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    日本は「魔人」トランプとこう戦え

    第45代米大統領に就任したトランプ氏が早くも牙をむいた。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の離脱表明に加え、自動車市場をめぐり日本にも批判の矛先を向けた。徹底した保護主義を貫くトランプ流。日本にとっては厄介な存在だが、超大国に突如として現れた「魔人」と戦う術がないわけではない。

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    金正恩の北朝鮮にそっくり? 側近重視のトランプ政権は必ず道を誤る

    石澤靖治(学習院女子大学長) 1月20日、ドナルド・トランプ氏が第45代米大統領に就任するに際し、何を語るのかが世界中で注目された。その関心が高まっていた就任約1週間前、トランプ政権で国務長官と国防長官にそれぞれ指名された、レックス・ティラーソン氏とジェームズ・マティス氏に対する議会公聴会が行われて、大きな注目を集めた。トランプ政権の具体的政策を事前に知る絶好の機会と思われたからである。 そして両者は、極めて穏当な発言を行った。トランプ政権において日本側が特に関心をもっているのは、貿易問題を別にすれば、アメリカの対中国政策と日米同盟に対するスタンスである。それに対してティラーソン氏は、南シナ海における中国の海洋進出に懸念を表明すると同時に、尖閣諸島には日米安保が適用されるとした従来の考えを踏襲すると発言した。 一方、マティス氏は日米同盟には直接ふれなかったものの、同盟関係の重要性を尊重すると述べた。日本外交の基軸である日米同盟については、選挙期間中にトランプ氏から見直しについて言及されていただけに、日本側にはこれらの発言に一応の安堵感が生まれた。 ティラーソン氏はエクソンモービルの最高経営責任者(CEO)であった時代に築いたロシアとの近すぎる関係が懸念され、公職の経験も全くない。しかし、それを除けば大企業経営者として、その指導力と組織運営について高い評価を得ている。マティス氏は、アメリカの軍関係者からは「軍神」とあがめられる存在であり、その実績と戦争についての哲学と考察について最高水準の人物であるとされる。したがって、本来ならこうした国務長官と国防長官からなる外交の二本柱の発言から、トランプ政権の外交・安全保障政策について、ある程度の見通しは立つはずであり、安堵してもいいはずだった。 しかし、20日の就任演説でそれは大きな落胆に変わった。演説でトランプ氏は、選挙戦のように常軌を逸した発言をするのではなく、現実的な状況を踏まえた上で、壮麗な言葉で理想を語るのかと思われた。だが17分弱の演説では「アメリカ・ファースト」を繰り返し、今のアメリカがいかに外国からダメージを与えられているかを説き、自分こそがアメリカを強くする指導者であると語った。そして選挙期間中のキャッチフレーズである“Make America great again!”で締めくくった。就任式で演説するトランプ米新大統領=20日、ワシントン(AP=共同) 本来、就任演説とは選挙演説と一線を画し明るく前向きの姿勢を示すものだが、最初から最後まで、暗く、ネガティブに、そして怒りに満ちた選挙演説と変わらない就任演説だった。もちろんそこには、アメリカがこれまで戦後長く掲げてきた「民主主義」や「自由」「人権」などといった言葉はなく、「アメリカ」だけが躍った。 つまり、選挙中のトランプ氏のスタンスは、大統領のトランプ氏と何ら変わらないということである。トランプ政権はまさしく「トランプ氏自身の政権」であるということを認識しておかなければならない。政権側にとって使い勝手がいい「二層構造」 これまで、アメリカの政策について分析し言及する場合には、大統領、議会、圧力団体、世論、シンクタンクなど様々な要因を絡めて何らかの結論を出したり、見通しを示したりするのが常だった。そしてその見通しがはずれたとしても、大体は想定の範囲内に収まった。それは他の主要な先進国でも同様である。 しかしトランプ政権においては、「金正恩の北朝鮮」「プーチンのロシア」において、それぞれの国の政策を予想するような色彩を帯びてきた。つまり、指導者が何を考えて何をしようとしているのか、当人の頭と心の中を読むことが極めて重要性をもつようになったということである。だからこそ、トランプ政権は不確実性をもち、外部からの予測が難しくなったことを意味する。 もちろんアメリカは北朝鮮やロシアと政治機構は違うし、アメリカ社会の成熟度も高い。北朝鮮やロシアとは違って、より豊富で質の高い情報も報道されている。上下両院でトランプ氏の共和党が過半数を占めているといっても、党内は必ずしも一枚岩ではない。しかしトランプ氏の頭と胸の内は当人以外わからない。その意味での不確実性は北朝鮮やロシアに近いものがある。 アメリカの閣僚は、議院内閣制の日本のように大臣=ministerではなく、長官=secretaryである。わかりやすく言えば、アメリカの大統領は行政府で図抜けて権力をもち、長官はそれに従う存在だということである。その上で、トランプ氏はこれまでの大統領の中で、最も自分中心の指導者である。もちろん、実際にトランプ氏に会った安倍首相が言うように「人の話を聞く人だ」という側面もあるが、基本的に「自分」の考えを極めて大事にする。したがって、そんな中での国務長官のティラーソン氏や国防長官のマティス氏の裁量は限定的である。 さらに、アメリカの政権内の二層制を思い出しておく必要もある。それは閣僚と、一般に「補佐官」という名称で知られるホワイトハウス・スタッフとの関係である。そして補佐官たちは閣僚と同様か、時に閣僚以上に力をもつ。またこの役職は議会で承認を得る必要もないし、政策について証言することもない。したがって、外部からみれば政策の状況はみえにくい一方で、政権側にとっては使い勝手がいい。 外交・安全保障を担うポストでいえば、国家安全保障担当補佐官がそれにあたり、トランプ政権においてはマイケル・フリン氏がその任にあたる。同氏はオバマ政権で国防情報局長に就任したものの、わずか2年で退任。そこから反オバマ派に転じ、多くの安全保障関連の主流派の専門家たちがトランプ氏に背を向ける中で、いち早くトランプ支持を打ち出した。今回、国家安全保障担当補佐官の座を射止めたもの、その功績からである。 ところが、国防長官のマティス氏が多くの軍人から最高の敬意をもって迎えられたのに対して、フリン氏の人物像には疑問符をつける声が少なからずある。オバマ政権を2年で退任を余儀なくされたのも、不穏当な発言を繰り返したからである。ニクソン政権の再来で恐れる中国との「間違った取引」 ならばマティス氏が政権で主導権を握りそうなものだが、ここはトランプ政権である。前述したように、自分中心のトランプ氏は、自分に近い人物の声を重視する。米大統領ならず世の権力とは基本的にそのようなものだが、トランプ氏のこれまでの行動を見てみるとその傾向が非常に強い。 したがってこの政権においては、先ごろ上席顧問として加わった娘婿のジェレッド・クシュナー氏が実質的なナンバーツーとなり、副大統領のマイク・ペンス氏、首席補佐官のラインス・プリーバス氏、戦略担当官兼上級顧問のスティーブ・バノン氏のトロイカが、その次に位置する存在になると推測される。閣僚人事に関する書類に署名するトランプ米大統領(前列左端)=20日、ワシントンの連邦議会議事堂(ロイター=共同) そんな身内・側近政治だから、外交・安全保障も、結局のところ以前から近しい関係を打ち立てていたフリン氏になるのではないかとも思われるのである。だとすると、日本は国務・国防長官が言及した「同盟重視」という前提で楽観することはできない(フリン氏は昨年来日した際に、日米同盟には肯定的だったと言われるが)。そしてニクソン政権が行ったようなホワイトハウスにおける側近政治ということになれば、国務省・国防総省主体のそれよりも、その方針は非常に見えづらくなる。 さらに就任9日前の1月11日にトランプ氏が行った記者会見での発言にも注目しておく必要がある。この席でトランプ氏はメディア批判を行い、また自らの事業の運営を息子たちに任せて、自らは今後かかわらないことを述べた(それについては説明が不十分で、利益相反の懸念はまだ残ると指摘された)。 ただそれ以外は、メキシコとの間の壁建設や雇用、産業・貿易問題が中心で、外交や安全保障について多少ふれたものの、それを正面から語ることはなかった。そしてそれは1月20日の就任演説でも同様であった。ということは、トランプ氏の関心は世界全体をにらんだ外交・安全保障戦略ではなく、アメリカが直接的に関係するシリアやIS(イスラム国)など一部の地域や分野に限られ、対外的な関心は基本的に通商問題なのではないかということである。 さらに言えば、筆者がかねてから、トランプ氏を「ボトムライン大統領」(損得勘定の大統領)だとして懸念しているように、例えば貿易問題で中国から一定の果実を得ることができれば、アジアの大きな波乱要因になっている中国に対する安全保障問題には関心が薄くなるのではないか、そして「間違った」取引をするのではないかということである。 これらは全て推測である。しかし「トランプのアメリカ」においては、「金正恩の北朝鮮」「プーチンのロシア」と同じように、推測で推し量るしかない。それこそが2017年の世界における「トランプのアメリカ」のもつ大きな不確実性なのである。

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    「最もいい加減な人種」と非難、トランプ氏とメディアの対立激化

    【WEDGE REPORT】佐々木伸(星槎大学客員教授) ホワイトハウス入りしたばかりのトランプ米大統領は就任式に集まった聴衆の人数などをめぐって激しいメディア非難を繰り広げ、双方の不信は極限まで高まってきた。対立の大きな要因は「批判に衝動的に反応する」(アナリスト)トランプ氏の人格にあり、メディア側も対応に苦慮している。「大きな代償を支払うことになる」 米紙などによると、トランプ氏が今回、メディアに激怒したのは大統領就任式の翌日(21日)の朝だった。テレビをつけてネットワークのニュースを見たところ、就任式に集まった聴衆が前任者のオバマ氏の就任式と比べて格段に少なかったと報じられた上、ガラガラの就任式会場の1つが映し出された。 トランプ氏は怒りを抱えたまま、バージニア州ラングレーにある中央情報局(CIA)本部を訪問、任務の最中に殉職した職員を称える記念碑を背景に幹部職員約300人を前に15分程度のスピーチを行った。この日までトランプ氏はCIAなど情報機関が同氏のモスクワでのわいせつスキャンダルを漏らしたと非難し、両者の緊張が続いていた。 CIA訪問は本来ならこうした緊張を緩和して情報活動を鼓舞する機会のはずだったが、トランプ氏がCIAの活動に触れたのはほんの一瞬。同氏は大半をメディアへの不満、就任式の人数が不当に低く報じられたこと、さらには政治的支持層や自分の知的レベルの高さなどに終始、自己顕示欲をあらわにした。 トランプ氏は「就任式の聴衆は150万人はいたように見えた。メディアは嘘つきだ」と指摘。「私はメディアとやり合っている。彼らは地球上で最もいい加減な人種だ」と述べ「連中は大きな代償を支払うだろう」と恫喝した。トランプ大統領とメラニア夫人(右) 殉職者の碑はCIAの中で最も敬われる場所。そうした“神聖な”碑を背景にしてCIAと関係のない話をしたことに前長官のブレナン氏は「見下げた自己顕示欲だ。恥を知れ」と怒りの声明を発表した。 トランプ氏はわいせつスキャンダルを漏らしたのが前長官と思い込んでいるフシがあり、先週には「彼は偽ニュースの漏洩源」と罵っていた。しかしある職員は「大統領は単に情報機関との関係を強めるために来たと言えば良かったのに、ほとんどは就任式の聴衆の人数の話だった。場違いなスピーチだった」と語っている。 トランプ氏は就任式の聴衆人数について、側近らにメディアに反撃しろとどやしつけたと伝えられているが、この日、CIAからホワイトハウスに戻ったスパイサー大統領報道官はこうしたボスの怒りを記者団にぶつけた。報道官はトランプ大統領の就任式はこれまでで最も聴衆が多かったと反発。 その証拠として、就任式が行われた20日のワシントンの地下鉄の乗降客を持ち出し、2013年のオバマ大統領再選の際の式典では31万7000人だったのに対し、今回は42万人だったと主張。しかし、地下鉄当局によると、実際にはオバマ氏の時は78万人で、今回の57万人よりも多かった。自己愛性人格障害? スパイサー氏は「メディアは大統領の責任を問う話を報じているが、メディアにも同様に責任を取らせる」と捨て台詞を残して、一切の質問を受け付けずに5分で会見を打ち切るというまさに異常事態になった。自己愛性人格障害? こうしたトランプ氏のメディア不信は選挙期間中からのものだが、当選後最初の記者会見(11日)では、わいせつスキャンダルの内容を報じたニュースサイト「バズフィード」を罵倒したのは無論のこと、そうしたスキャンダルが出回っていると伝えたCNN記者にも質問をさせなかった。トランプ米新大統領の就任式会場に詰めかけた大勢の人たち=1月20日、ワシントン トランプ氏は記者会見を開いて記者とやり取りをするのを嫌悪しており、その代わり、ツイッターで一方的に“トランプ砲”を発信するのを好んでいる。米自動車産業やトヨタがメキシコに工場を建設することなどに直接文句を付け、女優のメリル・ストリープさんの弱者軽視の批判にもすぐに反撃した。 それも早朝からツイートしており、「ほとんど寝ていないのではないか」(米専門家)と思われるほど。こうした自分への批判や悪口が気になり、言われると衝動的に反応していることに、一部には「自己愛性人格障害」の兆候とのうわさもささやかれている。この症状はナルシストに多いことでも知られる。 米国では、新政権発足後、100日間はメディアも政権批判は控えて見守るという習わしがあるが、トランプ政権に限ってはそれは当てはまらないようだ。それどころかメディアとの対立がさらに激化すれば、トランプ大統領が何を考え、何をやろうとしているのかが国民の目から遠くなってしまう恐れがある。 オバマ氏は退任会見で「私は称賛されるのを求めない。権力者を批判するのはメディアの仕事だ」と述べた。トランプ氏にこうした大人の対応を期待するのは最初から無理なのかもしれない。

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    韓国が騒げば騒ぐほど、トランプの眼中に入ってくる「慰安婦像」

    田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授) トランプ大統領の政策にとって韓国が占める位置はどのようなものだろうか。そこから、現在の日韓で大きな関心を集めている慰安婦像問題を考えていきたい。1月21日、トランプ米大統領就任を伝えるテレビニュースが流れる大阪市内の大型モニター トランプ政権にとって韓国は、経済的側面と安全保障のふたつが主要な関心事だろう。「米国第一主義」を就任演説でも強調し、また米国民の雇用の最大化を主軸にしていることは、トランプ氏が以前から公約で明言してきたことで目新しいことはない。 また就任演説直後に、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の合意からの離脱を表明し、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を要求した。TPPもNAFTAも多国間の自由貿易圏を生み出すための国際的な枠組みである。この両協定に対して、トランプ大統領が否定的であることから、保護貿易主義を米国がそのまま採用すると考える意見もあるが、それは即断すぎる。むしろ二国間の交渉によって、自国に有利な形での「自由貿易」路線を継続するのが主眼だろう。 このような通商・貿易政策の戦略は、米国が1980年代から90年代前半にかけて、特に日本を中心に適用してきたものを想起させる。例えば、当時の米国の歴代政権は、日本の「構造問題」を指摘し、その解決を政治的な権力を多様に駆使して実行を迫った。 規制緩和や民営化路線を強行すれば、日米の貿易問題が解消すると米国の当局者は理解していた。米国の貿易赤字は、いわば日本の「構造問題」によって米国の産業・企業が日本で「条件を同じくして」競争できないために発生していると考えたのである。 さらに為替レートの強制的な調整も実行を迫られていた。円安ドル高がこれまた米国の貿易赤字をもたらしているとして、円高ドル安路線への政治的転換を迫った。米国はこれを他国にも迫り、それがいわゆる「プラザ合意」として各国協調でのドル安(他国通貨高)政策に結実した。 このような米国の日本への「構造問題」解決圧力と、また強制的な円高政策は、日本に米国からの積極的な政治的圧力がなくなった後でも深刻な弊害をもたらした。つまり日本の停滞の主因は「構造問題」であるという誤解の蔓延、さらに“円高シンドローム”という事実上のデフレ政策の採用である。 後者はわかりやすくいえば、円高を続けるということは、市場に出回るマネーの通貨量が少ないので、マネーの価値が(モノやサービスに対して)高まることになるからである。マネーの価値の高まり、すなわちデフレは人の価値よりも超えてしまい、失業や自殺者数の増加に結び付いた。いわば、80年代から続く米国の政治的呪縛と、それが事実上解けた後でも日本の政策当局の構造問題やデフレ政策への妄執によって「失われた20年」という大停滞が続いた。韓国で巻き起こる「構造改革」ブーム 実は韓国はすでにこの「失われた20年」の罠にどっぷりと浸かっていると筆者は判断している。すでに米国と韓国の間では、米韓自由貿易協定(FTA)が締結されているため、韓国の政治・経済界そしてメディアで、韓国の経済的低迷は、例えば財閥系企業がグローバル化に不適合な旧体質にあるという、かつての日本のような批判が主流になっている。いわば韓国版の「構造改革」ブームとでもいえる現象が起きているのだ。 これはまさに米国との通商交渉のひとつの帰結とみてもおかしくないだろう。確かに規制緩和などが必要な領域があるだろう。しかし本連載の第1回でも指摘したように、現在の韓国経済の問題は持続的な総需要不足であり、その解決は構造改革ではまったくない。「失われた20年」の日本と同様に、積極的な金融政策と財政政策による総需要不足を解消するしかないのである。 だが、韓国の経済界や言論界で、このような当たり前な総需要刺激政策を唱える論者、特に金融政策の転換を主張する人は皆無である。「リフレ派なき韓国経済」といっていい。またこのことが、金融政策を事実上デフレスタンス(=ウォン高)のまま放任することにつながり、「ウォン高シンドローム」によって経済の低迷はより確実なものになるだろう。 確かに財政政策の拡大の余地があるが、日本が90年代に積極的な財政政策を行っても停滞から脱出できなかったように、財政と金融の両方の政策が協調性をもって大きく緩和に転じない限り、財政政策はムダ打ちになる可能性が大きい。それはますます通常の景気刺激政策への失望を招き、より韓国を構造問題主義に傾斜させていき、自国を停滞の罠に陥らせるだろう。 ところでトランプ政権が米韓FTAの再交渉を提起する可能性を、韓国内でも懸念しているようだ。ただし、米国のいわゆる貿易赤字にしめる韓国の位置はそれほど重要ではない。筆者の現在の見通しでは、FTA再交渉の緊急性は高くないと判断している。 いま、トランプ政権が問題視しているのは、最大の貿易相手国の中国である。トランプ政権は中国との通商・貿易交渉で強気の交渉-国内各経済部門の規制緩和、対外資本投資の自由化など-を展開する可能性が大きい。もしこの対中交渉が決裂し、米国が報復的な高関税政策を中国に適用した場合、中国の輸出産業に中間財を供給している韓国の産業がダメージを負うことがあるかもしれない。むしろ韓国にはそちらの懸念の方が大きいだろう。「慰安婦像」で決定的になる政治停滞 もっとも韓国経済からみれば、すでにFTA交渉で植え付けられた「構造問題主義」が蔓延してしまったほうがよほど深刻のはずだが。さらに為替レートの動向については、従来からの「為替操作国」への認定を、トランプ政権は強く意識する可能性が大きい。そのために過去に実行されていた疑念のある為替介入は事実上封印されるだろう。またデフレスタンスの韓国銀行(韓国の中央銀行)の政策スタンスの変更はないだろうから、筆者のかねてからの予測通りに、そのまま韓国が日本型の長期停滞に自ら入り込む可能性が高い。 安全保障については、これも米国の対中国・対北朝鮮政策によって韓国の位置付けが大きく左右されるに違いない。その延長で、慰安婦像の設置問題も考える必要がある。 筆者の見解では、今回の慰安婦像設置は、明らかに日韓合意に反するものである。その非は完全に韓国側にある。と同時に、この慰安婦像問題も含めて、韓国の親北朝鮮勢力の政治的な動きと連動していることを見逃してはいけない。韓国・釜山の日本総領事館前への慰安婦像設置に対抗して、一時帰国した長嶺安政駐韓大使(合成写真) 現在のところ、朴大統領の弾劾が決定し、その後に大統領選挙が行われれば、韓国で北朝鮮・中国寄りの政権ができる可能性が大きい。これはトランプ政権にとって座視できるものではない。さまざまな政治的ルートで、もし親北・親中の新政権に揺さぶりや圧力を明示的にかけるだろう。 筆者の私見では、それで韓国が米国と関係を悪化させることはできないと見ている。なぜなら米国は韓国の域内の軍事的プレゼンスを支える動機付けを、トランプ政権になっても維持すると考えられても、中国が米国の代替になるとはまったく考えられないからだ。中国は韓国に対して、貢物や服従を要求すれども、その恩恵付きの庇護には無関心であるという、何千年にもわたる両地域の歴史がそれを裏付けているからだ。 韓国は経済面で米国に必要以上に隷従しているし、また安全保障上でも米国の存在抜きでは、国家の存立さえも事実上危うい。特に安全保障面では、トランプ政権は日本と韓国が外交的摩擦を過度に起こすことにやがて神経質になるだろう。 そのとき慰安婦像問題は、トランプ政権にとって無視できない位置におかれる。外交的にもまた政治的にも、ボールは韓国側にあることは、米国だけでなく、海外の良識すべてが判断することになるだろう。日本はこの状況をよく考慮に入れて、いまから対応すればいい。仮に新政権が慰安婦像を再び政治利用すれば、そのとき韓国の政治的な停滞もまた決定的になるに違いない。そこまで愚かでないことを望む。

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    安倍首相はトランプ氏の完全なるしもべだと大前研一氏

     昨年末、あまりに急ぎすぎだと与党内からの批判も起きるなかカジノ解禁法(IR整備推進法)が成立した。経営コンサルタントの大前研一氏が、カジノ解禁法を例にとり、安倍首相の政治、外交手腕の空虚さを指摘する。* * * 前回は、安倍晋三首相の通算在職日数が戦後歴代4位となり、このままいくと歴代最長を更新する可能性もあるが、アベノミクスや対米外交などを見ると、その主張には一貫性がなく、まるでカジノのルーレットのように、投げた玉が止まるまで当たりと外れのどちらに転ぶかわからない、と指摘した。今回は、そういう安倍首相の“ルーレット政治”が日本に何をもたらしているのか、ということについて考察したい。2016年11月、ニューヨークのトランプタワーでの会談前、握手を交わす安倍首相とトランプ米大統領(内閣広報室提供・共同) まずは、昨年末に成立したIR(カジノを含む統合型リゾート施設)整備推進法(カジノ解禁法)をめぐる動きだ。これまでは国会に提出されるたびに廃案や継続審議になって3年も“店晒(たなざら)し”にされてきた同法案が突然昨年11月30日に審議入りし、極めて短い審議時間で可決・成立したのは、実に不自然だった。その疑問を解くカギは、11月18日の安倍晋三首相とドナルド・トランプ次期米大統領の会談にある。 大統領選挙でトランプ氏に大口の選挙資金を提供した献金者の1人にシェルドン・アデルソン氏という人物がいる。ラスベガス・サンズ会長で、トランプ氏と同じカジノ・不動産開発を手がける世界有数の資産家だ。ユダヤ・ロビーの大物としても知られ、トランプ氏の“インナーサークル”の人物である。 アデルソン氏はもともと日本のカジノ市場参入に強い意欲を示し、2014年の来日時にカジノが解禁されたら100億ドルの事業資金を用意できると公言していた。 そういう背景を踏まえると、安倍首相がニューヨークのトランプタワーを訪れた際にトランプ氏だけでなくユダヤ教徒の長女イヴァンカ氏とその夫ジャレッド・クシュナー氏が同席していた理由は想像がつく。すでに内外のメディアでも報じられているように、おそらく「ファミリー・ビジネス」のミーティングを行なっていたのだろう。その只中に通訳だけ連れて飛び込んでいった安倍首相は何を言われたか? IR整備推進法案を速やかに成立させるよう要請されたに違いない。だから安倍首相は帰国後、いきなり同法案の成立を急がせたのだと思う。 むろん、この見立てを安倍首相や政府関係者に問い質したとしても、容易に認めるわけがないだろう。あくまでもトランプ氏が大統領に就任する前の極秘の“ディール”だからである。 トランプ氏との会談後、安倍首相は「内容は明かせないが、信頼できる指導者だと確信した」と述べた。この言葉は裏を返せば「自分は裏切らない。必ずIR整備推進法を成立させる」というトランプ氏へのメッセージと読めなくもない。1月下旬にはホワイトハウスに参上して約束を守ったことを報告するというのだからもはや完全な僕(しもべ)である。 しかし、そういう姿勢は、前回も述べたように、アメリカべったりの土下座外交、朝貢外交であり、中曽根首相とレーガン大統領の時のような「日米イコールパートナー」とは全く違う。いくら戦後歴代4位の在職日数となり、プーチン大統領との北方領土交渉やオバマ大統領とのハワイ・真珠湾訪問などで「戦後政治の総決算」「私の世代で戦後を終わらせる」と大言壮語しても、中身は相手の言いなりで、日本にとってのメリットが見当たらないのだ。関連記事■ 安倍首相 オバマ氏会談後「遠くから来たのに冷たい」と愚痴■ 安倍首相よ、「広島」と「真珠湾」の等価交換でいいのか?■ 安倍首相が寿司業界と親密な関係 業界団体の名誉顧問に就任■ トランプ氏 ウマが合うプーチン氏&安倍氏の系譜に連なる■ SAPIO人気連載・業田良家氏4コマ「例え話国会」

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    安倍総理が「もうひとつの真珠湾」に込めた謝罪なき慰霊の旅

    青山繁晴(参議院議員、作家) 安倍総理の真珠湾訪問は当初、「現職総理として初」とされていた。実は吉田茂、鳩山一郎の両氏、さらには安倍総理の祖父である岸信介氏まで含めいずれも現職総理としてパールハーバーを訪ねていたことが分かった。 外務省は安倍総理にも、マスメディアを通じて国民にも、間違ってレクチャーしていた。 日本国外務省に、積極果敢にしてしたたかな外交が乏しいことは多くの国民も気付いている。半面で、事務的なことは日々さぞやしっかり遂行しているだろうと考える人は国会議員にも多い。それがこれである。慰霊を終え、演説する安倍首相とオバマ米大統領=12月27日午後0時13分、米ハワイ州オアフ島(代表撮影) 真珠湾への歴代総理の相次ぐ訪問は、その都度、ハワイの地元紙に大きく報道された。しかも米海軍の栄誉礼を受けた事実を考えれば、公式訪問の範疇に入る。これを外務省が失念していたとは開いた口が塞がらない。  まさしくその真珠湾の攻撃をめぐり、外務省が関係して日本の宣戦布告のアメリカへの手交が遅れ、今に至るまで「卑怯な不意打ち」とされている事実と繋がる、あり得ないはずの不祥事だ。宣戦の遅れは「駐米大使館の怠慢ではなく陸軍と外務省が手を組んで意図的に行った」とする新説などが学者から出ているが、いずれにしても外務省が関与している。 ただし、この外務省の体たらくがあってなお、安倍総理の訪問の値打ちは下がらない。歴史的意義は失われない。 理由は三つある。 まずオバマ米国大統領の、現職大統領として初の広島訪問があっての真珠湾訪問である(ふたつの歴史を同一視するのではないことは後述)。 また安倍総理はこれより先に、米国の上下両院合同会議で、これは間違いなく現職総理として初めて演説し日米戦争についても語った。そして日米和解の象徴として、硫黄島で戦った米海兵隊生き残りのローレンス・スノーデン海兵隊退役中将と、日本軍のフェアな指揮官だった栗林忠道帝国陸軍中将、その直系の孫である新藤義孝元総務相をギャラリー(傍聴席)に招いて紹介し、満場の拍手を巻き起こした。この拍手の音が耳に残るなかの真珠湾訪問だ。 さらに世界はたった今、大戦後の秩序が壊れゆく途上にある。英国のEU離脱をはじめ欧州の既存体制の崩壊、米国の大統領選挙が露呈した米国民自らによるアメリカ社会の破壊、これらは大戦の勝ち負けによって作られた秩序が七十余年で終焉を迎え、新秩序への呻吟が始まったことを意味する。 そのさなか、かつての勝者と敗者の象徴である米国と日本の首脳が呼応し、開戦の地、真珠湾に集うて和解を世界に告げるのには歴代総理の訪問にはない新しい意義がある。それは次の時代への号砲だ。真珠湾はふたつある 一方で、わたしはいくつかの懸念を持った。そこで安倍総理と不肖ながら直接にお話をした。いかなる手段、どんな場でのことかは明らかにしない。総理と接することを自己宣伝にすり替える人がいる。恥ずかしいことだ。総理に僭越ながら意見を申し述べるのは、一切がただ国益のためだ。そうでなければ、いわば公共財である総理の時間を奪ってはいけない。 わたしの懸念の第一は、真珠湾訪問が謝罪であってはならないことだ。広島、長崎への原爆投下は、赤ちゃんから女性、お年寄りまでの非戦闘員を溶かし、灰にし、階段に残された影に変え、すべての皮膚を剥がされて腕から垂らしながら彷徨(さまよ)い、水を求めて空の貯水槽に赤黒い顔を突っ込んで絶命する人々に変えたことであり、まごうことなき戦争犯罪だ。 真珠湾攻撃は当時の国際法にきちんと則(のっと)った戦闘であり、しかも日本海軍は民間人を一切、狙わず、戦争犯罪ではない。 これは安倍総理はよく理解されていた。しかしそれは予想通りだ。問題は、外務省の作った日程の原案である。 まず外務省が「これこそ現職の総理が訪れるのが初めての場所」と今、強調するアリゾナ記念館は、日本軍が撃沈して海の底にある戦艦アリゾナを跨いで作った水上の記念館であるから、慰霊だけではなく日本への憎悪の場所でもある。 さらに通称パンチボール、正式には国立太平洋記念墓地。ここは、あの自由の女神がニューヨークの端正な顔を一変させて、底知れぬ憎悪の表情で壁に浮かんでいる場所である。わたしがとても若いとき、初めて訪れると地元で責任ある立場のアメリカ人がはっきりと「真珠湾のあの卑怯な不意打ちを忘れない、リメンバー・パールハーバーのために女神の顔を変えたのさ」と言った。 安倍総理がこうしたところだけ回れば、謝罪の言葉は無くとも謝罪の旅に見えるという仕掛けなのだ。 わたしの邪推ではない。 外務省のなかにも拙著の読者がいる。「青山繁晴の逆転ガイド ハワイ真珠湾の巻」という本を読んだ外務省のキャリア官僚は「場所がひとつの焦点ですよね」と言った。 真珠湾にはふたつある。ひとつはアメリカ本土と同じく、真珠湾攻撃を卑怯として日本を憎悪するメモリアル。これは、わたしたち日本国民にも刷り込まれた考えだ。 ところが真珠湾のど真ん中に、これと真逆の場所が少なくとも三箇所ある。ビジターセンターに展示されている、広島市の平和記念公園にある「原爆の子の像」のモデル、佐々木禎子さんの折り鶴=2016年12月15日、米ハワイ・オアフ島(共同) ひとつはビジターセンターの展示館二棟。もうひとつは戦艦ミズーリの後部デッキ。残るひとつは太平洋航空記念館だ。いずれも日本軍を稀なるフェアな存在として正当に扱い、いやそれだけではなく、まさかの絶讃もある。拙著のタイトル「逆転ガイド」とは、これを指す。思い込みを逆転するためのガイドである。観光案内ではない。対等な真の日米同盟への可能性 日本国民はみな、もちろんわたし自身も含めて「アメリカは真珠湾攻撃を卑怯だと怒り、リメンバー・パールハーバーと称して今も忘れず、だから原爆投下も正当だと主張している」と教わってきた。世代を問わない。現在もそのように教えている。 ところが当の攻撃を受けた現場では、逆転がある。たとえばビジターセンターの記念館では、空母赤城を膨大なコストを掛けて精密に復元し、その先進性を文字通り絶讃している。乗組員は、白いスカーフの戦闘機乗りだけではなく車輪に屈む作業の水兵までフィギュアで大変な数を一体、一体、丁寧に再現し、そこには深い尊敬が隠しようもなく表れている。 この隣には、沈められたアリゾナの模型がある。こちらは格段の差がある、やや粗雑な模型であり、フィギュアはたった二体、艦長と水兵だけである。背後の解説パネルでは、その戦略思想の古さを自ら徹底批判している。ここで反省をアメリカの若者にも世界の誰にも見せ、「反省したからこそ半年後のミッドウェー海戦で勝ち、祖国を護った。失敗をこそ活かせ」という真意なのだ。 アメリカ政府が建て、運営するこの展示館の説明は「日本の資源輸入路をアメリカが封鎖したから日本は戦わざるを得なかった」(原文は英語)と開戦の理由を語り、日本の軍国主義とか侵略といった表現は無い。 そしてミズーリには、特攻で上半身が千切れて甲板に転がった日本の若者を戦中にアメリカの正式な海軍葬で弔った事実が展示されている。 同じ思想の展示である太平洋航空記念館でわたしは、九十四歳のディック・ジロッコという真珠湾攻撃当時の米兵と会い、その英語の対話をそのまま拙著の巻末に収録した。彼は「日本軍は民間人を狙わなかった」と明言し、「攻撃は見事だった」と語った。真珠湾の戦艦ミズーリとアリゾナ記念館=ハワイ・オアフ島(鈴木健児撮影) わたしは安倍総理に拙著を渡し、こう述べた。「ほんとうはこれら三箇所も回って欲しいのです。しかし無理は言いません。せめて、総理の動線にもっとも無理のないビジターセンターの展示館は見てください」。 総理は「見ましょう」と約束してくれた。その後、官邸の要人から「総理は熱心にあの本を読まれて、日程に組み込むよう指示されましたよ」と聞きつつ、わたしなりに外務省と交渉を重ねた。 そしてオバマ大統領との共同声明を発する直前に、この展示館をも訪ねる日程が内定した。ところが「マスメディアを入れない」という奇妙な振り付けになっていたから、それも正して、メディアが取材できるようにした。あとは総理が何を語り、メディアが何を伝えるかとなった。 そして安倍総理は、真珠湾で海風に吹かれながら述べたステートメント(所感)で謝罪はせず、日米の和解と同盟強化がたった今、世界に新たな価値を生むことを語った。オバマ大統領との最後の首脳会談で、中国の空母艦隊の西太平洋と南シナ海への進出を懸念することを提起し、中国に融和的だったオバマ大統領の同調を引き出したことも大きい。中国に厳しいトランプ次期大統領にも伝わる。 ビジターセンターの展示館視察を伝える報道ぶりがフェアなものとなれば、日本国民は「日本軍が卑怯なことをした」という刷り込みを脱することができる契機を摑むだろう。その先にあるのは、対等な真の日米同盟への可能性である。 もはや右でも左でもなく、思い込みのない客観的な事実によって歴史、先人の苦闘を辿(たど)りたい。余談を申せば、真珠湾も、ほんとうは湾ではなく真珠港である。青山繁晴氏も登壇!ニッポン放送『ザ・ボイス そこまで言うか!場外乱闘 激論!首都大決戦 MEGAMAX』 チケット購入はコチラ

