事には、法律が定めた市民としての義務を果たす約束もする。 というわけで、今回の蓮舫氏の問題は「日本人とは何か?」という根本問題を問いかけている。当然だが、日本の政治は「日本人により日本のために」行われなければならない。あなたは、ご自身を本当に日本人だと思いますか? それをどうやって証明できますか?

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    圧勝で始まる蓮舫民進党 反転攻勢が「政権選択政党」につながるか

    」ならむしろ「小池新党」に期待が集まる』、『蓮舫・前原・玉木3候補が出揃った。民進党は2020の政権政党創造を目指せ!』などと、この民進党代表選挙について書いてきたが、蓮舫氏が代表になることへの期待は、間違いなく「選挙への強さ」であった。 その「反転攻勢」の第1手は、10月11日告示となる衆議院補欠選挙だった。小池知事の転身による東京10区と、鳩山邦夫元総務大臣の死去に伴う福岡6区だが、次期参院選は2019年、衆院の任期も2018年という中で、自民党を2敗に追い込める可能性のある野党にとっては絶好のチャンスだった。民進党代表選挙候補者による共同記者会見で、前原誠司元外相(右)の答弁を聞く蓮舫代表代行(中央)。左は玉木雄一郎国対副委員長=9月2日、民進党本部(斎藤良雄撮影) 自民党にとっては、東京10区では小池新党が噂される中で、知事選で造反した若狭勝衆議院議員の対応という微妙な問題を抱え、福岡6区では既に自民党県連が公認申請している候補と鳩山邦夫氏の次男である鳩山二郎前大川市長の分裂選挙が確定的であり、非常にやりづらい選挙になっているからだ。10月までに小池新党が結成されて若狭氏が離党して出馬となれば政局は荒れるが、それでも蓮舫氏が衆院10区に鞍替え出馬すれば圧勝の可能性があった。 たかが補選ではあるが、政局にとっては選挙の影響は大きく、こうした「反転攻勢」は、民進党に大きく風を吹かせ、この勢いのまま成果の出ない経済政策に対して対案を示し、解散に追い込み総選挙ということにでもなれば、政局は一変する可能性もあった。 しかし蓮舫氏は9月4日時点で既にこの補欠選挙での東京10区への鞍替えは否定している。ではどういった「反転攻勢」を考えているのだろうか。 一方で衆院への鞍替えについては前向きの発言が続く。噂されるのは自宅のある東京5区(目黒区など)や隣の6区(世田谷区)、海江田さんの東京1区(千代田、港、新宿区)菅さんの東京18区(武蔵野市など)なども噂されている。こうした選挙区で古い民進党との決別を発信しながら「反転攻勢」という戦略なのかもしれないが、それほどうまくいくだろうか。今回の「二重国籍問題」を受け、仮に12月にもとも噂される解散総選挙が実施されたとしても、当初のイメージ通りに事が進まなくなってきている印象を受ける。 蓮舫氏を代表にという追い風になったのは間違いなく「選挙に強い」というそのイメージだ。仮にその選挙で結果が出せないということになってくると、その状況は一変する可能性がある。野党第1党の代表は「守り」も求められる野党第1党の代表は「守り」も求められる こうした中、野党第1党とはいえ代表にもなれば「攻め」だけでなく「守り」も求められることになる。その第1弾は、今月末にも召集される臨時国会にも日本維新の会が提出すると言っている、国会議員や国家公務員らが日本以外の国籍を持つ「二重国籍」を禁じる法案への対応だろう。 蓮舫氏としては、台湾籍の離脱手続きを進め、早期幕引きを図りたいところだろうが、法案が出れば象徴としてこの問題が取り扱わられることは間違いない。代表選における蓮舫氏の説明を聞いていても二転三転することも多く、本質的な回答を行っていない印象を受けることが多かった。国会での議論の中でもこうしたことになると、民進党への支持を上げるどころか、国民の印象を悪くしていく可能性もある。そのためにも、「攻め」と同時に「守り」をどう乗り切るかも重要になってくる。 今回の代表選挙においても、民進党執行部は、代表選挙のやり直しや、蓮舫氏への代表選挙辞退への働きかけなどを行う選択肢もあった。こうした中で特に大きな動きを取らなかったことは、この問題はそれほど大きな問題ではないという判断の中での対応なのだろうが、逆に国民や社会が大きな問題だと捉えることになった場合には、蓮舫氏個人の問題だけに止まらず、民進党全体の対応に対する問題に波及する可能性もある。歴代代表は「年金未納疑惑」や「堀江メール問題」でも辞任 先日のコラム『蓮舫・前原・玉木3候補が出揃った。民進党は2020の政権政党創造を目指せ!』でも書いたように、民主党時代、代表経験者はわずか7人しかいない。鳩山由紀夫氏、菅直人氏、小沢一郎氏、岡田克也氏、海江田万里氏、野田佳彦氏、前原誠司氏であるが、その全員が任期満了以外の代表辞任を経験している。