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    首相に真珠湾訪問を決断させた理念の日米同盟に差すトランプの影

    手嶋龍一(外交ジャーナリスト) 殺人を犯して最大の利益を得る者こそ、殺人犯である可能性が高い――アガサ・クリスティの推理小説は、意外にもこうしたシンプルな発想を犯人捜しの基本に据えている。 アメリカのルーズベルト大統領は、日本の空母機動部隊による真珠湾奇襲を事前に承知していた。だが、ナチス・ドイツへの参戦を忌避するアメリカ国内の世論を突き動かすため、敢えて真珠湾にいた太平洋艦隊を日本海軍に闇討ちにさせた。1941年12月7日の真珠湾攻撃の直後から囁かれてきた「ルーズベルト陰謀説」である。トランプ次期米大統領と会談する安倍首相=11月17日、ニューヨーク(内閣広報室提供・共同) 先日、テレビの番組で、憲法学者を名乗る「論客」が、真珠湾奇襲の陰謀説を真面目に説いて、対日批判をかわそうとしていた。こうした場面で言い争ったり、批判したりすることなど滅多にない。だが、若い視聴者がかかる杜撰な話を信じ込んでしまってはいけないと思い、反論することにした。 アメリカ本国でも、修正主義学派に属する人々が、さまざまな陰謀説を発表してきた。だが、厳密な歴史の考証に耐えうるような新しい証拠は今日まで公になっていない。 永井陽之助は『歴史と戦略』のなかで、日本の有識者のなかにいまなお陰謀説を信じている人が多い歴史的背景を鋭く言い当てている。「察するに、アメリカ人がパール・ハーバーの『卑劣きわまる、だまし討ち』を信じることで、ヒロシマ・ナガサキの非人道性を正当化しようという心理がはたらいているのとおなじように、われわれもまた、ルーズベルト陰謀説を信じることで、モヤモヤした戦後の対米コンプレックスを一掃し、わが国の自立と誇りを回復したという願望がかくされているのだろう」 冷戦がいまだ続いていた1980年代の半ばに書かれた論考なのだが、パール・ハーバーとヒロシマに関する限り、日米の位相は大きく変わっていない。それだけに、太平洋戦争が始まって75年が経った2016年という節目に、アメリカのバラク・オバマ大統領が被爆地、広島でヒロシマ・スピーチを行い、日本の安倍晋三首相が真珠湾のアリゾナ記念館を訪れて犠牲者たちに慰霊の祈りを捧げる意義は大きい。太平洋戦争が幕を開けた真珠湾とこの戦争を終結に向かわせた原爆投下の地、広島を日米の首脳が相互に訪れることは、国際社会の秩序が変容しはじめ、新たな時代に入りつつあることを物語っている。 広島へのオバマ大統領の訪問、そして安倍首相の真珠湾訪問は、ともに背後で第45代アメリカ大統領となるドナルド・トランプ氏の影が見え隠れしている。 太平洋の波を静かなものにしてきた日米同盟について、共和党のトランプ候補は、大統領選挙のキャンペーンを通じて、日本側に多くの財政負担を求め、見直しの意向を示してきた。「日本はどうやって北朝鮮から自国を守ろうとしているのか。日本に核兵器を持たせることは、さほど悪いことではないと思う」(2016年3月、ニューヨークタイムズ紙とのインタビュー)「理念の同盟」を確固たるものにしたい両首脳の思い 戦後のアメリカは、民主、共和のいずれの政権も、日本とドイツに核のボタンを委ねることだけは認めないという原則を一貫して堅持してきた。トランプ発言は、核兵器を東アジアと欧州にさらには中東に拡散させる引金となりかねない。共和党の有力候補トランプ氏のこうした主張にオバマ大統領は強い懸念を抱いたのだろう。その危機感がオバマ大統領にヒロシマ・スピーチを決断させたと言っていい。 トランプ次期大統領は、「アメリカ・ファースト主義」を唱え、アメリカの国益を何より優先させる姿勢を鮮明にしてきた。戦後のアメリカは、西側同盟の盟主であり、冷戦の終結後も世界の指導的国家であり続けてきた。現に第一次湾岸戦争では、同盟国や国際社会の利益を優先させ、クウェートと安全保障条約を結んでいないにもかかわらず、アメリカの若い兵士は最前線に赴いていった。こうした行動を通じて指導的な地位を揺るぎないものにしてきた。「日本もアメリカを防衛する義務を負うべきだ。我々がこう求めたなら、日本の人々はきっと断ってくるに違いない。それじゃ交渉は決裂だと言えばいい。日本は必ずやアメリカを防衛すると我々の要求を受け入れはずだ」 今回の大統領選挙で隠れた激戦州となったウィスコンシン州ミルウォーキーでの選挙演説である。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議後、オバマ米大統領(右)と歩きながら会話する安倍晋三首相=2016年11月20日、ペルー・リマ(AP) オバマ大統領の「ヒロシマ・スピーチ」は、日米両国にマグマのように堆積されつつある「歪んだナショナリズム」に警告を発するものであった。それゆえ日米の同盟関係を単に軍事的な盟約にとどめることなく、自由や民主主義といった共通の理念を分かち合い、揺るぎない礎の上に築き上げていくべきだと説いている。 「アメリカと日本は単なる安全保障同盟だけでなく、私たち市民に戦争を通じて得られるよりも遥かに多くのものをもたらす友情を築いてきた」 安倍演説では、首都ワシントンのフリーダム・ウォールの壁面に刻まれた第二次世界大戦の犠牲者を追悼する4千の星々に触れている。「その星ひとつ、ひとつが先の戦陣に斃れた兵士百人の命を表すと聞いたとき、私を戦慄が襲いました。金色の星は、自由を守った代償として、誇りのシンボルに違いありません」 安倍スピーチの草稿を準備したのは、ジャーナリストの谷口智彦氏だが、この演説の行間には、日米同盟が自由と民主主義という共通の価値観を分かち合う「理念の同盟」に脱皮していかなければというトーンに貫かれている。4年間に及んだ安倍・オバマ時代の締めくくりとなる真珠湾会談で「理念の同盟」をより揺るぎないものにしたいと考えているのだろう。それは、トランプ次期大統領との間で、共通の理念を分かち合えずにいる危機感の反映に他ならない。安倍・オバマ時代に太平洋を結ぶ同盟の礎を確固たるものにしておかなければという両首脳の思いが真珠湾会談を実現させたのだろう。

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    真珠湾慰霊でみせた安倍外交のしたたかさ

    広島訪問に続き、安倍首相の真珠湾訪問は、日米にとって歴史的な1ページとなった。戦後70年の節目以降、日米関係の再構築を急ピッチで進めてきた2人。ただ、日本側は「謝罪」ではない巧みな慰霊訪問を演出し、安倍外交の「したたかさ」も垣間見えた。

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    安倍首相が真珠湾慰霊で中朝露に示した「新日米同盟」の重み

    。世論調査でも88%が支持している。それは内外の政治的に難しい状況で、日本の安全と発展に必要不可欠な日米関係に好影響を与えると思われるからだ。 また、これとともに私が期待するのは、この慰霊行事が両国民の戦争の記憶に上塗りされて事件の生々しい印象が緩和されることと、歴史の見直しにより日本人が戦後の自虐的な日本悪者史観から解放されることである。このため早くも中共や韓国から否定的な反応があり、彼等もこの慰霊行事が日本人に自信を取りもどさせる機会になると考えていることがわかる。真珠湾攻撃75年の追悼式典が開かれた米ホノルルで海上を通過する駆逐艦。左はアリゾナ記念館 今回の慰霊行事の日本側の動機は、極東における日本の安全が脅かされてきたからである。日本は北から中朝露という3大核大国に包囲され尖閣では既に侵略が始まっている。自力で国防が出来ない日本は米国が撤退すればたちまち占領される。 また、米国は国防だけでなく経済関係でも最重要な大市場であるから日米友好は不可欠だ。しかしその頼みの米国はトランプ新大統領が世界、極東、日本についてどのような方針を打ち出すのか分からない。 このため日本は大変不安な状況にある。そこで今なお両国民の喉に刺さった骨のような真珠湾事件の慰霊を行い少しでも両国民の対立感情を緩和することを望んでいるのだろう。 一方、米国にとっては緊迫する極東問題の対応には日本の協力が不可欠だ。そこで半世紀以上昔の歴史事件が今なお日米離間工作に利用されるのは望ましくないので、両国民の心情を考えて慰霊を行うことにしたのではないか。これは両国のきわめて高度な政治的判断であるから、真珠湾の慰霊をオバマ大統領の原爆慰霊のバーターと考える人がいるとしても結果が良ければ問題は無い。国家の利害に合わせて変わる「歴史観」 米国の政治的な視点では、真珠湾事件は65年前にすでに終わっている。すなわち1951年5月のマッカーサーの米上院委員会の証言だ。彼は「日本は絹産業以外には固有の天然資源はほとんど何もない。彼らは綿が無い、羊毛が無い、石油の産出が無い。錫が無い、ゴムが無い。それら一切のものがアジアの海域には存在していた。もし、これらの原料の供給を断ち切られたら、1000万から1200万の失業者が発生することを日本人は恐れていた。したがって、彼らが戦争に飛び込んでいった動機は主として生存の必要に迫られてのことだった」これは真珠湾の反撃は日本の自衛のためであったということである。これは史実と合致する。 この米国の大転換の背景には長年の太平洋政策の失敗がある。戦前米国は支那満州への進出を望み邪魔な日本を滅ぼしたが、ソ連の南下で1949年支那満州が共産化され1950年には全支那から追い出されてしまった。 まさに「鳶に油揚げをさらわれた」のである。この結果米国は日本防衛が大きな経済的な負担になり、日本に自衛を促すために独立させることになった。これに伴い、米国は歴史観をそれまでの日本悪者論から日本自衛戦争論に180度切り換えたのである。 日本の指導者を断罪した東京裁判の国際法廷は解散され2度と開かれることはなかった。そして1951年にはサンフランシスコ講和条約が結ばれ日米の正常な国交が回復し日米の敵対は正式に終わったのである。政治的な歴史観は現実の国家の利害の変化に合わせて変わる。まさにクローチェの述べたように「あらゆる歴史は現代史」なのである。東京裁判に出廷した東条英機元首相(中央上)ら=1948年 なお米政府は事件の10カ月前に日本海軍の真珠湾攻撃を警告したグルー駐日大使のハル国務長官宛ての公電(1941.1.27付)を外交公文書館のHPで公開している。これは米政府が日米両国民に対し、真珠湾事件は奇襲ではなかったことに気付けというメッセージに思われる。 しかし、日米が講和を結んだにも拘わらず、両国には反日プロパガンダ史観が根強く残り今日まで続いている。それには両国の特別な事情があるからだ。 米国側には国家の無謬性につながるルーズベルト大統領を無条件で守る動きがある。このため米国の歴史研究者が真珠湾事件に到る外交関係を調べようとするとすぐに陰謀論者、歴史修正主義者のレッテルが貼られ研究を妨害される。 これは大統領の戦争責任が明らかになることを恐れているのであろう。この結果米国社会では真珠湾事件の真相が知らされていないので一般国民はそれまでの反日宣伝を信じて日本に反感をもつのである。「真珠湾」は反日歴史観のシンボル 一方、日本では占領初期にGHQが真珠湾事件を使って反日洗脳を徹底的に行った。このため日本悪者論が戦後の政治、司法、文化、教育の思想基盤となった。そして左翼がマスコミ文化界に「閉ざされた言語空間」を作ったため、独立後も大東亜戦争の真の因果関係が真珠湾事件を含めて隠蔽されてきた。実際1951年の米政府の歴史見直しも未だに日本国民に知らされていないのである。 このため、今でもこの日本人悪者史観が日本社会を支配する重要なイデオロギーになっている。例えばNHKは占領中の「真相はかうだ」番組でわかるように占領軍の日本人洗脳組織であり、真珠湾事件を使って日本悪者論を散々放送したが、独立後も解体されることなく公共放送として依然として反日歴史観による番組を放送している。自民党も安倍首相を総裁に頂きながら今も占領政策に従い独立記念日を祝わない。これらの反日歴史観のシンボルが真珠湾事件の日本非難なのである。 そこで宣伝で繰り返される「真珠湾奇襲攻撃は卑怯なだまし討ち」の真相を解明したい。まずこの事件は日本の攻撃ではなく米国の挑発と圧迫に対する日本の自衛反撃である。そして奇襲ではない。1941年12月7日、日本軍のハワイ真珠湾攻撃で、炎上して沈む米戦艦 日本海軍の真珠湾計画はグルー公電で10カ月以上前に米政府にすでに通報されていた。さらに日本の暗号は事件の一年以上前の1940年9月に米軍の暗号専門家フリードマン大佐により解読されていたから日本政府の外交通信はすべて大統領に報告されていたのである。フリードマン夫人は「夫は真珠湾大被害のラジオニュースを聞くと、何故だ、奴ら(大統領ら)は知っていたのに、と言いながら居間をぐるぐる歩き廻った」と語っている。 この事件では日本の最後通牒の手交が遅れたことが潔癖症の日本人の不満になっている。しかし重光葵は反撃なので通告は不要と主張したという。すでに米陸軍の大航空部隊が義勇軍(フライング・タイガー)に偽装して支那南部で日本軍を攻撃していたからである。また、米国は歴史的に宣戦布告をしていない。朝鮮戦争、ベトナム戦争などが良い例だ。日本だけに宣戦布告を要求するのは二重基準の不正だから拒否して良い。 開戦前夜の緊迫した状況で日本大使館の館員が送別会を開いたことが通牒文書作成の遅れにつながったとして怒る人もいる。しかし通牒自体が余計な文書であり内容も先に解読されていたのだから意味が無い。これはFBIの厳重監視下に置かれていた日本の大使館員が米国に対して多少でも異変を見せないように偽装したのかも知れない。 日本海軍の攻撃はルーズベルトの想定内であったが、結果は重要艦船の壊滅的被害に加え戦死者が2345名に上りまったく想定外となった。 このため、ルーズベルトは動転狼狽しそれが「日本の卑怯な騙し打ち」の猛宣伝となった。軍事とスポーツをすり替えて米国民を誤魔化したのである。勿論ハルノートに到るそれまでの対日圧迫政策は隠蔽されていた。このため米国民は国会議員を含めて騙され日本の「卑怯な」反撃に対して憤激したのである。ルーズベルトの囮にされたハワイ米軍 しかし、米議会は奇襲だとしてもあまりに甚大な被害に驚き、戦時中から調査委員会を何度も設立し原因究明を続けた。この過程で日本暗号解読の事実が明らかになったためワシントンからハワイ現地軍への事前警報の有無が問題になった。そして大統領府の米陸海軍最高幹部と現地司令官の間で、警報を伝えたはずだ、聞いていない、の責任のなすり合いになったが、結局現地軍司令官の怠慢と云うことで、海軍のキンメル提督、陸軍のショート将軍が降格され名誉を失った。 ただし、死後ではあるが共和党ブッシュ大統領時代の1999年に名誉を回復している。なお1954年12月7日、キンメル元海軍大将はUP通信の記者に対して「13年前日本を計画的に挑発して米国を戦争に引きずり込んだのはルーズベルト大統領である。米国陸海軍の最高首脳部は日本の暗号電報や関連情報を手に入れながら何一つ前線の我々に伝達しなかった。もし伝達されていれば、それが前夜であったとしても米国艦隊は迎撃措置をとり、あれほどむざむざと敵にやられることはなかっただろう。私は当時のワシントン当局者を許すことは出来ない」と語っている。 とにかく現地トップの2人に日本の攻撃が明日に迫っていることが知らされていなかったことは間違いない事実である。だとすれば驚くべきことであるがハワイの米軍がまるごとルーズベルトの戦争戦略の囮にされていたということである。ルーズベルトの名言として「歴史的事件に偶発はない。すべては仕組まれている」があるが、まさに真珠湾事件はそのよい例である。 一方、日本海軍の攻撃が成功した理由は新型の航空魚雷だった。当時米側は空爆に弱い空母は外洋に出し湾内には空爆に強い甲板の厚い戦艦だけを停泊させていた。そして魚雷を防ぐ防潜網は布設していなかった。というのは従来の航空魚雷は投下後50m位潜りそれから浮上して走行するので、深さ15mの真珠湾では使えなかったからである。しかし日本海軍は水深の浅い真珠湾に備えて特殊なヒレをつけた浅海用の航空魚雷を開発していた。この新型魚雷が係留されていた巨大戦艦群に甚大な被害を与えたのである。 今回の慰霊祭は75年前とはまったく違った形で極東の危機に直面する両国にとって、歴史的わだかまりを解き相互協力を強化するための非常に重要な行事になる。真珠湾事件の真相については、真珠湾そのものが日本に対するルーズベルトのワナであり、ハワイの米軍はその囮であった。だから日本に罪がないことは明かだが米国人が非常に気の毒な立場にあることを知っておくべきである。自国の大統領に裏切られたのだから。従って日米の英霊はともにルーズベルトの戦争政策の犠牲者なのだ。日本人は、この新しい歴史観により真珠湾事件非難が象徴する過去の反日歴史観から解放されるべきである。 今回の両首脳の恩讐を越えた慰霊行事が大きな成果となり、かつて戦争という避けられない運命により遠くハワイの地に導かれ散華した両国青年たちの尊い死が新しい意味を持つことを心から願っている。

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    真珠湾攻撃75周年式典 安倍総理は訪問すべきか?

    ピューの世論調査で、米では正当とする人56%、日本では正当でないとする人79%)が相当埋まることで、日米関係が強化されることにあります。 この論説はオバマの広島訪問とセットで安倍総理の真珠湾訪問を推奨したものです。理由づけには異論もありますが、発想の基本については、賛成できます。 米国人は、広島、長崎の話に対しては、真珠湾の不意打ちを想起させてくる場合が多くあります。日米関係が戦争の痛手から強固な同盟になったことを示す意味で、安倍総理の真珠湾訪問を真剣に考えたらいいと思います。日米関係の強化になるからです。 日本人の中には、軍事目標を攻撃した真珠湾と文民攻撃をした広島、長崎は違うとの意見が強く、それはそれで正しいです。しかし、広島、真珠湾はともに太平洋戦争のシンボルの面があり、同列に扱うのではありませんが、日本側も反省すべき点は素直に反省したらよく、それは日米関係に良い影響を与えるでしょう。 米国は、また、今度は東京などへの無差別爆撃(実行したルメイ将軍自身、戦争犯罪だったと言っている)への反省も示せばよいでしょう。ただし、謝罪を求めるとか強要するとかは品のないことです。相互にこういう行動を交換していくことで、日米同盟は感情面で強化されることになります。

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    安倍、オバマの真珠湾会談はトランプへの牽制

    でしょうが、そうすると今度はトランプさんがヘソを曲げるという心配が出てくるかもしれません。 第2に、日米関係やアジアへの関与を見直すと言っているトランプ次期大統領へのけん制という狙いがあります。オバマさんとの関係を修復して親密さを演出することで、日米同盟の強化をアピールしようというわけです。トランプ米次期大統領 これまでオバマさんが進めてきた対日政策をそのまま引き継いでもらいたいという魂胆もあるでしょう。とりわけ、トランプさんが離脱を明言して「風前の灯」となっているTPPについて、起死回生の逆転打を狙っている可能性もあります。 真珠湾への訪問と戦争犠牲者への追悼は、日米同盟の強化を再確認するための付け足しということなのでしょうか。そうであれば本末転倒であり、真珠湾攻撃で犠牲になった戦没者への冒涜であるとの批判を免れないでしょう。 第3に、この間に相次いだ外交的失点を挽回し、解散・総選挙に向けての条件を整備するという狙いがあるのかもしれません。外交で点数を稼いで内閣支持率を高め、あわよくば解散・総選挙に打って出て長期政権に向けての基盤を固めたいと考えている可能性があります。当初、12月15、16日に予定されている日露首脳会談で領土問題での成果を上げ、それを「手土産」に解散・総選挙に打って出るのではないかと見られていました。しかし、最近では領土問題での譲歩はなく、新たな進展は望めないとの観測が強まっています。 それに代わるのが今回の真珠湾訪問と日米首脳会談であり、これを「手土産」に解散・総選挙に打って出る可能性があります。今週発売の『サンデー毎日』12月18日号は「決断できるか!『クリスマス』電撃解散」「1・15投開票」という記事を掲げていますが、もし12月14日までの臨時国会が再延長されれば、この記事が現実のものとなるかもしれません。 自分の都合で、勝手に国会を解散してもいいのか。そのために外国首脳との会談や戦没者の慰霊を利用することが許されるのか。もしそうなったら、このような疑問や批判が生ずるにちがいありません。しかし、安倍首相にとっては「どこ吹く風」でしょう。一部では、通常国会冒頭の1月10日か16日に解散して2月19日投開票という具体的な日程もささやかれています。年末年始にかけて、解散・総選挙含みで油断のならない緊張した日々が続くことになりそうです。(五十嵐仁公式ブログ 2016年12月6日分を転載)

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    安倍首相の真珠湾訪問、日露領土交渉難航の埋め合わせか

    げるつもりだった。 ところが、領土交渉は難航している。返還が遠のいたと判断したから、真珠湾訪問による日米関係強化に急に舵を切った。日露交渉の行き詰まりを真珠湾訪問のパフォーマンスで埋め合わせようという狙いでしょう」 この時期の“サプライズ発表”となった理由がよくわかる。関連記事■ オバマ氏の広島訪問 安倍首相の真珠湾訪問とバーター案も■ オバマ広島訪問に韓国紙「日本は加害者のままでいろ」と騒ぐ■ 安倍首相 オバマ氏会談後「遠くから来たのに冷たい」と愚痴■ 自民党CMのオバマ広島訪問映像に「いくらなんでもやり過ぎ」■ オバマ大統領の広島訪問検討に韓国メディアが猛反発

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    「竹下登氏も総理時代に真珠湾慰問していた」スクープ証言

    はその1度きりですから、記憶違いはあり得ない」と断言する。 1988年当時は日米貿易摩擦が吹き荒れ、日米関係が悪化していた。また、真珠湾攻撃を巡っては様々な見解があることから、現職首相がアリゾナ記念館を訪問することが明らかになれば、日本国内で少なからぬハレーションが起きたことは想像に難くない。「“気配りの人”と呼ばれた竹下さんが、その点に配慮して非公式訪問とした可能性は高い」(同前)というが、安倍首相の公式訪問が実現する今、竹下氏のアリゾナ記念館訪問の“封印”は解かれていい時期なのではないか。 いやむしろ、安倍首相の“初訪問”があるからこそ、この歴史は知られてはならないのかもしれない。関連記事■ 安倍首相の真珠湾訪問、日露領土交渉難航の埋め合わせか■ 安倍首相よ、「広島」と「真珠湾」の等価交換でいいのか?■ オバマ氏の広島訪問 安倍首相の真珠湾訪問とバーター案も■ 石川遼記念館でオリジナルゴルフヘッドカバー他レアグッズ発売中■ 稚内の松坂大輔スタジアム レ軍契約解除で再開の目処立たず

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    「ミスター円」が読むトランプショックと日米経済戦争の可能性

    榊原英資(青山学院大学特別招聘教授) 大方の予想に反してドナルド・トランプが大統領選挙に勝利した。対立候補だったヒラリー・クリントンは元ファースト・レディ―で、また、上院議員を8年も務め、オバマ政策では国務長官を務めたワシントン政治の中心にいたインサイダーだ。トランプは実業家としてのキャリアは長いが、政治の世界は始めて。今回の選挙はワシントンDCのアウトサイダーがインサイダーに勝利したものだといえる。多くのアメリカ国民は現状に不満を持ち、従来からのワシントン政治には飽き飽きしていたのだ。演説するトランプ氏 トランプが掲げる「変革」(change)を選挙民が望んだ結果、彼の勝利になった。選挙中、メキシコ国境に壁をつくれだとか、ムスリムを差別しろだとかトランプは過激な発言を繰り返し、マスメディアの強い非難を受けたが、一般大衆、特に白人労働者層はこうした発言を歓迎したのだった。イギリスのEU離脱の最大の原因は大陸からの難民にあったといわれているが、トランプの勝利も、また、メキシコからの移民に対する反発が大きな要素の一つだったのだろう。  1980~90年代以来、グローバリゼーション、そして国家の統合が進んできた。欧州中央銀行の設立は1998年、共通通貨ユーロ―の創設は1999年だった。グローバリゼーションと統合の流れは一方で大きなメリットを世界にもたらしたが、他方でそのマイナス面も最近大きくなってきたのだった。難民・移民問題、あるいは、格差の拡大はそうしたマイナス面の代表的なものだといえる。 イギリスのEU離脱、そして、トランプ大統領の選出はこうしたグローバリゼーションのマイナス面を選挙民が強く意識した結果だと言えるのではないだろうか。イギリスでは前首相デーヴィッド・キャメロンがEUに留まることを強く望み、そうしたキャンペーンもしたのだが、国民投票では離脱派が残留派を上回ったのだった。トランプが本命だったヒラリー・クリントンを破り、次期大統領に選ばれたのもグローバリゼーションのマイナス面を強調し、メキシコ国境に壁をつくれなどという主張を多くの選挙民が受け入れたからだったのだろう。 世界の政治、あるいは経済の流れは大きく変化し始めたのだ。人々はグローバリゼーションのメリットを享受したものの、今やそのマイナス面を強く意識し、反グローバリゼーションを、あるいは主権国家への回帰を望み始めた。トランプの「アメリカ・ファースト」のスローガンもこうした人々の意識の変化をとらえ、アメリカの外交政策の転換を示唆したものだったということができる。日本やドイツは競争相手 第二次世界大戦後、アメリカは最大の強国として世界の安全保障を担い、アメリカ軍をヨーロッパや日本等に駐留させてきたし、戦後、マーシャル・プラン、ガリオア・エロア資金などによってヨーロッパや日本を経済的にも支援してきたのだった。そのせいもあって、第二次世界大戦の敗戦国である日本、ドイツ、そしてイタリアも戦後、力強い復興を果したのだ。 アメリカは今もGDPナンバーワンの経済大国だが、10年前後で中国のGDPがアメリカのそれを抜くとされているし、1人当りGDPでも日本が1980年代後半にはアメリカを抜くに至っている。アメリカはいまだに強大だが、唯一の経済大国ということではなくなってしまった。トランプ次期米大統領と会談する安倍晋三首相 =11月17日夕、ニューヨーク(内閣広報室提供) おそらく、トランプはこのあたりのことを強く意識し、政治的には同盟国である日本やドイツとの経済面での競合を明確に認識しているようだ。競争相手である日本に高いコストをかけ、いつまで米軍を駐留させるのか、もっと日本に費用を負担させろという主張はごく自然にこうした認識から生じてきたものだと思われる。また、日本がアメリカの牛肉に高い関税をかけているのだから、日本車の輸入にも同様の関税をかけるべきだという主張も同じ認識から出てきたのだろう。 トランプが選挙中に主張してきたことは、彼が閣僚たちを任命し、大統領に就任すればかなり変わる可能性もあるが、例えばTPPからの離脱等は大統領になっても変わらないと彼自身が明言している。正確な予測は難しいが、彼が国内の雇用等を優先し、相当保護主義的な政策を実行する可能性はかなり高い。  また、どちらかというと輸出にプラスになるドル安を指向し、日本が意図的に円安を誘導していると非難している。日本の円安は積極的な金融緩和が継続された結果なのだが、為替レートをかなり意識した政策だったのだと考えているのかもしれない。  いずれにせよ、国内の雇用を重視し、アメリカ・ファーストを掲げる新大統領が、日本やドイツを貿易政策上の競争相手として強く意識していることは確かなのだろう。11月17日の安倍晋三首相とトランプの会談は友好的に行われたようだが、今後、トランプ大統領が貿易面でどんな対日政策を取ってくるかは今のところはっきりしていない。 日米は1980年代貿易摩擦で対立をしていたが、トランプはこうした時代の対日観を引きずっているとの見方もあり、予断を許さない点も少なくない。トランプ次期大統領の為替政策・貿易政策をしっかりと見守っていく必要がある。

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    バラマキ大統領、トランプの「鎖国化」は日本が食い止めよ