図表: 民主党代表の辞任理由一覧 選挙結果によって代表辞任したのが3名、記憶に新しいのは2014年12月の総選挙で自らの議席を失ったため海江田代表が辞任、2012年12月には総選挙に敗北し政権から転落した責任を取って野田代表が辞任、2005年9月には郵政解散による総選挙で大敗し岡田代表が辞任している。 もう一つが政治と金による辞任で2名、2009年5月に自身の献金問題のけじめを取り次期選挙に向けて挙党態勢をとるためとして小沢代表が辞任、それを引き継いだ鳩山代表も自身の政治と金の問題で辞職した。 今回注目したいのは、それ以外の代表辞任理由だ。鳩山由紀夫氏、菅直人氏は2度も代表辞任に追い込まれているわけだが、振り返って冷静に見ると、本当に辞任しなければならなかったのだろうかと思う部分もある。政局とは、そんな問題で追い込まれていくということだ。 中でも民主党代表辞任の代表的な事例として取り上げられることも多いのが、「年金未納問題」と「偽メール問題」だ。 前者は、2004年の国会期間中に、当初3人の国務大臣の年金未納が発覚、「ふざけてますよね。“未納三兄弟”っていうんですよ」と年金未納問題批判を行っていた民主党代表だった菅直人氏自身にも未加入が発覚し、辞任に追い込まれた。当時の小泉内閣の首相を除く閣僚17人のうち7人にも未納・未加入の事実が指摘され、福田康夫 内閣官房長官も辞任に追い込まれ、最終的には110人を超える議員に未納期間があったことが明らかになった。 この菅氏の年金未納問題、菅氏は当初から行政側のミスであると何度も主張したが、行政側がその都度強く否定し、マスコミ報道等による世論により辞任に追い込まれたのだが、実際には、辞任後になって社会保険庁側が間違いを認め、国民年金脱退手続きを取り消したこと、同期間に国民年金の加入者であったことを証明する書面が送付されており、菅氏が主張したとおり国民年金の資格喪失は「行政上のミス」によるものであったことが明らかになっている。言い換えれば「濡れ衣辞任」といったところだろうか。 もう一つの「偽メール問題」は、2006年の第164回通常国会において、当時の民主党衆院議員がライブドア事件および堀江貴文氏にまつわる質問を行った際に、証拠とされた電子メールが捏造であったことが発覚し、質問した議員は辞職。代表となったばかりの前原誠司代表含め民主党執行部は総退陣に追い込まれたというものだ。 結果的に代表辞任にまで追い込まれるきっかけになったのは、前原誠司代表が党首討論を前に「期待しておいてください」と新たな証拠を提示し疑惑解明に期待感を持たせる発言であり、この発言から執行部まで関与したとして責任問題にまで波及した。いずれの問題も今考えれば、「こんなことで!?」である。 「二重国籍問題」がこうした規模の問題になることは大いにある。「政権選択政党」となるべき民進党の役員人事とは「政権選択政党」となるべき民進党の役員人事とは これまでのコラムでも再三再四言ってきたことではあるが、今回の代表選は、たかが野党第1党の代表選挙ではなく、多くの国民の将来にとっても重要な選挙であると認識している。大袈裟かもしれないが、この選挙の結果如何によって、その後の日本の政治が大きく変わるのではないかと思うのだ。繰り返しになるので、敢えて詳しくは書かないが、どうすれば「政権選択政党」になれるのかを真剣に考えてもらいたい。図表: 政権選択政党のポジションイメージ 代表選挙が終われば、次の争点は役員人事になる。今回の代表選挙で蓮舫氏を応援した人たちへの論功行賞になってはいけない。 蓮舫氏の推進人を見ると、野田グループと言われる「花斉会」、横路グループや赤松グループと言われる旧社会党系の「新政局懇談会」、川端グループ・高木グループと言われる旧民社系の「民社協会」、代表選の当初は割れていたものの一本化した細野グループと言われる「自誓会」、旧維新の党は完全に分裂選挙になっており、そのうちの「旧結いの党」議員などが名前を連ねていることが分かる。 こうした支持団体がどれだけ今後の民進党運営の中で幅を利かせていくことになるのか、こうした中で誰がどのポジションに着くのかといったところについても、国民のみなさまにしっかりとチェックしていってもらいたいと思う。民主党時代からありがちの選挙が終わったら対立候補も要職に取り入れるということも含め、注目してもらいたい。データに基づく蓮舫・前原・玉木3氏の評価 図表: 民進党代表選立候補者3名の国会活動データと政治資金データ 最後に、そうは言っても国会議員の投票日はまだ明日である。準備しながら盛り上がらない代表選挙の中で、すっかり出しそびれた感があるが、3候補者の国会での活動データと、政治資金データについても紹介したい。 前者は、国会議員の活動データを集積する会で集積し、NPO法人万年野党が評価した第183国会から第189国会までのデータであり、こうした活動データで見ると、知名度では劣る玉木氏の国会での活躍がめざましいことが見えたりもする。 野党にたいして期待するのは、1つには国会での質問での問題の本質を明らかにすることと、修正していくことであり、さらに野党第1党としては、今後さらに代案を示し、法案を提出していく立法能力である。 これまでもデータを見て共有してもらいながら、一方で、有権者や国民も民進党がそういう政党になろうとしているのかどうかを厳しい目で見ていく必要がある。是非、こうした点にも注目してもらいたい。 後段の政治資金のデータは、政治資金透明化プロジェクト( http://pft-project.jp )によって公開されているもので、日大の岩井奉信教授や毎日新聞の与良正男さんらとともに高橋亮平もプロジェクト呼びかけ人に名前も連ねさせてもらった。こうしデータは、有権者の皆さんもラポールジャパン( https://rapportjapan.info )のサイトから公表されている2014年の国会議員関係政治団体における政治資金情報を見ることができる。 今回の民進党代表選挙もそうだが、今後の選挙や日頃の国会議員の活動についても是非、こうしたデータについても見てみる習慣がついてくると、国会議員を見る目も変わってくるのではないかと思う。(公式ブログ「世の中を変えるブログ!」より2016年9月14日分を転載)

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    「蓮舫たたき」は揚げ足取り? 品のないヤジは自民党にダメージ

    のだと信じている。それは今回の民進党の代表選も同じだ。民進党をどう導くのか。民進党が何をやってくれる政党なのか?もう、レベルの低い「反・自民」とか本当に辞めてほしいのだ。文句言ってても日本なんて前に進まないだろう。 子供にお金を注ぎたい!分かる。その方向性は間違っていないはずだ。が、民進党は昔、子ども手当を出そうとした。しかし、無駄の削減だ、何だと偉そうなことを言いながら、出来なかった。なぜ出来なかったのか?その総括もしないで、看板だけ架け替えた。総括もなく、本当に蓮舫氏が代表になって何か出来るのかどうか…。そもそも、事業仕分けで何も出来なかったのが蓮舫氏その人ではないか。代表になったら何か出来るのだろうか。 「自称・自民応援団」のネット上の下品な連中があれだけ必死になって叩いてイチャモンをつけていたのだ。まぁ想像するに、自民党内部としては「民進党の新代表:蓮舫氏」に多少は警戒をしているってことだろう。そりゃあそうだ。前原氏であれば、一捻りできるだろうし。岡田・枝野コンビを自民党が陰ながら大声援を怒っていたのと同じ現象か。 政治に緊張感が必要なことは一人の国民として痛感している。今のままじゃダメだ。小池百合子氏が、ここまで、驚くほどの政治手腕を見せている。このまま頑張ってほしい。反小池軍団だった我々も(笑)認めざるを得ない活躍となりつつある。蓮舫氏も「女性リーダーブーム」に乗ってぜひ頑張ってほしい。台湾との二重国籍は不注意だった。しかし、しっかりとこの問題に対処して、民進党も素晴らしい野党第一党に成長させてほしい。(長谷川豊公式ブログ 2016年9月15日分を転載)

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    トンチンカンで無知な蓮舫氏、代表選で浮かんだ民進党の迷走ぶり

     室伏謙一(政策コンサルタント) 民進党代表選、9月2日の告示を受けて、本格的な選挙戦が始まった。もっとも始まったと言っても、野党の代表選、自業自得というべきか国民の関心はそれほど高くないようだ。今回の代表選、推薦人20名を集めて立候補できたのは、告示前から立候補表明をしていた蓮舫参議院議員、前原誠司衆議院議員に加え、玉木雄一郎衆議院議員の3名。いずれも党の刷新を掲げている。 もっとも、党の刷新といってもその対象は旧民主党。前原氏は旧民主の負のイメージがあるとし、国民にお詫びしますと繰り返しているが、それは旧民主の話であって旧維新とは無関係であるのだから、新しくなった民進党で旧民主の迷走についてお詫びとは、お門違いも甚だしい。その身勝手さと勘違いが旧民主の信頼失墜の一因でもあろうところ、屋上屋を重ねるというか、地下室の下に更に地下室を作るがごとき言動には呆れ返る。 玉木氏も過去の民主党との戦いを訴えているが、過去の民主党とは旧維新も各議員が旧党時代(みんなの党→結いの党、日本維新の会)に過去の民主党と戦ってきているので、なるほど上手いことを言うものだ。 それよりウワテなのが蓮舫氏で、埋没への危機感、民主・維新が合流したといっても規模が小さいことへの懸念を示し、そして野党第一党に甘んじていていいのかと投げかける。旧民主ではなく新しい民進党として変革していこうという雰囲気を醸し出すようなところは蓮舫氏の真骨頂、さすがといったところか。蓮舫氏=9月5日午後、東京・永田町の民進党本部(斎藤良雄撮影) そうした姿勢や政策をメルクマールにして、党内各グループは候補者への支持を表明している。23人という党内最大の議員の旧維新グループ、その動向が注目されたが、江田憲司衆議院議員と松野頼久衆議院議員を除く21名を3分割して3候補の支持に回った。