    山田順(ジャーナリスト) まず、こう、言わせて欲しい。ヒラリー・クリントン候補が間違いなく勝つと予測してきた人間が、トランプ次期大統領がどんな経済政策を取り、それによって日本がどんな影響を受けるかを予測していいものかと。ニューヨーク証券取引所(ロイター) それでもあえて予測するとすれば、トランプ氏はバブルを起こす。すでにその兆候は始まっているが、彼の大統領就任後のバブルはいま以上のものになるだろう。少なくともNYダウは2万ドルを超え、円は1ドル=125円を軽く突破するだろう。原油価格が上がるということは当分ありえない。 なぜ、そんなことが言えるのか? それは、トランプ氏にはアメリカをアメリカたらしめている伝統的な価値観、政治思想、理念などがまったくないからだ。自由と平等、基本的人権、民主政治などがアメリカの普遍的価値観である。歴代アメリカ大統領は、これを守って政治を行ってきた。 しかし、トランプ氏の頭の中には「アメリカ第一主義」(America First)による「偉大なるアメリカの復活」(Make America Great Again)しかない。  トランプ氏は、ビジネスマンらしく愛想は格別にいい。実際、トランプタワーに飛び込んできた安倍首相一行を満面の笑顔で迎えている。彼は誰に対しても「ウィン・ウィンの関係を築いていこう」と言い、「ディール」(取引)という言葉が大好きだと語る。 つまり、誰とでもうまくディールできればいいと思っている。そして、政治もビジネスと同じと考えている節がある。つまり、彼が言う「アメリカ第一主義」というのは、アメリカが儲かればいいということだ。そのために、グッドディール(いい取引)を積み重ねていこうということだけだ。 とすれば、これが政策と言えるだろうか。政治を一つの思想、理念で行うことは正しい選択ではない。しかし、思想も理念もない政治もまた、正しい選択とは言えない。 その結果、これまで彼が述べてきたこと、特に経済に関することには論理的な裏付けがなく、ひとつひとつに整合性がない。それでもあえて要約すると、国内的には史上最高のバラマキをやり、対外的には保護主義政策を取るということになる。 すでに、この保護主義政策の動きの一つとして、TPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱が11月21日に宣言された。来年1月20日の大統領就任初日に即通知するという。同じく、TTIP(環大西洋貿易投資協定)からも離脱するだろう。なぜトランプバブルが起こるのか トランプ氏は、本当に不思議なことに「反グローバリズム」と思える言動を繰り返してきた。アメリカは移民で成り立っているのにそれを排除し、日本や中国の製品に高関税をかけると言ってきた。これは自由貿易の否定であり、アメリカの伝統的な通商政策ではない。 彼は、20世紀に確立したアメリカの世界覇権がグローバリズムによって成り立っていることを理解していないのかもしれない。アメリカはペリー提督の黒船を日本に派遣して、自由貿易と開国を迫った国である。 20世紀の初めから今日まで、アメリカで保護主義を唱えた大統領はたった1人しかいない。1930年、フーバー大統領は「スムート・ホーリー関税法」(Smoot-Hawley Tariff Act)を導入して、関税の壁を築いた。そのため、世界中でブロック経済化が進み、ついに世界は第二次世界大戦に突入してしまった。この教訓をトランプ氏は知らないようだ。 それでは、ここからはなぜトランプバブルが起こるのか。順を追って説明していきたい。 トランプ氏は、選挙期間中に、今後10年間のGDP成長率を平均3.5%に高め、最終的には現在の2倍の4%に引き上げると公約してきた。そのために、政府支出を大幅に増やすと言ってきた。要するに、財政出動を大規模にやり、積極的なインフラ投資を行う。その額、10年間で1兆ドル(約110兆円)という。 さらに、彼がずっと言い続けてきたのが大減税だ。そのメニューとして、以下の3点を挙げてきた。(1)連邦法人税の大幅減税(最高税率を現行の35%から15%へ)(2)個人所得税の税率適用区分の簡素化(現行の7段階から3段階へ)と税率の大幅引き下げ(12%、25%、33%の3段階へ)(3)相続税の廃止 このうちの(2)の部分を補足すると、年収2万5000ドル未満の人間の所得税はゼロになる。これは、中流下層、貧困層へのプレゼントとなる。(3)の相続税の廃止は、共和党の伝統的な要望と言える。これが本当に実現すれば、富裕層への恩恵は計りしれない。海外に出ていた資産は国内に戻ってくるし、投資も活発になる。ただし、格差はさらに開くだろう。 トランプ氏は、アップルやグーグルなどがアメリカの高税率を嫌って海外に出ていったことを、これまで何度も批判してきた。それで、大幅な法人税の減税を行い、企業の国内回帰を目指すと公言してきた。アップルのティム・クックCEO(AP) したがって(1)の連邦法人税の減税は間違いなくやるだろう。そうなれば、税率が15%になるので、アメリカはタックスヘイブン化する(いまもそうだが)。 オバマ大統領も法人税減税を考え、28%に引き下げることを目指したが、議会とのねじれで実現しなかった。しかし、もうこのねじれはない。とすると、今回は実現する可能性が大きい。しかし、15%というのは減税幅が大きすぎる。共和党は「小さな政府」志向だが、ここまで減税幅が大きいと主流派は反対する。ただ、減税されることは間違いないだろう。大規模な財政出動と大幅な減税、財源は? アメリカ企業が海外にため込んだ資金は2兆ドルと言われている。これを国内に戻すときは、さらに税率を下げ10%にするとトランプ氏は言ってきた。ブッシュ政権の2005年に、アメリカは時限立法で還流資金の税率を下げたことがあったが、このときは海外留保資金が3000億ドルも戻り、株高、ドル高が進んだ。したがって、これもやるとなれば、今回もそうなるのは間違いない。 大規模な財政出動と大幅な減税。そんなことができる財源があるのか?という批判がある。たしかにその通りで、ついこの前までアメリカは「財政の崖」(fiscal cliff)をめぐって、民主党と共和党が激しい攻防を繰り広げてきた。とくに共和党は、これまでの主張通り財政の拡大には反対するだろう。 しかし、トランプ氏は自分を支持した白人貧困層・中流下層の気を引き止めるために、そんなことはおかまいなしにやる可能性がある。 とすると、財政赤字は拡大する。となれば、いずれアメリカ国債の利回りは上昇する。つまり、インフレが襲ってくることになる。企業や政府の借り入れ負担が増し、結局、景気が悪化する可能性が強い。しかし、短期的にはバブルとなり、表向きの景気はよくなるのは間違いない。トランプ氏は自己愛男(ナルシスト)だから、財政の悪化など知ったことではないのだ。 彼は、財源がないなら単にドルを刷ればいいと、かつて公言したことがある。これは、一種のヘリコプターマネーである。FRBがドルを刷って、それでアメリカ国債を買えばいいと言ったのだ。これをやれば、連邦政府は債務から解放されるばかりか、新たに発行した国債もFRBが発行するドルで元利払いが行われる。 もし、イエレンFRB議長がこれを拒否したら、彼は「彼女をクビにする」とまで言い放ったことがあった。しかし、これは明らかな財政ファイナンス、つまり“禁じ手”だから、実行すれば、最終的にアメリカ国債の暴落を招く。コントロールできないインフレに見舞われる。  アメリカ国債の発行残高の6割は海外が持っている。筆頭は中国で、2番手は日本だ。トランプ氏がこの手に出れば、ドル資産が紙切れになるのだから、中国は間違いなく売り逃げるだろう。そうなれば、一気に株安、ドル安となる。しかし、日本は売り逃げることはできない。 トランプ氏の当選の原動力となったのは、白人の貧困層、中流下層である。このことはすでに確定している。しかし、彼がこの層のための政治をやるかどうかは確定していない。なぜなら、彼はバニー・サンダース候補のような社会主義者ではないからだ。大金持ちが本当に貧困層の味方をするか トランプ次期大統領は、全米各地に別荘を持っている大金持ち(スーパーリッチ)だ。フロリダ州のパームビーチには、部屋数118室の大豪邸(Mar-a-Lago estate)を持っている。この豪邸は、購入時1億2500万ドルという、当時のアメリカの住宅販売価格のレコードを樹立している。感謝祭の休暇を終え、プライベートジェットでニューヨークに向かうトランプ次期米大統領一家=11月27日、米フロリダ州パームビーチ(ロイター) パームビーチは、全米にいくつかある富裕層の別荘地の一つで、彼はここをいたく気に入っている。その理由は、富裕層は富裕層としか付き合わないから、富裕層ばかりが住むこの南国の地がいちばん快適に過ごせること。もう一つは、趣味のゴルフがいつでもできるからだ。タイガー・ウッズも、ここの住人である。 トランプ氏は、全米に18のゴルフ場を持っている。そんな人間に、安倍首相は特製のゴルフクラブを訪問時の手土産として持参した。  今年の3月15日、「NYT」紙にトランプ氏のパームビーチでの生活を描いた記事が載った。書いたのはジェイソン・ホロウィッツ記者で、トランプ氏の別荘のバトラー(執事)アンソニー・セネカル氏が、ホロウィッツ記者のインタビューに答えて、非常に興味深いことを語っている。「A King in His Castle: How Donald Trump Lives, From His Longtime Butler By JASON HOROWITZMARCH 15, 2016」http://www.nytimes.com/2016/03/16/us/politics/donald-trump-butler-mar-a-lago.html あるとき、主人の機嫌がよくないと、到着間近のプライベートジェットからセネカル氏に連絡が入った。すると、彼は即座にラッパの吹き手を手配し、トランプ氏が邸宅にリムジンで到着した瞬間に、『大統領に敬礼を』(Hail To The Chief)という曲を吹かせた。 この曲は、実際にアメリカ大統領が公式行事に出席するときに演奏されるもので、これを聞くとトランプ氏の機嫌は直るという。トランプ氏はいまやホンモノのアメリカ大統領になった。とすれば、今後この曲を聞き続けるわけで、ずっと上機嫌でいるに違いない。 トランプ氏は移民を締め出すと言ってきたが、パームビーチの豪邸では外国人労働者ばかりを雇っていて、ルーマニア人、南アフリカ人もいる。トランプ氏は機嫌がいいと、使用人に100ドル札のチップを渡すという。つまり、バラマキが好きなのだ。 このような大金持ちが、本当に、同じ白人とはいえ、貧困層、中流下層の味方をするだろうか。「反ウォール街」の嘘 トランプ氏はこれまで「反ウォール街」「反エスタブリッシュメント」を表明してきた。しかし、それが嘘であるのは、政権移行チームの顔ぶれを見れば、すでに明らかだ。 ゴールドマン・サックス元幹部のスティーブン・ムニューチン氏=11月18日、米ニューヨーク(ロイター=共同) 財務長官候補のスティーブン・ムニューチン氏はゴールドマンサックスの元幹部で、一時指名を取りざたされたジェイミー・ダイモン氏はJPモルガンのCEOである。経済政策アドバイザーのジェブ・ヘンサリング氏は下院金融サービス委員長だ。つまり、彼らは、いずれもウォール街の代弁者である。さらに、商務長官候補のウィルバー・ロス氏は、トランプ氏の破産管財人と経済顧問を務めてきた人物であり、「再建王」という異名を持つ企業再生ファンドの大物である。 トランプ氏は、秘書を通してツイッターで囁くのは好きだがITには疎い。そこで、政権移行チームにシリコンバレーからただ1人、ピーター・ティール氏を引き入れた。彼はゲイであるとともに最強のリバタリアンの一人だが、もちろん桁違いの富豪だ。 トランプ氏を「反ユダヤ主義者」だと見ている向きもあるが、これは誤解だろう。なんといっても彼は、イスラエルのネタニヤフ首相と親しく、ネタニヤフ首相は「(トランプ氏が大統領になったら)同盟関係はさらに強固になるだろう」と言い続けてきた。また、ネタニヤフ首相の親友とされる「カジノ王」シェルドン・アデルソン氏(ラスベガス・サンズ会長)は、トランプ氏の選挙資金の最大の提供者である。 しかも、トランプ氏が寵愛する娘のイヴァンカさんの夫ジャレッド・クシュナー氏は、ニュージャージー州のユダヤ人実業家の息子であり、そのためイヴァンカさんは結婚に当たってユダヤ教に改宗し、生まれた3人の孫はみなユダヤ人となった。 ウォール街はユダヤ金融財閥が牛耳る街である。彼らは常にワシントンを動かし、世界の金融・経済を支配してきた。トランプ政権になってもこれは変わらない。 このようなメンバーがやることは決まっている。まず、オバマ政権では既定路線だった「グラス・スティーガル法」(Glass-Steagall Act)の復活を見直すか反故にするだろう。さらに、これと併せて「ドッド・フランク法」(Dodd–Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act:金融規制法)を全廃するか骨ぬきにするだろう。 グラス・スティーガル法は、1933年に制定された銀行業務と証券業務の明確な分離を定めた法律だが、1990年代のクリントン政権下で廃止され、その後の金融ビックバンの引き金を引いた。銀行と証券は一体となって巨大化し、デリバティブ金融が進み、ついにリーマン・ショックを招いた。その反省から、オバマ大統領と議会はこの法律を復活させ、さらにドット・フランク法をつくったわけだが、この両方とも反故になれば、ウォール街ではまた“パーティ”が始まるに決まっている。グローバリズム批判で本質を見誤る日本 こうして、アメリカ経済が好況になり、たとえそれがバブルであっても、世界中のカネが集まるようになれば、ここにアクセスしなければ、ほかの国の経済はよくならない。とくに日本はアメリカ依存が大きいからなおさらだ。 ところがトランプ大統領は、前記したようにTPPやTTIPなどの貿易協定を破棄し、2国間協定によって関税をかけるというブラフ(脅し)に出てくる。これをやられると、日本経済は本当にまずいことになる。 アメリカは、シェールオイル・ガス革命でエネルギー自給国から輸出国になり、他の資源も豊富で、食料自給もできる。つまり、多国間協定を離脱してもなんの問題もない。保護主義によるダメージは、短期的にはほとんど受けない。しかし、保護主義によってアメリカ市場が少しでも閉ざされたら、そのダメージをもっとも受けるのは日本だ。 私は、トランプ次期大統領は、つくづく運のいい男だと思っている。あれほどのデタラメを言い続けて大統領になったうえに、アメリカ経済には今後再び大きく成長していく3要素が揃っているからだ。 その3要素とは、(1)今後も人口増が続くこと(とくに生産年齢人口の増加はGDP成長率を引き上げる(2)IoT、AIなどの先端イノベーション産業のほとんどをアメリカが独占していること(3)ネットによる世界の情報を独占的に支配できていること-である。 最後に再び、わが国の経済を考えると、日本は世界のどの国よりもグローバリズムの恩恵を受けている国である。戦後の日本が経済復興できたのは、アメリカが日本を冷戦の防波堤にするため、産業振興を許したからである。 そうして日本製品にアメリカ市場を開き、どんどん買ってくれたおかげである。この構造は、いまもあまり変わっていない。 日本の食料依存度(食料自給率)はカロリーベースで約40%、エネルギー依存度(エネルギー自給率)はわずか6%で、これはOECD加盟34か国中2番目に低い。つまり、わが国はグローバル経済がなければ成り立たない。福井県美浜町の関西電力美浜原発3号機。11月16日、原子力規制委から20年間運転延長の認可を受けた ところが現在、この日本でもグローバリズムを批判する声が強い。ことさら国民経済を強調し、「経済は経世済民ですから国民のためにあります」などと言い、「みずほの国の資本主義」という的外れな言論を展開している評論家がいる。このような方々は、グローバリズムが国民を不幸にし、格差を助長するとでも言いたいのだろうが、これらの言論はすべて資本主義の本質を見誤っている。「黒船に開国された国」の最大の外交課題 近代資本主義は18世紀の半ば、英国のマンチェスターで綿工業から始まったとされるが、綿花は熱帯性の植物であり、欧州には存在しなかった。当時、綿花を栽培していたのは、カリブ海諸国やアメリカ南西部であり、ここから大西洋を横断して英国まで運ばれた。 しかも、綿花栽培のプランテーションでは、アフリカから運ばれた黒人奴隷が労働力として使われていた。つまり、資本主義は一国では成立しないのだ。資本主義経済は、その始まりからしてグローバリズムなのである。 したがって、グローバリズムを否定し、国を閉じる保護主義を唱えることは、自ら貧しくなると宣言しているのと同じだ。  現在、私たちは極限まで発展した資本主義経済のなかで生きている。それなのに、「国民経済」などと、1国だけの経済を論じている学者や評論家は化石人間と言うしかない。まず1国単位の経済があり、それがいくつも結びついてグローバル経済になったのではない。初めから、世界はグローバル経済だったのである。 現在、世界には、国連をはじめとして、多くの国が参加する国際的な枠組みがいくつも存在する。たとえば、IMF(国際通貨基金)、WTO(世界貿易機構)、世界銀行(WB)、EU(欧州連合)、ADB(アジア開発銀行)、ASEAN(東南アジア諸国連合)、NAFTA(北米自由貿易連合)などがこれに該当する。TPPもまた、こうした国際的な枠組みの一つになるはずだった。それをトランプ次期大統領はやらないと言うのだから、とんでもない時代錯誤だ。 これらの国際間の枠組みとそれを支えるルールは、第2次世界大戦後はほとんどが世界覇権国のアメリカによってつくられ、そのイニシアティブによって、世界は今日まで運営されてきた。実は、これに最大の貢献を果たしてきたのは日本である。トランプ次期米大統領と会談する安倍首相=11月17日、ニューヨーク(内閣広報室提供・ロイター) 世界全体のGDPの推移を見ると、1950年から2015年にかけて1人当たりの実質GDPの平均は約6倍に拡大している。つまり、グローバリズムとそれを促進した国際間の枠組みが、世界を発展させてきたのである。 したがって、トランプ次期政権に保護主義政策を実行させてはならない。このことを今後の日本の最大の外交課題にすべきだ。黒船によって開国された国が、今度はアメリカに開国を説くのだ。そうしないと、日本はトランプバブルに乗り遅れるばかりか、その恩恵すら受けられなくなる。

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    トランプショックでも勝機あり

    政治や社会秩序だけではない。世界の金融市場も「トランプショック」の行方に怯える。トランプ氏の掲げる米国第一主義が、世界経済の後退を招く「劇薬」であるからに他ならない。自由経済と基軸通貨ドルを武器に君臨した米国はどこへ向かうのか。先行きは不透明だが、それでも日本には勝機がある。

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    トヨタ、日産は大丈夫か? トランプショックはこうやれば乗り切れる

    片山修(経済ジャーナリスト) 米大統領選でのドナルド・トランプ氏の勝利は、日本の経済界に衝撃を与えた。最大の懸念は、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱など、トランプ氏の保護貿易主義の姿勢だ。 オバマ米政権は11日、任期中のTPPの議会承認を見送る考えを明らかにした。トランプ氏との対立を防ぐためだ。これにより、世界の国内総生産(GDP)の4割を占める巨大経済圏確立の道筋はほぼ閉ざされた。 さらに気がかりなのは、米国がカナダ、メキシコと結んでいる北米自由貿易協定(NAFTA)の行方だ。 かりに、米国がNAFTAから離脱するとなれば、カナダやメキシコから無関税で米国に製品を輸出することはできなくなる。米国内からメキシコに生産拠点を移管してきた日本の自動車メーカーは、北米戦略そのものを大幅に見直さざるをえない。窮地に陥るわけだ。 トヨタ自動車は、メキシコでピックアップトラック「タコマ」を年8万2000台生産している。19年の稼働に向けて、メキシコ・グアナフアト州に生産能力20万台の新工場の建設も進行中だ。 日産自動車は、メキシコに2つの工場をもつ。生産台数は、55万5000台と31万6000台だ。16年までにメキシコの生産能力を年100万台に引き上げる計画である。 ホンダは、メキシコに2つの工場をもち、米国向け「フィット」など、合計28万台を生産している。 また、マツダは、メキシコ・グアナフアト州の工場で米国向け「Mazda3」(日本名マツダアクセラ)など、28万台を生産している。 加えて、日本の自動車メーカーの完成車工場の周辺には、デンソー、日本精工、リケンなど、多数の自動車部品メーカーが進出している。その中には、中小企業も少なくない。 では、日本の自動車メーカーにとって、「トランプ・ショック」は文字通り危機そのものなのか。北米戦略は見直さざるを得ないのか。80年代の日米貿易摩擦のように日本車はやり玉にあげられるのだろうか。“いいクルマづくり”に磨きをかけよ いや、必ずしもそうはならないだろう。なぜならば、いまや経済はグローバル化し、相互依存関係が緊密化しており、日米の二国間で通商問題を解決することなどできなくなっているからだ。 第一、メキシコには、米国のGMや独のBMWの工場のほか、フォードの工場進出の話も出ている。部品調達に関しても、サプライチェーンが世界中に張り巡らされており、米国産の部品だけでクルマを生産するのは到底不可能だ。ましてや、自動車メーカーに限らず、日系企業による雇用創出は70万人を超える。日本企業を排除する保護貿易主義のシナリオは考えられない。 そもそも、世界首位の経済大国アメリカが、かりにも保護主義に傾斜すれば、貿易停滞により、世界経済は足元から揺らぐことになる。それは、米国の利益にならないばかりか、他国からの猛反発を受ける。根っからのビジネスマンのトランプ氏は、安易に国益を最優先する「米国第一主義」を押し通すことは考えられないというのが、まずは常識的な見方だろう。 だからといって、楽観視することもできないのは確かだ。トランプ氏の選挙中の言動などからして、少なくともゴタゴタは避けられない。覚悟しておいたほうがいい。 対策として大事なことは、これを機に経営トップに現地人を積極的に登用するなど、一層の現地化すなわち土着化の道を突き進むことである。 それからトヨタの豊田章男氏が日ごろからいっているように、“いいクルマづくり”に磨きをかけることに尽きる。トヨタは1997年、世界初の量産ハイブリッド車両「プリウス」を発売し、世界をあっといわせた。残念ながら、FCV「ミライ」は先進性が評価されても、ヒット車とはいえない。 自動車はいま、AI、ロボット、ビッグデータなどのほか、衝突安全、自動運転などを取り込みながら大きく様変わりしようとしている。日本の自動車メーカーが競争力を高めるには絶好のチャンスだ。トランプ次期政権の経済政策がどのようなものになろうとも、日本の自動車メーカーは従来通り、技術やブランド価値を上げ続けることができれば、変革の時代を乗りこえることができるのではないだろうか。

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    トランプ大統領誕生で日本の製造業は試練を迎える

    (THE PAGEより転載) 「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ大統領が誕生したことで、日本の製造業の先行きを不安視する声が上がっています。トランプ政権が保護貿易主義に傾いた場合、日本の製造業にとって大打撃となる可能性が高いというのがその理由です。トランプ時代において日本のモノ作りは大丈夫なのでしょうか。トヨタの米国ミシシッピ工場米国市場に依存する日本の製造業 日本の製造業は、巨大な消費市場である米国が存在することで成り立っています。日本経済の大黒柱であるトヨタ自動車は、昨年度は年間で約870万台のクルマを販売しましたが、このうち国内市場での販売はわずか200万台に過ぎません。残りはすべて海外での販売であり、中でも北米市場は280万台と突出しています。 こうした米国依存は業績にも表れています。同社の2016年4~9月期決算(中間決算)は減収減益とあまりよい結果ではありませんでした。その原因は為替が円高に振れたこともあるのですが、主力の北米市場の販売が不振だったからです(販売台数そのものは微減ですが、トヨタにおいて北米で横ばいというのは不振といってよい状況です)。つまり、日本の製造業は基本的に米国市場に大きく依存しているのです。 日本ではリーマン・ショックを引き起こした米国の不動産バブルを批判する声が大きいのですが、米国のバブル経済による過剰消費の恩恵をもっとも受けたのは、ほかでもない私たち日本人であることを知っておく必要があるでしょう。米国と個別の貿易交渉になる可能性 トランプ大統領は、日本メーカーが怒濤の輸出攻勢をかけ、米国で大量の失業者を生み出した80年代のイメージを強く引きずっており、ことあるごとに日本メーカーを批判しています。当時の日本の世論は、今の人が聞くとびっくりするような弱肉強食主義で、競争に敗れた企業の社員が路頭に迷うのは当たり前だというかなり強硬なものでした。米国の労働者の一部は、相手に対してまったく配慮をしなかった日本企業に対して悪いイメージを持っています。トヨタ自動車の元町工場=愛知県豊田市 トランプ氏も、実際に大統領に就任すれば、ある程度、現実的な対応を検討することになると思われますが、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定は、このままでは成立が難しいと考えるのが自然でしょう。TPPが発効しなかった場合、各国は米国と個別に貿易交渉を行わなければなりません。農業分野において日本が市場開放をしなければ、日本車に関税をかけるといった要求を米国が突きつけてこない保障はありません。 本当に米国が保護貿易主義に傾いた場合、日本メーカーが摩擦を回避するためには、米国での現地生産を増やす以外に方法はなくなります。トヨタの国内生産比率は約45%ですが、工場が米国に移ってしまえば、国内の空洞化はさらに進むことになるでしょう。 識者の中からは、これ以上米国におんぶにだっこという経済運営をやめ、日本独自の道を模索すべきという声も上がっているようです。しかしモノ作りで稼ぐ以上、世界で突出した市場である米国に販売する以外に方法はありません。米国市場と比較すると中国などの新興国は取るに足りない市場です。米国にすべてを頼り切ってきた日本のモノ作りは、いよいよ試練の時代を迎えることになるのかもしれません。(The Capital Tribune Japan)    

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    トランプ大統領で得をする日本企業は?

    【World Energy Watch】山本隆三 (常葉大学経営学部教授) 企業に勤務していた時に米国に駐在し、日本と欧州向けの石炭輸出を担当していたことがある。時々、東部の炭鉱を訪問することもあった。輸出元であったケンタッキー州の石炭会社の従業員と一緒に州東部の彼の炭鉱にドライブした時のことだ、彼から「道の両側の畑の植物を知っているか?」との質問があった。見たことがなかったので、そう答えたところ、意外な答えが返ってきた。「大麻草だ」。彼によると、石炭以外に産業がない地域なので生計のため大麻草を育てているという。当然違法だが、地元の警察も見て見ぬふりなので、道路の両側が大麻草畑になってしまった。 ペンシルバニア、ウエストバージニア、ケンタッキー、オハイオ州は、アパラチア炭田の北部地域として知られるが、貧しい地区もあり、いわゆるプアホワイト(貧しい白人)も多い。例えば、ウエストバージニア州は白人比率が94%と高いが、平均収入の中間値は全米50州中下から2番目だ。州の主要産業である石炭業の労働者は炭鉱夫を含め圧倒的に白人が多いことも、白人比率の高さに影響しているのかもしれない。炭鉱でセールス担当のマネジャーだった知人は、奥さんが博士号を持つ高校の数学の教員だったが、その年収が炭鉱夫の半分もないと嘆いていた。石炭関係以外の仕事があまりなく、低賃金になってしまうのだ。 このアパラチア炭田のいくつかの州は、米国大統領選では接戦州と呼ばれる共和、民主両党の票が接近する選挙結果を左右する州になる。特にオハイオ州は、全米の縮図と言われここで勝たなければ、全米でも勝てないとされている。炭鉱で働く人は生産量の減少に合わせて減り、今は10万人を切ってしまったが、資材、機械を販売する企業、石炭を輸送する企業など関連する企業で働く人は多い。合わせれば100万人と言われる。炭鉱の恩恵を受ける地域のサービス業の従業員を合わせれば、相当の数の票になる。トランプの環境・エネルギー政策 共和党支持者に信奉者が多い温暖化懐疑論の立場に立つトランプは、今回の選挙戦でもオバマ大統領が進めた温室効果ガスの削減を柱とする温暖化対策を全て見直すことを謳っていた。その最大のものは、国際的には温室効果ガス削減のため198カ国が合意し、11月4日に発効したパリ協定からの離脱であり、国内では石炭火力発電所の削減を狙ったクリーンパワープラン(CPP)の無効化だった。 温室効果ガスの削減が必要ないとすれば、二酸化炭素の排出量が相対的に多い石炭の使用量を削減する必要はない。オバマ大統領は共和党が支配する議会の協力を得ることなく石炭使用量を削減することを狙い、環境保護庁の大気浄化法を利用し同庁が各州に対し二酸化炭素の排出削減を求めるCPPの体制作りに成功した。 実行に際しては共和党知事の州からの反発に合い、訴訟が起こされたため司法の判断を仰ぐことになったが、司法の判断にかかわらずトランプはCPPの無効化を図ることになるだろう。その具体的な方法については、推測するしかないが、大気浄化法の修正、環境保護庁の体制を縮小し、実務的に対応不可能にするなどが考えられる。 司法の場でも、政権末期にあったオバマ大統領が指名できなかったため現在空席になっている最高裁判事に保守派を指名することは確実であり、最高裁の構成を保守派5、リベラル派4とすることにより、CPPに対し否定的な立場の司法を作り出すことになる。 トランプは米国のエネルギー自給率を100%にすると主張している。米国がサウジアラビアを抜き原油生産量世界一に、ロシアを抜き天然ガス世界一になり、図-1の通り昨年自給率が90%まで向上したのは、爆砕法を利用したシェールガス・オイルの生産増によるものだ。環境団体から批判を浴びることのある爆砕法については引き続き利用し、生産量の増加を目指す立場だ。さらに、トランプは石炭の復活を訴えていた。今回の選挙戦ではその路線が成功し、脱石炭を主張したクリントンに勝ちアパラチア炭田の接戦州を制したようにも思える。オバマとは戦略を変え敗れたクリントンオバマとは戦略を変え敗れたクリントン 石炭産業では、経営者は共和党支持、炭鉱夫、特に組合員、は民主党支持だった。オバマ大統領の1期目から温暖化問題への取り組みに焦点が当たり、化石燃料、なかでも二酸化炭素排出量が多い石炭への風当たりが強くなりはじめた頃から炭鉱夫にも共和党支持が増え始めた。 しかし、2012年の2期目の大統領選では、オバマ大統領は石炭支持を打ち出す。共和党の候補者だったロムニーも同様に石炭支持を打ち出し、泥仕合の模様になった(「オバマとロムニーの石炭戦争」)。選挙前には、必ずしも石炭支持ではなかった2人の候補者が共に態度を変えたのは、接戦州の石炭関連票のためだったのだろう。その結果、オハイオ、ペンシルバニア州はオバマが制することになった。  今年の大統領選では、クリントンは、このオバマの戦略を引き継がなかった。地球温暖化対策のため再生可能エネルギーの導入を訴え、疲弊していく産炭地対策としては、補助金によるインフラ整備、雇用創出、退職した炭鉱夫への年金維持などを打ち出した。もはや石炭の復活はないとの宣言に等しかった。二酸化炭素の補足・地中固定化(CCS)の利用が進めば石炭消費の減少に歯止めがかかるとの見方もあったが、クリントンの政策を見る限り、コストが高いCCSへの期待もないようだった。 オバマとは異なり、反石炭の立場を鮮明にしたクリントンは接戦州での戦いに敗れることになった。オバマが勝利したオハイオ、ペンシルバニア州を失ったが、両州においてクリントンが勝利していれば、トランプ大統領は誕生しなかった。各州の石炭生産量と8年、12年と16年の大統領選での民主党の得票率が図-2に示されている。トランプの再生可能エネルギー政策トランプの再生可能エネルギー政策 2012年には「温暖化問題は、米国の競争力を奪うため中国がでっち上げた」とツイートしたトランプも、選挙期間中のインタビューでは「温暖化が人為的な原因で発生していることも少しはあるかもしれない」と温暖化懐疑論の立場を少し後退させた。テレビ討論でツイートのことをクリントンから責められた際には、「そんなことは言ってない」と否定していた。 パリ協定離脱を明言しているトランプが温暖化問題に取り組むことはないだろう。再エネにも否定的だが、米国で導入が進む風力、太陽光発電については、共和党議員の地元との関係も考慮することになるだろう。例えば、米国の風力発電は、テキサス州、アイオワ州など共和党が強い地区に多く、風力発電設備の80%は共和党が優勢な地域に設置されている。風力発電設備量米国2位のアイオワ州のグラスリー上院議員(共和党)は、選挙前に「もし、風力発電の税額控除をトランプが廃止しようとするならば、私の屍を乗り越えなければならない」と発言しているほどだ。 実際に、風力発電の導入量が多い州は、今回の選挙戦でも、表-1が示す通り、トランプの得票率が高い共和党の地盤だ。現在米国では、風力、太陽光発電に対し税額控除による支援制度があり、この制度が米国での風力と太陽光導入を支え、米国を世界2位の風力発電設備、4位の太陽光発電設備導入国に押し上げた。今後徐々に支援額は減少することになっているが、2005年にブッシュ大統領が導入し、共和党が多数の議会で2015年末に延長されたばかりのこの制度をトランプがどう扱うかが、いま米国の再エネ関連事業者の最大の関心事だ。税額控除がなくなれば、再エネ設備導入が一挙に減速するとみられている。 トランプは税額控除制度に関する発言を行っておらず、制度をどう考えるのか不透明だが、再エネを含むエネルギーに関する投資については、ビジネスマンとしてのトランプの思考法がありそうだ。トランプの投資の判断基準は期間回収法トランプの投資の判断基準は期間回収法 トランプのエネルギー問題に関する発言をみていると、思考方法を垣間見ることができる。それは収益性重視だ。エネルギー関連の投資に関する政策決定を行う際には、当然収益性を検討することになるだろう。収益性をみる指標としては、日本でも米国でもキャッシュフローを基にし、時間の概念を入れたDCF(Discounted Cash Flow)法に基づき、内部収益率、IRR(Internal Rate of Return)あるいは純現在価値、NPV(Net Present Value)を計算するのが普通だ。 トランプは、もっと単純な方法で投資を考え、費用に対する効果を常に求めている。例えば、米国が反カダフィ派支援を2011年に行なったことについては、次のようにコメントしている「反カダフィ派から助けを求められ時に、応じることは了解だが、見返りに今後25年間の石油生産の半分を寄越せと要求すべきだった」。 エネルギー問題に関しトランプが判断基準として用いる収益率は、期間回収(Pay Back Period)法だ。投資額を何年で回収可能か計算し、意思決定に用いる。簡単な方法だ。2008年の著書では、建設中のビルを環境に対応した省エネビルにするように州政府に要請されたが、巨額の資金の回収に40年掛かり投資が成立しないとの話を披瀝している。2012年には、太陽光発電への投資の回収には32年必要だが、誰もそんな事業には投資しないと発言し、さらに2015年の著書では、投資の回収に20年必要な太陽光発電を良い投資とは呼ばないとしている。  投資を何年で回収できるかが、トランプにとっては重要な判断基準のようだ。補助制度により支えられている再エネについては、収益面からトランプの評価は低いようだが、税額控除制度の延長を認めた議会との関係などから、直ちに再エネの税額控除を見直す可能性は低いように思われる。日本企業のメリットは?日本企業のメリットは? さて、トランプの環境・エネルギー政策は日本企業に影響を与えるのだろうか。まず、今後化石燃料の開発には優遇策が講じられることになるだろう。例えば、連邦政府所有地での開発を容易にする、あるいは、税額、ロイヤルティーを減額するなどの施策が考えられる。米国でのエネルギー資源開発の権益を保有している日本企業にはメリットがある。 最も重要な点は、米国のエネルギーコストが引き続き世界の中で圧倒的競争力を持ち続ける可能性が高いことだ。トランプは、炭素税、あるいは二酸化炭素の排出量取引はエネルギーコストの上昇を招くとして、反対の立場を鮮明にしている。共和党の政策綱領にも明記された。炭素に価格がかからず、国内の化石燃料の採掘を容易にする政策が採用されれば、米国のエネルギーコストは圧倒的競争力を維持することになる。 図-3は、日米独の電炉向けの電気料金を示している。固定価格買い取り制度の賦課金を免除されているドイツよりも、米国の電気料金が競争力を持っている。シェール革命により天然ガスが価格競争力を持ち、米国の電気料金は図-4の通り家庭用において多少の上昇はあるものの、他先進国との比較では圧倒的に競争力を維持している。米国に進出している日本企業はこのメリットを受けている。さらに、シェールガスを原料として使用するため米国に進出を考えている化学関連メーカーにもトランプの政策は朗報だろう。 再エネ支援策の見直しと同様に不透明なのが、自動車の排ガス規制と電気自動車(EV)への連邦政府の支援策の先行きだ。欧米メーカーがEVに力を入れる中(「次世代自動車競争、欧米に続き韓国も、大丈夫か? 日本車」)最近日本メーカーもEVに舵を切ったように思えるが、米国の政策が変われば、日本を含め世界のメーカーに影響がでてくる。その中でも11月17日に太陽光パネル業者のソーラーシティを2200億円で以て買収する決定をしたばかりのテスラは、大きな影響を受ける可能性がある。 もう一つ見逃せないのが、石炭支援のトランプは、オバマが決定した米国輸銀の途上国の石炭火力発電設備への融資禁止を見直す可能性が高いことだ。石炭火力発電設備を得意とする日本の重工メーカーには間接的な支援になる。ただし、CCSの将来は全く不透明となった。米国でCCSに関与する日本企業は苦しい立場になる可能性がある。 トランプが大統領に就任し、具体策を打ち出すまで分からないが、現時点での予想に基づけば、日本企業もエネルギー・環境政策のメリットを享受できる可能性がかなりありそうだ。 