党内融和を優先しての判断ということらしいが、代表選挙は必ずしも党内分裂の火種になるわけではないし、こういう時こそ旧維新が埋没しないことを考え、江田氏でも松野氏でもどちらでもいいが旗を立てるというのが常套手段であろうし、そもそも誰を支持するかは政策が云々と曰っていたはず。 なんともお粗末な行動。これで旧維新グループは終わったと思われても仕方あるまい。(旧維新系の地方議員達は、これまで散々国会議員の迷走、付和雷同、やりたい放題に振り回されてきた。そして今回またしても振り回された旧維新系の地方議員の落胆、憤慨は幾ばくか。) さて、これら3候補の主張、憲法改正や安全保障に着目して見ていくと、ある傾向が見えてくる。 まず前原氏、憲法改正はしっかりやるべきとし、制約なき集団的自衛権の行使をさせないために第9条に第3項を加えるとしている。これは集団的自衛権の容認を前提とした発言であり、党として反対してきた集団的自衛権の行使を事実上認めると言っているのと同じである。第3項を加えるというが、何を加えようというのか。第1項及び第2項を有名無実化するための内容にでもしようというのか。その内容いかんによっては、自民党草案をも飛び越える可能性さえあるのではないか?あきれ返るほど無知で頓珍漢な蓮舫氏 蓮舫氏は憲法審査会を止めているのは自民党であるとした上で、改正について審査会で堂々と議論すべきであるとし、地方自治に関して規定する第8章や婚姻や家族について既定する第24条を「今の時代に合わない規定」として改正を検討すべきとしている。その第8章、第92条から95条の4か条で構成されているが、地方自治に関する大枠のみ規定し、詳細な内容は法律で定めることとされている。第92条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。第93条 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。  2  地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。第94条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。第95条 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これ を制定することができない。 さて一体これらの条文のどこが「今の時代に合わない」と言うのか。地方議会の設置や首長・議員の選挙を止めろとでも主張したいのか。第24条についても同様で、この規定のどこが「今の時代に合わない」というのか。婚姻が両性の合意のみに基づいて成立することや夫婦が同等の権利を有することを止めろとでも言いたいのか。第24条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。  2  配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。 蓮舫氏の無知ぶりなのか頓珍漢ぶりなのか、どちらにせよ呆れ返るのを通り越して恐れ入る。 一方で、憲法の平和主義については守るべきとしているが、第9条の扱いについては言及がない。それもそのはず、蓮舫氏は平和安全法制については「いいものと悪いものとがある玉石混交」であるとし、「戦争法案」という言い方はミスリードであったとまで言い切っている。この発言も集団的自衛権の行使を、条件付きで容認すると言っているのと同じである。国会正門前で「戦争法案反対!」と叫ぶデモ隊の中に入り、デモ参加者と一緒に気勢を上げていたあの蓮舫氏が、である。軸なき変節漢以外浮かんでくる言葉がない。 つまり、ある傾向とは、民進党の右傾化であり、場合によっては自民党を飛び越えて更に右側に行く可能性があるのではないか。自民党には護憲派や良識派が厳然と存在し、たとい安倍政権が暴走したとしてもブレーキ役を果たすだろう。しかし現在の民進党は、前々回の民進党代表選に関する拙稿で指摘したとおり、ベクトルなき無党派層の集まりのようなものであり、前言をひっくり返すのがお得意な方が多いようであるから、どこへ飛んでいくか分からないのではないか。(領域警備法を含め、個別的自衛権での対応という独自案を作成し、正々堂々と議論した旧維新グループ、ブレーキ役になりうる唯一の党内グループだったが、今回の代表選で前述のようなテイタラクを演じているようでは、その可能性は限りなく低いだろう。) なお、玉木氏については、憲法改正議論はしっかりやるとし、向こう1年を目処に民進党としての考え方をまとめたいとしているが、立憲主義を守ることや海外での武力行使は認めないことを明言しているのみならず、違憲立法の審査のための憲法裁判所の設置等を掲げており、他の2候補とは一線を画している。玉木氏であれば、右傾化といった批判を受けることなく、自民党の護憲派や良識派とはしっかり渡り合えるのではないか。もっとも、同氏が民進党代表に選出される可能性は低いと考えざるを得ないが。