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    トランプ外交を読み解く3つのキーワード「取引」「世論」「変化」

    より転載) 次の米大統領に選出されたドナルド・トランプ氏は、選挙期間中に在日米軍の撤退に言及するなど日米関係についても“型破り”な発言が目立ちました。トランプ氏はどのように外交を展開していくのか。オバマ政権が掲げたアジア重視の外交安保政策はどうなるのか。米国政治に詳しい上智大学の前嶋和弘教授に寄稿してもらいました。「内向き」か「強い米国」か トランプ新政権の外交・安全保障政策はどこに向かうのだろうか。特にアジア太平洋政策や日米同盟について考えてみたい。 当選から間もない現在、トランプ外交の基本路線を読むのはなかなか難しい。「米墨国境の万里の長城建設」や「ムスリム入国禁止」といった選挙戦のハチャメチャな政策ともいえないような政策は目立ったものの、実現性を考えると、これは支持者を固めるためのスローガンといえるようなものかもしれない。外交は言葉のゲームでもあるため、そのことは問題だ。ただ、今回は「暴言」以外の部分で読み取れるトランプ外交の方向性を考えてみたい。会談前、握手を交わす安倍首相とトランプ次期米大統領(内閣広報室提供・共同) 具体的には次のような3つの傾向が高くなるかもしれない。 第1点目はビジネスマンとしてのトランプの性格である。オバマ政権では、軍事力よりも話し合いを重視し、単独行動ではなく、多国間での協調主義を重視する傾向が続いた。トランプの場合、おそらくビジネスマンらしく2国間の協議をし、話し合いをまとめていく手法を進めるのが得意かもしれない。パリ協定やTPPに代表されるような多国間で物事を進めていくような枠組みではなく、できる限り相手と1対1で取引をし、最大限のメリットをアメリカにもたらせようとするような外交の方向性が予想される。オバマ政権ではスローガンのように何度も登場したが、結局大きくは進まなかった核軍縮もトランプ政権ではどうなるのか、不透明である。実利的な「ディール」(取引)がキーワードである。 第2点目はポピュリストとして、外交・安全保障上の世論の影響が大きくなる可能性である。国民の間には、中東に介入に対して、極めて強い厭戦気分がまだ続いている。体力以上にイラク戦争や、アメリカの歴史上もっとも長い戦争となっているアフガニスタン戦争を進めた結果、アメリカの海外での威信の低下や、国力そのものの低下を招いたという意識がアメリカ国民には強い。この世論を背景に、「アメリカは世界の警察ではない」と繰り返し公言したオバマ大統領と同じ、あるいはそれ以上に、どちらかといえば内向き路線が目立つことになるかもしれない。ここでは「世論」がキーワードである。オバマ政権の「アジア回帰」は? ただ、これまでの選挙戦でのトランプのアメリカの外交・安全保障に関連する発言は必ずしも「二国間」「内向き」とばかりは言えない。例えば、中東情勢、特に差し迫ったイスラム国への対応については、トランプはロシアを含む各国と協力し対応すると指摘してきた、ただ、予備選前の共和党立候補者の討論会では「イスラム国はじゅうたん爆撃する」と極めて、ユニラテラリズム(単独行動主義)を単純化した介入主義的な発言もトランプはしており、やはりまだ読みにくいのが現状だ。 第3点目は、オバマ外交からの乖離の傾向である。政権交代で別の政党の大統領が就任すると前の大統領の路線を大きく変えるのが一般的である。オバマ外交は、ブッシュ政権1期目の力による外交や単独行動主義を大きく修正した。トランプ外交もおそらくオバマ政権の否定から始まる部分も大きい。その意味でオバマ政権のレガシーの一つであるイランとの核合意は大きく方向転換していくかもしれない。また、オバマ政権時代にこじれたイスラエルとの関係については修復が前提にあるのではないか。オバマ米大統領(AP) 特に、オバマ政権時に対立が鮮明化したロシアとの関係については、一気に状況が変わり、米露が歩み寄り、イスラム国対策などに力を入れてくる可能性も高い。上述のようにトランプ政権もオバマ政権も「アメリカは世界の警察官ではない」という認識が根底にある。ただ、「偉大なアメリカをもう一度」という例のトランプの選挙スローガンを支持した層を意識して、場合によってオバマ政権以上は「力による外交」を躊躇しない可能性もあるだろう。いずれにしても「変化」がキーワードである。オバマ政権の「アジア回帰」は? 難しいのは、アジア・太平洋政策である。そもそも、オバマ政権が掲げていた主張した、アメリカ外交の「アジア回帰」(アジア・リバランス)については、なかなか具体的なものになっていない。アメリカの視点から見れば、その後のアラブの春や、シリア内戦、イスラム国の台頭などで中東が大混乱に陥っており、アメリカ本土を本格的に狙うイスラム教過激派のテロの可能性もある。その状況に比べればまだ具体的な紛争が起こっていない尖閣問題などの優先度はやや低くなっていたのが現状である。 しかし、日本にとっては、軍拡を続ける中国の海洋進出は差し迫った脅威に他ならない。アジア太平洋地域の安定には、自転車の「ハブとスポーク」のような形でアメリカを中心(ハブ)として、日米、韓米、米豪、米比などの二国間同盟(スポーク)で、中国やロシアの暴発を牽制し、北朝鮮のまさかの状況などに備えてきた。基本的にはアメリカを核とした体制はアジア太平洋の安定に不可欠である。それはアメリカにとってもメリットがある。もし、二国間同盟がなかったら、中国やロシア、北朝鮮の脅威はアメリカの自国に対する安全保障への脅威でもある。また、地政学的リスクが少ない方がアメリカ経済にとってもプラスであるのは言うまでもない。 しかし、トランプの選挙戦の間の様々な発言から考えると、近年の大統領候補の中で、これだけ日本や東アジアの安全保障の現実を理解していない(あるいは理解しているそぶりを見せない)大統領候補は、筆者は記憶にない。在日米軍の費用負担を日本が増やさなければ、米軍の撤退や、その過程で日本の核保有を認めるまで踏み込んだのは、アジアの安全保障の基本路線とは大きく異なる。このままでは一気にアジア太平洋情勢が不安定化する可能性もある。 トランプ発言は日本向けだけでなく、韓国やNATOなどとにも応分の負担を要求している。上述の「取引」「世論」「変化」で考えていけば、自分たちのメリットを声高に主張する人々の声に対応して、少しでも同盟国から譲歩を導き出したいという新しい手法と考えることができる。 日本の中では、米軍撤退の可能性を歓迎する声や日本の安全保障強化と自衛隊の国軍化がトランプ政権誕生で可能になるかもしれないという観測もあるかもしれないが、おそらくあくまでも在日米軍の撤退はあくまでも交渉材料に過ぎず、同盟国の負担の増加を勝ち取る手法であろう。日本の一部報道で具体的な費用負担の数字がすでに上がりつつあるのは、ビジネスマンとしてのトランプのやり方にすでに影響されているようなものである。 「曖昧」では済まされない日本外交「曖昧」では済まされない日本外交 トランプ外交は斬新ではあるが、やはり危険ではある。外交・安全保障政策は国家の存続に直結する政策であり、取引を超えたものでもある。ただ、日本にとって、今後は「価値の共有」といった曖昧さでは済まされないことも出てくるだろう。ボタンを掛け違えれば日米同盟は「漂流以上の危機」になるかもしれない。トランプ氏(ロイター) 実際の外交は大統領一人ではできない、それには政権を支える国務長官、国防長官をはじめとする閣僚や、ホワイトハウスのスタッフ、担当省庁の政治任命が鍵となる。まだ、見えていないが、日本としてはどの人物が任命されるかに注目したい。 一方、あり得ないと思うが、もしトランプ氏が在日米軍を撤退すると言ったとしても、議会では民主党ばかりか、共和党も反対するはずだ。外交は大統領の専権事項であるが、外交や安全保障の予算を決める権限は議会にあるほか、各種人事の承認も上院が動かなくてはならないため、全く自由ではない。自由でない部分、トランプは国民世論に訴えて、議会の反発を抑えるといったやり方をしてくる可能性もある。「世論」に訴える手法がうまくいけば、トランプ政権はそれなりの独自路線を進めることができるかもしれない。 ところで、大統領選挙でのこれまでのTPPをめぐる議論の中で、自由貿易は繁栄のシンボルでなく、「弱い者いじめ」の象徴になってしまっている。トランプ勝利で、TPPはおそらくこのままの形では難しくなる。日本の国民にとっては、トランプがTPPを破棄すれば、日本には米国への大きな不信が生まれ、大きなショックとなるが、日本としてはアメリカの動きを見て、再交渉となるのか、2国間での別の枠組みでの自由貿易協定が考えらえるのか、出方をいろいろ考えなければならない。 また、中国の台頭の中、中国と米国が「フレネミー(フレンド+エネミー)」という状況はずっと続くだろう。米国は硬軟両様で、中国との間で正解を探り、その中で海洋進出や軍事大国化を阻止するほかないのだが、日本はその両大国の動きを注視するのはこれまで同じである。トランプ政権がアメリカ外交をどう変えていくのか、まだ先は見えないが、米国の大きな変化に注目しなければいけない。 まえしま・かずひろ 上智大学総合グローバル学部教授。専門はアメリカ現代政治。上智大学外国語学部英語学科卒業後,ジョージタウン大学大学院政治修士課程修了(MA),メリーランド大学大学院政治学博士課程修了(Ph.D.)。主要著作は『アメリカ政治とメディア:政治のインフラから政治の主役になるマスメディア』(単著,北樹出版,2011年)、『オバマ後のアメリカ政治:2012年大統領選挙と分断された政治の行方』(共編著,東信堂,2014年)、『ネット選挙が変える政治と社会:日米韓における新たな「公共圏」の姿』(共編著,慶応義塾大学出版会,2013年)

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    トランプ氏がグローバリズムに歯止め 日本にはプラスか

     米国大統領選の翌日、日本の国会では与党の強行採決でTPP(環太平洋経済連携協定)を批准した。日本のコメ、小麦、牛肉・豚肉など9012品目の関税を引き下げて貿易障壁を撤廃することを取り決めた協定だ。 しかし、大統領選に勝利したドナルド・トランプ氏は選挙中から「大統領になれば就任初日にTPPを離脱する」と反対を表明しており、日本が批准したのはトランプ氏の勝利によって“協定の失効”が見えたタイミングだったから、与野党の対決も、強行採決も茶番劇である。政治評論家の有馬晴海氏は「日本の政治家はトランプに救われた」とこう語る。「自民党議員の多くは農協と関係が深く、本音ではTPPに反対でした。だが、安倍晋三・首相はオバマ大統領の広島訪問などで米国に借りがあったから、なんとか批准しようと農協改革まで行なって反対論を封じ込める力の入れようでした。党内も首相に反する言動を取れば出世できないから従うしかない。そこに反対派のトランプ氏が勝ったことで“よし、これはどうせ発効しない”と安心して強行採決できたわけです」 トランプ氏に救われたのは自民党の政治家だけではない。相沢幸悦・埼玉学園大学経済経営学部教授は「日本経済」がグローバル化の荒波から逃れたという。「日本のような輸出経済の国にとって自由貿易を進めるTPPはプラスで、保護主義的な流れは好ましくないという意見が国内では多数派です。しかし、それは正しくはありません。 日本の貿易依存度(GDPにおける輸出総額の比率)は15%程度しかなく、ドイツや韓国の約40%、中国、ロシア、イタリアなどの25%前後と比べても低い。実は、日本は輸出立国ではなく、米国のように個人消費が経済を支えている内需国なのです。だから経済のグローバル化を進める必要性は高くない。トランプ氏がTPPを拒否してグローバリズムにストップをかけたのは日本の経済にとってプラスの方が大きい」 漫画家の小林よしのり氏も「米国の選択」をこう評価する。「米国が進めてきたグローバリズムは富裕層だけが徹底的に儲かる仕組みです。その結果、社会の格差が広がってニューヨークも若者のホームレスがあふれかえっている。 トランプ氏を勝たせたのはグローバリズムで貧困に陥って、自分たちの暮らしをなんとかしてくれる政治家じゃないとダメだと切羽詰まっている人々。これによってグローバリズムは終焉を迎えるし、日本も米国の富裕層に搾取される構造からようやく脱却できるのではないか」関連記事■ トランプ氏と「夢語り合う会談に」…首相、渡米■ トランプ大統領誕生 大谷翔平の米国流出阻止できるか■ トランプ氏 超格差社会から目そらさせ日中を悪者にする作戦■ トランプ氏「NYタイムズが読者に謝罪した」■ ほんの僅かなグローバル企業が国家を飲み込む姿を紹介した本

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    トランプの貿易政策、日本車の関税引上げはほとんど意味なし

    う見る?】 米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利し、次期大統領に内定してからというもの、これからの日米関係や経済がどうなるのか、盛んに論じられている。様々な経済政策をトランプ氏は開陳しているが、果たしてそれはどんな効果をもたらすのか。経営コンサルタントの大前研一氏が、トランプ流の保護主義的な貿易政策について解説する。 * * * アメリカのドナルド・トランプ次期大統領とニューヨークのトランプ・タワーで会談した安倍晋三首相は「トランプ氏は、まさに信頼できる指導者だと確信した」そうである。しかし私は前号で、トランプ氏は大統領選挙中の公約をほとんど実現できない可能性が高く、もし公約通りの政策を実行すれば、アメリカと世界は大混乱に陥るだろう、と述べた。 たとえば、トランプ氏は貿易政策について「就任初日にTPP(環太平洋経済連携協定)から離脱する」「NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉ができなければ脱退する」などと極めて保護主義的な姿勢を示し、日本に対しても「日本がアメリカ産牛肉に38.5%の関税をかけ続けるなら、我々も日本車に同率の関税をかける」と主張している。 しかし、日本自動車工業会の統計によると、日本の自動車メーカーはアメリカで約385万台(2015年)を現地生産している。一方、オートデータの統計によれば、日本の主要自動車メーカーのアメリカにおける新車販売台数は約657万台(同)である。つまり、すでに日本の自動車メーカーはアメリカで新車販売台数の6割近くを現地生産しているのだ。 関税が高くなったら現地生産を増やせばよいだけなので、トランプ政権が日本車にアメリカ産牛肉と同率の関税をかけたとしても、ほとんど意味はないのである。 また、トランプ氏は「中国に奪われた雇用を取り戻す」と宣言しているが、これも不可能だ。なぜなら、平均年収がアメリカは約500万円、中国(都市部の企業従業員)は約100万円だからである。つまり「中国に奪われた雇用を取り戻す」ためには、アメリカ人の給料を中国人並み=現在の5分の1にしなければならないわけで、そんなことはできるはずがない。 給料だけの問題ではない。ディープ・サウスならぬ「ディープ・ラストベルト」(中西部から北東部にかけての製造業が廃れた地帯の中でも衰退の著しい地域)では失業率が非常に高く、アルコール依存症や麻薬中毒などの社会問題が蔓延して、まともに働けない人も多い。もし中国から雇用を取り戻したとしても、産業が成り立たない事態もあり得る。 トランプ氏は貿易政策や経済政策だけでなく、不法移民問題でも「メキシコとの国境に壁を築く」という閉鎖的な公約を掲げているが、メキシコ国境は全長3000km以上あるので、もちろん物理的に不可能だ。 さらにトランプ氏は、法人税を35%から15%に引き下げ、所得税を富裕層も含めて減税し、相続税もゼロにすると言明している。しかし、そうすると税収が大幅に減ってしまう。それを補うために、アップルやGEなどのアメリカ企業が海外に貯め込んでいる金をアメリカに戻させると言っているが、その程度では全く足りないし、そんなことをしたらアメリカ企業はみんな本社を海外に移してしまうだろう。 軍艦を100隻以上新造するなど軍事力を大々的に増強するとも言っているが、その財源については何も説明していない。 要するに、トランプ氏が主張している政策は何もかも全く辻褄が合わないのである。もし本当に公約通りのことをやり始めたら、それらの矛盾が一気に噴き出してくるだろう。関連記事■ トランプとレーガン 比較する向きもあるが両者は全く違う■ トランプ氏に暗殺の危険性、JFKとの共通点も■ トランプ氏 超格差社会から目そらさせ日中を悪者にする作戦■ トランプ氏 カジノで大儲けした日本人に大リベンジの過去■ 米の低レベル高校生、殺人事件が日常の街等をリポートした本

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    あばよ米軍、トランプに媚売る翁長氏の下心

    「沖縄の基地問題にどう対応するか、期待しつつ注視したい」。米軍普天間基地の名護市辺野古への移設に反対する沖縄県の翁長雄志知事が、トランプ氏との面会を求め来年2月にも訪米する意向を示した。トランプ政権で強まる米軍の「日本撤退論」に乗っかり、ここぞとばかりに媚を売る翁長知事の下心やいかに。

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    トランプ政権に媚売る翁長知事と沖縄メディアの思惑

    仲新城誠(八重山日報編集長) 米大統領選で、米軍軍基地の撤退に言及した実業家、ドナルド・トランプ氏が当選し、沖縄では翁長雄志知事や主要な沖縄メディアから「米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設を阻止できるかも」と新大統領の決断に期待する声が上がり始めている。しかし今後、米新政権で問題になりそうなのは辺野古移設の是非どころか、米軍が沖縄から全面的に撤退する可能性だ。そうなれば、中国の脅威に対する処方箋を持たない翁長知事こそ窮地に陥る。米大統領選でトランプ氏が勝利したことを受け、記者団の取材に応じる沖縄県の翁長雄志知事=11月9日午後、沖縄県庁 トランプ氏による選挙期間中の発言のうち、日本にとって最も衝撃的だったのは、米軍駐留経費の負担増に応じない場合、米軍を撤退させる方針を示したことだ。 新大統領がこの方針を実行すれば、日米同盟は希薄化してしまう。もはや辺野古移設とか駐留経費がどうのという話ではなく、日本が米国抜きで、自分の国は自分で守らなくてはならない時代が来るかもしれないということだ。 次期大統領は「世界の警察官」の役割放棄、自国の国益最優先主義に言及している。国際社会に冷戦終結以来の大規模な地殻変動が起こるかもしれない。沖縄が備えなくてはならないのは、そのような事態だ。 しかし米大統領選の結果を受け、翁長知事は11月9日、報道陣にこうコメントした。「(普天間飛行場問題で)政府は『辺野古が唯一』、私は『ありとあらゆる手段を駆使して基地を造らせない』と言っている。膠着状態の中、私どもの意見も聞いていただいて、どのような判断をされるのか期待したい」 沖縄は尖閣諸島を抱えており、恒常的に中国の脅威にさらされている。日米同盟が機能しなくなれば、沖縄は圧倒的な中国の軍事力を前に、最前線で突然、しかもたった一人で放り出されることになる。翁長知事のコメントには、そうした問題意識がまるで感じられない。「辺野古」以外は何も見えない「辺野古」以外は何も見えない 翁長知事は、トランプ氏に次のような祝電も送った。「大統領就任後は米国と沖縄との関係について話し合う機会をつくっていただき、双方にとって良い結果となるよう、強力なリーダーシップを発揮されますことをご期待申し上げます」 真に県民の生命や財産に責任を持つ知事であれば、次期大統領への祝電では沖縄の基地負担軽減に言及しつつ「日米同盟の重要性を再確認してほしい」と念を押すのが筋だろう。「米国と沖縄の関係について話し合いたい」などという幼稚で無内容な文章を一体誰が考えたのか、県民として理解不能だ。 しかし翁長知事は、来年2月に訪米する意向も示すなど、なお日本政府の頭越しに独自外交を展開する気満々だ。国益を超越する県益が存在するかのようである。 翁長知事を支える県紙2紙は、社説でこう主張した。「知事は早期に米国を訪れ、政権交代前、新政権の対沖縄政策が固まる前に、辺野古新基地建設の断念を求めるべきだ」(琉球新報)「米軍普天間飛行場の辺野古移設問題を見直す絶好の機会にすべきだ」(沖縄タイムス) こちらも翁長知事と同じく「辺野古」以外は何も見えない視野狭窄状態に陥っている。安倍政権やオバマ政権に対して繰り返してきた「辺野古断念を」という旧態依然とした訴えを、そのままトランプ政権にぶつけようとしているだけだ。 米軍の全面的撤退が現実化するなら、それは普天間飛行場問題とは無関係に、新政権が米国のあり方そのものを見直す流れの中で、将来的に起きるだろう。だから普天間だけを切り離し、トランプ氏に「辺野古断念」を訴えても恐らく徒労に終わる。 しかし、実は私は、米軍の全面的撤退という事態を必ずしも悲観的には捉えていない。むしろ、沖縄にとっての好機だという考え方は、翁長知事や沖縄メディアと共通している。 米軍が撤退すれば日本は当然、自衛隊を強化し、自主防衛を確立する道を選ぶほかなくなる。まさにそこれこそ、沖縄の米軍基地問題を抜本的に解決する唯一の道であると考えてきたからだ。 米軍基地問題で本土住民と意見交換した際、私はこう話したことがある。「県民が最も憤っているのは、事件・事故を起こした米兵が保護される日米地位協定の不平等性です。しかし米軍の代わりに自衛隊が配備されれば、この問題はなくなります。自衛隊員は日本の公務員であり、事件・事故を起こせば間違いなく処分されるからです」 本土住民は「そんな考え方は初めて聞いた」と目を丸くした。その表情から、本土住民が漫然と「米軍基地は沖縄にあればいい」と思っているのではないかと感じた。翁長知事に「自主防衛」なし翁長知事に「自主防衛」なし とはいえ、翁長知事の脳裏には「自主防衛」の四文字はない。翁長知事の著書「戦う民意」で、興味深いエピソードが紹介されている。 翁長氏は知事選出馬直前、当時の自民党幹事長だった石破茂氏と面会した。石破氏は国土防衛に関する持論である「郷土部隊」について語り始めた。 「辺野古には将来、自衛隊による海兵隊をつくったらどうかと思っているんですよ。それは沖縄の若者で百パーセント編成をする。そうすると日米地位協定の問題もなくなり、沖縄の人たちは喜んでくれるんじゃないでしょうか」 石破氏の構想は「自分の国は自分で守る」という独立国家の理想を体現しており、もっともな話であると思う。しかし翁長氏は「即座に反論」した。 「とんでもないですよ。もともと私たちは基地そのものに反対しているんですよ」 翁長知事は、尖閣問題で中国に毅然とした態度を示したことは一度もない。これまでの尖閣危機でも右往左往するだけだった。米軍の全面的撤退が現実化すれば、こうした危機管理能力のない県政を、県民が信認し続けることは有り得ない。 辺野古移設に限定して考えると、トランプ新政権は当面、日米合意を堅持するだろう。米国の損得勘定からすれば、日米合意を破棄してまで普天間飛行場を県外・国外に出す米国自身のメリットは想定しにくい。 軍関係者からは「あえて移設しなくても、現在の普天間のままがいい」という声もあると聞いたことがある。知事が新政権に「日米合意破棄」「移設反対」の圧力をかけ過ぎると、やぶ蛇で普天間の固定化という最悪の決断が飛び出さないとも限らない。 米新政権は短期的には辺野古推進であり、長期的には、あるいは米軍の全面的撤退を決断するかもしれないが、いずれの場合でも、翁長県政がピンチに陥ることに変わりはない。理由は一つ、中国の脅威を直視する勇気を持たないからだ。 トランプ氏が米軍の全面的撤退を決断するかどうかは、現時点では分からない。ただ指摘すべきことは「いずれにせよ、日本はその日に備えなくてはならない」ということだ。動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開されたビデオメッセージで、TPPから離脱する意向を表明するドナルド・トランプ氏=11月21日 中国は尖閣諸島周辺に連日、公船を派遣しているが、尖閣への軍事的な侵攻には踏み切っていない。それは日米同盟があるからだ。中国は、日本はともかく米国の軍事力には到底かなわないと考えており、現時点では米国との融和に懸命だ。 だが、中国は驚異的なスピードで軍拡を続けている。数年後か十数年後、「もはや単独で日米に勝てる」と確信する日が来るかもしれない。それが尖閣侵攻、さらには沖縄侵攻のXデーになる可能性は十分にある。だから日本の「米国頼み」がいずれ限界に達するのは時間の問題だろう。 この期に及んで、相も変わらず「辺野古阻止」だけ連呼し続ける翁長県政と沖縄メディアは、思考が20世紀の時点で停止している状態に見える。 それは両者が、反基地イデオロギーで築き上げてきた沖縄「主流派」の地位を今後とも維持したいという、誠に現実的な理由があるからだ。20世紀的な表現で言うと、翁長知事と沖縄メディアは「わかっちゃいるけどやめられない」のだ。

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    実現性はゼロ? それでも翁長・トランプ会談を熱望する沖縄2紙の魂胆

    仲村覚(ジャーナリスト、沖縄対策本部)知事早期訪米を煽る沖縄メディア 11月8日に投開票の行われた米国大統領選挙において、トランプ氏が当選を果たした。翌9日、沖縄県の翁長雄志知事は、記者会見でトランプ氏への祝電を送ることを明らかにした。総理大臣でも外務大臣でもない一つの県の首長が他国の国家元首へ祝電を打つことはおそらく前代未聞であろう。祝電の送付は事務方からの提案ではなく、翁長氏からの指示とのことだ。9月16日、米軍普天間飛行場の移設を巡る訴訟で沖縄県側が敗訴し、沖縄県庁で記者会見する翁長雄志・沖縄県知事 翁長氏は記者会見で、「新しい発想の政治を考えており、沖縄の基地問題にどう対応するか注視したい。(日本政府は)『辺野古が唯一』と、(沖縄県側が)ありとあらゆる手段を駆使して造らせないと、(政府と県が)こう着状態。私どもの意見を聞いていただき、どのように判断するか沖縄側としては期待したい」と述べた。 さらに祝電には、「大統領就任後は、米国と沖縄との関係について話し合う機会をつくっていただきたい」と面談の申し込みも行い、訪米時期はトランプ氏が2017年1月20日に大統領に就任し、関係閣僚が決まる2月ごろとしている。 今後の日本の安全保障政策の成否は、沖縄県石垣島、宮古島への自衛隊の早期増強配備と日米同盟強化にかかっているといっても過言ではない。そのうちのひとつ、日米同盟強化はひとえにトランプ大統領との関係構築にかかっている。 トランプ氏は選挙期間中に在日米軍の撤退も口にしたため、沖縄からの米軍基地の撤去を唱えている勢力にとっては、トランプ大統領の誕生が大きなチャンスと捉えることも出来る。その代表のひとりが翁長氏で、祝電まで送り面談まで申込んだのだ。 仮に安倍総理がトランプ氏と安全保障政策で足並みを揃える事に成功したとしても翁長氏が背後から妨害をする可能性は大きい。よって、日本政府は今後の翁長氏のトランプ氏への対応を把握して適切に処理しすることが重要になってくる。沖縄ではマスコミが主で政治が従 通常、新聞の政治報道というのは政治家の言動を取材してそれを正確に報道するものだ。しかし、沖縄の2紙はそうではない。まず、新聞が(彼らなりの)沖縄の政治のあるべき姿を報道する。 例えば、「世界一危険な航空機オスプレイの配備撤回の声をオール沖縄であげるべきだ」と報道すれば、自民党から共産党まで一体となってオスプレイ配備阻止の運動が湧き起こり、「翁長雄志知事待望論」を唱えれば、不思議なことに自民党の政治家だった翁長氏が革新統一候補として担がれ、県知事選に出馬してくるのである。 その後はシナリオに一致した政治家、県民の声を報道し、そうでない声は報道しない自由を最大限に行使する。これが、沖縄の政治とマスコミの関係だ。マスコミが主で政治が従なのである。よって、今後の翁長氏が辺野古移設阻止に向けてどのようなトランプ対応に動くかは、沖縄2紙の関連記事をチェックすれば概ね把握できるはずである。 沖縄タイムスは、11日「[トランプ氏と日米安保]今こそ辺野古見直しを」というタイトルをつけた社説で、「翁長雄志知事は、トランプ氏との面会を求め来年2月にも訪米する考えを示した。辺野古の新基地建設に反対する沖縄の民意を伝え、米側に計画断念を要請する意向だ。敵意に囲まれた基地は機能しない。日本政府はトランプ氏に対し『辺野古が唯一』との考え方を懸命に吹き込むはずだが、辺野古埋め立て工事を強行すれば激しい反対行動に遭い、沖縄基地全体が不安定化するのは確実である。県はそのような厳しい現実を、あらゆるチャンネルを使って新政権に伝えるべきだ」と訪米してトランプ氏を脅す必要性を説いた。 10日の琉球新報の社説は更に踏み込んでいる。「米大統領にトランプ氏 辺野古新基地断念せよ 知事は直ちに訪米すべきだ」というタイトルで「トランプ氏の辺野古新基地建設への対応は未知数だ。米有力シンクタンクのアジア専門家は「辺野古移設について、トランプは全くの『白紙』状態だ。今後、判断していくことになるだろう」と指摘している。それならば、翁長雄志知事は早期に米国を訪れ、政権交代前、新政権の対沖縄政策が固まる前に、辺野古新基地建設の断念を求めるべきだ」と2月の訪米では遅いと早期訪米の注文を付けた。首相に先手を打たれた焦り首相に先手を打たれた焦り 安倍総理の動きは早かった。10日、午前7時55分から約20分間、ドナルド・トランプ次期米国大統領と電話会談を行い、APECの前にニューヨークで会談を行う方向で調整することを決めると、17日夕(日本時間18日朝)にはトランプ氏とニューヨークで約1時間半にわたり会談した。 当初45分間だった予定が倍の1時間半に延長され、公開された写真でもお互いに和やかな笑顔を見せ、会談が大成功だったことを伺わせている。会談内容は非公開のため詳細は不明だが、殆どのメディアは関係構築に成功したと報道している。 19日、沖縄タイムスは平安名純代・米国特約記者の署名で、安倍・トランプ会談のレポートを掲載し、次の解説で締めくくっている。 「アジア太平洋地域における米軍の重要性を強調しながら日本の責任としての自衛隊配備と米軍との共同訓練などを力説する安倍氏の姿に、トランプ氏は『目指す方向は同じようだ』と笑顔で答えたという。トランプ氏は、日米同盟の重要性を強調し、両国が信頼関係を構築して協力し合うことが双方の国益につながるとの安倍氏の主張に耳を傾け、ペンス氏も『信頼できそうな人物だ』と好感を示していたという。米軍撤退の可能性を指摘したトランプ氏が強硬姿勢を改めるかどうかは今回の会談では判明しなかったが、安倍氏を歓迎して受け入れたことから、今後は両者の間に信頼関係が築かれ、在沖米軍基地の増強や先島の自衛隊配備を巡り協力する可能性も出てきた」 続いて翌20日には、「[安倍首相・トランプ氏会談]県は働き掛けを強めよ」というタイトルの社説を掲載した。 「トランプ政権が正式発足してからの交渉によっては日本の軍事的役割の増加を求めてくる懸念も消えない。そうなれば、沖縄は負担軽減どころか、さらなる負担を押しつけられることになりかねない。(中略)翁長雄志知事は大統領就任後の来年2月に訪米を計画しているが、むしろ政権移行期の今こそ県ワシントン事務所などあらゆるチャンネルを活用して辺野古新基地建設に反対する沖縄の民意と、仮に強行することがあれば日米安保全体がリスクにさらされることをトランプ氏側に正確に伝える必要がある」 続いて、21日の琉球新報では「[安倍トランプ会談]辺野古見直す柔軟性持て」というタイトルで、「翁長雄志知事は来年2月にも訪米し、トランプ氏らとの面談を求め、辺野古新基地断念を訴える考えだが、就任前にこそ、政権要職の布陣にらみ沖縄の実情を理解させる戦略を練り、実践すべきだ」と主張した。 当選直後は琉球新報のみが政権交代前の訪米を主張していたが、安倍総理とトランプ氏の会談後の社説では両者とも就任前の訪米を要求している。おそらく、知事の背後にいる様々な勢力はすでに訪米の前倒しに向けて、国内外で動き出しているのではないだろうか? ちなみに、翁長氏が就任してから沖縄県知事の国外出張の日程調整は、県議会も知事公室の秘書も全く知らないところで組み込まれるようになっている。「島ぐるみ会議」等の民間人が調整してから知事が判断し、慌てて県庁職員が動くしくみになっている。つまり、県庁は知事を背後で操る特定の団体に乗っ取られているのだ。翁長知事の対米外交の真意翁長知事の対米外交の真意 さて、翁長氏は安倍総理と対米外交を競っているかのようだが、現時点では圧倒的に安倍総理に軍配が上がっている。6月23日、国立沖縄戦没者墓苑で献花に向かう安倍晋三首相(左)。右奥は沖縄県の翁長雄志知事 筆者は翁長氏がトランプ大統領に面会できる可能性はほぼゼロだと見ている。何故なら、トランプ氏が国家安全保障問題担当の大統領補佐官への就任を打診したのが、元国防情報局のマイケル・フリン氏だからだ。フリン氏は沖縄の反基地運動の背景に中国共産党などの工作があることは重々承知なはずだ。 では、沖縄の基地問題は手放しで喜ぶことが出来るかというとそうではない。次の大きな火種は仕込まれている。沖縄県に派遣された大阪府警機動隊員の「土人」「シナ人」との発言が沖縄県民全員に対する差別発言だとされている事件である。 この問題で10月28日には沖縄県議会で臨時議会が開催され、社民党、共産党などが中心となって提出された抗議の意見書は賛成多数で可決された。一方、自民党会派はこの問題の本当の目的は沖縄県民と日本国民を分断するためのマッチポンプだと見抜き、機動隊員の発言はエスカレートした抗議活動が招いたものであり、県民に対して向けられたものではなく差別ではないとして現場警察官の負担軽減と十分な休養と心のケアを求める独自の意見書を提出した。 事実、ヒューマンライツ・ナウという国際人権NGOは、9月13日から30日まで開催された第33回国連人権理事会に声明「沖縄県における米軍基地問題に反対する平和的抗議活動に対する抑圧と琉球/沖縄の先住民族の権利の侵害」を提出した。 その中には「琉球/沖縄の人々が先住民族であることを認めた上で、国連先住民族権利宣言26条及び18条に基づき、琉球/沖縄の人々の「伝統的な土地及び天然資源に関する権利」及び「影響を受ける政策に事前に情報を得た上で自由に関与する権利」を保障すること」という勧告も含まれている。要は沖縄県民を国際的に先住民族だと認めさせることで、先住民族の土地と資源に対する特別な権利を利用して合法的に米軍基地を撤去させようという魂胆である。 沖縄県民を先住民族だと認めさせる最も効果的な手段は、翁長氏が国連人権理事会で差別被害を訴えることであるが、それにはプロセスを経る必要がある。「日本政府に訴えても駄目だった」「米国に訴えても駄目だった」というプロセスである。このプロセスを経て、初めて政府から弾圧を受けていると主張することが出来、先住民族が国連に駆け込むことが出来るのだ。 つまり、沖縄2紙は翁長氏の早期訪米を煽っているが、会談を成功させることが目的ではなく、無視されて失敗することが成功だと考えているのだ。つまり、翁長氏の訪米と土人問題のマッチポンプは、国連に差別を訴えるためのセットとなった環境づくりだということである。鶴保大臣を槍玉に挙げる本当の目的参院内閣委の理事懇談会後、取材に応じる鶴保沖縄北方相=10日午前、国会 現在、国会の野党議員は、沖縄が政府から差別を受けているという構図を作るために、鶴保沖縄北方相を槍玉に挙げて騒いでいる。鶴保氏は、8日の参議院内閣委員会で、「人権問題であるかどうかの問題を第三者が一方的に決めつけるのは非常に危険なことだ。言論の自由はどなたにもある」「個人的に『これは差別である』という風には断定はできない」と答弁したことから、沖縄担当大臣にふさわしくないと国会で追及されている。 さらに19日の琉球新報では、佐藤優氏が「うちなー論評」という自らのコラムに「鶴保弾劾闘争宣言、沖縄差別への無自覚露呈」という記事を掲載した。このように機動隊「土人」発言は本来火のないところに火をつけたマッチポンプだが、一過性のものではなく、大阪府や永田町までも飛び火をさせて大きく燃え上がらせようとしている。それは、沖縄を日本から引き離し奪い取るための革命闘争である。 彼らの本当の目的は、沖縄差別を認めさせ謝罪させることでも、鶴保氏を辞任に追い込むことでも辺野古移設を断念させることでもない。差別という言葉を利用して沖縄と日本との対立構図をつくり、亀裂を入れることである。 現在の沖縄問題は単なる基地問題でも安全保障問題ではない。国内外の共産主義勢力及びその関連団体による沖縄分断工作との戦いである。 よって、今後日本政府は、工作の実態と理論を隅々まで把握し整理しトランプ陣営と共有する必要がある。何故なら、そのルーツをたどれば共通の敵である中国共産党に辿り着くからだ。新たな日米同盟には軍事同盟だけではなく、中国の対日工作、対米工作への共同対処も含まれることを願っている。それが、日米離間工作に対する最大の防御であり、中国への最大の攻撃でもあるからだ。

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    トランプ当選で沖縄に漂う微妙な空気

    織田重明 (ジャーナリスト) 「これで普天間問題に劇的な変化が起きてしまうのだろうか。だとすると、喜ぶべきなのかも知れないが、この20年間はいったいなんだったのだろうとも思えてくる」 大方の予想に反する米大統領選挙でのトランプ氏の勝利。その晩に飲んだ沖縄県の幹部はそうぼそりつぶやいた。米大統領選で勝利したトランプ氏(左)と大統領首席補佐官への起用が決まったプリーバス氏=11月9日、米ニューヨーク20年間の迷走 1996年の日米政府によるSACO合意で、米海兵隊が使用する普天間飛行場の代替施設を沖縄本島の東海岸沖に建設するとして以来、20年にわたって迷走が続いてきた普天間問題。2013年12月に当時の仲井真弘多知事が名護市辺野古沖の埋め立てを承認したことで、安倍政権は埋め立ての工事に着手したものの、仲井真氏に代わって沖縄県知事となった翁長雄志氏は埋め立て承認の取り消しに踏み切り、これを不服とする国が県を提訴するなど、普天間問題は沖縄の過剰な基地負担の象徴として、沖縄県民のみならず私たち日本国民の眼前に広がり続けてきた。 ところが、まさかのトランプ氏当選である。 大統領選のキャンペーンの間、トランプ氏は在日米軍の駐留費や米軍の体制をめぐって物議を醸すような発言を繰り返してきたことはよく知られている。 「日本の防衛は続けたいが、公平な支払いが必要だ。日本は自分自身で防衛しないといけないだろう」 「米国は巨額の資金を日本の防衛に費やす余裕はもうない」 日米安保条約では、日本に米国を防衛する義務はなく、日本は安全保障で「フリーライダー(タダ乗り)」となっている、もっと駐留費の負担を増やすべきだとトランプ氏は主張してきた。日本だけでなく韓国やドイツも引き合いに出しながら、負担増に応じなければ、米軍撤退も辞さないというトランプ氏の発言が喝采を受けてきたのは事実だ。翁長知事の期待  「(米軍駐留経費の負担を日本が増やさなければ在日米軍を撤退させるかとの問いに)喜んではいないが、答えはイエスだ」 トランプ氏のこれらの発言は、日本などの各国からより多くの駐留経費(いわゆる思いやり予算)を取りつけるために言っているだけで、本気で米軍の撤退を考えているわけではない、あるいは大統領になれば、もっと現実的な対応を取るようになるとの楽観論もあるが、在日米軍を取り巻く環境に不透明感が高まっていることは否めない。 そうしたなかで、沖縄ではトランプ氏当選に対する、戸惑いとも期待感ともつかぬ微妙な空気が漂っている。トランプ氏の当選確実が明らかになった11月9日午後、翁長知事はトランプ氏への祝電を送ることを明らかにし、普天間の辺野古移設への影響を記者から問われて、こう答えている。 「トランプ氏は破天荒な人だ。基地問題がどういうふうに動くかは分からないが、膠着状態の政治はしないのではないか。できるだけ早く私の考えを伝える」トランプ当選への期待感の裏で 翁長知事は、トランプ氏について触れる前に、大統領選で敗れたクリントン氏については、「今日までの政治を背負っている。ある意味では(当選すれば)今の膠着状態がそのままになると思っていた」と述べており、トランプ政権の誕生で、現行の在日米軍再編計画を決め、日本政府以上の岩盤として沖縄側の要求をはねつけてきたホワイトハウスやペンタゴンが変化することへの期待感を示したものだ。移設反対派の集会で話す沖縄県の翁長雄志知事=8月5日、福岡高裁那覇支部前 翁長知事は12月の訪米を予定しており、その時にトランプ氏との会談を申し入れるつもりだという。これを受けて、翌日11月10日付の地元紙・琉球新報は社説でこう書いている。 「(米国の)政権交代は日本の国土面積の 0.6%に74.46%の米軍専用施設が集中する沖縄にとって現状を変更する好機である。(中略)翁長雄志知事は早期に米国を訪れ、政権交代前、新政権の対沖縄政策が固まる前に、辺野古新基地建設の断念を求めるべきだ」 冒頭の県幹部のつぶやきは、20年にわたって難航を極めてきた普天間問題が大統領の交代によって劇的な変化が起きるかも知れないことへの喜びの反面、沖縄県としての無力感も滲ませたものだ。だが、この県幹部はそう楽観もできないばかりか、懸念材料はたくさんあるという。「海兵隊を4大隊増やす」「海兵隊は撤退を」と書かれた紙を一斉に掲げる参加者 =6月19日、沖縄県那覇市の奥武山陸上競技場 「在沖海兵隊の移転に『待った』がかかったりしないか」 沖縄の基地負担の軽減のために2006年の米軍再編ロードマップでは、1万5000人の在沖海兵隊のうち8000人をグアム移転するとされたが、2012年に計画の見直しがされ、現行の計画では在沖海兵隊9000人を2020年代から順次、グアムやハワイなどに移転するとされている。問題はこの移転にかかる巨額の経費(2012年の価格で総額86億ドル。日本円にして9000億円以上)の支出にトランプが同意するかだ。 これまでのところ、トランプは在沖海兵隊の移転に関しては言及していないようだ。というか、恐らく彼はまだこの計画を知ってもいないだろう。安全保障や外交についての知識はまだかなり浅そうだ。ただ、米軍の増強には熱心な様子である。こんな発言をしたこともある。 「米軍は枯渇している。陸軍兵力を54万人(現在は48万人弱)に増やし、36歩兵大隊の海兵隊を構築し(現在32大隊)、2020年までに350(現在272隻。現行計画では308隻)の海軍軍艦と潜水艦を導入する」海兵隊を4大隊増やす 海兵隊を4大隊増やすという発言が普天間飛行場の辺野古移設や在沖海兵隊の国外移転計画にどう影響するのか。 先月、来日し菅義偉とも会談した、トランプ氏の外交アドバイザーであるマイケル・フリン元米国防情報局長は、与野党の国会議員との会合で、「米国の安保政策は変わらない」と伝える一方で、「むちゃくちゃにはしないが、継続ではなく新しいものをつくりたい」と述べたという。フリン氏は、トランプ政権の国防長官にも名前が挙がっている。 トランプ政権がどんな手を打ってくるのか。沖縄だけでなく、日本全体もその動向に目を離すべきではない。

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    「トランプ当選」で日本の防衛の行方を論じないマスコミ

    井本省吾(元日本経済新聞編集委員) 前回、「トランプ・ショック」を「革命的な変化」と書いた日本経済新聞を大げさだと批判するブログを書いた。だが、当選決定前の雰囲気を思うと、日経の反応もやむを得なかったと、ちょっと同情している。私自身、トランプが当選する可能性は小さいと思っていたという反省もある。 それを改めて感じたのは「WiLL」12月号で中西輝政・京都大学名誉教授が坂元一哉・大阪大学教授との対談「『ヒラリー幻想』を戒める」で語った言葉だった。選挙直前の対談だが、当時の雰囲気がよくわかる。<今や、よほどのハッピー・ルーザー(負け好きの人)でない限り、いやでもクリントンに賭けるでしょう。……とりわけ(選挙の)終盤になって、「トランプが大統領になったら、、アメリカは大惨事になる」と金切り声で叫んでいるアメリカのメディアにしてみれば、「Anybody but Trump(トランプ以外なら誰でもいい)」なんでしょうけれど。>  中西氏や坂元氏もトランプ当選は「まさか」だったのである。それには米国のメディアの雰囲気が大きく影響している。  米国のマスコミはどういう状態なのか。同誌はジャーナリストの高山正之氏と政治評論家の加藤清隆氏の対談「鼻つまみ者と嫌われ者の戦いだよ」を載せているが、その中で両氏が語っている。<加藤 これまで中立だった「USAトゥディ」はトランプに投票するなとまで言い切っています。1996年のビル・クリントンの2期目の大統領選の時、私はホワイトハウスの取材担当をしていたのですが、アメリカのジャーナリストの8割から9割は民主党支持でした。それはいまも変わっていない。><高山 いまやメディアに共和党支持者は皆無だよ。「ウォールストリート・ジャーナル」も「ワシントンポスト」も、ヒラリーを選ぼうと書いている。……異常なまでのトランプ叩きは、アメリカの新聞が瀕死の状態であることの証左です。トランプが勝てばアメリカ・ジャーナリズムの敗北にほかならない。そんなのを無反省に見習って追随している日本のジャーナリズムは大バカだよ。>  まさに日経ほか日本の大手メディアは自分では十分取材せずに、米国メディアに追随していたのだった。 さて、トランプ大統領になって、日本の防衛はどうなるのか。トランプ氏は選挙戦時には「日本が防衛費を出さなければ、日本を守らない。日本から撤退する」「自分で核武装でもして自分で守れ」と言っていた。米ホワイトハウスの大統領執務室で、バラク・オバマ大統領との会談の間に、マスコミと話をする次期大統領のドナルド・トランプ氏 これに対して、見方はいろいろだが、全体的には「アメリカの財政赤字は増え続けているのでいずれ在日米軍は撤退の方向に向かわざるを得ません」(加藤氏)という意見が強い。 そこで中西氏は「防衛は、アメリカを頼ってばかりでは最後の保障がないので……いくらお金がかかっても日本自身で自前の防衛力を備えなければなりません」と発言。坂元氏は「そのご意見には百%賛成で、そうなってこそ、日米同盟はますます頼りがいのあるものになると思います」と応じている。 加藤氏は「現在の防衛費は5兆円を突破しましたが、米軍が撤退すれば通常兵器でもその5倍かかると試算されています。……今回の大統領選の最大の関心事はそれだと思うんですが、国会で誰も議論しようとしない。……核の話を持ち出すこと自体、タブーになっている。> 5倍かかるかどうかについては異論もあるが、基本的には同感である。産経新聞など一部を除くと、そのことを新聞、テレビなど大手メディアが全く無視していることが危うい。それだけ現実の状況取材に踏み込んでいない。何度も書いてきたことだが、そこが問題なのである。(「鎌倉橋残日録 ~井本省吾のOB記者日誌~」より2016年11月17日分を転載)

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    トランプ大統領は日本経済に不利、憲法改正の動き強まる観測

     大統領選に勝利し、アメリカの新リーダーとなったドナルド・トランプ氏(70才)。今後、私たちに最も大きな影響を与える可能性があるのは安全保障面だろう。 選挙中、トランプ氏は何度も「日米安保条約は不公平だ」と繰り返し、日本が安保条約に「ただ乗り」していると強調して、在日米軍の駐留経費を全額負担しないと「米軍撤退」もあると訴えた。日本から米軍が撤退すれば、中国や北朝鮮などの脅威にこれまで以上にさらされることへの不安の声も上がっている。 元外務相主任分析官で作家の佐藤優さんは、現在沖縄で進行中の基地移転は中止になる可能性があると指摘する。「米軍普天間飛行場の辺野古移設や米軍ヘリパッド建設は地元住民の反対運動が強く、流血事件まで起きています。現実主義のトランプ氏なら、『米軍兵士の居心地が悪い基地なら必要ない』とスパッと中止するかもしれません」 産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久さんは、全面的な撤退は現実的ではないと言う。「トランプ氏は日米同盟堅持を公言しており、米軍全面撤退はありえない。実は日本は『思いやり予算』など、在日米軍の駐留費を年間5000億円以上負担しており、トランプ氏にその事実を説明する必要がある。 一方で、日米同盟はいざという時に米国が一方的に日本を守るが、日本には同様の義務がない、世界でもめずらしい片務的な同盟です。 今後は米国民の不満の高まりとともに、同盟国として公平な軍事的負担を担うため、足かせとなっている憲法9条を改正する動きがトランプ旋風を機に国内でさらに強まるかもしれません」 佐藤さんが指摘する意外な恩恵は北方領土問題だ。「この問題のネックの一つは、日本の施政が及ぶ領域では米軍が活動できることです。ロシアは米軍の動きを警戒しているので、今後トランプ氏が日本固有の問題として領土問題への干渉をやめ、北方領土が米軍の活動地域外となれば、日露間で返還交渉が一気に進む期待があります」 経済面では、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の問題が深刻だ。日本は与党が今国会での関連法案成立を目指しているが、トランプ氏は「大統領の就任初日に離脱する」と断言してきた。外国の輸入攻勢から米国産業を守ることが目的だ。 安倍首相はそれでもTPPに前向きな姿勢を崩していないが、早稲田大学大学院教授の浦田秀次郎さんは「米国脱退でTPPは崩壊する」と言う。「TPPは米国が離脱すれば、発効できない仕組みです。TPPが消滅すれば、アベノミクスが思い描く成長戦略は実現が難しくなる。本来なら外国産の食料品や製品が安くなって消費者が潤うはずでしたが、TPPの崩壊で消費が伸びなくなり、日本の景気に悪影響が出るはずです」 トランプ氏が掲げる“内向き”の経済政策により、一層円高に向かう可能性がある。「輸出産業への依存が大きい日本経済にはマイナス。輸出品が売れなくなりやがて雇用や給料にも影響が出るでしょう」(浦田さん)関連記事■ 『SAPIO』人気連載・業田良家氏4コマ「米軍撤退」■ 大前研一氏 「トランプ大統領なら横田空域の返還求めよ」■ トモダチ作戦の見返りはおもいやり予算1880億円×5年■ 中国でトランプ氏支持者急増!? 現地ファンクラブ管理人を直撃■ 【ジョーク】米国防長官がシリア攻撃計画に関し説明した内容

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    安倍氏とトランプ氏はケミストリーが合うと外交関係者

    ンプ氏と会談した。「就任前の大統領との“首脳会談”は外交上異例だが、受け入れたトランプ氏側もそれだけ日米関係を重視していることを示している。1月には安倍首相が再訪米して一緒にゴルフをする案も調整が進んでいる。外交用語で馬が合うことをケミストリーというが、理詰めではなく直感タイプの2人はやはりケミストリーが合うようだ」(外務省筋)関連記事■ 「シェール革命」の進展で遠心分離機の需要増を見込む注目株■ 米国産シェールガス対日輸出容認 「日本商社奮闘のお陰」説■ オバマ大統領絶賛のクリーンエネルギーは「シェールガス」■ トランプ氏がグローバリズムに歯止め 日本にはプラスか■ 原油価格暴落など、世界市場の乱高下の仕掛け人は誰なのか

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    嫌われ者同士の大接戦となった米大統領選 米国民の複雑感情

     投票日前日の支持率は、ヒラリー・クリントン(69才)が45%、ドナルド・トランプ(70才)が41%。まれに見る「大接戦」になったアメリカ大統領選。 とはいえ、どうしてそんなに接戦になったのか、ピンとこない日本人も多いだろう。ある調査によると、「日本人が選ぶ米大統領」はヒラリーが9割、トランプはたったの1割だったという。 「ヒラリーは史上初の女性大統領候補だから、女性人気があるのでは?」というのは大きな勘違い。これほどまでに選挙がもつれてしまった理由は、簡単にいえば、どちらも“超”のつく「嫌われ者」だからだ。 「暴言王でセクハラ王のトランプ」が嫌われるのはわかるけど、なぜヒラリーが? 「アメリカ人の間では“エリート人種”、特に首都ワシントンでずっと政治家をやってきた人たちのイメージがすこぶる悪いんです。汚職にまみれ、利権ばかりを追求し、隙あらば国民の自由と権利を奪おうとする悪者…というのが全米の共通認識。だから、だいたいのアメリカ人はヒラリーのことを好きじゃない」(在米ジャーナリスト) エリート弁護士出身で、国務長官(日本でいう外務大臣)や上院議員を歴任し、夫のビル・クリントンが大統領の時には「最強のファースト・レディー」。長年、政界の中枢近くにいた彼女は、アメリカ国民の目には「悪の権化」のように映っているらしい。11月8日の米大統領選挙を控え、ゴムマスク製造販売会社ではヒラリー、トランプ両候補のマスク製作がピークを迎えている=さいたま市大宮区の「オガワスタジオ」 それは過去の大統領たちの経歴を見れば一目瞭然だ。カーター大統領は元ジョージア州知事で、レーガンも元カリフォルニア州知事。ジョージ・ブッシュも、ビル・クリントンもみんな州知事出身。「中央政界の腐敗」と関わっていないと思われたからこそ、大統領になれたのだ。例外は元上院議員のオバマだが、彼は新人議員だった。 そして、「ヒラリー嫌い」の票は、もう1人の嫌われ者・トランプに流れた。「メキシコ人は強姦魔」「イスラム教徒をアメリカ入国禁止にすべき」などの暴言やセクハラ騒動に「なぜこんな人が大統領候補に?」と首を傾げた人も多いのでは。 「トランプが“過激発言”をすればするほどテレビは視聴率が取れたんです。だからメディアはこぞってトランプのニュースを流し、インタビューや公開討論を組んだ。結果、メディアはトランプ一色。いくらヒール(悪役)でも、あれだけテレビに出れば人気も出ます。あとは、それだけ“ヒラリー嫌い”が根強い証拠です」(前出・ジャーナリスト) 選挙戦最終盤まで、支持率でトランプはヒラリーを上まわらなかったが、「それでもトランプが勝つ」という意見は多かった。その理由も、彼が“嫌われすぎていたから”だ。「『隠れトランプ信者』がかなりいると見られていました。“トランプ支持と言ったらバカだと思われる”“もしかして会社をクビになるかも”という理由で公言できず、こっそりトランプを支持していた人たちです。それもあってますます選挙の行方が不透明になった」(前出・ジャーナリスト) ある意味で“究極の嫌われ者”同士の選挙戦になったというわけだ。そんな嫌われ者の新大統領で、アメリカはホントに大丈夫なの?※女性セブン2016年11月24日号■ 三田寛子 中村芝翫を支える貫禄の「あくび姿」■ 長期欠席の愛子さま 「お疲れ」レベルは他の中学生と別次元■ 酒井法子を直撃 「45歳のビキニ写真集」の第2弾は?■ トランプ・米大統領誕生なら日本はついに戦争に駆り出される■ トランプ氏取材した落合信彦氏「会話する価値なかった」

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    トランプ大統領誕生と英国・EU離脱の共通点

    中泉拓也(関東学院大学 経済学部教授) 英国のEU離脱(ブレキジットBrexit)投票もまさか離脱が採択されるとは思いませんでしたが、トランプ大統領の誕生はまた更に予想を外しました。さすがにここまで外すと、ショックを通り越してかえって冷静に頭が働いてきます。そこで分析をし、その原因を考えてみました。1.トランプ候補者に投票した人々 トランプ候補に投票した層として、メディアでよく指摘されているのは、白人男性、中でも低学歴の方です。ペンシルバニア州やミネソタ州など、かつて米国の製造業の中心地でこれまで民主党への支持が堅固だった地域でトランプ候補が多数を獲得し、大統領就任を決定づけました。その意味でも白人男性のトランプ大統領への投票の影響が強かったといえます。 また、CNNやニューヨークタイムズには、投票者の属性調査が掲載されていますが、それによるとやや意外な結果として、白人女性もやはりトランプ候補への投票者が多いことが示されています。トランプ候補には様々な女性スキャンダルが取りざたされましたが、それが強い逆風とはなっていなかったわけです。 更に、アフリカ系の人々の1割にも満たない投票率に対して、メキシコ国境に壁を作るとまで言われたヒスパニック系の3割もが、トランプ候補に投票しています。これは、現在米国に滞在するヒスパニック系にしてみれば、新たに移民が増えて自分の生活が脅かされるより、移民を制限した方が自分たちにとって有利と考えたのかもしれないと言われています。6月7日、トランプ氏の選挙運動に参加した長女イバンカさんとジャレッド・クシュナー氏の夫妻(左)2.トランプ候補者への投票者とEU離脱に投票した人々の共通点 以上が、今回の大統領選挙に特徴的な点です。そして、実はEU離脱に投票した人々と共通の属性があるのです。そもそもEU離脱とトランプ候補支持は、ともに反グローバルという共通項があり、投票者にも共通項があって不思議ではありません。本稿ではその共通項に注目したいとおもいます。 それは年齢構成です。なんと共に45歳未満の有権者では、ヒラリークリントンやEU残留への投票者が過半数なのに対して、45歳以上ではEU離脱とトランプ候補へ投票がともに過半数となるのです。投票者は国も違う全く別の人々なのですが、年齢はともに45歳で別れるのです。(米国大統領選はCNN、英国の国民投票にはLord Ashcroft Pollsのデータより著者作成) CNNとBBCも詳細なグラフを示していますが、そこでも18歳から44歳までと45歳以上で反対、賛成が入れ替わっていることわかります。3.トランプ候補者への投票の理由 EU離脱やトランプ候補への指示について、よく言われているのは、反グローバル主義や、経済格差の広がりへの反発です。国際貿易の進展によって、米国や英国の製造業は何十年もの間打撃を被ってきました。それに対してノーを突きつけたというのが説明です。実際、EU離脱はEUという大きな経済圏からの離脱を意味しますし、トランプ候補もメキシコ国境に壁を作ると言った、保護主義的な演説を多く行なっています。 しかしながら、こういった説明は、年齢別の違いの説明としては不十分ではないでしょうか。というのは、むしろこれから働こうとする若い人は、グローバル化による強い競争にさらされます。それに対して、反対した高齢の人々は、これから年金をもらおう、既にもらっている人たちですから、若い人に比べて、移民との競争や海外への工場移転による雇用の減少のインパクトはむしろ弱まります。 逆に、グローバル化がもたらす富が年金や社会保障の財源になりますから、EU離脱や保護主義で、社会保障の悪化や年金の減額のリスクが増加すると考えられます。実際、トランプ候補はオバマ大統領が導入した貧困層向けの医療保険(オバマケア)の見直しに言及していて、これからまさに医療保険を必要としている低所得層の高齢者に打撃を与える格好になっています。 こうみると、一般に言われている反グローバル主義が理由だとすると、この表の年齢は逆になっても不思議ではありません。では、どういうことが考えられるのでしょうか。 インターネットが普及してすでに20年、インターネットを使いこなし、世界中の人々とリアルタイムに交信することが当たり前の世代には反グローバルという言葉は非常に奇異に感じるのではないでしょうか。グローバル化や世界の一体化というものは、そもそも受け入れるという以前に、既に当然のものになっていると思います。 AIやドローン、iPS細胞や自動車の自動運転といった革新的な技術の実用化や普及さえ間近になった現在、保護主義といった言葉があまりにもレトロな方法に映るのではないでしょうか。そういった若い世代にとっては、保護主義や反グローバリズムは、仮にそれで恩恵があっても賛同し難いと思います。 それに対して、そういった急激な変化を望まない世代が、その流れに反対を投じたのではないでしょうか。ヒラリークリントン候補や英国のキャメロン元首相が明るい未来を説けば説くほど、そういった流れについていけない人々にとっては、むしろ恐怖が増長されてしまったのかもしれません。 当然、過去における強い英米時代の成功体験、ノスタルジー、高齢化による所得格差の拡大... 可能性は色々考えられるでしょう。しかしながら、単なる反グローバルや保護主義、エスタブリッシュに対する反抗だけではないのではと思います。4.再チャレンジの機会を そもそも、現代の市場経済は、機会の平等を厳格に保障するのが理念です。反面、結果の平等を追求しすぎると社会主義になってしまうので、どうしても格差が出来てしまいます。そういった結果の差は、年をとるとともに拡大するのも必然です。そして、成功できなかった年配の層が社会に対して不満を持つというのも十分納得できます。そういう意味で、これは、アメリカやイギリスの話だけでなく、現代の社会全体に発生しうる問題だと考えられるでしょう。 この対策として、人生のスタートラインを何度も設けるのは有効だと思います。再チャレンジで機会の平等をより年齢が高くても保障しようとする訳です。拙稿、高齢化社会へのヒント「どうせなら、楽しく生きよう」でも述べましたが、東大経済学部教授の柳川範之先生が提唱されている40歳定年制は、こういった点でも一つの対策となるのではと思います。【参考記事】■経済学部教員コラム vol.83 2016.09.12経済学科 中泉拓也「柳瀬さんと小網代との出会い」http://keizai.kanto-gakuin.ac.jp/column/column-2161/■経済学部教員コラム vol.47 2014.09.15経済学科 中泉 拓也「藤野さん講演会」http://keizai.kanto-gakuin.ac.jp/column/column-1188/■オリバー・ハート教授のノーベル経済学賞受賞によせて(中泉拓也 関東学院大学 経済学部教授)http://sharescafe.net/49768172-20161014.html■1票の価値は百万円?(中泉拓也 関東学院大学 経済学部教授)http://sharescafe.net/48990722-20160702.html■高齢化社会へのヒント「どうせなら、楽しく生きよう」(中泉拓也 関東学院大学 経済学部教授)http://sharescafe.net/47759756-20160208.html中泉拓也 関東学院大学 経済学部教授

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    トランプ大統領と引き換えに米国民が手にした「危険な劇薬」

    全域に広げることになる。やがてはIS・イスラム国にも核兵器がわたる危険を招いてしまう。受け身の姿勢が日米関係を損なう オバマ大統領を現職として初めて被爆地広島に赴かせたのも、こうしたトランプ発言が背景にあったと言っていい。しかも、アメリカ国内に戦前の「アメリカ・ファースト」主義を蘇らせ、日本やドイツ、さらにはサウジアラビアの核武装を公然と容認して、これらの国々に燻っていた核保有の議論を勢いづかせてしまった。 「日本はアメリカが攻撃されても何もしない。そうならば日米安保条約を再交渉すべきだ」 トランプ候補はこう述べて、日米安保条約を俎上に挙げて、廃棄に含みを持たせる発言もしている。南シナ海のパラセル諸島付近の海域で実弾演習する中国海軍=7月8日(新華社=共同) これらのトランプ発言の本質は、アメリカが西側同盟の盟主であることをやめ、超大国たることをやめてしまうと宣言している点にある。新興の軍事大国中国は海洋大国の旗を掲げて、南シナ海に、東シナ海に進出を試みている。クリミア半島の併合を機に米ロが厳しく対立するなか、その間隙を縫って中国は、南シナ海に7つの人工島を建設し、九段線の内側をわが領域と主張している。そして七つの人工島を造成し、3千メートル級の滑走路を造って軍事基地化を進めている。こうしたなかで、日米同盟の弱体化させてしまえば、21世紀という時代にとめどない混乱をもたらしてしまうだろう。 トランプ次期大統領は「アメリカを再び偉大にする」をキャッチフレーズに掲げ、選挙戦を戦った。だがアメリカがなお偉大であるためには、世界で尊敬されるリーダーでなければならない。戦後のアメリカは、一時の自国の利益よりも国際社会のために行動してきた。それゆえ、アメリカを再び偉大にしたいと考えるなら、国際社会、とりわけ自由の価値観を分かち合う国々との連携が何より大切だろう。日米同盟こそ新政権が確かな船出をするための試金石となるだろう。 日米同盟は軍事的な結びつきだけではなく、理念の同盟である。トランプ次期大統領は東アジアの要石、ニッポンと絆を強め、日本もまたトランプ次期政権に同盟のあるべき姿を率先して示す時である。日本は大胆に行動を起こす時だろう。 新しいアメリカの政権は、親日か、反日か。そんな心配をする受け身の姿勢こそが、日米関係を損なう元凶だといっていい。中国が海洋進出を図る東アジアの海を波静かなものにするため、日本はいまこそ主導的な立場をとるべきである。トランプ次期政権の出現を自由という至高の価値を日米で分かち合う太平洋同盟をさらに揺るぎないものにする好機としてほしい。

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    世紀の悪夢か「トランプ劇場」は終わらない

    まるで悪夢でも見ているようだ。米大統領選に勝利したトランプ氏の満面の笑みとは裏腹に、日本の投資家はどん底に突き落とされた気分だっただろう。米国民の「選択」は世界の混迷を一層深めるのか、それとも劇的な変化をもたらすのか。「トランプ劇場」はまだ終わらない。

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    どうなる「トランプ円高」 毒舌の裏にある4つのホンネ

    田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授) 世界をトランプ・ショックが急襲した。土壇場の予想では、クリントン氏優位だったが、開票が進むと、トランプ氏が強いと思われていた白人労働者層だけではなく、黒人層などを含む広汎な中間層の支持を手堅く集め、まさに「トランプ劇場」はその劇的な大団円を迎えた。このショックをもっとも受けたのが、開票中に市場がオープンしていた東京市場で、株価は大きく下落、為替レートは急激に円高へと傾いた。米大統領選の開票でトランプ氏の優勢が伝えられる中、一時1000円以上値を下げた日経平均株価を示すボード=11月9日午後、東京・八重洲 トランプ氏の政策は、大きく4点が注目されている。TPP反対に表れている保護貿易主義、メキシコなどからの不法移民への厳しい対応だ。さらに日本を含む「同盟国」への安全保障の経済的負担にもしばしば言及している。また保護主義的な主張と連動しているのが、連邦準備制度理事会(FRB)への批判的な姿勢だ。当初、トランプ氏は金利引き上げに意欲的だったり、財政再建路線を採用するなど、日本の民進党などに近い経済政策のスタンスに思えた。 しかし今回の支持基盤が経済的不安を抱えている中間層や労働者層でもあることから、FRBを批判するにせよ、現状の利上げスタンスの変更を要求することになるのではないだろうか。むしろ経済の現状が「悪い」と認識して、持続的な金融緩和政策を求めたり、その要求を実現するためのFRB改革に傾斜する可能性が大きい。また金融政策と連動して、財政政策もインフラ投資などを増額させるなど一連のポピュリズム的政策を採用するだろう。 保護主義、インフラ中心の拡張的財政政策、そして持続的な金融緩和政策などをトランプ政権が採用すれば、まるでそれはジョン・メイナード・ケインズが1936年に書いた『一般理論』の主張と似た「危機対応型」の経済政策かもしれない。もちろん保護主義の見直しは、ブロック経済化の加速のような過激なものにはならないだろう。トランプ氏を支持した人たちへの秋波程度になるのではないか。ただしTPPの実効性に大きな障害が出現することは不可避であろう。 いろいろな思惑とトランプ氏の政策見通しの悪さから、当分の間世界経済は不安定化し、日本経済も大きく変動するだろうが、筆者は日本が独自で経済政策さえきちんと対応すればそれほど深刻にはとらえていない。しかし泡沫候補でしかなかった人物が、ここまで世界経済に大きなショックを与える存在になることは、彼が立候補を表明した1年半前は誰も想像していなかった。トランプ・ショックだけじゃない、世界経済もうひとつの関心 現代の資本主義は、「イベント資本主義」ともいわれている。何か政治・経済的な問題が世界のどこかで発生すると、それが引き金になり、グローバルなリスクとなって顕在化する。実際には各国の株価暴落や、為替レートの急変として現れる。それによって人々の生活も非常に不安定となってしまう。世界の投資家たちがリスクのある投資態度をとることを「リスク・オン」、その反対にリスクを回避する投資態度を「リスク・オフ」といっている。 この世界中の投資家たちが「リスク・オン」と「リスク・オフ」のいずれに傾斜するかは、最近ではアメリカ大統領選挙とアメリカの金融政策によって大きく左右されてきた。そして今日もまた、「イベント資本主義」の性格がよく表れた相場になった。日本経済にはもちろん短期的には不運なことといえるだろう。(画・小鳥こたお) またトランプ・ショックと同時に、世界経済の関心は、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)が年内に利上げをするかどうかにも集まっている。FRBのフィッシャー副議長は、雇用情勢を受けて利上げの根拠が強まったことをコメントしている。フィッシャー副議長は早期利上げをけん引している人物なので割り引きが必要だが、いずれにせよFRBの政治力学的にも利上げは確実である。 問題は、それが次回のFRB会合が行われる12月14日なのか、あるいは年をまたぐかの違いだけである。トランプ勝利による影響を読むのは困難だが、トランプ氏の主張は金融緩和の継続に行き着く可能性が高いので、FRBとしてはいまのうちに利上げしたいだろう。それは利上げのための利上げといえ、「政治的」な色彩のものだ。 今後の為替レートの動向は、日本とアメリカの金利差や日米マネタリーベース比率などで判断する方法があるが、より根源的なのはもちろん日本銀行とFRBの金融政策のスタンスの相違である。FRBはアメリカの雇用情勢の改善を受けて、それが「完全雇用」であると判断しての利上げスタンスである。対して、日本では完全雇用には遠い状況にある。そのため日本では金融緩和の政策スタンスが今後も継続していく。この両国の金融政策のスタンスは、ここ1年近く変更はないはずだ。そのため、実はFRBが今回利上げしてもそれは単なる「イベント」でしかない。 だが前述したように、ここ数年の世界経済は「イベント資本主義」化の様相を強めているので、この利上げにより円安ドル高により傾斜する蓋然性は大きい。このことは日本経済にとっては(輸出増加や企業のバランスシート好転など)好ましい影響を与えるだろう。ただアメリカ経済は今後も追加的に利上げが行われる可能性は低いという見方も有力だ。雇用が改善していても必ずしも労働参加率の上昇を伴っていないし、またインフレ率も目標に比較して低いままだ。問題はトランプ・ショックよりも国内にある つまり2007年以降からの「大停滞」を十分に脱していないまま、金融政策スタンスが引き締め傾向にあり、それがアメリカ経済のパフォーマンスを実力以下のままに低迷させているという指摘は根強いものがある。またたとえ回復傾向にあったとしてもすでにピークアウトであるという見方も同じように有力だ。これらの事実は、トランプ政権の金融政策に対する見解にも大きく影響しそうだ。「政治的」な利上げが年内に行われても、アメリカ経済の経済指標の低迷や、制度改革などの政治的圧力などを受けて継続的な利上げにはつながらないのではないか。官邸に入る安倍晋三首相=11月9日午前、首相官邸(斎藤良雄撮影) 日本経済をみてみると、「リフレ派は敗北した」などという悪質なデマが、アベノミクスを批判したがるマスコミでもてはやされている。しかし雇用状況をみれば、ほぼ20年ぶりの改善が継続中だ。雇用が改善し続ければ、もちろん経済成長率も上昇していく。また最新の統計でも明らかなように、雇用が改善すれば、その帰結として経済格差が縮小し、また相対的な貧困率も改善していくだろう。 問題はこの流れを止めてはいけないことだ。(経済にとってはそれがすべてであると言っても過言ではない)雇用状況の改善を異常なほど無視する勢力が、マスコミだけではなく、論壇やもちろん政治勢力にも存在している。特に銀行や国債市場関係者には、根強いアベノミクス批判勢力が存在している。その「金融マフィア」的な勢力にとっては、日本銀行のマイナス金利や国債の一層の買い取り増加は、自らの収益モデルを破壊するものと映るのだろう。だが、一部の「金融マフィア」の強欲的な姿勢に配慮して、国民経済をなおざりにしてはいけない。 トランプ・ショックはしばらく続くだろう。だが、問題は海外ではなく国内にある。より一層の金融緩和、財政政策の拡大を行い、さらに完全雇用、賃金上昇を目指して政府と日銀は協力すべき時だ。

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    日本経済をどん底に突き落とすトランプの「米国中心主義」の現実味

    からである。 オバマ氏は議会や一部世論からの強い圧力があったにもかかわらず中東問題への無関心を貫き、日米関係についても冷淡な態度を取り続けた。オバマ氏とトランプ氏は正反対の存在に見えるが、自国中心主義的という点では共通点が多いのだ。日本にとっても険しい道 この点で考えると、TPPとNAFTAを比べた場合、トランプ氏が妥協する可能性が高いのは米国市場との関連性が高いNAFTAであってTPPではない。トランプ氏が自らの公約実現をアピールする材料として、TPP撤退を打ち出してくる可能性は否定できないだろう。ある程度の妥協が図られるにしても、関税撤廃スケジュールの変更や米国企業の日本進出条件などにおいて、日本側が不利になる要求が出てくる可能性は十分にある。 トランプ氏の大統領就任は日本を含め各国経済に大きな影響を与えることになるが、米国自身の経済は意外と堅調かもしれない。先ほど説明したように、米国は現在、非常に恵まれた環境にあり、長期的な成長余力が高い。しかもトランプ氏は、クリントン氏を上回る巨額のインフラ投資を公約として掲げている。これが実現した場合、米国経済は順調に推移する可能性が高い。 トランプ氏は、自著で1兆ドル(約102兆円)という巨額のインフラ投資を主張しており、8月にはクリント氏が主張する金額の少なくとも2倍の金額を投じるとも発言している。クリントン氏は総額で2750億ドルの投資を公約に掲げているので、この2倍以上ということになれば約6000億ドルである。5年で均等に支出した場合、各年度における直接的な経済効果は1200億ドルと計算される。 米国のGDPはすでに18兆ドルと日本の4倍近くもあり、インフラ投資が直接的にもたらす効果はGDPの0.7%程度しかない。だが、インフラ整備は今後の成長の原動力となるものであり、労働者の雇用が増えるなど消費にも好影響を与える。現状の米国経済において投資を拡大するメリットは大きいだろう。 もしこの規模の財政出動となれば国債の追加発行は避けらないので、金利は上昇する可能性が高く、この部分だけを取り上げればドル高要因となる。一方、トランプ氏は為替水準についてたびたび言及しており、ドル高が米国の労働者を苦しめていると主張している。この点ではトランプ氏の大統領就任はドル安要因といってよいだろう。当初は市場のショックなどもありドル安が続くことになるが、財政出動の規模が見えてくる段階で、為替の水準も落ち着き所を探る可能性が高い。一時1ドル=101円台をつけた為替相場=11月9日、東京都内 穏やかなドル安が定着すれば、米国経済にとってはプラスである。少なくとも経済的に見た場合、トランプ氏の大統領就任は、日本など世界各国にとっては険しい道となるが、米国にとって悪い話ではない。トランプ氏の主張する米国第一主義はまず経済面において実現するのかもしれない。

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    トランプ政権誕生! 戦後日本は対米自立から「自主防衛」の新時代に

    古谷経衡(文筆家、著述家)トランプ候補(ロイター)トランプ政権誕生は「対米自立」「自主防衛」を実現する大きな日本のチャンス 大番狂わせである。トランプ政権が誕生することが「ほぼ」確実になった。もっとも混乱・狼狽しているのは何より、日本の政権与党および親米保守であろう。私は共和党予備選挙の終盤でトランプが指名を確実にした今年春ごろから、「逆張りトランプ論」を展開してきた。参考記事(日本でじわり広がる”トランプ大統領”待望論―対米自立か隷属か―2016年3月27日)、(ヒラリーorトランプ、どちらが大統領でも日本はイバラの道 2016年11月7日)。 私の提示してきた「逆張りトランプ論」とは、簡単にいうと以下のとおりである。 つまり、到底トランプ氏には大統領としての資質はない。ヘイト的言説も許容できない。しかし「対米自立」「自主防衛」という、ある種の保守非主流派たる「反米保守」の立場から、短期的にはトランプ政権誕生で混乱するも、長期的にはアメリカからの自立を促すトランプ政権の方が、日本や日本人にとって良薬である、ということだ。この理論はほうぼう、私が自著『草食系のための対米自立論』をはじめ、繰り返しテレビやラジオ媒体等でも開陳してきたものである。 ところが、それはあくまで「もしトランプ政権が誕生したら」という、可能性の乏しい机上の空論を基にした「思考実験」の類であって、実際にトランプ政権が誕生するという可能性については、十中八九ないであろう、という立場をとっていた。この理由は、内外の大方の政治予想と同じである。 日本のリベラルは(いやアメリカ国内や他の先進国のそれも)、トランプのヘイト的な言説ばかりを取り上げて禁忌し、白人労働階級の怒りを軽視していた。結局は、知性が勝利すると思い込んでいた。それはインテリの大きな奢りであり、また大きな間違いであった。アメリカの白人層、とくにラスト・ベルト(五大湖の周辺とその南東部一帯の旧製造業地帯=ミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシン、オハイオなど=で、民主党の強力な地盤だったが、今回軒並みトランプが勝利した)に住む人々、そしてその中でもさらに片田舎(デトロイトやクリーブランドのさらに奥のほう)は私たちが想像するより、もっとずっと病んでいたのである。 言い訳するわけではないが日本人にラスト・ベルトの実態がわかるはずがない。日本の観光客やビジネスマンが行くのは、せいぜい西海岸と東海岸、そしてディズニーのあるフロリダとハワイとグアム・サイパンくらいのものだ。そして、前提として日本の製造業はラスト・ベルトほど崩壊していない(むしろ、会社によっては結構調子が良い)。 他方、日本の親米保守(主流派)は、トランプ政権が誕生して日米同盟が棄損されること「のみ」を恐れ、「ヒラリー幻想」ともいうべき願望(通常、日本の親米保守は親共和党だが、今回ばかりはトランプよりもましという理由でヒラリー支持に回った>詳細は拙記事参考のこと)に縋りついたのである。この「ヒラリー幻想」については、米大統領選挙直前でも、一部の保守派から提示されてたが、大きな流れにはならなかった。すでに高騰する防衛関係銘柄「防衛予算増」「自主防衛」を見越し、すでに高騰する防衛関係銘柄 日経平均は、今次選挙の愁眉のところであったフロリダ州(選挙人29名)をヒラリーが失陥するのが濃厚となったところから急落し、一時1000円(11月9日)近くも落とした。これは当然トランプ政権誕生による強烈な保護主義による日本輸出産業の打撃、トランプ政権誕生による先の見えない不安定要素を織り込んだものとして、多少恐慌の感はあるものの、道理である。米大統領選の動向が注目される中、乱高下し下げ幅が一時1000円を超えた日経平均株価を示すモニター=9日午後、東京・東新橋 しかしと同時に賢明な投資家は、すでに鋭敏にトランプ政権誕生を念頭に入れ、トランプ政権による日米同盟空文化による在日米軍のさらなる縮小や撤退の方針に備え、防衛に関係する銘柄を買いあさっている。つまり日本が強制的に自主防衛せざるを得ないことを直感的に感じ取っているのだ。 この大荒れの相場の中でも、東京計器 (7721)、石川製作所 (6208)、豊和工業 (6203)のみは、値上がり銘柄のTOPに躍り出ている。いずれも防衛・軍事関係産業で、トランプ政権誕生による日米同盟弱体化により、是が非でも日本が防衛予算を増やさざるを得ない近未来を織り込んでいるとみて間違いなかろう。戦後日本の終わり トランプにより強制的に「戦後レジーム」終了 戦後日本は、吉田ドクトリンを忠実に守ってきた。それは「親米」・「軽武装」・「経済重視」の三点セットである。むろん、自民党の中の派閥によりこの度合いに幅はあるが、基本的には現在の安倍政権も、この流れから大きく逸脱することはなかった。しかし、公然と「日本から米軍を撤退する」等と宣言してはばからないトランプが大統領になると、この吉田ドクトリンの前提たる「親米」の部分が、向こう側から拒否されているのだから成立しなくなる。 そして「アメリカとの蜜月」を前提としたアメリカからの庇護を前提とした、「軽武装」路線も当然成立しなくなる。「憲法を改正して吉田ドクトリンを破棄する」ことがある種の「戦後レジームからの脱却」なのだと保守派・改憲派はこれまで叫んできた。 すると、「戦後レジームからの脱却」とは、日本側の努力ではなく、唐突に、トランプによって成就することになる。こうなるともっとも狼狽するのは、ヒラリー政権誕生によって「日米蜜月」が、まがいなりにも続くと考えてきた政権与党や、親米保守(保守主流)である。彼らは今、衝撃を通り越して恐慌しているだろう。 トランプ政権誕生によって、戦後日本がひっくりかえる。いやもうひっくりかえってしまった。アメリカの同盟国、つまり韓国やオーストラリアも同様であろうが、とりわけアメリカに庇護を求める傾向にあった日本ほど、トランプ政権誕生による衝撃の度合いは大きい国はないであろう。進む憲法改正気運進む憲法改正気運 しかし、トランプ政権誕生による「アメリカの庇護の終わり」は、元来保守派が夢想してきた対米自立、自主独立、憲法改正の機運を、たちまち高めることになるのは自明である。これは日本にとって大きなチャンスと捉えることができる。「日本はアメリカの属国だ」などと様々な方向から揶揄され、自嘲気味に日本人はそう自らを呼称してきた。そして戦後70年以上、この国の保守派・右派は、常に日本側からの努力によって「その属国の鎖」を断ち切ることを夢想していた。 が、その「属国の鎖」は、日本側からの努力ではなく、アメリカ側からの唐突の終焉によって断ち切られるだろう。「とりあえず日米同盟を強化し、漸次的にわが方の自主的防衛力を高めていく」などと悠長なことを、親米保守の多くは思っていた。だが、そんな夢想はもう通用しない。 日本は、対中(対北朝鮮)抑止力を自前で(どの程度を自前で用意するのかは不明だが)早急に準備し、政治も外交もアメリカに頼ったり、アメリカの庇護を求めることなく、自分の意志で決めることを強いられる時代に突入するのだ。繰り返すように、これは困難な道だが、しかし長期的には日本や日本人にとって乗り越えるべき試練なのである。 当然、トランプ政権が誕生しても、現実的には議会や共和党穏健派との協力は不可欠なので、これまでの言動が軟化する可能性は十分にある。だが、明らかに大きな方向として、トランプ政権下、アメリカは日本への関与を減らすだろう。「中国が攻めてきたから助けてほしい?知ったことじゃない。自分の国は自分で守れよ」と、トランプならそう一蹴してはばからないだろう。 もう北朝鮮のミサイル発射にも、中国の海洋進出にも、あらゆる外交課題について日本はアメリカに頼ることはできない、と考えて臨むよりほかない。日本の後ろにもうアメリカは無いのだと覚悟するよりない。もう与野党で馬鹿な議論、誹謗合戦をしている暇はない。日米同盟を経済的な損得で考えることも難しくなった。挙国一致でアメリカを頼らない「自主防衛」の構築を、たとえ防衛費の負担が多かろうと、急がなければならない。 しかしこれは、当たり前のことなのだ。自分の国のことを他国に憚らず自分で決め、自分で守るのは、トランプ(大統領)に言われることなく、自明の理屈なのである。 アメリカに頼って、アメリカに守られながら生きる日本の時代、つまり「戦後」は、2016年11月9日のきょう、終わったのである。(2016年11月9日 Yahoo!ニュース個人「だれ日。」より転載)

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    トランプ大統領誕生「静かなる田舎者」がアメリカを変えた日

    山本一郎(個人投資家・作家) 山本一郎です。お祭り騒ぎが好きです。 今日11月9日、開票が行われたアメリカ大統領選挙ですが、先ほどドナルド=トランプ陣営が事実上の勝利宣言を行ったとのことです。また、議会選挙も共和党の勝利に終わりまして、アメリカ政治は一風変わった「トランプ大統領」の選出をもって歴史的な転換点を迎えることになりそうです。 すでに各種メディアでは投票結果に対する属性別の内容から「アメリカ人の真意」を知ろうと結果報道を開始すると思われますが、数字だけ見ていきますといろんな統計モデルで事前の投票予測をかいくぐる形で各種調査機関は「ヒラリークリントン女史優勢」を伝えていました。選挙人の予測で80人近い”読み違え”をする調査機関もあったようですが、その背景には”静かなる地方”の地滑り的な共和党支持、または内向き志向を選挙結果からは読み取れます。で演説するトランプ氏=11月7日、米ノースカロライナ州 事前予想では「トランプさん支持者はどの政策を支持しているのか」の分析が進んでいたようですが、実際のところ、投票前日に発表された調査結果でもトランプ優勢とみられるこれらの赤い地区でも「クリントン優勢」と見られる箇所が多かったのが特徴です。 これらが投票日になって突然トランプさんに2.8%以上の得票の下駄を履かせる事件があったか、と言われるとこれといってないわけで、つまりは「最初からトランプ支持者か、ヒラリー女史に投票をしないことは決めていた」有権者がいた、ということになります。 逆に、ヒラリー女史に投票した人たちが多かった地域は、テキサス州、フロリダ州などを除き、明らかに都市部が中心です。都市に住む穏健なリベラル層がヒラリー女史に投票したのかなと思いきや、政治的コミットの強い人がヒラリー女史を支持し投票の中心になったと判断がつくデータが特になく、現在まだ混沌としています。 ここで強く鼻につくのは、いわゆる「負の支持率」、すなわち「ヒラリー女史を勝たせたくない」有権者対「トランプさんを勝たせたくない」有権者の争いです。まだすべての地区を解析したわけではありませんが、ヒラリー女史を強く支持する層よりも、トランプさんを絶対勝たせたくないと回答する層が都市部に多く、これらのほうがヒラリー支持者よりも固くヒラリー女史に投票する傾向が強く見受けられます。逆もまたしかりです。 そうなると、今回のアメリカの大統領選挙とそれに伴う議会選については、実は壮絶な譲り合い対決なのではないかとさえ感じるところです。選挙中盤でも「トランプさん支持者は強力な反知性主義者ではないか」という中傷が都市部を中心に、またSNSでも盛んに喧伝され、TwitterやFacebookなどでも多数の声が上がり、かなりの部分がクリントン陣営の工作だったと思われますが、実際の地方の得票の流れを見る限り、ほぼ完全に地滑り的にトランプ票になっております。 それも、トランプさんを熱烈に支持する層よりもヒラリー女史を嫌う層がトランプさんに投票したようです。ネット系の調査会社でも、政治的発言において有権者のメジャーなスタイルは「トランプさんは好きではないけど」という前置きとなる文節が多数計測されるなど、トランプの過激な姿勢を支持することは留保しつつヒラリー女史を支持しないことを説明する感じの人たちがネットでは多かったのでしょうか。地方在住者の圧倒的反乱 その点では、トランプさんに投票した人が支持するトランプさんの政策上位に「移民反対」「国際化反対」「普遍的人権への距離感」といった、従来のアメリカのナショナルインタレスト(国益を守るために必要だとされる概念)が入っていることに気がつきます。ある意味で、世界に冠たる経済力と軍事力を持つアメリカを実現する政策に対して、アメリカ国民がNOと言った、という話になります。 もしも、これらが本当にトランプ”新”大統領の政策に組み込まれることになるとTPPが批准されないどころか、移民やグローバリズム、人権に関する考え方は大きく後退する政策が打ち出される可能性さえもあります。とりわけ、アメリカの行き過ぎた人権主義、ポリティカルコレクトネスといった概念は、アメリカの地方(田舎)に住む有権者からすると、息苦しく、言いたいことも言えない世の中で、気の合う人たちとだけ地域やネットで交流するという、文字通り分断されるアメリカを体現するようなバックグラウンドになっているのかもしれません。 トランプさんを支持したり、ヒラリー女史を毛嫌いした有権者が選挙を地滑りさせたのは、これらの「繁栄から取り残された白人層」ばかりではありませんが、いままでの理想主義や、ある種の綺麗事に対する地方在住者の圧倒的反乱であった、とも言えましょう。何しろ、選挙人を落としたとはいえカリフォルニア州でもほかの週でも、予測されていたよりもトランプさんに投票していた人の所得は低くありませんでした。米共和党全国大会で演説する同党大統領候補のドナルド・トランプ氏 =7月21日、米オハイオ州 これから多くの論考がこの大統領選を巡って出てくるかと思いますが、どうも直近では、理想を実現しようとした共産主義が行き詰まってソビエト連邦が崩壊したのと同じく、異なる立場の人たちを融合しようという理想を掲げて人権やポリティカルコレクトネスを追い求め、世界の標準になろうとしたアメリカのリベラリズムを行き詰まらせてしまったのかもしれません。 世界の指導的立場になるために無理な背伸びをするのはやめ、もっと内向きに、現実的な政権運営を求めているのがいまのアメリカ人の有権者の総意のようにも感じられますが、もう二週間ぐらいすると分析も進み、もっともっといろんなことが分かっていくでしょう。 私個人としては、どのような結論であろうとも、民主主義である以上は結果を尊重し、受け入れなければならないと思います。それが良いとか悪いとかではなく、現実として受け止め、それをどのように咀嚼して日本社会が対策を打っていくのか、充分に議論していくべきだろうと考えます。 とりあえず、ロシアとの関係もそこまで劇的に変えられそうにないならば、このアメリカ大統領選の選挙結果で日本国内が解散総選挙なんてことはまずないだろうと思ったりもしますが、まずはトランプ陣営もヒラリー陣営もお疲れ様でした。(Yahoo!個人より2016年11月9日分を転載)

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    トランプ氏の功績とドゥテルテ大統領の共通点

    西村眞悟(前衆院議員) フィリピンの大統領ロドリゴ・ドゥテルテについて書いた以上、アメリカの大統領候補ドナルド・トランプについても書いておきたい。  二人とも、土着の顔をして、年齢は七十一歳と七十歳と既に成熟しているのに、不良少年の様な、予想のつかないことを言うが、後で考えると国民の支持が集まるのももっともだと思わせる点で、一貫している。支持者を前に演説するロドリゴ・ドゥテルテ氏=5月7日、マニラ(共同) 土着の顔とは、フィリピンのドゥテルテは、上流階級のスペイン系やシナ系ではなくミンダナオ、スペインと三百年間の「モロ戦争」をして次ぎに一九一五年までアメリカに抗戦していたミンダナオの顔だ。 アメリカのトランプは、映画のバックトゥーザフューチャーに出てくる成金になった乱暴者の顔だ。フィリピンのドゥテルテ氏は、既に大統領に就任していて、法治を無視した麻薬犯罪者の現場での射殺を公言し実行しているのに、八十パーセントという国民の支持を得ている。  それは、大多数のフィリピン民衆が、放任され多発する犯罪被害に苦しみ、上流階級が麻薬密売による巨額の資金の恩恵を受けていることを知っているからだ。 他方、トランプ氏は、白人ブルーカラーの支持を受けて予備選挙を勝ち抜いてきたが、 白人ブルーカラーの支持層が、そのまま大統領選挙において大金持ちの不動産成金の彼を支持し続けるかどうかは分からない。  とは言え、競争相手のヒラリー・クリントン氏にこれから支持を伸ばす要因があるのかと言えば、ナイ、としか言えない。従って、ドナルド・トランプ大統領誕生の公算大である。 そこで、その彼ら二人が、それぞれ、国内で何をしようが内政のことなので構わないが、国際状況に関して何を言っているのかについて記しておきたい。 二人に共通しているのは、ええ歳をしているのに、国際情勢に関する理解が欠如しているということだ。 まず、南シナ海に関して、アメリカ軍がベトナムから撤退した一九七二年に中共軍がすかさず、ベトナム東方沖の西沙諸島に軍事侵攻して実効支配を確保したこと、また、アメリカ軍がアジア最大の海軍基地であるフィリピンのスービック基地から撤退した一九九一年十一月直後に、 中共軍がフィリピン南西沖の南沙諸島に軍隊を侵入させ、以後、今日の海を埋め立てて軍事基地を構築する現在まで領有を続けていること、つまり、ベトナムやフィリピンが現に中共の侵略を受けていることを、知らないかのようなドゥテルテ大統領の反米と対になった対中接近の言動は、自国を裏切ると共に、我が国に対する脅威を呼び込むものと言わざるを得ない。 次ぎに、トランプ大統領候補は、アメリカの防衛ラインを一体何処かと思っているのか。防衛ラインの意識すらないのか。アメリカの防衛ライン、それは、オホーツク海と西太平洋ではないか。共に、我が国の北と東に沿った海である。  この二つの海域に、ロシアと中共が自由に原子力潜水艦を潜航させれば、アメリカ本土の如何なる大都市も、ロシアや中共の核弾頭ミサイル(SLBM)の射程に入る。  従って、アメリカの太平洋を守る第7艦隊はもちろん我が国も、我が国自身を守ると同時にアメリカをも守っているのである。  それにもかかわらず、アメリカのアジアに展開する軍事力は、アメリカ本土防衛とは無縁の無駄な軍事力であり、日本はただ乗りしている、かの如き発言をするトランプ候補は、国際情勢と国防に関して無知である。 この発想のままで大統領になれば、国の安全を無視して、金銭取引だけに関心を示して強盗(中共)とも取引をする成金ビジネスマンが大統領の地位をハイジャックしたようなことになり、アメリカの国益崩壊をもたらすのみならず我が国を含む東アジアを中共の覇権下に売り飛ばしかねない。 以上の通り、ドゥテルテ大統領もトランプ大統領候補も、我が国にとって、最悪の国際情勢を呼び込む可能性が大いにある予測しがたい人物である。  しかし、彼らの出現が、我が国に関してプラスに作用する点も指摘しなければならない。   それは、彼らが、我が国の自立、則ち、戦後体制からの脱却を促していることだ。我が国と国民は、独立自尊の体制、つまり、我が国は、他国の大統領が何者であっても、自力で国家の存立を確保する体制を確立しなければならない。このことを、ドゥテルテ及びトランプ、特に、トランプが、我が国に思い知らせてくれている。 例えば、歴代アメリカ大統領は、我が国やNATOに「核の傘」をかけて核攻撃から守っていると言っていた。ところが、トランプは、アメリカの都市に対する核攻撃の危険を冒してまでも他の国を守ることはできないと言っている。 つまり、アメリカの「核の傘」はないと言っているのだ。「アメリカの核の傘はない」、これは、かつて、フランスの核保有への動きを阻止しようとするアメリカのケネディー大統領にドゴールが言った言葉である。 ドゴールは、ケネディーに言った、 「ニューヨークやワシントンに、核爆弾が落ちる危険を冒してアメリカはフランスを守れるのか」と。その時、ケネディーの顔は蒼白になったと伝えられている。ドゴールの言ったことが図星だったからである。 今、フランス人ではなく、アメリカに、「アメリカの核の傘はない」と言う大統領が出現しようとしている。従って、我々は、ドゴールのように! 自らの力で、如何にして核の攻撃を抑止するか、 この死活的な国家的課題に目覚める時が来た。私は、この時を告げてくれた土着の顔をした正直者のトランプを、高く評価する。

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    落合信彦・陽一氏の親子対談 劣化する世界を生き抜く知恵

     世界中を飛び回り、取材し続けてきた国際ジャーナリストの父・落合信彦氏と、最先端の研究者として世界から注目されているメディアアーティストの息子・落合陽一氏。  29歳の若さにして筑波大学助教を務める息子は、父に勧められ、幼い頃よりニーチェからカミュ、キルケゴールまで哲学や文学、歴史の古典に親しみ育った。そして、父とは畑違いの分野で世界的な才能を発揮している。父は、常に世界の現場からリアルな人々の姿、リアルな国の姿をレポートし続け、その著作は最新刊『そして、アメリカは消える』に至るまで130冊以上に及ぶ。  この2人の目に、未来はどう映っているのか。史上初の親子対談──。 〈2人の話題は、直近に迫っていたアメリカ大統領選と、アメリカが抱える問題から始まった〉 落合信彦:この9月にアメリカで大統領選について取材してきたばかりだけど、ホームレスが増えていて、格差が拡大していた。オバマ政権の8年間で、かなり格差問題が広がったと言える。 落合陽一:僕も最近、出張でアメリカに行く機会が多いんだけど、確かに格差がものすごく広がっていると感じる。  例えばシリコンバレーがあるサンフランシスコやボストンは高学歴の勝者が集まる街になっていて、景気がいい。サンフランシスコは、安全な地区に住もうとするとワンルームの家賃が月3000ドル(約30万円)もする。1年間の生活に必要な賃金が1000万円と言われていて、普通の人には住めない。上流階級の人ばかりが集まっている。一方で、それ以外の街を見ると庶民の生活は全然よくなっていない。 信彦:もともとアメリカには中産階級が80%以上もいたんだ。それが今では、30%ほどに落ち込んでいる。 陽一:お父さんは(最新刊の)『そして、アメリカは消える』の中で、ドナルド・トランプとヒラリー・クリントンの戦いを「絶望の大統領選」と言っていて、「アメリカはこの50年、劣化し続けてきた」と指摘しているよね。でも、「劣化」はアメリカに限ったことじゃない。僕は、その意味ではイギリスも劣化しているし世界中が劣化していると思う。 信彦:イギリスはEUから離脱する選択をした。それでポンドは大きく下落して、国が混乱した。アメリカはオバマが「世界の警察官」の役割を放棄して、中国やロシアが好き勝手なことを続けている。世界中が劣化して「ジャングル化」してしまったんだ。 米フロリダ州ペンサコラでの集会で、大統領選の共和党候補トランプ氏を「スーパーマン」になぞらえたTシャツを着た支持者=11月2日陽一:ただ、経済的な面からは、アメリカは「劣化」していなくて成長し続けているとも言えるんじゃない? 信彦:経済と民度は違う。ウォール・ストリートはカネのことばかりを考えている。ヒラリーはウォール・ストリート向けの講演会を開いて、1回2000万円も3000万円も講演料を受け取っている。  経済は成長しているけれど、反面、カネの亡者がアメリカを支配してしまったんだ。ヒラリーやトランプだけではなくて、アメリカの政治家がみんなカネ、カネ、カネになっている。心あるアメリカ人たちは皆、トランプにもヒラリーにも投票したくないし、もう政治には期待できないと言っていた。陽一:アメリカの格差拡大は、移民の流入が増えて、多民族国家化が急激に進んでいることも大きいと思う。  以前の「強かったアメリカ」は、多民族ではあったけれども上部構造が基本的には白人社会だった。もちろん功罪はあるけども、その上で「ケネディ」とか「レーガン」といった、国を象徴するようなリーダーがいたよね。それが、多くの移民が入って国の“オーラ”が変わったように見える。信彦:オバマは多くの移民を入れて、彼らに多額の税金をバラ撒いた。それによって中産階級が没落した。オバマの罪は大きい。 陽一:『そして、アメリカは消える』では50~60年かけてアメリカが劣化してきたと書かれているけれど、僕は、アメリカに限らず世界の劣化は「インターネットの登場」の影響が大きいと思う。  例えば日本でも、1980年代や1990年代はもっとアメリカ大統領選のニュースや難民問題などが報じられて、多くの人々がそれについて考えていたはずだよね。でも今は、そんなことはない。大統領選について報じられるとしても、トランプなら「女性問題」だし、ヒラリーなら「メール問題」。“スキャンダルトーク”ばかりになっている。演説する共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏と支持者ら=10月13日、オハイオ州シンシナティ 信彦:子供の口ゲンカのような大統領候補者討論会も、面白おかしく取り上げられるばかりだったな。それをワイドショーのように楽しんでいるんだから、国民のレベルも劣化してしまった。  テレビは芸能人の不倫とか、誰と誰が付き合っているとか、そんなことばかり垂れ流している。メディアが国民を劣化させているとも言える。  そもそも、新聞社やテレビ局の社長や政治部長が、安倍と頻繁に会食していることからしておかしいだろう。アメリカなら絶対に許されない。日本の新聞社やテレビ局はそうやって政権に飼い馴らされることを喜んでいる。そんなメディアに、政治を監視することができるわけがないんだ。 陽一:僕は、インターネットの登場であらゆるものがポピュリズムに支配されるようになったと思う。大衆からのフィードバックがすぐ返ってくるようになって、目の前の数字や人気ばかりを追うようになった。  極端に言えば、みんなiPhoneの新製品やグーグルの新サービスのほうに興味を持って行かれて、政治は完全に対岸の火事。ネットで流れているニュースを見ると、そんなのばっかり。iPhoneは触れるけど政治は触れないから。それがポピュリズムの結果じゃないかな。  お父さんの本で書かれているみたいに、「アメリカの未来はどうなるのか」「世界はどうなっていくのか」ということを本気で考えるような報道も風潮もなくなった。でも僕は、それは劣化じゃなくて人類の「適応」と言えると思うんだよね。 【関連記事】 元外交官が「米国にとってネットは言論操作の場所」と説く書 米の低レベル高校生、殺人事件が日常の街等をリポートした本 日本在住34年米教授 日本のエロ本を“世界的下品”と形容 ディズニーランド アニメがメインコンセプトではないのだ 米のピザ配達員の人件費が安いのはチップ支払う習慣あるため

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    政治のポピュリズムと経営のポピュリズム

    日沖健(経営コンサルタント) 最近、政治の世界をポピュリズムが席巻している。ポピュリズムには色々な定義があるが、政治家が大衆に迎合する政治的傾向を意味する。  イギリスでは、6月の国民投票でEU離脱が決まった。EU離脱は経済的損失が大きいにも関わらず、移民排斥などジョンソン元ロンドン市長らによるポピュリズムが支持を集めた。アメリカ大統領選でも、同じように移民排斥を訴えるトランプ氏があれよあれよという間に共和党候補の指名を獲得した。反緊縮を唱えるギリシャのチプラス政権も、典型的なポピュリズムだ。中国・ロシア・北朝鮮や中東・アフリカ諸国のような非民主的・閉鎖的な国家を除くと、世界的にポピュリズムが台頭している。  われわれ日本人は、米英など他国のことを笑えない。消費税増税が再延期されたのも、社会保障の改革がなかなか進まないのも、国民の反発を恐れた結果である。タレント議員が増長していることに象徴される通り、日本は英・米・ギリシャ以上にポピュリズムに毒されている印象だ。  「国民の総意で決めるのは民主主義そのもの。どこが悪いんだ」「結果的に正しい政策が行われれば、別にポピュリズムでもなんでも良いではないか」などとポピュリズムを擁護する意見がある。しかし、平均的な国民の感情論をそのまま政策にするのと、優秀な政治家を選んで慎重に政策を検討するのとで、どちらが優れた政策を実現できるかは、改めて論じるまでもないだろう。  近年、ポピュリズムが台頭しているのは、インターネット、とくにSNSの影響が大きい。かつて政治家以外で政治的意見を表明できるのは、新聞社・テレビ局といった大マスコミの関係者に限られた。ところがSNSの普及によって、全国民が気軽に政治的意見を表明できるようになった。選挙で政治家を選ぶ民主主義国家では、政治家がネット世論を気にせず政策を決めるのは難しい。  ポピュリズムは、消費税増税延期に見るように、どうしても短期的な利害を優先し、長期的な重要課題をないがしろにしがちだ。政治家は、ポピュリズムの弊害を丁寧に国民に説明し、ポピュリズムに左右されにくい政治システムを構築する必要がある。もちろん、こうした改革は国民の受けが悪く、政治資金問題で政治家が信用を失っている状況では、実現はかなり難しそうだ・・・。  ところで、ポピュリズムの風潮は、政治の世界だけでなく、企業経営にも確実に及んでいる。それは、経営者が株主のことを過度に意識する「株主重視経営」だ。  もともと企業は株主のものであり、株主が自分の手で経営するのが普通だった(オーナー経営者)。しかし、企業が大規模化・専門化・複雑化すると、オーナー経営者が経営するのは困難になる。そこで株主は、株の値上がりと配当を受けることに甘んじ、経営はプロの専門経営者に任せるようになる(所有と経営の分離、サラリーマン経営者)。国民が政治家に政治を委ねるのと同じく、株主は経営者に企業経営を委ねたのだ。  ところが最近、株主が企業経営について発言する動きが広がっている。かつての“シャンシャン総会”は姿を消し、経営者は総会で株主との対話に努めるようになった。株主懇談会のようなもっとフランクに対話できる場を設ける企業が増えている。IR部門は株主向けの会社説明会を充実させている。  経営者が株主と対話するのは悪いことではない。ただ、株主を意識しすぎると、どうしても短期的な視点に陥ってしまう。たとえば、配当の多寡は理論的には株主にとって損得ないが(ⅯⅯ第2命題。配当も内部留保も株主のもので、配当と内部留保の選択はお金の置き場所の違いにすぎない)、すぐ手元に現金がほしい高齢個人投資家の声を重視して配当を増やすと、内部留保が減り、将来の長期的な成長に向けた投資が抑制されてしまう。  株主は経営のプロではない。経営者に対して素人考えで妙な口出しをするよりも、企業の業績と株価をチェックし、不満なら株を売却すると良い。株を売却すると株価が下がり、警報を鳴らされた経営者は経営の問題点を反省する。株式売却が最も効率的に経営者を規律付ける、という伝統的な考え方を“ウォールストリート・ルール”と言う。昨今、ウォールストリート・ルールよりも“物言う株主”が注目を集めるが、本当に物言う株主の方が有効なのか、厳密な検証が必要ではないだろうか。  国民が政治のことを、株主が経営のことを「わかってるよ」と考えるのは、ずいぶんな思い上がりだ。政治や経営に関心を持つのは素晴らしいことだが、良い政策を決定・実行できない政治家を選挙で落選させること、業績・株価が上がらない経営者を総会でクビにすることが先だ。  国民の声で政策が決まるなら、政治家は不要だ。株主の声で経営方針が決まるなら、サラリーマン社長は不要だ。「結果が出るのをゆっくり黙って見ていてくれ!」と自信を持って言える政治家・経営者の出現に期待したいものである。(日沖コンサルティング事務所『経営の視点』より2016年8月29日分を転載)

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    ドナルド・トランプが米大統領になる日

    神田敏晶(ITジャーナリスト) 2017年1月20日 大統領就任演説の場に立ったのは、共和党のドナルド・トランプ大統領だった。世界は、まさかこの日が来るとは夢にも思わなかった…。 スーパー・チューズデーを制したドナルド・トランプ候補は、数々の共和党の反対派をもろともしなかった。ネオコン、ウォールストリート、マスコミの反発をもろともせず、すべて毒舌で彼らの神経を逆撫でれば逆撫でるほど、異常なほどの耳目を集めた。結果として、トランプの毒舌に米国民の下衆な本音の代弁者として祭りたてれられた。 民主党のヒラリー・クリントン候補も僅差でバーニー・サンダースに勝利したものの、バーニー・サンダースを支援していた社会・民主主義者たちは、共和党のドナルド・トランプ支援へと転じていったのだ。そう、共和党の代表となったドナルド・トランプ候補は、共和党でありながらも共和党らしくない候補という、稀有な存在でもあった。だから、ヒラリーを嫌うサンダース票がトランプへ向かった。 誰もが、米国の大統領にふさわしいとは思わなかったが、「CHANGE」の旗印のもと、何も「CHANGE」がなかったオバマ政権8年間の揺り戻しは、ドナルド・トランプの「Disrupt(混乱)」な変化を求めたのだった。大本命であったヒラリー・クリントンの大統領像は、想定の範囲内であり、米国民はすでに危険とは知りながらも、ドナルド・トランプの破壊的なまでのファシズム精神に陶酔しはじめていた。共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏(左)との最初の討論会に出席し、トランプ氏と握手する民主党大統領候補のヒラリー・クリントン前国務長官=9月26日、ニューヨーク 特に米国の底辺パワーを支える米国8,000万人ミレニアル世代の支持が動いた。学費ローンで苦しめられた若者層、移民に仕事を奪われ続けた若者層、格差の底辺であえぐ若者層が、トランプの「Disrupt」を熱狂的に支持したのだ。 マスメディアがその熱狂に油を注いでいることに気づくのが遅かった…。ネガティブキャンペーンをやればやるほど、ドナルド・トランプの支持はSNSを通じて、マスメディアの利権を暴き、誰もがマスメディアのネガキャンに動じなかったのだ。 かつて、黒人排除や「今ここで人種隔離を!明日も人種隔離を!永遠に人種隔離を!」のスローガンにしたジョージ・ウォレス、アラバマ州知事同様に、トランプは米国WASPにとっての仮想の敵のメタファーを、メキシコや日本やイスラム教というアメリカ以外の人種や宗教で囲った。かつては、このような差別は致命的なNGとされていたが、トランプの教養やマナーよりも、再優先すべきは「強いアメリカよ再び!」だったのだ。そのためにはアメリカ人の結束が必要であり、本音で語れる、エリートではない市井の層の声だった。 そして、トランプ大統領が生まれた…。 トランプは最初に、TPPを反故にし、各国の輸入に関して関税を再開する案を打ちたてた。石油に関する権利関係においての中東関係への戦争も、イスラエル支援も一気に削減。シェールガスと太陽光へと舵取りをおこなった。 何よりも大きいのが、軍事費の大削減。それらを教育と医療にまわした。もちろん、日本への駐留基地も全撤退を表明し、日米安保条約を至急再検討課題とした。 石油価格は、米国が中東から手をひき、シェールとロシアの油源と手を組むこととなった。世界にトランプタワーのビジネスモデルを展開する。日本からは米軍基地がなくなり、領空の回避地域がなくなり、空の完全自由化によって、空の便が最大効率化が図れるようになった。トランプが米国を超内向きにし、海外に関して手をださなくなったことにより、内需が高まり、戦争に頼ることなく経済が回り始めた。 北朝鮮も米国にアピールする必要がなくなり、いつでも日本に侵略できる機会を得るようになった。日本も独自の武装を余儀なくされた。 世界は、まさかアメリカが自国に引きこもることによって、このトランプ政権の4年の間に一斉に自助努力をしはじめたのだった。アメリカは、世界の警察を辞任し、自国だけの警備となった。 ドルは、一時期かなり売られて安値となったが、アメリカ経済の内需の安定により通貨としての価値を取り戻しつつある。 アメリカの大統領を、バカに任せれば、世界は一瞬の平和を勝ち取ることができたのだ。しかし、その後のアメリカを誰も予測はできなくなってしまった。(「KandaNewsNetwork」より2016年3月15日分を転載)

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    日米地位協定3条1項 日本の法律より米の都合優先を意味

    ットで来日したオバマ米大統領と固い握手を交わした。「強固で対等な日米同盟」が世界にアピールされたが、日米関係の実像は戦後70年以上が経ってなお、「占領軍とその属国」ではないのか──米国との“不平等条約”をひもとくと、そんな現実を突きつけられる。 1960年の日米安保条約締結と同時に交わされた現在の日米地位協定(前身は1952年の日米行政協定)について、在日米軍基地問題に詳しい沖縄国際大学教授の前泊博盛氏が解説する。日米地位協定における米軍属の範囲見直しについて話し合われた両国間の会談。右側手前から5人目は岸田外相、左側手前から5人目はケネディ駐日米大使=7月5日、飯倉公館「在日米軍の地位と権利を定めたのが地位協定です。米軍人・軍属の公務中の事件や事故については日本の法律は適用されず、米軍法の裁判権が適用されるという“不平等条約”の側面がある。米兵たちを守るための約定ともいえます」 今回の事件は「公務外」とされ沖縄県警が身柄を確保できたが、協定の矛盾がクローズアップされたのが1995年に沖縄で起きた米海兵隊員らによる少女集団暴行事件だった。協定に基づき、米側は起訴前の容疑者の身柄引き渡しに応じなかった。 その対応への県民の猛烈な反発を受け、殺人や性的暴行などの凶悪犯の場合は米国政府が「好意的配慮を払う」と一部運用の見直しが行なわれた。「“好意的配慮”は米国の胸三寸」 しかし、元外務省国際情報局長でベストセラー『戦後史の正体』著者の孫崎享氏は「この“好意的配慮”を払うかは米国の胸三寸で、米軍が『配慮した』といったら、日本側は受け入れざるを得ない不十分なもの」と説明する。そして、日米地位協定におけるこうした排他的な権限を最も強く意識させる条文が「3条1項」である。 その条文にはこうある。〈合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる〉「施設及び区域」とは米軍基地を指す。沖縄県をはじめとして日本全国には広大な米軍基地があるが、その敷地内には日本の行政権や警察権が及ばないことを示している。いわば“治外法権”を認めているのだ。「基地内は米国に管理権があり、日本の行政当局にとってもアンタッチャブルな空間です」(前出・前泊氏) 記憶に新しいのは昨年8月、在日米陸軍相模総合補給 (神奈川県)で起きた爆発火災だ。基地職員からの通報を受けて市消防隊員が駆け付けたが放水できず、鎮火まで6時間以上を要した。「倉庫に何が保管されているかわからず消火が遅れた。万が一マグネシウムのような物質があったら水と反応してさらなる大爆発になりかねないからです。管理権という協定の壁に阻まれ、基地の内情を日本政府も知ることができないと露呈した事故だった」(同前) 問題の核心はその先にある。米軍の権限が及ぶのは基地施設の「内側」だけではないのだ。基地の「外」においても同様の権限が認められている現実がある。 3条1項では米軍が基地に出入りする上での便宜を図るために、〈施設及び区域に隣接し又はそれらの近傍の土地、領水及び空間において、(日本国政府は)関係法令の範囲内で必要な措置を執るものとする〉と定めている。「必要な措置を執る」のは日本国政府であるため、字面だけ見ると米国の“治外法権”を認めていないと読める。 しかし2008年、国際問題研究者の新原昭治氏が米国で秘密解除された日米密約文書を公表。「関係法令の範囲内で」という文言については、「米軍側に不都合があれば『関係法令』の見直しを日米で協議する」と決められていたのだ。要は“日本の法律・権限より米国の都合を優先する”ということである。関連記事■ 米軍機が日本で事故起こしたら米は警視総監の立ち入り拒否可■ トモダチ作戦の見返りはおもいやり予算1880億円×5年■ トモダチ作戦 アメリカは中・ロに存在感見せつけたかった■ 米国防長官「尖閣に安保適用」発言にトリック 米軍派遣は別■ 三沢基地に配備された米無人偵察機 まるでエイリアンのよう

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    なぜトランプは日本が嫌いなのか

    米大統領選は大詰めを迎えた。初の直接対決となった第一回テレビ討論会では、トランプ氏が「大統領らしさ」を意識し、普段の暴言を抑制。だが、「日本嫌い」で知られ、自国第一主義を貫く氏の政治理念は今も変わっていない。トランプが思い描く「米国の進路」は、日本にとって吉となるか、凶となるか。

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    バブル止まりの日本への認識!「国際感覚ゼロ」トランプがヤバすぎる

    前嶋和弘(上智大学総合グローバル学部教授) この記事をお読みになる読者の方ならご存知のようにアメリカの大統領選挙は、予備選挙と本選挙という2つの異なった戦いがある。予備選は党内での大統領候補指名を勝ち取る選挙である。弱小政党の候補はいるものの、基本的には民主・共和両党の中で指名を獲得した候補者どうしの一騎打ちが本選挙である。 この2つの戦いについて、近年の大統領選では一種の法則がある。それは、予備選の段階での戦略を本選挙段階では微妙に変えていかなければ勝てないという法則である、これはなぜか。そもそも予備選の投票率は良くて3割と非常に低いため、予備選に行くような人々は、非常に党派的だ。この層を対象にしなければ勝ち抜けるのが難しく、打ち上げる公約も極端なものになりがちである。これに対し、本選挙の方は、投票率も6割ほどで、有権者は自分の政党支持者だけではない。そのため、より広い層を対象にした戦略に微調整しなければならない。米大統領選候補者討論会、トランプ氏のバッジをつけるボクシングプロモーターのフドン・キング氏=9月26日、ヘンプステッド(AP) 例えば、2008年選挙でのオバマ陣営は、予備選ではイラク戦争反対を掲げ、徹底した「反戦候補」に自らを位置づけ、民主党左派を固めていった。しかし、予備選での勝利が現実的になった段階で「イラク戦争は反対、対テロ作戦の一環であるアフガニスタンの方はむしろ米軍を増派すべきだ」と「現実路線」「中道路線」に舵を切っていった。そのバランス感覚がオバマの「三軍の長(コマンダー・イン・チーフ)」としての資質を証明することになり、安全保障に詳しく、退役軍人の英雄的な存在である共和党候補のマケインに対しても、引けを取らなかった。 それでは、今回の2016年選挙で世界を騒がしているトランプの「三軍の長」の資質はどうだろうか。 予備選とここまでの本選挙を比較して、トランプの場合、何も大きくは変わっていない。「変わらない」というのは、もちろん、ほめ言葉ではない。 特に国際関係でいえば、メキシコ国境での「万里の長城」建設、イスラム教徒の入国禁止、NATOや日米安保の見直しの可能性、ロシアに対する肯定的な数々の発言など、「国際情勢に無知」と思えるような発言ばかりを繰り返してきた。予備選の段階の「一人悦に入って吠えている、傲慢で野卑な人物」のまま、現在に至っている。 トランプに一票を投じるため、一挙に共和党予備選になだれ込んだ「白人ブルーカラー層」にとっては、「職を取られたのは不法移民のせい」「なんとなく怖いムスリムは入国禁止」「自分たちの財政が怪しいのになぜほかの国を助けないといけないのか」という本音を初めて代弁してくれる候補がトランプだった。私たちにとっては驚いてしまうような暴言だが、彼らにとっては胸がすくような名言であり、「国際感覚なし」の発言こそが、予備選段階でのトランプ勝利の大きなポイントだった。この言葉そのものをトランプは実際には自分自身が信じていないような気すらするが、少なくとも、暴言を続けることは勝利への近道だった。東アジア情勢に対する無知東アジア情勢に対する無知 予備選段階でのトランプの発言は、私たち日本人にとっては、トランプは日本を含め東アジアの情勢に対して全く知らないことに驚く。「非関税障壁ばかりの日本の貿易慣行」「日本はアメリカ人の雇用を奪うだけ」「日米安保は片務的。もっと負担を」というのはどう考えても素人発言である。「日本嫌い」なのかと思わせるぐらい東アジア情勢に無知な発言が続いた。 これは何なのだろうか。いろいろ考えてみると、思いつくのは、ニューヨークの不動産業者として脚光を浴び、時代の寵児となったころ、不動産業者としてライバルは日本だった事実である。その時の印象が強かったのではないか。「安倍首相はずる賢い」という言葉も今の日本ではなく、バブル期の日本をイメージしての言葉だったのではないだろうか。 おそらく日本の理解が80年代末か90年代はじめで終わっている気がする。それもあって過去25年ほどの間、日本の現地法人がアメリカでどれだけの雇用を支えてきたのかは全くふれたことがない。 中国に対する認識も北朝鮮に対する認識も危なっかしい。共和党予備選の討論会の時には中国がTPPに入っているという発言をトランプはしており、他の候補者にたしなめられてはいるが、それ以後も「TPPの黒幕は中国」という日本からすれば驚いてしまうような説をずっと吹聴している。8月19日の演説でも「NAFTAは見直し。TPPは脱退」と強調するのに続けて「中国とのとんでもない貿易協定に反対する」といかにもTPPに中国が入っているように論じている。少なくともかなりのトランプ支援者はそう考えているのではないか。 「ビジネスマンとして議論をする」のがトランプのモットーだ。もし、トランプ大統領が誕生した場合、中国とさしで話し合って丸められる可能性もあろう。その中で割を食うのは同盟国日本であり、トランプの無知は日本に対して大きなリスクである。 このようにトランプの国際感覚のなさには絶句することが多い。国際情勢をこれほど理解していない大統領候補は、アメリカが覇権を握った第二次大戦後、皆無である。「国際感覚ゼロ」は売り物であってはならない。 8月下旬現在の世論調査を見ると、トランプが大統領になる可能性がかなり遠ざかっているのは、日本にとってとりあえずは朗報かもしれない。 上述したように本選挙では幅広く支持を得なければならず、これまでの公約を微調整する必要がある。実際に、少しずつ変わっていく可能性はまだある。8月中旬から、選対幹部を一新し、ラテン系の人々との会合を持ち、「優しいトランプ」をメディアにアピールした。選挙陣営やトランプ本人の最近の発言を聞いていると、「ムスリム入国禁止」や「メキシコ国境に万里の長城建設」といった実現不可能な政策ともいえない政策について、少しずつ言葉は変えていく余地をみせつつある。 ただ、そうなると、予備選でがっちり心をつかんだ「白人ブルーカラー層」をどのように保っていくのかは難しい。トランプにとっても板挟みだろう。 どれだけトランプが変われるのか、あるいは変われないのか。引き続き注目したい。

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    米左翼メディアが垂れ流すトランプの「ネガキャン」に騙されるな

    渡邉哲也(経済評論家) ヒラリー・クリントン氏の健康不安問題により、ドナルド・トランプ氏が米国大統領になる可能性が急激に高まっている。選挙は水物であり、まだ一ヶ月以上を残しているため、どちらが大統領になるのかわからない状態ではあるが、日本のメディアや有識者などではそれを懸念する声も大きい。では、なぜこのような懸念が生まれているのか考えてみたい。 世界各国、基本的に『リベラルな思想』を持つメディアが多く、これは米国も同様である。また、米国では、日本の放送法における公平性規定がなく、各社支持、政党支持候補を明確にした報道が行われている。米大統領選候補者討論会の会場でトランプ氏に抗議する人=9月26日、ヘンプステッド(ロイター) 衛星放送で手軽に見ることができ日本語同時放送を行っていることもあり日本でよく引用されるCNNなどは左派リベラルメディアの典型であり、放送内容に関して、限りなく歪んでいると言わざる得ない。なぜならば、政治ニュースの殆どがトランプ批判であり、トランプへのネガティブキャンペーンの代表格的なメディアであるからだ。 また、共和党よりとされるFOXなども、トランプ氏は共和党主流派の候補ではなく、主義主張で異なる部分が大きい為、好意的な報道が少ないのである。 つまり、既存メディアのどれを引用しても孫引きしても、トランプに不利な情報ばかりになってしまうのである。ここに世論とマスメディアの大きな乖離が見られるわけだ。そうでなければ、トランプ氏が国民の大きな支持を受け大統領候補に選ばれることなどなかったわけである。 また、トランプ氏へのネガティブキャンペーンばかりになる理由は他にもある。それは対立候補であるヒラリー氏が原因であり、出す政策が印象論ばかりで具体策が何も無いからである。ヒラリー氏の演説を一時間聞いたところで『アメリカ初の女性大統領』以外の要素はほとんど出てこない。だから、ネガティブキャンペーンに終止する結果になるわけだ。 自由の国であったはずのアメリカであるが、ここ数年、ポリティカル・コレクトネス(政治的公平)といわれる『差別やヘイトを理由にした言葉狩り』は日本以上のものがあり、ここに不満を持つ国民も多かった。例えば、議会の議長であるチェアマンはマンが男性形であるため、男女を問わないチェア・パーソン、スチュワーデスが女性形だからという理由でキャビンアテンダントに変更されたのがその典型である。そして、それを聖域にした不可触化(タブー)が行われてきたのである。 しかし、ここに不満を持つ米国民は多く、あえて不可触に触れ、議論を始めたのがトランプ氏だったわけだ。だからこそ、メディア特にリベラルメディアにとって、彼は絶対に許せない存在であり、そこに不満を持つ多くの米国民の支持を集めることが出来たのである。『選挙演説としては正しい』トランプ氏の主張 また、彼の主張は明確であり、『アメリカファースト』アメリカ第一主義を唱え、その具体策に関しても非常にわかりやすいものであったのも彼への支持の要因になっているといえる。『中高齢層には古き良き強いアメリカ』 『若年層には保護主義と不法な労働者追い出しによる雇用の拡大』 『恐怖にはイスラム教徒排斥』と具体的かつ不満を持つ米国人にはとても魅力的に見えるオプションが並んでいるのだ。 私はトランプ氏の主張は、その是非と実現性を除いて『選挙演説としては正しい』と考える。選挙は国民の意志を問うものであり、国民の意見の代表者が政治家であるからなのだ。 そして、日本製品批判はかなりの的外れではあるが、経済政策の方針に関しては米国にとって正しいと考える。リーマン・ショックにより米国を中心とした先進国と新興国の構図は大きく変わった。 米国金融が世界を席巻している状況においては、米国から新興国への投資利益が金利や配当という形で米国に還流し、それがサービス業を中心とした経済と雇用の拡大を生み出していた。しかし、リーマン・ショックによりこの構造は破壊され、米国には投資利益がほとんど還流せず、安価な人件費で作られた新興国産品のみが流入するようになった。新興国の安価な産品の流入=雇用の略奪であり、これでは一部のグローバル企業の資本家を除き、米国労働者は貧しくなるばかりだからである。だからこそ、中国などからの製品に課税を行うことは労働者の保護と国家の発展基盤に繋がると思われるからなのである。共和党の米大統領候補トランプ氏 但し、前段で述べたようにそれが日本に向けられるのは間違っているといえる。なぜならば、特に自動車を中心に米国で売られている日本製品は主に米国製であるからなのである。日米自動車摩擦と貿易摩擦交渉により、日本のメーカーは日本からの輸出をやめ、現地生産に切り替えたのだ。 また、電気など他の製品も完成品輸出であり消費者向け商品の生産(BtoC)から、主要部品や生産機械などの生産(BtoB)に業態を変えており、ほとんど摩擦が生じない構造になっているからなのである。問題があるとすれば、日本のメーカーが中国やASEANなどで生産し米国に輸出している産品であり、それは日本製ではないからなのである。また、多くの日本のメーカーは新興国の賃金上昇により最終消費地生産に切り替え済み又は切り替える方向で生産計画を進めており、北米向けはNAFTA(米国自由貿易協定地域)で作られているものが中心になってきているからである。 トランプ氏の日本批判発言は無知が原因であると考えられ、この点に関しては、きちんと説明すれば問題にならないと考えるものである。また、日本によくある誤解として、大統領になればなんでも出来るというものがあるが、これは全くの間違いであることも述べておきたい。日本の総理と違い米国の大統領は議会演説以外、議会には参加しない。そして、米国大統領の権限は、非常時などの統制権と議会が出してきた議案に対する拒否権があるのみであり、あくまでも議会が優先する仕組みなのである。だからこそ、議会との関係が悪化すれば裸の王様になってしまうため、実際に必要なのは議会対策ということになるのだ。 そして、議会対策として考えるならば、日本としては関係が深く、政権与党である自民党とのパイプが太い共和党のほうが望ましいのであろう。その場合、トランプ氏の勝利は決して悪いばかりではないといえる。

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    トランプは反日主義者か? 日本人には理解できない米国の本音

    中岡望(東洋英和女学院大学大学院客員教授)トランプ氏の支持率上昇 米大統領選挙の様相が少し変わってきた。ドナルド・トランプ共和党大統領候補は、その暴言と粗暴な行動がひんしゅくを買い、大統領選挙ではヒラリー・クリントン民主党大統領候補に大敗するのではないかというのが一般的な予想であった。だが、ここにきて、トランプ氏の巻き返しが目立ってきた。8月26日から9月16日の期間に行われた10件の世論調査では、7件でクリントン氏支持がトランプ氏を上回ったが、その支持率の平均の差はわずか1.5%にまで縮小している。直近の9月14日のFox Newsの調査ではトランプ氏がクリントン氏を1%リード、9月16日のロサンゼルス・タイムズの調査ではトランプ氏のリードは6%であった。今までトランプ氏のさまざまな発言は半分“冗談”と受け流されてきたが、改めてトランプ氏の考え方を検討してみる必要がある。米共和党全国大会が開かれたクリーブランドで支持者に囲まれる同党大統領候補の不動産王、ドナルド・トランプ氏=7月20日、米オハイオ州 トランプ氏は人種差別主義者であり、白人優越主義者であると言われてきた。事実、過去のさまざまな発言や行動を見る限り、そうした指摘を的外れとして退けることはできない。もちろん、トランプ氏はそうした批判を退けてはいるが、同氏の本質は人種差別主義者、白人優越主義者である。と同時に、トランプ氏はこうした主張をすることを通して、保守的な白人アメリカ人の感情に訴え、支持を拡大する戦略を取っているともいえる。 同氏の人種差別的行動や発言はアメリカのメディアによって明らかにされている。たとえば、父親のフレッド・トランプ氏は連邦司法省から事務所を賃貸する際に黒人を差別していると告訴されている。また父親は極端な人種差別集団であるKKK(白人優越主義秘密結社クー・クラックス・クラン)の集会に参加して逮捕された経歴を持つ。こうした考え方はトランプ氏にも引き継がれ、自らが経営するトランプ・プラザホテルの経理担当者に黒人がいたのを知って、「黒人に俺のお金を触らせるな」と担当者を叱責している。また、殺害された白人の81%は黒人が犯人であると、黒人に対する差別を露骨に表現している。事実は15%である。保守国家アメリカの姿保守国家アメリカの姿 黒人に対する差別にとどまらず、メキシコ人に対しても同様な差別感を隠さない。メキシコの不法移民は殺人者であり、強姦者だという常軌を逸した発言も行っている。さらに、よく知られていることだが、アメリカとメキシコの間に壁を建設するという発想も、そうした差別意識から出ているのは間違いない。 自らの大学に対する集団訴訟に関して、連邦判事がメキシコ系アメリカ人であることを指摘し、批判されている。トランプ氏は自著の中で「自分の会社は多くのメキシコ人に雇用を提供している」と反論しているが、同氏の言動を見る限り、そうした主張を額面通りに受け取るのは難しい。またトランプ氏の白人至上主義の発想はドイツのヒトラーに対する共感にも見て取れる。民主主義とは程遠いロシアのプーチン大統領礼賛の中にも、同じメンタリティーを感じ取ることができる。 先に指摘したように、こうした言動は、支持基盤を拡大するうえで一定程度の効果を発揮している。ニューヨーク・タイムズのリン・ヴァーヴレック記者は「トランプ候補は国民に深く根差した人種差別の意識をうまく利用している」と指摘する(2016年2月23日)。 トランプ氏の最大の支持層は保守的な白人労働者階級といわれる。トランプ氏を支持する有権者の20%がリンカーン大統領の奴隷解放宣言は間違いであったと答えている。こうした状況は日本人には理解し難いといえる。アメリカは基本的に宗教的で保守的な国である。世論調査機関のピュー・リサーチ・センターの調査(2015年11月実施)では、アメリカ成人の89%が神の存在を信じていると答えている。63%は“確信”をもって神の存在を信じていると答えている。 共和党の大統領候補選びの過程で、必ず候補者の問われる質問に「神の存在を信じるか」「進化論を信じるか」というのがある。日本の常識では考え難い質問であるが、宗教的かつ保守的なアメリカ人にとっては候補者を判断する極めて重要な問題である。そうした宗教的な観点から、中絶反対、同性婚反対といった主張が出てくる。2016年の共和党の政策綱領の中に、学校での性教育は中止し、「禁欲を教えるべきだ」という政策が掲げられている。それが、アメリカのひとつの現実である。アメリカ社会の対日観アメリカ社会の対日観 トランプ氏が反日的かという問いに関していえば、直接的に日本人に対する差別的な発言は見つけられなかった。しかし、現在でも依然としてアメリカ人の中に反日的な意識が残っていることは間違いない。1917年にカリフォルニア州は日本人とインド人の土地の所有を禁止している。また、同州では日本人とアメリカ人の結婚を認めていない。 太平洋戦争中、日系アメリカ人は強制的に財産を奪われ、キャンプに収容されている。フランクリン・ルーズベルト大統領は妻のエレノアの反対を押し切って、同法案に署名している。レーガン大統領はその措置に関して日系アメリカ人に謝罪し、慰謝料を支払っている。だが、昨年12月にアイオワ州で行われた世論調査では、トランプ氏の支持者の48%が日系アメリカ人の強制収容は間違っていなかったと答えている。これも日本人からすれば驚くべき結果であり、もうひとつのアメリカの現実であり、トランプ氏の支持者の姿である。ちなみにセオドア・ルーズベルト大統領は白人優越論者であったが、日本人に対しては好意的であった。 8月5日、トランプ氏はアイオワ州の集会で演説し、「皆さんがご承知のようにアメリカは日本と条約を締結しています。その条約では、日本が攻撃されたとき、アメリカは全力で日本を守らなければなりません。もしアメリカが攻撃されたら、日本は何もする義務はないのです。彼らは居間に座って、ソニー製のテレビを見ていることができるのです。こんなことで良いのですか」と、いつもの口調で聴衆に訴えかけた。8月5日、米アイオワ州デモインでの集会に参加したトランプ氏(ロイター=共同)トランプの日本イメージは1980年代 従来から、トランプ氏は安全保障に関する日本の“フリーライド(ただ乗り)”を批判し、日本の基地負担を増やすべきだとか、沖縄からの撤兵、さらに北朝鮮の脅威に対抗するために日本に核兵器開発を認めるべきだと語り、物議を醸してきた。アイオワ州の集会での発言も、そうした流れの中にある。さらに同氏は、中国と日本を「アメリカから雇用を奪っている」とも批判している。こうした発言は、アメリカの孤立主義者の考え方である。 共和党の主流派はアメリカの国際的な役割の必要性を説くが、評論家のパット・ブキャナンに代表されるペレオコンサバティブ(超保守主義者)は、アメリカは国際的なコミットメントから手を引くべきだと主張しており、トランプ氏の主張もこれに呼応したものである。トランプ支持者の宗教的、保守的な白人労働者階級にとって、こうした日本批判、孤立主義の主張は心地よく響く。 おそらくトランプ氏は日本に関する知識があまりないのであろう。「ソニー製のテレビ」という言葉を持ち出すのも、彼のイメージにあるのは、通商摩擦が深刻で、日本が世界第一の経済大国になると言われた“1980年代の日本”のイメージであろう。ただ、日本のメディアを見ていると、トランプ氏の発言に過剰に反応していると思われる。 選挙中は、支持層に訴えかけるためにさまざまなレトリックが使われる。それが、そのまま政策に反映することはあまりない。ただ、注意すべきことは、そうした過激で差別的な発言を受け入れる素地がアメリカ社会にあるということである。トランプ氏の発言を無視する必要はなく、正確に分析する必要があるが、冷静な対応が必要である。

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    トランプ台頭に思う日系移民の辛い過去

     【WEDGE REPORT】田村明子(ジャーナリスト) 吉田イサヨさんは、まだ20歳にもならぬうちに日本を後にした。彼女のパスポートは、自由の女神が立つリバティ島のお隣の島、エリス島にある移民博物館に展示されている。このエリス島は、1892年から62年間に渡ってアメリカ合衆国移民局が置かれていた場所で、この島を通って1200万人がアメリカに移住をしてきたそうだ。 世界中からアメリカにやってきた移民たちの古いパスポートが壁一面に並ぶ中、日本人のパスポートはイサヨさんを含めて3人分あった。明治に発行されたものが1枚、イサヨさんのを含めて大正発行が2枚。 パスポートといっても写真がついているわけではなく、墨筆に朱印が押された手形のような紙切れである。広島県佐伯郡に戸籍があったイサヨさんは、このパスポートが発行された当時18歳と6カ月で、渡米目的は夫の呼び寄せにより、とある。吉田イサヨさんのパスポート(著者撮影) 当時の年齢は数えだから、本人はおそらく実際にはまだ17歳半だっただろう。夫というのは、当時よく行われていた写真結婚の相手だったのだろうか。 今ならまだ高校生の年齢で、移民の花嫁としてはるばるアメリカに来てどのような一生を送ったのだろう。 「排日移民法」で入国は困難だったはずだが… 帰宅してから博物館のサーチエンジンを使ってみると、彼女が上陸したのは1925年となっていた。ところがその1年前の1924年1月、米国政府はJohnson Reed Act、通称悪名高き「排日移民法」を設置している。後の太平洋戦争開戦の遠因になったという説もあるこの法律により、日本からの移民の入国は極端に制限されるようになった。 それではイサヨさんは、どうして1925年に入国できたのか。不思議に思って博物館に問い合わせると、色々な興味深いことがわかった。 まずどういうわけなのか、サーチエンジンで出てきた彼女の到着年、1925年は間違っていた。 博物館の担当者が調べてくれたところによると、彼女は1917年12月22日に日本を出発し、1918年1月15日にサンフランシスコに上陸。パスポートは、遺族によって1988年にこの移民博物館に寄付をされたのだという。「黄禍」と呼ばれた日本人 日本からどのようなルートをたどってエリス島に上陸したのか不思議だったが、これも謎がとけた。この移民博物館で扱っている資料は、エリス島から入国した移民のものだけではなかったのである。“黄禍”と呼ばれた日本人 私が子供のころは、海外に行くのはごく一部の、恵まれたお金持ちの人だけだと思っていた。だから19世紀末から、日本人が移民としてアメリカに大勢渡っていたと知ったときは、驚きだった。 低賃金でも文句を言わずによく働いた日系移民は、そのうちアングロサクソン社会に脅威をもたらすようになり、Yellow Peril(黄禍)と呼ばれる反アジア移民、後にはもっと日系にターゲットをしぼった反日運動に面することになった。 イサヨさんがサンフランシスコに来る5年前の1913年には、California Alien Land Law of 1913、俗に排日土地法とも呼ばれる法の成立によって、米国市民権獲得の資格がない日系人は、土地が購入できないという法が設置されている。博物館には他の日系移民の写真も展示されている(著者撮影) おそらくその頃に撮影されたものだろう。サンフランシスコの一般民家の軒先に、「Japs keep on moving. This is a white man’s neighborhood.」(ジャップは立ち止まるな。ここは白人の住居地である)と巨大なバナーが掲げられ、女性がそれを指差している写真も、博物館には展示してあった。 私は1980年からニューヨークで36年暮らしてきたけれど、少なくとも面と向かってジャップと呼ばれたことはまだ一度もない。日本人だからといってあからさまな差別を受けることはほとんどないと言って良いと思う。 だがイサヨさんが移民してきた当時は、アジア系に対する差別は公然とあった。当時の日系移民たちは、どれほどの思いを耐え偲んできたのだろう。もうあのような野蛮な時代が来ることは、二度とないだろう。と思っていたのだけれど、このところ雲行きが怪しくなりつつある。ニューヨーカースピリットと対極のトランプ あのドナルド・トランプが、共和党の大統領候補の指名を受けることほぼ確定、というではないか。本人は生まれも育ちもニューヨークなのに、主張することはことごとく、リベラルなニューヨーカースピリットと対極にあるトランプ。 ニューヨークの予備選では共和党で圧勝したが、私の周辺ではトランプを支持する声は聞いたことがない。ニューヨークタイムズをはじめとする大手メディアにも、トランプを批判、揶揄する記事は山ほど出ているが、擁護する意見はまったくといって目にしない。 一体、彼の支持者はどこにいるのだろうか。そう不思議に思っていたら、先日一人出会った。 彼はフィギュアスケート界の大物、ディック・バットンである。1948年と1952年の二度の五輪で金メダルを獲得し、長年米国テレビでコメンテーターとしても活躍してきた。86歳になった現在、パークアベニューにある豪華なコンドミニアムで悠々自適の隠居生活を送っている。アメリカの移民問題が孕む矛盾 本人は競技引退後、ハーバード大学院ロースクール卒業。絵に描いたような共和党であるバットンは、自宅での単独インタビューに応じて私にこう語った。 「認めようが認めまいが、アメリカ合衆国の政府を運営していくのは、ビジネスの一種。この国最大のビジネスなのです。そして株主は国民たち。ドナルド・トランプならビジネスマンとして、手際よくこなしていくでしょう」ニューヨーカースピリットと対極の主張で快進撃を続けるトランプ氏(左端:著者撮影) トランプの支持者は一般的に、社会に不満を抱いた低収入、低学歴の白人と言われてきたが、こうしたバットン氏のような階層にも支持者がいるということは驚きだった。実は、ニューヨークのスケート関係者はトランプにちょっとした借りがある。80年代にセントラルパークにある屋外リンク、ウォールマンリンクの改装を成功させた立役者がトランプだったからだ。アメリカの移民問題が孕む矛盾 ニューヨーク市が6年と1200万ドルの予算をかけてもうまくいかずに醜態をさらした改装工事を、トランプは請け負ってからわずか数カ月で完成させた。それ以来、一部のニューヨーカーの間で、トランプは「エゴの塊ではあるが、やるときはやる」という評価もあるのだろう。 とはいうもののことが米国大統領となると、その責任の重さは冗談ごとではすまされない。何よりバットンが口にした、「株主であるアメリカ国民」の中に、我々マイノリティは含まれていないことは確実である。 アメリカ人の友人が、ある日ポスターをFBに書き込んだ。こちらを睨んだネイティブアメリカンの顔写真にこんなコピーがついている。 So you’re against immigration? Splendid! When do you leave?  (移民に反対? そりゃ素晴らしい。で、いつお発ちかね?) 本来正当なアメリカ人といえるのは、彼らネイティブアメリカンのみである。バットン氏もトランプ自身も、元を正せば移民の子孫に間違いない。アメリカの移民問題を考えると、いつも芥川龍之介の「くもの糸」を思い出す。それにしてもこの大統領選、一体どういう顛末になるのか。ニューヨーカーたちは息を呑んで見守っている。

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    トランプ旋風が生み出す尖閣戦争の危機

    の悪夢」とまで語られる米国大統領選挙でのトランプ旋風。この「悪夢」の本質とは何であろうか。 それは、日米関係の骨幹である日米同盟についての無理解だろう。トランプ氏の「安保タダ乗り」「核武装容認」「在日米軍撤退」などの発言は、これを如実に表している。 アジアにおける米国のプレゼンスを支える日米同盟について、トランプ氏はなぜ、ここまで無理解な発言を続けるのか。日米同盟が米国のアジア・太平洋地域における経済的繁栄の最重要インフラであることは常識であり、日米同盟なしに米国の対中国政策もありえないのだがーー。トランプ氏と前ロンドン市長・ジョンソン氏を揶揄するポスター、ロンドン市(Gettyimages)「冷戦思考」が支えるトランプの対日政策 防衛省のある研究員は、こうしたトランプ氏の対日政策には、「冷戦思考」の軍事顧問が影響を与えていると指摘する。 「トランプ氏の安全保障ブレインは、元海軍少将のチャールズ・クービック氏と現役陸軍少将のバート・ミズサワ氏であるといわれます。 クービック氏は、オバマ政権でリビアとの平和交渉を非公式に担当した、自称中東通です。彼は、イラク戦争に海兵隊の工兵部隊として従軍したとの触れ込みですが、実際には常駐経験はなく、月に数回程度、それも税金対策としてイラクを訪れていたにすぎません。 一方でミズサワ氏は、アフガニスタンや上院軍事委員会で勤務したこともあるため、米国の軍事戦略には通暁しており、ブレインの中ではまともな方だと思います。彼は名前から分かるとおり日系人ですが、日本勤務の経験はなく、子供の頃に空軍軍人だった父とともに、三沢基地に短期間住んだことがあるだけです。 そんな彼らに共通するのは、中東重視です。アジアや中国問題に疎く、中東やロシアを重視する冷戦思考が彼ら戦略思想の根底にあります。また、米軍には、実戦ばかりで損な役回りの中東派と、実戦はないのに優遇されている太平洋派の間で、感情的なしこりもあります。 このような戦略思想や感情的なしこりを持つ彼らの考えが、トランプ氏の対日政策に影響を与えているのは間違いないでしょう」(防衛省の研究員)グーグルでもヒットしない者たち ちなみに、トランプ氏のブレインの能力不足については、すでに米国で問題視されている。3月に5人の政策アドバイザーが発表された際には、「グーグルでもヒットしない者たち」と話題になったほどだ。 では、日本に理解がなく、能力もないブレインに影響されたトランプ氏の対日政策は、どのような影響を与えていくのだろうか? 戦略国際問題研究所(CSIS)でアジア地域の外交・安全保障を研究するザック・クーパー氏は、「同盟関係に変化はない」と指摘する。 「米国の強さは、数十年にわたって、共通の価値観を根底とした世界的な同盟の要となってきました。なかでも日米関係は安全保障、経済、文化の面で、米国の同盟関係の強さの源です。トランプ氏が日本や他の同盟国を傷つける発言をしても、米国における同盟についての価値観に変化はなく、同盟は今後も続くでしょう」(クーパー氏) クーパー氏の発言は、プロの外交官や専門官の意見と共通する。だが、この種の意見には、希望的観測と長い時間をかけて築き上げてきた日米関係を覆させないという自負心が背景にあり、当然、日本へのリップサービスも込められているとみるべきだろう。 だが、今年3月にトランプ氏不支持を表明する共和党関係者の署名を報じて話題になった、ニュースサイト「War on the Rocks」のライアン・エバンス編集長は、トランプ氏の利己的な性格が与える影響を懸念する。 「トランプ氏は、米国が掲げている重要な理念であるグローバルコモンズへのアクセスと商業の自由を可能とする国際秩序を守ることについて、理解していないし、理解しようともしていません。 この理念によって最も恩恵を受けているのは米国であるにもかかわらず、トランプ氏は国家の利益について考えておらず、自己の利益を優先し、自分の会社との敵対関係しか頭にないのです」(エバンス編集長) このようなトランプ氏が唱える孤立主義的な外交・安全保障政策については、氏が属する共和党においてでさえ、懸念を示す向きが多いことは周知の通り。 というのも、これまでの共和党は、前回の大統領選挙でオバマ大統領に敗れたマケイン上院議員がアジア重視を鮮明にして、アジア・太平洋地域の海軍力強化に努めており、米軍のアジアへのコミットを強く支持してきた。それを覆すような発言を続けるトランプ氏は、共和党にとって、票が集まる人気者であると同時に、厄介者でもあるのだ。米国不在が生み出す中国の危険な挑戦米国不在が生み出す中国の危険な挑戦 しかし、ここにきてトランプ氏の大統領就任の可能性に戦々恐々とする米国で、日本は「普通の国」に生まれ変わるべきとの意見も出てきている。知日家として知られる世界戦略トランスフォーメーション研究所所長のポール・ギアラ氏も、そんな日本の再生をと唱える一人だ。 「トランプ氏の対日政策は、日本が非対称的な同盟関係を再考する機会となるでしょう。これは、日本のいびつな平和主義の終わりを意味するという点で、重要です。 実際、日本は少しずつではありますが、いわゆる『普通の国』として軍事力を持つことにより、新しい安全保障政策を打ち出し、“米国に使われる立場”から“経済的パートナー”へと変わりつつあります。 これは、日本が最前線国家として、中国と北朝鮮との摩擦に直面しており、ロシアやイラン、イスラム過激派に対しても、責任ある国家として対応しなくてはならなくなってきた。そのため、結果的に米国との関係性にも変化が現れ始めているのです」(ギアラ氏) ギアラ氏は、インタビューに際して「トランプ支持者ではない」と断った上で、日本がこれまでの日米同盟を見直す時期にきていると強調している。図らずも、トランプ氏の無理解な対日政策がトリガーとなり、日本が親離れする形での日米関係の見直し論が浮上しているのだ。 しかし、中国との間でスプラトリー(中国名:南沙)諸島の領有権問題を抱えるフィリピンの大統領政策担当スタッフであるアレハ・バーセロン氏は、「日米関係の見直しはアジア諸国に悪影響を与える」と懸念を示す。 「トランプ氏が大統領になれば、危険なシナリオを招く可能性があります。それは、アジアにおける米国のプレゼンス不在による、中国の覇権的行動の拡大です。 トランプ氏は、これまで日本やフィリピン、ASEAN諸国が築き上げてきた、アジアの平和と安定にほとんど興味がありません。彼が大統領に就任するということは、アジア諸国に対する米国の関与を著しく損なわせるとともに、それら諸国との安全保障条約を一方的に破棄するという、最悪の事態を招く可能性があります。 これまでアジア諸国の後ろ盾であった米国のプレゼンスが弱まれば、中国はその脅威を気にかけることなく、覇権的行動を強めることができるのです」(バーセロン氏) 中国が6月9日にフィリゲート艦1隻を尖閣諸島の接続海域に侵入させたことに続けて、中国戦闘機が空自戦闘機に空中戦を仕掛けたと報じられたこと(6月30日付産経新聞)は、記憶に新しい。中国がこのように軍事的挑発を強めている背景には、トランプ氏の対日政策が、米国からの“誤ったメッセージ”として受けとられている可能性が考えられる。 中国による南シナ海の領有化や北朝鮮による核・ミサイル開発にみられるように、アジアは世界で唯一残された、国家間における戦争の危機を内在する地域だ。過去にも、朝鮮戦争やイラクのクエート侵攻などは、「米国はアジアに関与しない」と受け取れる、“誤ったメッセージ”が発端となり起こったことであることを忘れてはならないだろう。 日本政府には、米国大統領選の推移を見守るだけではなく、米国の主要な同盟国として、従来に増して日米同盟の重要性を国内外に発信し、アジア地域の平和と安定を維持するために、“誤ったメッセージ”を払拭していく努力が求められる。このような積極的な関与こそが、新たな日米関係に求められる姿ではないであろうか。

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    9・11式典を途中退席 健康不安はクリントン候補の死角となるか

    仲野博文(ジャーナリスト) (THE PAGEより転載) アメリカ大統領選挙まで60日を切った9月11日、ニューヨークでは15年前に発生した同時多発テロの犠牲者を追悼する式典が開催され、ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの両大統領候補も出席した。式典開始から間もなくして、クリントン氏は体調不良を訴えて会場を去るのだが、その様子を捉えた動画がネットにアップされ、凄まじい勢いで拡散。動画ではよろめいて膝から崩れるクリントン氏が、抱えられるようにして車に乗り込む様子がはっきりと確認でき、以前から指摘されていた健康不安説を再燃させる結果となった。クリントン陣営は当初、脱水症状が原因で気分が悪くなったのだと説明したが、のちに医師から肺炎と診断されていたことを明らかにした。健康状態を不安視する有権者が増える一方で、肺炎に関する事実を公表しなかったクリントン陣営に対する不信感も高まり始めているようだ。9月11日、米ニューヨークで、米中枢同時テロの追悼式典に出席した際の ヒラリー・クリントン氏 現地時間11日朝から世界貿易センター跡地で開催された追悼式典に出席したクリントン氏は、式典が始まって約1時間後にシークレットサービスの職員らに連れ添われる形で会場を離れ、車に乗り込もうとした際にはふらついた状態で膝から崩れ落ちかける一幕もあった。この様子を式典に参加するために会場の外にいたチェコ出身の元消防士の男性が動画撮影し、ツイッターに投稿したことによって、クリントン氏が膝を崩す形で倒れかけたシーンが瞬く間に世界中に知れ渡った。ツイッターで動画を公開した男性にはアメリカやチェコのメディアから取材申請が殺到し、2日の間に約2万6000通のメールが届いたのだという。 この男性はチェコメディアの取材に対し、自身が撮影した動画がこれほどの反響を呼ぶとは想像していなかったと語っている。動画の中でクリントン氏が膝を崩す格好で倒れかけるシーンは僅か数秒のものであったが、アメリカの有権者や世界中のメディアの関心を引くには十分すぎる内容であった。 クリントン陣営は当初、クリントン氏が暑さによって体調を崩したと発表していたが、のちに医師から肺炎と診断され、体調不良を起こす前日にも抗生物質を服用していたことを明らかにしている。・Zdenek Gazdaさんが撮影した動画「Hillary Clinton 9/11 NYC」クリントン候補をめぐっては、以前から健康不安説がささやかれ、最近では遊説先で演説を行った際に咳を繰り返していたことをメディアに取り上げられ、何らかの体調不良に見舞われているのではないかと話題になっていた。8月中旬にはクリントン氏の医療記録のコピーとされるものがネット上で拡散したが、医療記録は偽物であったことがすぐに判明している。また、8月末から9月初頭にかけて、アメリカ国内ではグーグルの検索ワードで「クリントンの健康状態」が上位にランクインしており、アメリカ人有権者の間でクリントン候補の健康状態が大きな関心事となっていた矢先に、クリントン陣営は肺炎の事実について発表を強いられたのだ。ウィキリークスや保守系メディアがバッシング 残り60日を切り、米大統領選挙は終盤戦に突入している。このタイミングでクリントン候補が肺炎と診断されたことは、選挙戦を優勢に進めてきた民主党サイドにとってはこれまでの勢いを変えてしまう可能性がある懸念事項で、一方でトランプ陣営にとっては起死回生のチャンスにもなり得る。加えて、今回の大統領選挙ではクリントンとトランプの両候補が自らの医療記録の公開には及び腰となっているが、クリントン陣営が肺炎の診断を受けた公式に発表したため、透明性の欠如に憤る有権者も少なくない。ウィキリークスや保守系メディアがバッシング ネット上にはクリントン氏の健康状態に関するさまざまな情報が氾濫しており、中には陰謀論めいた話も少なくない。クリントン氏の健康状態に関して当初ささやかれていたのは、彼女の頭部の負傷に関するものであった。2012年12月、当時米国務長官だったクリントン氏は、追跡検査で頭部に血栓が発見され、そのまま病院で抗凝血薬を使った治療を数日にわたり行った。血栓が見つかる数週間前、クリントン氏はウイルス性胃腸炎による脱水症状が原因で転倒し、頭部を強打していた。9月15日、選挙戦を再開した民主党大統領候補のヒラリー・クリントン氏 2012年の頭部負傷や、その後行われた血栓の治療、そして高齢も懸念され(大統領選挙直前の10月26日、クリントン氏は69回目の誕生日を迎える)、医療記録を公開して、健康状態についてクリアにしておくべきとの声は以前から少なくなかった。民主党候補者の指名争いでライバルであったバーニー・サンダース氏がクリントン氏よりも高齢のため(サンダース氏は75歳)、「健康問題」はサンダース氏に集中する形となり、クリントン氏の健康状態をめぐって大きく議論されることもあまりなかった。 ボストン在住のフォトグラファー廣見恵子氏は、米大統領選挙で各候補の動きを追うために全米各地を訪れ、クリントン氏の遊説にも何度も足を運んでいる。廣見氏がクリントン氏を最後に間近で目にしたのは、7月12日にニューハンプシャー州ポーツマスで行われた集会だった。廣見氏によると、それまでに何度もクリントン氏の遊説などを取材していたにもかかわらず、クリントン氏から健康上の不安を示すような様子は全く見られなかったのだという。「8月頃からクリントンの健康問題が話題になり始めましたが、私が行った取材の中ではそういった様子は全くなかったため、肺炎のニュースにも正直驚いています」と、廣見氏は語る。  クリントン氏の健康状態を問題視し、クリントン叩きを大々的に展開し始めたのが、アメリカ国内の保守系メディアやタブロイド紙だ。「健康に不安を抱えるクリントン氏に大統領職を全うできるかは疑問で、大統領選挙から即刻撤退すべし」という論調で、クリントン叩きに躍起になるメディアもあれば、クリントン氏のランニングメイトとして選挙戦を戦うティム・ケイン氏をすぐに大統領候補にするべきと伝えるメディアまで出る始末だ。また、ウィキリークスはツイッターに4択のアンケートを投稿し、「クリントン氏の本当の病状は何だと思うか?」という質問でクリントン氏の健康不安を煽り、激しい批判に晒された。問題のツイートはその後削除されている。求められる情報公開、吉と出るか凶と出るか求められる情報公開、吉と出るか凶と出るか 大統領候補や現職の大統領の健康状態が大きな関心事になったのは、いつ頃からなのか。歴代のアメリカ大統領について研究する歴史家のロバート・ダレック氏は2008年にNPR(米公共ラジオ)のインタビューの中で、「歴史的に見て、大統領や大統領候補者は自らが患っている慢性的な病気について公表するのを避けてきた」と語っている。 第一次世界大戦後にパリ講和会議を開催し、国際連盟の創設に尽力した第28代大統領のウッドロウ・ウィルソンは大統領時代の晩年に脳梗塞を発症した。一命は取り留めたが、左半身不随と重い言語障害が残り、職務の継続は無理な状態であったが、アメリカ国民に脳梗塞の発症はウイルソンの死後まで伝えられることは無く、ウイルソンは大統領職を最後まで全うした。逆に健康状態がよく知られていた例も少なくなく、第21代大統領のチェスター・アーサーは腎臓病、第35代大統領のジョン・F・ケネディは慢性痛に苦しんでおり、それらの情報は有権者の間でも周知の事実であった。ワシントンで開かれた党会合で並ぶコリン・パウエル氏(左)と ヒラリー・クリントン前国務長官=2014年9月 マサチューセッツ州選出の元上院議員ポール・トソンガス氏は1984年に悪性リンパ腫の治療に専念するために政界を引退したが、1992年の大統領選挙で政治の世界にカムバックし、大きな話題を呼んだ。トソンガス陣営は「癌に打ち勝った候補者」として強さをアピール。これに共感した有権者は多く、トソンガス氏は大統領選挙の序盤で後に大統領になるビル・クリントン氏よりも多くの支持を集めるほどであった。トソンガス氏のケースは異例中の異例で、ほぼ全ての候補者は自らの病気について積極的に情報公開することはない。 SNSで拡散された映像や、ネット上で広がる根拠のない噂に対応するため、クリントン氏にはより積極的な情報公開が求められているが、健康についての情報公開が吉と出るか凶と出るかは不明だ。 健康不安以外にも、トランプ氏同様に支持率が急落する爆弾をいくつも抱えている。クリントン氏は先週、LGBTの集会に演説を行い、トランプ支持者を激しく批判した。「トランプ支持者の半分は哀れな人たちで、人種差別主義者、性差別主義者、同性愛者嫌い、イスラム教徒嫌い……。そんな人間ばかりだ」と発言。度を越えた発言と捉えたアメリカ人は少なくないと報じられている。また、これからのクリントン財団の運営の仕方や、ウォール街との付き合い方、国務長官時代のメール問題に対する見解など、アメリカ人有権者の間で根強く残る「クリントン嫌い」の要因を払拭する必要がある。 この時期に民主党の大統領候補が変わる可能性はほぼゼロだが、医療記録から財団運営の詳細まで、有権者がクリントン氏に期待することの一つが「透明性」であることは間違いない。なかの・ひろふみ ジャーナリスト。1975年生まれ。アメリカの大学院でジャーナリズムを学んでいた2001年に同時多発テロを経験し、卒業後そのまま現地で報道の仕事に就く。10年近い海外滞在経験を活かして、欧米を中心とする海外ニュースの取材や解説を行う。ウェブサイト

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    日米同盟の関係見直し? トランプ発言が日本に与えた衝撃

    猪野亨(弁護士) 米国では、大統領予備選挙が行われ、共和党では当初の予想に反し、過激な発言を繰り返すトランプ氏が指名獲得を手中にしました。安倍自民党政権がトランプ氏の発言に右往左往しています。 トランプ氏の注目発言はこれです。日本の駐留米軍の経費を全額、日本に負担してもらう。米国の牛肉に38%の関税をかけるなら、日本車の輸入には38%の関税をかける。 石破氏が早速、反応しています。 「石破氏 『トランプ氏、安保条約よく読んで』 全額負担で」(毎日新聞2016年5月7日) 「石破氏は、日本は納税者の負担で他の多くの同盟国よりも多くの駐留経費を負担している▽日本に米軍基地があることで地域の平和と安定に寄与している▽米国の国益にも寄与している−−と説明。在日米軍は同条約に基づいて『極東における平和と安全』のために駐留しており、『ひたすら日本の防衛のために負担しているのだから、経費は日本が持つべきだというのは、条約の内容から論理必然として出てこない』と反論した」 これはトランプ氏への反論にもなっていないし、ましてやトランプ氏の支持層にとっては雑音でしかないでしょう。日米安保条約の最初の目的といえば、米国が自国の利益にならないようなことをするはずもなく、米国の利益のために日本を属国にしたというものです。石破茂前地方創生担当相 表現などは異なりますが、確かに石破氏のいう主張は従来の日本政府の見解でもあるのですが、しかし、それは米国が東西冷戦においてライバルのソビエトが崩壊してからは、唯一の超大国として、さらには世界市場を力によって維持するという世界の警察官を自負したしばらくの期間までです。 時代は既に米国が同盟国に負担を求める構図に変わっています。米国がその軍事力をもってしても世界の警察官としての役割を果たすことが現実に無理ということが米国の中でも認識されてきたということもでもあります。 今や米国の経済は傾き、財政赤字も極限に達している中で、世界の警察を自認しているような悠長なことは言っていられるような状況ではなくなったということです。オバマ政権のときから、アフガニスタン、イラクからの撤退が大きな課題になっていたのも、これ以上の財政負担ができなくなったし、何よりもそれに見合うような経済効果もなかったからです。 力の政策を推し進めてきたブッシュ政権が行ってきた政策の破綻がその象徴になりますが、米国ではいよいよ国民(有権者)もその矛盾をはっきりと意識したということでもあります。テロとの戦争に勝者はない 力の政策は変えない、それらは全て他の同盟国に押し付けるという選択です。トランプ氏が同盟国への負担を求める発言は、恐らく米国の中では民主党支持層の中にも支持が拡がることでしょう。それは裏を返せば日本に対する不満でもあるわけで、日本車への輸入に高額の関税を掛けるということは、同様に一定の支持を拡げることになります。 もはやトランプ大統領が誕生するかどうかは、全くの幻想ではなくなりました。米国内の矛盾を外的要因に向けることによって国内の統一を図ろうとする力(バランス)が働こうとしているのです。 そうなると民主党での指名の獲得がほぼ決まったクリントン氏の政策動向にも影響を与えないわけがありません。自国民ではなく、第三国への負担を求めるような政策は、米国大統領選挙では競って主張されることがありますが、その典型的な場面とも言えるからです。 石破氏は、このような米国を取り巻く経済環境、有権者意識の変化を理解できないのか、意図的に無視しているのか、従来の日本政府の見解を繰り返しているだけであり、トランプ氏にはともかくとして、米国有権者にも通用しない陳腐化した主張なのです。 石破氏としては、先に安保関連法を制定し、これからは米国のために自衛官の命を提供しようとしていた矢先のことですから、非常に動揺していることがうかがえます。 「平和という名の戦争国家 日本人に血を流させます! 結果は永遠に米国の属国だ」 結局、日本国家が選択肢として考えなければならないのは、さらなる大幅な負担増(財政面のみならず、自衛官の命を惜しみなく差し出す)を申し出て米国の機嫌を取るのか、米国との同盟関係を解消して新たな道を選択するのかということにならざるを得なくなります。 しかし、いずれにしても力で世界の平和は維持できないということは、これまで力で抑えきれなかったことをもってしても自明のことです。テロとの戦争に勝利はありません。カネも出し、日本の若者の命を差し出しても、それに見合うものがありますか?トランプ氏の発言は、私たちにも同様の問題を突きつけていることを自覚すべきことを物語っているのです。(「弁護士猪野亨のブログ」より2016年5月9日分を転載)